東京電機大学 名誉教授 安田 進
液状化による被害の実態と 予防について考える
1. 埼玉県における液状化発生履歴 2.液状化発生のメカニズムと予測 3.液状化による構造物の被害の特徴 4.液状化対策方法
5.東日本大震災で液状化した都市における復旧・復興 6.将来の地震における液状化による被害に関して
1
2
1. 埼玉県における液状化発生履歴
(若松による)
川越 東松山
熊谷 加須
久喜
さいたま
春日部
越谷 三郷 本庄
(1)過去の地震による液状化発生地点の調査例
3
(2)1923年関東大震災における埼玉県の液状化被害
地質調査所によると、幸手の旧 市街を取り巻く宅地や田畑に多数 の地割れや噴砂孔を生じ,多量の 砂水を噴出。
中川や古利根川沿いにも地割れ が発生との証言もあった。
地質調査所によると,古利根川 の北岸の畑,宅地,道路と川に並 行な地割れ群ができた。その中で も杉戸小学校から杉戸駅にかけて 大きな地割れや陥落地帯ができ,
校舎などが傾斜・倒壊した。地割 れや陥落地帯の幅は,最大5.4mも あり,多量の水,砂,浮石を噴出 し,校庭が傾斜・倒壊した。
4
地質調査所によると,古利 根川沿いの宅地,畑に多数の 地割れができ,多量の砂水を 噴出したため付近一帯15cm湛 水し,砂も12cm堆積した。川 久保の生垣が,古利根川の方 向に最大1.5m移動するなど,
地盤の永久変位も発生した。
地割れによって引き裂かれて 半壊した家屋が少なくなかっ た。
また,元新宿では,国道4号 線を斜めに横切る地割れが 100mの間隔で2本でき,2本の 地割れにはさまれた箇所は1m 近く沈下したなどの証言も あった。
5
(3)2011年東日本大震災で液状化した箇所の概要
国交省関東地整と地盤工学会 の共同で地震の4か月後に整 理した液状化地点
埼玉県でまとめられた液状化が発 生した市町村
(関東地整による) (埼玉県による)
6
久喜市南栗橋の平野における盛土造成宅地で発生した 液状化被害
(地盤工学会による)
(1か月後に撮影) 7
8
推定地盤断面図
(地盤工学会による)
浦安市今川
浦安市入船
401000
浦安市入船 東京湾岸の戸建て住宅の被害状況
9
千葉市美浜区磯辺
浦安
(小川氏の撮影による)
東京湾岸の市街地の平面道路の被害状況
路面の突き上げ
新木場
路面の凸凹
ディズニーランド駐車場
噴水・噴砂
浦安消防署今川支所 地盤の沈下にともなう段差
11
舞浜2
舞浜3
富岡 今川
入船
A
A’
B
B’
C C’
D D’
E
E’
配水管漏水箇所
東京湾岸の上下水道、ガス、通信の地中埋 設管の被害例(浦安での配水管被害箇所)
浦安市内の配水管漏水箇所
(千葉県による)
関東大震災での液状化地点 東日本大震災での液状化地点
なぜ液状化 しなかった のか?
