中央大学理工学部情報工学科 卒業研究論文
マルチエージェントモデルを用いた 交差点のシミュレーション
学籍番号
00D8101029K
芦辺 修一指導教員 田口 東 教授
2004
年3
月あらまし
都市内の道路網において交差点は,自動車の交通の流れに大きな影響を及ぼす.交差 点において自動車の通行に影響を与える要因の 1 つは,横断する歩行者である.歩行者 の横断は,右左折をする自動車の通行に影響を与え,その結果,単位時間あたりに交差 点を通過できる自動車の台数は減少する.
本研究では,交差点におけるシミュレーションを行い,歩行者の横断が自動車の右左 折に与える影響を調べ,交差点の交通容量の推計法を考察する.
キーワード:マルチエージェントモデル,交通容量
目次
1章 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
2章 マルチエージェントモデル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2 2.1
マルチエージェントモデルとは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 2.2
マルチエージェントシミュレータ(MAS
)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
3章 シミュレーション・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4 3.1
大手町交差点の実測・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 3.1.1
大手町交差点の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 3.1.2
計測方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 3.1.3
実測結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 3.2
シミュレーションの設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 3.2.1
交差点の設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 3.2.2
自動車のルール設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 3.2.3
歩行者のルール設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 3.3
シミュレーションの実行・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 3.3.1
シミュレーションに用いるデータ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 3.3.2
信号1
周期あたりの交通量の計測方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 3.3.3
実行結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
4章 異なる条件下における交通量の変化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
23 4.1
歩行者の出現確率の変化による交通量の変化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 4.2
ルールを変更した場合の交通量の変化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 4.2.1
車線変更を禁止にした場合・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 4.2.2
右左折における横断歩道手前のスペースが無い場合・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 4.3
従来の交差点における交通容量との比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
5章 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
30
謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
31
参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
31
1章 はじめに
日本は自動車大国といわれる.特に大都市圏では,多くの自動車が密集し,交通渋滞 が頻繁に発生している.交通渋滞が生じる場所の一つに,交差点が挙げられる.交差点 では自動車と歩行者とが複雑に関係し合い,その結果,自動車だけの場合に比べて交通 容量が大きく減少することがある.横断歩道を渡る歩行者は,自動車が右折または左折 するときの障害となる.もし,歩行者の数が増加すれば,通行できる自動車の数は減少 するであろう.交差点の性能を評価するために,交通容量が用いられている.交通容量 は,「実際の道路,交通及び制御条件のもとで,与えられた一定時間内に,車線または 車道のある断面もしくは一様な区間を通過することが期待できる人間または車両の最 大数を,
1
時間あたりの数値に換算したもの」と定義される[1]
.しかし,過去の研究に おいて,交通容量を計算する際に歩行者の影響を明示的に考慮した事例は少ない.本研究では,次章で述べるマルチエージェントモデルを用いて人と自動車の干渉をモ デル化し,交差点のシミュレーションを行う.また,交差点における歩行者の影響を考 察して,交差点の交通容量の推計方法を導く手がかりを得たい.
2章 マルチエージェントモデル
2.1
マルチエージェントモデルとは多数の自動車と歩行者とが影響を及ぼし合う状況のシミュレーションをするために は,きわめて複雑なプログラムを作り,膨大な計算をしなくてはならない
[2]
.そこで,本研究ではマルチエージェントモデルを用いる.このモデルは,多数存在するエージェ ント(ここでは自動車や歩行者)のひとつひとつを,エージェントの種類ごとに設定し たルールに従って行動させるモデルである.各エージェントがルールに従った行動を繰 り返すことによって,交差点全体の動きを表現することができる.
2.2
マルチエージェントシミュレータ(MAS
)マルチエージェントシミュレータ
(MAS)
は,構造計画研究所が開発したソフトウェア であり,マルチエージェントシステムを容易に構築するための様々な機能が用意されて いる.MAS
の実行ルールの記述は基本的にはMicrosoft
のVisualBasic
に沿った文法 が用いられている.MAS
の特徴・ マルチエージェントシミュレーションを行うための様々な関数が用意されており,
エージェントの配置や移動などの操作が容易にできる.
・ エージェントの生成時に
1
度だけ実行され,各エージェントに対して初期値を与え る関数Agt_Init
と,ステップ毎に繰り返し実行される関数Agt_Step
とに分かれて いる.表
2.1
は,シミュレーションに利用した関数である.
_CreateAgent
はエージェントを生成する関数である.例えば,0
から1
の間のラン ダムな値をとるランダム関数を用いて,その値がある値以下ならばエージェントを生成 する,などの操作ができる.
_KillAgent
は,エージェントを削除する関数である.交差点を通過し,表示画面の外に出たエージェントはこの関数を用いて削除した.
_CollectAround
は,指定した位置座標の周りにいるエージェントのコレクションを取得する関数である.この関数は
x
座標,y
座標,視野,空間名,エージェント名を引 数にとる関数であり,ある特定の座標を中心に,指定したマス数だけ離れた範囲内にあ る指定した種類のエージェントを取得する.図2.1
は,_CollectAround
の引数の1
つ である「視野」についての説明である.図中の数字は,0
を中心としたときの,中心からの距離を表し,この値を視野という.視野が
0
であれば中心のみ,視野が1
であれば 図の「0
」「1
」の部分を指定できる.視野を2
とした場合は,図2.1
の網掛け部分の範 囲が指定され,この範囲に含まれるエージェントの集合を取得することができる.
