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中国の農村と都市における就業率およびその決定要因 ──

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(1)

  問題意識と研究課題

に︑

ノーマル︶を提起し︑それまでの高度成長路線を修正し年率七%程度の中位成長を目標に掲げている︒急速な少子高い︑口︵歳︶の比率が二〇一〇年頃にピークを迎え︑高度成長を支

る︒ め︑広東省珠江デルタで企業の募集定員が満たされないとし︑来︑

し︑の需給ひっ迫による急激な賃上げが続いている︒労働の供け︑

め︑やがて経済成長の停滞を余儀なくされ︑中所得国から高所得国への移行も実現できないでいる状態︑すなわち︑

中所得の罠

に陥りかねないとの懸念が根強くある︒ 確かに︑中国の生産年齢人口の増加は一九九〇年代後半以降減速する傾向にあり︑二〇一四年にマイナスに転じて

中国の農村と都市における就業率 およびその決定要因  

──

CH IPS 1988 〜 2010

に基づく実証分析──

厳  善平

●●●●●   │││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││││中国農業大転換

(2)

た︵︶︒割を担う労働の供給制約が強まれば︑経済成長率がマイナスの影響を受けるのは必至のことであろう︒ところが︑今の中国で︑生産年齢人口の数だけでは語り尽くせない現象も同時に起きている︒働く能力を持っていながら労働市場に参入しない人が増え続けている︒生産年齢人口のうち︑労働市場に参加する人の比率︑すなわち︑労働参加率は全体として低下する傾向にあるということである︒

中所得の罠

を回避し先進国の仲間入りを果たすには︑中国は当面︑持続的な経済成長を追求せざるをえない︒産業構造のグレードアップ︑イノベーションの促進︑あるいは少子高齢化対策の強化はいうまでもなく重要だが︑労働参加率の安定維持も欠かせない重要な政策課題だと指摘されている﹇蔡・王

2004

︑陸・蔡

2013

︑郭・車

2011

﹈︒ ところが︑市場経済のなかで︑労働参加率が所得水準の上昇に伴う人々の時間配分に対する選好︑進学率︑人口の年齢構造︑定年・年金制度などによって決定され︑人為的調整の効かない要素が含まれている︒また︑様々な要素の労働参加率に及ぼす影響の有無や強弱も場所や年代とともに変わったりする︒有効な対策を考案するにあたっては︑労働参加率の実態を把握しその決定要因を明らかにすることは非常に重要である︒ 中国では︑日本の総務省が実施しているような月次労働 力調査がなく︑労働参加率や就業率︑失業率といった労働に関する体系的なデータが整備されていない︒これまで主として人口センサス︑全国規模のサンプリング調査に基づいた︑非連続的な統計指標が推計されているだけである︒例えば︑張・呉﹇

2003

﹈は二〇〇〇年人口センサスの個票タ︵︶︑組﹇

2012

年人口センサス︑馬﹇

2014

﹈は二〇一〇年人口センサスの集計資料に基づいて︑年齢階層別・性別・農村都市別にみた労働参加率を算出し︑中国の労働参加率の特徴を明らかにした︒

Maur er-F azio , Hughes and Zhang

2006

は︑年︑一九九〇年および二〇〇〇年人口センサスの個票データ︵一部︶を用い︑農村と都市における労働参加率の変化傾向を様々な角度から描き出し︑

Maur er-F azio , Hughes and Zhang

2009

参加率を推計し︑それぞれの決定要因を計量分析した︒さに︑

Co nnel ly, Maur er-F azio and Zhang

2014

率︑

Maur er-F azio et al.

