第2章
留学しようと思ったら
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留学の目的を明確にする
留学準備を進めるうえで最も大切なことは、なぜ留学したいかをよく考えてみることです。その過 程で、何をしたいかがより具体的になり、留学の目的が明確になります。留学したい気持ちを見つめなおす
留学したいという気持ちを、冷静になって一度じっくり見つめなおしてみましょう。留学に 対する熱意が本物であれば、これから始まる留学手続きをやり遂げる力、また留学中辛い ことに立ち向かう力になります。何のために留学するかを考える
一口に「留学」といってもさまざまなタイプがあります。また、留学以外にもワーキング ホリデー、インターンシップ、ボランティアなどの選択肢もあります。何のために留学するか を明確にして、自分に合った方法を選びましょう。留学経験をどのように将来に活かすかを考える
留学で得た経験を自分の強みにし、「自分はこれだけのことをやってきた」と胸を張って 将来に活かせるような留学となるよう、渡航前から十分な計画を練りましょう。 実りある留学の第一歩として、「何故留学をしたいのか」「何をどんなふうに勉強したいのか」、「達成 目標は何か」を言葉にして、留学のイメージを具体化させてみましょう。「なんとなく留学にあこがれている」
➡留学にどんなイメージを持っている?イメージする留学先はどんなところ?「なんとなく日本から出たい、海外に行きたい」
➡海外の何に興味がある?日本ではできないこと?「語学力をアップさせたい」
➡今の語学力はどのくらい?何のために、どのレベルまで(語学能力試験で○○点取るなど)上げたい?「国際感覚を身につけたい」
➡あなたが思う「国際感覚」とは具体的に何ができること?現地の人との触れ合いが目的なら観光 旅行やワーキングホリデーという選択肢もあるのでは?「キャリアアップにつながりそう」
➡どんな職種・職業につきたい?何をもって、「キャリアアップ」といえる? 留学の目的が明確になってきたら、続けて右ページの質問の答えも考えてみましょう。目的は?
〇異文化体験 〇語学力アップ〇学位や資格の取得 〇研究の達成いつ?
■〇日本の学校に在学中/卒業後〇仕事を休職/退職してどんな学校?
〇語学学校 〇大学・大学院 〇専門学校どこの国・地域?
〇希望する勉強ができる国・地域〇自分の条件に合う国・地域お金は?
〇必要費用(授業料・生活費・渡航費・保険など)〇奨学金はあるか?(P.52へ)留学後は?
〇日本の在籍校に戻る 〇進学(日本・海外) 〇就職(日本・海外) →希望する職に就くために必要な資格・学位は? 留学を考え始めた今の段階では答えられない質問もあるかもしれませんが、第1章「留学体験記」、 第3章「留学を決めたら」などを参考にしながら、焦らずじっくりと時間をかけて自分の留学計画を 見つめてみましょう。 留学を実りのあるものとするために忘れてはいけない3つのこと■
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相談しましょう!
家族や友人、学校の先生など、まずは身近な人と話をしてみましょう。誰かに話すことで、留学につ いてのイメージを具体化することができます。加えて、計画が説得力のあるものかどうかを試すこと もできますし、違った視点からアドバイスを受けられるかもしれません。実際に留学をしたことのある 人と話す機会を持つのもよいでしょう。日本学生支援機構をはじめとするさまざまな機関・団体が、 留学経験者の生の声を聞くことのできるイベントを開催しているので、参加してみましょう。■
学びましょう!
「ことば」はあなたと相手をつなぐ架け橋になるものです。いくら立派な橋ができたとしても、あなた 自身が伝えたい内容がなければ、コミュニケーションは成立しません。留学前に専門分野についての 知識や教養を学び、しっかりと自分の意見や考えを持つことで、あなたの留学生活はより充実したも のになるでしょう。■
留学後の人生プランを考えてみましょう!
留学の経験を将来どのように活かしていきたいですか?留学後の人生プランも考えてみましょう。 (P.28へ) (P.46へ)第2章
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留学のタイプを知る
専門分野の学習を目的とした短期の留学 例:交換留学やサマースクールなど 外国語学習を目的とした語学留学 学位・資格取得を目的とした留学 例:学士号、修士号、博士号の取得 ※現地の大学などへの進学準備コースを含む 外国語学習・異文化体験を目的とした 交換留学・短期語学留学 現地の高校卒業資格取得を目的とした留学大 学 な ど
P.30へ
高 校
P.35へ
語 学 学 校
P.34へ
(専門学校、短期大学、大学、大学院)
留学の時期
留学の目的
大学在学中・卒業後
高校卒業後
中学校卒業後
高校在学中
学校の種類
Q.
