2009 Spring
Vol.77
特 集 中国の知財情勢
連 載 社名変更とブランド管理
財団法人 知的財産研究所
〒102‐0083 東京都千代田区麹町3丁目4番地 トラスティ麹町ビル3 階 TEL.03(5275)5285・5281 FAX.03(5275)5323
春号 2009 年 5月発行
ISSN 1348-0529
本書の無断複写は、特定の場合を除き、禁じられています。
財団法人 知的財産研究所◦VOL 77◦
(ソニー株式会社 執行役 EVP)
【特集】中国の知財情勢
2 中国の知的財産権に係る最近の改正及びその背景
李
リ
明徳
ミ ン ジ
(中国社会科学院知的財産権センター)
8 判例から先使用権を見る
李
リ
茂家
マオジャ
(中国弁理士)/ 劉
リュウ
冬梅
ドンメイ
(中国弁護士・弁理士)
16 中国の標準体系、標準の発展規画、独自標準について
〜電機・電子分野を中心に〜
関根
せ き ね
久
ひさし
(日本貿易振興機構北京センター電子情報産業部長、JEITA北京事務所長、軽機械センター北京事務所長)
22 中国におけるソニーの知財活動
内山
うちやま
信幸
のぶゆき
(ソニー(中国)有限公司、知識産権部 総監)
【寄稿】
27 著作権の間接侵害をめぐる立法のあり方(下)
島並
しななみ
良
りょう
(神戸大学大学院法学研究科 教授)
32 知財外交の展開と海外での企業サポート
林
はやし
禎二
て い じ
(外務省知的財産室長)
【連載】社名変更とブランド管理- 1
37 合併に伴う社名変更とブランド管理について
木又
き ま た
浩
ひろし
(アステラス製薬株式会社 知的財産部 課長)
著作権と文学者- 6
43 バルザックから19世紀の作家たちへの手紙
園田
そ の だ
暁子
あ き こ
(中京大学 国際教養学部 准教授)
47 第60回 ワシントン便り
中槇
なかまき
利明
としあき
((財)知的財産研究所 ワシントン事務所 所長)
知財研 NEWS
イ ノ ベ ー シ ョ ン に よ る 市 場 創 造 企 業 の成 長 の 糧 は イノ ベ ー シ ョン で す
︒ 弊 社も 創 業 以 来 多く の イ ノ ベー シ ョ ン に チャ レ ン ジ し てき ま し た
︒ラ イ フ ス タ イル の 変 革 を 促す よ う な 製品 を 生 み 出 すこ と に よ っ て︑ 単 に 既 存の マ ー ケ ッ トに 参 入 し て 限り の あ る 市場 の パ イ を 取り 合 う の で はな く
︑ 新 たな 市 場 創 造 が可 能 と な り ます
︒ ト ラ ンジ ス タ ラ ジ オや ポ ー タ ブル オ ー ディ オ プレ ー ヤー
﹃ ウォ ー クマ ン®
﹄ は
︑ 家 の中 で し か 楽 しめ な か っ たラ ジ オ 番 組 やス テ レ オ 音 楽を
︑ 個 人 が戸 外 で い つ でも 楽 し め る もの と し
︑ そこ に 新 し い 大き な マ ー ケ ット を つ く り出 し ま し た
︒ま た
︑ C D はア ナ ロ グ のレ コ ー ド か ら光 デ ィ ス ク によ る デ ジ タル へ の 移 行 を実 現 し
︑ ハ ード ウ ェ ア のみ な ら ず 音 楽 産 業 を 大 き く 拡 大 し ま し た
︒ 個 人 に よる 映 像 記 録 の市 場 を つ くり 出 した ビデ オカ メラ の﹃ ハン ディ カム
®
﹄︑ リ ア ル な3 D に よ り ゲー ム 市 場 を拡 大 し た 家 庭用 テ レ ビ ゲ ーム 機
﹃ プ レイ ス テ ー シ ョ ン®
﹄ な ど も 新 し い マ ー ケ ッ ト の 創 造を 具 現 化 し たイ ノ ベ ー ショ ン で あ っ たと 言 え ま す
︒現 在
︑ 更 なる チ ャ レン ジ とし て︑ ビ デオ
︑音 楽
︑映 画︑ ゲ ー ム など の コ ン テ ンツ と 電 子 機器 を ネ ッ ト ワー ク で つ な ぎ︑ 分 か り やす い ユ ー ザ ーイ ン タ ー フ ェー ス で
︑ より 多 く の
﹁ わく わ く
﹂ す るよ う な 楽 しみ を 提 供 す るこ と で
︑ 新 しい ラ イ フ スタ イ ル の 実 現を 目 指 し て いま す
︒ 1 9 4 6 年 井 深 大 が 東 京 通 信 工 業
︵ 現ソ ニ ー︶ 起業 時に 起 草し た設 立 趣意 書 に あ る通 り
︑ 他 社 に先 駆 け て 独創 的 な 製 品 を開 発 し
︑ 世 の中 に 送 り 出す こ と が
︑ ソニ ー の バ ッ クボ ー ン に 有り ま す
︒
﹁ 真 面目 ナ ル 技 術 者ノ 技 能 ヲ
︑最 高 度 ニ 発 揮セ シ ム ベ キ 自由 豁 達 ニ シテ 愉 快 ナ ル 理想 工 場 ノ 建 設﹂
︑﹁ 極 力 製品 ノ 選 択 ニ 努メ 技 術 上 ノ 困難 ハ 寧 ロ 之ヲ 歓
迎
︑
⁝ 他 社 ノ 追 随 ヲ絶 対 許 サ ザル 境 地 ニ 独 自ナ ル 製 品 化 ヲ行 フ
︒﹂ 弊 社 はこ の イ ノ ベ ーシ ョ ン を 支え る 知 的 財 産を 経 営 に 関 わる 最 重 要 な要 素 の 一 つ と位 置 づ け
︑ 強化 と 活 用 に努 め て ま い り ま し た
︒ 設 立 か ら 3 年 後 の 1 9 4 年9 に は
︑ 自 社で の 技 術 開発 に 加 え て
︑テ ー プ レ コ ーダ ー の 重 要特 許 で あ っ た︑ 東 北 大 学 の永 井 博 士 が発 明 し た﹁ 交 流バ イア ス 法﹂ 特許 を買 収 し︑ 活 用 す ると い っ た よ うに
︑ 知 的 財産 と ビ ジ ネ スと を 積 極 的 に連 動 さ せ た活 動 を 創 立 期か ら 行 っ て きて い ま す
︒ デ ジ タ ル 化 と 知 的 財 産 戦 略 近 年
︑エ レ ク ト ロ ニク ス 産 業 にお い て は
︑ 時代 が ア ナ ロ グか ら デ ジ タル へ と 大 き く変 貌 を 遂 げ
︑ア ナ ロ グ 時代 で は 主 要 技術 と 製 品 と が一 対 一 で 対応 し て い た のに 対 し
︑ デ ジタ ル 時 代 では 製 品 に 搭 載さ れ る 技 術 が多 様 化
︑ 高度 化 し ま し た︒ 結 果 と し て一 社 で は 製品 に 必 要 な 全 て の 技 術 開 発 を 行 う こ と は
︑ そ の 開 発の 要 求 す る 規模 や ス ピ ード の 観 点 か らも
︑ ほ ぼ 不 可能 と な っ たと 言 っ て も 過 言 で は な い で し ょ う
︒ ま た
︑ デ ジ タ ル化 に よ っ て 技術 の モ ジ ュー ル 化 が 加 速し
︑ キ ー コ ンポ ー ネ ン トを つ な ぎ 合 わせ れ ば
︑ 完 成品 の 生 産 が可 能 と な り
︑半 導 体 と ソ フト ウ ェ ア 技術 の 進 歩 と あい ま っ て
︑ 製品 の コ モ ディ テ ィ 化 が 急速 に 進 み ま した
︒ 90 年 代後 半 以 降 は︑ 技 術 が デ ジタ ル 化 に 加 えて ネ ッ ト ワー ク 化 へ と 大き く 進 む こ と に よ り
︑ I T
︑ 家 電
︑ 通 信
︑ 放 送 と い っ た 業 界 の 垣 根 が 溶 融 し て
︑ ビ ジ ネ スを 形 成 す る エコ
・ シ ス テム が 激 変 し てい ま す
︒ 結 果︑ 一 つ の 製品 や サ ー ビ スに 対 し て 異 なる ビ ジ ネ スモ デ ル を 持 ち︑ 異 な る 利 害関 係 を 有 する 者 が 多 数 関与 す る こ と とな り
︑ 競 争環 境 は 一 層 複雑 化 し て い ます
︒ 知 的 財産 の 観 点 か らも
︑ 競 争 力
