アルミニウム箱形断面材とスギ製材による 合成構造柱に関する研究
石渡 康弘
目 次
第1章 序 論 ··· 1
1.1 研究の背景と問題点 ··· 2
1.2 研究の目的 ··· 5
1.3 本論文の構成 ··· 7
第2章 部材の耐力評価 ··· 9
2.1 概要 ··· 10
2.2 純曲げ実験 ··· 12
2.2.1 実験概要 ··· 12
2.2.2 実験結果および考察 ··· 15
2.3 曲げせん断実験 ··· 19
2.3.1 実験概要 ··· 19
2.3.2 実験結果および考察 ··· 21
2.4 圧縮実験 ··· 24
2.4.1 短柱圧縮実験概要 ··· 24
2.4.2 短柱圧縮実験結果および考察 ··· 26
2.4.3 中心圧縮実験概要 ··· 29
2.4.4 中心圧縮実験結果および考察(肌すきのない場合) ··· 32
2.4.5 中心圧縮実験結果および考察(肌すきを設けた場合) ··· 39
2.5 合成構造柱の耐力評価式の提案 ··· 43
2.6 本章のまとめ ··· 49
第3章 仕口の耐力評価 ··· 51
3.1 概要 ··· 52
3.2 使用材料および試験体詳細 ··· 54
3.3 鉛直荷重による実験 ··· 57
3.3.1 試験体および実験方法 ··· 57
3.3.2 実験結果および考察 ··· 59
3.4 水平荷重による実験 ··· 64
3.4.1 試験体および実験方法 ··· 64
3.4.2 実験結果および考察 ··· 65
3.5 本章のまとめ ··· 68
第4章 架構形式の耐力評価 ··· 69
4.1 概要 ··· 70
4.2 ト字形架構の水平加力実験 ··· 71
4.2.1 試験体および実験方法 ··· 71
4.2.2 実験結果および考察 ··· 73
4.3 門型架構の水平加力実験 ··· 76
4.3.1 試験体および実験方法 ··· 76
4.3.2 実験結果および考察 ··· 79
4.4 本章のまとめ ··· 84
第5章 合成構造柱を用いた建築物の提案 ··· 85
5.1 概要 ··· 86
5.2 設計方針および適用範囲 ··· 87
5.3合成構造柱を用いた建築物の提案および適用例 ··· 89
5.3.1合成構造柱を用いた建築物の提案 ··· 89
5.3.2合成構造柱を用いた建築物の適用例 ··· 90
5.4 本章のまとめ ··· 94
第6章 総 括 ··· 95
6.1 結論 ··· 96
6.3 今後の課題 ··· 100
参考文献 ··· 101
本研究に関連した発表論文 ··· 105 謝 辞 ··· 107
STUDY ON STRUCTURAL PROPERTIES OF ALUMINIUM AND SUGI TIMBER COMPOSITE COLUMNS
Yasuhiro ISHIWATA
For this research, in this paper proposed a composite structural column of an aluminum box-shaped section consisting of two different materials, wood (sugi timber) and aluminum, with the former being inserted inside the box. In order to verify that the proposed composite column can be viable and feasible as a structural column, in this paper conducted a load test, and based upon the results, created an evaluation formula to calculate the bearing force, and ascertained characteristic advantages and values that can be used for this composite structural column. On the strength of the features of this material, a project was proposed for construction of buildings using this material.
As the first step in an experiment aimed at evaluating the bearing force of components, three kinds of specimens were used and studied: aluminum box section, simple column of cedar wood and composite structural column. They were subjected to pure bending tests, shearing tests, short column compression tests, compression tests of cores for each specimen to clarify the structural characteristics of the composite structural material through comparison with those of each single column. For each test, the specimens were verified in terms of improvement in cumulative bearing force and deformation resistance performance. From these test results, in this paper derived a formula to assess appropriately the bearing force of the composite structural column.
In the next step, in this paper proposed several connection joints to enable the proposed composite column to be used as structural column, and verified the bearing forces of the joints through various kinds of experiments.
The bearing force of a building frame built with column-beam joints using connecting hardware that had been proposed was checked with loading tests.
During the experiment, these connection joints, as part of the building frame, were evaluated for endurance and deformation resistance.
Finally, in this paper proposed a prototype building with structural composite columns considering the results of experiments and verification as well as a prospective approach for the future to narrow the targets to develop versatile uses in the architectural field.
