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密教文化 Vol. 1960 No. 47 005堀内 寛仁「上杉神社宝物〓祭の剣の梵字について PL61-L40」

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(1)

鰐 祭 の 剣 の 梵 字 に つ い て

に)ま え が き 上 杉 神 社 の 宝物, 薦 祭 の剣 とは 山 形 県 米 沢 市 南 堀 端 町 の 元 別 格 官 幣 社、 上 杉 神 社 に秘 蔵 され て い る宝 剣 で, 同神 社宮 司大 乗 寺 良文 氏 の手 紙 (本 学, 中野 義照 先 生 宛)に 依 れ ば, そ の 宝剣 は 早 く国 宝 に 指 定 され, 現 在 も重 要 文 化 財 の 指 定 を 受 けて い る。 長 さ一 尺 三 寸 七 分, 剣 の 両 面 に金 象 嵌 の梵 字 が あ り, (写 真 参 照)片 面 の梵 字 の下 部 に は七 星 が 金象 嵌 され て い る の で, 我 が 国 に伝 え る数少 な い 七 星 剣 の 一 つ とい わ れ て い る 由, 同 神 社 で は, 謙 信 公 護 持 の 祭 器(軍 神 祭)と 言 い伝 え て い る もので あ る。 と ころ で, そ の金 象 嵌 の梵 文 が 不 解 で あ るか ら, とい うの で, 一 応 梵字 が よ め る よ うに 刀 身 の 部 分 を 撮 影 した 上, 写 真 同 封 で 中 野 先 生宛 に 同 神 社 か ら判 読 の依 頼 が あつ たの で あ る。 確 か 九 月末 日頃 と思 うが, 中野 先 生 宅 に立 ち寄 つ た 際, そ の 写 真 を渡 され, 判 読 を 命 ぜ られ た私 は その 写 真 を 自宅 に 持 ち帰 つ て判 読 した処, す ぐ さ ま その 梵 究は, 一 は 不 動 明 王 の慈 救 冗 で あ り 一 は 不動 能 成 就(こ れ は後 に少 しちが うこ とが 判 つ た が)で あ る こ と が判 つ た。 しか し第 三 の 梵 究 は全 く私 共 に馴 染 み の な い真 言 で あ つ て, 上 杉 神 社 宝 物 鵜 祭 の 剣 (重 要 文 化 財 ) 薦 祭 の 剣 の 梵 字 に つ い て

(2)

密 教 文 化 一 向 見 当が つ か なか つ た。 しか し七 星 剣 と い う先 入 観 が あつ たの で, 或 は と思 つ て 北 斗 法 に関 す る真 言 を 調 べ て み たが, 北 斗 関 係 に もな い真 言 で あ つ た。 そ こで 全 三 究 の 中, 二 究 まで が 不 動 明 王 の 御 真 言 で あ るか ら, 或 は全 部 が不 動 明 王 の 御 真 言 で あ るか も知れ ぬ と, 手 許 に あ る こ秘 密 の 事 相 の研 究 こ や 密 教 大 辞 典, その 他, 真 言 集 な どを 調 べ て み た が, や は りそれ ら しい もの は全 然 な い。 結 局 こ うな つ た ら蔵経 に つ いて 不 動 関係 の儀 軌 を か た つ ぱ しか ら見 て行 くよ り 手 が な い ので あ る。 と こ ろで 現 在 の我 が 国 の仏 典 研 究 の段 階 で は, 大 蔵 経 に現 わ れ る漢 字 音 の音 訳 真 言 か ら直 ち に原 文(梵 文)を 想 定 す る こ と は とて も 出来 な い相 談 で, ほ と ん ど振 仮 名 を た よ りに 御真 言 の読 みを 学 習 して来 た私 共 に は, 翻 訳 当時 の 中 国 音 で 写 した漢 字 訳 真 言 を す らす ら読 み こ なす こ とは, も と よ り不 可 能 で, た と え 何 等 か の 手 段 で こつ こつ 解 明 して 行 くとい う風 な, そ ん な 手 段 さえ, ま つ な い。 そ れ に は ま つ既 知 の 真 言 につ いて 対 訳 漢 字 の 音 価 を 示 す 索 引の 如 き もの が まつ 必 要 で あ り, 更 に そ の索 引 にな い字 につ い て は, そ れ が 索 引 に あ る ど の字 と同 音 価 の 字 で あ るか を 韻 鏡 その 他 に よつ て 決 めて か か らね ば な らな い か らで あ る。 これ は 仲 々の 仕 事 で, 到底 短 時 日 にで き る性 質 の もの で は な い。 要 す る に今 日の 段 階 で は, これ は一 応 わ か らな い と い う よ り外 は 致 し方 の な い 状 態 で あ つ た。 しか し折 角 の 問合 せ で あ り, せ めて 私 の 従 来 の 少 な い経 験 知 識 か ら来 る勘 を た よ りに 不 動 関 係 の 儀軌 の み で も, 見 て み よ う と: 蔵 経 を 開 い た。 さ て 不 動 明 王 の 独 立 した儀軌 類 と して は, 下 記 の 如 き もの が あ り, ま と め て 大 正 蔵 経21巻 に収 載 され て い る。 1199, 金 剛手 光 明灌 頂 経 最勝 立 印聖 無 動 尊大 威 怒 王 念 請 儀 軌 法 品(一 巻)… … 唐 不 空訳… 1頁 1220, 底 哩 三 昧 耶 不 動 尊威 怒 王使 者 念 請 法(一 巻)…… 唐 不 空訳 … … … 7頁 1201, 底 哩三 昧耶 不 動 尊聖 者 念 諦 秘 密 法(三 巻)……… 唐 不 空訳 … … … 13頁 1202, 不 動使 者 陀 羅 尼 秘密 法(一 巻)……… 唐 金 剛 智 訳……… 23頁 1203, 聖 無 動 尊 安 鎮 家 国 等法(一 巻)……… 27頁 1204, 聖 無 動 尊 一 字 出生 八 大童 子 秘 要 法 品(一 巻)……… 31頁 1205, 勝 軍 不 動 明王 四十 八 使 者 秘 密 成 就 儀 軌(一 巻)唐 遍 智 集……… 33頁 と こ ろで 収 載 順 序 に した が つ て, 立 印 軌 か ら御 真 言 の み拾 つ て 行 くと, 幸 な

(3)

事 に薦 祭 剣 の第 三 究 は これ だ とい う御 真 言 が す ぐ見 付 か つ た。 全 くま ぐれ 当 り で あ るが, そ れ は 「渇 識 印 と共 に用 いて 一 切 の事 業 が み な 能 く成 弁 す る」 と説 か れ て い る不 動 明 王 の剣 印 の 御 真 言 で あ つ た。 そ こで剣 の 梵 字 と立 印 軌 の漢 字 (音 訳 字)を 対 照 して読 ん で み る と, ます ます これ に 間 違 い な い こ とが 判 つ た。 梵 漢 が 互 に他 の不 解 点 を 解 明 す る こと に な る か らで あ る。 もち ろ ん 次 に示 した よ うに, 未 だ に不 明 の処 が あ り, ま た梵 漢 二 者 の間 に, ど う して も一 致 し が た い 箇 所 もあ る よ うで あ るが, これ は我 が 国 の梵 字 で書 かれ た 真 言 が 伝 写 の 間 に か な りの誤 写, 誤 伝 を 持 っ て い る事 を 考 慮 に入 れ る な らば, この程 度 の 不 一 致 は許 さ れ ね ば な らな い ので あ る。 剣 の梵 字(写 真, 左 上 葉上 か ら)を 印 刷 上 の 必 要 か ら便 宜 ロー マ ナ イ ズ して 示 し, 之 に立 印軌 の漢 字(対 訳 字)を 対 比 して み る と, 次 の 如 くな る。

(na) (mah) (sa) (ma) (nta) (va or ve) (jra) (nam) (?) (a) (ca) (la) ()

暴 莫 三 漫 跨 囎 日 羅三合 報 庵 嫡 左 羅 迦 引

(nda) (vu) (dha) (ce) (ta) (ha) (hum) (ham) () () () () (i) (nam)

撃 波 駄 際 旺 迦 件牛 畔 怯 引 珊 怯 珊 伊 南(24)上

(hr) (rhr ?) (mam) (ha) () (ha) (la) (vi) (sa) (sah)

吃 哩 二 合(25)上・下 ・ 廉(26)恒(27)嚢(23)三合 輪 賀 引 擁 養 擁 尾 沙 索(23)入

(pta) (ah) (hr) () (ha) (pha) (tu) () (rya) (ca) (la)

践(30)移二合 悪 絶 哩(21)引入 都 賀 引 嚢 託(23)薯半 阿(34)引哩 夜 二合 左 羅 引*

(sa) (ccha) (kim)

vi ci 2)

dhi (ra) (ya) (si?) (i) (nam) (ka) (ryam) () (ro)