2011

る既婚女性の労働参加率について同じデータセットを用いて分析し︑多くの興味深い事実発見を示している︒一九九〇年と二〇〇〇年人口センサスの個票データ︵一部︶を利用して都市部における女性の出生行動の労働供給に及ぼす効果について考察した

He and Zhu

2015

﹈もある︒

(3)

ほかに独自の大規模調査の個票データを利用した下記の先行研究も挙げられなければならない︒⑴都市世帯のサン調査︵蔡・

2004

退因︑国家統計局の都市家計調査︵一九八八〜二〇〇二年︶を利用した姚・譚﹇

2005

﹈では都市部における既婚女性の労働参加率︑⑶同じ都市家計調査︵一九九三〜二〇〇九年︶を使った楽・葉﹇

2015

﹈では都市部における定年退職者の再響︑

CH IPS 1995

2002

を用いた呉

2010

では都市部における女性の就業・因︑

CH IPS 1988

1995

2002

Liu

2012

率の関係︑

The China Health and N utr itio n S ur vey

CH NS 2006

︶の個票データを利用した

Chen et al.

2014

﹈︑⑺東部九省を対象とした社会調査︵二〇〇二年︶に基づいた沈・章・鄢﹇

2012

﹈で女性の労働参加と個人属性や家庭環境との関係など︒ところが︑日本語による同類の中国研究は今のところ非常に少なく︑特定の地域や年度に関するものがほとんどで

﹀1

︿ 上述した問題意識および代表的な先行研究の現状を踏まえ︑本稿では︑中国社会科学院や北京師範大学等が五回にわたって行った農村と都市の両方をカバーする全国調査の個票データを活用し︑農村と都市における就業率の長期的 推移を多面的に描き出し︑就業率の決定要因を地域︵省・区・︶︑る︒そうすることにより︑就業率の変化およびそのメカニズムをダイナミックに捉えることができ︑先行研究で欠落している︑動態的視点︑農村と都市の双方を統一的に理解する視点を補完することができると考える︒また︑前述の馬﹇

2009

﹈︑呉﹇

2010

﹈︑

Liu

2012

C H I P S

データを利用し就業率を実証分析するものが全く見当たらないことも︑本研究に思い至った重要な理由である︒ 以下︑まず利用するデータの構造と特徴を述べ︑就業率に関する記述的分析を行う︒続いて地域および世帯の就業率︑個人の就業・不就業の選択に関する決定要因の計量分析を行う︒最後に︑実証分析から得られた事実発見を踏まえながら︑それぞれの政策的含意を考える︒

  CHIP調査にみる就業率の推移

は︑

C H I P S

し︑稿かわる調査項目の構造を明らかにする︒その上で︑就業率の定義を示し︑就業率の推移およびその主な特徴について多面的に考察する︒

(4)

㈠   CHIPSデータの構造

C H I P S

とは︑

Chinese Household Inco me P roject S ur vey

る︒

C H I P S

は︑国社会科学院が一九八八年︑一九九五年と二〇〇二年に国家統計局の協力を得て全国の農村と都市の家計調査システムを利用して実施したものと︑北京師範大学が二〇〇七年から二〇一〇年の四年間にわたってほぼ同じ方法と調査票る︒

CH IPS 1988

1995

2002

が︑

CH IPS 2007

2010

れて 2

︿

CH IPS 1988

1995

2002

は︑調市・自治区︵以下︑省市と略す︶は︑農村部がそれぞれ二八︑九︑九︑〇︑一︑る︒

CH IPS 2007

2010

は︑調れたものの︑農家と都市の世帯員数はそれぞれ三万一六二〇人・二万六二一六人と︑一万四六六二人・一万二八六人となっており︑大標本調査という点では変わりがない︒

C H I P

調が︑調票には調査対象世帯の全員の家族構成と個人属性︑一六歳以上人口の就業と収入︑子供の教育︑世帯単位の収支構造など︑各世帯の客観的主観的状況を表す様々な指標が盛り 込まれている︒調査項目によりそれぞれの正確さにばらつが︑