社会人になってからでも留学できますか?
できます。むしろ専攻分野によっては職歴が求められること
もあります。
海外の学校は、出願にあたって高校卒業以上といった卒業資格・学位についての条件はあったと しても、職業(社会人か学生か)や年齢によって取り扱いを変えることはほとんどありません。 逆にMBA(経営学修士)の取得を目的とした修士課程など、専攻分野によっては、一定の職歴 がないと出願できない場合もあります。A.
あなたの今の状況と目的に合った留学のタイプを考えてみましょう。第2章
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学校の種類
一般的には次のような種類があります。 主な 学位・資格 一般的な 必要修業 年数大学
3〜6年 学士号大学院
修士号:1〜2年 博士号:3年以上 修士号、博士号短期大学
2年 準学士号、修了証専門学校
さまざま 修了証 学校の種類、卒業時に取得できる学位や資格、必要修業年限(卒業までに必要な期間)は国・地 域や専攻分野により異なります。学位のシステムについても、日本と同じような学士号→修士号→博 士号の3段階システムのほか、2段階システムや、複数のシステムが並立している国・地域があり、さ まざまです。日本のシステムと違うかどうか、日本でどのように認定されるのかをよく調べたうえで、 目的に合った学校や課程を選ぶことが大切です。!!
大学などへの留学にあたっては、「学力(卒業資格・学位と成績)」「語学力」「資金力」の3つは必 須です。(1)
学位取得を目的とした留学の場合
(→ 第1章「留学体験記」語学・学部留学<P.10>、学部留学<P.12>、 大学院留学(修士)<P.6>、語学・大学院留学(修士)<P.16>、 学部・大学院留学(修士)<P.20>、大学院留学(博士)<P.22>)■
入学資格
現地の学校に入学する際に求められる資格の例学力
(卒業資格・学位と成績) 短期大学・大学の場合 ●日本の高校を卒業 ●日本の大学に1年以上在籍(例:ノルウェー) ●日本の大学の入学試験に合格、または大学入試センター試験で一定の得点を取得(例:ドイツ) ●現地の準備コース(ファンデーションコース)を修了 ※英国やオーストラリアなどでは、プレゼンテーションの方法・論文の書き方といったスキルを 身につけるファンデーションコースがあります。 ●現地の学力試験に合格 大学院の場合 ●修士課程入学の場合:学士号取得など ●博士課程入学の場合:(専攻分野での)修士号取得など ●専攻分野によっては、職歴が求められることもある(例:MBA(経営学修士))Ⅰ.大学などへ留学する
語学力
●各種語学試験(第4章「1.主な語学・学力試験」<P.47>参照)の成績、または現地の学校が 実施する試験の成績で証明(学校・専攻によって求められるレベルが異なる) ●現地語以外(主に英語)で行うコースを持つ国・地域(ヨーロッパやアジアなど)もある資金力
●学費と現地での生活費をまかなう資金(長期間留学する場合は最低でも1年分以上)があるこ とを証明する書類(預金残高証明書・奨学金受給証明書など)を提出 ※留学生用の学費が現地の学生用とは別に設定されている国・地域があるため、必ず留学生用 の学費を確認すること ●留学生が応募できる奨学金や授業料免除制度を持つ大学があり、出願と同時か入学申請後に 応募。日本で申請する奨学金(第4章「2.奨学金・ローン」<P.52>参照)は、留学開始時期 の1年以上前に応募を締め切るものもある ●留学生のアルバイトは法律で制限または禁止している国・地域があるので、事前に十分な資金 を用意しておく必要がある■
出願・選考方法
出願書類(第3章「留学を決めたら Step.3 出願手続き」<P.42>参照)のみで入学の合否を決定 する国・地域が多く、現地の学生とは別の留学生向けの選考方法を設けている場合があります。■
編入制度
日本→海外 日本の大学などに在学中、もしくは卒業・退学後、海外の大学などへ編入を申請することができま す。編入先の言語(または英語)に翻訳した日本の学校の講義概要と成績証明書を提出し、それを 元に編入先大学が互換可能な単位数を独自に判断します。 海外→海外 国・地域によっては大学への編入が一般的に行われているところがあります。 例えば、米国やカナダの短期大学には4年制大学に編入するためのコースがあります。また、オー ストラリアやニュージーランドの専門学校では、課程修了後に自国の大学に編入することができる専 攻分野があります。進学を希望する大学と単位互換協定を結んでいる短期大学や専門学校を選ぶの も一案でしょう。ただし、それぞれの学校が認定・登録されているか(第3章「留学を決めたら Step.2 学校選択」「海外における学校の認定・登録」<P.39>参照)など、教育制度について事前 に確認しておいてください。各学校の認定・登録団体が異なると、単位の互換性がない場合があり、 せっかく取得した単位が編入先で認められないことがあるので注意しましょう。第2章