第
1章 序 論
1.1 研究の背景と問題点
現代社会では,近年の地球温暖化をはじめとする環境問題などの影響から,無駄 なエネルギーをなるべく排出せず,エネルギー資源を循環させるようなシステムを 作り上げようとする動きや,既存の資源を有効的に利用しようする働きも顕著とな っている。このように,昨今の省エネルギーやリサイクルに対する意識の高まりか ら,循環型社会を構築するための取り組みが推進されている 1)。また,建築分野に おいても,資源の有効活用や環境負荷の低減を課題 2)としており,再利用可能な資 源を積極的に利用していく必要があると考える。
そこで,本研究では地球環境問題に配慮した資源としてアルミニウムと木材に注 目した。
2002年の建築基準法改正3)により,アルミニウムは建築構造部材として正式に認 定された 4)。しかし,アルミニウム表面には一般的に耐食性,耐摩耗性向上のため にアルマイト加工が施されていることから,アルミニウムを構造部材として使用す る場合はTIG溶接が必要となる。TIG溶接は熟練した溶接技術が必要なため,現場 での施工に必ずしも適しているとは言えない。そこで,アルミニウムを鉄骨構造や 木質構造などのように一般的に用いられる構造部材と同程度に普及させるために は,金物やボルトを用いた単純明快な施工方法が必要であると考える。
このように金物やボルト接合による施工方法を確立し,システム化することで,
以前よりアルミニウムが建築構造部材として一般的に普及されやすくなることも 期待される。
一方,木材は生産する際のエネルギーが他の材料と比較しても小さく,省エネル ギーな資源 5)であることから,国家プロジェクト 5)においても木材の積極的な利用 が推進されている。しかし,日本の木材利用率は輸入材が約7割を占め,国産材は 約3割程度に留まることから,国産材の需要が低迷6)するとともに日本の林業は衰 退しているのが現状である。また,木材需要量における建築用材の割合は約4割6) であるため,建築分野において積極的な国産材利用を高めることで,木材需要の波 及効果が見込まれている。国産材の需要増加により,日本の林業および地域経済の 活性化,循環型社会の促進へ繋がることもあわせて考えられる。
このような背景から,本研究ではアルミニウムと木材という2種の異なる材料を
用いて,図1-1のようなアルミニウム箱形断面材に木材を挿入した合成構造柱を提 案した。この方法であれば,現場施工が難しいTIG溶接をせず,鉄骨構造の仕口形 式や,木質構造の在来軸組構法で使用されるような仕口金物等によるネジやボルト 留めによる施工が実現可能である。ここで,本研究では木材にはスギ製材を用いた。
スギ製材は日本で最も多く流通している木材であり,比較的安価で出来,軽く,ま っすぐな特徴があるため,本研究に最も適した材料であると考えた。
また,提案する合成構造柱は,アルミニウム箱形断面材内部にスギ製材が挿入さ れることで,ボルト留めとする場合にダイアフラムなどを設ける必要がなく,貫通 ボルトとした際にも断面に影響しないことがスギ製材を挿入する利点である。更に 接合部に仕口金物等を用いることで,目視により確認できるため,リフォームする 場合などには欠陥部分を一目で把握することが可能となり,欠陥部分のみの修復や 交換を行うことができるという利点にも繋がる。このことから,本研究で提案する 合成構造柱およびその施工方法については,リユースやリサイクルのしやすい工法 であるともいえる。なお,本合成構造柱の使用用途としては木質構造規模の建築を 対象としている。
既往の研究としては,本研究のように木材を鉄やアルミニウムで被覆したハイブ リッド部材の研究例はほとんどなく,建築研究所が行っている技術開発プロジェク ト7), 8)である木質複合建築構造技術の開発のように,木材を活用しながら実現する ための技術環境整備を行うこと目的とし,従来の木造では困難であった中層の事務 所や集合住宅などの建築物を実現するために,木材が外側に存在することで鉄など を補う,本研究とは逆の工法を提案しているものが多い(図 1-2(a)参照)。そのプ ロジェクトのうち,木材を利用した耐火構造の技術開発 8)では,集成材を石こうボ ードにより被覆した「被覆構造」が一部研究されているにすぎない(図1-2(b)参照)。
そのため本研究では,既往の研究9)~23)で実施されていない,アルミニウムがスギ製 材を被覆する構造部材について研究を行うものとする。また,木材は節や繊維方向 による耐荷性能のばらつきを生じ,アルミニウムは板の局部座屈を起こすため,合 成構造とした場合に木材の耐力等のばらつきを抑え,アルミニウムの局部座屈を防 ぐなど,互いの欠点を補うことが可能である24)と考えられる。更に,木材の熱伝導 率に比べ,アルミニウムの熱伝導率は非常に高く,建築基準法25)においてアルミニ ウムは不燃材料として定められている。先に述べた集成材を石こうボードにより被
覆した「被覆構造」8)においては短柱試験体による耐火試験が行われ,石こうボード が不燃材料であることから耐火性能をみせたという研究結果がある。このことから,
木材をアルミニウムで覆う合成構造では木質構造のみの場合と比較すると,少なか らずアルミニウムが木材の燃焼の広がりを抑えることも考えられる。また,逆にア ルミニウムの融点は 600℃程度で,鉄などのように熱に弱く強度低下を起こすが,
木材は燃焼の際に表面が炭化することで燃焼の速度を遅らせる特徴があり,仮に外 部のアルミニウムが熱の影響を受けた場合でも内部の木材が負担することで強度 が保たれることも考えられる。
本研究で使用している木材は,一般的に建築用材として利用されている製材であ るが,将来的にはアルミニウム箱形断面材に挿入する木材を,これまで構造部材と されなかった小径木や端材等の未利用材に置き換えることで,より資源の有効活用 が期待できると考えられる。
(a) 鉄骨構造仕口形式 (b) 木質構造仕口金物 図 1-1 合成構造柱施工例
(a) 木材を外側使用する例 (b) 被覆系部材の例 図 1-2 既往の研究の合成柱の例
集成材