_CountCollection
は,コレクションが保持しているエージェントの個数を取得する関 数 で あ る .
_CollectAround
で 指 定 し た 範 囲 の エ ー ジ ェ ン ト の 集 合 を 集 め て ,_CountCollection
を用いれば,そのコレクションがいくつのエージェントから構成されているかという情報を知ることができる.例えば,横断歩道の指定された範囲のコレ クションを取得し,そのコレクションに含まれる歩行者のエージェントの数を調べるこ とによって,横断歩道の特定の範囲内に存在する歩行者の人数を知ることができる.
_GetCountStep
は,現在のステップ数を取得する関数である.この関数を用いて,信号の状態を変化させる.
表
2.1
MAS
に搭載されている関数とその動作関数 動作
_CreateAgent
エージェントを生成する._KillAgent
エージェントを削除する._CollectAround
指定した位置座標の周りにいるエージェン トのコレクション(エージェントの集合)を 取得する.
_CountCollection
コレクションが保持しているエージェント の個数を取得する._GetCountStep
現在のステップ数を取得する.3 3 3 3 3 3 3
3 2 2 2 2 2 3
3 2 1 1 1 2 3
3 2 1 0 1 2 3
3 2 1 1 1 2 3
3 2 2 2 2 2 3
3 3 3 3 3 3 3
図2.1 _CollectAround
の範囲3章 シミュレーション
3.1
大手町交差点の実測3.1.1
大手町交差点の概要大手町交差点は,十字路であり,
4
方向ともすべて左折・直進車線,直進車線,右折 車線の3
車線で構成されている.また,4
方向とも右折専用信号があり,右矢印が点灯 する.交差する2
本の道路の制限速度はともに40km/h
である.交差点周辺は地下鉄大手町駅の出口が
2
ヶ所ある(図3.1
のA
とC
).周辺はオフィ ス街のため人通りは多く,横断歩道を渡る人が多い.また,自動車の通行量が多いため,モデルとして適当な交差点であると判断した.
3.1.2
計測方法計測するデータは以下のとおりである.
1.
自動車(各方向とも)・左車線を左折する車の台数
・左車線を直進する車の台数
・中央車線を直進する車の台数
・右車線を右折する車の台数(青・黄信号時)
・右車線を右折する車の台数(右折専用信号点灯時)
2.
横断者・自転車の数(横断歩道
4
箇所×2
方向)・歩行者の数(横断歩道
4
箇所×2
方向)
3.
信号の周期・自動車用信号(南北方向,東西方向)
・自動車用信号(南北方向,東西方向)
図
3.1
は,大手町交差点の略図である.観測地点1
箇所につき2
,3
人を配置し,南 北方向の信号が青のときは,B(
逓信総合博物館)
およびD(
大手町ビル)
の観測者が自動車 の通過台数を計測し,A(
サンケイビル)
およびC(
広場)
の観測者が横断歩道を横断する歩 行者の数を計測する.逆に,東西方向の信号が青のときは,B
およびD
が横断歩道を 渡る歩行者と自転車の数を計測し,A
およびC
が自動車の台数を計測する.図3.1
は,南北方向の信号が青のとき,各観測者が計測する方向を矢印を用いて表している.また,
計測した結果は表
3.1
のように記録する.図
3.1
大手町交差点の実測方法○・・・観測者
C 広場
A サンケイビル
D 大手町ビル
B
逓 信 総 合 博物館N
表
3.1
記入例自動車 横断者
左車線 中央車線 右車線 手前→奥 奥→手前
信号
左折 直進 直進 右折 歩行者 自転車 歩行者 自転車
1
青6 13 15 3
2
右矢印2
3
赤8 2 5 0
4
青4 14 17 4
5
右矢印3
6
赤6 1 7 1
7
青2 13 14 1
8
右矢印5
9
赤4 1 6 1
3.1.3
実測結果実測日時は,
2004
年11
月4
日(火)の14:25
から15:05
の40
分間であり,天候は 晴れであった.実測によって得られた結果を表
3.2
から表3.6
に示す.表3.2
と表3.3
より,南北方 向の青時間が東西方向の青時間に比べて長いことがわかる.ここで信号の周期の定義は,信号の表示が一巡する時間とし,
1
周期を130
秒とした.また,信号の1
周期をシミュ レーションの単位時間とする.表3.4
と表3.5
に,この交差点の交通量を19
周期分計 測したときの自動車と横断者の累計数を示す.表3.4
より,すべての方向において,中 央車線を直進する自動車が圧倒的に多いことがわかる.また,左車線は,左折する自動 車と直進する自動車が混在するが,左折する自動車が大部分である.この結果より,直 進車は左車線よりも中央車線を走行していることがわかる.表
3.5
