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解決する影響要因に関する研究

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Academic year: 2021

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■ 短  報

キーワード:終末期がん患者、自律した日常生活行動、倫理的問題

Key wordscancer patients for the end-of-life period, autonomous activities of daily living/life,

  ethical problems

研究目的は、終末期がん患者の自律した日常生活行動を援助する上で生じた看護師の倫理的問題を解決する 影響要因を明らかにし、倫理的判断のプロセスを検討することである。対象者は、看護師9名で、データ収集

は半構成的質問紙を用いて面接を行い、質的帰納的に分析した。倫理的問題を解決する影響要因として、7

のカテゴリーが抽出された。看護師は倫理的問題を認識し、解決するまで【看護をする上で大切にしているこ と】である信念、価値観を基盤に思考していた。次に、看護師は【身体的状態のリスク】【臨床経験に裏付けら れた結果の予測】をアセスメントし、その中で【患者を取り巻く療養環境】【看護師のおかれている状況】【医 療チームの判断】が影響していた。そして、【看護師としての責任】から判断し、倫理的問題を解決していた。

終末期がん患者の自律した日常生活行動を 援助する上で生じる看護師の倫理的問題を

解決する影響要因に関する研究

A study on the factors affecting solving ethical problems of nurses that arise when assisting in autonomous activities of daily living/life of cancer patients in the end-of-life period

岡光 京子

2

Kyoko OKAMITSU

田中 真弓

1

Mayum TANAKA

1 県立広島病院 Hiroshima Prefectural Hospital 2 県立広島大学 Prefectural Hiroshima University

Ϩ.はじめに

近年、医学、科学技術が進歩し、医療が高度・複 雑化する一方で、人々の価値観も複雑・多様化し、

医療者が倫理的判断を迫られる場面が増加してい る。特に、終末期医療の臨床においては、患者の人 間としての権利や尊厳に関わる問題が、多かれ少な かれ日常的に存在し、それらはときに重大な事件に 発展しかねない状況にあり、医療・看護に携わる者 の責任は重大である (p.165)1

倫理上の基本原則の中で、人は自立し、自律して いる存在として自分を管理する能力をもっており、

自分自身で判断し選択した計画に基づいて、自分の

行為を決定し、実行する個人的な自由が許されてい る (p.166)1。終末期がん患者は、身体症状の悪化や 身体機能の低下により自立した日常生活行動を行う ことが難しくなるが、自律には他者にゆだねるとい う選択肢も含まれており、自己決定することにより 自律することができる。しかし、実際に看護師が終 末期がん患者の自律した日常生活行動を援助する上 で倫理的問題が生じ、倫理的判断を求められる。小 曳ら2も自分のことは自分でしたいという思いを尊 重したいが、動くことによる呼吸困難から行動が制 限されてしまうといった病状の悪化に伴い行為が制 限されることから倫理的問題が生じることを報告し ている。倫理的判断は基本的には価値判断であり、

(2)

直面している倫理的問題に対していずれの倫理原則 を優先すべきかが課題3となる。和泉4らの研究によ ると経験年数6年以上の看護師は倫理的課題に直面 した際に実践的な知識や技術を経験により具体的な 解決策を講じると報告している。

終末期看護における倫理的問題や対処行動に関す る研究報告 2, 5, 6は多く報告されているが、倫理的判 断のプロセスに着目した研究は見当たらない。そこ で、本研究において終末期がん患者の自律した日常 生活行動を援助する上で生じた看護師の倫理的問題 を解決する影響要因を明らかにし、倫理的判断のプ ロセスを検討することは、倫理的問題を適切な解決 へと導く方向性を見い出すことにとつながると考えた。

ϩ.研究目的

終末期がん患者の自律した日常生活行動を援助す る上で生じた看護師の倫理的問題を解決する影響要 因(以下、倫理的問題を解決する影響要因)を明ら かにし、倫理的判断のプロセスを検討する。

Ϫ.用語の定義

自律した日常生活行動とは、終末期がん患者が自 分自身で自由に移動、排便、排尿、食事、清潔動作 の方法を選び、自己決定した行動をとることとす る。

倫理的問題とは、看護師が終末期がん患者の自律 した日常生活行動を援助する上で患者にとって何が 正しいのか、善いのかという行動の善悪の判断がつ かないこととする。

ϫ.研究方法 1.対象者

一般病棟に勤務する看護師で、今までに終末期が ん患者の自律した日常生活行動の援助を経験したこ とのある経験年数が6年以上で、緩和ケア病棟に勤 務したことがなく、倫理的問題を認識したことがあ り、研究協力を得られた者とした。

