密 教 文 化
『マ ハ ー バ ス ツ』「燃 燈 仏 事 記」試訳(三)
福
井
設
了
110. 歓 喜 す る蛇 神 は、 香 水 を含 む雲 を 空 に撒 き散 らす。 ま た他 に、 幾 百 の 不 可 思 議 な こ と(が あ る)。 さて、 大 目健 連 よ/ア ル チ マ ッ ト王 は、 王 として の大 き な威 力、 王 とし て の 大 きな繁 栄、 た い そ うな荘 厳 を備 え、女 官 を伴 い、 蓮 華 苑 に出 発 した。 〔217〕 100 111. あ の美 しい森 へ 行 った と き、勝 者 の母 な る妃 は友 に囲 まれ て いた が、 101 神 の妻 の よ うに、 妃 は 宝 車 を走 らせ た。 しか し(妃 は遊 戯 の)規 範 を知 っ て い る。 さ て、 大 目腱 連 よ/ス デ ィー パ ー 妃 は友 達 に囲 まれ、 蓮華 苑 で前 後 に橡 台 が あ り、 日除 け が拡 げ られ、 美 しい布 が敷 かれ、 色 と りど りの 絹 布 の飾 りが と り つ け られ、 油 が塗 られ、 香 が 薫 ぜ られ、 散 華 が ま かれ、 欄 干 網 が と りつ け ら 102 れ、 傘、 旗、 幟 が立 て られ た船 で戯 れ て い た。 ス デ ィー パ-妃 が船 に心 を引 か れ て い る とき に、 船 か ら上 陸 した い とい う気 が起 った。 菩 薩 の 威 神 力 に よ って 湖 の真 中 に一 つ の島 が 姿 を現 わ した。(島 は)平 らで、 凹 凸 が な く、金 色 の砂 で覆 わ れ て い た。(ま た)生 えて い る草 は 柔 くて青 く、丁 度、 そ け い 草 の 叢 に も似 て、 孔 雀 の 首 の よ うな姿 で あ っ た。(こ れ らの草 は)踏 む と、地 面 か ら指 四本 の厚 み に しな って しま う。 そ こ の樹 々 は、 可 愛 い果 物 を稔 らせ て い た。 妃 はそ の 島 に上 った。 さて、 大 目腱 連 よ/菩 薩 の母 は、 臥 した り、何 か に座 っ て菩 薩 を生 み は し な い の で あ る。 さて、 大 目腱 連 よ/菩 薩 の 母 は、 胆 汁、 粘 液、 血、 そ の 他 くさ ぐさ の稼 れ た、 不 潔 な(ま ま で)菩 薩 を生 み は しな い。 香 料 を塗 り、浴 み を し、 ま さに清 浄 な体 の菩 薩 を生 む の で あ る。 112. 彼 女 は疲 れ は て た体 で、 大 樹 の枝 に腕 を か け、 体 を もた れ か け て か の光 栄 あ る人 の誕 生 の時 には 安 らか に体 を広 げ る。 103 113. そ の 時、 二 万 人 の天 女 が、 す ぐ さま集 っ て き た。 〔218〕 天 女 らは合 掌 して妃 に優 しい(自 分 た ち の)意 志 を のべ た。 114.「 妃 よ/今、 あ なた は老 と病 を打 ち砕 く気 高 い神 の御 子 を生 も うと して お られ ます。 天 に於 て、 地 に於 て、人 と天 に尊 敬 され、 有 益 で、 慈悲 心 の あ る(御 子 を)。」 115.「 もち ろ ん ご心 配 な さい ます な/私 た ち は、 あ な た の準 備 を致 します。 しな けれ ば な らな い こ と を云 っ て下 さい。 で き をご らん下 さ い。 全 く整 っ て い ます。」 116. そ の時、 四天 王 が従 者 をつ れ て、 す ぐ さま集 っ て き た。 天 上 の編 ん だ髪 を結 い あ げ、 右 側 か ら妃 に近 づ い た。 117. ま た、 す べ て の天 衆 は、 妃 を天 上 か ら取 り囲 み 芳 香 あ る花 環 をたつ さ え て待 して い た。 自身 た ち の従 者 と倶 に き らび や か に見 え た。 正 念、 正 知 の菩 薩 は、 母 を少 しも苦 し め煩 わ さな い で右 脇 か ら生 れ て き た。 118. げ に人 中 の最 勝 の 人 び とは(母 の)右 脇 か ら生 れ る。 虎 の よ うな剛 毅 の心 の 人 が、 総 て こ こ に住 す る(も の な の だ)。 119. 何 故 に勝 者 の母 が最 勝 の人 を生 む とき に、 ﹃ マ ハーバスツ﹄﹁燃燈仏事記﹂試訳(三)
密 教 文 化 (母 の右)脇 が裂 け な いの か 苦 痛 が起 らな い の か 120. 如 来 は(物 質 的 で な い)精 神 的 な身 を もっ て生 れ るの で あ る。 か くの如 く(右)脇 は裂 け な い し、苦 痛 が 起 らな い の で あ る。 121. (菩 薩 は)母 胎 に住 して おお い に倦 き、 地上 を七 歩 進 み 104 そ の 地 域 を眺望 し、大 声 で笑 うの で あ る。 122. こ こで(菩 薩 が)七 歩 あ る く理 由は 何 な の か 105 入 歩 では な く、六歩 で もな い。(こ の こ との)よ って来 る と ころ を聞 け。 〔219〕 123. 一切 世 問 の利 益 者 ・牟 尼 は、 胎 中 に あ っ てお お い に倦 き、 (こ れ が)最 後 の在 胎 で あ っ た の で、 勇 んで、 歩 か れ た の で あ っ た。 106 124. 地上 を七歩 あ ゆ まれ た とき、 天 衆 た ちは 降 りて き た。 (そ し て)牟 尼 は、 四天 王 の腕 に取 り上 げ られ た。 125. そ の 時、 天 上 の花 の霧 雨 が 降 った。 曼 茶 羅 華 の花 粉 が撒 かれ、 天 上 の 白檀(の 香 り)に 満 ち た(霧 雨 が)。 126. ま た歓 喜 した(天 衆 た ち)は、 長 い 間天 上 の最 勝 ・最 高 の香 を薫 じた。 か の無 上 正 等 覚 者 に、 光 彩 を添 え る た め に。 127. 等 しい もの が な い最 勝 の人 が、 何 の た め に地域 を見 られ るの か 私 は こ こに、 そ の伝 え来 る(と こ ろ)、 即 ち、 心 をひ き つ け る教 説 を述 べ よ つ。 107 128. 一 切 の存 在 す る も の の な か で、 天 に於 て、人(界)に 於 て、誰 も知 らな い。 あ の お人 の よ うな誕 生 が あ った とは。 あ のお 人 の よ うな入 胎 が あ っ た と は。
-88-129. 勝 者 の母 の脇 は、 蛍 火 の よ うに 黄金 色 に輝 き、 108 そ の母 か ら一 切 智(の 菩 薩)が、(人 間界 で の)最 後 の生 涯 に 生れ る。 130. (菩 薩 は)生 れ る とす ぐ、最勝 の説者 の心 に 考 えが起 った。 「私 の よ うに勝 慧 の者 は い るの か この教 え を転 ず るた め に。 109 131. 輪 廻 の枷 に よっ て、 私 の よ うに、 苦 悩 して い る者 は誰 な の か 」 こ の義 の た め に、 太 陽 の 子 が、 一 切 の方 処 を仔 細 に見 るの で あ る。 132. か くて、 無 上 の話 手 が、 世 界 の方 処 を眺 め、 幾 千億 の天 衆 を見 る。 こ の こ とに よ っ て(菩 薩 は)笑 うの で あ る。 〔220〕 110 133. 菩 薩 が 生 れ た 時、 魔 神 衆 は こ う云 っ た 「四 洲 の 大財 宝 を持 つ、 世 界 の王(=転 輪 聖 王)に な られ ま し ょ う。」 134. こ の時(菩 薩 は)笑 っ て云 っ た。 「魔 衆 が私(の 存 在 意 義)を 知 るこ と は不 可 能 で あ る。 私 は最 勝 の人 間、 即 ち、 一 切 智 ・一切 照 見 者 とな る で あ ろ う。」 135. こ の よ うに こ の こ とを、 卓 抜 した教 師 た ちが 宣 言 して い る。 即 ち、 獅 子 の よ うな(心 を持 った)、 人 び との教 え が説 かれ た の で あ る。 111 136. 花 咲 く娑 羅 樹 に体 を免 たせ か け な が ら、立 っ た ま ま で(菩 薩 の 母 は)、 彼 の勇 者 を生 ん だ。 か の無 双 の勝 者 を私 は賞 讃 す る。 137. 生 れ た ば か りの善 逝 は、 安 平 足 で、 大 地 に降 りた たれ た。 112 七 歩 あ ゆ ん で、(世 の)あ らゆ る方 処 を観察 され た。 138. 菩 薩 が 歩 く とき、 うち わや 日傘 が、 ひ と りで彼 に従 っ て行 く。 ﹃ マ ハーバスツ﹄﹁燃燈仏事記﹂試訳(三)
密 教 文 化 最 勝 の賢 者 の体 に、 虻 や蚊 が、 とま らな い よ うに。 139. 善 逝 が 生 れ た と き、 天衆 が、 まず、 勝 者 を取 り上 げ た。 そ の あ とで、 人 び とが、 無 双 の勝 者 を抱 い た。 140. 天 衆 は 三 十 二相 を示 す善 逝 を歓 迎 した。 そ の後 で、 人 び とが、 無 双 の勝 者 を抱 い た。 141. 人 び との(人 工 の)灯 りは消 え て しま った。 人 間 と天 人 の 灯 りの保 持 者 113 善 逝 が 生 れ た と き、世 界(中 が)照 り輝 く光 を うけ た の で。 142. 善 逝 が 生 れ た と き、彼 の親 族 の人 び とは、 水 を求 め て走 っ た。 114 そ の 時、 そ の人 た ち の眼 の前 で、 溢 れ る水 を湛 えた 泉 は、 豊 か に流 れ て い た。 〔221〕 143. 一 つ は冷 た く、一 つ は熱 い、二 つ の水 流 が 現 わ れ た。 そ こ で人 び とは、 黄 金 の よ うな、 善 逝 の体 を浴 み した。 菩 薩 が誕 生 した とき、 菩 薩 の母 は傷 つ け られ なか った し、 無 疵 で あ っ た。 菩 薩 の威 神 力 に よ る もの で あ った。 さて、 ま た、 大 目腱 連 よ/菩 薩 が 生 れ た と 115 き、菩 薩 の母 の胎 は 円満 で あ った し、平 安 無 事 で あ っ た。 菩 薩 の威 神 力 に よ る 116 もの で あ っ た。 さ て、 ま た、 大 目腱 連 よ/菩 薩 が生 れ た と き、 島 に 白檀 の (木 の)森 が現 わ れ て、 菩 薩 の楽 しみ の 資具 とな った。 菩 薩 の 威 神 力 に よ る も の で あ った。 そ の とき、 百 千 の天衆 が、 か ぐわ しい花 を もっ て、 菩 薩 に敬 意 を 表 しに連 れ だ って行 く。一 人 の 天神 が(他 の天 神 に)「 どこへ 行 くの か 」 とた つ ね る。 彼 は答 え て 云 った。 144.「 王 妃 が最 勝 の御 子 を生 も う として い る、咲 い た青 蓮 華 の蘂 の よ うに美 し い御 子 を。