より,歩行者の数は横断歩道ごとに大きな差異が見られる.最も横断数が多い のは西側の横断歩道(図3.2
のAD
間)である.この結果より,北方向から西側へ右折 する自動車や,南方向から西側へ左折する自動車の交通に大きな影響を与えると推測で きる.表
3.2
自動車用信号の周期(
単位[
秒])
表3.3
歩行者用信号の周期(
単位[
秒])
南北方向 東西方向 南北方向 東西方向青
58 41
青48 33
黄
3 3
青点滅6 4
右矢印
8 11
赤74 93
赤
61 79
合計128 130
合計
130 134
表
3.4
自動車の累計台数(
単位[
台])
左車線 中央車線 右車線
流入口 左折 直進 直進 右折(青) 右折(右)
北
103 27 304 22 64
南134 22 339 29 47
東
51 22 284 45 40
西
62 10 207 5 40
表
3.5
横断者数の累計(
単位[
人])
位置 方向 人数
南→北
300
西側 北→南
254
南→北
197
東側 北→南
173
西→東
117
北側 東→西
126
西→東
78
南側 東→西
98
図
3.2
実測結果のまとめ134
22 339
76
300 254 197 173
207 10 117
62
85 86
284 27
103 126
45
304
98 78 51
22
C 広場 D 大手町ビル
B 逓信総合博物館 A サンケイビル
N
3.2
シミュレーションの設定3.2.1
交差点の設定・ 左折・直進車線,直進車線,右折専用車線の合計
3
車線で構成される十字路の交差 点である.・ 信号は青信号・黄信号・赤信号と右折専用信号がある.
・ 信号の周期は
1
周130
秒とする.・ シミュレーションの
1
ステップは現実世界の0.5
秒に対応する.つまり,1
周期は260
ステップである.・ シミュレーションにおける1マスは
1.67
メートルに対応する.・ 車が右左折する際,横断歩道の手前に車が停車できるスペースが
1
台分ある.・ 交差点には,自動車と歩行者のみが存在する.
2
輪車や自転車や大型車は考慮しな い.・ ステップ数と信号の状態との対応は表
3.6
と表3.7
に示すとおりである.表
3.6 ステップ数と自動車用信号の対応 表 3.7 ステップ数と歩行者信号の対応
ステップ数 南北方向 東西方向 ステップ数 南北方向 東西方向0
〜116
青0
〜96
青117
〜122
黄97
〜108
青点滅123
〜138
赤+右矢印109
〜144
赤
139
〜144
赤
145
〜210
青145
〜226
青211
〜218
青点滅227
〜232
黄219
〜259
赤
赤
233
〜252
赤+右矢印253
〜259
赤
赤
3.2.2
自動車のルール設定1)
共通ルール・ 自動車は定められた出現確率に従って発生する.出現確率の設定は
3.3
節で述べる.・ 自動車の速度は,
1
ステップあたりに1
マス進む速度を1
マス/
ステップと表記する と,1
マス/
ステップ(=12km/h)
,2
マス/
ステップ(=24km/h)
,3
マス/
ステップ(36km/h)
と段階的に変化する.最高速度は3
マス/
ステップとする.加速は,3
ステ ップごとに1
マス/
ステップ→2
マス/
ステップ→3
マス/
ステップと加速し,その様子 を図3.3
に示す.図中の矢印は1
ステップの間に進む距離を表す.最高速度に達し た自動車は,減速の条件を満たさない限り,現在のスピードを維持する.自動車の 発進時の加速度は,3
ステップ(=1.5
秒)
に対して1
マス/
ステップ(12km/h)
の加速であるから,加速度は
8km/h
である.・ 前方の自動車が停止した場合には,
3
マス(= 5m)
の間隔をあけて停車する.ここで,3
マスとした理由は,自動車の車体の長さを約3.5m
とし,停止時の車間距離を約1.5m
と仮定したためである.・ 自動車は前方
7
マス以内に自動車が存在しない時は加速する.つまり,一度停止し た自動車は,前方に停止中の自動車が発進してから,間隔を8
マス以上あけて発進 する.・ 前方
14
マス以内に自動車が存在する場合には減速する.3
マス/
ステップの速度で この条件を満たした場合,次のステップでは2
マス/
ステップに減速し,次のステッ プで1
マス/
ステップに減速する.その後は,停止の条件を満たさない限り,停止す るまで1
マス/
ステップで走行する.14
マスとした理由は,表3.7
より40km/h
で 走行中の自動車が停止するために必要な距離が22m
であり,前方を走行中の自動車 が急ブレーキを踏んだとき,追突せずに停止できる車間距離であるためである.・ 黄信号では減速しない.ただし,赤信号になった瞬間に停止線の手前にいる自動車 は減速し,停止する.停止線を越えている車はそのまま交差点を通過する.