2.データ収集方法

研究者が作成した半構成的質問紙を用いて面接を 行った。質問項目は、終末期がん患者の自律した日 常生活行動を支える上で生じた倫理的問題、解決 策、影響要因などである。面接内容は対象者の許可 を得た上で録音または記述し、遂語録を作成した。

面接場所は、プライバシーの確保ができる個室で、

研究者一名が対象者に実施した。

3.分析方法

作成した逐語録を熟読し、倫理的問題を解決する 影響要因に関する内容を文脈単位で抽出、コード化 した。コード化した内容の共通性と相違性を比較 し、類似性によってまとめ、カテゴリー化した。研 究の信頼性、妥当性を高めるためにスーパーバイ ザーから指導、助言を受けながら分析を行った。

4.倫理的配慮

研究を行うにあたり、本研究はA大学研究倫理委 員会の承認を得た後に実施した。対象者の選択は研 究協力病院の看護部長へ依頼し、紹介された対象者 に研究目的、研究方法、研究協力の自由意志、中断 も可能であること、プライバシーの保護、得られた 情報は本研究目的以外には使用しないこと、研究終 了後には情報を破棄することなどを書面と口頭で説 明し、同意書の署名をもって同意を得た。

Ϭ.研究結果 1.対象者の概要

対象者は、女性7名、男性2名の計9名で、平均 年齢34.5歳(29〜48歳)、平均経験年数は12年(8

25年)であった。勤務病棟は内科系病棟3名、外科

系病棟3名、混合病棟3名であった。面接時間は平 均32分4秒(12分〜58分2秒)であり、録音7名、

記述2名によるデータ収集を行った。

2.倫理的問題を解決する影響要因

倫理的問題を解決する影響要因は、表に示すよう に7つのカテゴリーと15のサブカテゴリーが抽出さ れた。以下、カテゴリーを【 】、サブカテゴリーを

≪≫、コードを<>、語りの内容を「 」で示す。

1)看護をする上で大切にしていること

看護師は終末期がん患者の自律した日常生活行動 を援助する上で≪患者・家族の意志を尊重したいと いう思い≫を常に考え、≪患者の安楽を優先したい という思い≫や≪看護師として最善を尽くしたいと いう思い≫を抱いていた。看護師は、「(トイレに)

行きたいのだと思うこともある。トイレで排泄する ことは、人として生きていることの最終の最も大切 な場だと思う。」と<自律の意志を大切にしたい>

という思いを抱きながらも、「疼痛コントロールが しっかりできてないと、やっぱり自分がトイレに行

(3)

表 倫理的問題を解決する影響要因

カテゴリー サブカテゴリー コード

看護をする上 で大切にして いること

患者・家族の意志を尊重したい という思い

・自立の意志を大切にしたい

・自律の意志を大切にしたい

・気持ちに寄り添いたい

・家族の望みを大切にしたい 患者の安楽を優先したいという

思い

・疼痛を緩和したい

・安楽に過ごしてほしい 看護師として最善を尽くしたい

という思い

・最期までできることはしたい

・限られた時間の中でその人らしく生きることを大切にしたい

身体的状態の リスク

患者の身体的状態から予測する リスク

・二次的障害のリスク

・生命への影響

リスクへの対応 ・リスクへの対応を考慮した援助方法

臨床経験に裏 付けられた結 果の予測

適切に対応できた経験からの結 果の予測

・援助の経験を重ねること

・援助した経験から培った自信 適切に対応できなかった経験か

らの結果の予測

・後悔をしている経験

・今も迷っている経験 患者を取り巻

く療養環境

設備の不適切さ ・日常生活援助に影響する施設上変えられない設備

看護師のおか れている状況

時間の不足 ・援助をする上での時間の不足 勤務体制の状況 ・限られた看護師の人数や業務量

医療チームの 判断

他職種の意見・判断 ・他職種の意見を聞くこと 他の看護師の意見・判断 ・他の看護師の意見を聞くこと

医学的判断 ・医師の指示

・終末期にある患者にとっての処置の必要性

看護師として の責任

患者の安全を守る責任 ・患者の安全を守る

・患者の生命を守る

・異常の早期発見をする 自らを守る責任 ・看護師自身を守る

3)臨床経験に裏付けられた結果の予測

看護師は≪適切に対応できた経験からの結果の予 測≫≪適切に対応できなかった経験からの結果の予 測≫を考えていた。看護師は、「過去の経験は影響 してくると思います。その反応、過去の自分の悪 い、間違った判断というか、特に終末期であれば、