藁 繕 緊 止 蝿 引 也(36)徒 伊 南*上 迦引 哩 養 二合 矩 噌 (sva) (ha) 娑 珊縛 二引合*詞(22)*引 以 此 真 言 用 前 剣 印, 一 切 事 業 皆 能 成 弁 か くして 第 三 究 は以 上 の如 く立 印軌 に説 か れ て い る不 動 剣 印 の真 言 で あ る こ とが 判 つ た。 も ち ろん 梵 漢 二 究 を対 比 して み て も, 私 には や は り不 明 の箇 所 が あ り, 究文 を全 体 と して, 一 貫 して 之 を説 明 す る程 度 に は 理解 で きな か つ た。 しか し兎 も角梵 究 が い か な る性 質 の も ので あ り, そ の説 処 も判 明 した こ とで あ る ので, この程 度 で先 方 に も満 足 して 貰 え る もの と, 中 野 先 生 に写 真 を 受 取 つ た翌 日, す ぐさ ま以 上 の こ とを文 書 で報 告 した。 私 と して は, これ で 問題 が 終 つ た と思 つ て い たの で あ る。 処 で 中野先 生 の方 で は是 非 文 意 を 解 明す る必 要 薦 祭 の 剣 の 梵 字 に つ い て

(4)

密 教 文 化 が あ る と之 を 白石 真 道 先 生 に廻 わ され た の で あ る。 しか し白石 先 生 か らは慈 救 究 の下 にPhatの 加 句 が あ る点 を 注 意 して下 さっ た の み で, 折 角 い ま ま で 私 が や つ た事 で あ るか ら, 私 が や つ た方 が 良 い と送 りか え され て 来 た, そ こで 私 は 再 び 成 算 の な い 調 査 に と りか か つ た の で あ る。 そ れ は文 意 を 知 るた め に は正 し い 形 の 究 文 の 原 型 が 必 要 で あ り, 正 しい 形 を想 定 す る た め に は 文 意 が わ か らね ば な らぬ か らで あ る。 全 くい た ち ごつ この 調 査 で, 時 間 を か けた 割 合 に は成 績 が あ が らず, そ の 後 本 年 度 の 秋 季 同 学 会 に之 を報 告 して い ろ い ろ諸 先 生 か ら有 益 な 教 示 や 意 見 を 受 け たが, 結 局 い ま だ に 満 足 の行 く 結 果 は 得 られ な い の で あ る。 しか し本 誌 には 先 に恩 師 白石 先 生 の こ武 田信 玄 公 の護 身 旗 の 梵 冗 こ 解 明 の 発 表 が あ り, そ の 信 玄 公 に対 す る上杉 謙信 公 の薦 祭 剣 の これ ま た 梵 字 真 言 と い う事 で 多少 対 照 の 妙 もあ り, か た が た 中野 先 生 の指 示 もあ つ た の で, 未 解 決 の ま まで あ るが そ の報 告 を ま とめ て, こ こに掲 載 す る こ と に し た の で あ る。 (2)第 一 究, 慈 救 究 に つ い て たがね ま ず 薦 祭 剣 の 梵 字 を ロ ー マ 字 で 示 す と, (恐 ら く塾 師 は 梵 字 の 書 風 を 知 らず た だ そ の 形 を 移 し た こ と か ら来 る 異 形 を 勘 定 に 入 れ て 私 が よ ん だ 所 を 示 す と)

(na) (mah) (sa) (ma) (nta) (va) (jra) (nam) (ma) (ha) () ro? () () () (tu) (ya) (hum) (tra) (ka) (ham) (mam)

sa? na? su?

(pha) (tu)

以 上 の よ う に, 写 真 で は

1. mahaのhaの 字 が 上 半 部 分 し か 見 え ず, 2. っ つ い てro, sa, paの 三 字 が 全 く見 え な い,

3. ま たsphotayaのspho字 もsuの 如 くに も見 え る, し か し 次 のta

字 と の 間 隔 が 少 し 広 い よ うで あ る か ら, 元 来Sphoorsphaと あ つ た と 断 定 す る こ と が で き る。 そ れ は 前 述 の 大 乗 寺 宮 司 の 書 翰 に, 宝 剣 は 一 度 火 に 罹 つ た

?と も 考 え られ 文 字 の 磨 滅 等 も あ る 由 で あ る か らで あ る。

4. 次 にta字 は そ の 字 の 下 にuを 示 す 汗 点(へ)が あ り, い か に もtuの

如 く見 え る が, こ れ はta字 にvirama(へ)を 附 し たtの 彫 り誤 り で, u点

で は な い。 そ れ はuを 示 す 汗 点 に は も 渓 へ 等 の 形 が あ る が, 通 常ta字

(5)

-58-に 対 して は(へ)の 形 は用 い な い か らで あ り, 更 に ま た これ がtuで な くてt で あ る こ とは 次 の 事 か ら も断 言 で き る, それ は この誤 ま りは第 二 究 に もあ り, 第 三 究 に於 て も常 に繰 りか え され て 常 にphaち とあ るべ き処 が, 悉 くこ の 形 のphatuに な つ て い るか らで あ る。 と こ ろでtuはtの 誤 りと して, こ こで 不 動 尊 の慈 救 究 と してtはtaで な け れ ば な らぬ の に, ど う してtaがtと 書 か れ た か につ いて は恐 ら く不 動 の真 言 に はphatな る語 が実 に屡 々用 い られ て い る の で, 当然Sphotaya或 は 俗 語 形 と して もSphatayaとphataで な けれ ば な らぬ 筈 が, しば しば 瀕 出す る phatと 誤 ま り書 かれ た もの で あ ろ う。 か か る種 類 の 誤 りは 実 に我 が 国 の 古 写 本 に は無 数 に あ り, この 礁 祭 剣 の 第 三 究 の 漢 字 訳 に於 ける羅 恒 嚢(ratna)の 如 き もそ の 一 例 で あ ろ う し, こ の慈 救 究 で は な い が 同 じ不 動 明 王 の 御 真 言 中 の SphatayaがSphatyaと 書 か れ て い る 実 例 が 大 師請 来 梵 字 真 言 集(多 分 室 町 初 期 の転 写 本 で 原 本 で な い)に も見 え て い る。(長 谷 宝 秀 編 纂, 同 書, 下 巻19 2頁 威 怒 真 言 参 照) な お, 百 歩譲 つ て この 御 真 言 の 原 型 がphatと な つ て い た と い う人 が あ るか も知 れ な い が, も し然 らば その 際 のt音 は 梵 字 の 書 法 と して 次 のya 字 と と も にtyaと 書 か れ ね ば な らぬ か らそ の議 論 は 成 立 しな いの で あ る事 を 附 記 して お こ う。 5. 次 にyaは 明 らか にyaの 誤 写 と認 定 す る。 6. 次 にtratをtra-kaと した事 は これ ま た 同 上 書 に実 例 が あ り, tが 次 のham, mamのha(日 本 読 み'カ ン')に 引 きず られ れ ばtrakと な る可 能 性 は 充 分 に あ り, そ のK音 がKaと 書 か れ た にす ぎな いか ら, あ り得 る誤 伝 で あ る。

こ う見 て 来 る と, この 真 言 が

Narnah samanta-vajranam! maha-rosana sphotaya hum trat ham mam と い う不 動 の慈 救 究 を書 い た(彫 つ た)も の に 間違 い な い こ とは 何 人 も否 定 で きな い と思 う。

而 して 次 のphatuはphatの 誤 りでtuの 如 く見 え るの がtの 彫 り誤 りで あ る こ とは 上 に説 明 した通 りで あ り, このpllatな る二字 は加 句 で あ る。 加 句 とは 息 災 に はomと かSvaha, 調 伏 に はphat等 の 語 を 真 言 に加 え る事 を い

薦 祭 の 剣 の 梵 字 に つ い て

(6)

-57-密 教 文 化 い, 大 日経具 縁 品(大 正18. 9. C)に は 等 正 覚 真言 言 名 成 立 相 如 因陀羅 宗 諸 義 利 成 就 有 増 加 法 句 本 名行 相 応 云 々 とあ り, こ の後 に加 句 の語 や そ の用 法 が 説 か れ て い る。 な お, 真 言 の句 義 は既 に栂 尾 先 生 が 大 日経 の 対 訳漢 字 を 掲 げて 秘 密 事 相 の研 究(P. 488)に 訳 され て い る の で, それ を 次 に転 載 す る。 ナ ウ マ ク サ ンマ ン タ パ ザ ラ ダ ン 南 歴 三 曼 多 伐 折 蝿 報 namah samanta-Vajranam 普 く諸 金 剛 に 帰 命 す セ ン ダ マ カ ロ シ ヤ ダ ソ ハ タ ヤ ウン 戦 茶 摩 詞 路 漉 檸 薩 破 託 也 合牛

capda-maha-rosana sphotaya hirp

暴 悪, 大 忽 怒 の 相 あ る も の よ, 破 壊 せ よ, 恐 怖 の 聖 語

タ ラ タ カ ン マ ン

恒 難 託 桿 漫

trat ham mam 残 害 の聖 語 二 種共 に種 子

この 真言 に於 け る桿(ham)な る種 子 は因 業(hetavah)を 空 無(m)に す る三 昧(a)を 表 わ し, 漫(mam)は 吾 我(mama-kara)を 空 無(m)に す る三 昧(a)を 示 し た もの で あ る。(以 上 秘 密 事 相 の 研 究) この 中 1) 諸 金 剛 とは金 剛 部 の諸 尊 を指 し, 金 剛 とは直 接 に は金 剛 杵 の こ とで あ る が, 金 剛杵 は仏 智 の象 徴 で あ り, こ こで金 剛 と は金 剛 の 如 き堅 き智 を 有 す る者 の意 で あ る。 2) 暴 悪 大 忽 怒 者 の相 を有 す る者 と は, い うまで もな く内 心 の 智 を か く して 外 に奴 僕 の 姿 を 現 わ す 不 動 明王 の事 で, 漢 訳 経 典 で威 怒 王 と言 わ れ て い る威 怒 は このcapdaの 訳 語・で あ ろ う。 3) Sphotayaの ロー マ ナ イ ズ は正 しい梵 語 で あ るが, その 誰 略Sphataya が 直 接 には 対 訳 漢 字 の こ破 こ に一 致 す る。 4) tratの 説 明 の 残 害 とは底 哩 三昧 経 等 に 依 れ ば不 動 明王 は 修 行 者 の 残 食 の供 養 を受 くる とあ る。 これ 不 動 明 王 の 智徳 が 煩悩 を根 こそ ぎ轍 い 尽 くす 事 を 象 徴 した もの で あ る。 此 尊 本 願, 大 悲 捨 身, 奉 侍 一 切持 諦 者, 身如 奴 僕, 現 一 目相, 受 此 残 食供 養 〔一 巻 本, 大21. 10C〕