・ 赤信号時は,停止線の手前にいる最初の自動車は停止線の手前
5~10
マスの減速区 間では1
段階減速(
その時点での速度が3
マス/
ステップなら2
マス/
ステップに,2
マス/
ステップであれば,1
マス/
ステップに,1
マス/
ステップであれば,減速せずそ のまま)
し,停止線の手前1~4
マスの範囲で1
マス/
ステップにする.その後,停止 線上で停止する(
図3.4)
.表
3.7 自動車の停止距離 (単位[m])
自動車の速度 空走距離 制動距離 停止距離
30km/h 8 6 14
40km/h 11 11 22
50km/h 14 18 32
60km/h 17 27 44
1
マス2
マス3
マス図
3.3
自動車の加速の様子停止線
停止線より
5
マス手前停止線より
10
マス手前 停止線より1
マス手前停止線より
4
マス手前1
マス/ステップで進行
減速区間
7
ステップ以降4〜6
ステップ1〜3
ステップ図
3.4
停止線の手前での減速2)
左折車のルール・ 左車線には,左折する自動車と直進する自動車とが,定められた割合で発生する.
左折する自動車の割合の設定は
3.3
節で述べる.・ 左折する自動車は交差点の手前から徐々に減速し,交差点内は
1
マス/
ステップの速 度で進む.・ 図
3.5
の網掛け部分に歩行者がいる場合は,自動車は横断歩道の手前で停止する.歩行者がいない場合は停止せずに進む.自動車と歩行者が接触しないように十分な 余裕をもたせるために,図
3.5
の網掛け部分は5
マスに設定した.・ 左折後の横断歩道の手前には自動車が
1
台停止できるスペースがある.つまり,先 頭の左折車が横断歩道の手前で停車している場合には,直後の自動車が直進であれ ば,左折待ちの自動車を回避して直進できる(
図3.6
,図3.7)
.・ 自動車が左車線に行列を作っているとき,左車線にいる直進する自動車は,中央車 線の前方
2
マス,後方14
マスの範囲に自動車がいない場合であれば,車線を変更 し,中央車線へ移動することができる(
図3.8)
.図
3.5
歩行者が左折車の通行に影響を与える範囲2
マス2
マス3
マス 自動車南から来る歩行者が,左折 車 の 通 行 に 影 響 す る 範 囲
(南北方向に 5
マス) 北から来る歩行者が左折車 の通行に影響する範囲(南 北方向に5
マス)歩行者 自動車 直進車は通過できる 歩行者がいるた
め停止
図
3.6
左折待ちの自動車と後続の直進車の回避図
3.7
左車線の直進車の動き 歩行者がいるため停止
左折車
歩行者 自動車 歩行者 自動車
左折待ち
2
マス14
マス中央車線のうち,この 範囲に直進車がいな ければ車線変更可能.
直進車は,前方が空くまで直進は不可.
ただし,中央車線が空いていれば車線 変更して直進することが可能(図
3.6).
図
3.8
車線変更の条件3)
右折車のルール・ 右折する自動車は交差点の手前から徐々に減速し,交差点内に
1
マス/
ステップの速 度で進入する.途中で斜め45
度方向に向きを変え,縦1
マス,横1
マスの速度(1.41
マス/
ステップ)
で進む.・ 対向の左車線と中央車線が,両車線とも
12
マス以上あいて,その間を右折するこ とが可能な状態になったときは,右折する(
図3.9)
.ここで,12
マスとした理由は,本モデルの最高速度で対向車が走行しているときも,十分な余裕をもって右折でき る値であるためである.
・ 横断歩道に歩行者がいる場合には,
1
台のみ横断歩道の手前のスペースに停止する ことが可能である(
図3.10)
.12
マス以上開い ていれば右折可対向車
2
マス3
マス2
マス北から来る歩行者が右折車 の通行に影響する範囲(南 北方向に
5
マス)南から来る歩行者が右折車 の通行に影響する範囲(南 北方向に
5
マス)自動車
図
3.9
右折できる条件歩行者 自動車 横断歩道手前で停車し
ている自動車がいる場 合はここで待機
歩行者がいる場合こ の場所で停止可能
図
3.10
右折車の停止位置3.2.3
歩行者のルール設定・ 歩行者は定められた出現確率に従って発生する.出現確率の設定は
3.3
節で述べる.・ 歩行者は,ランダムで横断歩道の手前に
5
列に発生する.偏りが生じる場合がある が,偏りを考慮しない.・ 前方の歩行者との距離が
1
マス(=1.67m)
以上開いた後,横断を開始する.・ 青信号が点滅したら,横断歩道上をすでに歩いている歩行者以外は,横断しない.
・ 歩行者の年齢・性別などの属性は考慮せず,どの歩行者も等しい速度で横断する.
・ 歩行者の速度は
0.3
マス/
ステップ(=3.6km/h)
とする.一般的な歩行速度が約4km/h
であるためである.・ 歩行者同士がぶつかるなどの干渉は考慮しない.よって,歩行者の人数が多い場合 でも,歩行者の速度に影響しない.
3.3
シミュレーションの実行本節では,大手町交差点の実測によって得られたデータを用いて実験を行う.
