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齋 藤 雅 通

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(1)

課題の設定

1. 現代予算管理論の起点としてのマッキンジー

現代の予算管理論が 世紀初頭のアメリカにおいて生成発展し, その後各国に紹介, 伝播, 普及したことについて大きな異論はないであろう。 そして予算管理論の形成過程において重要 な役割を果たしたのが であることについても, 広く認められている。 彼の 予算統制 ( ) が, まとまった予算管理論としては最初の著作であり, こ の著作をもって予算管理論の 「嚆矢」 と見なす1)ことが多い。 そしてマッキンジーの予算管理 論は, 現代の予算管理論の起点であろうことについてもそれほど異論はないであろう。 マッキ ンジーの予算管理論に関するこれまでの研究の多くは, 予算統制 を中心に彼の所説を検証 することによってなされてきた2)。 それ以外の彼の論考に言及する場合でも, 予算統制 刊 行以前とその後という様に同書との関わりで論じられることが多い。 しかしながらマッキンジ ーの予算管理論全体について, 関連する論考も含めて十分な検討がなされてきたかと言えば, かならずしもそうではない。 マッキンジーの予算管理論は, 予算管理の生成発展の流れにおい てどのような座標を占めるのか, 彼の予算管理論の特徴は何かについて究明すべき課題は多い と考えられる。

本稿は, の予算管理論をそれ以前の 世紀初頭のアメリカにおける企業予 算についての論調との関連で位置づけるとともに, マッキンジーの予算管理論, さらには彼の

を起点とする現代予算管理論への序説

齋 藤 雅 通

1) 長谷川安兵衛 予算統制の研究 森山書店, 年, ページ。

2) 主な研究は以下のものが挙げられる。 本田利夫 「マッキンジーの 管理会計 によせて (一) ―彼 の周辺と背景―」 会計 第 巻第6号, 年6月, 「マッキンジーの 管理会計 によせて (二・

完)―彼の周辺と背景―」 会計 第 巻第1号, 年7月;小林健吾 予算管理発達史 創成社, 年, ページ;伊藤博 管理会計の世紀 同文舘, 年, ページ;廣本敏郎 米 国管理会計論発達史 森山書店, 年, ページ;吉村文雄 組織の会計 森山書店, 年,

ページ;北村浩一 マッキンゼーの予算統制論 中央経済社, 年。

(2)

管理会計論の全体像を明らかにする試みの一環として位置づけることができる。 そしてこの研 究によって, 現代予算管理論の特徴を明らかにする際の視点を提供できると考えている。 した がって の見解をできるだけ全体的に考察する立場から, その基本的特徴を明らか にする。 個々の見解についての深めた議論は別の機会に譲る。

マッキンジーの生涯と研究業績, 研究方法

1. マッキンジーの略歴

マッキンジーは, 年にミズーリ州ガマ ( ) の農家に生まれた。 年にアーカ ンサス大学から法学士学位を得た後, ミズーリ州セントルイスで簿記の研究と教育に一時期従 事した。 年にシカゴ大学から の学位を得て, 大学院生活に入ったが, 翌年海軍生 活に入り軍需部の大尉まで昇進した。 この海軍時代に, 管理者が能率を改善する手助けとして 熟達したコンサルタントが必要であることに気が付いたと言われる。 年にイリノイ州の会 計士 ( ) 試験に合格し, またシカゴ大学 の学位を得た。 この間のシカゴ大学の学 生時代に会計学教授のフレイザー ( ) の目に止まり, 年に彼の会計法人

に公認会計士として参加するとともに, コロンビア大学で会計学を教授している。

年には, シカゴ大学助教授に任命された。 年からは, との共著である

や単著の などの会計分野の著書を執筆

し, 年には を刊行した3)。

マッキンジーの生涯と業績を研究したウォルフ ( ) によれば, 彼の簿記論, 会計学のテーマは, 一貫している。 それは第1に 「簿記」 という用語を好まず, 「簿記」 を

「会計」 の中に包含したことである。 「マッキンジーは今日ベイシック・アカウンティングと見 なされるものに簿記をブレンドした」4)のである。 第2に, マッキンジーは, 現代社会で教育 ある人々はマネジメントに利用される資料としての会計的, 統計的データを収集し, プレゼン ティングする方法を理解しなければならないと主張した。 当時の高等教育における会計学の重 点が, 会計の手続きやテクニックにあったのに対して, マッキンジーの論点は, 会計の細部の 問題よりも一般原理とその経営問題の解決への応用におかれていたと言う5)。 マッキンジーは, 会計の第1の課題は会計分野のスペシャリストを養成することよりも, 学生の一般教育に貢献 することだと考えていた6)。 彼の著作 簿記と会計 ( ) の第

3) ( )

( ) 4)

5) 6)

(3)

2版 ( 年版) で, このテキストで 「学生は簿記係の視点ではなく, 管理者の視点から 会 計 記録を見るよう教えられる」7)と述べているように, 経営者の視点から会計を見る必要が 強調されるのである。

年には大学教師を務めながら, 上述の法人から独立して事務所を開設した。 マッキンジ ーは, こうして, のシニアパートナーとしてコンサルタント業務を開 始した。 翌 年には, シカゴ大学の経営政策の教授に就任したが, 特に注目すべきことは,

「会計分野に重点を措いただけでなく, 組織の管理全体により熱心に関心を持ったことである。

彼は合衆国で経営政策についての最初の教授の一人であった。 後年, 経営政策は, 経営大学院 の 設置にとって必要とされる 冠石科目となった。」8)

年から 年までは大学教授職にありながらも, コンサルティング業務に重点を置いて活動 をしていた。 年以降にマッキンジーは, 「経営政策」 科目のみ教授し, もはや 「管理会計」

科目には関与しなかった。 彼はいつも早朝8時から授業を持ち, その後コンサルティング実務 に参画するために自分の事務所に急行する9)という生活を送った。

このように彼は, 大学の外で, コンサルタントとして活躍していた。 アメリカ経営管理者協

会 ( , ) の創立者の一人であり, また第2代目の

理事会議長にも選任され, この協会の定期刊行物に論文を執筆することによって, 自らのコン サルタントとしての実践に基づく理論的な貢献をしている。 そして 年に大規模百貨店企業 のマーシャルフィールド ( ) の会長の地位に就き, いっそう の活躍が期待されたが, 年に 歳の若さで死去した。

マッキンジーは, 簿記ないしは財務会計の教育, 研究から出発しながら, 簿記係や職業的な 会計士としての限定された視野から離れて, 会計を利用した経営管理, 即ち管理会計的分野へ と移行し, さらに経営全体の政策, 特に組織の管理運営に問題関心が拡張していったのである。

会計もそうした組織の管理運営に役立つ手段の一つとして位置づけられていたと考えられる。

そうした研究・教育上の視野の広がりは, 教育面での 「経営政策」 への関心と講義の担当に 現れていると同時に, 実務面ではコンサルタントとして活躍するとともに, での活躍, そして晩年にはマーシャルフィールドの社長に就任し, トップマネジメントとして経営管理活 動に直接携わるようになったことに現れている。 彼が会計専門家としての領域に留まることは 決してなかったことは, 彼の理論・学説を考察する際に注目しておくべきことであろう。