(若松による)
考えられる理由 その1:地震動の違い、その2:エイジング効果
(4)関東大震災と東日本大震災での液状化被害の違いの留意事項
(液状化地点図は国交省と地盤工学会による) 12
河川堤防の被害
1923年関東大震災での被災 箇所
2011年東日本大震災での
被災箇所
(武村による) (気象庁による)
関東大震災 東日本大震災
考えられる理由 その1:地震動の違い
14
沖積砂(墨田)
F =0%
C
F =40%
C
F =70%C
埋立砂質土 長期圧密した供試体
に対する試験
浚渫土
山砂 木村・龍岡ら
(Dr=80%)
0.00010.001 0.010 0.1 1 10 100 1000 10000 0.1
0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
堆積や埋立からの経過時間(年)
液状化強度比 , R
L○:FC≒0%
◎:FC≒15%
▲:FC≒40%
□:FC≒70%
考えられる理由その2:堆積後の経年変化により液状化 強度が増加した効果(エイジング効果)
15
1994 北海道東方沖
1993 北海道南西沖
1968 十勝沖 2003 十勝沖 1982 浦河沖
1978 宮城県沖
1978 伊豆大島近海
1973 根室半島沖
1964 新潟 1983 日本海中部
2008 岩手・宮城内陸
1987 千葉県東方沖 1993 釧路沖
1993 能登半島
1994 三陸はるか沖
2007 能登半島
2007 新潟県中越沖
2004 新潟県中越 2000 鳥取県西部
2005 福岡県西方沖
1995 兵庫県南部
2009 駿河湾沖の
2001 芸予
2003 宮城北部の
2016熊本
2018 北海 道胆振東部
2011 東北地方太平洋沖
(1)液状化が認識されるよう になった1964年新潟地震以降 に液状化をもたらした地震
2.液状化発生のメカニズムと予測
17
(2)液状化発生のメカニズム
液状化が発生する条件①地下水位以下の、➁緩く堆積した、
➂砂層に、
④震度5弱程度以上の地震 が襲った場合
地下水位が深いと液状化 する層が薄くなったり、
深い層が液状化しても地 表まで過剰間隙水圧が伝 播してこなくて構造物が 被害を受け難い。
液状化による被害が発生 し易い条件
①地下水位が浅く、
➁緩く堆積した、
➂砂地盤に、
④震度5弱程度以上の地震 が襲った場合
σv0’は土粒子 間力で支え、
間隙水圧は静 水圧
土粒子の噛み合 わせが徐々には ずれ、 σv0’は土 粒子間力と間隙 水圧で分担
土粒子はバラ バラになり σv0’は間隙水 圧だけで支え て過剰になる
→地表に砂と ともに噴出
→圧縮により 地盤が沈下
(3)クライストチャーチでは2010~2011年の間に3~4回も再 液状化した
(Canterbury Univ. )
約 20cm沈下
2010年の地震の4日後
約 50cm沈下
2011年の地震の1週間後 2013年12月
集団移転
18
一度液状化した箇所は同程度以上の地震動で再液状化し易い
不攪乱試料採取
19
(4) 地震応答解析や室内液状化試験に基づく詳細な判定方法
採取した試料の液状化試験
22
液状化強度繰返し三軸試験から液状化強度を求める方法
23
N値を用いる理由
液状化し易い土の条件
・砂質土:標準貫入試験用サンプラーで採取した 土の粒度試験より
・緩く堆積:N値より
・地下水位が浅い:ボーリングより
24
(5)一般の地盤調査、試験結果をもとにした簡易な予測方法
76cm
標準貫入試験とは
63.5kgのハンマを ノッキングヘッドに 76cmの落下高で落下 させて、サンプラを 地盤内にたたき込む。
そして30cmたたき込 むまでに要した回数 をN値とする。
砂質土での目安
N<10:緩くて液状化 し易い
N>30~50:良く締 まって支持層になる
25
26
細粒分含 有率FC(%)
深度
表土
粘土 砂
R N 値
土質
L FL
砂礫
0 50 0 100 0 0.5 0 0.5 0 1 2
液状化
液状化検討 不要
FL:繰返しせん断抵抗率(液状化に対する安全率) =R/L R:繰返しせん断強さ比(液状化強度比)