亡くなるので、あの時ああすればよかったとか、あ の時ああ言ってたのにとか、自分を振り返った時 に、次に同じ場面に出会ったときに、違う行動にな る。」といった<後悔をしている経験>などが語ら れた。

4)患者を取り巻く療養環境

看護師は、一般病棟で過ごす終末期がん患者の自 きたいと思っても痛くてできない。」と<疼痛を緩

和したい>という思いや患者に<安楽に過ごしてほ しい>という思いなどが語られた。

2)身体的状態のリスク

看護師は≪患者の身体的状態から予測するリスク≫

をアセスメントし、≪リスクへの対応≫を考えてい た。看護師は、「(身体的)状態から動きたいと言っ てももっとしんどくなると思われる場合は止める。」

と<二次的障害のリスク>や<生命への影響>を考 え、「リスクがあっても本人が食べると決めたら、

出来るだけリスクを予防する策を講じて、食べると 決定したことを支援する。」といった<リスクへの 対応を考慮した援助方法>が語られた。

(4)

きることの希望となる7」と述べているように、終 末期がん患者は最後まで自立・自律した日常生活行 動を望んでいる。看護師は終末期がん患者の自立・

自律の意志を尊重することは、人間としての生きる 希望につながると考え、【看護をする上で大切にし ていること】である≪患者・家族の意志を尊重した いという思い≫を第一に考えていたと考える。これ は、「看護者は、人間の生命、人間としての尊厳及び 権利を尊重するという看護者の倫理綱領 (p.43)8」に もあるように人間としての尊厳を尊重し、倫理的判 断のプロセスの中で【看護をする上で大切にしてい ること】を基盤とし判断していたと考える。しか し、看護師は「善行の原則 (p.166)1」と同時に「無 害の原則 (p.167)1」を考えなければならなく、【身 体的状態のリスク】【臨床経験に裏付けられた結果 の予測】をアセスメントし、判断していたと考え る。アセスメントする上で【患者を取り巻く療養環 境】【看護師のおかれている状況】【医療チームの判 断】が影響し、【看護師としての責任】として判断 していたと考える。

2.看護師の倫理的判断のプロセス

図に示すように、看護師は終末期がん患者の自律 した日常生活行動の援助をする上で生じた倫理的問 題を認識し、解決するまで【看護をする上で大切に していること】といった≪患者・家族の意志を尊重 したいという思い≫≪患者の安楽を優先したいとい う思い≫≪看護師として最善を尽くしたいという思 い≫を常に大切にしていたと考える。これらの内容 は、倫理上の基本原則、看護者の倫理綱領が含まれ ていた。倫理的判断を行うには、その人の人間観、

死生観、医療・看護に対する哲学などが関わり、ま た倫理上の基本原則や専門職業人としての倫理規定 などが重要9となる。このことから、倫理的判断を する上では倫理上の基本原則、看護者の倫理綱領を 行動指針とすることが重要であると考える。

次に、看護師は自律した日常生活行動の援助が可 能であるか【身体的状態のリスク】【臨床経験に裏 付けられた結果の予測】をアセスメントすることを 重視していたと考える。野嶋らは「臨床判断のプロ セスは、看護師は、直面する看護現象に対して、こ れまでの生活、看護実践、患者との関わり等のなか で培ってきたサイエンスに根ざした理論知や経験 知、直感を活用しながら、情報収集し、アセスメン トし、自らの行動を決定していくという臨床判断を 律した日常生活行動を援助する上で≪設備の不適切

さ≫が影響すると考えていた。看護師は、「お湯に つかりたいとか風呂に入りたいとか言う人がいる場 合、特浴のない病棟なので入れてあげられない。」

と<日常生活援助に影響する施設上変えられない設 備>について語られた。

5)看護師のおかれている状況

看護師は、終末期がん患者の自律した日常生活行 動を援助する上で≪時間の不足≫≪勤務体制の状 況≫を考えていた。看護師は、「ほんとうはもっと ゆっくり話も聞いて対応したいと思っても、ほかの 業務が残っているので、看護師としてやっぱり時間 配分を決めてその中でやっていかないといけない。」