2. マッキンジーの業績の特徴

まず別掲の主要著作リストで, 研究業績の特徴を見ておこう。 彼の研究・教育業績は 年

7) 8) 9)

(4)

代末から始まり, 年代にまで及ぶが, 主として 年代, 特にその前半に集中しているこ とが分かる。

著書に関しては, 年に簿記・会計に関する著書を単著及び共著で刊行している。 主とし て教育的な目的で刊行されたこれら簿記と財務会計分野の著書は, その後も共著者が替わるこ とがあっても, 版が重ねられていったことで明らかなように, マッキンジーの管理会計分野の 著作のように脚光を浴びることはなかったが, すぐれた著作として長きにわたって評価されて いたといえる。

しかしかれの研究業績として会計史上で評価されているのは, 周知のように 年に刊行さ

れた と 年刊行の である。 前者は予算管理

論の, 後者は管理会計論の先駆的な著作として, それぞれ評価されている。 しかし同時期にマ ッキンジーは, 研究対象分野を会計分野に留まらずに拡張していき,

( 年刊行) や ( 年刊行) など財務管理分野

の著作を刊行している。 さらには経営全般に関する教育用著作として

( 年刊行) にまで, 教育研究の対象領域を拡張しているのである。 同書は, 管理会計や財 務管理の問題のみならず, 企業形態, マーケティング管理, 生産管理, 人事管理など経営全体 の管理に関して論ずるテキストである。 でも, 狭い会計計算制度自 体の展開に限定されずに, 経営の各職能部門においてどのように会計数字によって管理するの かという視点が貫かれているが, こうした経営の各職能やトップマネジメントによる全社的視 点から論じるところにマッキンジーの経営管理論の特徴がある。 したがって

だけでマッキンジーの主張を捉えようとすることには限界があると思われる。

著書以外の論文でみると, 年の 以前に, そのベースとなる研究を 年から開始している。 とくに 年1月から 誌に掲載された一連の論考 をはじめ, 等の著作のベースとなる論考を公表している )。 また, シカゴ

大学の経済学雑誌 誌の 年 月に掲載されモリス・コ

ープランド ( ) との共同論文 (マッキンジーの指導のもとでコープラン ドが執筆した) 「財務管理における季節変動問題」 ( [ ]) は, 後の 年刊行の著

作 に活かされている。

年にマッキンジーが公表した一連の論文だけでなく, 年1月に の

に掲載された論文 「原価会計と予算統制の関連」 ( [ ]) は, 上述の 年に連続して公表された論文と合わせて 予算統制 ( ) のベースと なった論文である。

マッキンジーは 年の 予算統制 以降も予算についての論文を公表している (

) こうした経過とマッキンジーの一連の論文については, 小林健吾, 前掲書で詳しく論じている。

(5)

[ ], [ ]) が, 予算実務の普及のために, 学協会でのシンポジウムの企画に取り組むよう になる。 年には, 「予算技法」 というテーマで (

マッキンジーの主要業績リスト

年

[1] ( )

年

[2] ( )

[3] ( )

[4] ( ) ( )

年

[5] ( )

[6] ( )

[7] ( )

[8] ( )

[9] ( )

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年

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年

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年

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年

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年 [ ]

( )

[ ] ( )

年

[ ] ( )

(6)

[ ]), 翌年 年には 「成功する部門予算」 という テーマで, アメリカ経営者協会の総会シンポジウムを開催し ( [ ]), コーディネ ーターの役割を果たしているように, また同年には 年次総会において 「予算プログラ

ムと会計担当者の関係」 というテー

マでのセッションにおいてまとめの発言をしている ( [ ])。 いずれも報告者の発 表を受けての総括的な発言をまとめたものであるが, マッキンジーの予算管理論を考察する上 で重要な論点を摘出しているものと言える。 このように 年代後半には, 論文として独立し たものを公表することは少なくなるが, その代わりに学協会でシンポジウムを組織するなど, 企業予算についての研究交流と普及活動を積極的に展開しているのである。

年代半ば以降のマッキンジーは, 略歴で指摘したように, 予算管理論ないし管理会計論と は異なるテーマで論文を公表することが多くなる ([ ], [ ], [ ], [ ])。 別の視点から すれば, 経営全般, 特に経営組織との関連で, 予算管理を位置づける視点が強まっていると言 えよう。 研究業績面からみても, マッキンジーにあっては, 経営管理の問題関心は会計職能の 範囲内に留まることはなかったのである。

マッキンジーとウォルワース社の予算管理実践

1. マッキンジーの研究方法と予算管理実践事例の研究

マッキンジーが 予算統制 によって予算管理論を体系的に展開したことに関して, 連邦政 府予算からヒントを得てそれを企業に適用したという主張が, 今日でもみられる )。 しかし, 彼の 予算統制 の序文において, 「このテキスト (出所) は, 主に, 著者の職業的な仕事で のかなり幅広い経験に基づいているが, 資料的援助は様々なビジネスマン, 会計担当者, そし て教育者 ( ) から受け取っている。 特別の謝辞は以下の通りである。 ウォルワース 製造会社の予算手続き担当経営管理者の , シカゴ大学経営財務の講師

, 彼は全ての原稿に目を通し, 多くの有益な示唆を与えた。

の経営管理者である , 彼は第 章で与えられる予算手続きのチャー トを作成した。 そして である , 著者のパートナーであり, 著者が特 に相談や援助をお願いしている」 )と述べているように, すでに予算実務を担っていた企業の

) 例えば北村浩一は 「したがって 予算統制 を著した当時の企業では体系的な予算システムが存在 していなかったという状況において, すでに体系的に確立していたアメリカ連邦政府予算制度をマッ キンゼーがそれまで存在しなかった企業に適用することで 予算統制 システムが構築・体系化され るに至ったと考えられるのである」 と述べている ( . . マッキンゼーの予算統制論 , ページ)。

こうした連邦政府予算制度を企業予算の起源として重視する見解に対する批判的検証として, 小林健 吾, 前掲書, ページ参照。

) [ ]

(7)

会計担当者や大学の研究教育者から多くの援助を得ていたのである。 また既に指摘したように 年に彼の指導の下で が執筆した 「財務管理における季節変動問題」 で も, 年代の予算論議に関わる主要著作の一つである ラフ ( ) の 経 営財務 ( ) が引用されている )ように, 先行研究についても熟知した上で 彼の自説を展開していると考えられるのである。

マッキンジーが予算管理論を展開する際に依拠した企業実務として特に注目できるのは, ウ ォルワース社 ( ) である。 同社は, 「金属加工産業で包 括的な予算システムを完成させるのに多くの時間と労力を費やした」 )企業とされ, マッキン ジー自身も直接に研究し, 「ウォルワース製造会社の組織と方法」 ( [ ]) という ケース研究論文を公表紹介しており, 彼の理論化に寄与した企業であることは疑いない。 また ウォルワース社は, 景気予測の開発と運用についてすぐれた企業として, 年代を通じ高い評 価を受けていた )のであり, アメリカにおける 年代の予算システムの典型企業の一つと見 ることができる。

当該論文では, 会社の歴史, 会社の組織, 経営管理の方法について紹介し, 考察を加える構 成となっている。 したがって予算管理に絞り込んでそこに焦点を当てて考察するものではなく, 同社の組織と経営管理システムや管理方法の発展の一環として予算システムに論究しているの である。 組織や管理の一部として予算システムを位置づけるマッキンジーの研究上のポジショ ンが既にこの事例研究にも現れていると見ることができよう。

2. ウォルワース社の歴史と予算管理の特徴 (1) ウォルワース会社の特徴

ここでウォルワース社の予算管理の特徴について簡単に見ておこう )。 ウォルワース社は, 金属加工業に所属する株式会社で, パイプ継手 ( ), バルブ ( ), レンチ ( ), ダイス ( ), タップ ( ), リーマ ( ) などの鉄鋼二次製品を製造,

) ラフなど 年代の予算論議の特徴については, 齋藤雅通 「アメリカにおける企業予算の形成過程

― の予算統制論によせて―」 立命館経営学 第 巻第1号, 年5月参照のこと。

)

.