L:地震によって発生する繰返しせん断応力比
N 値と細粒分含有率をもとにした液状化簡易判定方法
27
(基礎地盤コンサルタンツ㈱のホームページより)
現在の建築基礎構造設計指針
28
一般の木造2階 建ての住宅が該 当する4号建築物 では、認定を受け た型式に適合す る建築材料を用 いる建築物と建 築士の設計した 建築物について は、建築確認申 請の審査を簡略 化して構わないと なっており、一般 に液状化を考慮 されずに建てられ てきている。
各設計基準類で液状化考慮されるようになった年(地盤工学会)
29
(6)液状化指数P
Lにより構造物の被害の程度を評価する方 法の意味と留意点
PL値を用いた構造物の被害の判断:
PL<5:液状化による被害は受けない
と判断
PL>15:液状化による甚大な被害を受
けると判断 留意点:
①家屋の沈下・傾斜角を直接推定で きるものではない。
②浅い層だけが液状化してPLが小さ かったのに戸建て住宅が被災した例 が東日本大震災で続出
0 1.0 2.0 0 10
液状化に対する安全率
(抵抗率), F 深さ方向の重み 係数 w(z)
0
-5
-10
-15
-20 深さ Z(m)
L
(表層の非液状化層厚)
30
31
直接基礎構造物の沈下・傾斜 杭礎構造物の水平方向変位・変形
岸壁・護岸の孕み出し 地中構造物の浮上り
(渡辺による) (渡辺による)
1964年新潟地震 1964年新潟地震
1983年日本海中部地震 2003年十勝沖地震
3.液状化による構造物の被害の特徴
(1)液状化による一般的な被害
構造物 被害形態
直接基 礎構造 物
杭基礎 構造物
地中構 造物
沈下・傾斜
液状化
沈下・傾斜
液状化
杭の曲げ
液状化X X 上部構の過大な変形
液状化 浮上り
液状化
抜け
液状化 破損
液状化
直接基礎の構造物:地表に建てられた 建物やタンクなど種々の構造物は自重 により沈下する。
杭基礎の構造物:杭先端地盤が液状化 すると沈下する。また、先端は液状化 しなくても表層が液状化すると水平方 向の地盤反力が減少し、水平方向に大 きく変形し、杭が破損したり、上部の 橋桁が落橋する。
地中構造物:地中に埋まっているマン ホールや防火水槽、下水道管など軽い 構造物は浮き上がる。“ドロ水”の単 位 体 積 重 量 は 水 よ り 重 く 、 17 ~
19kN/m3もあるため、コンクリート製
の構造物でも中に空洞があれば浮き上 がる。
32
33
岸壁や護岸および背後地盤:背後 の地盤が液状化すると岸壁や護岸 に加わる土圧が増える。また基礎 下の地盤が液状化すると支持力が なくなる。これらにより岸壁や護 岸が海や川に向かって孕みだす。
土構造物:河川堤防やアースダム、
鉱さい集積場といった土構造物で は地盤の強度やせん断剛性が減少 するため、滑ったり沈下する。
岸壁や護岸および背後地盤:岸壁 や護岸の孕み出しにより液状化し た地盤が水平方向に流動し、直接 基礎の構造物の基礎は引き裂かれ、
杭基礎の変形、埋設管の引っ張ら れて被害が生じる。
緩やかな傾斜地盤:岸壁・護岸背 後地盤の流動と同様に各種構造物 の被害を甚大にする。
構造物 被害形態
岸壁・
護岸構 造物
土構造 物
地盤全 体の流 動
沈下
液状化
すべり
液状化液状
ケーソンの前傾・沈下
置換砂 海底粘 土層 液状化
矢板の孕み出し
矢板
海底粘土層 液状化
岸壁・護岸背後地盤
海底粘土層 液状化
緩やかな傾斜地盤
34
液状化
地盤の圧縮沈下 家屋のめり 込み沈下 地震後地表面
傾斜
P
地盤の圧縮沈下 液状化 地震後地表面
P
地震後地表面
傾斜
液状化
家屋のめり 込み沈下 P
地震後地表面
地震後地表面
傾斜
液状化
家屋のめり 込み沈下
地震後地表面 P
液状化お よび流動
家屋のめり 込み沈下 地震後地表面
傾斜
液状化
地盤の圧縮・流 動による沈下
P
P
傾斜 地震後地表面
平地の造成宅地の液状化による被災パターン
めり込み沈下・傾斜
+地盤全体の沈下
地盤全体の沈下のみ
めり込み沈下・傾斜+
地盤の不同沈下
地盤の不同沈下・傾斜
めり込み沈下・傾斜+
地盤の沈下+基礎の引張り