-86-彼 は魔(軍)と そ のカ を打 倒 して、 地 上 で 最勝 の義 を得 よ う。そ の勇 者 に私 は頼 る。 145. (菩 薩 の)四 肢 は 胎 の汚 物 に ま み れ て な い。 最 勝 の蓮 華 が(泥)水 に生 ず る よ うに。 美 しい姿 は昇 りた て の太 陽 の よ うに輝 き、 諸 梵 天 を伴 う神 が み を凌 ぐの で あ る。 146. アル チ マ ッ トの家 門 に 菩 薩 が 生 れ た と き、彼 は荘 重 な 足 ど りで 七 歩 を歩 ん で、 諸 方 処 を観 察 して大 声 で笑 っ た。 今 や、 これ が(こ の 世 の)最 後 の 生 な り と。 〔222〕 147. 最 高 の宝 石 と真 珠 が光 り輝 く、一 本 の 日傘 が き らめ き、 輝 い て お り、 曼 茶 羅 華 の花 環 を打 ち振 りな が ら、多 くの 天 衆 は、 天 空 で(目 傘 を)持 っ て い た。 148. 昇 る太 陽 の光 に よ っ て貝 の よ うな 色 あい の、 美 しい黄 金 の 日傘 を天 空 で 持 って い た。 117 彼 らは団 扇 を拡 げて ヒ ラ ヒ ラ動 か しな が ら、手 で 取 っ て勝 者 を あお い だ。 118 149. こ の時、 二 つ の水 差 しが突 然、 空 に現 れ た。(一 つ は)芳 香 あ り、 た い そ う快 適 で暖 か く、 人 び とに とっ て好 ま し く、有 益 で、て一 つ は)清 涼 で、 爽 や か で、 魅 せ られ るほ ど冷 た か った。 119 150. こ の時、 須 弥 山 の頂 か ら多 くの(天 衆 が)、 衣 裳 を脱 い で、 立 ち な らび、 激 し くあ らゆ る(種 類 の)芳 香 を扇 ぎつ け た。 彼 らは大 地 を六 た び、 震 わ せ た。 ﹃ マ ハーバスツ﹄﹁燃燈仏事記﹂試訳(三)
密 教 文 化 151. 金、 銀、 宝石 で 身 を飾 った天 衆 た ち は天 宮 で楽器 をか きな らし、 高 貴 な生 れ を も って誕 生 した勝 者 を視 た。 彼 らは、 月、 太 陽、 星 を も っ て虚 空 を輝 か す。 152.「 此 は あの か た が、 天、 龍、 夜 叉 の世 を通 り、世 間 の大 暴 流 を横 断 して、 〔223〕 か の 大 聖者 は安 楽 の一 方 処 に到 られ る」 と歓 喜 した天 衆 は天 空 に あ っ て 云 った。 120 ア ル チ マ ッ ト王 は 命 じた。 「あ の妃 の子 に 頂 足礼 をなす べ し。」 と。王 子 は ど ん な種 類 の車 に乗 るの か マ天衆 た ち が宝 石 で飾 った輿。 誰 が この輿 を運 ぶ の か マ四天 王 が側 に立 っ て(云 う)。「私 た ちが 最勝 の方 ・菩 薩 とス デ ィー パ ー妃 と 菩 薩 の乳 母 た ち をお つれ します。」 と。(こ の方 が た は)輿 に乗 っ た。 天 衆 の長 121 で あ る帝 釈 天 と大梵 天 が警 澤 の役 をす る。 か くて菩 薩 は、 お お い に飾 りた て、 お お い に隆盛 を きわ め、 神 の大 威 徳、 王 の 大威 力 の も とに、 蓮 華 の森 の遊 苑 か 122 123 ら、王都 デ ィーバ バ テ ィ ー に着 き、妃 の館 に案 内 され た。 153. 世 の大 救 護 者 で あ り、諸 王 の教 師 た る(こ の)勇 士 は、 意 に反 して堂 宇 に入 った。 124 (彼 を神 々 に)頂 足 礼 を させ よ うと した時、(逆 に)か の 菩 薩 の 足 が 現 わ れ た。 125 154. こ の時、 一 人 の神 が 他 の神 に こ う云 っ た。 「こ の方 が私 を礼 拝 す るの は 相 応 し くな い。 126 も しこの よ うな方 が他 人 に礼 拝 をな せ ば、 必 らず そ の人 の頭 は七 つ に割 れ よ う。」 と 王子 が生 れ た とき、 一 切 の 生 あ る もの は、 無 間 地 獄(に 堕 ちた 者 で)さ え、 好 都 合 で楽 しか った。 天 衆 た ち は礼 拝 を し、皆、 歓 喜 した。 〔224〕
-84-155. 王 子 が 王 宮 に入 っ た とき、 王 は祭 官 に命 じた。 127 「速 や か に、 瑞 相 の規 則 と性 質 に練 達 の学 識 者 をたつね求めよ。」と。 156. この こ とを知 っ て大 自在 とい う名 の心 自在 の天 神 が バ ラモ ン僧 団 が瑞 相 を不 吉 の相 と見 誤 らな い よ うに(姿 を現 わ す)。 157. 自負、 自慢、 傲 慢 さ を遠 離 した大 自在(天)部 の勝 れ た 八千 の衆 は 天 衆 た ち に尊 敬 され た今 生 れ た ばか りの(王 子)に 近 づ い た。 128 158. 彼 らは王 宮 の 門前 で、 清 らか な 美 しい着 物 を着 て無 言 の ま ま で立 っ た 城 門 の護 衛 に迦 陵 頻 伽 の さ えず りの よ うに 非 常 に優 し くこ と ば を か け た。 129 159.「 王 の とこ ろ へ行 っ て 申 し上 げ て下 さ い。 こ こに 瑞相 の性 質 と規 則 を知 る 者 130 八 千 が居 ります。 も し許 され ば、 入 門 致 した い。」 と。 160.「 判 りま した 」 と聴 い て い た城 門 の護 衛 は、 王 宮 に入 っ て行 っ て 合 掌 し、嬉 しそ うに大 地 の守 護 者(=王)に 云 った。 161.「 無 比 の力 をお 持 ち の方、 栄 光 に輝 く方、 王 国 を永 く統 べ給 え、 怨 敵 を撃 催 す る方 よ 門 前 に不 死 の神 々 に も似 た 者 た ち が停 み、 入 門 を願 っ て お ります る。」 162.「 つぶ らで清 らか な 眼、魅 す る音 声、発 情 した象 の よ うな ゆ らめ く足 ど り。 これ らの こ とで、 彼 らは人 で は な い の か、 神 の子 た ち な の か とい う疑 念 が私 に あ ります。」 163.「 彼 らが歩 く とき に は、 土 埃 も彼 らの綺 麗 な足 を汚 しは しませ ぬ。 131 大 地 に彼 等 の足 跡 を ま だ見 てお りませ ん。 実 に、 これ は不 可 思 議 な こ と です。」 ﹁ マ ハーバスツ﹄﹁燃燈仏事記﹂試訳(三)
密 教 文 化 132 164.「 荘 重 で、 物 静 か な挙 措、 気 高 い相 貌、 寂 然 た る眼 ざ しは、 実 に、 視 る人 び とに多 くの 喜 び を うみ 出 してお ります。」 165.「 も う一 つ不 思 議 な こ とが ご ざ い ます。 彼 らの体 の影 が見 られ ませ ん。 〔225〕 ま た、 彼 らにっ い て まわ る音 は、 彼 らが歩 く とき何 ひ とつ(聞 こ え)ま せ ん」 166.「 王 よ./き っ と(彼 らは)あ な た の 貴 い息 子 を見 にや っ て き た の です。 喜 ん で挨 拶 して、 母 胎 か ら生 れ た の で な い天 衆 を ご らんな さ い ます よ う に。」 167.「 素 晴 しい香 りの花 環 を手 に して、 優 美 な 身ぶ り、心 惹 き つ け る体 つ き、 ま さに、 福徳 燦 然 と輝 き、 疑 いな く、彼 らは高 貴 な神 々 で あ ります。」 168. こ の こ とば を聞 い て、 ア ル チ マ ッ ト王 は、 喜 び に体 は うち ふ るえ、 王 は答 え た 「よ し/速 く速 く、高 貴 な宮 殿 に招 じ入 れ よ。 」 と。 169.「 ど うした わ け か そ うい った もの は、 普 通 の人 間 の姿 で は な いか らだ。 133 お前 が見 た と云 っ て い る よ うな、 そ ん な威 神 力 は人 間 には 決 してな い。」 170. そ の時、 城 門 の警 護 者 が大 自在 天衆 に近 づ い て、 お辞 儀 を し、合 掌 し、礼 拝 して喜 び、 心 か ら歓 喜 して云 っ た。 171.「 聖 者 の皆 さん/王 は喜 ば れ て、 強 力 な王 の、 天 宮 の よ うな 宮 殿 に(皆 さん が)お 入 りに な る よ う王 は命 じ られ ま した。」 134 172. こ の こ とば を聞 い て、 八 千 の 大 自在 天 衆 は、 不 敗 の家 系 の統 領 の宮 殿 に入 っ た。