) 例えば, . , , , .

. . . なお, ウォルワー

ス社に関する論文として, 本田利夫 「米国 管理会計論 成立の一齣―ウォルワース製造会社の事例 研究によせて」 (1), (2), 会計 第 巻第4号, 第5号, 年, 月, 月がある。 本田教授 の論文は同社の景気予測実務の紹介を重点に論説されており, 予算システムについては必ずしも十分 には触れられていない。

) 詳しくは別稿, 斎藤雅通 「ウォルワース会社における予算システムの確立―アメリカ 年代予算 の一典型―」 経済論叢 (京都大学) 第 巻第1・2号, 年7・8月を参照。

(8)

販売していた。 製品の種類はきわめて多く, 約 種に及び, 部品の数になるとその数倍に 達する )。 この夥しい製品のうち, 自社製品は 種で, 残りは子会社や協力企業から仕入 れて販売している。 製品のうち, 品目の回転率は高く, 全生産高の2―3を占め, 約 %に相 当する残りの分は1―3を占めるにすぎない )。 このような製品の多様さと製品の回転率の著し い不均衡が1つの特徴である。 これらの製品は鋳鉄 ( ), 可鍛銑 ( ), 真鍮, 鋼などを原材料として生産され, その市場として, 建設関連業 ( ), 製 造工場, 鉄道, 造船, 採油の分野に販売される。 しかし製品の大部分は建物・設備の建設業向 けに, 特に最大の割合が修繕作業向けに提供される )。 したがって, 製品の利用上の特性から 迅速な発送を必要とする点も, この業界の1つの特徴である。

つぎに, ウォルワース社の経営状況をごく簡単に述べよう。 売上高は, 年から 年の 年間に約 倍の伸長を示し, 年からの5年間でも, 連結売上高で, 万ドルから 万 ドルと2倍近い伸びを見せている )。 こうした成長を実現した結果, 年時点では, パイプ継 手・バルブ業界で約3割の市場シェアを持つ, 業界第2位の地位を獲得するに到った )。 同社 の急成長は, 主として他企業の吸収合併という規模拡大の手段によるものであるが, それを成 功裏に展開しえた鍵となる要因は, 後に考察する計数管理システムであった。

生産設備は, 年当時, 旧式化しつつあるボストン工場では月次 トン, 新設のイリ ノイ州キウォニー ( ) の工場では月次 トンで, 合わせて年間 トンの生産 能力を具備していた。 両工場の生産品目には大差はなく, 主に発送地域別の分担を行い, ボス トン工場は, アレゲニー山脈より東部地域向けと海外向け生産を担当し, キウォニー工場は, 西部地域向けの生産を担当していた )。

販売部門は, ボストンの東部販売事業部 ( ) とシカゴの西部販売事業部の ほかに, ボストン, ニューヨーク, フィラデルフィア, シカゴ, シアトル, ポートランドの6 支店が配置された。 年の内に増設がさらに進み, ヤングスタウン, クリーヴランドなど 支社となる。 販売事業部で取扱う製品の大部分は, 卸売会社 ( ) を通じて

)

. )

.

) ;

)

) . このシェ

アは, 前記統計の生産高とウォルワース社の年次報告の売上高の比較による。

)

(9)

販売し, 支店では, 直接に消費者に販売していた。 また海外輸出のための専門会社として, ウ ォルワース・インターナショナル会社 ( ) がニューヨークに置 かれた。 この会社は独自の販売網を持ち, 世界中の都市に支店と販売代理店を散在させ, 世界 規模の販売活動を志向していた )。

(2) 会社の歴史

ウォルワース社は, 年のニューヨークにおいて, ウォルワース ( ) と ネイスン ( ) の2人のパートナーシップ ( ) として設立 された。 事業内容は, 依頼を受けて, 建物に暖房と換気のための蒸気・温水装置を設置工事を することであり, したがって, 元来は, 請負・建設業 ( ) に従事していたのである。 年にネイスンがパートナーシップから退き,

として再編され, 年に として法人化さ

れる。 ( 年に社名から を削除した)。

その後, 他社からの購入品では自社の建設業務の必要に合わせるのは困難であるという理由 から, 後方統合が本格的に企てられ, 年にパイプ継手の独自生産を開始し, 続けてバルブ の生産にも進出した。 ところが, 年には, 逆に, 建設業務を廃業し, またパイプの生産も 中止して, 継手とバルブの生産に専念するようになる )。

翌 年, クーンリィ ( ) が社長に就任し, その後, 急速な経営拡張 運動が展開されていく。 第1次大戦中の 年に, クーンリィは, 「地域分散化 ( )」

の方針を掲げ, それを4つのプランに定式化した。 その骨組みは以下の通りである。

(1) 経済的な生産のために, 戦略的に配置される工場を追加的に取得, あるいは建設する こと。 (2) 全国的配給のために, 販売機構を取得, あるいは創設すること。 (3) 親会社の法 人統制 ( ) を保留しながら, 各事業単位 ( ) の財務的独立を確保する こと。 (4) 全ての活動について信頼できる管理を保障するための会計・統計的統制システム を開発すること )。

この方針の下で, 翌 年に, スティール社 ( ) の子会社ナショナル

・チューブ会社 ( ) からキウォニー工場 (従業員 名) を買収し, ウ ォルワース社の主力工場とした )。 これによって生産能力が4倍化したために, 販売能力の強

)

;

) ) )

(10)

化はもとより, 経営全般の管理政策を樹立することを迫られる。 それ故, これを出発点として, 予算システム確立への行程が進行する。

即ち事業規模拡大に対応した職能別部門管理組織の確立がなされると同時並行的に会計シス テムの確立も進行し, 年 月には, 予算手続きのマニュアルと種々の予算の公式を確立し, 翌年1月には, 予算手続きの体系を確立した。 しかし, 年中は, 戦後恐慌の最中で, 予算 プログラムの実施は制限され, 経営の重点が, 著しい注文取消に対して在庫を最小限に軽減す ることやあらゆる間接費を可能な限り削減することに移った。 とはいえ, その時期にも, 会社 の全統計を企画・統計室の職能統制下において経営予測に関する研究を進めたのであり, 同年 末には, 経営予測と統合した予算システムを樹立した )。

(3) 予算管理の特徴

ウォルワース社の予算管理の第1の特徴は, 精緻な経営予測の開発と運用である。 経営予測 の調査・研究をウォルワース社が必要とした理由は, 生産工程の特質に求められる。 つまり, 製品の工程日数が長期にわたるのに比して, 発送は迅速にしなければならないので, 顧客の注 文を受取る数週間前に生産数量を決定しなければならないし, ましてその前提となる販売割当 はかなり以前に決定する必要があった。 要するに, 経営の各局面において長期的な視野での意 思決定を必要としたのである )。