・収 益 源 と すべ き
差異 化 技 術 を特 定 し
︑ 必 要な 知 的 財 産 権を 確 保 す ると 同 時 に
︑ 汎用 技 術 の 積 極的 採 用 に より 開 発 効 率
︑開 発 ス ピ ー ドを 追 求 し
︑商 品 競 争 力 を維 持 す る こ とが ま す ま す重 要 に な っ てい ま す
︒ 昨 今 の 課 題 技 術 の 複 雑化 に よ る モ ジュ ー ル 化 の 進展
︑ オ ー プン イ ノ ベ ー ショ ン に み ら れる 開 発 手 法の 変 化 は
︑ 技術 標 準 の 重 要性 を ま す ます 高 め て い ます
︒ 一 つ の 製品 に 組 み 込ま れ る 不 可 欠特 許 の 数 が 万の 位 に な るよ う な
﹁ 特 許の 藪
﹂ と い われ る 特 許 件数 の 急 増 が 現出 し て い ま す︒ 産 業 構 造の 変 化
︑ 及 び競 争 激 化 に よる 事 業 再 編に 伴 い
︑ 特 許権 の 流 通 が 活発 化 し た こと に よ っ て
︑流 通 特 許 の 権利 行 使 に 多額 の 資 金 が 投資 さ れ
︑ 一 種 の 金 融 商 品 の よ う に 扱 わ れ
Practicing Entity
︑Non
︵ N P E
︑ い わ ゆ る
Patent Troll
︶ と い う 産 業 を 生 み 出 す に 至 っ て いま す
︒ 特 許 権の 行 使 自 体 は
︑ 現 在 の 特許 法 上 は 正 当な 行 為 と 言 え ま す
︒ 一 方︑ N P E に 限ら ず
︑ 事 業 を 前 提 と し ない 特 許 権 の 行使 は
︑ エ レ クト ロ ニ ク ス産 業 に お け る事 業 活 動 に 少な か ら ざ る影 響 を 及 ぼ して い る こ と も事 実 で す
︒現 在 の 特 許 シス テ ム の 限 界が 顕 在 化 して い る と 言 えま す
︒ こ の よ う なビ ジ ネ ス 環 境の 大 き な 変 化の 中 で
︑ 将来 の 競 争 力 を確 保 す る 為 に︑ 技 術 開 発を 支 え て い く強 力 な 知 財 戦略 を 進 め なく て は な ら ない と 考 え ま す︒ 技 術 を 知的 財 産 と い うア セ ッ ト に して 活 用 し
︑ビ ジ ネ ス の 競争 力 の 源 泉 にで き る か どう か が 最 も 重要 な こ と で ある と 考 え ます
︒ 知 的 財 産 研究 所 に は
︑ 引き 続 き
︑ 知 的財 産 法 制 度の 基 礎 的 か つ実 証 的 調 査 研 究 を 通 じ 各 界 を 有 機 的 に 結 び 付 け
︑ 激動 す る 経 済︑ ビ ジ ネ ス
︑技 術 環 境 の 変化 に 対 応 した 知 的 財 産 法制 度 の 実 現 への 貢 献 を 期待 し て お り ます
︒
巻 頭 言
現代 中 国 の知 的 財 産 権に 関 す る法 体 系 は1 9 8 0
〜 1 9 9 0 年 代 に 確 立 さ れ た
︒ そ の 内
︑ 商 標 法 は 1 98 3 年
︑特 許 法 は1 9 8 5 年︑ 著 作 権法 は 1 9 9 年1 か ら 施行 さ れ てお り
︑ そ の後
︑ 1 99 2 年 に 特 許法 と 商 標法
︑ 1 99 3 年 に 不正 競 争 防止 法 が 改 正 さ れ た
︒ 2 0 0 1 年 12 月
︑ 中 国 は 世 界 貿 易 機 関
︵ WT O
︶ に 加盟 し た が︑ そ の 前の 2 0 0 年0
8 月
︑ T R I P S 協 定 の 要 求 に 従 う 形 で 特 許 法 を 改 正 し
︑ 20 01 年10 月に 著作 権法 と 商標 法も 改正 して いる
︒ W
T O 加 盟 後
︑ 中 国 国 内 の 社 会 経 済 情 勢 は 大 き く 変 化 し た
︒ 1 9 7 8 年 に 改 革 開 放 政 策 が 始 ま る と
︑ 中 国 は 自 国 の 豊 富 な 資 源 と 海 外 か ら の 投 資 を 利 用 し て
︑ 世 界 を 驚 か す ほ ど の 経 済 建 設
・ 社 会 発 展 を 遂 げ た が
︑ そ れ に 伴 い W T O 加 盟 後 に は
︑ よ り 激烈 な 国 際経 済 競 争に 直 面 す るこ と と なっ た
︒ 産 業 の 革 新
︑ 労 働 集 約 型
・ 資 源 消 費 型 の 産 業 の 転 換
︑ 自 国 の 根 源 的 競 争 力 の 速 や か な 向 上 を 迫 ら れ る こ と と な っ た
︒ 産 業 を 革 新し 根 源 的な 競 争 力 を強 化 す るた め
︑ 産 業の 研 究 開 発力 を 更 に強 化 し
︑ それ に 合 わせ て 管 理 レベ ル を 大 幅に 向 上 させ る こ とが 必 要 と なっ た
︒ 技 術革 新
︑ 次 世代 製 品 やサ ー ビ スの 開 発
︑ 製品 品 質 と サー ビ ス ク オリ テ ィ ーの 絶 え 間な い 向 上 も目 指 さ ね ばな ら な く なっ た
︒ 言い 換 え れば
︑ 中 国 経済 が 産 業 の革 新 に よ り︑ 更 に 高い ス テ ージ に 上 れ るか は
︑ 人 間の 両 腕 や天 然 資 源 では な く
︑人 間 の 頭 脳と そ れ に 相応 す る 知的 活 動 の 成果 に 依 存す る よ うに な っ た と いう こ と であ る
︒ 中 国は こ れ を契 機 に
︑新 し い タ イ プの 国 家 建設
・ 革 新 のた め の 戦略 目 標 を提 起 し
︑ そ れら に 必 要な 活 動 と して
︑ 知 的活 動 成 果の 保 護
︑ 特 に知 的 財 産 権 制度 の 構 築 を重 視 す る こ とと な っ た
︒ こ の よ うな 背 景 の 下︑ 中 国 は2 0 0 年4 末 に 国 家
知 的 財産 権 戦 略の 制 定 を行 い
︑ 国 務院 の 28 の 部と 委 員 会
︑ 中 国 科 学 院
︑ 中 国 工 程 院
︑ 中 国 社 会 科 学 院
︑ 最 高 人民 法 院
︑ 最高 人 民 検察 院 は 20 のサ ブ テ ーマ に つ い て真 摯 な 検 討に 着 手 し︑ そ れ を 基に
﹃ 国 家知 的 財 産 権戦 略 ガ イ ドラ イ ン
﹄を 起 草 した
︒ 2 0 08 年 4 月 日9
︑ 国 務 院の 会 議 にお い て
﹃国 家 知 的 財産 権 戦 略 ガイ ド ラ イ ン﹄ が 原 則的 に 批 准さ れ
︑ 2 00 8 年
6 月5 日 に 公 布さ れ
︑ 各階 層 の 行政 機 関 に 対し 鋭 意 実 施 する よ う 要 請 がな さ れ た︵ 注 1
︒︶
こ れと 時 を 同 じく し て
︑中 国 の 行 政機 関 及 び立 法 機 関 も︑ 特 許 法
︑商 標 法
︑著 作 権 法 の改 正 作 業を 開 始 し た︒ 特 許 法 の改 正 案 は2 0 0 年8 12 月 に 全国 人 民 代 表大 会 常 務 委員 会 を 通過 し
︑ 2 00 9 年 月10 に 施 行予 定で ある
︵ 注 2
︒︶
現在
︑ 国家 工商 行政 総局 が商 標 法 の改 正 草 案 を積 極 的 に準 備 中 で あり
︑ 国 家著 作 権 局 で も 2 0 0 7 年 に 著 作 権 法 に 関 す る 改 正 作 業 に 着 手 し て い る
︒ 商 標 法 と 著 作 権 法 の 改 正 作 業 は 2 0 1 年1 ま で に 完 了す る 見 込 みで あ る
︒ 今 回の 特 許 法
︑商 標 法
︑著 作 権 法の 改 正 に は特 別 な 意 味が あ る
︑ とい う の が中 国 の 学界 に お け る大 方 の 見 解で あ る