173. この とき、 ア ル チ マ ッ ト王 は、 大 自在 天 衆(の 姿)を 遠 くか ら認 めて、 威 厳 と力 が充 溢 した体 つ き で、 従者 を従 えて立 ち上 った。 174. 強 い王 は天 衆 た ち に云 った。 「す べ ての 皆 さん 方 を歓 迎 します。 お い で に な っ た こ と、寂 静、自制、力 を も って お られ る こ と を喜 び ます 」 175.「 これ らは、 わ た した ち の最 上 の座 な の で あ りま す。 聖 者 の皆 さん/私 達 を哀 慰 して、 す ぐ座 に お つ き下 さい。」 と。 176.こ の時、 多 くの宝 石 で 明 る く、輝 く脚 の あ る座 に、 腰 を下 ろ した。 〔226〕 自負、 自尊、 傲 慢 さ を遠離 した、 行 い に過 失 の な い、 彼 ら(天 衆 達)は。 177. 彼 ら天 衆 は暫 く待 っ て、 王 に話 した。 「私 達 が どん な動 機 で こ こへ 来 た のか、 陛 下 にお 聞 かせ 致 します。」 178.「 王 よ/総 て完 き 四肢 を も ち、世 俗 に於 て誠 に端 麗 な御 子 が、 あ な た にお 生 れ に な りま した。(御子 は)功 徳 相 を完 全 に具 え てみ えます」 179.「 相 に つ い て 熟練 して い る私 た ち は、 美 徳、 悪 徳 の相 を知 るこ とが で き ま す。 も し王 に とっ て つ らい想 い を な され な けれ ば、大 丈 夫 の体 を拝 見 します 」 180. 王 は答 えた。 「さ あ/吉 相 を具 え た吾 が子 を見 られ よ。 (吾 子 は)天 ・人 に喜 び を生 み 出 す者。 功 徳 相 を 完 全 に 具 え た もの で あ る。」 181. この 時、 王 は柔 い、 染 め た迦 隣 陀 羊 毛 布 に、 くるま れ た持 徳 の(御 子) を抱 い て、 そ の言 説 の明 らか な こ と.月の よ うな、(御 子 を)神 が み の と こ ろへ連 れ ﹃ マ ハーバスツ﹄﹁燃燈仏事記﹂試訳(三)
密 教 文 化 て きた。 182. 大 自在 天 た ちは遠 くか ら、十 力 を有 す る者 の端 厳 な 足 ど り を見 て、 ぞ くぞ くす る ほ ど喜 び、 宝 冠 を頂 いた ま ま大地 に ひれ 伏 し、額 つ い た。 彼 ら(大 自在 天衆)は 云 っ た。 「大 王 よ/あ なた は(た いへ ん な)利 益 を よ く手 に入 れ られ ま した。 即 ち、 大 丈 夫 が あ な た の一 族 に出 現 した こ とで す。 そ の方 は、 大丈 夫 の三 十 二 相 を具 え てお られ ま す。 それ は次 の よ うな の で す。 183. 1. 足 は地 に しっか り と立 つ こ と。 2. 手 足 に は千 輻 輪 が あ る こ と。 3. 指 が 長 い こ と。 4. 足 の踵 は広 い こ と。 5. 足 の くるぶ しは あ らわ で な い こ と。 135 (以 上 で)五 っ。 6. 抵 羊 の よ う な 足 で あ る こ と。 7. 体 は 神 こ う し く真 直 ぐ な こ と。 8. 直 立 し た 時、 膝 に 手 が 届 く こ と。 9. 陰 茎 は 内 に か くれ て い る こ と。 10. 体 は 熔 樹 の よ う に 均 整 が とれ て る こ と。 (以 上 で)十。 184. 11. 手 足 と も に 柔 軟 で あ る こ と。 12. 手 足 に は 網 で 覆 わ れ て い る こ と。 13. 五 体 円 満 で あ る こ と。 14. 体 毛 は 一 本 ご と に 右 旋 し て い る こ と。 15. 体 毛 は 皆、 上 向 き し て い る こ と。 (以 上 で)五 っ。 16. 皮 膚 は な め ら か で あ る こ と。 136 17. (皮 膚 に 関 す る こ と が 何 か も う一 項 あ る。) 18. 歩 き 方 は 白鳥 の よ うで あ る こ と。
19. 両 肩 押 の 問 は 凹 み が な く 円 満 で あ る こ と。 20. 体 に は 七 つ の 隆 起 が あ る こ と。 (以 上 で)十。 〔227〕 185. 21.繊 細 な 味 覚 を も っ て い る こ と。 22. 皮 膚 は 金 色 で あ る こ と。 23. 上 半 身 は 獅 子 の よ うで あ る こ と。 24. 歯 な ら び は よ い こ と。 25. 歯 は 白 い こ と。 (以 上 で)五 っ。 26. 肩 先 き が 円 い こ と。 27. 舌 は 長 く、 細 い こ と。 28. 声 は 梵 天 の よ う で あ る こ と。 29. 眼 は 碧 い こ と。 30. ま っ 毛 は 牡 牛 の よ う で あ る こ と。 (以 上 で)十 31. 眉 間 に 白 毫 の あ る こ と。 32. 頭 は タ ー バ ン 型 の 螺 髪 が あ る こ と。 こ れ が 三 十 二 相 を も つ 救 世 者 な の で す。」 と、 こ の と き、 ア ル チ マ ッ ト王 は、 バ ラ モ ン(の 姿 に 身 を や つ した 大 自 在 天)に 云 っ た。 「御 子 に ふ さ わ し い 名 を つ け よ」 と。 バ ラ モ ン は 答 え た。 「大 王 よ/ 137 御 子 が お 生 れ の とき、 大 き な輝 光 が現 わ れ ま した。 そ れ か ら、デ ィー パ ンカ ラ (=燃 燈)と い う名 をお つ けな され ませ 」 と。 か くて バ ラモ ンに 身 をや つ した 浄居 天衆 に よ って、 燃 燈 とい う名 が御 子 に つ け られ た。 か の御 子 に ふ さわ し い乳母 が つ い て 撫 育 した。 菩 薩 が青 年 に な った とき、 王 は御 子 の遊 戯 と遊 歩 の た めに、 三 つ の 堂舎 をつ く り、広 大 な後 宮 を建 て させ た。 菩 薩 は王 の偉 大 な 力 と富 と威 光 に よ って、 宮女 た ち をつ れ て、 蓮 華 苑 に遊 び に 行 った。 アル チ マ ッ ト王 は宮 女 た ち に命 じ た。 「若 者 を よ く 遊 ばせ てや れ。」 と。菩 薩 は前 後 に橡 台 が あ り、欄干 網 が と りつ け られ、 日除 け が拡 げ ら ﹃ マ ハーバスッ﹄﹁燃燈仏事記﹂試訳(三)
密 教 文 化 れ、 美 しい布 が 敷 か れ、(色 と りど りの)絹 布 の 装飾 が と りつ け られ、 香 が薫 ぜ られ、 散 華 が まか れ、 明月 の よ うに輝 く真珠 の婆 略 で飾 りた て、 傘、 旗、 幟 が立 て られ た 舟 で遊 ん だ後 で、 ひ と気 のな い 島 へ上 陸 した。 疲 れ は て て待 女 は 眠 りこ け、 あ る者 は頬 杖 をつ き、 あ る者 は腰 鼓 を抱 き、 あ る者 は横 笛 を、 あ る 者 は 琵 琶 を、 あ る者 は簿 を、 あ る者 は笙 を、 あ る者 は 足飾 りの環 を、 あ る者 は 138 小 鼓 を、 あ る者 は よだれ をた ら して いた。 これ を見 て、 菩 薩 に は墓 を見 た想 い が あ った。 蓮 池 の真 中 に、 車 輪 ほ ども あ る花弁 を具 え、 幾 千 本 の他 の 蓮 に 囲 ま れ た 蓮 華 が現 われ た。 〔228〕菩 薩 は そ の蓮 の 上 に 結 跡 跣 坐 し た。 蓮 花 は 閉 じ て、 楼 閣 の さ ま とな っ た。 菩 薩 の体 か ら一 切 の世 俗 の こ とは消 え去 って、 赤 褐 色 の袈 裟 をま とっ て姿 を現 わ した。 139 さて、 大 目腱 連 よ/燃 燈 菩 薩 は諸 欲 を遠離 し、諸 々 の悪 ・不 善 の法 を遠 離 し、有 尋、 有 伺 で あ っ て、 遠 離 す る こ とに よっ て生 ず る喜 び と楽 しみ あ る第 一 禅定 を具 足 して住 した。(さ らに)有 尋、 有 伺 をや む こ とか ら、 自 己 は清 浄 と な り、(そ れ か ら)心 は一 に な る、(そ の こ とか ら)無 尋、 無伺 とな り、静 慮 よ り生 ず る喜 び と楽 しみ の あ る第 二禅 定 を具 足 して住 した。 彼(菩 薩)は 喜 び を 遠 離 し、(そ の こ とか ら、何 もの に も)固 執 しな い心 に住 し、 正 念、 正 知 で あ っ て、(諸 行 を)捨 し、 正 念 あ る も のは 安 楽 で あ る と諸 賢聖 が説 く、 そ の安 楽 を身 を も って 受用 す る。喜 び(の 感 情)を 離 れ た第 三 禅 定 を具 足 して 住 した の で あ った。(そ れ か ら さ らに)楽 を断 ち、 且 つ、 さ き に苦 を断 ち、 喜 楽 と憂 愁 の 二 つ を滅 した こ とか ら、不 苦 不 楽 で あ って、 棄 捨 と正 念 は 清 浄 で あ る第 四禅 定 を具 足 して住 した。 彼(菩 薩)は こ の よ うに 心 を集 中 し、 清 浄 で全 く清 浄 140 な、 煩 悩 の な い、 随 惑 を断 った、 調 柔 に して任 にた え る、 固 く決 意 した、 揺 が ぬ心 を も っ て、 そ の 初夜 に於 て、 天 眼 に よ る見 方 を得 ん が た め に、 心 を起 こ し 傾 注 した。 彼 は天 眼 に よ っ て、 消 滅 した り、 生 じた り、 美 しい もの、 醜 い も の を見 る。(ま た)業 に従 っ て、 有情 が善 趣 又 は悪 趣 に生 ず る さ ま を識 る。 か くて彼(菩 薩)は、 心 を集 中 し、清 浄 で、 全 く清 浄 な、 煩 悩 の な い、 随惑 を断 った、 調 柔 に して任 に た え る、 固 く決意 した揺 が ぬ心 を も って、 そ の 中夜 に於 て、 種 々 の前 世 の境 涯 を想 起 した。 即 ち、 一 生、 二 生、 三 生、 四 生、 五 生、 十、 二 十、 三 十、 四 十、 五 十、 百 生、 千、 幾 百、 〔229〕幾 千、 幾 百 千、 壊 劫、 成 劫、 壊 成 劫、 幾 壊 劫、i幾成劫、 幾 壊 成 劫 の前 世 の 境涯 を想 起 した。