めり込み沈下・傾斜+
地盤の沈下+基礎の引張り
(2)液状化による戸建て住宅の被害の特徴
分類 全壊 大規模半壊 半壊 一部損壊
判定基準
傾斜角
> 50/1000 16.7/1000 ~
50/1000 10/1000 ~
16.7/1000 <10/1000
沈下量 床上1mまで 床まで 基礎の天端 25cmまで
(3) 東日本大震災の約 2 か月後に内閣府から出された新被害判定基準
傾いた家の中で生活するとめまいや吐き気な どの障害が生じる。
36
めり込み沈下量と傾斜角が重要
37
建物のめり込み沈下およ
び過剰間隙水圧の時刻歴
(1) 建物から離れた地盤での過剰間隙水圧比(2) 建物直下の地盤での過剰間隙水圧比
0 20 40 60 80
0 1 2
Time (sec.) Excess pore water pressre ratio 土槽の際付近から噴水が発生
P-15 P-21
加振終了 Case 2
0 20 40 60 80
0 1 2
Time (sec.) Excess pore water pressre ratio
P-20 P-14
加振終了Case 2
過剰間隙水圧比過剰間隙水圧比
建物の際から噴水が発生 時間(秒)
時間(秒)
(3) 建物のめり込み沈下量
0 20 40 60 80
-4 0 4 8 12 16
Time (sec.) Penetration settlement (cm)
34秒時点での建物のめ り込み沈下
加振終了
Case 2 Case1
建物のめり込み沈下量(cm)
時間(秒)
P-21
密な砂 矢板
対策 2.5m
2.5m
Case 1 Case 2
10.0m
1.5m 2.5m 1.75m 1.75m
最終めり込み沈 下量=14.1 cm
緩い 砂 P-20 P-15 P-14
最終めり込み沈 下量= - 4.1 cm
(4)めり込み沈下が生じる
メカニズムに関する大型振
動台実験
38
建物のめり込み 沈下と地表面の 沈下の時間経過
(2) 34秒後でのめり込み沈下 状況
(3) 70秒後に建物際から噴水 発生
建物際から噴水 発生
(1) 26秒後に土槽の際付近か ら噴水発生
盛上り
めり込み沈下 土槽の際付近から
噴水発生
めり込み沈下、盛上り、噴水の写真
0 30 60
0
8
加振開始からの時間 (秒)
沈下量(cm)
16 4
12
10800 (3時間)
A B D
A: 緩い砂で液状化が発生 B: めり込み沈下が加速
C: 土槽の際付近から噴水発生 D: 加振終了
E: 建物際から噴水発生
C E
39
(5)振動台実験や地震時の動画などから考察される液状化に よる建物のめり込み沈下や傾斜発生のメカニズム
(1)噴水や噴砂が発生してできた穴に落ち込んで建物がめり込み沈下す るのではなく、液状化によって軟化(せん断剛性が急減)した地盤に建 物の荷重によりめり込んで沈下する。その際建物下の地盤を横方向に押 しのけるため、建物周囲の地表面が少し盛り上がる。
(2)液状化層からの間隙水の絞りだしおよびそれに伴う体積圧縮はゆっ くりと生じるため、地表面の沈下もゆっくり生じる。
液状化し易い層 地表面
P
地震
液状化発生 地表面
P
沈下
液状化および締まった層
地盤の沈下量 建物のめり込 み沈下量
地表面 傾斜角
P
総沈下量 傾斜
P
40
浦安、地震発生12日後
2棟の傾斜例
近接している 住宅同士が 傾斜に与える
影響の事例
(a)1棟独立 (b)2棟が近接 (c)4棟が近接傾く方向
(6)建物の傾斜が生じる主要なメカニズム
41
4 棟の傾斜例
(浦安)
400mm600mm 100mm@2200mm 地表面沈下測定ター ゲット
加速度計 間隙水圧計
2000mm
1000mm
200mm 200mm 家屋の模型
地下水位 地盤
p
模型を用いた振動台実験
内向きの傾斜 外向きの傾斜
(1) 2棟が近接している場合 (2) 2棟が少し離れている場合
液状化 液状化
2 棟間で傾斜が生じるメカニズム(私案)
0 100 200 300
-2 -1 0 1
2棟の家屋間距離 (mm)
2棟の相対傾斜角(deg.)
