序論
❶既存災害資料展示施設の概要と問題点について
❷問題の解決に向けた課題と実践
❸本研究の実践内容 おわりに
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国立歴史民俗博物館研究報告 第214集 2019年3月
博物館展示における
震災資料展示の課題と可能性
山内宏泰
Issues and Possibilities of Museum Exhibits of Earthquake Disaster Resources : Research to Build a Universal Mission for Disaster
Resource Exhibit Facilities and its Significance
YAMAUCHI Hiroyasu
[論文要旨]
災害資料展示施設の普遍的ミッション構築のための研究とその意義
現在,日本国内においては巨大地震,大津波,巨大台風,低気圧などによる大規模自然災害が頻 発する傾向が見られ,災害の記録,記憶を伝承する資料展示施設の社会的必要性が以前にも増して 高まっている。しかし,その一方で同様の施設設置に係る基本的な理念,展示デザインの基本的な 方法論は確立されておらず,設置された施設は管理運営,展示デザイン上の問題を多く抱えており,
かつ,この状況を打開する具体的な試みが行われないままに新たな施設が設置されている。
本論においては,国内に存在する震災等の災害資料展示施設,類似施設を事例として,施設の設 置段階,管理運営状況における問題,展示デザイン上の問題,課題を指摘し,その解決に向けた試 みの事例として,リアス ・ アーク美術館常設展示『東日本大震災の記録と津波の災害史』設置に至 る経緯を述べるとともに,同展示における展示手法を示し,あわせてその成果を基に,災害資料展 示施設の存在意義と,設置の必要性を独自の視点から再定義しようとするものである。
「災害資料展示,災害資料系博物館などを設置し,管理運営していくための普遍的ミッションを どのように設定するのか,人知を超えた自然の営み,現象に対して人間は今後どのように向き合っ ていくべきなのか」。この問いに対する答えを求めることは,本論によって到達するべき究極的な 目標であり,本来ならば,導き出される答えは同テーマを論じるための基盤とされるべき理念とも 言える。リアス ・ アーク美術館においては,この問いに対する答えを,東日本大震災の経験を通し て研究,模索し,記録,調査を継続しつつその成果を展示,公開することで具現化している。本論 においてはその理念を一つの事例として提示し,既存の博物館,あるいは博物館学芸員等の研究者 に普及することで,今後新たに設置される災害資料展示の社会的機能を適正化する道筋を示そうと するものである。
【キーワード】リアス・アーク美術館,災害資料展示,想像力,自然環境,減災