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ヒ ロ シ マ 被 爆 体 験 を 次 世 代 に 継 承 す る た め の

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Academic year: 2021

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(1)

ヒ ロ シ マ 被 爆 体 験 を 次 世 代 に 継 承 す る た め の 原 爆 痕 跡 地 図 作 成

GIS

ワ ー ク シ ョ ッ プ

岩 井   哲 ・ 竹 崎 嘉 彦 ・ 川 瀬 正 樹 ・ 太 田   弘

GIS Workshop for next generation to inherit Atomic bomb memories tracing signs and making a map on Hiroshima

Satoshi IWAI, Yoshihiko TAKESAKI, Masaki KAWASE and Hiroshi OTA

Abstract: The GIS workshop was held in Hiroshima City on July 31, 2006 before "the Day of the Hiroshima Atomic bomb" on August 6. The workshop attendants, those were a new generation who have no experience of a Atomic bomb victim, look for signs of radiation exposure and try making a digital map. The aerial photographs before and after the Atomic bombing have the possibility to succeed a common background to the next generation, and the GIS and the maps give its support.

Keywords: GIS

ワ ー ク シ ョ ッ プ

(GIS Workshop)

, 原 爆

(Atomic bomb)

,空 中 写 真

(aerial photograph), GIS

教 育

(GIS education)

1.はじめに

 

8

6

日の「広島原爆の日」を間近にした

2006

7

31

日,広島市において原爆痕跡地図を作 成する

GIS

ワークショップを開催した.このワー クショップは,広島の街なかに埋もれる被爆の痕 跡をたずね,デジタル地図の作成を試みるもので ある.GIS は被爆体験継承の方法のひとつになり うるか,という取り組みとしての意義を併せ持っ ている.戦後生まれの世代から,小中学生といっ た被爆体験のない全く新しい世代が,その継承に どう関わっていけるかが,今,重要な課題となっ ている.被爆者と違い, 「共有する記憶のない」世 代にとって,被爆当時の広島の生活感を連想させ

るものが必要とされている.ワークショップの目 的には,地図や

GIS

の啓蒙も意図している.原爆 投下前後の空中写真は, 体験も記憶もない世代に,

世代を越えて平和の心を共有し,受け継ぐための 共通の背景になる可能性をもっている.その支援 に地図と

GIS

を活用しようと考えた.

  原爆投下前後の空中写真は,個人レベルで使用 される機会としては,おそらく始めてのことであ った.また,被爆直後の空中写真を見ながら被爆 者の証言を聞くという機会もおそらく,初の試み であった.

2002

年以降に利用可能になった原爆投 下前後に撮影された空中写真の利用方法の一つと して,一連の作業や試みは,その大半が初めての 機会となっている.このワークショップは,地理 情報システム学会中国地方事務局が主催する第

5

GIS

セミナーとして開催し,日本国際地図学会 が前々日から開始している第

179

回例会の第三部

(日本国際地図学会,2007)として共催した.日 本における地図情報に関連する二つの学会が企画

―――――――――――――――――――――

岩井  哲: 〒731-5193  広島市佐伯区三宅

2-1-1 

広島工業大学 工学部 建築工学科

e-mail  [email protected] Tel. 082-921-5486    Fax. 082-921-8976

(2)

したプログラムであった.

2.午前の部:フィールドワーク

GIS

ワークショップは午前と午後の2部で構成 している.午前の部のフィールドワークは,小学 生, 中学生, 高校生と大学生でグループをつくり,

広島市中心部の市街地でそれぞれ地区にわかれ,

被爆建物や,被爆のモニュメントなどの被爆の痕 跡を巡り,その位置を確認し,対象とする建造物 などについて記録するというものである.小学生

4

名,中学生

5

名,高校生

3

名,大学生

5

名,さ らに,7 名の本学会員らが参加した.

  出発に先立ち,集合場所である袋町小学校正門 で,簡単な説明を主催者より行った.さらに,正 門の脇にある「袋町小学校平和資料館」前で,フ ィールドワークの方法,地図の見方などの説明を した.集合地点とした袋町小学校の校舎は,2002 年に改築完成したものである.改築以前の校舎は 被爆した建物で,その被爆校舎(旧西校舎)の一 部が,「袋町小学校平和資料館」として同年

4

月 に開館した.高校生以上の参加者は,その被爆校 舎で学んだ学生,生徒達である.