-78-か の世 に於 て、 私 は し-78-か じ-78-か の名、 し-78-か じ-78-か の家 系 の もの、 し-78-か じ-78-か の家 族 の も の で あ っ た。 しか じか の食 物 を食 べ た。 しか じか で寿 命 を終 え た。 しか じ か の楽 と苦 を知 覚 して いた。(ど ん な)形 で、(ど ん な)処 で(と い うよ うに・ 具 体 的 に)い ろ い ろ な種 類 の 前 生 の 境 涯 を想 起 した。 彼(菩 薩)は、 こ の よ う に 心 を集 中 して、 清 浄 で、 全 く清 浄 な、 煩 悩 の な い、 全 く随惑 を断 っ た、 固 く 141 決 意 し、揺 が ぬ 心 を も って、 そ の後 夜、 曙 の あ け そ め る時 に於 て、 象 の よ うな 人、 獅 子 の よ うな 人、 牡 牛 の よ うな 人、 蓮 華 の よ うな 人、 白蓮 華 の よ うな人、 荷 負 丈 夫、 優 れ た 大 丈夫、 然 るべ き素 姓 の人、 人 を調 御 す べ き無 上 の御 者、 道 を得 た人、 正 念 を得 た人、 固 く決 意 した人、 慧 を得 た人 が常 に全 体 と して知 る べ き体 得 す べ き、 悟 るべ き、 正 し く覚 るべ き、 す べ て の事 を一 刹 那 に 心 に 与 え られ た智 慧 に よっ て、 無 上 等 正 覚 を覚 られ た。 こ の時、 大 地 は六種 に 震動 し、 142 地 の 神 々 は叫 び声 を挙 げ、 声 を天 上 に響 か せ た。 「友 よ/聖 燃 燈(仏)は、 大 衆 の 利 益 のた め、 大 衆 の福 利 のた め、 世 に対 す る憐 み の た め に、 大衆 の 役 に 立 つ た めに、 諸 天 と諸 人 の福 利 のた め に、 無 上 等 正 覚 を覚 るで あ ろ う。」 と。 地 の神 々 の声 を聞 い て虚 空 の諸 天、 即 ち切 利 天(=三 十 三 天)、 焔 摩 天、 兜 率 143 天、 化 楽 天、 他 化 自在 天 はそ の瞬 間、 直 ち に、 梵 天 衆 に届 く声 を張 りあ げた。 「友 よ/こ の聖 燃 燈 は 等 正 覚 者 に な る で あ ろ う。大 衆 の利 益 のた めに、 大 衆 の福 利 の た め に、 世 に対 す る憐 み の た め に、 大 衆 の役 に立 つ た め に、 諸 天 と諸 人 の 利 益 と福 利 のた めに(そ うな るで あ ろ う)。」 と 144 こ の時、 無 量 の、 かつ、 気 高 い 大 きな 光 明 が 地 上 に出 現 した。 この 世 界 の 中 間 は、 暗 黒 そ の も の で あ り、暗 黒 に包 まれ、 闇 そ の もの で あ り、闇 に包 まれ、 邪 悪 そ の も の で あ り、そ の 昔、 邪 悪 か ら生 じた も の で あ る の だが、 〔230〕そ こ で は、 か の月 と太 陽 は、 か くも強 力 で、 か くも威 力 が あ る の で あ るが、 そ の 光 に よ っ て も輝 光 は届 か ない。 そ の 光 に よ っ て も光 は遍 満 しな い ので あ るが、 し か し、(菩 薩 の)そ の輝 光 に よっ て、 パ ッ と明 る くな った。 之 の 世 界 に実 有 の も のが 生 れ た。 そ の こ とが互 い に判 っ た。(そ して大 声 で 云 った)。 「お お、 た しか に違 った も のが 生 れ てい る。 お お、 た しか に違 った も のが 生 れ て い る。 お お、 た しか に違 った もの が 生 れ てい る。 」 と。 さ て、 そ の瞬 間、 直 ち に 一 切 の生 あ る も の は全 く幸 せ に浸 っ てい た。 無 間 大 地 獄 に生 じ た も の さ ﹃ マ ハーバスッ﹄﹁燃燈仏事記﹂試訳(三)
密 教 文 化 え、 諸 天、 龍(王)た ち、 夜 叉 た ち の威 神 力 を凌 いで い た。 魔 宮 も薄 暗 く、 光 145 を奪 わ れ、 輝 き を失 い、 楽 しげ で は な か っ た。 魔 宮 は粉 こ な に な っ て、 一 ク ロ ー シ ャ も飛 び散 っ て落 ち、 粉 こ な にな っ て、ニ ク ロー シ ャ も飛 び散 っ て落 ち、 粉 こな に な っ て三 ク ロー シ ャ も飛 び 散 っ て落 ち、 粉 こ な に な っ て幾 ヨー ジ ャ ナ も飛 び散 って落 ち、 又、 施 旗 も落 ち た。 悪 魔 や悪 鬼 は苦 しみ、 心 楽 しま ず、 悔 み、 心 の痛 み で苦 悩 して い た。 大 目腱 連 よ/こ の蓮 華 閣 で は、 聖 燃燈(佛)は 四天 王、 諸 天 の主 で あ る帝 釈 天、 切利 天、 兜 率 天、 他 化 自在 天、 大梵 天及 び そ の他 多 勢 の天 衆 春 属 に よ っ て待 せ られ て い た。(彼 等 は)聖 燃 燈(仏)仁 最 勝 の敬 意 を表 した。 天 上 の 曼 茶 羅 樹 の花、 大曼 茶 羅 の(花)、 迦 尼 華 樹 の(花)、 ロー チ ャ マ ー ナ花、 ビー シ ュ マ の花、 大 ビー シ ュマ の花、 サ マ ン タ ガ ン ダの花、 大 サ マ ン タガ ンダ の花、 白檀 香、 沈 香、 ケ ー シ ャ ラの香、 タ マ ー ラ の葉 の香 を、聖 燃 燈(仏)に 撤 き、 あ た りに撤 き、上 に撤 き、 幾 千 の天 上 の楽 器 を奏 で て敬 意 を表 した。 こ こで大 梵 天 は(聖 燃燈(仏)に)無 上 の法 輪 を転 ぜ られ ん こ と を嘆 願 す る。 大 目腱 連 よ/聖 燃燈(仏)は 大梵 天 に、 黙 然 と して、 諾 な わ れ た。 天衆 は 聖 燃 燈(仏)が 承 諾 され た こ と を知 っ て、 喜 び、歓 喜 し、有 頂 天 に な り 〔231〕 雀 踊 り して 歓 ん だ。 聖 燃 燈(仏)に 頂 足礼 を し、右 綾 三 蓮 し(そ れ が 終 って か ら)出 て行 っ た。 そ の後 夜 に、世 尊 は禅 思 か ら起 たれ、 諸 地 域 を遊 行 され た。 186.空 に昇 った ば か りの金 色 の太 陽 の よ うに 燃 燈(仏)は 輝 光 を も って百 ヨー ジ ャナ(の 地)を 満 た した。 世 尊 ・燃 燈(仏)は、 諸 天 と諸 人 の大 部衆 の た め に、 修 行 を積 み な が ら遊 行 され た 時、 父 アル チ マ ッ ト王 と親 族 の者 た ち に対 す る憐 み(の 気 持)か ら、入 万 人 の僧 と倶 に、 王 都 デ ィーバ バ テ ィ ー に近 づ い た。 ア ル チ マ ッ ト王 は この こ とを聞 い た。 「世 尊 ・燃 燈(仏)は 八 万 人 の僧 と倶 に、 親 族 の者 た ち に対 す る 憐 み(の 気 持)か ら、王 都 デ ィーバ バ テ ィ ー にや って来 られ る。 」 と。 146 彼 等 は 蓮 華 苑 か ら、 デ ィ ー バ バ テ ィ ー に 到 る 十 ク ロ ー シ ャ の 道 を 準 備 した。
サ イ コ ロ用 の板 か、 あ るい は、 掌 の よ うに平 に し、水 を撤 き、 掃 き、 天 蓋 をひ ろ げ、 美 しい布 をひ ろ げ、 絹 布 をつ け た飾 り紐 で 飾 り、香 が焚 か れ、 あ らゆ る 147 方 角 か ら歌 舞 をす る者、 大 道 芸 人、 力士、 音 楽 を奏 で る者(な ど)が 集 ま り、 転 輪 聖 王(=ア ル チ マ ッ ト王)の 都 は、 な お一 層 幾 百 の、 香 わ しい飾 葉 で飾 り た て られ た。 ア ル チ マ ッ ト王 は、 香 り豊 か な 花 環 を持 ち、 また、 周 辺 十 ニ ヨー ジ ャ ナ の 四方 か ら(や っ て くる)大 衆 は香 りあ る花 環 を も って集 って き た。 王 は八 万 人 の小 王 とそ の他 の人 と倶 に、 世 尊 ・燃 燈(仏)を 迎 え に進 み 出 た. (さ て)あ る博 学 の バ ラモ ンが居 た。 六 っ の ベ ー ダ支分 と三 ベ ー ダに通 じ、 語 義 解 釈、 第 五 説 話 集、 語 彙、 儀 軌 に精 通 して い た。 彼 は、 若 い バ ラモ ンた ち の老 練 な教 師 で、 バ ラモ ン僧 衆 か ら(選 ばれ た)五 百 人 の若 いバ ラモ ン にベ ー ダ讃 歌 を諦 唱 させ てい た。 さ て こ の時、(彼 に は)仲 の よい、 互 い に敬 愛 しあ う二 人 の バ ラモ ン青年 が い た。 〔232〕一 人 は メー ガ とい い、 も う一 人 は メ ー ガ ダ ッ タ と云 っ た。 青 年 バ ラモ ン(僧)メ ー ガ は、 学 識 が あ り、思 慮 深 く、賢 明 で、 鋭 い機 智 に富 む人 で あ った。 だか ら、 や が て、 ベ ー ダ讃 歌 を総 て暗 諦 して しま った。 彼 はベ ー ダ 148 を習 い終 え て しま った と き、 ヒマ ラヤ か ら地 方 へ下 って きて、 「私 は 師 へ の謝 礼 を(す る手 だ て を)探 そ う。」 と(思 っ た。 彼 は)杖 と水 筒、 日傘、 履 物、 浴 用 下 着 を持 っ て い て、 彼 が境 を越 え る里、 都 市、 町 は、 ど こで も、青 年 バ ラ モ ン(僧)メ ー ガ の威 徳 に よ って 難儀 や、 災 厄 もな く、 めで た い も の で あ っ 149 150 た。 こ の道 中 で(彼 は)人 び とに 乞 うた。 か くて、 五 百 プ ラ ー ナ の施 物 を(得 た)。 彼 の(も らっ た)施 物 は こ の よ うで あ った。 151 「今、 私 は 王 都 ・デ ィ ー バ バ テ ィ ー に つ い た の だ が、 も し七 宝 と楽 しい も の 152 が あ る転 輪 聖 王 の 都 城 を 見 れ ば ど う で あ ろ う か 」 と。 彼 が 王 都 ・デ ィ ー バ バ テ ィ ー に 入 っ た 時、 王 都 が 飾 られ て あ る の を 見 た。 彼 は こ う思 っ た。 「デ ィ ー バ バ テ ィ ー の 王 都 で、 今 日 は ど ん な 節 会 が あ る の か 企 て が あ る の か 祝 日 な の か 」 「あ る い は ま た、 ア ル チ マ ッ ト王 が、 ベ ー ダ を 習 い 終 え た 青 年 バ ラ モ ン(僧)メ ー ガ が、 ヒ マ ラ ヤ 地 方 か ら里 に 下 り て 来 て、 王 都 ・デ ィ ー バ バ テ ィ ー に や っ て く る で あ ろ う と 聞 い て、 そ れ で 此 の 町 が、 き れ い に 飾 ら れ た の だ。」 153 と。彼 は無 遠 慮 に、 都 城 に入 る人 に何 が あ る の か を尋 ね た。 ﹃ マ ハーバスツ﹄﹁燃燈仏事記﹂試訳(三)