といった<援助をする上での時間の不足>や<限ら れた看護師の人数や業務量>について語られた。

6)医療チームの判断

看護師は、≪他職種の意見・判断≫≪他の看護師 の意見・判断≫≪医学的判断≫といった医療チーム 間で検討した内容を参考に考えていた。看護師は、

「常にわからないことがあったらちょっと一人で考 えてもわからないので周りに聞いて、相談したりと か。」と一人での判断が難しい時は、<他職種の意 見を聞くこと>や<他の看護師の意見を聞くこと>

の重要性について語っていた。

7)看護師としての責任

看護師は、≪患者の安全を守る責任≫≪自らを守 る責任≫を考えていた。看護師は、「起き上がるこ とで血圧変動、骨折のリスクなど危険の回避もしな いといけない。」といった<患者の安全を守る>責 任を考えながらも、「患者さんが事故を起こしたら 自分の責任になるので、その事故を起こさないため にどうしても安全、安全ってそこには患者さんの権 利、医療者として自分の安全を守るのも私たちの仕 事だと思う。患者さんがしたいことを全部行うのが 看護ではないと思う。」といった<看護師自身を守 る>責任が語られた。

ϭ.考察

1.倫理的問題を解決する影響要因

終末期がん患者の身体的症状は継時的に悪化して いき、自立した日常生活行動が難しくなってくる。

しかし、木村らが「身体的な『自分らしい生活』と して、「自分でしたい」「歩きたい」「寝たきりにな りたくない」「おむつをしたくない」といった終末 期がん患者の日常生活行動に対する自立の思いが生

(5)

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図 倫理的判断のプロセス

とその対応.第39回日本看護学会論文集 成人看 護Ⅱ 2008:247−249.

3 . 浅井篤.臨床倫理と終末期医療におけるジレン

マ,緩和ケア 2008;18 (4):280−281.

4 . 和泉成子.ターミナルケアにおける看護師の倫理

的関心―解釈学的現象学アプローチを用いた探求

―.日本看護科学会誌 2007;27 (4):72−80.

5 . 谷本さゆり,東めぐみ,山崎千鶴子他.終末期看

護において直面した倫理的ジレンマと今後の対応 への検討.第39回日本看護学会論文集 看護総合 2008:380−382.

6 . 肥田野幸子.看護者が認識する倫理的ジレンマと

対処行動との関連.第39回日本看護学会論文集 看護管理 2008:60−62.

7 . 木村清美,小泉美佐子.緩和ケア病棟の入院患者

の希望に関する研究.死の臨床 2004;27 (1):

94−99.

8 . 日本看護協会.新版 看護者の基本的責務―定

義・概念/基本法/倫理.東京:日本看護協会出 版会;2006.

9 . 野嶋佐由美,横尾京子,高野順子他.倫理的判断

を基盤とした看護ケアを支援する看護倫理の教育 モデルの開発.平成14〜16年度科学研究費補助金 研究成果報告書 2005:2−13.

行いながら、看護ケアを展開していく」9と述べてお り、本研究においても【身体的状態のリスク】【臨 床経験に裏付けられた結果の予測】といった根拠を 基にした客観的アセスメントを行っていたことか ら、臨床判断のプロセスを踏むことが重要であると 考える。さらに看護師が理論知や経験知を高めるこ とが適切な倫理的判断に結びつくと考える。

Ϯ.研究の限界と今後の課題

本研究は、限られた施設で行ったことや対象者の 人数に限界がある。しかし、終末期がん患者の自律 した日常生活行動を援助する上で生じた看護師の倫 理的判断のプロセスを検討することは倫理的問題を 解決するためには重要であるため今後は対象者を増 やし、一般性・信頼性を高めることを課題とする。

文献

1 . 小島操子.第12章終末期医療における倫理的課

題.In:アン J. デーヴィス監修.看護倫理 理 論・実践・研究.東京:日本看護協会出版会;

2002.

2 . 小曳麻衣子,黒田寿美恵,岡光京子.終末期患者

の希望を支える援助を行う上で生じる倫理的問題

表 倫理的問題を解決する影響要因 カテゴリー サブカテゴリー コード 看護をする上 で大切にして いること 患者・家族の意志を尊重したいという思い ・自立の意志を大切にしたい・自律の意志を大切にしたい・気持ちに寄り添いたい・家族の望みを大切にしたい患者の安楽を優先したいという 思い ・疼痛を緩和したい ・安楽に過ごしてほしい 看護師として最善を尽くしたい という思い ・最期までできることはしたい ・限られた時間の中でその人らしく生きることを大切にしたい 身体的状態の リスク 患者の身体的状態から予測するリス

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