︒ なぜ な ら 中国 は 1 99 2 年 に 特許 法 を 改 正 し
︑ ベ ル ヌ 条 約 と 万 国 著 作 権 条 約 に 加 盟 し
︑ 1 9 9 3 年 に は 不 正 競 争 防 止 法 を 制 定 し て き た が
︑ こ れ らは す べ て 知的 財 産 権に 係 る 米中 間 の 対 立を 発 端 に 進め ら れ たも の で あ り︑ 2 0 00 年 の 特許 法 改 正
︑ 20 0 1 年の 商 標 法 と著 作 権 法の 改 正 も︑ W T O へ の加 盟 の 前に 行 わ れ てい る
︒ 今回 の 特 許法
︑ 商 標 法
︑著 作 権 法に 対 す る 改正 は
︑ 外的 圧 力 がな い に も 拘 わら ず 行 われ た も の であ り
︑ これ に 伴 い︑ 中 国 の立 法︑ 行政
︑司 法機 関や 関連 の専 門家
・研 究 者も
︑ 主 に 社会 経 済 の発 展 に おい て 発 生 して い る 問題 に 対 し
︑ 特許 法
︑ 商標 法
︑ 著作 権 法 の 改正 に 関 する 一 連 の 提 案を 行 っ て い るか ら で あ る︒ 以 下 に
︑ 主 に 特 許 法 の 改 正 状 況 に つ い て 紹 介 し
︑ 商 標 法と 著 作 権法 に お いて 改 正 す べき い く つか の 問 題 点 を簡 単 に 説 明 させ て い た だく
︒
Ⅰ
法 改 正 の 背 景
中国は、WTO加盟後、国際的にも国内的にも多くのチャレンジを行ってきた が、さらに産業レベルの向上を急務としている。このため、イノベーション国 となるための解決策を提唱して、2008年6月に「国家の知的財産戦略のアウ トライン」を制定した。一方、イノベーション国となる基礎として、知的財産 法を改正してきた。2008年12月に特許法の改正が通過し、いくつかの新 しい条項、例えば、絶対的新規性基準、遺伝資源出所の開示義務、公知技術の 抗弁と並行輸入許可及び試験又は研究の例外等が追加された。さらに、商標 法、著作権法、および不正競争防止法の改正も準備されており、近い将来、通 過予定である。中国が、外的圧力に依らず、社会・経済の発展のためだけに、
知的財産法を改正することは、今回が初めてのことであると言われている。
李 明徳
(Li Mingde)
中国社会科学院知的財産権センター
国 家 知的 財 産 権局 で は 早 くも 2 0 04 年 末 に特 許 法 の 改 正作 業 に 着手 し て い る︒ 2 0 05 年
4 月︑ 特 許 法 改 正中 に 生 じる 可 能 性 のあ る 一 連の 重 要 問題 に つ い て
︑国 家 知 的財 産 権 局 は検 討 課 題を 社 会 に向 け て 公 表 し
︑ 社 会 各 界 に お い て 検 討 を 行 わ せ て い る
︒ 国 家 知 的財 産 権 局で は 関 連の 研 究 課 題を 総 括 し︑ そ れ をベ ース に特 許法 改 正案 の審 議用 草稿 を作 成し て︑ 2 0 0 年7 初 頭 に国 務 院 に提 出 し
︑ その 後
︑ 国務 院 法 制 弁 公室 で も 審議 用 草 稿を 社 会 の 多く の 市 民に 公 開 し 広く 意 見 を 求め
︑ 意 見を 取 り ま とめ た 上 で特 許 法 改 正案 を 作 成 した
︒ 2 00 8 年 月7
︑ 国 務 院会 議 は 特 許法 改 正 案 を全 国 人 民代 表 大 会常 務 委 員 会に お け る 審 議 に 提 出 し た
︒ 新 た に 改 正 さ れ た 特 許 法 は 2 0 0 年9 10 月 19 日 に施 行 さ れ る 予定 で あ る
︒ 次 に
︑特 許 法 改正 に お け るい く つ かの 重 要 な問 題 点 を 一 つ ずつ 簡 単 に 紹介 す る
︒
1.
中 国 に お い て 完 成 さ れ た 発 明 や 実 用 新 案 を 国 外 で 特 許 出 願 す る 場 合 の 手 順
従 来 の特 許 法 第20 条 で は
︑中 国 の 企業 や 個 人が 国 内 で 完 成 し た 発 明 創 造 を 海 外 で 特 許 出 願 す る 場 合
︑ 先 に 中 国で 特 許 出願 し な け れば な ら ない と さ れて い た
︒ こ れは 主 に
︑特 許 機 関 にお け る 初歩 的 審 査に お い て
︑ 中国 国 内 で完 成 さ れた 発 明 創 造が 国 家 の安 全 と 公 共 の利 益 に 重大 に 関 わっ て い る か︑ 機 密 とし て 保 護 が 必 要 で あ る か と い う 判 断 を 行 う た め で あ る
︒ し か し
︑こ の 条 項で は 外 国企 業 や 個 人が 海 外 で特 許 を 出 願 する 場 合
︑中 国 に おい て 特 許 をま ず 出 願し な け れ ばな ら な い とは 規 定 して い な か った
︒ 外 国企 業 や 個 人が 中 国 で 完成 さ せ た発 明 創 造を 外 国 で 先に 特 許 を 出願 し て し まえ ば 機 密が 漏 洩 する 可 能 性 があ っ
た︒ こ の 点 につ い て
︑新 た な 特 許法 改 正 では 機 密 保持 審査 に 関 する 規 定 を行 っ て い る︒ 規 定 では
︑ い かな る企 業 や 個人 も 中 国で 完 成 し た発 明 や 実用 新 案 を海 外で 特 許 出願 す る 場合
︑ ま ず 国務 院 特 許行 政 部 門に よ る 機 密 保持 審 査 を経 な け れ ばな ら な い︑ 機 密 保持 審 査 の 手 順︑ 期 限 等は 国 務 院の 規 定 に 準拠 す る
︑と し て い る
︒注 意 し なけ れ ば なら な い の は︑ こ こ で所 謂
﹁ い か なる 企 業 や個 人
﹂ とは
︑ 中 国 の企 業 や 個人 の 他
︑ 外 国企 業 や 個人 も 含 まれ る こ と であ る
︒ 同時 に
︑ 中 国 の企 業 や 個人 で あ れ︑ 外 国 企 業や 個 人 であ れ
︑外 国で 先に 特許 を出 願す るこ とは 可 能で ある が︑ そ れ に は 機密 保 持 審査 を 通 過し な け れ ばな ら な いこ と に な る
︒ ま た
︑ 国 務 院 が 公 布 す る 関 連 法 規 で は
︑ 機 密 保 持審 査 の 手 順と 期 限 等の 問 題 が規 定 さ れ るは ず で あ る
︒ こ の 一条 項 に つ いて は
︑ 当初
︑ い かな る 企 業 や個 人 も 中 国で 完 成 し た発 明 創 造で あ れ ば︑ ま ず 中 国で 特 許 を 出願 す る こ とと し
︑ その 後
︑ 海外 で 特 許 を出 願 す る こと が で き る︑ と す べき だ と いう 意 見 が あっ た が
︑ その 意 見 は︑ 多 く の 多国 籍 企 業の 反 対 に遭 っ た
︒ そ の 後
︑ 国 務 院 が 提 出 し た 草 案 で は
︑﹁ い か な る 企 業 や 個 人 も 中 国 で 完 成 し た 発 明 創 造 に つ い て
︑ 先 に 海 外で 特 許 を出 願 す る には
︑ 特 許行 政 部 門の 承 認 を 受 けな け れ ばな ら な い
﹂と 変 更 され
︑ 最 終的 に 全 国 人 民 代 表 大 会 常 務 委 員 会 を 通 過 し た 段 階 で は
︑
﹁ 機 密 保 持 審 査 を 受 け る こ と
﹂ に 修 正 さ れ
︑ 機 密 保 持 審 査 の手 順 と 期限 に つ いて 原 則 的 な規 定 が 設け ら れ た
︒ こう し て
︑外 国 企 業と 個 人 の 懸念 は 最 小限 に 抑 え ら れる こ と と な った
︒
2.