(7)

喫 残 食 者, 轍 一 切 衆 生悪 業 煩 悩 重 障, 令 尽 無 飴 〔三 巻 本, 大21. 15. C〕

(3) 第 二 究, 金 剛 密心 の 真 言 に つ い て

第 二 究 は慈 救 究 に つ づ い て(写 真 で は右 上 葉 の 最 後 の 一 字naよ り)七 星 の 象 嵌 の上 ま で に彫 られ, 写 真 に よつ て も良 く見 え る。 即 ち ロー マ ナイ ズ して示 せ ば 次 の 如 くに な る。

(na) (mah) (sa) (ma) (nta) (va) (jra) (nam) (a) (ca) (ia) (ka) (nda) (ca) (nda) (ma) (dha) (ya) (pha) (tu or tan)

この 中, kapdaはkapaの 誤 伝, maは 写 真 で はmaに 見 え るが, 原 物 で はsaか も知 れ ず, い ず れ に して もsaの 誤 ま り と見, ま た 加 はtauの 如 くに も見 え る が, 例 のtuか も知 れ ず, も しそ うだ とす れ ば, これ はtの 彫 り 誤 りで あ るか ら, この 御 真 言 は秘 密 事 相 の 研 究P. 410に 掲 げ て あ る四 度 加

行, 胎 蔵 法 の不 動 能 成 就 の 真 言 とい う事 にな る, す な わ ち

ナ ウ マ ク サ ン ヘ マ ン タ パ ザ ラ ダ ン

嚢 歴 三 曼 多 口縛 日 羅 燕

na mah samanta- vajra iii

帰 命 す 普 く 諸 金 剛 に

セ ン ダ オ ン ア シ ヤ ラ ニヤヤ ダ

職 學 庵 阿 者 羅 迦 撃

canda om acala kazla

暴 悪 者 よ 聖 語 不 動 よ 砂 目者 よ

シ ヤ ロ サ ダ ヤ ウ ン パ ツ タ

者 櫓 娑 駄 耶 件 津 託

caru- sadhaya huru phat

供 物 成 就 の た め に 忽 怒 擢 破 の 真 言 と多少 の 句 は前 後 す る が 殆 ど 同 じで あ る。 そ こで 始 め は 永 ら くこの 先 入 観 に 捉 え られ て 第 二 究 は不 動 能成 就 と信 じて い た。 しか し後 に第 三究 の文 意 や そ の 原 型 の 想 定 の た め 多少 身 を 入 れ て 漢訳 の 不 動 明 王 の 儀 軌 類 を通 読 して い る と, 能 成 就 とは別 に, 全 く第 二 究 と, 句 の 順 序 も一 致 し, またCaruの よ うな 余 計 な 字 を 含 ま な い, 文字 通 り, 全 く第 二究 と一 致 す る真 言 を見 付 け る こ とが 出来 た。 そ れ は立 印 軌 で金 剛密 心 の 真 言 とい わ れ, 金 剛 印 と共 に 用 い て 能 く一 切 の 事 業 が成 就 す る と説 かれ て い る真 言 で あ つ た。 次 に あ げ る よ うに, 前 に 挙 げ た 不 動 能成 就 の真 言 と同 一 語 句 ば か りで あ るか ら, た や す くそ の対 訳 漢 字 か ら原 文(梵 文)を 想 定 す る こ とが 出 来 る。 そ こで 漢 訳 と対 照 して 梵 文 を 示 す と次 の 鵜 祭 の 剣 の 梵 字 に つ い て

(8)

-55-密 教 文 化 如 くに な る。 復 次 心 真 言 アリ 用二 金 剛密 印一 此 之 真 言 用 金 剛 印 能 為 成 就 一 切 事 業 嚢 莫 三 満 多 嚇 臼 羅 二含・ 哺*引

na mah sa man to va j rd nam

姻 左 擁 迦 肇 賛 摯 娑 引 駄 也 瞠 発 旺(44)既(23)宇

半音 a ca la kd na can da sd dhd ya huzn pha t

さて これ を 薦 祭 剣 の梵 字 と比 べ て み る と, 礁 祭剣 で は 二Kapaが 二Kandaに な つ て い るが, Kanaは 前 に あ げ た能 成 就 の 真 言 の 中 に もあ つ た よ うに 不 動 明 王 の 一 眼 を 閉 じて 砂 目 で あ る こ と を示 す 言 葉 で, 不 動 明 王 の 真 言 の 語 句 と して は 誠 に格 好 の言 葉 で あ る。 之 に反 してKandaは 大 体 こ部 分 こ とい う意 味 の 言 葉 で 前 後 の 語 と もつ なが りが 悪 く, これ はKanaの 誤 写 誤 伝 と 考 え ざ るを 得 な い。 しか も そ の可 能 性 は まず 我 が 国 の御 真 言 の読 み癖 の 中 に求 め る こ とが 出来 る。 そ れ は我 が 国 の 真 言 の読 み癖 と して はサ マ ンタ(Samanta)を サ ン マ ンダ と 読 み, バ ザ ラ(Vajra)を 往 々 バ ン ザ ラ と 読 む か らで あ る。 し た が つ て こ の 流 儀 でKanaを よ め ば カ ンダ とな る し, それ を 梵 字 に写 せ ばKandaと な る の で あ る。 しか し誤 写 誤 伝 の原 因 と して は, ま た こ うも考 え られ る。 それ は こ の 御 真 言 に は 二Kanaに つ づ い て 直 ぐCandaが あ るか ら, そのCandaのndaを 誤 つ て 記 した の か も知 れ な い の で あ る。 更 に また こ うも考 え られ る。 それ は漢 訳 字 の こ撃 こ はCandaのnaを 写 した もの で, nの 音 はcaと 共 に ご賛 こ の 字 で 写 され て い る けれ ど も, 誤 ま つて 肇 がndaで あ る と 解 す る者 が あれ ば, 迦 撃 の 撃 も ま たpdaと 考 え る こ とに な り, 同 じ 漢 訳 字 が あ る か らと の 理 由 で (Can画 な る語 は 他 の金 剛 部 の 諸 尊 の 真 言 に も しば しば 現 わ れ 馴 染 み 深 い が Kanaな る語 は不 動 尊 の 真 言 に の み現 われ 馴 染 みが 少 ない の で,)馴 染 み深 い既 知 のCapdaよ り類 推 して 正 しいKanaが, 意 識 的 に, 無 意 識 の誤 写 で は な く 反 つ て 故 意 に改 悪 され た の か も知れ な い ので あ る。 誤 写 誤 伝 の原 因, 理 由 と し て は この 様 にい ろい ろ と考 え る こ とが 出来 る。 しか しい ず れ に して もこ こ は対 訳 漢 字 の 上 か ら見 て も(立 印軌 の対 訳 字 の み な らば, 一 対 一 で あ ろ うが, 漢 訳 に は他 の底 哩 経等 に も同 音 異字 で 対訳 され て い るか ら)こ こ は対 訳 漢 字 の上 か こ くか こ くき ら も, 文 意 の 上 か ら も, Kanaが 正 し くKandaは 誤 ま りで あ る と 断 定 せ ざ る を 得 な い の で あ る。

(9)