C H I P S

データを用いた研究成果が蓄積されて 3

︿ もちろん︑難点もある︒社会経済が急激に変化してきた中国にあって︑それをきちんと捕捉するために︑調査票の設問や選択肢のカテゴリーを適宜に変えていかざるを得ない︒それは結果的に様々な現象の経時的変化を比較分析する際の邪魔になる︒例えば︑教育水準︑就業・不就業の状態︑職業や従事する業種などに関して︑各調査の設問またる︒で︑個々の調査項目の中身を精査し最大公約数で設問に答えるための選択肢を統合して新たな指標やデータセットを作成する必要がある︒

㈡   CHIP調査の対象世帯員の存在状態

本項では︑各調査における世帯員の調査時の存在状態を就業︑退職︑在学︑失業︑家事労働とその他の六項目に統合しその内訳を割り出す︒表

昇傾向である︒農家人口には国の定年制度が適用されず︑ 低下する傾向にあるのに対して︑農家世帯のそれは高く上 著に異なっている︒都市世帯では就業者割合が低くしかも 員と都市世帯員の存在状態が調査の対象期間にわたって顕 計したものである︒同表から読み取れるように︑農家世帯

1

はそれらを農村都市別に集

(5)

表1 中国の農村都市における世帯員の存在状態別構成比

(%)

1988

1995

2002

2007

2010

就業者

退職者 在校生 失業者 家事労働者 その他

57 . 5 0 . 3 2 . 6 2 . 3 37 . 4

61 . 0 0 . 3 21 . 5 0 . 2 4 . 9 12 . 2

59 . 8 0 . 4 20 . 7 1 . 8 7 . 5 9 . 8

65 . 9 0 . 5 21 . 1 0 . 8 7 . 9 3 . 7

68 . 7 1 . 0 17 . 8 0 . 8 8 . 6 3 . 1

総人数(人)

51 , 122 34 , 495 37 , 969 31 , 620 26 , 216

就業者

退職者 在校生 失業者 家事労働者 その他

56 . 7 13 . 7 19 . 0 1 . 9 2 . 0 6 . 7

51 . 4 18 . 3 18 . 6 6 . 1 2 . 3 3 . 4

49 . 1 21 . 5 19 . 0 5 . 3 2 . 5 2 . 6

49 . 5 27 . 9 14 . 8 4 . 2 2 . 4 1 . 3

総人数(人)

21 , 696 20 , 024 14 , 662 10 , 286

注:上段は農家世帯、下段は都市世帯を表す。

失業登記も行われないため︑農家人口に対する退職者も失業者もわずかなシェアしか持っていない︒その人たちはほとんど学校や病院︑地方政府等で務めた元職員だろうと考えられる︒また︑農村部では二人以上の子供を持つ家庭が多くその子供たちが小中学校等に通っていることが同表から推測できる︒興味深いのは︑都市世帯の状況がちょうど農家世帯のそれと対照的な形となっており︑就業率も在校生割合も下がる一方で︑退職者割合が急上昇している︑ということである︒

㈢   属性・教育・地域にみる就業率の推移

労働力の利用状況を表す統計指標として労働参加率がよく利用される︒労働参加率とは生産年齢人口に対する就業人口︑および就業する意思があるものの収入に伴う仕事に就けていない失業者の両方の比率を足し合わせたものとして定義されている︒また︑生産年齢人口とは普通一五歳から六四歳の人口から障害者や入院患者などを除外した者とされ︑それに占める就業者の割合が就業率︑生産年齢人口から学生や主婦︑働く能力を持っているにもかかわらず働く意思のない︵就活をせず労働市場から退出した︶者を差し引いた者に対する失業者の割合が失業率と呼ばれる︒労働参加率と失業率は必ずしも同じ方向で変化するとは限らない︒例えば︑景気が回復に向かう過程で︑求職をあきら

(6)