調査・研究は, 企画・統計室が担当し, まず過去の経営データを検討し, 予測に役立つウォ ルワース社自身の循環曲線を発見することから始めた。 その曲線は簡単で, 年まで溯るこ とができることを確認した。 そしてこれと, ハーバード・エコノミック・サービス (

) の作成している 曲線 ( ) と 「驚くべき類似」 が存在 することを見出した。 また製品が主に建設業で使用される点に着目し, ダッジ社 (

) から契約高の情報を入手して検討し, 建設数値 ( ) とウォ ルワース曲線との間に密接な関連が推定できたので, 建設業の予測を利用可能な社外指標とし て役立てることにした。 こうした研究によって, 年は, 前年比 %増の売上見積を設置し たのに対して, 実績がその5%以内の範囲に収まる程度に, 予測技法の確度を高めることがで きた )。

同社での取り組みは, 精確な経営予測に基づいて販売見積を決定し, そのことで予算システ ムにおいて販売と生産の調整を行うことを可能にするものであり, 代における経営予測の代 表的事例として, 予算管理の普及に寄与することとなった。

第2の特徴として指摘できるのは, 独自の書式の予算表である。 ウォルワース社の予算シス テムにおいて中核的な位置を占めるのが,図表1で示した 「総括予算表 ( )」

) ) )

(11)

である。 これは, 各事業単位が算定した見積を企画・統計室が最終的に集計・編集したもので, 毎月作成される。 このことは, 「有効な予算統制の本質の1つは, 弾力性である」 という立場 に基づいて, 「予期せぬ展開に対して適応するために, 1年前はもちろん, 毎四半期, さらに

図表1 総括予算表

1 2

( )

( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )

2

( )

( )

(出所)

( ) ( )

(12)

毎月, 予測を絶えず修正」 )する会社の予算実務を反映していると思われる。 編成される予算 は, 固定的でなく定期的に絶えず修正されていく方式を採用していたことになる。

ところで, この表は, 最上欄に見るように主な項目を, 売上 ( ), 購買 ( ), 給与支払 ( ), 現金収入, 支出に限定しているので, 「この概括的予算の形式では, …

予算損益計算書 ( ) を構成することはできない。」 )

先の引用からも推測できるように, 予算損益計算書も作成されていたが, むしろ月次の 「総括 予算表」 の方が, 利益管理にとって適合的な形式と評価されて, 利用されていたといえる。

更に, この 「総括予算表」 の重要な特徴は, 親会社のウォルワース社だけでなく,

社や 社などの子会社も含めた企業集団を一体的な経営体のよ うに見なして予算を編成し, 同時にその反面として, 本社, 販売事業所, 工場, 支店, 子会社 を, それぞれ恰も独立した事業単位のように取扱っていることである。

これは, 恐らく決算における連結財務諸表作成実務に影響されながら, 親会社の職能別部門 組織に加えて主要子会社を予算表に組み入れることによって, 効率的管理を企図したものであ ろう。 もちろん, 親会社の事業単位と子会社の差異を認識して, 表では基本的に区別している。

その上で, 職能別組織の業績評価基準として, 各単位を 「経営管理者に, 全活動について財務 的責任をもたせる」 )ようにすること, 換言すれば, 利益責任単位として位置づける方法が採 用されていた。 この点について, 内部振替 ( ) と外部取引の区分をし ているが, 振替価格などの詳しい実態は検出できない。

クーンリィの説明によれば, この表の左3欄は, 発生基準で表示されているので, 通常の条 件下では, 日後の見込資金状況 ( ) を明確に示唆する。 右の2つの 欄は, 翌月 日間の見込資金状況を示唆し, 財務部長にとって, 短期借入金返済の程度などを 判断するのに役立つ。 月次の経常的な予測利益は, ( ) 総計 ( ) の<( ) 売上>―<( ) 購買>によって求めることができる )。

同社の総括予算表の積極的な主張は, 予算損益計算書や予算貸借対照表をもって全体的な, 総括予算書とする考え方とは明らかに異なる。 マッキンジーが彼の 予算統制 でウォルワー ス社の総括予算表のようなタイプの予算表への言及がないのは, 同社の 「総括予算表」 など予 算システムの特殊性に考慮した結果によるのかも知れない。 年代は, 事業部制を採用して いる企業は, デュポン ( ) 社やジェネラルモーターズ ( ) 社以外に は存在せず, 巨大企業であっても例外的な組織形態であった。 したがって予算管理を導入し, 実践していた大企業は職能別部門管理組織を採用していたのであって, 年代の予算管理論は

) ) ) )

(13)

基本的には職能別部門管理組織における予算実践に基づいていたのである。 しかし 年代の 大規模企業で見られる子会社を含めた連結経営の実態からすると, 子会社も含めた予算管理が 当然に課題となるであろう )。 ここで考察したウォルワース社で実践されていた総括予算表に よる予算管理は, 年代の巨大企業の連結経営の課題に対応するものであり, その意味でも普 遍的な性格を有していると思われる。 このようにウォルワース社の予算システムは, 職能別部 門管理に対応する予算管理という点に加えて, 連結管理に対応する予算管理という点でも,

年代の先進的な予算管理に共通する特徴を持っていたことは間違いない。

マッキンジーの予算管理論の特徴

1. 「予算統制」 の優位性

前述のようにマッキンジーは, 年代に の や の

等に掲載された論考を通じて, 自らの見解を公表し, 予算管理の普及に大きな役 割を果たしている。 その際 年の刊行された 予算統制 は, 年代予算管理を体系的に 論述したという点において, 画期的な労作であった。

しかしマッキンジーの予算管理論が 予算統制 ですべて言い尽くされているわけではなく, これまで見たようにその後も予算管理をテーマとする論文の公表や発言を行っているのであり, こうした論考を考察の範囲に含めることによってこそ, 彼の予算思考についての考察をより深 めることができるであろう。 また 予算統制 では十分に述べられていない諸問題までより掘 り下げるためには, 彼の 年代全体にわたる論考の考察が必要となってくる。

予算統制 に繋がる 年までのマッキンジーの論考については, 小林健吾によって 年に 誌上で公表された論考を中心に考察がなされている )ので, ここ では, 主として予算管理が全社的な管理としていかなる意味を持っていたのかという側面から 考察したい。 そうした視点を初期の段階で示したものは, ボストン商議所 (

) がマッキンジーの指導のもとに作成した

( ) と の第3巻第8号 ( 年1月 日) に公表した 「原

価会計と予算統制との関連」 である。

) 年代における大規模企業の予算管理実践の調査としては,

( ) を参照。 この の調査につ いては津曲直躬 管理会計論 国元書房, 年, ページで論究している。 またこの調査を取 り上げて 年代のアメリカにおける巨大企業の予算統制について考察した早い時期の論攷としては, 敷田禮二 「予算統制制度生成史序論」 立教経済学研究 第 巻第2号, 年 月, ページ 参照。

) 小林健吾 予算管理発達史 ページ

(14)

