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Study on Admission Fee for Film Entertainment by Introducing Variable Price Setting

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Academic year: 2021

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変動価格設定導⼊による映画興⾏の⼊場料に関する考察

―スポーツや⾳楽ライブでの導⼊を参考として―

Study on Admission Fee for Film Entertainment by Introducing Variable Price Setting

― Referring to the Introduction of Variable Price Setting at Sports and Music Festivals ―

1W153063-5 佐藤 朝稀 指導教員 是枝 裕和 、⼟⽥ 環

SATO Tomoki KORE-EDA Hirokazu, TSUCHIDA Tamaki

概要: 本研究は、変動価格設定を導⼊することにより、映画興⾏における全国⼀律 1,800 円の⼊場料を再考し、映画館 の利益最⼤化について考えていくものである。変動価格設定、あるいはダイナミックプライシングとは、商品や市況、天 候、個⼈の嗜好などに関するビッグデータをクラウド上のプラットフォームと AI などで分析し、需要の予測を基に価格 の上げ下げを⾃動的に⾏う仕組みであり、スポーツや⾳楽ライブの興⾏など、エンタテインメント分野において採⽤され る事例が増えている。映画館の収益モデルは、座席数に制限があることや、固定費が⽀出の多くを占めることなどから、

その事例を基にして応⽤が可能である。本稿では、変動価格設定の導⼊事例を⽤いて、⽇本の映画興⾏に導⼊するための 課題や問題点を考察した。その結果をふまえ、海外における映画興⾏への変動価格の導⼊事例、および定額制などを参考 として、映画⼊場料のあるべき形を提⽰する。

キーワード:映画⼊場料、変動価格設定、ダイナミックプライシング、映画館、定額制

Keywords:Fee for Film Entertainment, Variable Pricing, Dynamic Pricing, Movie Theater, Flat-Rate System

研究背景

⽇本における映画の⼊場料は、⼤⼈ 1,800 円という料

⾦が設定され、物価の変動を受けず 1990 年頃から変わっ ていない。しかし、作品内容や映画館の⽴地、上映装置 などが違うにも関わらず、価値を決めるものさしである

「価格」という概念において、⼀律料⾦は正当に作品を 1つのモノとしての価値を決めているとは考えづらい。

映画館の集客を維持するため、また「映画を映画館で⾒

る」ということに対する価値の⾒直しのため、映画の⼊

場料を再考すべき時期に来ているのではないだろうか。

1. 変動価格設定とライブ・エンタテインメント 本論⽂では、変動価格設定の実例として、Major League Baseball 、⽇本サッカーリーグ、世界的な⼈気を誇るアー ティスト Taylor Swift の⾳楽ライブを取りあげた。例えば、

サッカーJ1リーグの横浜 F・マリノスは、ダイナミックプ ライシングを導⼊したことにより、導⼊前と⽐べてスタジ アムの稼働率は約 7%増加、またグッズ収⼊も約8%増加 した。

Clowes & Clements によると、サッカーの試合において は、1.相⼿の質・強さ、2.興⾏が⾏われる時間帯、3.興⾏開 催場所と座席の場所の 3 つの変数を利⽤して価格を設定す ることが必要だという(Clowes & Clements, 2003)。また、

Dennis R. Howard & John L. Crompton は、差異を設けた 価格設定を⾏う意義は、ピーク期の利益の最⼤化と、⾮ピ ーク期の消費者の購買意欲の活性化のためであり、売り⼿

が買い⼿の最⼤⽀払意欲に等しい価格を課すことによっ

て、消費者余剰を可能な限り利益として回収することにあ ると指摘している(Howard & Crompton, 2004)。

スポーツや⾳楽の興⾏における会場収⼊は、⼤きく分け て「⼊場料収⼊」と「売店収⼊」の 2 つに分けられる。⼊

場料収⼊を極⼤化するためには「稼働率を上げること」が 重要になる。座席は、在庫として保有することが出来ない という商品特性ゆえに、価格を下げ、1 席でも多く販売す ることができれば、低価格でも収⼊となる。また、⼊場者 数の増加に⽐例し、飲⾷店などの売店収⼊も増加するため、

収益の最⼤化を測ることが可能となる。⼀⽅で、⽀出の⼤

半以上は「固定費」が占め、スポーツや⾳楽ライブの興⾏

では、1 興⾏あたりにかかる費⽤は⼤差がないため、⼊場 者数を増やすことが利益を出すための最善の⽅法である。

変動価格設定は、需要の動向を⾒ながら柔軟に価格を変更 することにより、なるべく多くの⼊場者を集め、会場の稼 働率を上げることを⽬的としているため、⾮常に有効な役 割を果たすことが期待される。

2. 国内の映画料⾦と価格設定の基準

⽇本においては、映画館の⽀出は、映画上映料が 5 割近 く、施設の賃借料や管理費などが次いで占め、映画館でも 固定費が⽀出の⼤半を占めている。変動費は、売店で販売 される飲⾷物やグッズの原価のみとなる。⼀⽅、収⼊は8 割近くを⼊場料が、残りの約2割は売店売上が占める。ま た、年間の売り上げは増加傾向にあるが、⼊場料収⼊は 2004 年⽐で 1.22 倍であるのに対し⾷堂・売店収⼊は 1.47

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倍と増えていることから、より多くの⼊場者数を獲得する ことで、売店での売上も増加し、映画館の収⼊をさらに⾒