めた人達も労働市場に参入し︑それがゆえに︑労働参加率も失業率も共に高まることがある﹇張・呉

2003

﹈︒ ところが︑本稿で利用するデータは︑専門的な労働調査からではないため︑労働市場からの退出者に関する情報がなく︑厳密な就業率の算出も困難である︒また︑農家世帯員に関してはそもそも定年や失業といった概念自体が適用され難い︒そこで本稿では︑比較的正確に捕捉できる

業者

に焦点を当て︑それに基づいた就業率の推定︑就業率および就業・不就業の決定要因について分析することにする︒

C H I P

調め︑経時的変化傾向を考察する際に︑いずれの調査でも対象に選ばれた八省市だけを対象とする必要が 4

︿︒一方︑就業選択または就業率の決定要因を計量分析する際に︑すべての対象地域の全サンプルを対象として分析することが可能であろう︒

まず︑中国における労働参加率および就業率の推移と全

C H I P

調査︑観する︒図

削減で大量の失業者が発生した二〇〇二年を除くと︑労働 五年間の推移を表すものである︒国有企業改革に伴う人員 割合︵労働参加率︶の一九九五年から二〇一〇年までの一 率︶と︑就業者に失業者を加えたものの対一六歳以上人口

1

は一六歳以上人口に占める就業者割合︵就業 べきである︒ ず︑あくまで︑全体としての変化傾向を示すものと理解す 映したものではない︒そのため︑両方をプールして得られ 都市のサンプル数は対象地域の農村と都市のウェートを反 る︒し︑

C H I P

調 者のギャップ︵失業率ではない︶が比較的小さい︑といっ 参加率も就業率も同期間中低下する傾向にあり︑また︑両

%︑%︑り︑ %︑ 前も比較的近い︒一九九五年︑二〇〇〇年︑二〇〇五年と 計値は二〇〇〇年代に入ってからほとんど同じで︑それ以 上がったものである︒人口センサスと国家数据庫による推 五歳以上人口に対する経済活動人口の割合︶を加えて出来

2012

﹈︑値︵ 加率に︑人口センサスから推計された労働参加率﹇課題組

2

C H I P S

と︑ いることに変わりがないとみてよいであろう︒また︑農家 それでも︑同じ期間中︑労働参加率が大幅に下がってきて それに比べて小さめに設計されていたためと考えられる︒ 調査では労働参加率の高い農家世帯のウェートが母集団の

I P

調二︑る︒

C H I P 1

C H

(7)

. . 

.  . 

.  .  . 

. 

. 

CHIPS/農家世帯 CHIPS/都市世帯 人口センサス 国家数据庫

(%)

(年)

図2 中国の労働参加率の推移

. 

. . 

.  . 

労働参加率 就業率

(%)

(年)

図1 中国の労働参加率と就業率

(CHIPS/

省市)

. 

. 

. 

. 

.  . 

(%)

農村・男性 都市・男性 農村・女性 都市・女性

(年)

図3 農村都市別・男女別就業率の推移(

省市)

然とした差異があると分かる︒農家世帯の労働参加率は一九八八年から二〇一〇年の二〇年余年にわたってほぼ同じ高い水準を保ったのと対照的に︑都市世帯のそれは一九九五年調査でも一〇ポイント強低く︑しかも︑そのギャップがますます広がり︑二〇一〇年には二〇ポイントに達した︒この間の中国では︑労働参加率は全体として下がり続けてきたが︑その主因は都市ろう︒ 次に︑調査時に就業しているとの回答者を一六歳以上人口で割った就業率をさらに男女別に集計し︑それを図

るか否か︑全人口に対する高齢人口比率の上昇 うした傾向的変化は︑定年退職制度の適用があ が二〇〇〇年代以降五割を割り込んでいる︒こ 農家世帯に比べて大きく︑⑷都市女性の就業率 へと広がる傾向だが︑⑶都市世帯の男女格差が 帯のそれを大きく上回っている︑⑵農家世帯に つまり︑⑴農家世帯の就業率は男女とも都市世 ような傾向的変化を見て取ることができよう︒