前者の 年のボストン商議所の論考はシカゴ大学の が編集したテーマ別に 経営管理についての諸論文を編纂した ( ) にも掲載されてい ることからも, 予算管理の初期の論文として傑出したものであったことが分かる。 その論考の 前半部分は加筆されて, 予算統制 の 「第1章 予算統制の意義」 の冒頭 「経営活動の計画 化」 ( ) と 「予算統制の手続き」 ( ) のベースとなっているし, 中ほどの部分は,

「第 章 予算統制の優位性と限界」 の 「要約」 ( ) 部分に相当する。

後者の の 年1月の論文 「予算統制と原価会計の関係」 は, 後半部分の叙述が前 述の 予算統制 の 「第 章 予算統制の優位性と限界」 ( ) の部分のベースとな っている。 またこの論文は, イギリスの

が発行している管理会計雑誌 誌の 年9月号にも同じ内容でそのま ま転載されている ( [ ]) ように, マッキンジーの予算管理に関する基本的な見解 であるとみなせるのである。 こうした事情から 予算統制 の第 章は, 第1章の冒頭部分と 並んで, その意味では彼の予算管理論の核心的な内容と見ることができよう。 事実 「第 章 予算統制の優位性と限界」 では, 「なぜこの論述が 著書の中で 後ろ回しにされたのか」 と いう見出しの下で, 「会計, 原価会計, 監査など同類のたいていのテキストでは, 著者はテキ ストの最初で, 彼らが論述する方法の適用から引き出される優位性を説明する。 これは疑いな くすぐれたプロパガンダであるが, 読者はその管理手続きや考察物の性質や運用方法を理解し た後にその優位性を理解できるというのが, 筆者の考えである」 )と第 章という殆ど最終章 に回した理由を説明し, 予算統制 における当該章の内容の重要性を強調しているのである。

マッキンジーが予算の優位性として主張しているのは, 次の6点である。

(1) 販売と生産の調整

(2) 収益力のある販売生産の定式化 (3) 財務と販売・生産との調整 (4) 支出の適切な調整

(5) 財務プログラムの定式化 (6) 経営のあらゆる活動の調整

ここでまず指摘されているのは販売と生産の調整である。 今日の予算管理の本質的特徴を

「企業の諸活動の水平的垂直的調整」 とする見解が多い )。 しかし, ここで叙述されている

「販売と生産の調整」 は, 職能部門間の水平的な調整の例示としてたまたま 「販売」 と 「生産」

が取り上げられているのではなく, もちろん生産部門内の諸職能間の調整とも明らかに異なる。

職能部門別管理組織を採用する製造事業体にとって 「販売と生産の調整」 が予算の優位性の核

) [ ]

) 例えば津曲直躬 管理会計論 国元書房, 年, ページ。

(15)

心になるという考えに基づいている。 マッキンジーにあっては, 販売見積に対応した数量に生 産を制限することによって完成品の過剰在庫を抑制するのであり, 「製造事業体の販売と生産 の調整に言及して言われたことは, 商業事業体の販売と購買の調整にも等しく当てはまる」 ) ことになる。 すなわち組織の水平的な調整一般といった一般的なとらえ方ではなく, 製造業で は販売と生産, 商業では販売と仕入の調整を効果的に達成することが予算管理機能の中心的な 特徴として捉えられているのである。

そしてマッキンジーは, 「生産と販売の調整」 とではなく, 常に 「販売と生産の調整」 と規 定している。 両職能の調整活動において販売機能がより主導的な職能として位置づけられてい る (マッキンジーは厳密に考察して, もちろん例外も認めている ))。 その点からも 「企業の 諸活動の水平的垂直的調整」 といった把握とは異なり, 事業経営の構造的把握となっているこ とに注意しなければならない。 コスト管理という内部管理の対象としての生産部門に比べて, 外部の市場管理としての性格を持つ販売部門は見積に市場の不確実性が伴うため, 原価管理に 比べて困難を伴う。 しかも市場の変化を無視して, 内部的な生産活動を進めることはできない。

したがって, 売上見積に対応して生産見積が調整されると言う側面が主導的な調整とならざる を得ないのである。 収益センターである販売部門と費用センターの中心たる生産部門とは明確 に区別され, 同時に両者の調整の重要性が実践的に重要視された結果が予算管理の成立へと繋 がったのである。

第2に 「財務と販売・生産の調整」 の意味するものは, ひとつは 「販売と生産の適切な調整 は, 数量の視点からだけでなく, 利益の視点からも本質的に不可欠で」 あり, 「販売見積は生 産可能性, 利益の潜在的可能性, 財務条件の視点から点検すべきである」 )というように, 収 益性の視点から販売と生産の調整がなされることになる。 すなわち販売職能主導だからと言っ て売上高至上主義ではなく, 利益志向にもとづく調整がなされることになる。

「財務と販売・生産の調整」 のもうひとつの意味合いは, 「販売と生産の調整の欠如は, 損失 へと導くが, 販売と, 生産, 財務の調整の欠如は倒産へと導く」 ので, 「それ故予算プログラ ムは, 財務計画化において特に意義があるし, 財務計画化は財務管理 (

) の本質である」 )という主張である。 ここに現れているように, 収益性とは別に, 予算 が経営の財務的安全性の確保に有益であるという側面である。

第3の経営のあらゆる活動の調整は, 各部門で作成された見積を諮問委員会 (後には予算委 員会とマッキンジーは呼称するようになる) で研究し, 相互に調整することで最終的に見積貸 借対照表と見積損益計算書にまとめ上げ, そして見積成果を達成するための事業計画や事業政

) [ ]

) [ ]

) [ ]

)

(16)

策を効果的に策定することを意味する。 総合的な予算財務諸表が作成されることで, 事業計画 や事業政策の策定に大きく寄与することを意味している。

このマッキンジーが主張する予算管理の目的については, 年時点における, ボストン商 議所発行のパンフレットを取り上げて, 小林健吾は次のように検討している。 「上述の1の販 売と製造の調整と, 5の企業の全ての活動の調整とを併記している理由は不可解である。 せい ぜい, 販売と製造との調整が販売の時代の到来によって, 特に重視され, 関心を持たれたこと に求めうる程度である」 )と指摘している。

しかしすでに明らかにしたように, マッキンジーにあっては販売と製造とは事業構造上で異 なる職能であって, 収益センターとしての販売部門の活動と費用センターとしての生産部門の 活動が, 事業計画を立てる上での相違が存在する最も基本的な諸部門として利益計画の視点か ら調整が図られるようになることが, 企業予算論の形成史の基本的な経営課題として認識され ていたのである。

2. 予算管理と利益計画

小林健吾は上記の論点に続けて利益目標との関連についても検討している。 「この予算の目 的に関する叙述で, ここでも注目しうるのは, 予算によって利益目標を設定することの強調が 見られないことである。 上述の予算の目的では利益をあげうる製造や販売の予算を編成するこ とは挙げても, 予算をある利益目標を達成する管理技法としては考えていない。 ………ここで も原価・営業量・利益関係の知識は見出されない」 )と利益管理視点の弱さを指摘している。

この点についても, すでに述べたように, 予算の優位性を取り上げた 年の 予算統制 でも利益管理視点が存在していたとみることができる。 そして 年9月に公表された論文