  袋町小学校の小学生と卒業生を中心にした小・

中・高・大学生で構成されるグループと,それ以 外のメンバーで構成される

2

つのグループに分か れて出発した.フィールドワークの様子を図

1

に 示す.本学会員らは,原則,同行するのみで,児

童・生徒・学生が主体のフィールドワークであっ た.目的地は,広島市民にとってもあまり馴染み のないところが多かった.

  フィールドワークには,1:25,000 地形図「広 島」 (平成

16

7

1

日発行)と,本フィールド ワーク専用に作成した正射写真図を各グループに 配布し使用した.専用正射写真図に使用した空中 写真は,被爆直後の

8

11

日に撮影された空中 写真をもとにしたオルソモザイク画像に,被爆関 連の情報と数値地図

10,000(総合)

『広島』の町 丁界,道路などの地形図情報を重ね合わせたもの である(図2) .図に被爆建物や原爆被災説明板,

モニュメントといった被爆情報を示した.オルソ モザイク画像のもとになった空中写真は,非常に 鮮明な写真で,赤十字病院屋上の赤十字さえ確認 できる.仕様を表1に示す.焦点距離,撮影高度,

図2  フィールドワーク用正射写真図

(縮尺

1

10,500

 

A4

判)

図1  フィールドワークの様子

(3)

画面サイズは, 現在の通常仕様とは大きく異なり,

戦時における特殊な仕様の空中写真と判断される.

3.午後の部:デジタル地図作成

  午後の部の会場は,午前の部の集合場所である 袋町小学校に併設された施設で, 「広島市まちづく り市民交流プラザ」の

6

階の「マルチメディアス タジオ」である.200 インチのスクリーンを装備 した施設で,フラットな床の収録スタジオに,机・

椅子を並べて利用した. 会場の様子を図3に示す.

参加者の利用データとして,原爆投下前後の空中 写真,

2000

年撮影の空中写真,数値地図などを準 備した.原爆投下前後の空中写真をワークショッ プなどで利用するのは,今回が初めての機会であ る.

  午前中のフィールドワークで記録したフィール ドノートをもとに,GIS ソフトを利用してデジタ

ル地図に,地域に残る史跡や石碑を調べ,撮影・

調査してきた写真やコメントなどと共に地図上に プロットしていった.使用した

GIS

ソフトは,教 育用,初心者用に適していると判断される「地図 太郎

GIS

入門編

Ver.4(東京カートグラフィック

株式会社製) (以下,地図太郎と表記) 」である.

講師は,主催者のひとりでもあり,慶應義塾(普 通部),フェリス女学院大学で「地図太郎」を利用 した授業実践を持つ太田弘が担当した.

  フィールドワークは二つのグループで行ったが,

午後はさらに一つのグループを二つに分けて,4 つのグループとした.小・中・高校生のグループ あり,高校生と大学生のグループあり,中学生の みや,小学生と中学生の二人のグループありと,

さまざまなメンバー構成であった.どのグループ にも,GIS ソフト初体験者を配した.

  太田が引率した慶應義塾(普通部)の生徒

3

名 以外は,GIS ソフトの未体験者ばかりである.参 加者のほとんどは,GIS という言葉すら認知して いない.しかし,慣れないながらも,参加者は会 場にいる本学会員の研究者や,中・高校の地理担 当教員からアドバイスをもらって,よりよい地図 作成を試みていた.

  続いて,できあがった地図を用いて,4 つのグ ループが,順次

10

分程度のプレゼンテーション を行った.どんな地図ができあがったか,グルー プ同士で,地図の特徴について意見交換をした.

グループごとの調査結果や,町の歴史について発 見したこと,一人ひとりの感想などを,200 イン チのスクリーンに映して発表していった.広島在 住の参加者にとっても,自分達が住む町を徒歩で 調べて,写真を撮ったり,また地図を目に見える 形で活用することで,広島や原爆に関して,学校 の教室の中では分からなかったいろいろな発見や 体験ができたようである.スクリーンの大きさも あるが,地図を使ったプレゼンテーションそのも のが初体験となる参加者もいた様子である.