3

に示す︒同図からは以下の

(8)

           

/農村 /農村 /都市

/都市

(%)

(歳)

4‒1

 男性の年齢階層別就業率            

/農村

/農村 /都市 /都市

(%)

(歳)

4‒2

 女性の年齢階層別就業率 すなわち高齢化のう︒都市部では︑六〇歳以上の男性あるいは五〇歳以上の女性︵ホワイトカラーが五五歳以上︶の割合が上昇すれば︑就業率もおのずと下がるのである︒ 第三に︑農村都市における男女別就業率を年齢階層別で考察する︒一九九五年から二〇一〇年の状況︵八省市︶を表す図

4

から三つの特徴的な事実を指摘することができよう︒ は︑都市部のほぼすべての年齢層で就業率が低下しているのに対して︑農村部では二四歳以下の若年層で就業率が下がり︑六〇歳以上の高齢者で上がっているのを除くとほぼ安定的に推移している︒⑵女性に関しては︑男性のそれと極めて似通った傾向が観測されるが︑それぞれの上げ下げ幅が大きい︒⑶男女︑農村都市を問わず︑二四歳以下人口の就業率が大幅に下がった︒高校や大学への進学率が上昇したためであろう︒ いずれにせよ︑就業率の変化は農村と都市︑異なる年齢層や男女で︑同じペースで進行したのではない︒若年層の労働市場への参入が遅延し︑青壮年の都市女性の労働市場退え︑た︑といった特徴が共通して観測されるのである︒ 第四に︑教育と就業率の関係について表

一九九五年にかけて一旦下がったものの︑その後に再び上 それと対照的に︑⑷農家世帯員の就業率は一九八八年から 帯員の就業率がすべての学歴層において低下傾向にある︒ ば︑農家世帯員の就業率が都市世帯員より高い︒⑶都市世 学歴を持つ者ほど︑その就業率も高い︒⑵同じ学歴であれ れぞれにおける就業率は学歴と正の相関関係を持ち︑高い 以下の四点が挙げられよう︒⑴都市か農村かを問わず︑そ 相違を読み取りにくくなっているが︑大まかな特徴として 明する︒多くの数字が併記されていて︑それぞれの詳細な

2

に基づいて説

(9)

表2 農村都市別、学歴別にみる就業率の推移

省市、

16歳以上)

(%)

1988

1995

2002

2007

2010

農村・大卒以上

都市・大卒以上

65 . 4 73 . 5

32 . 9 68 . 9

76 . 5 79 . 8

89 . 5 71 . 3

農村・大専卒

都市・大専卒

84 . 5 58 . 7 85 . 1

57 . 2 78 . 8

79 . 9 80 . 0

89 . 4 74 . 0

農村・高卒

都市・高卒

94 . 0 73 . 7 73 . 5

71 . 0 61 . 2

87 . 1 62 . 9

90 . 5 57 . 6

農村・中卒

都市・中卒

95 . 9 88 . 4 71 . 8

81 . 6 50 . 2

89 . 5 47 . 0

89 . 0 41 . 4

農村・小卒以下

都市・小卒以下

92 . 9 80 . 0 32 . 2

72 . 3 19 . 2

80 . 6 18 . 3

74 . 4 21 . 2

注:調査対象が共通する

8

省市を対象とした集計結果である。

全体

. 

男性

女性

. 

                 

(%)

(年)

5

-

1

 都市部退職者比率

省市)

. 

. 

. 

歳+

           

(%)

(年)

5

-

2

 都市部年齢階層別退職者比率

省市)

昇している︒要するに︑人々の受けた教育の多寡がそれぞれの就業行動に強く影響しているということができる︒ 第五に︑就業率と深い関係を有する退職率︑すなわち︑退職者の生産年齢人口に対する比率を取り上げて考察する︒前述のように︑農家世帯には定年退職制度が適用されておらず︑農業就業の場合にはそもそも定年が存在しない︒そこでここでは︑都市世帯に焦点を絞って性別︑年齢階層別にみた退職率の推移る︒

るのだが︑退職者比率はこの一 業率の低下と裏返しの関係にあ 前述した都市世帯における就 たものである︒ を対象とした集計結果で描かれ のカバーする八省市の都市地域

CH IPS 1995 2002 2007 2010

5

(10)

.  . 