「販売, 生産, 財務の調整」 ( [ ]) では利益管理の視点をさらに強めて, 販売と 生産の調整について論じるようになる。

即ち 「望ましいプログラムとは, 利益が投下資本に対して最大限に獲得されるだろうポイン トまで製品の単位コストを引き下げるためにできるだけ多くの生産量を確保する十分な売上数 量を生み出すような価格で製品が販売されることである。 販売価格は, 生産コストだけでなく, 販売コストや獲得されることが望まれる利益率によっても影響される。 望ましい利益は, 必要 資本量に依存するし, 必要資本量はさらに資本回転率によって影響を受ける。 急速回転に伴う 低い売上利益率は緩慢な回転をともなう高い売上利益率よりも収益性が高いかもしれない。 価 格設定の問題が決定されるときには, 資本回転の速度に対する販売価格の効果は注意深く考慮 されなければならない。」 )

) 小林健吾 予算管理発達史 創成社, ページ。

) 同上, ページ。

) [ ]

(17)

ここでマッキンジーは, 販売と生産の調整に関わって, 販売と生産の数量について単なる調 整をするのでなく, 投下資本利益率を最大にするために, 望ましい販売・生産数量とそのため の価格設定の必要なことを論じている。 しかも資本利益率は資本回転率の影響を受けると指摘 しているように, 売上利益率と資本回転率への分解についても言及していると理解できる。

「この全てのことは次の結論を導く;販売と生産の調整を追求する際には, 利益, 回転, 費用 の標準が確立されるべきである。 さもなくば期待したことと反対の結果が続くことになろう。

例えばもし, 支店長が大きな販売割当の確立によってより大きな販売量を確保するようせき立 てられると, 販売費の増大と粗利益の減少によってこれを確保し, 結果として彼の純成果は望 ましくないものになるかも知れない。 通常, 営業量の標準が確立されるときは, 利益の出る成 果を確保するような標準が加えられるべきであろう。 生産と販売の調整に向けたあらゆる努力 の究極目的は, 投下された資本に照応して損益計算書の最終行 (利益) を増大させることだと いうことを常に覚えておくことがよい」 )と, 投下資本利益率の視点から, 生産と販売の調整が 行われ, なおかつ 「利益, 回転, 費用の標準が確立されるべきである」 と提唱しているのであ る。 さらに続けてマッキンジーは, 「きわめてしばしば経営管理者, とりわけ販売管理者は, 生 産コストと販売コストの両コストに対する事業数量の効果と, 固定費 ( ) をケア するための十分な規模の事業数量を維持する必要性を忘れる。 その要因に回帰し, 工場に十分 な数量― ( ) 正常な投下資本利益率を獲得する, ( ) もし ( ) ができなければ, 収支均衡にす るため―を可能にするのに必要な販売見積を作成することが, 時には望ましい。 スタート時点 でこれでもって販売部門に次の意見表明をすることができる。 これらのラインに対するこの売 上数量は, 十分な生産数量が正常な投下利益率を獲得できるように求められている。 もしこれ が出来ないのであれば, 企業が収支均衡するために, 少なくともこの数量が必要である 」 )と, 事業数量の効果について, 固定費の存在に着目して論じている。 そして 「十分な規模の事業数 量」 の確保が, 「正常な投下資本利益率」 の獲得か, 少なくとも収支均衡が図られるようになさ れる必要があると主張するのである。 ここでは明らかに固定費 (とそして変動費) の存在に着 目して, 損益分岐点分析の視点から, 投下資本利益率の目標設定を意識していると言える。

さらにこうした検討のために, 「各期末に見積もられた販売数量, 均衡に必要な販売量, 実 際に販売量を表示するよう作成されたチャートを持つことが有益である。 多くの会計担当者は そのような情報が自分たちの経営管理者にとても興味深く教育的であることが分かるであろう。

もし, それらのチャートが会社の個々の単位に対して作成されるなら, もっと有益である。 満 足な投資利益の獲得は言うに及ばず, 収支均衡にするために十分な販売数量を確保することが 不可能なほど巨額の固定費をもつ単位があることが頻繁に分かるであろう。 それゆえ, 販売,

) )

(18)

生産, 財務の調整における最も重要な要因の一つは, 満足できる投下資本利益 率 を生み出 すために必要な事業量である」 )と述べて, 予算担当者が経営管理者のために分かり易いチャ ートを作成することも提案している。

こうした販売と生産との調整に伴って論究される販売価格, 単位コスト, 回転速度などの相 互関連と投下資本利益については, 年の 総会での報告 「予算プログラムと会計担 当者の関係」 でもより簡潔であるが論究されている )。

3. 予算の導入と組織のあり方

予算の普及過程において予算システムを企業に導入する際にどのようにして行うのかについ てマッキンジーは組織との関わりで論じている。 組織やマネジメントについての見解は 年 に公表された 「管理組織のおける の傾向」 ( [ ]) において組織の原理について 論じているが, 翌年 年のアメリカ経営者協会の に記録を掲載 しているマッキンジーが組織したシンポジウム 「予算技法」 の総括 ( ) として彼は, 予算アイデアの導入, 定着の諸課題について論じている。

マッキンジーは, 予算思考 ( ) と特定の予算形態を区別し, 予算思考は成功し ているマネジメントにとって有益であるが, 成功しているマネジメントにとって常に必要なわ けではないと予算思考の有効性について慎重に主張している。 そして予算導入の際に画一的に 特定の形態を取る必要性を排除する。 「 しばしば予算導入を希望する人々からワンセットの予 算書式を要請されるが , 私はそのようなフォームを持っていないし, 全ての会社は, 特殊な 状況における, そして会社の経営管理者の特有の個性にあった独自のフォームを持つべきであ ると常に回答している」 )と, 導入される予算の形態の多様性を主張している。 この見解は,

年のシンポジウム 「成功する部門予算」 の総括発言でも繰り返されている )。 むしろ予算 導入への人々の参加による多様な予算システムの策定を求めているのである。

予算の導入時の教育活動を含めた副産物としてマッキンジーは, 組織を構成する経営管理者 間の協働の実現を上げている。 「予算の最も重要な副産物のひとつは, お互いの問題を解決す る際に組織の様々な経営者の間で協働を促進することである。 しばしばある部門の人物が他の 部門の人物に有益な考えを与えることができるのは驚くべきことである。 組織の経営者間でど れだけ調和が取れているかは, 予算プログラムでの相互の努力によって促進される。」 )この ような予算プログラムの実施に伴う各職能部門間の経営者の調和, 協調へのモチベーションは,

)

) [ ]

) [ ]

) [ ]

)

(19)

予算管理における事前コントロールとしての性格も持っている。 この点については, 年代 のラフ ( ) によって既に指摘されていることではある )が, マッキンジーにあ ってもこうした点への着目が見られる。 予算管理システムを導入することによって, 職能部門 間の調整が予算システムを通じて行われるだけでなく, 予算のコントロールだけでなく, より 広く経営管理者による協働が実現することを指摘しているのである。

予算編成と組織の関係について, 事業成長に伴って人員の経営能力を高めることがしばしば 困難となる点についても論及し, 「若干の企業はこの困難を認識し, 自社の事業量を一定のペ ースで維持するよう, 目的意識的に成長を制限している」 )と, 経営組織の長期的な成長を持 続する計画化を論じているのである。 組織と予算との関連について, マッキンジーはさらに予 算の限界認識に言及する。 人々は予算の優位性について時として熱狂するが, 「予算はあらゆ る病気に効く万能薬ではな」 く, また予算は管理方策であって, それを作成し, 実行する組織 より良いものではないと考えるのである。 そして予算管理システムの積極的な強調は見られず, むしろ 「良好な管理, 良好な政策, 良好な組織にとっての代用ではない」 )と予算システムを 経営組織, 経営政策を遂行するための一要素として位置づけているのである。