-54-た だ し, こ の誤 りは, 塾 師 の彫 り誤 ま りで な い事 は もち ろ ん, 恐 ら く塾 師 に 梵 字 を 示 した人 の犯 した誤 写 で もな く, そ の人 の 依 用 した原 文 そ の もの が 既 に Kandaと な つ て い た もの と思 われ る。 それ は 前 述 の 大 師 御請 来, 梵 字 真 言 集 の 梵 字 が 既 にKapdaと なつ て い る か らで あ る。 恐 ら く薦 祭 剣 の 梵 字 は こ の大 師請 来 真 言 集 と同 系 統 の写 本 か ら転 写 され た も の と思 わ れ る。 こ の事 は第 三 究 と請 来 真 言 集 の 梵 字 を 比 較 す る と き, 更 に そ の 感 を 強 うす る ので あ る。 な お 立 印 軌 に於 け る, こ の金 剛 密 心 の 真 言 は底 哩 経 で は帰 命 句 は省 か れ て い るが 金 剛 杵 の 印 と共 に用 い て, 行 者 が便 所 等 で 身 体 が けが れ た時, そ の 身 を 加 持 浄 除 す る真 言 と して 説 か れ 一 巻 本 で は 庵 阿者 遷 迦(24)嚢 職 撃 沙 駄 耶 畔 津(25)咤(大21. 7B11) 三 巻 本 で は, 不 動 金 剛 杵 印 の真 言 と して 庵 阿者 選 迦 撃 職茶 渉 駄 耶 畔 淳 托(大21. 17B15) と音 写 され, ま た 不 動 使者 法 で は, 獅 子 奮 迅 印 の 真 言 と して 那 摩 三 曼 多 末 實難 哺, 庵 阿者(22)羅迦 那 職肇 娑(20)太耶 瞠*津 と説 かれ て い る。 そ れ ぞ れ 迦 嚢, 迦 肇, 迦 那 で. 何 れ もKapdaよ りはKapaの 方 に近 い事 か らもKapdaがKapaの 誤 写 で あ る こ とが よ く判 か るの で あ る。 以 上 の事 か ら鵜 祭 剣 の 第 二 究 は, い ず れ に して も不 動 明 王 の 御 真 言 で, 金 剛 杵 印 と共 に用 い られ る真 言 で あ る ことが 判 明 した が, 軍 祭 剣 の 事 で あ り, 大 小 不 浄 の浄 除 とは直 接 関係 が な い の で, 右儀 軌 中 で も, 立 印 軌 に依 つ た もの で あ り, 直 接 に は立 印 軌 の 諸 真 言 が 梵 字 で 収 録 され て い る こ大 師 請 来 梵 字 真 言 集 こ (そ の もの で な くと も, 同 系 統 の写 本)に 依 つ た もので あ る こ とは 明 らかで, この 事 は第 三 究 に至 つ て 益 々明 らか とな る。

な お, 梵 本Sadhana-mala(G. O. S. vol. 26)に(1)tri-samaya-rajasya sadhana (2) tri-samaya-raja-sadhanaと 名 付 くる もの が あ り, その 前 者 に は 立 印軌 の金 剛密 心 の 真 言 が 心 真 言 と して 説 か れ て い るが, そ れ に はKaりaが Kalaに な つ て い る。Kalaに は こ黒 こ とい う意 味 と 誉時 間 こ と い う二 義 が あ り, 後 義 のKalaは 時 の 経 過 が 全 べ て を 滅 す と い う事 か ら, こ死, 破 滅 こ の意 味 に しば しば 用 い られ て い る。 したが つ てKala-Capdaな らば 一応, 不 動 尊 の 薦 祭 の 剣 の 梵 字 に つ い て

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-53-密 教 文 化 真 言 と して は一 伝 と して 保 存 せ らるべ き形 で あ ろ う。但 しdeva-nagari文 字 で はlaとnaは 殆 ど誤 写 され る可 能 性 は な いが, 悉 曇 文 字 で はpa(ぜ)は (迂)laに 近 く, ま たpaの 異体(孤)はdeva-nagari文 字 のla(濁)に 近

く, 刊 本sadhana-malaの 原 本 が 果 して いか な る文 字 で 書 かれ て い た か 知 る 由 もな いが, そ の 真 言 名 か ら考 え て も この二 者 は もと一 つ の もので, 当 然 そ の いず れ かが 誤 伝 で あ る とす るな らば, 印度 に於 て は不 動 尊 の遺 物 が 殆 ど現 存 しな い こ とか ら考 え て, Kalaは 刊 行者 の 原 本 の 見 誤 りで な い か と我 田 引 水 し た いが 無 理 で あ ろ うか。 (4) 第 三 究, 不動 剣 印 の 真言 に つ いて さて, まえ が き に掲 げ た梵 漢 対 照 表 に よつ て, 薦 祭 剣 の 第 三 究 が 立 印軌 に 説 く不 動 剣 印 の 真 言 に ま ち が い な い こ とは一一応 わ か っ た。 しか しそ の細 部 に 至 つ て は 梵 漢 は 必 ず しも一 致 せ ず, しか もそ の い ず れ に依 る も直 ち に その 文 意 を 得 る事 は 困難 で あ る。 そ こで 之 を 他 の 不 動 経典 に つ い て み る と 安 鎮 国 家 法(No. 1203)並 び に 四 十 八 使 者 儀 軌(No. 1204)に は これ に該 当 す る もの が な いが, 幸 い底 哩三 昧 耶 経 に は 始 めの 帰 命 句 こそ 省 かれ て い るが, 一 巻 本(No. 1220) に も三 巻 本(NO. 1201)に も立 印 軌 の それ と殆 ど同 じもの が, や は り不 動 剣 印 の 真言 と して 説 か れ て居 り(一二巻 本, 大21. 12B23以 下, 三 巻 本 同20C15以 下) ま た 『不 動使 者 法 』(No. 1202)で は立 印 軌 の そ れ が 前 半 と後 半 と に分 け られ, お の お の独 立 の 真 言 と して 前 者 は不 動 使者 辟 一 切悪 毒 呪(大21. 25B)と 名 づ け られ, 後半 は帰 命 句 が 附 加 せ られ て 不 動 迎請 究(大21. 52C)と 名 づ け られ て い るが, 共 に そ の 印 は や は り剣 印 を 用 い る事 が説 かれ て い る。 そ こで これ らの 諸 訳 を対 校 して, この 真 言 の 正 しい 形 を 探 究 して見 た い。 な お 『大 師御 請 来 梵 字 真 言 集 』 に 収 載 され て い る梵 字 不 動 尊 儀 軌 は 立 印 軌 の 諸 真 言 を 梵 字 で 列 挙 した もの で あ るか ら, 普 通 な らば こ の場 合, 梵 字 の こ とで あ り, 漢 字 訳 に比 して 最 も有 力 な対 校 本 た るべ き地 位 に あ るが, 事 実 は 先 に の べ た如 く薦 祭 剣 の梵 字 の 原本 に相 当す る性 質 の もので あ り, した が つ て 薦 祭 剣 と同 一 種 類 の誤 写 誤 伝 を 含ん で い るの で, 現 在 この 真 言 の正 しい 形 を 求 め る た め に は直 接 有 力 な役 割 を果 しが た い ものが あ る。 しか し一 面 鵜 祭 剣 の 梵 字 の 誤 写 誤 伝 を 暗 示 す る点 が あ るの で, 同時 に対 照 す る こ と に した。

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-52-ま た こ の真 言 の説 か れ て い る立 印軌 を始 め底 哩 経 等 の漢 字 経 典 に対 し, それ に相 当す る西 蔵 訳 が あれ ば, 西 蔵 訳 が 持 つ 正 確 な る音 写法 に依 つ て この 問 題 は た や す く解 決 す る もの と思 われ る。 しか し残 念 な が ら 目録 に依 る限 り, い ま の 処 これ らの 漢 訳 経 典 に直 ち に相 当す る西 蔵 訳 は求 め られ な い の で あ る。 ま た酒 井 教 授 の 「西 蔵 訳 底 哩 三 昧 耶 経 に就 て 」 の論 文(密 教 研究69号)に よ れ ば, 漢訳 底 哩 三 昧 耶 経 に は直 接 之 に相 当 す る西 蔵 訳 は な い が, 底 哩三 昧 耶 経 に 関 連 す る もの と して は西 蔵 大 蔵 経 に6本 あ り, そ の 中(3)(5)は梵 本(1)に相 当 し (4)(6)は梵 本 の(2)に相 当 す るが, (1)は余 り親 し く関 連 しな い 由で あ る。 した が つ て そ の記 述 に従 え ば 梵 本 の(1)(2)にこの不 動 剣 印 の 真 言 が 説 かれ て い な い限 り, 西 蔵 訳 に もまず 一 応 は な い と考 えて 良 い訳 に な る。 と ころ で 私 が 直 接 梵 本 に当 つ て み た 所 で は先 に のべ た如 く薦 祭 剣 の 第 二 究 が 不 動 の 心 印(acala-hrdaya) と して あ げ られ て い る の みで, この 真 言 につ いて は何 等 の 関 説 が な か つ た の で あ る。 ま た 四 体 合壁 大 蔵 全 究 と称 す る もの が あ り, 漢 字, 満 洲 字, 蒙 古字, 西蔵 字 の 四字 音 で漢 訳 大蔵 経 の全 真 言 が挙 げ られ て い る。 しか しこれ も量 は甚 だ彪 大 な もので あ るが, そ の質 は底 哩三 昧 耶 等 に 関 して 私 が 見 た限 りで は そ の西 蔵 字 は漢 字 音 か ら音 写 さ れ た もの で, 決 して 西 蔵 大 蔵 経 か ら抽 出 した もので は なか つ た。 した が つ て こ こ に対 校 本 と して 使 用 す る に堪 え る性 質 の もの で なか つ た の で あ る。 そ の他, 覚 禅 抄, 阿 娑 婆 紗 に も, も ち ろん こ の真 言 は何 等 関 説 せ られ て いな い。 そ こで先 に あ げ た 立 印 軌, 底 哩経 等, 私 の 探 し得 た 限 りの 対 校 本 を 対 照 し て 掲 げ そ の正 しい形 を想 定 す る こ とにす る。(対 照 表 の分 毅 は 印刷 組 版 の都 合 で か りに筆 者 が 設 け た もの に す ぎ な い) 〔I〕 (立 印 軌) 嚢 莫 三 漫 膨 薦 日 羅 二引合 報 (一 巻 本) (欠) (三 巻 本) (欠) (不 動 使 者 法) (欠) 薦 祭 の 剣 の 梵 字 に つ い て