3.3.1
シミュレーションに用いるデータ実測で得られたデータは,
19
周期分(= 19
×130[
秒] = 2470[
秒])
の自動車の通過台数 および歩行者の人数である.データから自動車および歩行者の1
ステップあたりの出現 確率を求める.シミュレーションでは
1
秒が2
ステップに対応しているため,19
周期は4940
ステ ップである.よって,各車線の累計の通過台数を4940
ステップで割ると,1
ステップ あたりの自動車の出現確率を得る.この結果を表3.9
に示す.同様に歩行者の交通デー タから歩行者の出現確率を求め,表3.10
に示す.また,左車線を走行する自動車のう ち左折する台数の割合(
左折率)
を求め,表3.11
に示す.算出した値を用いてMAS
でシ ミュレーションを行う.
表
3.9
1
ステップあたりの自動車の出現確率 方向 左車線 中央車線 右車線南→北
0.0316 0.0686 0.0154
北→南
0.0263 0.0615 0.0174
西→東
0.0146 0.0419 0.0091
東→西
0.0148 0.0575 0.0172
表
3.10 1
ステップあたりの歩行者の出現確率 位置 方向 人数 出現確率南→北
300 0.0607
西側 北→南
254 0.0514
南→北
197 0.0399
東側 北→南
173 0.0350
西→東
117 0.0237
北側 東→西
126 0.0255
西→東
78 0.0158
南側 東→西
98 0.0198
表
3.11
左車線の左折割合方向 左折 直進 左折割合
南→北
134 22 0.859
北→南
103 27 0.792
西→東
62 10 0.861
東→西
51 22 0.699
3.3.2
信号1
周期あたりの交通量の計測方法1
周期あたりに交差点を通過する自動車の台数を求める.これを交通量と呼ぶことと する.また,交差点の通過は,停止線を越えることと定義する.自動車を計測する場所 は図3.11
の画面外の長方形の部分とした.例として,
5
周期目の交通量を求める.5
周期目の始まる瞬間(
とおく)
から計測を 開始し,5
周期目が終わる瞬間(
とおく)
までの通過台数を求める際, に図3.8
の 網掛け部分に存在する自動車は4
周期目に通過した自動車である.また, に図の網 掛け部分に存在する自動車は5
周期目に交差点を通過したが,通過台数として計測され ていない.よって,5
周期目の通過台数は,5 ,
t s 5
,
t e t s , 5
5 ,
t e
( ) ( )
( )
(
に網掛け部分に残ったに網掛け部分に残った台数台数)
る部分を通過した台数 周期目の時間に計測す
周期目の通過台数
5 ,
5 ,
5 5
s e
t t
− +
=
となる.
この部分で自動車の 通過台数を計測する
図
3.11
通過台数の計測地点
3.3.3
実行結果
MAS
によるシミュレーションの様子を図3.12
から図3.16
に示す.図
3.12
はSTEP= 0
のときの交差点の様子である.すなわち,南北方向の信号が赤から青に切り替わった瞬間の交差点の様子である.
図
3.13
は,STEP= 80
のときの交差点の様子であり,南北方向の信号が青の状態である.東側の横断歩道を渡る歩行者の影響で,南側から来る右折車と,北側から来る左 折車が横断歩道の手前で停止する.
図
3.14
は,STEP= 130
のときの交差点の様子であり,南北方向に右折専用信号が点 灯している.南側から来る右折車と,北側から来る右折車がそれぞれ右折専用信号の点 灯に従って右折する.図
3.15
は,STEP= 165
のときの交差点の様子であり,東西方向の信号が青の状態で ある.東側から来る右折車は,対向の西側から来る直進車の影響により,交差点内で停 止している.図
3.16
は,STEP= 235
のときの交差点の様子であり,東西方向の右折専用信号が点 灯している.東側から来る右折車と,西側から来る右折車が右折専用信号に従って右折 する.このあと,STEP= 259
まで進むと,再びSTEP= 0
となり,南北方向が再び青と なる.