内向きに傾斜 外向きに傾斜
-100 10
(m)
-50 -25 0 25 50
(m)
家屋 B層
F層
As層 家屋
家屋間隔:
1m, 2m, 3m, 5m, 7m, 10m 地下水位:
GL-0.5m~-2.5m(0.5m毎に変化)
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
-10
0
10
20
30
40
50
平均めり込み沈下量 SpAve(cm)
建物間の距離 (m)
地下水位 GL-0.5m GL-1.0m GL-1.5m GL-2.0m GL-2.5m
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5
建物間の距離 (m) 最大傾斜角 θmax(°)
地下水位 GL-0.5m GL-1.0m GL-1.5m GL-2.0m GL-2.5m
内向き傾斜外向き傾斜
2 棟間距離と 2 棟間傾 斜角の関係に与える地 下水位の影響に関する 残留変形解析
“ ALID ”での解析例
千葉市と習志 野市(住宅が密 集している地 区)のデータの み
神栖市と潮来 市(住宅があ まり密集して いない地区)
のデータのみ
めり込み沈 下量からで も傾斜角を ある程度推 定できそうで ある。
(7) 東日本大 震災で被災し た住宅で調べ た平均めり込 み沈下量と傾 斜角の関係
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 45.0 50.0
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
傾斜(1/1000)
平均めり込み沈下量(mm) 全壊・大規模半壊・半
壊線形(全壊・大規模半
壊・半壊) 線形(6/1000)
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 45.0 50.0
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
傾斜(1/1000)
平均めり込み沈下量(mm) 全壊・大規模半壊・半
壊
線形(全壊・大規模半
壊・半壊) 線形(6/1000)
平均めり込み沈下量(mm)
平均めり込み沈下量(mm)
傾斜角(1/1000)傾斜角(1/1000)
改良原理 工法
密度の増大 サンドコンパクションパイル工法(動的締固め、静的締固め)、振動棒工法
(通常型、吸水型)、重錘落下方法、バイブロフローテーション工法、圧入 締固め工法(コンパクショングラウチング工法等)、バイブロタンパー工法、
転圧工法、発破工法、群杭工法、生石灰工法、プレローディング工法 固結 深層混合処理工法、薬液注入工法、事前混合処理工法,高圧噴射撹拌工法 粒度の改良 置換工法
飽和度低下(地 下水位低下)
ディープウェル工法、排水溝工法
間 隙 水 圧 抑 制・消散
グラベルドレーン工法、人工材料系ドレーン工法、周辺巻立てドレーン、
排水機能付き鋼材 せ ん 断 変 形 抑
制
地中連続壁
➀液状化を防止する工法
➁構造的な工法(液状化は許すが被害は受けない)
4.液状化対策方法
(1)東日本大震災までに開発されてきていた対策方法
45
①地盤を締め固める工法 静的締固め砂杭工法
・大型の機械を使用。
・我が国で最も多く用い られている。
(大林による)
46
(2) 代表的な工法例
静的圧入締固め工法
・特殊な小型機械を使 用。
・狭い場所でも使える。
(CPG工法研究会による)
(大林による)
②セメントを混ぜて固める工法 深層混合処理工法
・大型の機械を使用。
・多く用いられている。
47
浅層混合処理
・簡易な機械で施工で きる。
パワーブレンダー
バックホー
48
低圧浸透
割裂 無固化部
注入計画範囲
地盤変状
薬液
地盤変状
浸透固化処理工法
・特殊な小型装置を使用。
・狭い場所でも使える。
(大林による)
液状化対策用
沈下修正用 注入工法
これは液状化対 策にならない。
49
グラベルドレーン工法
間隙水圧を一定値にと どめるため、ドレーン直 径、間隔を計算して決 める必要がある。
③過剰な間隙水圧の発生を抑制する工法
(大林による) 50
(3)東日本大震災前に「日本建築学会:小規模建築物基礎 設計の手引き(1988)に示されていた対策方法)
注:東日本大震災ではべた 基礎の建物で液状化により 沈下したものがあったので、
べた基礎は液状化対策とし て十分ではない場合もある。
51
52
(4)戸建て住宅に対する対策の考え方
( 1 )対策対象範囲の種類
①個々の住宅で対策を施す。
②市街地全体で対策を施す。
( 2 )対策の基本方針の種類
①全層の液状化の発生を防ぐ。
②下層が液状化しても、表層を改良するか地下水位を下げて 非液状化層厚を増してめり込み沈下量を軽減する。
③液状化の発生は許して杭基礎などの構造的な対策を施す。
( 3 )留意すべき戸建て住宅での制約条件
①敷地が狭いので大型の機械が用いられない。
②住宅地なので低振動・低騒音の工法しか使えない。
③費用を多くかけられない。
地盤工学会浅層盤状改良による宅地の液状化対策研究委員会:浅層盤状改良によ る宅地の液状化対策の合理的な設計方法の研究報告書,2012.