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-51-密

(請 来 梵 字)na mah sa ma nta va jra nam (薦 祭 剣)na mahsa ma n七a va jra nam

〔II〕 (立 印 軌)庵 姻 左 擁 迦 引 撃 没 駄 際 旺 迦 畔 件 (一 巻 本)*庵(23)螂 者(24)選(25)加 墾 没 駄 制 旺(26)迦 畔(27)畔 (23)鰯=娚(三)(24)遷+(三)爽(25)加=迦 迦+(三)爽 畔+(四)爽 (甲)(乙)註(三)(乙)(三)(乙)註(三)(乙)註 (三) (乙 (三 巻 本)略 阿 者 羅 迦 撃(24)引勃 駄 制 旺 迦 嘲牛 畔 (不 動 使 者 法)(23)庵 阿 者 羅 迦 那 歩 陀 制 旺 迦(24)上嘲牛(23)畔 庵+(引)來 註(三)(丙)上+(一)(宋)(元)噂+(三) (三) (丙 (声一)(明)(丙) 〔上 〕一(甲)

(請 来 本) om a ca la ka nda vu dha ce ta ka ham ham (薦 祭 剣) (?) a ca la ka nda vu dha ce ta ka hum hum

〔III〕 (立 印 軌)怯 引 唖 怯 面 伊 南(24)上 上 声 (一 巻 本) 怯 珊 怯(28)珊 伊 能 珊+(五) 爽 註 (三) (乙 (三 巻 本) 怯 (24) 醸 怯 醗 伊 能 (不 動 使 者 法)可 伊 難 伊 可 (22) 伊 (78) 一 諏 去 〔許 伊 反 〕一 (甲) 伊+(三) (三) (丙) 一 調 去=一 課 上 (宋) (元)

(請 来 梵 字) kha hi kha hi inam (薦 祭 剣) kha hi kha hi i nam

(i点 見 エ ザ レ ド) 〔IV〕 (立 印 軌) 佗 哩 二合 (25)上同*下*曜 (23) 恒 (27) 嚢 (28)三合 轄 〔上 〕 一(丁) (23)但=恨(甲) (27) 襲=螂 (23) 三=二 (丙) (乙) (丙) (明) (丁) (一 巻 本) 魚 哩 二合 咄 (23)轄 輪含+(六) 爽 註(三)(乙)

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-50-密 教 文 化 (A) 原 則 と し て 0 を 示 す も 、uu を も 示 す も の (1) 模 韻 に 属 す る も の (一) 唇 音 蒲 (bhe) 菩 (=蒲) (bo) 誤 (=模) (mo nes) (二) 舌 音 都 (tu to) 徒 (do) 奴

(to you ne mon)

(三) 歯 音 蘇 (su ne mue) (四) 喉 音 鳥 (u) 呼 (to) (五) 半 舌 盧 (ru he) 嘘 (=盧) (ru ni meo) (2) 姥 韻 に 属 す る も の (一) 唇 音 補 (pu pi) 普 (phe ru) *部 (=簿) (bhe) * 部 は 厚 韻 の 箪 字 と し て も 現 わ れ る (二) 舌 音 観 (to tu t ) 観 鄙 (dyo) 杜 (doy neu) 怒no 弩 (=怒) (mu ni) *努 (=怒) (mu) * 馬 渕 本 は 怒 の 代 り に 努 を 棄 字 と す (三) 歯 音 祖 (mue) (四) 喉 音 鴎 (u) 鳩 (=鴎) (u) 虎 (hu) (五) 半 舌 魯 (ro ru) 噌 (=魯) (ro ru nu me) (3) 暮 韻 に 属 す る も の (一) 唇 音 布 (pu) 怖 (pu pro) 捕 (num) 歩 (=捕)

(bu bhe rou me)

暮 (mo ne) 慕 (=暮) (mo mu) (二) 舌 音 妬 (to) 度 (=渡) (deo so) (三) 歯 音 素 (=訴) (su so) (四) 喉 音 汗 (u) 護 (ho keu) (五) 半 舌 路 (ro ru le) (B) 原 則 と し てuu を 示 す も 0 を も 示 す も の (1) 虞 韻 に 属 す る も の (一) 牙 音 倶 (=拘) (ku ko) 窪 (=勧) (gu) 虞 (gu) (二) 歯 音 朱 (me) 劉 (de mue) 萬 ︹ 劉 の 俗 字 ︺ (ka sou) 輸 ( so su me) 殊 (ju) (三) 喉 音 ︹ 以 下 三 字 全 ベ テ 途 ノ 字 子 ︺ 喩 (yo ge) 楡 (yo) 喩 (yo) 四 半 歯 儒 (jo) (2) 廣 韻 に 属 す る も の (一) 牙 音 矩 (ku ) (二) 歯 音 敷 (su) (三) 喉 音 痩

(ogh you ge)

(3) 遇 韻 に 属 す る も の (一) 軽 唇 音 附 (nu) 務 (seo) (二) 牙 音 具 (=催) (glad) (三) 歯 音 敢* (bory) 戌 (so me nu) 横 (ju) * 厳 の 韻 鏡 音 は 次 清 、 二 位 に 付 き 留 に 当 る )

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-82-密 教 文 化 (請 来 梵 字)pha t (薦 祭 剣)pha t(例 のtu) a rya ca la ga ccha a rya ca la sa echa Cat) (ga?) 〔VII〕 (立 印 軌)緊 止 羅 引 也(36)徒 徒=徒(明)(丙)(丁) 伊*沸 上迦 引 哩 養 二合矩 噌 娑 囎 二合*引 詞(37)*引 〔引〕-(丙) (一 巻 本)緊 旨 羅 夜(34)思 思+(十)爽註(三)(乙) 伊 引 能 迦 引 哩 野 二合 句 櫓 嚢 歴 娑 噂 二*合 詞(35)引 引十(十一)(三)(乙) (三 巻 本)緊 至 羅 夜 思 伊 引 能 迦 哩 羅 耶(26)二合 句 櫓(27)耶 歴 疹 縛 二合 詞 二合 一 甲 耶 二 那 (甲) (不 動 使 者 法)緊 之(4)羅(5)斯 蝿=羅(三)斯+(四)(三)(丙)(夜) +斯(甲)(乙) 一 郵 迦 哩 蝿 倶(6)嘘 那 摩(7)疹 詞 嘘=盧(三)(丙)渉 詞=渉 詞(五)(三)(丙) 娑 珊縛詞(甲)(乙) (請 来 梵 字) Kim ci ra ya si

i nam ka ryarzl ku ro sva ha (祠馬 祭 剣) Kilp ci ra ya si

i nam ka ryam ku(?) ro sva一 ほ どのh見翠aに も澗 違ち a 〔VIII〕 (立 印 軌) (原本)麗本(甲)三十帖策子第廿三(乙)仁 和寺蔵 古 写本(丙)高山寺蔵古写本(丁)黄 桀版浄厳等加筆本 (一 巻 本) (甲)元暦元年写宝寿院蔵本 (乙)黄粟版浄厳等加筆本 (三 巻 本)(原 本)延亨三年刊豊山大学蔵 本(甲)元亨 三年写宝寿院蔵本 (乙)高山寺蔵古写本 (丙)永久元年写高山寺蔵本(上 巻欠) (不 動 使者 法)(原 本)麗本(甲) 三十帖策子第廿一 (乙)文和二年 写宝寿院蔵本 (丙)黄桀版浄厳加筆本

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〔I〕 さ て 第 一 段 は 帰 命 句 で あ る か ら, 梵 本 の 二 本 は 共 にvajrapa単 の 」瓶 がjra と短 音 に な つ て い るが, これ が 長 音 の 誤 りで あ る事 は漢 訳 の 爽 註(二 合引)か らも 文 法 か ら も直 ぐ断 定 で き る。 そ こで第 一 段 は Namah samanta-vajranam(普 く諸 金 剛衆 に帰 命 し奉 る)と な る。 〔II〕 次 に第 二 段 の 中, 薦 祭 剣 のom字 は彫 り損 い の 点 が 加 つ て 一見 何 字 か と怪 ま れ る よ うに彫 られ て い る が, om字 で あ る と思 つ て見 れ ば そ れ がom字 の 彫 り 誤 りで あ る事 は 直 ぐ判 る。 次 にacalaは 不 動 明 王 の 益不 動 こ で 問 題 な し と して, 次 のKapdaがK融a の 誤 字 で あ る こ とは 第 二 究 の 場 合 と同 様 で, い ま さ ら言 うま で もな い。 次 に梵 本 のVudhaで は 文 意 が通 じな い か ら これ は漢 訳 字 の 対 訳 例 か ら見 て (没 駄, 勃 駄 は常 にbuddhaの 対訳 字 と して 用 い られ て い る か ら)buddhaの 誤 写 誤 伝 とみ れ ば こ こ はbuddha-cetakaと な り, '仏 使 者'と な り, 不 動 明 王 が 大 日如 来 の教 令 輪 身 と して, 常 に不 動 使 者 と呼 ばれ て い る事 実 に合 致 す る。 h職h卿 は問 題 な く, 不 動 尊 の 降伏, 催 破 の 種 子 で あ る。