密 教 文 化 丁 度、 そ こへ、 や さ し くて美 し く、落 着 い た、 控 え 目な、 し とや か なバ ラ モ ンの娘 が、 水 瓶 と七 本 の蓮 花 を も っ てや って来 た。 メ ー ガ は彼 女 に たつ ね た。 「今 日、都 城 で は祝 日な の ですか」と。この時、プラクリティと云う(この) バ ラモ ン の娘 は、 バ ラモ ンの 青年(僧)メ ー ガ に偶 を も って答 え た。 187.け れ ど青年 僧 よ あ な た は この地 の出 身者 で は な く。 他 処 の都 か ら こ こに来 られ た方 な の よ。 世 の利 益 者=燃 燈 が デ ィーバ バ テ ィー に 着 か れ た こ と をご存 知 な い の よ。 〔233〕 188. 世 の指 導 者 で あ り、 アル チ マ ッ ト王 の 栄 誉 あ る家 族 の一 員 で あ る。 仏 陀 ・燃 燈 仏 が都 に入 られ る ので す 彼 の た め に都 を飾 っ てい るの で す よ。 154 メ ー ガ は彼 女 に尋 ね た。 「いか 程 で そ の青 蓮 花 を買 い求 め られ ま した か 」。 彼 女 は答 えた。 「私 は五 百 プ ラー ナ で五 本 の青 蓮 花 を買 い、 二 本 は友 達 か ら手 に入 れ ま した。 」 と。青 年(僧)メ ー ガ は彼 女 に 云 った。 「私 は こ の五 百 プ ラ ー ナ(の お金)を あ げ ま す。(ど うか)五 本 の青 蓮 花 を下 さい。 私 は この五 本 の蓮 花 で もっ て、 世 尊 ・燃 燈(仏)に 供 養 した い の です。 あ な た は、 二 本 で も 155 156 って供 養 して下 さい。 」 と。彼 女 は答 え て云 っ た。 「この五 本 の青 蓮 花 を差 し あ げ ま し ょ う。 しか し一 つ条 件 が あ る の です。 そ れ は私 を あ な た の妻 に 迎 え る こ とで す。 あ な た が ど こで、 生 を享 け よ う と、私 は あ な た の妻 とな り、あ な た は私 の夫 とな るで し よ う。」 バ ラモ ン の青年(僧)メ ーガ は答 え た。 「私 は無 上 正 等 覚 を(得 ん と)発 心 してい るの で す。 ど う して、結 婚 す る気 を起 こせ ま しょ うか 」 彼 女 は答 え て云 った。 「そ の発 心 をな さい、 私 は邪 魔 は 致 しませ ん。 」 バ ラモ ンの青 年(僧)メ ー ガ は同 意 した。 「私 は こ の青 蓮 花 の お礼 に、 あな た を妻 に迎 え よ う。私 は世 尊 ・燃 燈(仏)に 供 養 した い の で す。 無 上 正 等 覚 を得 ん と発 心 して い る の です。 」 と。彼 が五 百 プ ラー ナ の お金 を与 え、 五本 の蓮 花 を受 け と り、バ ラ モ ン の娘 ・プ ラー ク リ ッ トが、 仏 陀 とい う名 を 口 にす る の を聞 い た と き、彼 の 体 に 最上 の歓 び が湧 きあ が った。
189.「 も し、 あ な た が愛 ら しい蓮 花 の花束 で 世 の指 導 者 に供 養 した い のな ら 今 日、私 を妻 と して お迎 え な され ませ、 私 は とわ に、 愛 に身 を委 ね ま しょ う。」 190.「 い ち じ くの花 には遇 い難 い よ うに バ ラモ ンの青 年 よ い つ の 日か此 の世 で 〔234〕 か く も栄 誉 あ る仏 陀 の い つ の 日か如 来 の世 に い で給 うは。 」 191.「 大衆 の調 御 者 ・仏 陀 に 供養 な され ま せ、 愛 ら しい蓮 花 の花 束 もて。 そ れ は、 あ な た の覚 りの 因 とな りま しよ う。 何 処 で も、私 は あ な た の妻 とな りま しよ う」 メ ー ガ は答 え た。 192.「 私 は今 日、お まえ を妻 に迎 え よ うそ、 美 しい蓮 花 の お礼 に。 大衆 の調 御 者 ・仏 陀 に供 養 を奉 ろ う。 これ は私 の 覚 りの 因 とな ろ う。」 193.彼 女 は喜 び に溢 れ、 蓮 花 を与 えぬ。 愛 を感 じて、 愛 に身 を委 ね た こ とを知 りつ メ ー ガ は 出立 ち、 乙女 は随 い行 きめ。 青 年 の僧 立 ち た る岐 れ 路 ま で。 世 尊 は入 万 人 の僧、 八 万 人 の小 王 と幾 千 人 の大 長 者 で あ る武 士 団、 沙 門、 バ ラ モ ン、 仏 教 以 外 の教 徒 た ち をつ れ た アル チ マ ッ ト王 を伴 っ て、 王 都 ・デ ィー バ バ テ ィ ー に向 っ てお られ た。 194. 世尊 が 出 発 され た そ の 時、 幾 千 人 の 天衆 が集 った。 ﹃ マ ハーバスツ﹄﹁燃燈仏事記﹂試訳(三)
密 教 文 化 七 宝 をち りば め た幾 千 本 の傘 をた つ さえ て。 」 195.そ の時、 か の大 福 徳 をお 持 ちの 方 は、 気 品 あ る(人 び との)集 団 の先 頭 にお わ した。 象 の よ うに揺 れ 動 く歩 きぶ り、体 は き らめ く網 に掩 わ れ て。 主 要 引用 書 目及 び略 号 表
Dharm-s. Dharmasamgraha: P. L. Vaidya, B. S. T. No. 17, Darbhanga, 1961
It. Itivuttaka: E. Windisch, PTS. London, Repr. 1975. J. 3ataka: V. Fausboll, PTS. London, Repr. 1962-64
Prajn-vy. Abhisamayalamkdr aloka prajnapdramitdvydkhya: U. Wogih-ara, Tokyo, 1932, Repr. Tokyo, 1973.
Ps. Patisambhidamagga: A. C. Taylor, PTS. London, Repr. 1979. Pv. Petavatthu: J. Minayef, f, PTS. London, Repr.1977.
Rdstr. Rdstrap ala-pariprcchd: L. Finot, Bibliotheca Buddhica II St-Petersbourg, 1901, Repr. Osnabriick, 1970.
Ratna. Ratna-gotra-vibadgo mahdyanottaratantrasastram: Dz. Nakam-ura, Tokyo, 1971.
S. Samyutta-Nikaya: L. Feer, PTS. London, Repr. 1973-76 Speijer Sanskrit Syntax: J. S. Speijer, Leiden, 1886, Repr, Delhi, 1973. Prak. Prakrit 註(註 番 号 直 後 の 数 字 はMv. 原 典vol.1の ペ ー ジ、 行 数 を示 す。)、 100. 217.1.-2. の 詩 形: i.149.13-14.とii.19.15.∼16.に 一-二 の 用 語 の 違 い は あ っ て も、 殆 ん ど同 文 で あ る。 101. 217.2. citra-rathaとamara-vadhu: そ れ ぞ れ、 宝 車(漢 訳)、 「神 の 妻 」 と訳 し た。 102. 217. 7. kaddhiyan tiye: PW. に よ れ ば √katt, kattayatiは「植 え た 植 物 に 盛 土 す る 」 意 で あ
-72-り、 又、akattayatiに つ い て はTrakritische aus kars"と し て い る。 will. も 同 様 な 意 を 与 え て い る。 正 梵 で は そ の よ う に 理 解 さ れ て い る。 Senartは、i.544.-545.のnoteで、Paliと 同 じ語 形 で 校 訂 で き る と 思 っ た と述 べ て い る。 これ が ま た、 「片 っ ぱ し か ら」 と云 うEdg.の 批 判 に もな っ て い る。 Hemacandra IV.187.に は 次 の よ うに あ る。 krseh kaddha-saaddha.ncdnacchdyanchainchah //187//
krser ete sad-adesa va bhavanti //kaddhai/saadhai/ancai/anachai/ ayanchai/ainchai/pakse/karisai//
(註: 上 記 の うち 写本 の 異読 は記 さず。)
同上、IV. 385.