53
3m程度以上 の厚さが必要
詳細な有効 応力解析 GEOASIAによ る解析結果
(5)浅層盤状改良の厚さとめり込み地下量の関係に関する解析例
改良
戸建て住宅に適用できる具体的な工法
・静的締固め工法
・圧入締固め工法
・締固め用の既製杭
留意事項:盤状に改良する必要がある。
対策のメカニズム:改良部分の剛性により家のめり込み沈下を軽減する。
(6)新築の個々の戸建て住宅に対する対策
(以下は地盤工学会関東支部造成宅地の耐震対策に関する研究委員会報告 書「液状化から戸建て住宅を守るための手引き」,2012.より抜粋)
戸建て住宅に適用できる具体的な工法
・セメント混合処理(表層改良)
留意事項:盤状に改良する必要がある。
液状化 0m
-1m
-8m
非液状化層または支持層
①地盤の盤状締固め
締固め
液状化 0m
-1m
-8m
非液状化層または支持層
②地盤の盤状固化
固化
戸建て住宅に適用できる具体的な 工法
・鋼管杭
・木杭
留意事項:地盤は沈下するので杭 の抜けあがりに注意
対策のメカニズム:支持層の支持力で支持する。
戸建て住宅に適用できる具体的 な工法
・セメント混合処理
留意事項:支持層まで到達しな いと対策効果はない。
液状化 0m
-1m
-8m
支持層
③既製杭支持
液状 化 0m
-1m
-8m
支持層
④地盤の柱状改良
戸建て住宅に適用できる具体的な工法
・グラベルドレーン
・人工材料ドレーン
留意事項:過剰間隙水圧比が0.4程度以 下におさまるように、打設深さ・打設 ピッチを適切に設計する必要がある。
対策のメカニズム:液状化層からの過剰間隙水圧をドレーンで消散して 液状化発生を防ぐ。
対策のメカニズム:矢板などの壁を周囲の基礎に結合して締め切ること によって,壁内部が液状化してもその部分が外に流動しないようにして,
めり込み沈下を軽減する。
戸建て住宅に適用できる具体的な工法
・矢板締切り
・ソイルセメント壁
留意事項:壁の深さの設計方法
液状化 0m
-1m
-8m
非液状化または支持層
⑤過剰間隙水圧消散
排水層
液状化 0m
-1m
-8m
非液状化層または支持層
⑥壁状締切り
戸建て住宅に適用できる具体的な工法
・盛土
留意事項:盛土は良く締め固めて支持層 になるようにする必要がある。
対策のメカニズム:基礎下の不飽和の非液状化層を厚くすることにより,
下部が液状化しても剛性が保てるようにして沈下の軽減をはかる。
対策のメカニズム:表層を層状に改良した効果と先端の応力分散効果、
砕石によりめり込み沈下を軽減する。
戸建て住宅に適用できる具体的な工法
・こま型基礎
留意事項:阪神・淡路大震災や新潟県中 越沖地震、熊本地震では沈下しなかった が,東日本大震災では少し沈下したため,
効果をさらに検討中。
液状化 0m
-1m
-8m
非液状化層または支持層
⑦かさ上げ盛土
かさ上げ
液状化 0m
-1m
-8m
非液状化,支持層
⑧こま型基礎
砕石
①建物直下の層状締固め
戸建て住宅に適用できる具体的な工法
・圧入締固め工法
留意事項:盤状に改良する必要がある。
(7)既存の個々の住宅に対する対策
液状化 0m
-1m
-8m 非液状化または支持層 締固め
②建物直下の浸透固化
液状化 0m
-1m
-8m 非液状化,支持層 固化
戸建て住宅に適用できる具体的な工法
・薬液浸透固化処理工法
留意事項:盤状に改良する必要がある。
また、沈下修正の割裂注入の場合には 部分的に改良されるだけなので対策に ならなく、浸透固化が良い
③柱状改良
戸建て住宅に適用できる具体的な工法
・高圧噴射撹拌工法
留意事項:支持層まで到達しないと対 策効果はない。
液状化 0m
-1m
-8m
支持層
④地下水位低下
液状化 0m