次 に: Kh乱hiKhahiは 薦 祭 剣 は繰 りか え しのhi字 のi点 が 写 真 で は 見 え ずhaに 見 え るが, 請 来 本 並 び に漢 訳 か らhiで あ る事 に問 題 は な い。 ま た不 動 使 者 法 の 「伊 」 が 単 な るiで な くしてhiの 対 訳 で あ る こ と も可 伊 反 と あ る 爽 註 に よ つ て 明 らか で あ る。

〔III〕

さてKhahiは 直 接 正 梵 は 求 あ られ な い が/khan'堀 ル'の 派 生 語 にKha 堀 ル コ ト, 堀 ル 者'の 意 が あ り, hiは 感歎 詞 とす れ ばheの 方 が 一 般 的 で 秘

キャキ ニャヤ ニャ ナ ラバ ビ ギ ンナ ン 密 事 相 の 研 究(P. 437)で は 不 動 尊 の 火 界 究 に 於 け る 怯 嘲 怯 嘲 薩 縛 尾 観 南 がKha he Khahe Sarva-vighnamと 還 元 さ れ, 'オ ー 堀 リ去 ル 事 ヨ, オ ー 堀 リ去 ル 事 ヨ ー 切 の 障 碍 ヲ'と 訳 さ れ て い る が, hiはheの 弱 い 形 で あ り, hi で も感 歎 詞 と して'実 二'と か'サ ア'と か の 意 に 用 い ら れ, 且 つ 命 令 法, II人 薦 祭 の 剣 の 梵 字 に つ い て

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-47-密 教 文 化 称, 単 数 の 語 尾 に はhiと い う形 が あ り(但 し√Khanは 第 一 種 動 詞 で そ の 命 豆, 単 に は 正 梵 で はhiを 用 い な い け れ ど も)ま た, 口血 は 韻 鏡 で は 内 転 第 六 開 の 喉 音, 清 音 で 暁 母 の 列 に あ り至 韻 に 属 す る 字 でhiを 表 わ し 更 に ま た 浄 厳 の 『悉 曇 三 密 抄 』 の 対 訳 例 に もhiに 対 し珊 が 用 い ら れ る こ と が 見 え て い る。 (天 和 版 中 の 本16丁 裏)か ら, こ の 場 合 はhiで も差 支 な い と思 わ れ る。 な お

hiを 語 尾 と み る と き はKhahiはII, 単, 命 で, 正 梵Khanaの 誼 略 と 考 え る。

か くて 本 段 は

om acala-kana-buddha-cetaka harm khahi khahiと な る。

オ ー ン(帰 命)不 動 紗 目 者 よ, 仏 使 者 よ, ウ ー ン ウ ー ン(眸, 口牛)堀 レ ヨ堀 レ ヨ) 次 に 第 三 段 の 終 りinamは 二 梵 本 共 にinamと な つ て い る が, 正 梵 に は 之 に 相 当 す る も の が な い, 強 い て 求 む れ ばellad'そ れ, 彼'の 女 性, 単, 業 格enam の 設 略 と考 え ら れ る。 と こ ろ で 漢 訳 の 立 印 軌 の 「南 」 は 我 が 国 音 で も 呉 音 こ そ ナ ン で あ る が 漢 音 は ダ ン で あ り, 底 哩 経 の 「能 」 は 呉 音 ノ ウ, ナ イ 漢 音 ド ウ, ダ イ に して, そ の 中, 漢 音 ドウ の ウ が 中 国 音 のngを 現 わ す も の で あ る 事 は, ダン ダウ 「我 が 国 の漢 字 音 」 の研 究 成 果 に よ つて 既 に知 られ て い る事 で あ るか ら, 南 能 等 が 梵 音 のdamを 表 わ す 対訳 字 と して 用 い られ る の に何 等 の 差 支 え は な い。 特 に三 密 抄 に は胎 軌 にdamの 対 訳 字 と して 用 い られ て い る事 が 見 え て い る か ら, こ こは 文 意 の 上 か ら もidamの 中 性, 業 格idamと 解 した い の で あ る。 そ の事 は 不 動 使 者 法 の"一 諏 〃が それ を 良 く現 わ して い る。 広 韻 に依 れ ば 庸 」 の音 は輩 に等 し く, 而 して 輩 は韻 鏡 で は 外 転 第39開 の舌 音, 濁 音, 第 一 等 の平 声 で あ る か ら, 現 代 音 は 辞 書 にt'an2と 表 示 され るが少 くと も音 訳 当時 の唐 代 で は その 音 は濁 音 とあ る以 上danで あ つ た と思 わ れ るか らで あ る。 而 してenamよ りidanpの 方 が 有 力 な 理 由は 最 後 に も う一 度 究 末 に 漢 梵 共 に同 じ形 で 出 る けれ ど も, そ の際 は 次 の語 のKaryamと 性, 数, 格 が 一 致 せ ね ば な らぬ か ら必 ずidamで な けれ ば な らぬ の で あ る。 した が つ て こ こ も idamの 方 が良 い とい う事 に な るの で あ る。 〔IV〕 次 に 初 め 数 文 字 は 未 だ 確 信 が な い。 結 論 的 に 言 え ば/grah'捕 ヘ ル'の 命 令 法II, 単 でgrhpaと い う形 で な い か と思 われ るの で あ るが, ま つ 梵 本 を み る

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に薦 祭 剣 はhr rhraと 読 ま れ, 請 来 本 はhya rhbhaと なっ て い るが, これ で は全 くど う に もな らな い。 そ こで まつ 立 印軌 を み るに, 佗 哩二合 とあ る。 二 合 とあ る以 上, 佗 は子 音 を現 わす の みで, その 韻 の 何 た る か は必 要 と しな い の で あ る。 と こ ろで 佗 は 広 韻 に依 れ ば瘡 と同 音 で あ り, 瘡 は韻 鏡 で は外 転 第19開 の 牙 音 の 清 濁 音, 入 声 の字 で あ るか ら, そ の 限 りで は119を 表 わ す 字 と され て い る訳 で あ る。 しか し対 訳 例 と して は瘡 はgaの 対 訳 字 で あ る こと が三 密 抄 に見 え る。 次 に底 哩 経 の 「魚 」 は韻 鏡 に依 れ ば, これ ま た 内 転 第11開 の 牙 音 の清 濁 音 平 声 の字 で あ る。 而 して 最 後 の不 動使 者 法 の 「藁 」 は この 真 言 の(VI)段 に もgacchaのgaに あ て られ て い る様 にgaの 対 訳 字 で あ る事 は 三 密 抄 に も見 え て 居 るの で あ る。 しか も この字 も ま た韻 鏡 に依 れ ば, 牙 音 清 濁 音 で あ るか ら (藁 字 は直 接 韻 鏡 に現 わ れ な い けれ ど も, 華 は漿 の略 字 で あ り, 壁 は広 韻 に依 れ ば 壁或 は 酵 と同 音 と あ る。而 して 韻 鏡 に依 れ ば, 壁 酵 の二 字 は共 に 外 転 第23開 の牙音清濁音で 募瞬 韻, 齢 購 の相違 あるのみ, 前者 は我 が国者 では 霧 とな り, 後都 窮 となるが, 何れ に して も牙音 の清瀧 で ある ことに変 りは な い の で あ るか ら)結 局 立 印 軌 の 「信 」, 底 哩 経 の 「魚 」, 不 動使 者 法 の 「蘂 」 の三 字 は い ず れ も韻 は と も か く子 音 は共 に9音 を 表 わ す 対 訳 字 で あ る こ とを 知 る の で あ る。 而 して 韻 を示 す 「哩 」 は対 訳 例 と して はr若 くはriで あ る か ら, 漢 訳 四本 の対 訳 字 は す べ て 一 致 して, そ の 梵者 がgr或 はgriな る事 を 示 して い る。 次 に立 印 軌 の 「羅 但 那 」 な る三 字 は通 常 の対 訳 例 か らはratna'宝'を 思 わ しめ る。脚 註 に 依 れ ば(丙)本 に は二 合 の爽 註 が あ るか ら(丙)本 は か く見 た もの で あ ろ う。 しか しgrも し くはgriに は結 び つ き に くい の で あ る。 もち ろ ん 三 合 のrtnaは 更 に 結 び っ か な い。 と ころ で脚 註 に依 れ ば対 校 本 の(甲)本 (三 十 帖 策 子)(乙)本(仁 和 寺 蔵 古写 本)(丙)本(高 山 寺 蔵 古 写 本)は す べ て 「但 」 が 「恨 」 に な つ て い る。 そ こで 恨 の 音 を み る に恨 は 三 密 砂 に依 れ ば梵 字haの 対 訳 字 と して 用 い られ て い る事 が わ か り, ま た韻 鏡 に よれ ば, 恨 を始 め護 摩homaの 「護 」,「憾 」(ha切 賀(ha)虎(hu)等 はす べ て 喉 音 濁 音 の 字 で あ る こ とが わ か る。 そ こで 曜 を 冗 字 と考 えれ ば, こ こ はgrhpaと な る の で あ る。 と ころ で これ を 胎 蔵 法 の 一 切 奉 教 金 剛 の 真 言 に, 係 係 緊 質 曜 也 徒(he he kim cirayasiオ ー オ ー 汝 は何 を遅 延 す るか)鉱 喋 恨 檸 鉱 嘆 俣 檸 (grhpa