図
3.12
シミュレーションの様子(STEP= 0)
図
3.13
シミュレーションの様子(STEP= 80)
図
3.14
シミュレーションの様子(STEP= 130)
図
3.15
シミュレーションの様子(STEP= 165)
図
3.16
シミュレーションの様子(STEP= 235)
1
周期の間に通過する自動車の台数を30
周期分計測し,結果を表3.12
に示す.また,各車線の自動車の待ち台数の推移を表
3.13
に示す.南→北の左車線の混雑が激しく,自動車の待ち台数は徐々に増加し,発散する.また,北→南の左車線と東→西の中央車 線は,待ち台数がゆるやかに増加しており,これらの車線の自動車は
1
回の信号で通過 することができない.それ以外の車線では,待ち行列はほとんど発生しない.また,歩 行者の横断人数を表3.14
に示す.表
3.12
1
周期の間に通過できる自動車の台数(
単位[
台])
南→北 北→南 西→東 東→西
左折 直進 右折 左折 直進 右折 左折 直進 右折 左折 直進 右折 計
1
周目5 18 6 4 21 5 4 12 4 0 14 3 96
2
周目6 20 0 5 13 5 3 8 7 4 8 5 84
3
周目3 22 2 6 19 4 6 15 1 2 14 2 96
4
周目7 21 1 5 12 4 3 10 2 3 16 6 90
5
周目3 15 6 2 16 4 5 14 2 2 17 6 92
6
周目5 16 3 3 19 5 4 9 2 4 16 5 91
7
周目6 14 2 5 20 4 4 9 1 6 17 8 96
8
周目3 11 4 7 20 4 3 15 2 3 14 3 89
9
周目7 11 3 5 15 6 3 10 3 3 15 4 85
10
周目5 19 3 4 19 5 3 7 3 5 14 5 92
11
周目6 22 5 5 15 2 1 9 2 3 16 3 89
12
周目9 16 5 3 16 2 4 6 0 4 14 5 84
13
周目5 19 4 5 19 6 5 14 2 3 16 3 101
14
周目5 15 6 5 13 5 2 17 3 5 14 4 94
15
周目4 23 3 4 21 2 4 11 2 4 17 5 100
16
周目4 13 3 5 21 7 5 14 3 3 18 5 101
17
周目4 12 5 6 16 6 0 15 2 3 15 3 87
18
周目5 20 4 7 10 4 1 8 2 1 15 7 84
19
周目3 20 4 5 18 4 3 9 2 2 15 7 92
20
周目4 21 6 3 19 4 3 10 2 4 15 7 98
21
周目4 21 4 5 21 3 5 11 3 2 15 6 100
22
周目3 14 3 4 20 3 4 14 2 2 15 3 87
23
周目3 16 4 5 17 3 4 16 2 2 15 4 91
24
周目7 18 4 7 19 2 3 15 3 2 14 1 95
25
周目5 21 5 7 16 4 7 13 2 0 15 3 98
26
周目7 21 2 5 19 4 3 15 4 2 16 5 103
27
周目3 21 4 5 19 4 5 8 3 1 16 7 96
28
周目3 16 3 5 16 4 5 15 2 2 15 3 89
29
周目3 17 3 7 13 5 2 12 2 5 17 7 93
30
周目5 17 5 7 20 5 2 11 0 5 15 2 94
平均
4.7 17.7 3.7 5.0 17.4 4.2 3.5 11.7 2.3 2.9 15.1 4.6 92.9
分散2.5 12.0 2.2 1.8 9.1 1.6 2.3 9.3 1.6 2.2 3.0 3.3 29.8
表
3.13
各車線における自動車の待ち台数の推移(
単位[
台])
南→北 北→南 西→東 東→西
左 中央 右 左 中央 右 左 中央 右 左 中央 右
1
周目7 8 0 6 9 4 3 9 2 0 9 1
2
周目6 10 0 8 9 3 3 5 3 3 5 2
3
周目10 10 1 7 6 3 6 9 0 1 11 2
4
周目6 7 3 2 6 6 5 5 2 2 15 3
5
周目14 5 2 6 8 4 2 10 1 3 15 2
6
周目17 6 2 7 8 3 5 8 0 6 11 9
7
周目22 4 1 6 12 4 1 6 1 4 15 4
8
周目26 6 2 2 11 3 6 11 3 3 16 0
9
周目32 12 1 9 9 3 3 3 1 2 19 4
10
周目33 9 3 14 9 0 3 3 0 5 25 2
11
周目40 12 3 13 10 1 1 4 2 4 26 1
12
周目35 9 7 18 12 1 1 4 0 3 22 3
13
周目40 8 7 22 11 5 4 7 1 3 21 2
14
周目43 13 4 24 15 1 4 9 1 8 21 4
15
周目45 7 7 30 14 3 5 6 3 8 27 5
16
周目47 6 11 31 11 3 3 9 3 6 33 2
17
周目52 10 8 29 2 2 0 10 1 4 39 2
18
周目54 21 7 28 11 1 1 6 2 1 37 7
19
周目56 11 6 25 13 3 2 5 1 3 35 3
20
周目64 12 3 30 16 3 1 7 1 4 34 8
21
周目68 8 2 30 15 2 5 8 2 2 37 4
22
周目75 9 2 28 12 1 4 8 2 1 33 3
23
周目78 13 4 28 10 0 3 16 2 3 34 1
24
周目83 18 1 22 7 3 7 8 1 1 35 0
25
周目89 14 0 16 14 3 8 7 1 0 36 3
26
周目92 8 2 16 10 1 6 11 2 3 32 3
27
周目91 14 2 20 5 2 5 6 2 2 31 2
28
周目95 10 1 16 7 2 3 11 1 1 30 3
29
周目103 8 2 21 8 3 1 7 1 6 29 3
30
周目100 11 1 21 7 3 2 6 0 5 36 1
表
3.14
1
周期の間に横断する歩行者数(
単位[
人])
西側 東側 北側 南側
南→北 北→南 南→北 北→南 西→東 東→西 西→東 東→西
1
周目20 16 10 7 9 7 3 5
2
周目15 11 14 13 4 5 5 8
3
周目16 14 10 11 4 5 2 8
4
周目15 16 14 5 3 5 4 1
5
周目23 15 10 7 4 9 4 7
6
周目16 15 14 13 7 9 4 9
7
周目20 9 12 12 8 10 6 6
8
周目17 19 9 7 4 5 4 3
9
周目12 13 18 11 7 8 2 8
10
周目14 17 8 10 5 3 3 8
11
周目15 11 8 16 6 6 4 7
12
周目9 13 16 7 5 5 2 5
13
周目14 15 12 11 5 10 4 5
14
周目11 12 16 7 7 6 3 7
15
周目11 16 15 10 6 8 3 8
16
周目24 15 10 7 4 2 4 1
17
周目16 15 11 12 9 10 8 4
18
周目14 18 6 7 5 5 7 6
19
周目24 13 6 10 11 5 2 5
20
周目13 12 11 12 5 7 4 8
21
周目15 12 9 7 4 2 4 7
22
周目18 14 9 15 9 6 2 3
23
周目13 15 8 10 5 5 3 3
24
周目8 13 8 5 6 5 0 4
25
周目22 9 8 6 7 6 5 5
26
周目20 5 14 7 8 11 2 7
27
周目9 15 4 8 4 7 6 7
28
周目24 15 9 7 5 8 4 6
29
周目15 10 6 4 7 5 2 5
30
周目15 8 12 10 6 5 5 5
平均
15.9 13.4 10.6 9.1 6.0 6.3 3.7 5.7
分散20.5 9.5 11.6 9.2 3.8 5.3 2.8 4.4
4章 異なる条件下における交通量
3
章では,実際のデータに基づいてシミュレーションを行った.本章では,歩行者の到着 頻度を変化させてシミュレーションを行い,歩行者の横断が自動車の交通容量に与える影 響を調べ,考察する.また,交差点や自動車のルールを変更した際の交通量の変化を調べ る.さらに,従来の交通容量の計算法との比較を行う.