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専門分野の学習を目的とした短期の留学の場合
(→ 第1章「留学体験記」語学・学部留学(交換)<P.4>、学部留学(交換)<P.8> 語学・学部留学(短期)・大学院留学(交換)<P.14>、語学留学<P.18>)■
日本の大学などに在学中の方
●「交換留学」など 数週間~1学年間、在籍校と交流協定を結んでいる大学に留学する制度を一般的に「交換留学」、 「協定留学」、「派遣留学」などといいます。 ・単位の互換:留学期間も在籍校の修業年限として算入され、留学先校で取得した単位は、交流協 定の範囲内で在籍校の単位として認められるのが一般的です。必要単位を満たせば、留年せず卒 業することが可能です。 ※在籍校と留学先校の両方の学位を取得できる「ダブルディグリー」「デュアルディグリー」といわれ る制度を設けている大学もあります。 ・授業料:在籍校か留学先校のどちらか一方に支払うのが一般的です。奨学金制度を設けている場 合があるので、在籍校に確認してください。 ●「認定留学」 在籍校との交流協定がない大学へ留学する場合で、一定の条件を満たせば休学扱いではなく、留 学扱いとなる留学を一般に「認定留学」といいます。 ・単位の互換:留学期間のうち特定の年限を在籍校での修業年限として算入されることもあります。 また、留学先校で取得した単位が在籍校で認められることもあります。 ・授業料:留学先校へは全額支払うのが一般的です。在籍校への支払いは大学により制度が異なり、 全額支払う場合、一部または全額免除の場合、在籍料のみ支払う場合などがあります。「交換留 学」などが対象の奨学金への応募を認めている大学もあるので、在籍校に確認してください。 ●「休学留学」 在籍校を休学し、留学することを一般的に「休学留学」と呼びます。 ・単位の互換:休学期間は在籍校の修業年限に算入されません。在籍校によっては、留学先校で取 得した単位を認定するところもあります。 ・授業料:留学先校のみに支払うのが一般的です。在籍校での学籍を確保するために、一定額の授 業料または在籍料を納めるように求める大学もあります。 ■ ※ 在籍校がどのような制度を認定しているのか、どの留学のタイプが自分に合っているのかをよく考 えましょう。■
社会人の方
社会人でも大学などのプログラムに参加できることがあります。また、社会人向けのプログラムを 開設している学校もあります。社会人が留学する場合も、留学先校が提示する条件を満たす必要 があります。一般的な条件としては、語学力、卒業資格などが挙げられるでしょう。まず、自分が 参加したいプログラムやコースが社会人でも参加できるのかを確認してから、手続きするようにし てください。■
参加可能なプログラムの例
種類 特徴・プログラム例 学位取得課程の授業を聴講 ◦学校が認めれば、正規生と同じ授業を受講できる ◦単位の取得が認められることがある ※正規生・交換留学生が優先的に授業登録できることが多い 留学生対象プログラムに参加 ◦留学先の文化紹介講座◦集中語学コースなど 公開講座に参加 ◦社会人向けなど一般に公開されている講座 ◦サマースクールやオープンコースなどは受講者の選考をする 場合がある 特定分野の知識やスキルの習得 を目的としたプログラムに参加 ◦課程修了後、修了証などが授与される ◦プログラミング、秘書業務、ビジネス、教員養成など分野 はさまざま■
プログラム参加資格、出願・選考方法
留学先の学校やプログラムの種類により異なります。「⑴学位取得を目的とした留学の場合」 <P.30>の入学資格を参考にしながら、調べたり問い合わせたりしてみましょう。Q.
留学で特定の職業に就くのに役立つような勉強はでき
ますか?
はい。たとえば専門学校ではホスピタリティー、IT、ビジネス、調理師、アート、デザインな ど、さまざまな分野の専門的な勉強ができます。また、大学・大学院では会計学、経営学、 薬学、看護学、医学をはじめ幅広い分野の実践的かつ総合的な知識を身につけることがで きます。A.
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