薦 祭 の 剣 の 梵 字 に つ い て

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-45-密

grhpa執 え よ 執 え よ)と あ る の に 比 較 す る と, kim cirayasiと い う 言 葉 は

本 真 言 に も後 段 に あ り, 立 印 軌 の 対 訳 字 佗 哩(曜)恨 嚢 がgrhpaの 音 写 で あ る と考 え て 決 して 無 理 で は な い こ と を 知 る の で あ る。 こ の よ う に, こ こ がgr hnaで あ る と す る と 請 来 本 のhbhaはhpaの 誤 写 で は な い か と 考 え られ る が そ め 可 能 性 は 請 来 本 の 大 身 真 言 にvighnam(立 印 軌, 尾 観 南)に 対 し 請 来 本 の 梵 字 はjbhaと な っ て い る こ と に 求 め る事 が 出 来 る。 な お こ う見 て 来 て 再 び 薦 祭 剣 のrhraを み る と, 写 真 で は 何 と も 言 え ぬ が 一 応rhraの 如 く見 え る が ま た 何 か そ の 下 に あ る よ う に 見 え, 或 は 請 来 本 と 同 様rhbhaで は な い か と 思 わ れ て 来 る の で あ る。 か くて 二 梵 本 は 共 にhpaの 誤 写 誤 伝 で あ っ て, こ こ は grhpaと 断 定 して 良 い よ う に 思 わ れ る。(hpa 熱 hbha 添 は 字 体 も よ く似 て い

る)

な お 底 哩 経 一 巻 本 は 対 訳 字 か ら は 〔grhi〕 と な り, 三 巻 本 と 不 動 使 者 法 は grheと な る が, そ れ は/grahの 弱 語 基(普 通II, 命, 単 に 用 い る)のgrhpiの

誰 略 た るgrhpi或 はgrhpeのnが 軽 微 で 音 写 せ ら れ な か っ た 形 と見 て お く。

次 に 最 後 の 「牟含」は 二 梵 本, 共 にmamと 短 と な っ て い る が, 之 は 明 ら か に 不 動 明 王 の 種 子 で, 長 音 のmamが 正 し い と 見 た い。 な お 三 巻 本 の み, 牟含の 前 に 摩(ma)が あ る が, 他 本 よ り見 て 之 は 冗 字 と す る。

か くて 本 段 は

idam grhpa mam(こ れ を 執 え よ マ ー ン(牟 含))と な る。 〔V〕

次 に 段 初 のhalahalaは, 普 通halahalaの 形 で 現 わ れ る が, halahala の 形 も あ り, こ れ は 猛 毒 の 名, 故 に 次 の 毘 沙 は 二 梵 本 と も にvisaと あ る が,

visa'毒'の 誤 り と 断 定 す る。 「沙 」 がSaで な くsaの 対 訳 字 と して し ば し ば

用 い られ る 事 は 三 密 抄 に 見 え て い る。 即 ちSaの 対 訳 字 に は 娑 ・薩 ・三 ・散 ・ 拶 ・颯 等 が あ げ られ, saに は 沙 ・漉 ・刹 ・察 ・悪 等 が あ げ ら れ て い る。 次 は 「索 肢 多 」 で あ る が, 索 は 入 声 と あ り, 破 移 は 一 巻 本 に 鉢 多 二合 と あ る か ら, こ こ は 一 応Saptaと み る の が 最 も 適 して い る。 而 し て 梵 本 にsahと あ る の は 入 声 の 語 に よ つ てsahと し た も の で あ ろ う が, sapのsaが 入 声 で 浬 架 点(visarga)は 不 要 の 筈 で あ る。 そ れ は 不 動 使 者 法 の 颯 多 か ら も 言 え る。

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-44-即 ち 移 と多 の 相 違 は あ る けれ ど も同音 の字 で あ る 「颯 修 」 がSaptaの 対 訳 字 と して 用 い られ て い る事 は, 大21.422Aに も見 え, 准砥 観 世 音 の根 本 真 言 の始

ナ ウ ボ サ ツ タ ナ ン

めのnamah Saptanamが 南無 颯 移 哺 と音 訳 され て い る事 か ら もわ か る の で あ る。 な お 三 密 抄 に颯 がsaの 対 訳 字 と して あ げ られ て い る事 は す ぐ前 に あ げ た 通 りで あ る。 した が つ て 梵 本 のsahは 恐 ら く元 来 はSa ptaと あつ た もの を 入 声 の 爽 註 か ら, 後 に伝 写 の間 に何 人 か が 浬 架 点 をつ け 加 え た か, 然 らず ん ば 上 のrhhhaと い い, このsahと い い, 請 来 本 の梵 字 は原 典(梵 本)か らの 抽 出で な く, 或 は 漢字 訳 よ りの 重 訳 で はな いか と さ え思 われ る。 と ころで, こ こをSaptaと 見 れ ば何 人 も 異 存 の な い所 で あ ろ うが, Sap幅 は'七'の 意 で あ り, 七 毒 と い う事 が あ れ ば兎 も角, 寡 聞 に して 七 毒 と い う事 は 未 だ 聞 か な いか ら, ど う も'七'で は前 後 のつ な が りが つ か な い ので あ る。 そ こで 一 巻 本 の 脚 註 に宋 元 明 の三 本 が 「素 」 で あ つ た と見 えて い る ので, こ こはSuptaに 非 ず や とい うの が, 同 学 会 の と き の酒 井 教 授 の 説 示 で あっ た。 Suptaな らば7/svap'眠 ル'の 過 去 分 詞 の形 で'眠 りた る'よ り'麻 痺せ る' の 意 が あ るか ら, こ こで は'毒 に あ て られ た もの ラと い う事 にな る。 しか し, ま た あ くま で 漢字 訳 の 索, 颯, 梵 本 のsaの 音 を生 か す とす れ ば, こ こは或 はSarptaで は な い か と も考 え られ るの で あ る。 も ち ろんSarptaの い う形 は辞 書 に は見 え な い がSarpitaな らば'蛇 に か まれ た'意 で あ り, 不 動 使 者 法 で は辟 一 切 悪 毒 呪 と名 づ け られ て い る の で あ るか らSarpitaが 誰 略 し てSarptaと な つ た と見 るの で あ る。Sarな らば索 入 声 の 入 声 と い う爽 註 に も 抵 触 しな いか らで あ る。 な おSar等 のrが 一 字 と して 対 訳 され ず, Sa等 に含 ま れ て 音 写 され て い る例 はSarvaの 薩 口縛, dharmaの 達 摩, Karmaの 掲 磨 等 普 通 の事 で, 敢 え て 異 とす る必 要 はな い ので あ る。 次 にah悪 は 問 題 な しと して, 次 の絶 哩 は 常 に種 子hrihの 対 訳 字 で あ る。 立 印 軌 の 引入 〔長 音, 入 声 の意 〕 の爽 註 が よ く之 を 表 わ して い る。 立 印軌 の 郵, 三 巻 本 の詞 は い つ れ もhrihのhを 示 す もの で, な お郵 は 浬 葉 点 を示 し た もの で あ るか らた と え, あつ て も問題 は な いが, 立 印軌 の 脚 註 で は都 字 が な い こと を示 して い るか ら益 々問 題 とす る必 要 が な い わ けで あ る。 ま た請 来 本 の hyaは 前 のgrの 所 で 礪 祭 剣 のhrに 対 しhyaと あ り, そ れ が 旗 の 書 き誤 鷹 祭 の 剣 の 梵 字 に つ い て

(20)

-43-密 教 文 化 りで あ る 事 を の べ た が, こ こ で も ま た 礁 祭 のhrに 対 してhyaと あ り, 請 来 本 の 転 写 者 の 常 時 の 誤 ま り な る 事 が 確 か め られ る。 しか しhrで は 次 のphat か ら み て, ど う に も 格 好 が つ か な い。 更 に 薦 祭 剣 はhrの 次 にtamも し く は narpと 思 わ れ る 字 が あ る が, 請 来 本 に も な く, も ち ろ ん 漢 字 訳 に も な い か ら 冗 字 と 思 わ れ る。 恐 ら くhrlh(絶 哩)をhrと し た 結 果hrtamと した の か も