-1m
-8m 非液状化,支持層 矢 板 井 戸
戸建て住宅に適用できる具体的な工法
・井戸による汲みあげ
留意事項:周囲への影響を防止するため 矢板が必要な場合がある。また、下層に 軟弱な粘土層がある場合には地盤沈下を 検討する必要がある。
⑤壁状締切り
戸建て住宅に適用できる具体的な工法
・矢板締切り
・ソイルセメント壁
・高圧噴射撹拌
留意事項:壁の深さの設計方法
液状化 0m
-1m
-8m 非液状化,支持層
①既設住宅への圧入式締固め工法
道路
(河野ら)
液状化し易い層
液状化し難い層
モルタルを圧入する ことにより周囲の地 盤を締め固める
(8)東日本大震災後に検討、開発された個々の宅地の対策方法例
三信建設工業㈱
②新築の戸建て住宅用に小型化した砕石締固め・排水工法
㈱不動テトラ
液状化し易い層
液状化し難い層
直径40cmから 50cmに拡径して 周囲地盤を締め 固め、地震時に は砕石からの排 水効果をもたす
新設の住宅に適用した事例
62
63
③新築・既設の戸建て住宅への矢板締切工法
住友林業㈱
液状化
非液状化
軽微な沈下 液状化しても外
に出ない
新設の住宅に適用した事例 既設の建物に適用した事例
64
東日本大震災の半年後 に創設された市街地液 状化対策事業
地下水位低下工法
格子状地中壁工法
国土交通省都市局都市安全 課「市街地液状化対策推進 ガイダンス」
http://www.mlit.go.jp/toshi/t oshi_tobou_fr_000005.html
(国土交通省による)
5.東日本大震災で液状化した都市における復旧・復興
液状化 地点 利根川
: 市街地液状化対策事業および造成 宅地滑動崩落緊急対策事業で液状化 対策の適用が検討されてきた都市
:
地下水位低下による対策が行われ てた都市事業を適用するにあたって実証実験など で検討されてきた事項
1. 地下水位の低下量の設定方法 2. 地下水位の低下方法
3. 水位低下のための排水管や浅井戸の 設置間隔
4. 地下水位低下に伴う地盤の沈下量の 推定方法
5. 稼働中の排水量と維持管理方法
低下前地下水位
低下後地下水位 排水パイプ
A A
’
66
(液状化地点図は国交省と地盤工学会による)
国土交通省で平成 26 年 3 月に出された市街地液 状化対策推進ガイダンス
(国土交通省都市局 都市安全課による)
1)地下水位の低下量の設定方法
深度
(GL-m)
東日本大震災で被災した浦安の2地区の宅地における地下 水位の調査例
浦安市入船4丁目の地下水位分布
地下水位 (GL m) 大規模
半壊 半壊
一部 損壊 無被害
③建物の沈下量や傾斜角を直接推定 できる必要がある。
地下水位と住宅被害の関係
7 基礎下の非液状化層が薄い
ので支持力不足ですぐ沈下 するか、液状化層から絞り 出された間隙水が上昇し支 持力不足になって沈下する。
液状化層から絞り出された 間隙水の上昇と、地割れか らの噴水が基礎下に達する ことにより、支持力不足に なって沈下するか、しないか 分かれる。
液状化層から絞り出された 間隙水の上昇と地割れか らの噴水とも基礎下付近ま で達せず、支持力は残った ままで沈下しない。噴水も 地表に達しない。
地下水位がGL-1mの場合 地下水位がGL-2mの場合 地下水位がGL-3mの場合
直接液状化 地震前地下水位
直接液状化 地震前地下水位
直接液状化 地震前地下水位
1.0 2.0 3.0
1.0 2.0
体積圧縮 で上昇す る地下水 位
体積圧縮 で上昇す る地下水 位
体積圧縮 で上昇す る地下水 位
(単位:m) (単位:m) (単位:m)
69
地下水位を3m程度の深さまで下げておくとめり込み沈下し難
いメカニズムの概念図
礫
砂