既 存 の 技 術 と 既 存 の 設 計 の 範 囲 の 拡 大
従 来 の 特 許法 第 22 条の 規 定 によ る と
︑ 発明 特 許 と 実用 新 案 特 許で は
︑ 既存 技 術 とは 出 願 以 前に 国 内 外 の出 版 物 で 公開 発 表 され た こ との あ る 技 術と 国 内 で
Ⅱ
特 許 法 改 正 の 概 要
公 知
・公 用 の 技 術で あ り
︑海 外 で 公 知・ 公 用 の技 術 は 含 まれ て い な かっ た
︒ 新規 性 に つ いて 言 え ば︑ こ れ は 相対 的 新 規 性の 基 準 に属 す る
︒然 る に
︑ 欧州 特 許 条 約や 日 本
・ 韓国 等 の 多く の 国 々で は
︑ す でに 特 許 法 では 絶 対 的 新規 性 の 基準 が 規 定さ れ て い る︒ ま た
﹁ 既存 の 技 術
﹂の 範 囲 を﹁ 国 内 外の 出 版 物 で公 開 さ れ てお り
︑ 国 内外 で 公 知・ 公 用 の技 術
﹂ に 拡大 し て い る
︒ ま さに こ の よ うな 背 景 の下
︑ 今 回の 特 許 法 改正 が 行 わ れ︑ 中 国 でも 絶 対 的 新規 性 の 基準 を 定 める と と も に
︑﹁ 既 存 技 術
﹂ の 範 囲 を
﹁ 出 願 日 ま で に 国 内 外 で 公 衆が 知 っ てい た 全 て の技 術
﹂ とい う 概 念に 拡 大 し た
︒こ れ に 伴い
︑ 創 造 性を 判 定 する 既 存 技術 の 範 囲 も 変更 さ れ た︒
﹁ 既 存 技術
﹂ の 範囲 が 拡 大 すれ ば
︑ 発明 特許 権と 実用 新案 の特 許権 の授 権基 準も 上 がり
︑ 特 許 権の 質 を 確 保 する 上 で 有 利と な る
︒ こ の他
︑ 従 来の 特 許 法第 23 条 で は
︑外 観 デ ザイ ン 特 許 につ い て
︑ 既存 の デ ザイ ン に は
︑出 願 日 まで に 国 外 で公 知
・ 公 用の 外 観 デザ イ ン は含 ま れ て いな か っ た
︒今 回 の 特 許法 改 正 では
︑ 既 存の デ ザ イ ンに は 出 願 日ま で に 国 外で 公 知
・公 用 の 外観 デ ザ イ ンを 含 む
︒ 今回 の 特 許 法改 正 に より
︑ 外 観デ ザ イ ン 特許 権 を 付与 され る ため の新 規性 と創 造性 の基 準が 変わ り︑ 外 観デ ザイ ン の特 許権 の質 向上 に利 する もの であ る︒
3.
遺 伝 資 源 の 出 所 の 開 示 義 務 の 法 制 化
バ イオ エ ン ジ ニア リ ン グ技 術 の 飛 躍的 な 発 展に 伴 い
︑ 遺伝 資 源 は 貴重 な 資 産と な っ て いる
︒ 多 くの バ イ オ 技術 に 関 す る発 明 も 一定 の 遺 伝資 源 に 基 づき 完 成 さ れて い る
︒ これ に つ いて
︑ イ ンド で は
︑ 遺伝 子 資 源 の出 所 に つ いて 開 示 義務 を 規 定し た 特 許 法の 改 正 を 行っ て い る
︒中 国 の WT O 加 入後
︑ 学 界 では 遺 伝 資 源や 伝 統 的 知識
︑ 民 間文 芸 を いか に 保 護 する か に つ いて の 議 論 が十 分 な され て き た︒ 一 般 に
︑中 国 は 遺 伝資 源
︑ 伝統 的 知 識
︑民 間 文 芸に 優 れ てい る の
で
︑ 法 的 に 保 護 を 加 え る べ き だ と 考 え ら れ て い る
︒ 当 然
︑ こ の よ う な 保 護 で は 遺 伝 資 源
︑ 伝 統 的 知 識
︑ 民 間 文 芸を 知 的 財産 権 の 主 題と し て 保護 す る こと は 容 易 で はな く
︑ 利益 分 与 の面 か ら あ る程 度 の 保護 が な さ れ て いる
︒ ま さ にこ の よ うな 背 景 の下
︑ 中 国 は特 許 法 改正 に お い て
︑出 所 の 開示 と い う面 か ら 遺 伝資 源 と 伝統 的 知 識 の 保護 を 模 索し た の であ る
︒ 即 ち︑ 特 許 出願 案 件 の 技 術発 明 が もし 遺 伝 資源 や 伝 統 的知 識 を 基に 完 成 さ れた も の で ある と す れば
︑ 出 願 者は 出 所 を開 示 す る 義務 を 負 わ なけ れ ば なら な い
︑ とい う こ とで あ る
︒ 開示 義 務 に 関連 す る 場合
︑ あ る種 の 利 益 分与 の 手 続 きが な さ れ る︒ し か し︑ 国 務 院法 制 弁 公 室に お け る 検討 の 過 程 で︑ 伝 統 的知 識 の 範囲 は 比 較 的曖 昧 で あ り︑ 実 際 の 作業 上 の 混乱 が 起 き易 い と い う意 見 が 非 常に 多 か っ た︒ そ し て︑ 最 終 的に 全 人 代 常務 委 員 会 に提 出 さ れ た審 議 用 草案 の 中 では
︑ 遺 伝 資源 の 出 所 の開 示 義 務の み が 残 され た の であ る
︒ 新し い 特 許 法 第 25条 で は
︑遺 伝 資 源 によ り 完 成し た 発 明創 造 の場 合︑ 出願 者は 特許 出願 書 類で その 遺伝 資源 の直 接 の出 所と 元の 出所 を明 記し な けれ ばな らず
︑出 願者 が 元の 出所 を明 記で きな い場 合 は︑ その 理由 を陳 述し な け れ ば なら な い
︒出 願 者 が 開示 義 務 を果 た さ ない 場 合
︑特 許 権は 付与 さ れな いか
︑無 効 が宣 告さ れ る︒
4.