antya-trayasyadyasya um//385//
tyadinam antya-trayasya yadadyam vacanam tasyapabhramse um ity adeso va bhavati./
vihi vinadau pidantu gaha mam dhani karahi visau/ sampai kaddhaum vesa jivam chudu agghai vavasau//1// bali kijjaum suanassu//338. 1. pakse/kaddhami/ity-ddi//
Pisehel 198. と207. に よ っ て も、t→d、th→dhとt→th→dhが 例 証 さ
れ て い る。 従 っ て、 上 記Hemacandra187. の 註 記 で、kaddhaiがB写
本 で はkatthaと 記 さ れ て い る こ と も 考 え 合 わ せ る とkaddhati, kattatiは
同 義 語 と 見 て よ い。
私 はSkt.√krsに 対 応 す るPaliは1. kassati, kasatiで あ っ て、 こ れ
に 対 応 す るPrakはkarisaiで あ る。 も う 一 は2.kaddhatiで、 こ れ に
対 応 す るPrak. はkaddhaiで あ る と 理 解 し て い る。
Edg. はMegha-stltra 306. 17. sarva-naga-hrdayani samcodayami
akattamiを 引 用 し て い る が、 こ れ を 漢 訳 と対 比 し た か っ た の で あ る が、
同 梵 文 を 全 文 所 有 し て い な い の で、 漢 訳 と 照 合 で き な か っ た こ と が 残 念
で あ る。 な お、Saddharmapupdarika Kern & Nanjio Ed.84.1.に
suraudra-eitta pi vasanti yaksa manusya-kupapani vikaddhamanab/が
﹃
密 教 文 化 あ る が、vi-前 接 が あ る こ と と、 漢 訳 は 三 訳 と も、 そ の 語 の 意 味 は 明 ら か に 訳 され て は い な い。 全 体 の 流 れ を 訳 し て い る の で 特 定 の こ の 語 だ け を と り あ げ は し な い こ と は 当 然 で あ る。 従 っ て 引 用 し な か っ た。
103. 217.18. a6u-r-eva: Geiger Gramm. 73. に、 一 語 尾 母 音 十 語 頭 母 音 一 の
と き、unorganische Sandhikonsonantを+の 位 置 に 挿 入 す る こ と と述 べ
そ の 諸 例 を 挙 げ て い る。Edg. はBHSG4.61で-r-が 挿 入 され る例 を 数
多 く挙 げ て い る。 こ れ は、Mv.の よ うな 仏 教 梵 語 に 於 て も見 られ る例 で あ
る。218.6.に も 同 語 の例 が あ る。
104. 218.18.ihati: Edg. はihasi又 はseと 読 む べ き だ と い う(BHSD
uhasatiの 項 参 照)。 つ ま りAorist形 に す る の で あ る が、uhatiで 私 は よ
い と思 う。
理 由 は、Praviloketiと 現 在 形 が 用 い られ、uhatiだ け が、 突 然Aorist
形 を と る必 要 は な い。 過 去 形 を と る べ き 動 詞 が 現 在 形 で 表 現 され て い る例 は 多 くあ る。 他 の 写 本 もuhatiで あ る。 た だ、ii.268.13.maha-ihasitam uhaseを 例 にEdg.は 主 張 す る が、 そ の 文 全 体 の 動 詞 及 び 派 生 語 は、 全 部、 過 去 分 詞 で あ る 点 か ら す れ ば、 こ れ をuhasi又 はseと こ と さ ら に 改 訂 す る要 は な い。 Senartはi.546.のnoteで、uhase, uhasiをAoristと 見 な せ ば、 √hasの 形 を と る方 法 を 見 出 す 可 能 性 も な き に し も あ ら ず で あ る が、 周 囲 の 状 況 は そ の こ と を許 さ な い よ う だ。 こ こ も そ う で あ る が、 テ キ ス トで は 常 に 混 乱 や 破 格 の こ と を考 慮 しな け れ ば な ら な い と云 っ て い る。 105. 218.20. sasti: こ れ と全 く同 文 がii.21.1.-2.のslokaで あ る。218.20. で は 写 本 に 異 読 は な い が、ii.21.2.で はBC写 本 がsasthiと し て い る。 Edg.もBHSDのsasthiの 項 で い ろ い ろ 述 べ て い る が、 私 は 写 本 の 読 み に 従 っ てsasthiと す る方 が よ い と思 う。metreも こ れ で よ い。 つ ま り、 序 数 が、 基 数 の 代 わ り と な る。
106. 219. 3. niliyatha: i. 219. 3. 写 本BCtha, ii. 21. 5. 写 本BCthaで
あ る。Senartは 複 数 形 に 代 わ っ て 単 数 形 を 用 い る こ と を 述 べ て い る が、
そ の 種 の 破 格 も あ る こ と を 理 解 し た 上 で も、 写 本 に 従 っ てniliyathaと 読
む 方 が よ い と 思 う。metreは こ の 位 置 で は 問 題 な い。
107. 219. 11. satvanam: こ れ はPartial genitive (Speijer §116)で あ ろ う
と 判 断 し た。
108. 219. 14. yada: Senartは i. 546. noteで、 又、JonesはJMv. 174.
noteで 指 摘 す る よ う に、yasmaに 改 訂 す る 方 が よ い。
109. 219. 17. arttiyante: Pali attiyatiはPTSDに よ る と、Denom. from
atta3〔=Sk. arta, PP. of ardati, √rd to dissolve, afflict etc...〕
と い う。artaはWill. に よ る と √rtの 誤 っ た 派 生 語 又 は √ardの 不 規 則
な 造 語 に よ る も の と 見 倣 さ れ る と し、afflicted, pained等 の 形 容 詞 の 意 を
与 え、ardatiはdissolve, torment, hurt等 の 意 を 与 え て い る。Pw.
PW.も と も に 相 当 す る 語 意 を 与 え て い る。 さ て、Pali attiyatiを 調 べ る と、 下 記 の 諸 文 で は 総 て、 「恥 じ る 」 意 に 用 い ら れ て い る。DN. i. 213, 21; S. i. 131. 12; M. i. 423. 24; Vin. i. i 292. 17; J. i. 66. 17; J. i. 292. 12; It. 43. 21; Pv. 8. 1. 102; Ps. i. 159. 12.∼14:な ど で あ る。 こ こ で、 一 言 し て お き た い。Edg. がBHSD ar(t)tiyati, tiyatiの 項 で、 こ の 語 に 関 す る 語 幹 と 語 意 に つ い て 総 論 め い た こ と を 記 述 し て い る が、 こ れ は 誤 り で あ る。 つ ま り、Edg. はis
grieved, distressedと 訳 し、 荻 原 雲 来 博 士 がrtiyateが 正 し い 形 だ と し、
er schamt sichと 訳 さ れ て い る の はharayati, jigucchatiと 関 連 し て こ
の 語 が よ く用 い ら れ て い る 事 実 に 影 響 さ れ て い る の だ と し てrtiyateの 語
形 も、er schamt sichも 誤 り だ と し て い る が、 こ れ はEdg.の 明 白 な 誤
り で あ る。 そ れ は、 荻 原 博 士 の 「恥 ず る」 と い う 語 意 はPaliの 慣 用 的 語 法 に 影 響 さ れ た の で は な く て、 梵 文Bodhisattva-bhumiを 漢 訳 諭 伽 師 地 論 菩 薩 地 に 対 応 さ せ て(私 自 身 の 対 応 で は5回 の)用 語 例 を も っ て 結 論 さ ﹃ マ ハーバスツ﹄﹁燃燈仏事記﹂試訳(三)
密 教 文 化 れ て い る の で あ る。 これ はEdg. の 誤 解 で あ り、 独 断 で あ る こ と は 明 瞭 で あ る。 但 し、 こ こ でsich schamenを 語 意 と し て 適 用 す る こ と は で き な い。 こ
こ は や は り、Will. pw. PW. の よ う にafflict又 はtormentの よ うに 解
した い。 因 に、Senartが、i. 547. noteでarttiyanteは 受 動 分 詞 か ら の 誤 っ た 推 測 に よ っ て 決 め られ た 形 の 一 つ で あ っ て くBenfeyの 云 う よ うにatta が √ardか ら派 生 し た も の な らardiyanteと な る も の で あ り、 い つ れ に し て も、 こ の 形 は 分 詞 に 影 響 を うけ て い る な ど と云 っ て い る が、 こ れ も、 先 述 のWill. pw. PW. と あ わ せ て、 検 討 し な け れ ば な ら な い と思 う。
110. 220. 1. ahu: Pali, AMg. で は √ahはperfect, 3, pl. でahuと な る。
(cf. Geiger 171, Pschel 518.) 111. 220. 7. samhusumitesu salesu: 花 咲 く娑 羅 樹 とい う こ と に な る が、 漢 訳 で は誕 生 のLumbini苑 で 娑 羅 樹 とは あ ま り耳 馴 れ な い こ と で あ る。 数 種 の 漢 訳 経 典 を 本 縁 関 係 で 見 る と次 の 通 り。 1. 大. No. 187 方 広 大 荘 厳 経 vol. 3. 552 波 叉 宝 樹 2. 大. No. 190 仏 本 行 集 経 vol. 3. 686 波 羅 叉 3. 大. No. 189 過 去 現 在 因 果 経 vol. 3. 625 無 憂 4. 大. No. 191 衆 許 摩 詞 帝 経 vol. 3. 939 無 憂 樹 波 叉、 波 羅 叉 はplaksaで あ り、 無 憂 はasokaで あ る。 部 派 に よ っ て 伝 承 を異 に す る の で あ ろ うか
112. 220. 10. agamma: Edg. はBHSG 32. 112. でagamaだ と い う。 写 本
BC agamma; ii. 22. 11. で はBb agama; C asamgamahで あ る。Paliは
agama(Geiger §158). 3. sg. で-si, -si, -hi, -iの 語 尾 が 圧 倒 的 に 多 い
AMg. は こ の 場 合、 参 考 資 料 に は な らな い。Aoristの 語 尾 は 別 と し て、
語 幹 部 分 を 比 較 す る と-galpm-か、-gam-か と い う こ と で あ る。
残 念 乍 ら、Edg. のBHSG 32. 110. 112. の 各 項 で 云 う諸 例 も、Edg.自
-68-身 の 云 う よ う にMv.以 外 で は 殆 ん どな い こ
と、Mula-Sarvastivada-Vina-yaで 一 例 あ る だ け と云 う の で は、Mv 自身 の な か で 写 本 を 検 討 を し て 結
論 す る 以 外 に 方 法 は な い。 そ の 写 本 も双 方 の 形 態 が あ る の で あ る か ら、 双 方 と も認 め る以 外 に 今 の と こ ろ 結 論 は 出 な い。
113. 220. 17.-bhul-lokam: -rl-はPrakrit一 般 で は-11-と な る。(Piscllel
287, durlabha=dullaha, nirlajja=nillajja)
114. 220. 20. udupana: i. 547. でSenartが 註 記 し て い る よ う に、 第2音 節
母 音 が、 第1音 節 母 音 に 同 化 す る こ と か ら 起 る も の で あ っ て、Hultzseh:
The Inscriptions of Asoka lxx. Chap. VII. A. phonletics, 1. vowelsの
項 note 6で、Skt. udapana=udupallaの 例 を 挙 げ て い る。(cf.
Hult-zsch: 本 文p. 28.)
115. 221. 5. anarabdha: Lank. 42.10.で は 「無 起 」 「不 動 」 と 漢 訳 さ れ て
い る。 こ の 訳 語 を そ の ま ま 適 用 す れ ば 全 く 意 味 を な さ な
い。Paliのcog-nateはanarambhaで あ る。
Sn. 745.