排水パイプ (φ200 - 300mm)
シート t
排水管 シート
礫
排水管
浅井戸 用ポンプ
ストレーナ管
➀ 開 削 工 法 で 排 水 管設置
➁ 推進工 法で 排水管設置
➂浅井戸の設置
現場での実証実験方法および実施工での水位低下方法
2)地下水位の低下方法
①当初は宅地内へも排水管を設置することを想定
②実証実験結果によると、40m程度離れた道路だけに設置する配置で宅地 内の地下水位も下がった。→宅地内への設置は不要になった。
0 10 20 30
-5 -4 -3 -2 -1
0
W2 W3 W4地表面
低下前の地下水位
水位低下開始20日後
120日後
40日後 80日後
排水管
排水管
深さ
(m) マンホール No.1 マンホール No.2
-1 0
-2 -3
-4
W2 W3 W4
39m
71
3)水位低下のための排水管や浅井戸の設置間隔
4)地下水位低下に伴う地盤の 沈下量の推定方法
①従来の方法:大きな沈下量
②実証実験や詳細な地盤によって 得られた知見:沈下量は少ない
<理由1>間隙水圧の低下分布が仮定 と異なる
<理由2>表層が過圧密になっている ことが多い
砂礫層 圧密沈下検 討対象層
圧力分布
砂礫層 圧密沈下検 討対象層
圧力分布 有効上載 圧増加分 地下水汲
みあげ
砂礫層 圧密沈下検 討対象層
圧力分布 有効上載 圧増加分 地下水汲
みあげ
地下水位低下による間隙水圧と有効上載圧の変化の推定違い 都市名
実験結果
期間 地表面沈 下量 (cm) 神栖市 60 日後 0.1 ~ 0.5 我孫子市 最終 約 5 久喜市 30 年後 7.8
地下水位低下前 低下後の推定値 低下後の実測値
73
久喜市における対策地区
(久喜市による)
礫
砂
排水パイプ (φ200 - 300mm)
シート
今後全国の市街
地に予防として展 開されることが期 待されている。
74
神栖市と千葉市における排水管設置状況
神栖市 千葉市
75
6.将来の地震における液状化による被害に関して
(埼玉県による)
(1)推定されている液状化ハザードマップの留意点
1)自治体によって想定地震、液状化推定方法が異なる
76
幸手市の液状化ハザードマップ
(幸手市による)
さいたま市で想定している直 下地震による液状化の予測図
(さいたま市防災カルテより)
2)どの構造物の液状化被害か 対象を明確にする必要がある
戸建て住 宅の被害 を対象 一般的な
PL値のみ
3)局所的な埋め戻し土や盛土の液状化被害は液状化ハザー ドマップでは表されていない
(1)埋設管 (2)マンホール (3)防火水槽やオイルタンク
(4)軟弱粘土地盤上の盛土造成地の家屋 (5)電柱
79
4)丘陵地の盛土造成地でも地盤の条件によっては液状化被 害が発生するが、液状化ハザードマップでは表されていない
2011年東日本大震災により東海村の盛土造成宅地で 液状化した例
80
5)液状化が緊急・避難行動に与える影響は十分には予測は されていない
(小川氏撮影)
(下水道地震対策技術検討委員会による)
2004 年新潟県中越地震
香取
浦安 新木場
東日本大震災では高架橋,ビ ルなどの杭基礎にほとんど被 害は生じなかった。
阪神・淡路大震災ではタンク,
橋脚,ビル等の杭基礎が甚大 な被害を受けた。
阪神・淡路大震災では液状化により甚大な被害が生じたが東日本 大震災ではほとんど被災しなかった構造物
杭基礎構造物
81
(2)地震動の性質により液状化の被害が異なることがあること に留意が必要
浦安市
段差やライフラインの被 害は発生して生活困難
東日本大震災では一部の護 岸で被害があった程度である。
阪神・淡路大震災では数多く の岸壁・護岸が甚大な被害を 受けた。
岸壁・護岸
船橋市栄町