4. 予算管理と差異分析

マッキンジーの予算管理論をめぐり, マッキンジーの 予算統制 をはじめとする彼の予算 管理論の体系において差異分析が存在するかどうかという点が論点として存在している )。

予算統制 をつぶさに研究した北村浩一は, この点の整理として廣本敏郎などの先行研究で 差異分析の存在を否定していることに言及しつつ, 北村自身も差異分析の存在を否定している。

しかし以下のようないくつかの箇所でマッキンジーは, 差異分析について言及している。 例 えば統括販売事務所で利用する比較形式の報告書の有益な項目として, 実際売上と見積売上, 費用と売上, 実際費用と標準費用, テリトリーの平均値を伴う費用を列挙し, 「もし数量に加 えて, これらの比較が百分比で表されるのであれば, 報告は更に役に立つ。 もしこの報告が標 準と実績とのかなりの幅の差異を示すならば, 補足的な報告が作成され, 差異を説明する。 報 告は月次か週次に, 販売員に送付され, 見積と実績との比較と売上別に獲得された利益が表示

) ( ) ラフの企業予算論については齋藤雅通 「アメ

リカにおける企業予算論の形成過程」, ページ参照。

) [ ] こうした一定ペースでの経営の計画的な成長戦略と予算管理実践につい ては, 齋藤雅通 「 年代におけるマーチャンダイジング確立の意義―デニスン社のマーケティング 実践によせて―」 立命館経営学 第 巻第2号, 年7月, ページ参照。

) [ ]

) 北村浩一, 前掲書, , ページ。 廣本敏郎, 前掲書, ページ。 なお吉村文雄はマッ キンジーが予算実績差異の分析・評価を要求していると指摘している (吉村文雄, 前掲書, 年,

ページ)。

(20)

される」 )と指摘している。

また労務費予算を論じた箇所でも 「経営管理者は労務費に関して生産プログラムにおいてど んな差異の影響に対しても特別の注意を与えるような報告書を研究すべきである」 )と述べて いる。 このようにシステマティックな分析手法が提示されていないとはいえ, 予算差異分析の 必要性と重要性が 予算統制 でも指摘されていたと見るべきであろう。

さらに 年の 年次総会での 「予算プログラムと会計担当者の関係」 と題するマッ キンジーの発言は, より明確に差異分析の必要性を説いている。 そこでマッキンジーは, 予算 執行上の問題について, 少なくとも月次, 週次の予算・実績比較が必要であり, 予算が導入さ れる際に見積成果と実績との比較形式に会計報告が改編されることの重要性を指摘したうえで,

「どんなに注意深く作成されたとしても見積と実績との間にいくらかの差異が常に発生する。

結果として会計担当者の責任は, 見積と実績との比較を示す計算書が作成されるところでは終 了しない。 差異が妥当なものかどうか, そしてもし妥当なものでないならば誰に責任があるの かについて経営者が知ることができるように, これらの差異の原因を指摘する分析を作成する 責任がある。 月に一度は最高経営者だけでなく他の経営者に対しても実績と見積の比較と差異 の包括的な分析の図解が提出されるべきだろう」 )と述べている。 ここでは, 差異分析を行う とともに, 差異の原因を明らかにして, 発生の会計責任を明確にする必要性を強調するのであ る。

予算管理論は, 標準原価計算の成立過程で見られる能率測定という視点とは異なり, 販売, 生産, 財務部門を中心とする全社的調整を目的とするという成立過程の特性から, 予算上で差 異が発生しないよう編成されることになっている。 しかし差異が発生した場合の分析について は, 定期的な差異分析の必要を主張しているのである。 もちろん精緻な差異分析は, 廣本敏郎 が詳しく論究しているようにハリスン ( ), グレゴリー ( ), ヘ イズ ( ) らによる標準原価計算システム論の開発過程から生じた可能性が大き いであろう )。 しかしマッキンジーの予算管理論においても全く看過していたのではなく, そ うした差異分析と差異発生の会計責任の明確化について主張がなされていたのである。

( [ ]) でも, 同年の 編集の の

なかの ( [ ]) でも, 差異分析について触れている。 後者 では差異の原因についても具体例を挙げている。 そこでは差異分析の主要な目的である予算を 訂正すべき場合と, 特別な事情で達成できないということで終わる場合などに言及している )

) [ ]

)

) [ ]

) 廣本敏郎, 前掲書, ページ参照。

) [ ] [ ]

(21)

ように, マッキンジーの予算管理論では, 見積値と実績値を一致させるための予算修正の手続 きを重視しながらも, 差異の原因を究明することによって予算管理上の責任を明らかにするた めの差異分析も見られるのである。

5. 予算管理と標準設定

マッキンジーは, 予算運用上における標準の必要について 予算統制 はもちろん, その後 の論考でも自説を展開している。 年のアメリカ経営者協会のシンポジウム 「成功する部門 予算」 で報告者の報告を受けたまとめに当たる総括発言 ( ) では, 「もし予算を創設 する責任のある経営者によって獲得される成果を測定する手段として利用する標準を持たない ならば, 予算を効果的に判断し, 予算が執行される能率を判断することはできないであろう。

例えば, もしあるべきコストについて判断する標準を持たないならば, 製造部門におけるコ ストのあるべき予算を判断することができない。 もし事業量が変動していて, 変化する事業量 に対応してコストがどうあるべきかを示す標準セットを持っていないならば, 各予算期間末に コストの妥当性を判断できない」 )と標準を設定する意義について述べている。

しかし標準をめぐり, 標準原価と予算原価との関連についてマッキンジーは, 一般論的なレ ベルの議論に終始しているように思われるし, とくに標準原価計算に具体的に言及することを 回避しているように見える。 先の 年の の年次総会でマッキンジーが行ったスピー

チに対して, 質問が出ている。 の は標

準原価と予算原価はどう異なるか質問し, また同氏は標準原価は正常な生産時の時間研究に基 づくのに対して, 予算原価は販売見積に大きく基づくと理解しているとの見解を述べた。 さら に が, 2つの原価概念は明らかに異なるものとして扱われ, 月次にこの2つの異なる 原価を実際原価と比較するのかとの質問したのに対して, マッキンジーは 「広い意味で全ての 標準は予算であり, 全ての予算は標準である。………あなたの予算原価が標準原価と異なるか どうかは, あなたが設定した標準原価が基づいた基準による。 もし標準原価が年間のある期間 の平均的な生産を基準に設定され, 予算原価が当該期間に期待されるものを基準に設定される ならば, 2つの間には違いがある。 私は原価会計担当者でないので, 経験を積んだ原価経営管 理者の前で標準の主題について討論するのをためらう。 しかし私の意見では, 予算原価と標準 原価は同じであるべきで両者は, 過去の経験によるよりも設定されるべき期間についての期待 ( ) に基づくべきである」 )と回答している。

標準原価を過去のある期間の平均的な生産を基準とする場合と理解して, そうした標準の設 定では, 期待水準で設定される予算原価と異なると述べることによって, そうした平均に基づ