鋼材
集成材
石こうボード
1.2 研究の目的
本研究は,提案するアルミニウム箱形断面材とスギ製材による合成構造柱が,実 際に柱構造材として実用可能であるか検証することを目的として載荷実験を行い,
実験で得られた結果を基に,耐力評価式の誘導へと繋げることで,合成構造柱とし ての利用特性や利用価値を見出し,合成構造柱を用いた建物を提案していく。
実験はまず,部材の耐力評価を行うために,アルミニウム箱形断面材およびスギ 製材の単一柱と合成構造柱の試験体を用いて,純曲げ実験,曲げせん断実験,圧縮 実験を行い,単一柱と比較した場合の合成構造柱における部材の構造特性を明らか にしていく。各実験では,スギ製材をアルミニウムで拘束することにより可能と考 えられる耐力等のばらつきの低減,ならびに累加耐力や変形性能の向上について検 証を行う。
本研究では,基本方針として木材はプレーナ加工により隙間なくアルミニウム箱 形断面材に挿入するが,施工誤差により隙間が生じることも考えられる。また,経 年変化などによる木材の木痩せなども考えられることから,純曲げ実験および圧縮 実験においては,木材とアルミニウム箱形断面材との肌すきを考慮した試験体を用 いて,その有無により生じる合成構造柱に対する影響についても検討を行うものと する。一般的に木痩せとは,経年劣化により木材が細ることの総称であり,木質構 造においては,木痩せによる影響から接合部等に施されたボルト・ナットが緩み,
家屋の強度が低下することをいう。木痩せによる肌すきが起こる原因として,経年 劣化による細りならびに温度や湿度の変化で繁殖した木材腐朽菌やカビによる腐 食が挙げられる。また,本研究で提案する合成構造柱においても,アルミニウム箱 形断面材と木材が接する面で,木痩せによる影響から肌すきが生じる可能性も考え られる。そのため,合成構造柱を長期間使用する際に生じるおそれのある木痩せを 想定して,予め1mm程度の肌すきを持たせるように試験体も製作するものとする。
試験体は,アルミニウム箱形断面材および木材の単一柱と合成構造柱を用いるが,
合成構造柱に関しては,肌すきを生じていない一般的な材と肌すきを有する材の 2 種類を製作して実験により比較する。肌すきの有無による試験体では,合成構造柱 としての強度の違いを実験により求め,長期の使用により肌すきが生じた場合でも,
強度の保持が可能であるかを検証する。また,肌すきを有する部材では一般的な部
材と比較して,断面欠損による耐力や変形性能などへの影響の有無を確認すること を目的としている。
以上の実験結果を踏まえ,本研究で提案する合成構造柱の耐力評価式を誘導し,
適切な耐力評価を行っていく。
次に,合成構造柱を柱部材として利用できるような仕口の提案を行っていく。本 研究で提案する合成構造柱およびその施工方法については,現在一般的な工法とし て実在しないため,鉄骨構造における仕口形式や,木質構造の在来軸組工法で使用 される仕口金物を用いたネジやボルト留めなどによる施工を利用することも提案 できる。本論文においては,合成構造柱と軽量H形鋼の梁をフランジをトップアン グルで接合する仕口タイプ,トップアングルをリブで補強した仕口タイプ,フラン ジとウェブそれぞれをトップアングルで接合する仕口タイプ,およびカットT で接 合する仕口タイプの4種類の仕口金物を提案し,仕口耐力の検証を行う。仕口耐力 の検証は,鉛直荷重による曲げ実験および水平荷重による逆対称曲げ実験により,
提案した仕口による施工方法が実用可能であるか確認することを目的としている。
鉛直荷重による曲げ実験および水平荷重による逆対称曲げ実験により仕口耐力 が確認された後,提案した仕口金物で形成された柱梁接合部を有する架構形式の耐 力を載荷実験により評価していく。実験は中間階の側柱を模擬したト字形架構と,
柱脚部も含めた門型架構の二種類の架構形式に対して,地震時を想定した水平荷重 を加える正負交番繰返し載荷実験とする。また,繰返し荷重と比較するため,単調 載荷による実験も実施する。実験によりそれぞれの架構の耐力の評価,変形性状の 検証を行う。これら架構形式の実験結果より,合成構造柱を用いた建物として構造 性能を明らかにすることを目的としている。
最終的には全ての実験,検証結果から合成構造柱を用いた建物を提案し,一般的 に利用可能となるような位置づけを図ることを目的とした。
1.3 本論文の構成
本論文は,アルミニウム箱形断面材にスギ製材を挿入した合成構造柱の構造性能 および合成構造柱を用いた架構形式の性状について論じたもので,全6章より構成 されており,各章の内容は以下の通りである。
第1章は序論であり,本研究の背景を述べ既往の研究を概観した上で,本研究の 位置づけを図るとともに,研究の目的および内容を明示する。
第2章では本研究で提案するアルミニウム箱形断面材にスギ製材を挿入した合成 構造柱について,実験により純曲げ・曲げせん断時の性状を把握するとともに,合 成構造柱試験体とアルミニウム箱形断面材およびスギ製材の各単一柱の試験体を あわせて用いることで,単一柱および合成構造柱の力学的性状の比較や耐力評価を 行う。
次に,アルミニウム箱形断面材と木材の合成構造柱において圧縮性状を把握する ため,短柱圧縮実験,中心圧縮実験を行い,累加耐力や変形性能等について検証す る。短柱圧縮実験では,一般的な圧縮時の耐力や変形性能ならびに破壊状況等を把 握する。また,中心圧縮実験においては,純曲げ実験と同様に肌すきによる影響を 確認するため,肌すきを有する材と一般的な材を用いた実験を行い,肌すきの有無 による強度の違いや変形性能等を比較するとともに,肌すきが部材に及ぼす影響に ついて検証する。
第3章では提案した合成構造柱を架構形式として活用するため,鉄骨構造や木質 構造の在来軸組工法のように,ネジやボルト留めが可能となる仕口金物形式として,
合成構造柱と軽量H形鋼の梁フランジをトップアングルで接合した試験体,トップ アングルをリブで補強した試験体,フランジとウェブをそれぞれトップアングルで 接合した試験体,梁フランジをカットTで接合した試験体の4種類の仕口形状を提 案し,軸方向力を想定した鉛直荷重と水平荷重による逆対称曲げを想定した実験に より,仕口耐力の検証を行った。