Etam adinavam riatva dukkharn drambhapaccayd sabbarambham patinissajja anarambhe-vimuttino
苦 は あ くせ くす る こ と に よ っ て(生 じ)、 こ れ は 苦 悩 な り と 知 っ て
あ く せ く す る こ と を 総 て 捨 離 し、 あ く せ く し な い(も の)は、 解 脱(者)
で あ る
と あ る。Paliのarambhaの 語 意 を と る。arambhaはattempt, effort
(PTSD)を 意 味 し、Child.はarambhaの 項 でarambhavatthuniを
matters or occasions for exertion, or for making an effort"と 訳 し
て い る。
﹃
マ
密
教
文
化
116. 221. 6. antaradvlpe: Senartは i. 547. noteで 「四 つ のdvipaの 集
り が、 世 界 を形 づ く り、 そ の 四 つ のdvipa相互 を わ け る 問 に 」 の 意 だ と し
て い る が、JonesはJMv. i.176. noteで 「仏 陀 の 生 れ た 島 と い う方 が、
一 層、 無 理 が な い よ う だ」と 述 べ て い る。 しか し、 比 較 対 照 の た め に、 た
び た び 引 用 し て き たMv. ii. に お け る 一 文 を と る。
Mv. ii. 23. 10.∼12.
sampratijdte khalu punar bodhisatve caturnnam dvipa-koti-satandm madhye prthivi-manda-pradhand asvatthayasti pradurbhavet, antara-dvipe candana-vanam pradurbhavet, bodhisatvasya upabhoga-paribho-gam dgacche bodhisatvasyaiva tejena.
(私 訳) さて、 菩 薩 が誕 生 な され た 時、 四百 千 万 の島 々 の 中 に、 地 の醍 醐 で あ る (聖)無 花 果 樹 が 現 わ れ た。 島 の まん 中 に、。白檀 の木 の 森 が現 わ れ た。 (そ れ は)菩 薩 の楽 しみ の資 具 とな る もの で あ っ た。(こ れ らは)菩 薩 の 威 神 力 に よ る も の で あ った。 さ らに、Paliの 例 文 を一 つ。 J. i. 240. 10.-12.
tasam pi vacanam akatva parato gacchanto antaradipake ekam
ya-kkhanagaram addasa.
(私 訳)
(ミ ツ タ ビ ン ダ カ は)彼 女 等 の 云 う こ と に 耳 を か さ な い で、 さ らに 進 ん
で 行 っ て、 島 で 夜 叉 の 町 を 見 つ け た。
こ れ ら を 見 る とantaradvipe(pali: antaradipake)に つ い て のJones
の 考 え に は 無 理 が あ る。 ま たJonesの 云 う よ うに 「仏 陀 の 生 れ た 島 」 とす
る の が 果 し て 納 得 で き る で あ ろ う か。 私 は、 特 定 さ れ な い 「あ る 島 」 の 意
に し て お く方 が、Mv. ii. の 文 か らす れ ば、合 理 的 で あ る と思 う の で あ る。
117. 222. 7. vijaniyo: Edg. はBHSD vijaniの 項 とBHSG 10.175.で
-66-vijaniyeと す べ き で あ る と述 べ て い る。
こ こ で はBC写 本 が。niyeと い う語 尾 を も っ て い る。ii. 24. 15. に も
同 語 が 用 い ら れ て い て、Senartはniyoと し て お り、 底 本 と し た ど の 写
本 に もniyeな る 語 尾 は な い。Edg.もnlyeと す る 理 由 を 明 ら か に し
て い な い し、Mv. の こ の 部 分 だ け の 資 料 で 主 張 し て い る。
118. 222. 10.-lahum: Senartはi. 548. noteでlaghuに 代 わ
るPali-pracrite語 形 だ と 云 っ て い る。ii. 24. 18. で はlaghuが 使 わ れ て い る。
Mv. で は 頻 度 の 多 い 語 で あ る。
119. 222. 14. samant6rmijata: Pali: urnmi, ummi, umi, umiはChild,
PTsi)と も に 「波 」 の 意 を 与 え て い る。 当 然 で あ る。Skt. も 同 様 で あ る。
AMg. ummiにRatnachandraはacrowd of people resembling a
series of waves"と 訳 を 与 え て い る。 砕 け る 波 頭 か ら 類 推 さ れ て き た 語 意
で あ ろ う。 こ の 際 はAMg.の 意 を と り 「立 ち 並 び 」 と 意 訳 し た。
120. 223. 4. imaye ca devlye: Mv. ii. 26. 3.∼4.にita eva kumararp
sakya-vardhanam deva-kulam netha abhayaye deviye padavandanam.
の よ う に、 同 じ 意 の 文 が あ る。 こ れ をSellartはi. 549.noteで、Jones
はJMv. 177. noteで と も にabhayaye deviyeと 校 訂 し た 方 が よ い と 指
摘 し て い る。 語 意 か ら し て も、 文 脈 か ら し て も 支 持 で き る と 思 う。 た だ、
i. 223. 4. 及 びii. 26.3.∼4.の 双 方 と も、 写 本 に 積 極 的 な 資 料 の な い の
が 弱 点 で あ る。
121. 223. 8. utsarapam: Edg. はBHSG 9. 22. でutsarapaと 校 訂 す る こ
と を 主 張 し て い る。BC写 本 の み は。paを 支 持 し て い る。utsarapaはn, paはf.と い う よ う に 同 じ 意 で 両 性 が あ る 名 詞 で あ り、metreの 制 約 の な い 散 文 中 の こ と で あ る か ら、 原 訂 を 変 え ね ば な ら な い 積 極 的 な 意 義 は な い。 ﹃ マ ハーバスツ﹄﹁燃燈仏事記﹂試訳(三)
密
教
文
化
122. 223. 10. kalam: Jonesはkulalnで あ ろ う と い う(JMv. i. 177. note
2.)。kalamで は 文 意 が 成 りた た な い し、BC写 本 もkulamを 支 持 し て い
る。
123. 223. 10. pravesiyati: Edg. がBHSG Chap. 37. VoiceでSktの 受 動
態 の-ya-が、 仏 教 梵 語 で-iya, -iyaと 変 っ て い く こ と に つ い て、Geiger,
pischelの 所 論 を紹 介 し な が ら、 総 論 部 分 を 展 開 し て い る。
Edg. は 恐 ら く、M. LeumannのIndogermanische Forschungの 立
論 で、 大 い に 促 進 さ れ、 自分 の 立 論 の 根 拠 と し た の で あ ろ うが、 そ の 核 心
と な る 論 文 を私 は 読 ん で い な い の で、Geiger, Pischelに よ っ てPrakrit
諸 語 そ の も の に お け る 語 形 は 理 解 で き る が、 又、-iya, -iya受 動 態 に つ い
て のEdg. の 所 論 は 恐 ら く信 慧 し 得 ら れ る も の と は 思 う が、 な お、 結 論 は
留 保 しSkt. の-ya-受 動 形 が、 仏 教 梵 語 で は-lya, -iya形 を と る こ と が
多 い と い う経 験 主 義 的 な 理 解 し か 私 に な い の で、後 日 の 研 究 課 題 と し た い。
124. 223. 14. Pradurbhavensu: こ の 和 訳 で は 「現 わ れ た 」 と直 訳 した が、
JonesのJMv.i.177. の 本 文 及 びnoteで 云 う よ う に 「(菩 薩 が)出 し
た の は、 自 分 の 足 だ っ た 」 の 意 と す る 方 が 文 意 は 明 瞭 に な る か も しれ な
いo
Senartもi.549. noteで、 本 文223. 13. yadaに か か わ っ て、 「人 び
と は 彼(=菩 薩)に 頭 を 下 げ る 礼 を させ た か っ た が、実 際 に 現 わ れ た の は、
彼 の 頭 で な くて 足 だ った」 と註 し て い る。
125. 223. 16. mamam: Edg. はBHSG20. 30. でmamam(ahamのAcc.)
に つ い て ふ れ、...; nor is mamam established as acc. in our dialect
と ま で 云 い 切 っ て い る。 こ れ は 別 と し て、BC写 本 はmamaで あ る。 写 本
に 異 読 が あ っ てmetre, 語 意 そ の 他 の 何 か の 制 約 が あ る と き は、 ま た、
Pali mamamを 使 わ ざ る を 得 な い 時 も あ ろ う が、 こ こ は 写 本 に 支 持 さ れ て
malnaで は な く、 異 形 のmamaの 方 が よ い。
-64-126. 223. 18. murdhnam: Skt. のsg. nom. はmurdhaで あ る。。dhnaと
い う語 形 はnom. で は あ る 種 の 写 本 の 中 に は 出 て く る形 で あ る。
こ こ で も、B. murddhnim, C. murddhnaで あ る。
127. 224. 2. Paryesatha: Senartはi. 549. noteでthaと す べ き で あ る
と云 っ て い る。metreの 都 合 で あ ろ う か 私 は 必 要 なguruと は 思 わ な い。laghuで 充 分 と思 う。 128. 224. 7. 以 下 の 諸 偶 に つ い て: Mv. の 十 地 品(i. 63. 15∼193. 12.)の う ち、 例 え ば、150. 3.∼4. の 偶 頚 が、 当 品 の 第115偶 と 同 じ で あ っ た り、 随 所 に 類 似 す る も の が あ る。i. 150. 15. 以 下 の 梗 概 は 第158偶 以 下 と酷 似 し て い る。 129. 224、9. bruvlhi: 文 脈 と語 尾 か ら し て 命 令 形 で あ ろ う と推 量 さ れ る。 写 本 に も異 読 は な い。 し か し、bruvと 云 う語 幹 を 疑 問 に 思 う。 正 梵 に は 当 然、 見 られ る語 形 で は あ る。 こ こ は、 私 はbravihiで あ ろ う と思 う。SP. に 一 例 し か ま だ 見 出 し て い な い。 今 後、Mv. の 中 で こ の √bruの 語 幹 に 注
目 し た い と思 う。(cf. Saddharma-pupdarika Sutra Kashgar Manuscript:
Lokesh Chandra, Tokyo. 1977. P. 97b. 5.: 但 しGilgit写 本 に は な
い。)
130. 224. 10. anumatante: allu-√man+ta+antaで あ ろ う。Edg. はBHSG
34. 1. でL. RenouがEtude de grammaire sanscrite, Paris, 1936. で
過 去 分 詞 語 尾+現 在 分 詞 語 尾 と い う奇 妙 な 形 態 を 引 用 し て い る と紹 介 し て
い る。 今 はRenouの 所 説 に 従 っ た。
131. 224. 18. padam: na ca sana pasyami padam Prthivyamで あ る か
ら、n. pl. acc.の 多 数 派 は-am語 尾 で は な く-amで あ る。 従 っ て、pada
が 性 数 格 に 合 う の で あ る が、 残 念 乍 ら写 本 に は そ の 記 述 は 全 くな い。 こ こ
で、-alp語 尾 もp1.を 表 現 す る こ と も あ る と い う例 と し て 収 録 し て お き た
﹃
マ
蜜
教
文
化
い。 つ ま り、 単 複 同 形 で あ る。
132. 224. 19. prasanta-drsti-patha: 写 本 に よ っ て-drsti yathaと 読 む。
理 由 は 次 の 通 り で あ る。
Mv. に 於 て こ の 語 が 使 用 さ れ て い る 語 形 と 写 本 の 異 読 を 併 記 す る。
1. 1. 151. 8.