外 観 デ ザ イ ン に 関 す る 改 正
中 国 の特 許 法 では
︑ 発 明 と実 用 新 案に 対 す る特 許 権 の 他
︑外 観 デ ザイ ン に つ いて も 特 許権 を 付 与し て い る
︒ 中国 の 技 術革 新 能 力 が相 対 的 に低 い 状 況に お い て
︑ 外観 デ ザ イン の 特 許 出願 に つ いて 実 体 審査 を 行 っ て いな か っ たた め
︑ 外観 デ ザ イ ン特 許 の 数が 急 激 に 増 加 し て い た
︒ 今 回 の 特 許 法 の 改 正 に 当 た り
︑ 審 査 と 司法 の 実 務で 生 じ た問 題 を ベ ース と し て多 く の 改 正 が行 わ れ た
︒ ま ず
︑主 に 標 識の 機 能 を持 つ 平 面 図案 が 排 除さ れ た
︒ 過 去に 特 許 の出 願 さ れた 外 観 デ ザイ ン の 内︑ 包
装用 袋
︑ 包装 用 箱
︑ 瓶ラ ベ ル とい っ た 類の 平 面 デ ザ イン が 相 当数 を 占 め てお り
︑ 厳密 に 言 えば
︑ そ れ ら の 多 く は
﹁ 工 業 用 外 観 デ ザ イ ン
﹂ に は 程 遠 か っ た
︒ この よ う な﹁ 外 観 デザ イ ン
﹂ に特 許 権 を付 与 し てし まえ ば
︑ 外観 デ ザ イン の 特 許 権が 工 業 品の 美 観 向上 に与 え る 意義 を 大 きく 減 じ て しま う こ とに な る
︒事 実
︑ こ の 種の 平 面 デザ イ ン は 著作 権 法 を通 じ て 保護 さ れ る こ とも 可 能 であ る し
︑ 識別 性 と いう 機 能 を備 え て い れ ば商 標 法 もし く は 不正 競 争 防 止法 に よ って 保 護 す る こと も 可 能な の で ある
︒ こ の よう な 状 況に 鑑 み
︑ 新 たに 改 正 され た 特 許法 第 25 条 で は﹁ 平 面 印 刷品 の 図 案
︑色 彩 も しく は そ れら が 結 合 して 作 ら れ た︑ 主 に 標 識の 機 能 を果 た す デザ イ ン に 対し
﹂ 特 許 権は 付 与 し ない と し てい る
︒ 明ら か に
︑ これ は 比 較 的 厳 格 な
﹁ 工 業 品
﹂ の 外 観 デ ザ イ ン と い う 面 か ら
﹁ 平 面
﹂ の
︑ 主 に 標 識 の 役 割 を 果 た し て い る 外 観 デ ザイ ン を 排除 す る も ので あ り
︑そ れ に より 外 観 デ ザ イン の 特 許権 が
﹁ 工 業品
﹂ の 美観 向 上 にプ ラ ス に 働 くと 思 わ れ る
︒ 次 に
︑ 外観 デ ザ イ ンの 特 許 権の 授 権 基準 が 向 上 し た︒ 従 来 の特 許 法 の 規定 で は
︑特 許 権 を付 与 す る 外 観デ ザ イ ンは
︑ 既 存 の外 観 デ ザイ ン と 同一 も し く は 類似 で あ って は な ら ない
︑ と され て い た︒ こ の こ と は
﹁ 独 創 性
﹂ に 近 い
︑ 比 較 的 低 い 授 権 基 準 で あ る
︒ この 基 準 によ れ ば
︑既 存 の デ ザイ ン を 模倣 し た 外観 デザ イ ン や既 存 の デザ イ ン を 寄せ 集 め て形 作 っ た外 観デ ザ イン も︑ 既存 の外 観デ ザイ ンと 同一 で はな い︑ もし く は 類似 し て いな い こ と によ り 特 許権 を 取 得す る こ と が でき る
︒ この よ う な 状況 に 鑑 み︑ 新 た に改 正 さ れ る 特許 法 第 25 条の 規 定 では
︑ 特 許 権を 付 与 す る外 観 デ ザ イン と 既 存の デ ザ イン も し く は既 存 の デ ザイ ン の 組 み合 わ せ の特 徴 を 比較 す る と
︑明 ら か な 差が あ る
︒ これ は 発 明特 許 と 実用 新 案 特 許の
﹁ 創 造 性﹂ の 基 準 に相 当 し
︑外 観 デ ザイ ン の 創 造性 レ ベ ル 向上 に 有 益 で ある
︒ こ の 他
︑新 た に 改 正さ れ る 特許 法 で は︑ 外 観 デ ザ
イ ン 特許 権 侵 害 訴訟 の 検 索制 度 を 定め て い る
︒中 国 の 特 許法 の 規 定 では
︑ 外 観デ ザ イ ン特 許 の 出 願で は 実 体 審査 は 行 わず
︑ 形 式 的要 件 さ え満 た し てい れ ば 権 利 を取 得 で きる
︒ そ の ため
︑ 外 観デ ザ イ ンと し て 特 許 権を 取 得 して も
︑ そ の権 利 は あま り 安 定し て い な い
︒も し 外 観デ ザ イ ン の特 許 権 者が 頻 繁 にこ の よ う な 権利 を 行 使す る の で あれ ば
︑ その 他 の 市場 関 係 者 の 合理 的 利 益を 害 す る 可能 性 が ある
︒ こ のよ う な 状 況 に 鑑 み
︑ 新 た に 改 正 さ れ た 特 許 法 第 61 条 で は
︑ 外 観 デザ イ ン に 係る 特 許 権侵 害 紛 争 では 人 民 法院 も し く は特 許 管 理 機関 が 特 許権 者 も しく は 利 害 関係 者 に 対 し︑ 国 務 院 特許 行 政 部門 に よ る外 観 デ ザ イン の 検 索
︑分 析
︑ 評 価の 結 果 の特 許 権 評価 報 告 の 提出 を 求め
︑ それ を特 許 権侵 害紛 争の 審理 と処 理の ため の証 拠と す るこ とが 定 めら れた
︒こ れは
︑既 存の 実用 新案 の 検索 制 度を 外観 デ ザイ ンに 拡 大し たも の であ る︒
5.
強 制 許 可 の 規 定 の 整 備
中 国の 特 許 法 では 特 許 権濫 用 防 止 のた め の 強制 許 諾
︑ 公共 の 利 益 のた め の 強制 許 諾 と 特許 に 依 存す る 強 制 許諾
︵ 特 許 法第 48 条 から 第 50 条
︶を 規 定 して い る
︒ 今回 の 特 許 法改 正 で も︑ 三 種 類 の強 制 許 諾が 規 定 さ れた
︒ 第 一 に︑ パ リ 条約 を 根 拠と す る 関 連規 定 で
︑ 特許 権 者 は 特許 権 を 付与 さ れ た日 か ら 満 年3 が 経 過 し︑ 且 つ 自 ら特 許 を 出願 し た 日か ら 満 4 年が 経 過 し てい る が
︑ 正当 な 事 由も な く その 特 許 を 実施 し て い ない
︑ も し くは 十 分 に実 施 し てい な い 場 合︑ 強 制 許 諾が 可 能 で ある こ と が明 文 化 され た
︒ 第 二に W T O の﹃ T R PI S 協 定 と公 衆 の 健康 に 関 する 宣 言 第
6 パ ラ グ ラ フ に 対 す る 決 議
﹄ に よ り
︑﹁ 公 衆 の 健 康 を 目的 に
︑ 特許 権 を 取 得し た 薬 品に 対 し
︑国 務 院 特 許 行政 機 関 はそ の 製 造 と中 華 人 民共 和 国 が加 盟 し て い る国 際 条 約の 規 定 に 合致 す る 国も し く は地 域 へ の 輸 出の 強 制 許諾 を 与 え るこ と が でき る
﹂ と規 定 し て い る︒ 第 三 にT R I P 協S 定 の 半導 体 技 術に 関 す る 強 制許 諾 の 要求 に 基 づき
︑ 強 制 許諾 に 係 る発 明 創
造 が 半導 体 技 術 であ る 場 合︑ そ の 実 施は 公 共 の利 益 を 目 的と し 非 合 法的 な 独 占が あ っ た 場合 に 限 る︑ と 規 定 さ れた
︒ 特 許技 術 の 強 制許 諾 は これ ま で ずっ と 大 き な論 争 を 呼 んで き た 問 題で あ り
︑そ の 改 正に つ い て は外 国 企 業 や個 人 か ら 強い 関 心 が寄 せ ら れて い る が
︑基 本 的 な 事実 に 注 意 しな け れ ばな ら な い︒ 即 ち
︑ 中国 が 1 9 85 年 に 特 許法 を 実 施し て 以 来︑ こ れ ま で強 制 許 諾 の申 請 が な され た こ とは な く
︑特 許 行 政 管理 部 門 で もこ れ ま で強 制 許 諾 の申 請 を 一件 も 承 認し た こ と が ない
︒ 当 然︑ 今 回 の 特許 法 改 正以 降
︑ 強制 許 諾 の 申 請と 承 認 があ る の か を︑ 更 に 注視 し て いく 必 要 が あ る
︒
6.