. 

. 

. 

農家世帯

都市世帯

(%)

(年)

6‒1

16‒24歳人口在校生割合

(8省市)

/農村

/農村

/都市

/都市

(%)

(歳)

    図

6‒2  年齢別在校生割合の

農村都市比較(

省市)

五%から二〇一〇年の上昇した︒中でも女性における退職者の比率が高く︑二〇一〇年に男性のそれを九ポインとなった︒つまり︑一六歳以上の都市女性で職に就いていない者は一〇〇人中三五人もいるという計算である︒また︑年齢階層別でみると︑四〇代後半の退職者比率が同期間中半分以上減ったほか︑五〇代以上の各年齢層で退職者比率が上昇していることが分かる︒中でも六五歳以上の二〇ポイントアップが際立つ︒背景に︑高齢化が急進しつつあり︑社会 保障制度の整備に伴い高齢者が定年後働かなくても暮らしていけるようになったことがあると思われる︒ 第六に︑労働市場に参入する前の学校教育が就業率に及る︒図

二〇一四年に四五四%へと急上昇したので 5 だった一八歳人口に占める大学進学者の比率︵進学率︶は し︑ れ始めた一九九九年以降の中国では︑三年制の大学専科を 的にこの年齢層に該当しよう︒高等教育の産業化が推進さ がって︑高校︑専門学校︑大学等に進学している者は基本 い︒ 教育は一九九〇年代に入ってほぼ普及しており︑労働法で 校生比率で描いたものである︒中国では︑中卒までの義務 者の割合︑および農村都市別︑調査年別でみた各年齢の在

6

は一六歳から二四歳人口のうち︑在校生と答えた

︿ こうした時代を背景に︑在校生割合は農村と都市の両方で共に大きく上がった︒特に農家世帯における高校以上のつ︒である︒都市世帯の増幅は比較的小さいものの︑農家世帯との大きなギャップが存続していることに注意が払われるべきであろう︒ 各年齢における在校生割合を農村と都市で比較してみる

(11)

と︑両者間に構造的な違いがより一層明確に現れてくる︒一九九五年から二〇一〇年の一五年間に︑農村も都市も若者の教育を受ける機会が大きく増大した︒しかしその一方で︑都市が農村にはるかに勝っている状況は全く変わっていない︒一六〜一九歳の農家子弟における在校生割合は二%︑%︑%︑が︑%︑%︑%︑四%に遠く及ばない︒同じ二〇一〇年の農村と都市における年齢別在校生割合を比べてみると︑一八〜二二歳での格る︵%︶学進学における農村都市格差が存続していることを示すものと理解できよう︒農村都市間の進学率格差は結果的に両者間の就業率格差を生み出したのであろう︒

  就業率および就業・不就業の決定要因

に︑は︑生産年齢人口に対する就業人口の比率︵就業率︶は全体として下がり続けてきているが︑農家世帯の就業率が比較的高い水準を維持しているのに対して︑都市世帯のそれが速く低下し︑中でも女性の労働市場からの退出が際立って多い︒高等教育の発展に伴い若者の労働市場への参入が 遅延していること︑高齢化の急進に加え定年制度改革が遅れていることもあり︑早々に都市労働市場から退出した者が増加していることも大きな理由と考えられよう︒ほかに個人の属性や世帯のライフサイクル等も人々の就業・不就業に重要な影響を及ぼしているはずである︒本節では︑地域︵省市︶と世帯レベルの就業率︑個人レベルの就業・不

C H I P S

析する︒

㈠   仮説と説明変数

前述のように︑中国の労働参加率または就業率に関する先行研究では︑都市部とりわけその中の既婚女性に焦点がく︑齢︑性︑準︑政治身分などの人的資本︑さらに︑育児や老親の介護といった家庭環境の労働参加率または就業率に与えた影響を様々な計量モデルで分析し︑その中から得られた結果を考察するという方法が広く採られている︒ところが︑これらの研究で利用されたデータはほとんど二〇〇〇年頃までのものであり︑

Chen et al.