第4章では提案した仕口形式で接合された実際の構造物の一部を模したト字形架 構と門型架構を用いて,地震荷重を想定した正負交番繰り返し載荷実験を行い,そ の結果より合成構造柱を用いた架構の構造特性を検証する。また,門型架構の実験 では,単調載荷と繰返し載荷を実施し,載荷方法の違いによる各性状の違いについ ても検証する。
第5章では第4章までに得られた結果から,適用範囲を特定し,アルミニウム箱 形断面材とスギ製材を用いた合成柱を用いた建築物を提案する。
第6章では本研究を総括し,各章の結果と考察に基づき,得られた成果を要約す るとともに,今後の検討課題,展望について言及する。
第2章 部材の耐力評価
2.1概要
本研究で提案するアルミニウム箱形断面材に木材を挿入した合成構造柱につい て,まず,アルミニウム箱形断面材および木材の単一柱と合成構造柱の試験体を用 いて,純曲げ実験,曲げせん断実験,圧縮実験(短柱圧縮実験,中心圧縮実験)を 行い,各柱材の曲げ性状,曲げせん断性状,圧縮性状を比較する。このように種々 な実験を行うことで,単一柱と比較した場合の合成構造柱における構造特性を明ら かにしていく。
本章では,実験により純曲げ・曲げせん断時の性状および圧縮性能を把握すると ともに,合成構造柱の試験体とアルミニウム箱形断面材およびスギ製材単一柱の試 験体をあわせて用いることで,単一柱および合成構造柱の力学的性状の比較や耐力 評価を行うことを目的としている。
実験は,純曲げ実験,曲げせん断実験,圧縮実験の3種類によるものである。よ って本章では,以下の内容に沿って実験を行うものとする。
1) 純曲げ実験においてはアルミニウム箱形断面材およびスギ製材の単一柱 と合成構造柱の比較,並びにアルミニウム箱形断面材とスギ製材の隙間の 有無による比較のための実験を行う。ここで想定した隙間は,施工誤差に よる隙間および経年変化によりスギ製材が木痩せすることも考慮したも のである。これは木質構造においては,経年変化による影響から接合部等 に施されたボルト・ナットの緩みが想定されるためである。本研究で提案 する合成構造柱においても,アルミニウム箱形断面材とスギ製材が接する 面で,施工誤差や経年変化により隙間が生じる可能性が考えられる(ここ ではその隙間を総称して「肌すき」と定義する)。そのため,合成構造柱 製作時,予め 1mm 程度の肌すきを持たせるように試験体を製作するもの とする。
2) 曲げせん断実験においては純曲げ実験同様アルミニウム箱形断面材およ びスギ製材の単一柱と合成構造柱の比較のための実験を行う。ただし,肌 すきの有無による比較は行っていない。
3) 圧縮実験においては提案するアルミニウム箱形断面材にスギ製材を挿入
した合成構造柱について,圧縮性状を実験により把握するとともに,前項 と同様に,単一柱および合成構造柱の力学的性状の比較や耐力評価を行う こととしている。実験は,短柱圧縮実験と曲げ座屈耐力を求めるためにナ イフエッジを用いた中心圧縮実験の2種類を実施する。
2.2 純曲げ実験 2.2.1 実験概要
実験はシリーズ分けをし,単一柱と合成構造柱の比較実験をシリーズ 1,肌すき を有する材の比較実験をシリーズ2とし,シリーズ名は各試験体名の直後に記した。
ここで,合成構造柱はスギ製材をプレーナー加工によりアルミニウム箱形断面柱に 密着するよう製作した。なお,スギ製材はプレーナー加工後 24 時間以内にアルミ ニウム箱形断面材に差し込んだ。
試験体形状を図2-1に示す。アルミニウム箱形断面柱(以下 ALという)および スギ製材(以下Wという)の単一柱と,ALにWを挿入した合成構造柱(以下ALW という)の3種類である。純曲げ実験においては,スギ製材の肌すきを考慮した実 験についても行うが,まずは合成構造柱としての純曲げ実験時の構造特性を把握す る。AL,W の単一柱と合成構造柱である ALWの比較のため,シリーズ 1 として
AL1,W1,ALW1の3種類とした。次に肌すきを有する合成構造柱(以下ALWG
という)についての構造特性を把握するため,シリーズ2としてAL2,W2,ALW2 に追加して,肌すきを有する材としたALWG2も含めた4種類について実験を行う。
本来,木材実験では 12 体程度の試験体数が望ましいが,本研究はあくまでも合成 構造柱として評価するため,試験体数は各3体ずつとし合計21体とした。
試験体詳細を表 2-1 にシリーズ 1,シリーズ 2 共通として示す。AL は厚さを t=3.0mm とし,幅厚比 33.3 である□-100×100×3.0 を使用した。また,W の単一 柱はALWの断面寸法と同等の 94×94とした。それぞれのシリーズに使用したAL の機械的性質,Wのヤング係数を表2-2に示す。使用する ALはA6063S-T5 であ る。Wは,105mm角のスギ製材(無等級のKD材)を94mm角へ4面プレーナー加 工した。Wのヤング率は,曲げ実験 3 体の結果より算出した平均値である。また,
本実験ではAL 材との肌すき,密着の違いを確認することも目的とするため,含水 率変化による木材収縮の可能性が低い,低含水率材を選択し実験に用いた。なお,
試験体含水率は,プレーナー加工後のスギ製材において,電気抵抗式含水率計
(Ketto社製MT-700)にて計測した結果,平均12.7%(標準偏差SD3.25%)であっ た。全ての試験体において材長は H=2000mm とし,AL と W のずれを防ぐため,
タッピングネジ(1種-ナベ頭M8×40)により端部拘束を行った。
図 2-1 純曲げ実験試験体形状
表 2-1 純曲げ実験試験体一覧
表 2-2 材料試験結果一覧
100
100
100
100
(a) AL (b) W (c) ALW
H
t=3
94 94
94 100
94 100
AL
AL W W
t=3 100 100
(d) ALWG 100
100
AL W t=3 100 100
肌すき(0.5mm)
B×D t