公 知 の 技 術 の 抗 弁 と 並 行 輸 入 許 可 及 び 試 験 又 は 研 究 の 例 外 の 追 加
ま ず公 知 技 術 の抗 弁 に つい て 見 て みる
︒ 特 許出 願 の プ ロセ ス に お いて
︑ 出 願者 ま た は 審査 官 の 過失 に よ り
︑公 知 の 技 術が 特 許 権の 範 囲 に入 っ て し まう 可 能 性 があ る
︒ も し特 許 局 が﹁ 特 許 権﹂ を 付 与 して い る こ とを 理 由 と して
︑ 関 連す る 公 知技 術 を 他 者に 使 用 さ せな い と か
︑甚 だ し い場 合 に は他 者 に よ る権 利 侵 害 で あ る と 判 断 す る の は
︑ 極 め て 不 公 平 で あ る
︒ こ の よう な 状 況に 鑑 み
︑ 中国 の 法 院は 特 許 権 侵害 訴 訟 に お い て
︑ 公 知 技 術 の 抗 弁 を す で に 認 め て お り
︑ か つ それ を 権 利侵 害 と は みな さ な いと い う 判決 を 下 し て いる
︒ 今 回の 特 許 法 改正 に お いて
︑ 第 62 条の 規 定 を 追加 し た の は︑ 特 許 権侵 害 紛 争 にお い て
︑権 利 侵 害 を訴 え ら れ た側 が 実 施し て い る技 術 も し くは 設 計 が 既存 技 術 も しく は 既 存の 設 計 に属 す る も ので あ る と いう 証 拠 を 有す る 場 合︑ 特 許 権侵 害 を 構 成し な い た めで あ る
︒ この 点 は 法院 の 現 行の ス タ ン スが 肯 定 さ れて い る が
︑そ の 一 方で 特 許 行政 機 関 が 類似 の 事 案 を処 理 す る 際に も
︑ 明ら か な 公的 根 拠 の 提示 が 必 要 と され る こ と にな っ た わ け であ る
︒ 次 に︑ 並 行 輸 入の 許 可 を見 て い く︒ T R I PS 協
定に お い て︑ 加 盟 国 が知 的 財 産権 の 権 利消 尽 に つ い て自 ら 決 定で き る と いう 問 題 には
︑ 特 許製 品
︑ 商 標 製品
︑ 著 作権 製 品 の 並行 輸 入 の許 可 を する か 否 か と いう 点 が 含ま れ て いる
︒ し か し︑ 中 国 の特 許 法 はこ の問 題 に 対す る 明 確な 規 定 を 定め て お らず
︑ 理 論面 でも 実 務 面に お い ても
︑ 通 常
︑特 許 製 品の 並 行 輸入 は法 的 に は許 さ れ ない と 考 え られ て き た︒ 今 回 の特 許法 改 正 では こ の 問題 に 対 す る明 確 な 回答 が な され た
︒ 新 特 許法 第 63 条 では
︑ 特 許製 品 も し くは 特 許 の 方法 に よ り 直接 得 ら れた 製 品 は︑ 特 許 権 者も し く は 特許 権 者 か ら許 可 さ れた 企 業 や個 人 が 販 売後
︑ 当 該 製品 を 使 用
︑販 売 許 諾︑ 販 売
︑輸 入 す る こと は 権 利 侵害 に は 当 たら な い とし て い る︒ そ の
﹁ 当該 製 品 の 輸出
﹂を 権利 侵 害に は当 たら ない とし てい るこ とは
︑ 特許 製 品 の 並 行輸 入 を 許 可す る と い う こと で あ る
︒ 試 験 ま たは 研 究 の 例外 と は
︑医 薬 品 と医 療 用 機 器 の発 明 の 試験 ま た は 研究 の 例 外︑ 即 ち ボー ラ ー 例 外 を指 し て いる
︒ こ れ は医 薬 品 と医 療 用 機器 の 販 売 は 通常
︑ 国 の主 管 部 門 によ る 承 認を 得 る 必要 が あ る の で︑ あ る 程度 の 期 間 が必 要 な ため で あ る︒ も し 特 許 保護 の 要 件に 厳 格 に従 う の な らば
︑ 医 薬品 も し く は 医療 用 機 器の 特 許 権の 期 限 満 了後
︑ 他 者が 関 連 製品 を製 造 す るこ と を 許可 す る と いう こ と にな り
︑ 行政 主管 部 門 によ る 審 査を 経 て 販 売が 承 認 され れ ば
︑事 実上
︑ 特許 権の 保護 期限 が延 長さ れる 可能 性 があ る︒ この た め
︑多 く の 国の 特 許 法 では 他 者 が特 許 の 期限 満 了 ま で に︑ 試 験 活動 に 従 事 し︑ 行 政 機関 へ の 承認 申 請 を 行 うこ と を 許可 し て いる
︒ た だ し︑ 医 薬 品と 医 療 用 機 器の 販 売 は特 許 保 護期 限 が 満 了し て か らで な け れ ば なら な い
︒こ の 問 題に つ い て
︑新 た に 改正 さ れ た 特 許法 第 69 条 でも 規 定 され て い る
︒規 定 に よ ると
︑ 行 政 によ る 審 査承 認 に 必要 な 情 報 を提 供 す る ため に︑ 特許 医 薬品 や特 許医 療用 機器 の製 造︑ 使用
︑ 輸入 を 行 う 者や
︑ そ れら に 対 して 特 許 医 薬品 や 特 許 医療 用 機 器 の製 造 と 輸入 を 専 門に 行 う 者 は︑ 特 許 権 を侵 害 し た と は見 な さ れ ない
︒
新 たに 改 正 さ れた 特 許 では 医 薬 品と 医 療 用 機器 の 特 許 にお け る 試 験ま た は 研究 の 例 外を 定 め て はい る が
︑ これ に 係 る 医薬 品 と 医療 用 機 器の 特 許 保 護期 間 の 延 長に 関 す る規 定 は な い︒ 特 許 医薬 品 と 医 療用 機 器 が 販売 さ れ るま で に 同 じよ う に 行政 主 管 部門 の 審 査 承 認が 必 要 であ り
︑ 同 じよ う に ある 程 度 の期 間 が 必 要 であ る た め︑ 米 国 等 の特 許 法 では 医 薬 品と 医 療 用 機 器の 販 売 に対 す る 行 政審 査 が あり
︑ 特 許保 護 期 間 も 最 長 5 年 間 延 長 さ れ る こ と が 定 め ら れ て い る
︒ 中 国 の今 回 の 特許 法 改 正に お い て も︑ こ の 点が 一 部 の 人 々に よ っ て提 起 さ れた が
︑ 採 択さ れ る には 至 ら な か っ た
︒ 将 来
︑ 特 許 法 を 改 正 す る に あ た っ て は
︑ こ の 問題 が 絶 え ず 提起 さ れ る と予 測 さ れ る
︒ 以 上が 2 0 08 年 12 月 の特 許 法 改 正に お け るい く つ か の重 要 な 点 であ る
︒ この 他
︑ い くつ か 注 意す べ き 改 正点 が あ る
︒例 え ば
︑特 許 渉 外代 理 機 関 の規 定 が 取 り消 さ れ た こと や
︑ いず れ の 特許 代 理 機 関で も 外 国 人の 特 許 出 願の 代 理 を行 え る よう に な っ たこ と 等 で ある
︒ ま た
︑外 観 デ ザイ ン の 特許 製 品 の 許諾 販 売 権 が追 加 さ れ
︑こ れ に よっ て 発 明特 許 製 品 と実 用 新 案 型特 許 製 品 の違 い が 縮小 さ れ たこ と や
︑ 特許 権 侵 害 の法 廷 賠 償金 額 が 増 加し
︑ 最 高1 0 0 万人 民 元 と な った こ と も挙 げ ら れ る︒ 紙 幅 の関 係 で
︑こ こ で は 省 略 させ て い た だく
︒ 今 回の 特 許 法改 正 の 過 程で は
︑ さら に 若 干の 内 容 が 草 案に 加 え られ た が
︑ 各方 面 の 意見 に 相 違が あ っ た り︑ 議 論が 紛糾 した りし て削 除さ れた もの が ある
︒ 例 え ば︑ 特 許 再審 委 員 会 によ る 特 許権 の 効 力に 関 す る 決 定に 不 服 があ っ た 場 合に 関 し て︑ 行 政 訴訟 法 に よ る 提訴 や 民 事訴 訟 法 によ る 提 訴 にお い て
︑特 許 再 審 員 会の 性 質 や位 置 づ けの み な ら ず︑ 関 連 する 訴 訟 手 順 にも 言 及 され て い た︒ し か し 議論 が か なり 紛 糾 し た ため 削 除 され た
︒ また
︑ 既 存 の特 許 権 侵害 訴 訟 に お ける 時 効 は2 年 で ある
︒ 改 正 草案 で は 特許 権 者 が その 期 間 に 適時 に 訴 訟を 提 起 し なか っ た 場合
︑ 権 利 侵害 の 差 し 止め や 起 訴前 の 損 害賠 償 の 要 求は で き
な い
︑ とさ れ て いた
︒ こ の案 は あ ま りに 多 く の特 許 権 者 の関 心 を 集 めた た め
︑削 除 さ れ た︒ ま た
︑草 案 で は 特許 権 侵 害 の第 三 者 責任 や 間 接 的な 権 利 侵害 責 任 に つい て の 規 定が 盛 り 込ま れ て い たが
︑ 特 許法 で こ の 種の 内 容 を 規定 す る こと は 時 期 尚早 で あ ると の 意 見 が 多数 を 占 め た ため
︑ 削 除 され た
︒
1.