知 れ ず, ま た 都(hah)を 報(pam)と 見 誤 ま つ てhrnamと した も の か も 知

れ な い。 何 れ に して も 薦 祭 剣 のhrtam曾 請 来 本 のhya等 は 誤 写 と 認 定 す る。

次 に 請 来 本 は 全 然 欠 け て い る が 鵜 祭 剣 のhaは 立 印 軌 の 賀 引 の 爽 註 が 示 す 如

く, 短 のaで は な く して 長 のaで あ り, ま た 単 な るhaに も非 ず して 空 点

(anusvara)を 伴 うhamと 解 した い。 即 ち こ こ は 先 のgrhna mamのmam

に 対 し, 同 じ く不 動 明 王 の 種 子. hamで あ る と 解 した い の で あ る。 な お 三 巻 本 はhamがhupに な つ て い る。 文 意 の 上 か らは も ち ろ ん そ れ で も 差 支 え な い が 他 は す べ てhaも し く はhaに 近 い し, 薦 祭 剣 の 梵 兄 は 直 接, 立 印 軌 の そ れ で あ る か ら こ こ で はhamの 方 を 採 る。 ま た 不 動 使 者 法 は 「鳩 」 と あ る が, 爽 註 に は 鵠 鶉 反 と あ り, 同 経 の 後 に 出 ず る 不 動 慈 救 呪 で は(大21. 27A)究 末 の ham mamに 対 し鶉 忙 の 二 字 が あ て られ, 且 つ そ の 鵬 に は 呼 恨 反 忙 の 爽 註 が あ る 上, そ の 箇 所 の 脚 註 に 依 れ ば 宋 元 明 の 三 本 に は 明 ら か に 憾 鎗(harpm細) と あ る の で 「秘 密 儀 軌 」 の 朱 註 者 は 之 を 鶉 は 鵡(h融 に 当 る)の 誤 字 な り と して い る(鐘 三, 9丁 表)か ら, 従 つ て こ こ の 鵬 も既 に 爽 註 に 鵠 鳩 反 と あ る 以 上 之 がhanpで あ る 事 は 間 違 な く, 鵬 は 鵤 の 誤 字 と せ ね ば な ら な い の で あ る。 次 は 最 後 はphatで あ る が, 薦 祭 剣 の 常 時 の 彫 り誤 り を 除 き, 他 は 何 の 不 一 致 も な い。 か くて 本 段 は

halahala-visa-supta (or sarpta) ah hrih ham phat (ハ ラハ ラ 毒 に

あ て られ た も の よ(汝 に 対 して)ア ク キ リ ク カ ン パ ッ ト)

と な り, 底 哩 経 等 はhalahalaの 代 り にhari-と な る。hariは 通 常, Indra 神, 又 はVianu-Krsnaの 異 名 と さ れ, 栗 毛 色 ま た は そ の 馬 の 意 に 用 い られ る が, 蛇 の 意 も あ り, こ こ は 次 のvisaと 共 に 蛇 毒 と 考 え た い。

ま た 種 子 のah hrih ham phatは 全 て 除 障 催 破 を 意 味 す る 種 子 で, ahは 入 浬 梨 の 義 を 示 しhrlhは 普 通 阿 弥 陀如 来 の 種 子 と さ れ る が, そ の 字 義 は 一

切 の 業 障(h)塵 垢(r)を 浄 除 して 浬 架(h)に 帰 せ しむ る 三 昧(i)を 示 す と

(21)

-42-さ れ て い る。 な おhamphatは 第 一究 慈 救 究 の 句 義 釈 で 前 述 した 通 り で あ る。 〔VI〕 さ て 第 六 段 以 下 は 先 に の べ た 如 く, 不 動 使 者 法 で は 不 動 迎 請 究 と さ れ て い る 部 分 で あ る が, ま ず 最 初 の(薦 祭 剣 の)aryaはaが 短 音 と な つ て い る が, 立 印 軌 に は 明 ら か に 引 と 爽 註 が あ り, ま た 文 意 の 上 か ら もarya(聖 ナ ル)で あ る こ と は 問 題 で な い と 思 う。 次 にealaは 文 意 の 上 か ら み て'不 動'のacalaに 違 い な い か らaryaのaと 合 してaと な ら ね ば な らぬ。 し た が つ て 薦 祭 剣 の (a)(rya)は 請 来 本 の 如 くaは 前 後 共 に 長 音 乱 で な け れ ば な ら ぬ と 思 わ れ る。

次 に 礪 祭 剣 はSacchaと 読 め る が, Saとgaは 形 が 類 似 して 居 り, Saは 明

らか にgaの 誤 り と思 う が, 更 に ま た 立 印 軌 に は 擁 に 引 の 爽 註 が あ り, 別 に 阿 (a)の 対 訳 字 が, わ ざ わ ざ 捜 入 さ れ て い る も の も あ る 位 で あ る か ら, こ こ は Gaecha'行 ケ'よ り はagaccha'来 レ'の 方 を 採 る の が, 不 動 使 者 法 の 迎 請 究 と い う命 名 か ら見 て も 当 然 で あ る と 思 わ れ る。

次 に, 薦 祭 剣 のkim cirayasiはCira'長 キ'か ら来 た 動 詞 で, こ れ に は

Ciraya, Cirayaの 両 方 の 形 が あ る か ら, 請 来 本 にCirayaと あ つ て も, も ち ろ ん 問 題 で は な い。 ま た 立 印 軌 の 本 文 に は 止 羅 也 徒 と 徒(tu or to)と な つ て い る が, そ れ は 原 本 麗 本 に 依 つ た も の で, (明)(丙)(丁)本 等 に は 正 し く徒 と

な つ て い る こと が脚 註 に見 え て い る。 か くて こ の段 の正 しい形 は

a ryacal'agaccha! kiln cirayasi2 (arya-acala agaccha, kim cirayasi)

聖 不 動(尊)よ, 来 れ, 何 ぞ 遅 延 す るか とな る。 この言 葉 は一 見 不遜 の よ うで あ るが不 動 明 王 が 奴僕 の姿 を 示 現 し仏 に 仕 え る は もち ろん 良 く行者 に 仕 え る と説 か れ て い る事 に合 致 す る, 即 ち 立 印 軌 に は 無 動 尊 現 身 奉 事 修 行者 猶 如 婆 識 鍍(大21.5C)と あ る。 〔VII〕 次 に二 梵 本 の√iamが 不 適 当で あ る こ と は, 既 に の べ た 通 りで あ り, こ こ で も不 動使 者 法 は そ のidamな る ことを 「一 郵 」 の対 訳 字 で 示 して い る。

次 にKarya単 は もち ろんKaryaの 業 格 で次 のKuruの 目的 格 で あ り, そ

薦 祭 の 剣 の 梵 字 に つ い て

(22)

-41-密 教 文 化 の対 訳 に は 三巻 本 の 哩 の 冗字 を除 き不 一 致 は ない。 養, 蝿 等 の我 が 国音 ウが 中 国 音 のng, 梵 語 のhを 表 わ す こと は既 述 の通 りで あ り, Karyamのmが 空 点 で 表 記 され て い て も そ の音 がnで あ る こ と は勿 論 で あ る。 次 に 礁 祭 剣 のKuは 大 分, 見 分 け が た く, ま た 次 の字 は二 梵 本 共 にroと な つ て い る が, 文 意 の上 か ら も, 対 訳 漢字 か ら も, こ こがKuru(√Kr'作 ス' のII人 称, 命 令, 単 数)で あ る こと に間 違 い な い。 恐 ら くroと した の は対 訳 字 噌 ・嘘 等 の我 が 国 音 か ら来 た 誤 写 で あ ろ う。 それ は 梵 字 でoと 表 記 され る言 葉 が ウ と発 音 され, uと 表 記 され る言 葉 が オ と発 音 され る こ とは これ はす べ て 対 訳 漢字 の よみ か ら来 る こ とで あ るが, 我 が 国 の 真 言 読 み で は 常 の こ とで あ り, 三 五 相 通 と よ ば れ て い る。 一例 を あ ぐれ ばVairocanaが ビル シヤ ナ と 呼 ば れ, hulu huluが コ ロ コ ロ と 読 ま れ て い る よ う な も の で あ る。 し た が つ て こ こ はKuruと 断 定 す る。 次 に 最 後 が ソ ワ カSvahaで あ る こ と は, こ れ は 論 ず る ま で も な い こ と で あ ろ う。 な お, 立 印 軌 を 除 き, 他 の 漢 訳 諸 経 典 に は す べ てNamabの 加 句 が あ る が, 立 印 軌 に な く, 薦 祭 剣 に も な い の で, い ま は 省 い て お く。 か く して こ の 段 は

idam karyam kuru svaha/(こ の 事 を な せ, ソ ワ カ(成 就 あ れ か し)) と な る。

い ま こ の 真 言 を 前 後 通 じ て 示 せ ば 次 の 如 く な る。

Namah samata-vajranam/ om acala-kana-buddha-cetaka hum hum khahi khahi idam grhna mam/halahalavisa-supta (or sarpta) ah hrih phat/ aryacal' agaccha kim cirayasi? idam karyam kuru svahd!// (5)結 び 以 上, 写 真 の み で 実 物 に依 らず, ま た 独断, 推 測 を 多 く含 ん で い るが, 一 応 第三 究 の文 意 も判 明 した の で欄 筆 す る。(昭34. 11. 10) (性 澄 祥 量 み郁 文)

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