2014

﹈で利用された

CH NS 2006

が最も新しい︒本稿では︑研究の対象期間を二〇一〇年に拡張するだけでなく︑農村と都市の両方をカバーし︑さらに︑既存研究では見当たらない地域︵省市︶と世帯レベルの就業率の決定要因に関する計量分析も試みる︒それによ

(12)

り中国全体の就業率の決定要因を多層的に考察することができる︒ 労働経済学の考えによれば︑個々人が労働市場に参入するかどうかに対して︑市場の期待賃金が重要な役割を果たす︒賃金が高ければ高いほど︑収入増からの効用が時間を犠牲にしたことに生ずる不効用を上回れば︑労働供給は増え続ける︒しかし︑賃金が十分に高くなった後に︑時間を犠牲にしたことからの不効用が収入増からの効用を下回るようになれば︑労働供給は減少する︒また︑個々人の労働供給は性別︑年齢︑民族といった属性︑教育や政治的身分のような人的資本ばかりでなく︑それぞれの属する世帯のライフサイクル︑例えば︑幼児︑児童︑高齢者の有無︑あるいは世帯員の年齢構成︑さらに世帯主の収入からも影響を受ける︒広く知られている現象として︑世帯主︵夫︶の収入が高いほど︑配偶者︵妻︶の就業率が低下し︑乳幼児のいる世帯では母親の就業率が下がるということがある︒ これまでの記述統計分析および労働経済学の考えを踏まえ︑本稿では︑地域︵省市︶と世帯の就業率︑それに個人の就業・不就業の決定要因に関して下記のような仮説を立て︑それぞれについて

C H I P S

データで計量分析する︒

る︒生産年齢人口割合が高い地域ほど就業率も高く︑また︑高齢化が進む地域ほど就業率が低い︒これは世 帯レベルにおける就業率の決定にも当てはまる︒

仮説

高校・大学教育の拡張は就業率に負の影響を及ぼす︒若者の在学者割合が高い地域ほど︑また︑若者の在学者割合が高い世帯ほど︑そこにおける就業率が下がる︒

仮説

教育は人的資本を表すものであり︑就業率にプラスに作用する一方で︑非常に高い教育を受けた階層は就労よりもレジャーを選好する︒前者であれば︑教育水準は就業率を高め︑後者であれば︑教育水準は就業率を低めるということになる︒ 仮説

個人の属性や人的資本の就業・不就業に及ぼす影響に関して︑⑴就業する確率が加齢とともに上昇するが︑一定の年齢を超えると低下に転ずる︑⑵女性に比べて男性の就業する確率が高い︑⑶教育が就業する確率にプラスに働き︑高学歴者であるほど就業する確率が高い︒ ほかに︑共産党員であるかどうか︑既婚者であるか︑少数民族であるか︑農村都市または東部・中部・西部地域のどちらに居住しているか︑という要素も当然ながら就業・不就業に影響すると考えられる︒以下︑個々の仮説について計量モデルで検証する︒

(13)

7‒6

 就業率と 失業率(都市)

R² = .

R² = .

R² = .

R² = .

R² = .

R² = .