AL a - 100×100 3.0 33.3
W b 94×94 - - -
ALW 94×94
ALWG c 93×93 100×100 3.0 -
幅厚比 試験体 試験体
形状
断面形状(mm)
W断面 AL断面
シリーズ Aσy Aσu AElong AE WE
シリーズ1 201 223 14.4 61000
シリーズ2 194 215 14.1 61400
Aσy:A(アルミ) 降伏耐力[N/mm2], Aσu:A(アルミ) 引張強さ[N/mm2],
AElong:A(アルミ) 伸び率[%], AE:A(アルミ) ヤング率[N/mm2],
WE:W(木材) ヤング率[N/mm2], SD:標準偏差
9300 (SD:717)
純曲げ実験の載荷方法を図2-2に示す。実験は1000kN万能試験機を用いて,支 点間距離を L=1800mmとし,L/3=600mm の点で加力ビームを介しての 2 点集中 荷重による純曲げ実験を行った。
載荷は荷重を止めることのない準動的載荷とした。変位の測定は,図2-2のよう に変位計を各荷重点および試験体中央に設置し行った。また,ひずみゲージ貼付位 置を図2-3に示す。試験体のひずみは図2-3に示す AL中央の荷重点とその裏面に 一か所ずつ,片側面に 15mm 間隔で 7 か所,計 9 か所に単軸ひずみゲージを貼付 して測定を行った。なお,Wはひずみの測定を行っていない。
図 2-2 純曲げ実験載荷方法
図 2-3 純曲げ実験ひずみゲージ貼付位置
P/2 P/2
試験体 加力ビーム
P/2
P
L/2=900mm L/3=600mm L/3=600mm L/3=600mm
L=1800mm
変位計
変位計 P/2
2.2.2 実験結果および考察
純曲げ実験における実験結果一覧を表2-3に示す。ここで,表2-3中試験体の( ) 内の数字は試験体数を示す。同表は,純曲げ実験における最大耐力をPmaxで示し,
AL1,2 の最大耐力および W1,2 の最大耐力を単純に足し合わせた単純累加耐力 Po
を算出し,あわせて ALW1,2 の最大耐力(Pmax) ALW を Po で除した累加耐力比 (Pmax) ALW/Poについても算出した。
累加耐力比(Pmax) ALW/Poについては1.09,1.13と1を若干上回り,10%程度の 耐力上昇がみられた。肌すきの試験体ALWG2に関しては0.98 と1 を若干下回る 値を示したが,その差は 2%であるため,単純累加耐力による評価に関して問題は ないと考えられる。
あわせて (Pmax)ALW /(Pmax)W,(Pmax)ALWG /(Pmax)W をWに対するALW,
ALWGの耐力増加率として算出したところ,Wに対してALWでは約2.4~2.8倍,
ALWGでは約2.4倍と大幅な耐力増加を示していることが確認できる。
純曲げ実験では引張側による破壊であることから,合成構造柱の単純累加耐力は 引張力に対しての耐力がやや高く評価された。これは,ALWにおいては ALで W を拘束することにより互いの材料の欠点を補い,剛性や耐力を高める効果がみられ たためと考えられる。このことより,合成構造柱(ALW)の最大耐力は各単一柱(AL, W)の単純累加耐力によって安全側に計算できることが示された。ここで,引張側 の破壊とは,試験後Wの破壊状況を確認するためALを切断した写真2-1に示すよ うな曲げモーメントのかかる材の下側が繊維方向に沿って割れを起こす破壊であ る。ALWGに関しては,(Pmax)ALWG /Poがほぼ1に近い値となったため,こちら も概ね単純累加耐力による評価が可能であるといえる。さらに,(Pmax)AL と (Pmax)WをPoで除し,単純累加耐力に対する単一材の耐力比として求めたところ,
(Pmax)AL /Poで0.55,0.59となり,単純累加耐力においてはALの耐力が55~59% 程度を占めていることから,純曲げ実験における合成構造柱の耐力はAL の耐力負 担が大きいことがわかる。
ALW2,ALWG2 の最大耐力Pmaxを比較したところ,1.16 と ALW2の耐力が 上回る結果となったが,11%程度の差であることから肌すきの有無によりPmaxに 対する影響はほぼないと考えられる。ここで,各試験体における最大耐力の変動係
数(%)はそれぞれ,AL1:1.15,W1:5.52,ALW1:1.69,AL2:1.17,W2:4.98,ALW2:2.01,
ALWG2:3.27とWの変動係数が大きかったことから,ここで現れた差はWの耐力
のばらつきに起因するものであると考えられる。
表 2-3 純曲げ実験結果一覧
写真 2-1 純曲げ実験破壊状況例(ALW)
図2-4に荷重-変位関係を示す。図2-4(a)より,シリーズ1ではW1,AL1,ALW1 の順に初期剛性が高くなっていることがわかる。Wに関しては,試験体の引張側の 破壊によって最大耐力が決定した時点で実験を終了している。一方,AL1では変形 能力が大きくなっていることが確認できる。また,ALW1についてみていくと,純 曲げ時においてはWの破壊による影響で,耐力が一度急激に落ちる結果となった。
しかし,その後はALの拘束により,AL1の最大耐力を27%程度上回る耐力を維持 したまま,安定した変形性状で粘りをみせることが確認できた。よって,W1 では 曲げ破壊が生じ,AL1では最大耐力後に局部座屈が起こったことで耐力は低下した が,ALW1 では剛性や耐力を高める効果が現れた。最大耐力後は W による割れの 影響もあったが,単一柱と比較してもすぐに耐力は低下せず,変形性能の向上が確 認できた。
AL1(3) 23.7 W1(6) 19.5 ALW1(3) 47.2 -
AL2(3) 23.9 W2(6) 16.7 ALW2(3) 46.0 -
ALWG2(3) 39.7 - 0.98
(Pmax)ALW
(Pmax)W
2.4
2.8
(Pmax)ALWG
(Pmax)W
-
2.4 (Pmax)AL
Po
(Pmax)W
Po 0.55 0.45
0.59 0.41 シリーズ1
シリーズ2
43.3
40.5
1.09
1.13