商 標 法 の 改 正 準 備
国 家 工商 行 政 管理 総 局 傘下 の 商 標 局で は 早 くも 2 0 0 年5 の 時 点 で商 標 法 改正 の 準 備 作業 に 入 って い た
︒ 商標 局 で は 修正 素 案 を提 出 す る と︑ 2 0 06 年 8 月に 専門 家や 研究 者 を招 集し た検 討会 を開 催し た︒ 本 稿の 執筆 者も 当 時の 検討 会に 参加 した 一人 であ る︒ 2 0 07 年
4 月
︑商 標 局 は更 に 意 見 公募 用 草 稿を 提 起 し︑ 一定 範囲 内 で関 係者 の意 見を 求め た︒ その 後︑ 様 々 な理 由 に よ り︑ 国 家 工商 行 政 管 理総 局 は 現在 ま で 商 標 法改 正 案 と して 発 表 し て いな い
︒ 前 述の よ う に
︑今 回 の 特許 法
︑ 商 標法
︑ 著 作権 法 に 対 する 改 正 は
︑中 国 の 知的 財 産 権 保護 に お ける 実 務 上 の問 題 を 解 決す る た めに 進 め られ て い る もの で あ る
︒こ の 点 か ら考 え る と︑ 商 標 法の 改 正 で は以 下 の い くつ か の 問題 点 に つ いて の 回 答が な さ れ るで あ ろ う
︒ 第 一に
︑ 大 量の 未 使 用 登録 商 標 をい か に 処 理す る か
︒ 中国 の 商 標法 は 登 録 主義 を 掲 げて い る た め︑ 商 標 は 登録 さ れ さえ す れ ば
︑全 く 使 用さ れ て い なく て も 商 標法 の 保 護を 受 け る こと が で きる
︒ 登 録 主義 が あ る ため
︑ 一 部の 企 業 が 登録 さ れ る可 能 性 の ある 商 標 を 大量 に 貯 め込 ん で
︑ 将来 的 な 利用 や 他 者へ の 譲 渡 の 備え と し てい る の で ある
︒ 2 00 1 年 の商 標 法 改 正 によ り
︑ 中国 で は 自 然人 で も 商標 の 登 録出 願 が
認 め ら れ るよ う に なる と
︑ 商 標を 使 わ ない ま ま 貯 め 込 ん で お く と い う 現 象 が 日 増 し に 深 刻 化 し て い る
︒ こ れを 経済 的利 益獲 得の 手段 とし てい る者 さえ い る︒ こ の 問 題 を解 決 す る手 段 の 一 つは
︑ 登 録主 義 の 堅持 を 前 提 と しな が ら も︑ 適 度 に 使用 主 義 も盛 り 込 むべ き で あ る と唱 え る 研究 者 も いる
︒ 具 体 的に は
︑ 全て の 商 標 登 録者 に 対 しそ れ を 使用 し て い ると い う 証拠 を 一 定 期 間内 に 提 出し て も らい
︑ 提 出 しな い 場 合に は 登 録 を抹 消 す る
︑と い う もの で あ る
︒だ が
︑ この よ う な 提案 が 商 標 主管 部 門 に受 け 入 れ られ る か 否か は 不 明 で ある
︒ 第 二 に︑ 混 同 の 可能 性 に 係る 権 利 侵 害基 準 に 関す る 明確 な規 定で ある
︒現 在︑ 中国 の商 標 法で は︑
﹁同 一 も し くは 類 似 の 商標 が 同 類も し く は 類似 の 商 品も し く は サー ビ ス に 用い ら れ てい る こ と
﹂と い う 商標 権 の 侵 害に 関 す る 基準 が 定 めら れ て いる が
︑ 商 標権 侵 害に おけ る混 同可 能性 の基 準は 定 めら れて いな い︒ 同 一 も しく は 類 似 の商 標 が 同類 も し くは 類 似 し た商 品 又 は サー ビ ス に用 い ら れ てお り
︑ 絶対 的 大 多 数の 状 況 下 で消 費 者 の混 同 を 招 く可 能 性 があ っ て も
︑必 ず し も い つ も 混 同 が 起 き る と は 限 ら な い
︒ 例 え ば
︑ ナ イ キ 商標 の 所 有者 は 米 国 の企 業 で ある が
︑ ス ペイ ン の ナ イキ 商 標 の所 有 者 は 他の 企 業 であ る
︒ ス ペイ ン の ナ イキ 商 標 の所 有 者 が 税関 保 税 区内 の 企 業 でテ キ ス タ イル 加 工 を行 う 場 合
︑確 か に 類似 の 商 標 が同 類 の 商 品に 用 い られ て い る こと に な るが
︑ そ れが 権 利 侵 害で あ る か否 か は 検討 の 余地 が あ る︒ 深 法院 は 既 存 の商 標 法 の規 定 に 基 づき
︑ 被 告の 権 利 侵害 を 判 定し
︑大 きな 論争 を引 き起 こし た
︵ 注 3
︒︶
こ れら の 衣類 は 保 税 区内 に あ り︑ 直 接 ス ペイ ン に 輸送 さ れ る わけ で
︑ 中 国国 内 で は販 売 さ れ 得な い た め︑ 中 国 に おい て 消 費 者の 混 同 を招 く は ず はな い の で︑ 権 利 侵 害で あ る と 認定 す べ きで は な い から で あ る︒ 多 く の 研究 者 は 更 に︑ 消 費 者が 混 同 する 可 能 性 の権 利 侵 害 基準 も 商 標 法に 盛 り 込む べ き であ り
︑ 同 一も し く は 類似 の 商 標が 同 類 も しく は 類 似の 商 品 に 用い ら れ て
坪 訓
い る だ け のこ と で は な いと 提 案 し た︒ 第三 に著 名商 標が 氾濫 して いる 問題 の 解決 であ る︒ 混 同 を 防ぐ と い う 面か ら 未 登録 の 著 名 商標 を 保 護す る に し ても
︑ 反 希 釈化 の 面 から 登 録 済 みの 商 標 を保 護 す る にし て も
︑ 全て 著 名 商標 の 認 定 に関 わ る 問題 で あ る
︒本 来
︑ 著 名商 標 を 認定 す る 目 的と は 紛 争の 解 決 で あり
︑ 事 案 毎に 有 効 とす る こ と を原 則 と すべ き で あ る︒ 然 る に
︑中 国 で は商 標 局 や商 標 評 定 審議 委 員 に より 著 名 商 標で あ る と認 定 さ れて も
︑ 法 院に よ り 著 名商 標 で ある と 認 定 され て も
︑商 標 所 有 者が そ れ を 広告 宣 伝 の種 に す る 理由 に な るの で あ る
︒近 年
︑ 一 部の 地 域 では 著 名 商 標の 定 義 を理 解 せ ず
︑行 政 や 司 法に よ る 著名 商 標 の 認定 を 奨 励す る と い う事 態 ま で 出現 し た ため
︑ 商 標 所有 者 の 多く に
﹁ い かな る 手 段 を尽 く し ても 著 名 商 標の 称 号 を得 た い
﹂ と考 え させ るほ どの セン セー シ ョン を引 き起 こし てい る︒ こ の た め︑ 一 部 の商 標 所 有 者は 提 訴 も惜 し ま ず︑ 著 名 商 標 とい う 肩 書き を 種 に 広告 宣 伝 を行 い
︑ 市場 に お け る 優位 を 勝 ち 取 ろう と し て いる の で あ る
︒ 大 ま かに 言 っ て︑ 紛 争 解決 の た め に著 名 商 標の 認 定 を 行 うこ と 自 体は 問 題 では な い
︒ 問題 は
︑ 著名 商 標 と し て認 定 さ れた こ と を︑ 広 告 宣 伝に 使 っ てよ い か と い う こ と と
︑ 行 政 機 関 が
︵ 著 名 商 標 の 認 定 を
︶ 奨 励し てよ いか と いう こと であ る︒ 一部 の研 究者 は︑ 商 標 法 に お け る 著 名 商 標 の 保 護 規 定 の 後 ろ に
︑﹁ こ れ に より 認 定 さ れた 著 名 商標 と し て の効 力 は 個別 事 案 に限 られ る﹂ と いう 一文 を付 け加 える べき であ り︑ それ と 同時 に︑ こ れを 補う 形で 必要 な法 律規 程や 実施 手順 に より
︑著 名 商標 であ るこ とを 広告 宣伝 の材 料に して は なら ず︑ 奨 励も 行っ ては なら ない とす べき だと 提案 し てい る︒ こ のよ うに すれ ば著 名商 標に 対し て理 性 的な 保護 や 認定 が行 える よう にな るで あろ う︒
2.