4.1
歩行者の出現確率の変化による交通量の変化本節では,歩行者の出現確率を変化させてシミュレーションを行い,
1
周期の間に通 過する自動車の台数をそれぞれ計測した.歩行者の出現確率が
0
の場合,通常の3
倍の場合,通常の5
倍の場合について30
回 ずつシミュレーションを行った.このとき,1
周期の間に出現する歩行者の人数の平均 を表4.1
に示す.また,1
周期の間に通過した自動車の台数の平均と分散を表4.2
と表4.3
に示す.表
4.2
より,南北方向の左折車は,歩行者の出現確率の増減によって大きな影響を受 ける.歩行者の数が増加すると,さらに通過台数が減少するため,待ち行列の長さはよ り速い速度で長くなる.一方,東西方向の左折車に関しては,歩行者の影響はほとんど 無い.東西方向は,南北方向と比較して,左折車の出現確率が低く,左折車の通過台数 は出現確率に依存しているためであると推測される.また,右折車はすべての方向でほ とんど影響を受けていない.データは直進車の数が非常に多く,右折車は,対向の直進 車の影響を受け,横断歩道の歩行者の数の増減にはほとんど影響されないと推測される.仮に,対向の直進車の数が少なければ,右折車の通過台数は,歩行者の横断に影響を受 けると推測される.
表
4.3
に,自動車の通過台数の分散を示す.表4.3
より,歩行者の出現確率が高くな るにつれて,左折と右折について分散の値が小さくなる傾向にある.横断歩道を渡る歩 行者が多くなると,歩行者の隙間を通って右左折する自動車は減少する.そのため,右 左折できる自動車は,信号が赤に切り替わる際に停止線を越えている左折の自動車と,右折専用信号が点灯中の右折車にほぼ限られる.よって,
1
周期間の通過台数は,ほぼ 定数に近い値をとると推測される.この場合,自動車は信号が1
回の信号で渡ることが できなくなり,その結果,待ち行列は長くなる.表
4.1 1
周期の間に出現する歩行者数の平均(
単位[
人])
西側 東側 北側 南側
歩行者の出
現確率 南→北 北→南 南→北 北→南 西→東 東→西 西→東 東→西 計 通常
15.9 13.4 10.6 9.1 6.0 6.3 3.7 5.7 70.7 3
倍47.6 40.4 31.3 28.3 17.7 20.2 11.2 15.9 212.5 5
倍78.5 66.3 51.0 46.0 30.0 33.1 19.7 24.0 348.7
表
4.2
歩行者の出現確率を変化させたときの自動車の平均通過台数 南→北 北→南 西→東 東→西 歩行者の出現確率 左折 直進 右折 左折 直進 右折 左折 直進 右折 左折 直進 右折 計 なし
6.8 17.7 4.1 6.0 17.7 4.2 2.3 11.3 2.5 2.4 15.0 4.3 94.2
通常4.7 17.7 3.7 5.0 17.4 4.2 3.5 11.7 2.3 2.9 15.1 4.6 92.9 3
倍3.0 18.8 3.6 3.0 17.9 3.6 2.8 11.5 2.4 2.5 15.1 4.0 88.2 5
倍3.0 18.7 3.7 2.9 18.2 3.8 2.6 10.7 1.9 2.5 13.6 4.2 85.7
表
4.3
歩行者の出現確率を変化させたときの自動車の通過台数の分散 南→北 北→南 西→東 東→西 歩行者の出現確率 左折 直進 右折 左折 直進 右折 左折 直進 右折 左折 直進 右折 全体 なし
7.5 10.7 2.5 3.3 13.7 3.8 2.4 10.8 1.7 1.9 2.4 5.3 63.6
通常2.5 12.0 2.2 1.8 9.1 1.6 2.3 9.3 1.6 2.2 3.0 3.3 29.8 3
倍0.1 10.4 1.6 0.1 16.9 1.7 0.7 5.4 1.6 1.1 2.1 3.1 24.6 5
倍0 13.2 1.3 0.1 12.6 0.8 1.1 4.2 1.4 1.3 5.8 1.7 49.1
4.2
ルールを変更した場合の交通量の変化交差点の設定やエージェントのルールを変更した場合に,交通量がどの程度変化する かをシミュレーションを行い,考察する.