シリーズ Pmax
(kN) Po
(kN)
(Pmax)ALW
Po 試験体
図2-4(b)より,シリーズ 2でもシリーズ 1と同様,W2,AL2,ALW2の順に初 期剛性が高くなっていることがわかる。またALWG2に関しては,ALW2よりも若 干低い初期剛性を示している。W2,AL2 の変形能力については,先程示したシリ ーズ1の結果と同様のものが確認できる。ALW2についてみていくと,最大耐力後 の耐力が急激に落ちているものや,緩やかに耐力低下を起こしているものがあった。
これはALW2内部のWの割れによる影響が異なるため,最大耐力後の耐力低下に ばらつきが存在するものと考えられる。ALWG2においては,ALW2よりも最大耐 力が劣っており,また最大耐力後はWの割れが徐々に進行したことで,僅かな耐力 低下が確認できる。このことは,ALWG2では肌すきの影響から,ALW2と比較す るとAL2による拘束効果がさほど発揮されず,最大耐力や最大耐力後の変形性能に 影響を及ぼしたものと考えられる。しかし,ALW2およびALWG2においては最大 耐力後,Wの割れにより耐力低下をみせたのちの耐力については,最終的に概ね同 程度に落ち着いているといえる。
次に,純曲げ実験におけるシリーズ1のうち,AL1,ALW1および,シリーズ2 のうち,ALW2,ALWG2のゲージ位置-ひずみ関係を図2-5に示す。
シリーズ1の図2-5(a)および(b)では,いずれの図においてもALの図心位置に中 立軸が存在することが確認できたため,ALに Wを挿入することによる,AL の中 立軸に対する影響はないものといえる。しかし,図2-5(c)のALW2におけるひずみ
は,0.8Pmax時までは図心位置と中立軸が一致していたが,Pmax時のみ中立軸が
図心位置より下側に移動しており,図心位置と中立軸が一致していないことがわか る。これは,シリーズ1においてはALW1のPmax時の変位が36mm程度であっ たが,シリーズ2ではALW2のPmax時の変位が76mm程度と大きくなっている ことが影響していると考えられる。Pmax 時の変位が大きくなった原因としては,
ALW内部のWの材質により,シリーズ1においてはW1の破壊が早い段階で生じ たが,シリーズ2においてはW2の変形量が増大したことが関係している。純曲げ 実験においては試験体下側に引張力が生じるため,W2 の中立軸が下がったことか らALW2の中立軸も下がったと考えられる。ALWG2に関しては,シリーズ1の結 果と同様に,AL の図心位置に中立軸が存在することが確認できたため,肌すきの 存在によってALの中立軸に対する影響はないものといえる。
(a) シリーズ 1 (b) シリーズ 2 図 2-4 純曲げ実験荷重-変位関係
(a) AL1 (b) ALW1
(c) ALW2 (d) ALWG2 図 2-5 純曲げ実験ゲージ位置-ひずみ関係
ひずみゲージ位置(mm)
-4000 -2000 0 2000 4000 -45
-30 -15 0 15 30 45
下面
垂直ひずみ() 0.2Pmax 0.4Pmax 0.6Pmax 0.8Pmax Pmax(=24.1kN) 上面
-4000 -2000 0 2000 4000 -45
-30 -15 0 15 30 45
下面
0.2Pmax 0.4Pmax 0.6Pmax 0.8Pmax Pmax(=46.2kN)
ひずみゲージ位置(mm)
垂直ひずみ() 上面
-4000 -2000 0 2000 4000 -45
-30 -15 0 15 30 45
下面
0.2Pmax 0.4Pmax 0.6Pmax 0.8Pmax Pmax(=48.2kN)
ひずみゲージ位置(mm)
垂直ひずみ() 上面
ひずみゲージ位置(mm)
-4000 -2000 0 2000 4000 -45
-30 -15 0 15 30 45
下面
垂直ひずみ() 0.2Pmax 0.4Pmax 0.6Pmax 0.8Pmax Pmax(=40.6kN) 上面
0 20 40 60 80
0 10 20 30 40 50
(mm)
P (kN)
ALW1 AL1 W1
0 20 40 60 80 100
0 10 20 30 40 50
ALW2 ALWG2 AL2 W2
(mm)
P (kN)
2.3 曲げせん断実験 2.3.1 実験概要
曲げせん断実験で使用する材料および試験体(表2-2参照)は,純曲げ実験で使 用した合成構造柱のシリーズ1と同様であるが,曲げせん断実験においては肌すき の有無による比較は行っていないため,試験体はAL3,W3,ALW3の3種類であ る。実験時におけるWの含水率は,平均 10.6%(標準偏差SD3.25%)であった。試 験体の形状は純曲げ実験に合わせ,材長はH=2000mmとし,タッピングネジによ り端部拘束を行った。試験体数はWを6体,AL,ALWを3体ずつとし,合計12 体の試験体において実験を行った。
曲げせん断実験載荷方法を図 2-6 に示す。実験は 1000kN 万能試験機を用いて,
実験区間を L=1800mm,支点間距離を 1200mm,せん断スパンを 300mm とし,
逆対称載荷で行った。変位測定では,変位計(ストローク 200mm)を材端より 100mmの荷重点位置,および支点間中央のL/2=600mmにある荷重点位置の2 か 所に設置し計測した。試験体のひずみは,図2-7に示すように単軸ひずみゲージを AL中央の載荷点とその裏面に1か所ずつ,片側面の中央部において端から5mmの 位置に2か所貼付した。また,3軸ひずみゲージは中心位置に1か所と,そこから 30mm離れた位置の2か所の計3か所に貼付して測定を行った。なお,Wはひずみ の測定を行っていない。
図 2-6 曲げせん断実験載荷方法
図 2-7 曲げせん断実験試験体ひずみゲージ貼付位置 2000
1000 1000
Strain2 Strain12
100 50 50
Strain2
Strain12 Strain1
Strain13 StrainA3
StrainB4 StrainC5
StrainA6 StrainB7 StrainC8