著 作 権 法 の 改 正 準 備
2 0 01 年 の 著 作権 法 改 正後
︑ 著 作 権法 の 授 権に 基 づ き
︑国 務 院 は
﹃コ ン ピ ュー タ ー ソ フト ウ ェ ア保
Ⅲ
商
標
法
と
著
作
権
法
の
改
正
準
備
護 条 例
﹄﹃ 著 作 権 集団 管 理 条例
﹄﹃ 情 報ネ ッ ト ワー ク 配 信 権 保護 条 例
﹄を 制 定 した
︒ こ の 他︑ 国 家 著作 権 局 で も現 在
﹃ 民 間文 学 芸 術作 品 保 護 条例
﹄ を 起草 中 で あ る
︒
﹃ コ ン ピ ュ ー タ ー ソ フ ト ウ ェ ア 保 護 条 例
﹄ は 1 9 91 年 10 月 に公 布 施 行さ れ て い る︒ 2 0 01 年 に 著 作 権法 が 改 正さ れ た 後︑ 国 務 院 が2 0 0 年1 12 月 に
﹃ コン ピ ュ ータ ー ソ フト ウ ェ ア 保護 条 例
﹄を 改 正 し
︑2 0 0 2 年1 月 1 日に 施 行 し たの で あ る︒ 条 例 は 主に ソ フ ト ウェ ア 著 作権 の コ ン テン ツ
︑ 権利 の 制 限 と例 外
︑ 権 利の 譲 渡 と許 可
︑ 権 利侵 害 の 責任 に つ い て規 定 し て いる
︒ コ ンピ ュ ー タ ーソ フ ト ウェ ア の 定 義と 範 囲
︑ ソフ ト ウ ェア 購 入 者 のバ ッ ク アッ プ を 除 けば
︑ こ の 条例 は ほ ぼ著 作 権 法 の関 連 す る内 容 と 同 じで あ る
︒ その た め 多く の 研 究 者は
︑ 単 独で こ の 条 例 を制 定 し た 意味 は あ ま り ない と 考 え てい る
︒
﹃ 著作 権 集 団 管理 条 例
﹄は 国 務 院 が制 定 し たも の で
︑ 20 0 4 年 12月 に 公 布さ れ
︑ 2 00 5 年 月3 1 日 か ら 施行 さ れ てい る
︒ 条例 は 主 に
︑集 団 管 理組 織 の 設 立方 式
︑ 権 利︑ 義 務
︑著 作 権 許 可使 用 料 の徴 収 と 分 配 や 著 作 権 の 集 団 管 理 組 織 に 対 す る 主 管 部 門 の 監 督
・ 管 理 に つ い て 定 め て い る
︒ 中 国 は 早 く も 1 9 9 2 年 に
﹁ 中 国 音 楽 著 作 権 協 会
﹂ を 設 立 さ せ
︑ 音 楽作 品の 授権 に 対す る集 団管 理を 行っ てき てい る︒
﹃ 著作 権集 団管 理条 例﹄ 公 布後
︑2 00 年6 には
﹁中 国 音 楽画 像 著 作 権協 会
﹂ を︑ 2 0 0 年8 に は
﹁中 国 文 字 著作 権 協 会
﹂を 設 立 した
︒ 現 在
︑中 国 映 画著 作 権 協 会 の設 立 準 備 中で あ る
︒
﹃ 情 報 ネ ッ ト ワ ー ク 配 信 権 保 護 条 例
﹄ は 国 務 院 が 制 定 し た も の で
︑ 2 0 0 6 年
5 月 に 公 布 さ れ
︑ 2 0 06 年
7 月 日1 よ り 施行 さ れ て いる
︒ 条 例は 主 に 著 作権 者
︑ 演 出者
︑ 録 音製 品 製 作者 が 享 受 する 情 報 ネ ット ワ ー ク の配 信 権
︑権 利 の 制限 と 例 外
︑ネ ッ ト ワ ーク プ ロ バ イダ ー の 責任
︑ 技 術的 対 策 と 権利 の 管 理 情報 に 対 する 保 護
︑ 権利 侵 害 の責 任 に つ いて 規 定 し てい る
︒ 条例 は 公 布 施行 以 来
︑作 品
︑ 演 出と 録
音さ れ た 製品 が ネ ッ トワ ー ク 上で 配 信 され る 上 で の 積極 的 な 役割 を 規 範化 し て お り︑ 北 京 と上 海 等 の 法 院で は 条 例を 基 に 影響 力 の あ る判 決 を いく つ か 出 し てい る
︒ 1 9 9 年1 に 公 布施 行 さ れ た著 作 権 法で は
︑ 国 務 院 よ り 授 権さ れ
︑ 民間 文 芸 の 保護 弁 法 を制 定 し て い る
︒ 2 0 01 年 に 改正 さ れ た 著作 権 法 も︑ 国 務 院 よ り 授 権 さ れ
︑ 民 間 文 芸 の 保 護 弁 法 を 制 定 し て い る
︒ 2 0 0 7 年︑ 国 家 著作 権 局 は
﹃民 間 文 学芸 術 作 品 保 護 条 例
﹄ の起 草 作 業に 取 り 掛 かり
︑ 2 00 7 年 10 月 には 内 部 検 討用 草 稿 を提 出 し た
︒現 在
︑ 国家 著 作 権 局で は さ ら に検 討 を 加え
︑ 専 門 家・ 研 究 者の 意 見 を 取り まと めた 上で
︑﹃ 民間 文 学芸 術作 品保 護条 例﹄ 草 案 の 調 整 を 行 っ て い る
︒ こ の 条 例 が 公 布 さ れ れ ば
︑ 立法 面 か ら 民間 文 芸 に対 す る 保護 が な さ れる こ と に なろ う
︒ 以 上 の 作 業の 他
︑ 国家 著 作 権局 で は 2 00 7 年 に 著作 権 法 の 改正 作 業 に入 っ て おり
︑ 関 連 する 専 門 家 や研 究 者 も調 査 検 討 に着 手 し てい る
︒ 国 家著 作 権 局 内部 で も 改正 内 容 の 検討 を 進 めて い る
︒ 現在
︑ 国 家 著作 権 局 では 改 正 案 をま だ 公 開し て い な いの で
︑ 具 体的 な 改 正内 容 は 不 明で あ る
︒だ が
︑ W TO の 紛 争 解決 チ ー ムに 対 し て 中国
・ 米 国間 の 知 的 財産 権 を め ぐる 紛 争 案件 に つ い て︑ 2 0 09 年
1 月 に裁 決 意 見 が出 さ れ たこ と に 伴 い︑ あ る 点は ほ ぼ 確 定さ れ た よ うで あ る
︒即 ち 著 作 権法 第 4 条第
1 項 は改 正 さ れ る はず で あ る︒ 紛 争 解決 チ ー ム は﹁ 法 に より 出 版 や 配 信を 禁 止 され て い る著 作 物 は
︑本 法 の 保護 範 囲 で は ない
﹂ た め︑ ベ ル ヌ条 約 に 定 めら れ て いる 著 作 権 が 自 動 的 に 発生 す る とい う 規 定 には そ ぐ わな い と 認 識 し て い た た めで あ る
︵ 注 4
︒︶
今 回 の 著 作権 法 改 正は 主 に 著 作権 保 護 の実 務 に お ける 若干 の問 題に 対 して 行わ れる と予 測さ れる ので
︑ TR
I P S 協定 と の 整合 性 を と るた め に 必要 で あ っ た2
0 0 1 年の 著 作 権法 の 改 正 とは 異 な る様 相 と な ろう
︒
注1 国家知的財産権戦略ネット(www.sipo.gov.cn)を参照のこと。
注2 全国人民代表大会常務委員会の『中華人民共和国特許法』改正に関する決定、2008年12月27日。
注3 米国ナイキ社がスペインCIDESPORT社、浙江省嘉興市銀興製衣廠の商標権侵害を訴えた紛争事案における広東省深 市中級人民法院(2001)の深 中法知初字第55号民事判決書。
注4 Report of the Panel, China ― Measures Affecting the Protection and Enforcement of Intellectual Property Rights, WT/DS362/R, 26 January 2009.
坪 訓