7‒1

 就業率と男性割合

7‒2

 就業率と 平均教育年数

7‒4

 就業率と

16‒59歳人口割合

7‒5

 就業率と

60歳以上人口割合

7‒3

 就業率と

16‒24歳

在学者割合

㈡   地域 ︵省市︶ レベルにみる就業率の決定要因

に︑省・区・間︑存在する︒就業率に関しても同じことがいえる︒本項の狙いは省市レベルにおける就業率の決定要因を明らかにが︑ち︑率︑

C H I P

調い︒体的には以下の通りである︒ 就業率を一六歳以上人口に占める就業者の割合と定義し︑それを各省市の農村都市別で集計する︒また︑説明変数として︑男性割合︑一六〜二四歳人口に対する在学者割合︑成人の平均教育年数およびその二乗︑一六〜五九歳人口割合︑六〇歳以上人口割合を作成する︒ダミー変数︵コントロール変数︶として東部・中部地域︑農村都市︑調査年次を加える︒ 就業率とこれらの変数との相関関係を確認するため︑

との相関関係は明瞭ではない︒ただし︑こうした関係は を持っている︒また︑一六〜五九歳の生産年齢人口割合 どと強い負の相関関係を有するが︑男性割合と正の関係 成人の平均教育年数︑若者の在学者割合︑高齢者割合な

7

を作成してみた︒一見して分かるように︑就業率は

(14)

表3 地域(省市)レベルにみる就業率の決定要因(OLSモデル)

説明変数の平均値 偏回帰係数 農家世帯 都市世帯 農家世帯 都市世帯

(定数)

26 . 041 31 . 596

男性割合

50 . 6 49 . 2 0 . 193 . 602 16

24

歳人口に対する在学者割合

20 . 6 57 . 1

‒0

. 320 *** . 032

平均教育年数

6 . 5 10 . 8 6 . 336 6 . 785

平均教育年数

43 . 9 117 . 2

‒0

. 733

‒.

295 16

59

歳人口割合

68 . 0 71 . 5 0 . 507 ***

‒.

280 60

歳以上割合

8 . 6 14 . 1 0 . 318

‒1

. 092 ***

東部地域

0 . 37 0 . 4

‒1

. 883 1 . 308

中部地域

0 . 36 0 . 4

‒1

. 160

‒.

861

1995

年調査

0 . 22 0 . 28 4 . 573 *

2002

年調査

0 . 26 0 . 30 2 . 457

‒10

. 131 ***

2007

年調査

0 . 10 0 . 23 7 . 782 **

‒9

. 314 ***

2010

年調査

0 . 09 0 . 20 9 . 657 *

‒5

. 714 **

観測数

81 39

調整済み決定係数

0 . 400 0 . 903

注:***、**、*、はそれぞれ%、%、

10

%、

15

%で有意であることを意味し、

東部・中部地域、都市世帯、調査年次ダミーはそれぞれ西部地域、農家世帯、

1988

年調査を基準とする。ただし、都市世帯の調査年ダミーは

1995

年を基 準としている。

複数回の調査結果をプールし︑しかも農村都市を区別せずに観測されたものにすぎない︒地域や調査年︑農村都市といった条件をコントロールしたある︒

れている︒ここで︑図 ルをそれぞれ使っての重回帰分析の結果も整理さ たサンプル︑農村︑都市だけを対象としたサンプ は各変数の平均値が記され︑農村都市をプールし た︑就業率の決定要因の計測結果である︒同表に

3

使

学者割合と就業率の間で有意な相関関係が見られ 顕著に低下する︒対照的に︑都市部では若者の在 割合が高い農村地域ほど︑そこにおける就業率が 第二に︑一六〜二四歳の若者に対する在学者の れる結果とほぼ一致する︒

の︑い︒

7 1

割合の高い地域ほど就業率も高い傾向があるもの 合と就業率との間に正の相関関係︑つまり︑男性 第一に︑農村部と都市部のどちらでも︑男性割 きる︒ と︑以下のような統計的事実を列挙することがで を念頭に置きながら︑表

の推計結果を読み解く

7

から見て取れるイメージ

参照

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