StrainA9 StrainB10 StrainC11
StrainA3 StrainB4 StrainC5 StrainA6 StrainB7 StrainC8 StrainA9 StrainB10 StrainC11 StrainB
StrainC
StrainA
2.3.2 実験結果および考察
曲げせん断実験の実験結果一覧を表2-4に示す。ここで,表2-4中試験体の( )内 の数字は試験体数を示す。同表は,曲げせん断実験における最大耐力をPmaxとし て,純曲げ実験と同様に,AL3 の最大耐力の平均値(Pmax)ALと W3 の最大耐力 (Pmax)Wを単純に足し合わせた単純累加耐力 Po,また累加耐力比(Pmax)ALW /Po についても算出した。
(Pmax)ALW /Poが1.10となり,10%程度の耐力上昇が確認できたため,曲げせん 断実験の場合もALW3のPmaxはPoによって安全側に計算できることが検証され た。さらに,(Pmax)ALおよび(Pmax)WをPoで除した値を,累加耐力に対する単一 材の耐力比として求めたところ,(Pmax)AL /Po=0.55となり,ALでは55%程度の 耐力を占めるため,曲げせん断実験におけるPoにおいても純曲げ実験と同様にAL の耐力が支配的であるといえる。そして,(Pmax)ALW /(Pmax)WをWに対するALW の耐力増加率として算出したところ,純曲げ実験と同様に約2.4 倍の耐力増加を示 している。概括的に,曲げせん断実験は純曲げ実験と同程度の耐力比となったこと が確認できた。
表 2-4 曲げせん断実験結果一覧
曲げせん断実験の荷重-変位1 関係を図 2-8(a)に,荷重-変位2 関係を図 2-8(b)に それぞれ示す。図2-8(a)は,図2-6において示した載荷方法のうち変位計1で測定 したもの,図2-8(b)は変位計2で測定したものの結果である。
初期剛性については,いずれも純曲げ実験と同様に,W3 においてばらついてい るが,AL3,ALW3では概ね一致していることが確認できる。また,ALW3につい ては各単一柱(AL3,W3)と比較して 2 倍程度の耐力上昇がみうけられた。変形 性能に関しては,AL3では変位計1の方が小さく,変位計2の方が大きくなってい るが,W3,ALW3 においてはどちらもほぼ同程度となっている。純曲げ実験と比
AL3(3) 52.7 W3(6) 43.0 ALW3(3) 105.0 -
試験体 Pmax (kN)
Po (kN)
(Pmax)ALW Po
(Pmax)AL Po
(Pmax)W Po
(Pmax)ALW (Pmax)W
(Pmax)ALWG (Pmax)W
95.7 1.10 0.55 0.45 2.4 -
較すると,ALW3では一度大幅な耐力低下をみせたあと,その耐力を概ね保ったま ま変形を続けていたが,曲げせん断実験においては,試験体中央と端部が交互に壊 れるため細かい耐力低下が何度も生じているような性状をみせ,安定的な変形性能 を示していないことが確認できるが,純曲げ実験ほどの急激な耐力低下は現れてい ないものといえる。
(a) 変位計 1(試験体中央側変位計)
(b) 変位計 2(試験体先端側変位計)
図 2-8 曲げせん断実験の荷重-変位関係
ひずみの測定結果の一例として,曲げせん断実験AL3のひずみ性状を図2-9に示 す。これは,試験体に貼付した 3 か所の 3 軸ひずみゲージで測定した値を用いて,
ロゼット解析を行ったものである。図 2-9 より,上部,中央,下部ともに概ね 45°
0 10 20 30 40
0 25 50 75 100 125
ALW1 AL1 W1
(mm)
P (kN)
3 3 3
0 10 20 30 40
0 25 50 75 100 125
ALW1 AL1 W1
(mm)
P (kN)
3 3 3
の傾きとなっていることから,試験体中央においてせん断力が卓越していることが 確認できた。また,引張方向と圧縮方向のひずみ量は実線と点線の長さで示してい るが,これに関しても引張方向と圧縮方向においてほぼ同等のひずみ量であり,ひ ずみ量はせん断耐力に達しておらず,曲げ破壊であることがわかる。この結果は,
すべての試験体において同様のことがいえた。
図 2-9 曲げせん断実験ひずみ性状(AL3)
曲げせん断実験の破壊性状を写真2-2に示す。AL3では写真2-2(a)のように,3P/4 のかかる支点において局部座屈を起こしており,W3では写真2-2(b)のように3P/4 の支点で荷重が大きくかかったために試験体上部での割れを起こしている。ALW3 においては写真2-2(c)のように3P/4支点およびP/4支点での逆対称曲げ状態が明確 に現れている。
(a)AL3
(b)W3
(c)ALW3
写真 2-2 曲げせん断実験試験体最終破壊状況
1000
2.4 圧縮実験
2.4.1 短柱圧縮実験概要
使用する材料および試験体詳細は,前項で使用した合成構造柱の実験であるシリ ーズ1と同様に,図2-1,表2-1,表2-2に示す。試験体は,アルミニウム箱形断面 材(AL1)およびスギ製材(W1)の単一柱と,AL1 に W1 を挿入した合成構造柱
(ALW1)の3種類を用いる。また,実験時に測定したW1の含水率は平均10.6%
(標準偏差SD3.25%)であった。短柱の材長HはすべてALWの断面寸法100×100 の3倍であるH=300mmとし,試験体数はW1を12体,AL1,ALW1をそれぞれ 9体ずつとし,合計30体の試験体において実験を行った。
短柱圧縮実験装置を図 2-10 に示す。実験は 1000kN 万能試験機を用いて平押し 載荷とした。なお,試験体の軸方向に均等に加力するため試験体の両端に加圧盤を 設置し,試験体と加圧盤との定着のために仮押しを行った。続いて連続載荷により,
最大荷重後,その1/3の荷重値を示した時点で除荷した。変位測定では,変位計(ス
トローク 50mm)は試験体から 40mm 離して四隅に設置し,測定を行った。試験