) [ ]

) [ ]

(22)

く標準を否定し, 標準原価と予算原価は同一であるべきだと述べることによって, マッキンジ ーは, エマースンら能率技師たちによって製造現場で開発されてきた標準原価計算システムと は異なる標準原価の理解を示している。

また の が, 連邦政府や州政府で利用さ

れる割当, 販売割当, 予測, 工場における費用見積など様々なタイプの見積標準が存在してい ると指摘したのに対して, 「販売見積が作成される基準に関してかなりの意見の相違が存在し ている。 この質問は, 主要には, 販売見積は期待に基づくべきか, 希望に基づくべきかについ ての意思決定を意味する。 時には販売予算は単純にセールスマンを駆り立てる目標 ( ) として策定される。 時には事業経営の他の業務を計画化するために基準として策定される。 私 は, 販売見積は望ましくかつ可能であると見なされるものについての意見表明 ( ) であるべき」 と考えているとした。 なぜなら不可能と思われる目標の前でセールスマンは止ま る。 「到達できない販売見積を策定することによって多くのものを獲得されるとは思わない」 ) からであると。 したがって 「私は, 見積 販売量は, 通常の人物が通常のテリトリーで遂行 するためにリーズナブルなタスクと考えられるものを基準として設定すべきであると思う。 そ れによって, 個人をガイドする標準となり, 販売の見積が通常, おおよそ正確な販売量となろ う」 )と述べている。

わが国で標準原価と予算原価の関係をめぐる論争が見られた )が, マッキンジーにあっては, 合理的に達成可能な緩やかなタイトネスの標準を予算標準として考え, 原価標準にも適用され るべきであると, 理解したと考えられる。 世紀初頭の能率増進運動で展開された原価管理志 向の標準設定とは異なる視点から予算標準を論じていることは明らかである 。

6. 経営政策と予算管理

予算作成と経営政策の関連は, 予算統制 では第一義的に重要な事項として認識されてい ない。 マッキンジーは販売見積の3重の基準の一つという位置づけで経営の計画や政策につい ての情報を第1に挙げ, 第2に市場分析から得られる景気の情報, 第3に会計記録から得られ る販売情報を挙げている )。 同様の指摘は, アルフォード編で 年に刊行されたの マネジ メント・ハンドブック 所収の 「予算統制」 でも主張されている )。

しかし 年の論文 「販売, 生産, 財務の調整」 ( [ ]) では, 「効果的な販売

) )

) わが国の予算と標準原価をめぐる論点は, 多くの研究業績が存在するが, 差し当たり実務家の立場 からの簡潔な論究として, 中山隆祐 利益管理会計 白桃書房, 年, ページ参照。

) [ ]

) [ ]

(23)

見積は, 管理統制手段として利用されるが, それはよく定義された販売政策の次元でのみ作成 されうるのである。 実際, もし予算が政策の実施において役に立つべきであろうとすれば, あ らゆる予算は政策の次元―販売政策, 生産政策, 財務政策の次元―で作成されなければならな い。

それゆえもし知的な販売見積が販売組織から期待されるのであれば, 彼らは見積が作成対象 の期間中の財務上, 生産上の政策を知っていることが必要である」 )と, 政策の重要性を一歩 踏み込んで主張している。 販売見積を作成する際には, 販売政策だけでなく, 生産や財務など 経営全般に亘る政策を知る必要があると指摘するのである。

年になるともっと明快に予算は経営政策の会計的表現であると主張する。 「予算は統計 的データの編集されたものであるだけでなく, 政策の基本的な表明であるということをわれわ れが十分に認識するという視点の重要性は, 強調することが望ましい」 )ことになる。 また予 算の承認に関しても 「予算を提出するものはその機会を持つだけでなく, 予算を承認する経営 者に政策とプランを提出する必要があるべきだ。 換言すれば, 予算を作成する人物は予算を作 成する前に経営者の政策が何であるか知るべきであるし, 経営者は予算を承認する前に自分の プランは何であろうか知るべきである。

もしわれわれが, 予算が政策の表明であることを理解しないならば, 経営活動をコントロー ルする効率的な手段とはならないであろう。 それゆえあなたの会社で予算を考慮する際にはあ なたの経営者が予算を単なる統計報告と考えることを認めてはならず, 彼らが予算を事業の基 本的な政策を考察するために提出された目に見える手段と見なすよう主張することを力説す る」 )と必要性を強調している。 そして 「もしこれがなされるならば, 総括予算委員会は事実 上会社の政策策定機関になるであろう。 もしこの委員会が機能しないのであれば, あなたの会 社の予算は追加の官僚的形式主義的手続きになるだけであろう」 )と述べて, 予算編成を担当 する全社的予算委員会において, 経営諸政策の統合や調整が行われることを期待している。

このようにマッキンジーにおいては, 予算管理は単なる経営管理の会計的コントロールの手 段ではなく, 経営政策の会計的表現として位置づけられ, 全社的な経営計画や経営政策の関わ る経営手段の一つとして位置づけられていくことになる。 こうした経営政策との関わりで予算 管理を位置づける指向は, マッキンジーの管理会計思考の発展を反映していると考えられる。

) [ ]

) [ ]

) )

(24)

結びに代えて

以上考察したように, マッキンジーの予算管理論は, 年代の予算管理論の形成過程の理 論的な継承上において, ウォルワース社などの先駆的な予算管理実践に裏打ちされたものとし て構築されていったことが分かった。 とくに 年の 予算統制 の範囲を越えて, 年代 において, や などにおけるマッキンジーの研究活動の成果として, 多彩な内容 を持つものであることが明らかになった。 本稿で取り上げた, 予算の基本的な特徴として販売 と生産, 財務を中心とする職能間の調整, 利益計画との統合, 組織と予算システムとの関係, 予算管理における差異分析の意味, 予算と標準設定に加え, 他の論点もマッキンジーによって 提起されている。 本稿はそうしたマッキンジーの予算管理思考の論点のいくつかについて論究 したに過ぎない。 その意味では, マッキンジーの予算管理思考の全体的な研究は, 今後もさら に深めていくことが必要であろう。 本稿でも明らかにしたが, その際にいくつかの留意点が必 要であると考える。

第1に彼の見解は, 大学における研究教育活動と経営コンサルタントとしての職業的な経験 に基づいて経営の具体的な実態に即した論点提示であった。 したがって, 当時の企業における 予算管理実践を踏まえて や で研究, 公表された 年代の予算実務についての 予算論議との注意深い比較検証が必要である。 第2にマッキンジーの問題意識と方法論は, 管 理会計論ないし会計学の領域に留まらず, 彼が教育者として重視した 「経営政策」 など経営管 理に関する広い視点から論じている。 こうした問題意識を考慮せずに管理会計論の枠内でのみ 評価することは彼の論説を精確に評価できない可能性がある。 マッキンジー自身が行ったよう な組織問題など経営学の視点からの考察も加えた多面的な検証が必要となろう。 また第3に 年代に展開された形成期の予算管理論が現代の予算管理論に継承したのはいかなる点なの かについても, ヨリ立ち入った考察が必要となるであろう。 ともあれ今日でもマッキンジーの 残した足跡は大きい。 稿を改めてマッキンジーの予算管理論の現代的な意味について論究を継 続したい。

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