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ま え が き

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Academic year: 2021

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ま え が き

 自然現象や人の営みは、果てしなく大きな空間的な広がりと、太古から未来 へ続く悠久の時間の流れの中にある。そこではすべての構成要素がたがいに絡 み合って変化しつづけている。そして、その変化は周期的に見えるものもある が、全体としての変化は方向性があり決して戻ることはない。

 これらのことをよく知らずに環境対策を講じると、思いがけない逆効果や副 作用が生じて後悔する。また、定量的な大小関係を知らないと、無駄な努力を する可能性が高い。本書のねらいは、環境の全体像とそこにある定量的関係を 正しく把握し、正しい対策をとるために必要な、最小限の基礎知識とデータ、

そして基本的な考え方を提供することである。その際、環境問題の多面性、相 対性、不確実性を考慮しながら、バランスよく伝えることを心がけた。“絶対 に正しい”はないが、“できるだけ正しい”対策が、著者が考える環境学の中心 にある。

 周知のように、人類は、近現代に急激な物質文明の発展をとげた。これには 科学技術の進歩が大いに貢献した(科学と技術は、本来、目的、方法論が異な るが、両者をあわせて科学技術と称する)。その結果、人類の活動は拡大し、

多くの人は格段に良い生活を享受した。しかし、それと同時に、環境を含む多 くの重大な社会問題が生起した。

 有限な地球という制約が、人類活動の拡大とともに顕になる中で、人類は、

どうすれば持続的な発展を続けることができるのか、そして、そこで科学技術 が果たすべき役割は何なのか、が本書に通底する基本テーマである。さらには、

科学が進歩した先に人類の幸福が本当にあるのか、が問題だが、本書はそこま では言及しない。

 第 1 部「現代の環境問題と化学環境学」で、環境問題の全体を俯瞰し、必要 な原則や考え方をまとめた。第 2 部では、 「自然環境の現状と課題」に加えて、

生活環境にもふれた。すべての環境問題は生活の問題に通じるからである。第

3 部では、人類活動の基盤として環境問題に深く関わる「エネルギー資源と材

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料資源」を解説した。なお、第 2、3 部の対象分野には、定量的関係に関する 誤解が多い。第 4 部では、化学技術を中心に「環境の維持・改善のための技術」

を紹介した。取りあげた例は少ないが、タイプの異なる例を選んで対策の多様 性を理解できるように努めた。また、対策のために社会が負担する能力には限 りがあるので、対策を選ぶ際には、コストパフォーマンス(広義)の評価が非 常に重要であることを一貫して強調した。

 気候変動(地球温暖化)の問題と対策について、第 4 章と第 13 章においてや や詳しく取りあげたが、その理由は、社会の関心が高く喫緊の課題になってい ることと、本書が重視する「全体像」、「定量関係」、「不確実性」、「コストパ フォーマンス」などの問題が浮き彫りになっていることにある。信頼できる事 実を提示し、読者の判断に委ねたいと考えた。なお、著者の考えは、「過去の 気温変動を考えると、近年の気温上昇の半分程度は自然変動に起因する。した がって、穏当な対策が妥当であり、“角を矯

めて牛を殺しかねない”過激な対 策は望ましくない」である。

 本書は、前著『化学環境学』(裳華房,2007)を全面的に再編・改訂したもの で、過去 10 年の環境の変化、理解の深化を取り込み、データを更新した。な るべく客観的に全体像が把握できるよう書いたつもりであるが、異論もあろ う。また、誤解や間違いがあるに違いない。読者諸氏にご指摘いただければ幸 いである。なお、第 1 部冒頭に記したように、「化学環境学」を、環境理解の 化学と環境改善の化学技術の意で使っている。この語は、1998 年東京工業大 学の専攻名として登場したのが最初ではないだろうか。

 本書の刊行にあたっては、前著に引き続き、裳華房小島敏照氏の多大なご支 援をいただいた。心より謝意を表したい。また、執筆中に多くの先輩や友人か ら示唆に富んだ指摘や助言をいただいた。いちいちお名前はあげないが、厚く お礼を申し上げる。

 2017 年 7 月

 御園生 誠 

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