4.2.1
車線変更を禁止にした場合現在のモデルでは,左車線の直進自動車が,中央車線に車線変更することが可能であ った.本項では,左車線から中央車線に移る行動を禁止して、シミュレーションを行っ た.この条件下において,1 周期あたりに通過できる平均台数を表
4.4
に示す.また,分散を表
4.5
に示す.表
4.4
より,車線変更を禁止すると,南北方向において左折車の通過台数が減少することがわかる.左車線にいる直進車が中央車線に移動できないために,左車線が混雑す るためである.東西方向については,左車線における自動車の出現確率が低いため,ほ とんど影響が無いといえる.
表
4.4
車線変更禁止の場合の平均通過台数南→北 北→南 西→東 東→西
ルール 左折 直進 右折 左折 直進 右折 左折 直進 右折 左折 直進 右折 計 通常
4.7 17.7 3.7 5.0 17.4 4.2 3.5 11.7 2.3 2.9 15.1 4.6 92.9
車線変更禁止3.9 19.3 3.8 3.9 17.7 3.5 3.1 10.1 2.2 2.7 14.7 4.3 89.2
表
4.5
車線変更禁止の場合の通過台数の分散南→北 北→南 西→東 東→西 ルール
左折 直進 右折 左折 直進 右折 左折 直進 右折 左折 直進 右折 全体 通常
2.5 12.0 2.2 1.8 9.1 1.6 2.3 9.3 1.6 2.2 3.0 3.3 29.8
車線変更禁止1.5 6.2 2.2 3.1 11.7 1.4 2.2 10.0 1.2 2.6 2.6 3.8 49.9
4.2.2
右左折における横断歩道手前のスペースが無い場合右左折の際に横断歩道の手前で自動車が停止できるスペースが無い場合のシミュレ ーションを行う.このルールでは,左折車が横断歩道の手前で停止している場合,その 直後の自動車は,たとえ直進をしようとする場合でも,中央車線に車線変更が不可能な 場合は,停止している自動車を追い抜くことはできない.また,右折車は対向の直進車 と,横断歩道の歩行者の両方について右折条件を同時に満たす場合のみ右折することが できる.このとき,右折車は,横断歩道に到達するまで時間がかかるため,歩行者が右 折車に影響する範囲を広げる必要がある.図
4.1
は,自動車が右折できる条件を示す.表
4.6
に,この条件での1
周期あたりに通過できる平均台数を示し,表4.7
に分散を示 す.表
4.6
より,南北方向の右折車の通過台数が減少する.右折するためには,対向の直 進車の条件と歩行者の条件との2
つの条件を満たさなくてはならないことや,歩行者が 影響する範囲が広がることが大きく影響しているといえる.北→南の右折では,1
周期 の通過台数が激しく減少する.右折後の西側の横断歩道は最も人が多く,ルールの変更 によって,通常の青信号ではほとんど右折できなくなるためである.一方,西→東の右 折車は,ほとんど影響を受けていない.西→東は,右折車の出現確率が低く,右折台数 は出現確率に依存する.さらに対向の直進車が多く,右折専用信号の点灯時以外は,ほ とんど右折できない.したがって,西→東は,停車スペースの有無に関するルールの変 更に対してほとんど影響を受けない.表
4.6
横断歩道手前の停車スペースが無い場合の平均通過台数 南→北 北→南 西→東 東→西ルール 左折 直進 右折 左折 直進 右折 左折 直進 右折 左折 直進 右折 計 通常
4.7 17.7 3.7 5.0 17.4 4.2 3.5 11.7 2.3 2.9 15.1 4.6 92.9
スペース無し4.3 19.1 3.4 4.8 17.5 3.0 3.1 11.3 2.3 2.7 14.7 4.1 90.2
表
4.7
横断歩道手前の停車スペースが無い場合の通過台数の分散 南→北 北→南 西→東 東→西 ルール左折 直進 右折 左折 直進 右折 左折 直進 右折 左折 直進 右折 全体 通常
2.5 12.0 2.2 1.8 9.1 1.6 2.3 9.3 1.6 2.2 3.0 3.3 29.8
スペース無し1.7 8.0 1.7 1.8 11.3 1.5 2.2 7.0 1.4 3.0 3.5 1.8 46.9
12
マス以上開い ていれば右折可南から来る歩行者が右折車 の通行に影響する範囲(南 北方向に
7
マス)対向車
自動車
4
マス4
マス3
マス北から来る歩行者が右折車 の通行に影響する範囲(南 北方向に
7
マス)図