体のひずみは図2-11に示すようにAL中央に1か所ずつ,4面に単軸ひずみゲージ を貼付して測定を行った。ただし,Wはひずみの測定を行っていない。
図 2-10 短柱圧縮実験装置
図 2-11 短柱圧縮実験試験体ひずみゲージ貼付位置
300
150
150 100
50 50
Strain1 Strain2 Strain4
Strain1 Strain2
Strain3
Strain4
2.4.2 短柱圧縮実験結果および考察
短柱圧縮実験における実験結果一覧を表2-5に示す。Nmax範囲は,短柱圧縮実 験で得られた試験体1体ごとの最大耐力であり,それらの平均値をNmaxとする。
変動係数(%)はそれぞれ AL1:3.67,W1:10.6,ALW1:5.49 であった。そして,AL とWの最大耐力の平均値(Nmax)AL,(Nmax)Wを単純に足し合わせた単純累加耐力 Noを計算し,あわせてALWの最大耐力の平均値(Nmax)ALWをNoで除した累加耐 力比(Nmax)ALW /Noについても算出した。(Nmax)ALW /Noについては,0.97と概ね 1に近い値を示したため,合成構造柱の最大耐力は,各単一柱(AL,W)の最大耐 力を足し合わせた単純累加耐力によって評価可能であることが,前項と同様に確認 できた。また,表 2-5 では(Nmax)ALおよび(Nmax)Wを No で除した値を,累加耐 力に対する単一材の耐力比として求めている。これよりALの耐力は38%程度,W
の耐力は62%程度を占めていることがわかり,短柱圧縮実験においてNoに占める
単一材の耐力の割合はWが支配的であるといえるため,短柱におけるALWの耐力 はWの耐力により決定することが考えられる。さらに(Nmax)ALWを(Nmax)Wで除 した値を,Wに対するALWの耐力増加率として算出したところ,WをALで覆う ことにより,ALWの最大耐力はWの最大耐力に対して1.6倍程度の耐力増加を示 していることが確認できる。
一例として,短柱圧縮実験における単一柱および合成構造柱の荷重-変位関係を図 2-12に示す。これは,AL,W,ALWの比較のためそれぞれ代表的な3体の試験体 について示したものである。図2-12より,AL,W,ALWの順に最大耐力が高くな っていることが確認できる。Wについては,繊維方向の割れによる破壊で最大耐力 が決定し,Wの不均一性もみられたが,AL はすべての最大耐力がほぼ同一でばら つきもなく安定していることがわかる。また,ALW においては最大耐力後の耐力 低下がAL,Wの単一柱よりも緩やかとなっており,Wのような大きなばらつきも 現れず,ALW とすることで耐力,変形性能ともに単一柱よりも向上したものとい える。これらの結果を踏まえて,ALW では変形能力を維持したまま,破壊までの 耐力低下を少なくすることができると判断される。
初期剛性に関しては大きな違いはみられなかったが,AL1→W1→ALW1 の順で 大きくなる傾向はみられた。
表 2-5 短柱圧縮実験結果一覧
図 2-12 短柱圧縮実験の荷重-変位関係
短柱圧縮実験におけるAL1およびALW1の代表的な材軸方向ひずみ分布性状を 図2-13に示す。試験体はAL1,ALW1とも各9体あるが,ひずみ分布はほぼ同様 な傾向を示していた。ここでは,AL1,ALW1に貼り付けた単軸ひずみゲージより 計測したひずみ分布から部材に導入されるひずみ量について検証する。グラフは最 大耐力時までのひずみ量を示している。
まず,最大耐力時のひずみ量について確認したところ,AL1 では-2500~-4500μ 程度であるのに対し,ALW1においては-2400~-4300μ程度となっている。ここで,
AL1とALW1の最小ひずみ量と最大ひずみ量を比較すると100~200μ程度の差が 存在し,最大耐力時はAL1のひずみ量がALW1のひずみ量を上回ることが確認で きる。このことから,AL1のみではひずみ量が一定値に到達したところで局部座屈 を起こしてしまったが,ALW1においては AL1 の内部をW1 で埋め込んだことに
0 10 20 30
0 100 200 300 400 500
600 ALW1
W1 AL1
N (kN)
(mm)
AL1(9) 186.5~208.7 201.0 W1(12) 264.7~369.2 322.0 ALW1(9) 480.0~556.0 508.0 -
(Nmax)ALW (Nmax)W
523 0.97 0.38 0.62 1.6
(Nmax)W No
試験体 Nmax
(kN) No
(kN)
(Nmax)ALW No
(Nmax)AL No
Nmax範囲 (kN)
より,AL1のひずみ量をW1へ伝達し,AL1の許容範囲を補っていることが考えら れる。そのためAL1ではひずみ量が増大し,ALW1ではAL1のみで伝達されるひ ずみ量よりも小さくなっていることが推察できる。
また,AL1 で最大耐力後は最大耐力時のひずみ量よりも大幅に増大しているが,
ALW1 においては最大耐力時のひずみ量とほぼ同等かそれより小さいものとなっ ている。これは,AL1では局部座屈により最大耐力が決定し,また内部が空洞のた め最大耐力後も徐々にひずみ量が進行しているが,ALW1 については最大耐力後,
内部のW1により局部座屈を防ぎ,ひずみ量も減少に至っているものと考えられる。
以上のことより,ALWにおける最大耐力以降のひずみ量については,AL内部に Wを挿入したことでひずみ量が少なくなったことから,圧縮応力に対する補剛効果 が確認できた。
図 2-13 短柱圧縮実験における AL1 および ALW1 のひずみ分布性状
-6000-4000-20000 0 2000 4000 6000 100
200 300 400 500
600 ALW2-1
Strain()
Load (kN)
ALW1
-6000-4000-20000 0 2000 4000 6000 100
200 300 400 500 600
Load (kN)
Strain() AL2-1AL1
Strain1 Strain2 Strain3 Strain4
Strain1 Strain2 Strain3 Strain4