Senart校 訂gambhlra-madhura-cesta aryakara prasanta-drsti-patha
写 本N dhura-race
写 本BA drsthi yatha
2. 1. 224. 19.
Senart校 訂gambhira-stimita-cesta aryakara Prasanta-drsti-Patha
写 本BC mbhiram iti na cestarya stiyatha
3. ii. 27. 19.
Senart校 訂gambhlra-stimita-cesta aryakara prasanta-drsti yatha
写 本B. mita-resta yatha
写 本C. sta ascaryyakara
上 記 の1. を 訳 す に 当 っ てJonesはJMv. 119.
noteでPrasantadrsti-pathaはpratyekabuddhaつ ま り 『一 す き の 長 さ 以 上 に は そ の さ き を 見 な
か っ た 』 と い う原 意 の 属 性 の 一 つ か ら 類 推 し て 解 釈 さ れ る べ き で あ り、 こ
こ で、Senartが 写 本 にyathaと あ る をpathaと 校 訂 し た の で あ る。 解
釈 す る に 当 っ て は、yathaを 残 し、F視 野 が 抑 制 さ れ て い る 者 の よ う に 』
つ ま り 『pratyekabuddhaの よ う に 』 と 訳 す こ と も 可 能 で あ る と い う。
Senartはi. 151. 8. の 註 と し て、i. 496. noteに 「彼 ら は 視 界 に 入 る
総 て の も の に 対 し て、 平 静 と 安 穏 を ふ り撒 く」 と 訳 し て い る。
白 石 真 道 教 授 は 次 の よ う に 訳 し て お ら れ る(山 梨 大 学 紀 要 複 本Heft
1II. 17.)。
Sie, die tiefe sanf to Gebdrde (und) ehrwurdige Gestalt (und) ru-higen Gesichtskreis besitzen
先 生 も-pathaの 意 を と っ て お られ る。
Edg. はBHSG 10.189. で 写 本 の よ う にyathaと 読 ん で い る。
私 はyath毎 と読 む。 主 た る 理 由 は 語 義 上 の 理 由 か ら で あ る。-pathaの
range, 或 る い はSenartの よ うにtout ce quatteignent leurs regards
の 意 で は 充 分 そ の 意 を汲 め な い の で は な か ろ う か。 さ ら に も う一 つ の 理 由
は 写 本 に はyathaが 多 数 で あ る こ と で あ る。 そ れ を排 し て-pathaと す る
積 極 的 な 理 由 は な い。
133. 225. 9. adrsim: √drsはSktで はa-又 はs-Aoristを 用 い る の で、 そ
の 語 形 は 次 の と お り。
2. sg. adarsas又 はadraksls: 2. pl. adarsata又 はadrastaで あ る。
s-Aorist形 の 場 合 の 特 徴 は 位 置 転 換 し た-ra-がVrddhi化 し て い る こ と で あ る。 これ を参 照 資 料 と し な が ら、(1)a-Augmentを 有 し、(2)語 根 は √drs(3)主 語 が2人 称 で あ る と い う条 件 で、-imで 終 るAorist語 形 を 探 す が、 な お、 発 見 し て い な い。-imは2人 称 で は 無 理 な の で は な か ろ う か。 私 は-iと 読 む 方 が よ い と思 う。 写 本BCはadrsamと し て い る。 134. 偶 頚No. 172. ∼No. 177: i. 151. 12.∼152. 3. の そ れ と類 似 し て い る。 135. 226. 16. Pamcama: Skt. な ら ば 序 数 の 形 で あ る が、 基 数 に 用 い られ て い る。 136. 19. slaksna-cchaviそ の 他 に つ い て 検 討 を 加 え る 方 法 と し て、 本 文 第184偶 全 文 を転 記 し、 こ れ を 三 十 二 相 中 の 皮 膚 や 身 体 の 色 合 い に 関 す る 表 現 を、 他 の 経 論 の 表 現 と比 較 す る や り 方 で、 お こ な う こ と とす る。 sloka no. 184. (226. 18. -19.)
mrdu jald ca pratipurna ekd urdhvagra pamcama/ slaksnacchavi hamsantara ca utsadd ca to dasa//
上 記 のslokaの 第3、 第4padaの 語 は、 要 素 はslakspacchavi,
﹃
マ
密
教
文
化
hamsa, antara, utsadaの 四個 で あ る。 この こ と を確 認 して お い て、 仏 の 三 十 二 棉 の うち、 皮 膚 又 は身 体 の色 合 い につ い て の各 種 の 資料 の表 現 は ど うか を、比 較 して み る。 ま ず、 皮 膚 が細 滑 な どの性 質 と、 も う一 つ は色 合 い に よっ て大 別 す る。 た だ、 皮 膚 に関 す る二 つ の表 現 を合 体 して い るの も あ るの で、 それ は合 成 語 の最 前分 の表 現 で 区分 し、*印 を付 した。 そ の語 の終 りの数 字 は行 数 を示 す。 細 滑 等 の 表 現 色 合 い Mv. i. 226. slaksna-cchavi (1.9) svarna (227. 1.) Mv. ii. 30. slaksna-cchavi (3) svarna (4)
Mv. ii. 305. slaksna-cchavi (14) kamcana-cchavi (7) Lal. 105. *suksma-suvarna-varna-cliavi(19) 膚 膿 柔 軟 細 滑 紫 磨 金 色 大. 3. 557a. 430. mrdu-taruna-sukszna suvarna-chavi(10) cllavi(6) 身 体 柔 澤 真 金 色 大. 3. 610a. 大. 3. 610a. Gv. 402. suksma-cchavi(3) suvarna-varna-ccnavi(5) 六 十 華 厳 は 省 略 さ れ て い る。 六 十 華 厳 は 省 略 さ れ て い る。 大. No. 279. 皮 膚 細 軟 大. No. 279. 如 真 金 色 大. 10. 408a. 大. 10. 408a. 大. No. 293. 細 薄 潤 滑 大. No. 293. 身 皮 金 色 大. 10. 788c. 大. 10. 788c.
B-bhu. 375. slakspatvat tvaco(19) kamcana-samnibha-tvak (19)
身 皮 細 滑 身 皮 金 色 大. 30. 566c. 大. 30. 566c. 379, suksma-slaksna kamcana-samnibha-tvacata(18) tvacata(16) 身 皮 細 滑 身 皮 金 色 大. 30. 567c. 大. 30 5670.
381. suksma-tvakta (11) 身 皮 細 滑 大. 30. 568a. slakspa-suksma-tvakta(17) kamcana-salpnibha-tvakta(20) 身 皮 細 滑 身 皮 金 色 大. 30. 568v. 大. 30. 568b. Dharm-s. 334. suvarpa-varpata(20) 身 真 金 色 光 潔 荘 厳 相 大. 17. 661b. sukla-cchavita(20) Rastr. 47. Capita-kanaka-varna (10) 大. No. 310. 身 色 如 真 金 大. 11. 468a. 大. No. 321. 厳 飾 金 色 身 大. 12. 110. 51, slaksna-echavi (5) kanaka-varna(5) 大. No. 310. 皮 膚 軟 妙 澤 大. No. 310. 身 如 紫 金 色 大. 11. 469b. 大. 11. 469b. 大. No. 321. 皮 膚 柔 軟 大. No. 321. 真 金 色 大. 12. 120. 大. 12. 120. Ratna. 179. *suksma-suvarpa-varpa-cchavi-柔 軟 金 色 皮 大. 31. 844.o
Prajn-vy. 920. pratanu-echavl(3) suvarna-varna(3)
漢 訳 な し 漢 訳 な し
id. 919. chlaksma-cchavita(8) suvarna-varnata(8)
漢 訳 な し 漢 訳 な し
﹃
マ
密
教
文
化
DN. ii. 17. sukhumachavi(33) suvanna-vanno kancana-sannibhattaco (31) DN. iii. 1.43. sukhuma-cchavi (27)
suvanna-vanno-kancana-sannibhattaco (25) M. ii. 136. sukhumacchavi (19) kancanasannibhattaco (18)
以 上 か ら先 述 のMv. i. sloka no. 184.の 第3、 第4padaに 戻 る と、
第1、 第2padaの 表 現 は 「五 つ 」 と偶 の 本 文 で 断 っ て い る か ら、slakspa cchaviの 前 は、 皮 膚 ・身 体 の 色 合 い に つ い て述 べ る語 が 入 る余 地 は な い。 そ の 後 はhamsaで、 こ こ に も他 の 語 が 入 る 余 地 は 全 く な い。 因 にhamsa はMvy. 281. hamsa-vikranta-gamiと し て、 八 十 種 好 の 範 囲 に 入 る べ き も の で あ る。 と す れ ば、 上 表 の 左 欄"細 滑 等 の 表 現"に あ る も の の う ち、 右 欄 に 入 る べ きs(u)varpa及 び 重 複 を避 け る た め にslakspa以 外 の 要 素
を 抽 出 す る と、丁 度、Lal. 430. 6.の よ う にmrdu, tarupa, suksmaの み が
残 る とい う こ と に な る。 推 測 す れ ば、 こ の 種 の 表 現 を 合 わ せ て、slakspa 一 語 で 代 用 し た も の で あ ろ う と思 わ れ る。 韻 の 総 数 と調 律 の 関 係 で、 さ ら
に 多 くの 語 を使 え な か っ た も の で あ ろ う。halmsaの 代 りにsuksmant
とな れ ばmetreは 合 う し、 八 十 種 好 は 除 か れ て 整 理 で き る が、 写 本 は 許
して い な い。 た だ、 写 本BCがslakspacchavi visantaroと し て い る が、
visadantaraの 意 とす れ ば、Dharm-s. 334. 20.のsukla-cchavitaを 連 想
さ せ る。 し か し、 全 体 の 流 れ を 見 れ ば、"白 い 膚"は 違 和 感 が 強 い。
こ の よ う な こ と か ら、 「も う一 個 の 要 素 が あ る 筈 」 だ と云 う考 え を 残 し
て、 訳 と し て は 一 応、 原 文 補 訂 は し な か っ た。
137. 5. Diparpkara: SenartはMv. i. 551.のnoteでDipamkaraのdipaは、
燈、 明 り を 意 味 す る が、 これ は そ の 意 味 で は な く て、Pali dipa、Skt. dvipa(島)か ら 出 て い る の で、 こ の 話 中 で 忽 然 と現 わ れ る 島 で あ っ て、 maham obhasoと 云 うの は、 編 者 の 恣 意 的 挿 入 で あ っ て、Skt.で は、 完 全 に 明 瞭 な 二 つ の 語(註: dvipaとdipa)をdipaと 云 う あ い ま い な 語 を 使 う こ と に よ っ て 曖 昧 さ を 引 き お こ し て し ま っ た と 云 っ て い る。 さ て、 語 の 対 照 を す る と 次 の よ う に な る。