込むことが出来ると考えられる。映画館においても、他の 興⾏同様に、稼働率を上げ、⼊場者数の最⼤化を図ること が⼤切である。

⽇本映画製作者連盟の統計によれば、映画の⼊場料は、

全国共通で⼤⼈ 1,800 円に設定されているが、「映画の⽇」

や、レディースデーなどの割引により、2017 年には平均⼊

場料⾦が 1,310 円となっている。また、近年では「付加価 値」によって、⼊場料を通常より⾼く設定することもある。

3D 上映のような⾼品質な上映⽅法や、電動式リクライニ ングシートなどの座席に対し追加料⾦を⽀払う⽅式をと っている。

スポーツや⾳楽ライブと同様に、座席数に限りがあ り、固定費が⽀出の⼤部分を占める映画館の収益モデル を考察すると、変動価格設定を⼊場料に導⼊することは

⼗分可能である。しかし、変動価格設定を導⼊するため の⼤前提として、⽇程や⼈気など「何を変数として置く か」ということ、また、チケットの座席指定による販売 期間が短いことなどが懸念される。価格が変わる基準や 時間の固定、上下限額の設定により、顧客の混乱を招か ないようにする取り組みが必要である。

3. 理想的な映画料⾦

映画館での変動価格設定は、ドイツや、アメリカ、オー ストラリアなどで、既に試験的に導⼊が始まっている。ド イツでは、⼤⼿シネコンチェーンが 5 社存在し、その全て が変動価格設定を取り⼊れている。価格決定の⽅法は少し ずつ違うものの、時間帯やリクライニングシートの有無な どで価格を設定している。また、ネットからのチケット予 約時に、売店での商品を予約すると割引価格で購⼊出来る サービスも⾏なっているため、効果的に売店収⼊も確保す ることが可能となる。

これらを踏まえ、⽇本の映画館に変動価格設定を導⼊し た場合、1 つの仮想モデルとして、本論では、以下のよう に価格設定を提案する。変数としては、「上映環境」「⽇時」

「作品」3 つの要素を⽤い、基準としては、「上下限額の設 定」「価格変更のタイミング」などを明確にすることで、顧 客の納得が得られる価格設定を⾏う。またリピーター割引 など、変動的かつ柔軟な価格設定を⾏うことで、稼働率の 向上を図ることが望ましい。

他⽅では、新しい価格設定も登場している。アメリカで は、定額制上映料⾦のサービスが導⼊されている。利⽤者 は⽉額料⾦を払って作品を鑑賞するシステムで、アメリカ の 91%の映画館で利⽤可能となった。会員数は⾶躍的に伸

びて、現在では 300 万⼈を超えるに⾄った。しかし、急激 な会員数の増加や、会員が映画館に⾏く回数が多いほど運 営会社の費⽤負担は⼤きくなることから、経営は決して安 定しているとは⾔えず、事業の拡⼤と同時に、プランの内 容変更が相次いでいる。今後は、運営資⾦の調達や顧客の 信頼獲得が、サービス安定のための打開策となるだろう。

4. 結論

ネット配信時代へと本格的に突⼊したことに対し、⼊場 料の⾒直しや売店収⼊の確保など、世界的に⾒ても映画館 の運営には焦燥感が看て取れる。そもそも、映画館の⼊場 料は、「映画館に⼊場し、館内の設備を利⽤し、映画を鑑賞 する⾏為」に対して⽀払われるものであり、映画館の設備 やサービスまでを評価に含めて⼊場料は設定されるべき である。変動価格設定の導⼊は、収益を最⼤化することだ けでなく、柔軟な作品上映を⾏うことができる環境を整え ることや、映画館のあり⽅や存在価値についても考え直す 契機に繋がるだろう。⼀⽅で、⽇本の映画館に新しい価格 設定を導⼊するためには、販売期間や作品評価の定義、制 作配給会社と映画館を運営する興⾏会社の議論など、多く の課題が⽣じることも想定される。だが、ネット配信のよ うな新たな映画の楽しみ⽅が拡がり始め、映画館では3D のような様々な上映⽅法や割引が設定されている現状を ふまえても、⼆⼗年近く変わらない⼊場料を⾒直すことは 必要ではないか。まずは、他のエンタテインメントの興⾏

での価格設定を参考とし、⼈々が映画館に⾜を運びやすい 価格を再考することが重要である。⼈々に、「映画館で映画 を⾒る」ということを、今⼀度⾝近なものとすることが、

⼊場者数の増加にも繋がり、これからの映画業界の安定的 な維持を図っていくことになるだろう。

参考⽂献

加藤幹郎、『映画館と観客の⽂化史』、中央公論新社、2006。

松尾⾥央、『あの映画は何⼈みれば儲かるのか?』、TAC 出版、

2008。

⻫藤守彦、『映画館の⼊場料⾦は、なぜ 1800 円なのか?』、ダイ ヤモンド社、2009、pp.10-12。

中島治久、『最新スポーツビジネスの基礎−スポーツ産業の健全 な発展を⽬指して−』、同⽂館出版、2016。

Clowes, J. and Clements, N., “An exploration of discriminatory ticket pricing practice in the English football Premier League”, Managing Leisure, 8 , 2003, pp.105‒120.

Dennis R. Howard and John L. Crompton, “Tactics used by sports

organizations in the United States to increase ticket sales” , 2004.

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