 

GIS

未体験の参加者にとっても,GIS がデジタ ル地図を用いて地域の情報を分析する技術だと理 解される良い機会となったと考えられる.今回初

撮影日:1945年811日 

焦点距離:24インチ;約610mm

(約151153mm程度) 

撮影高度:24,600フィート;約7,400m

(約1,200〜4,000m程度) 

写真縮尺:112,300 18,000125,000) 画面サイズ:9×18インチ;約23×46cm (23×23cm)

表1  空中写真の仕様

(  )内は通常の空中写真の仕様

図3  会場での地図作成作業風景

(4)

図 4

(a)  GIS

ソ フ ト 未 経 験 の グ ル ー プ   めて

GIS

ソフトを使用したグループの成果と,す でに使用経験のあるグループの成果を,図4に示 す.経験の有無による地図表現における特に大き な差は感じられなかった.

4.証言と地図による空間認識

  午後の部の企画にはさらに,被爆者の証言を聞 くというプログラムを入れていた.証言に立った 被爆者の奥本博氏は,会場の袋町小学校近くに当 時から住んでおられた方である.袋町小学校に通 う児童, あるいは小学校出身の参加者にとっては,

同級生,友人の祖父にあたる存在で,原爆投下直 後の広島の街の様子をわかりやすくより身近な話 として丁寧に話していただいた.いつもの見慣れ ている自分達が住んでいる街であり,午前中にフ ィールドワークを行った現場そのものである袋町 小学校の学区内に爆心地がある.

  フィールドワークに使用した原爆投下前の街並 みが映る正射写真図や,地図太郎に使用できる原 爆投下前後のオルソモザイクされた空中写真は,

当時の様子を具体的に理解する拠り所に充分なり 得るものである.精細な原爆投下前後のオルソモ ザイク画像から,原爆による被害,破壊力は一目 瞭然である.さらに証言によって,原爆被害の実 相理解が深まることに繋がると思われる.地図と はまた違った,生の情報である空中写真の持つ力 といえる.参加記念品として,原爆投下前と投下 後のオルソモザイク画像を配布した.

5.総合評価と反省点

(1)

子ども達の感触は概ね良好であった.GIS を 被爆体験継承に使う初めての試みであったが,ワ ークショップとして成果はあった.原爆の被害が 広範囲にわたっていたことを,当時と同じ時期に 自らが歩いて移動することを通じて実感できたと 考えられる.被爆者に来てもらい,地図・写真を 見ながら講演をしたことの効果も高かった.

(2)

今回はコース毎に2つに分けて,物的被害を 調べたことになる.これからも毎年実施できるよ うなものにしていく計画である.次回はテーマ別 に班分けをすれば,慰霊碑の班,被爆建物の班,

被爆植物の班などテーマ(属性)別の分布の違い もわかり,新たな発見があるかも知れない.

(3)

フィールドワークでは,大人数だと調査に参 加意識が薄くなりがちである.グループの人数を 減らして

4〜5

人程度に絞ってみてもよいのでは ないかと考えられる.今回の午後の活動くらいの 人数がちょうどよい.また小・中・高・大学生を 一緒にする必要はない.小・大学生でも,中・大 学生の組み合わせでも良い.

(4)

発表で背景の空中写真をうまく活かせていな かった.新旧の空中写真を比較するなどが考えら れるが,子供にはやはり難しいかも知れない.

参考文献    日本国際地図学会(2007)小特集:

179

回例会報告,地図,45(2),20-24.

図 4

(b)  GIS

ソ フ ト 使 用 経 験 が あ る グ ル ー プ  

図 4 (a)  GIS ソ フ ト 未 経 験 の グ ル ー プ  めてGIS ソフトを使用したグループの成果と,すでに使用経験のあるグループの成果を,図4に示す.経験の有無による地図表現における特に大きな差は感じられなかった. 4.証言と地図による空間認識   午後の部の企画にはさらに,被爆者の証言を聞くというプログラムを入れていた.証言に立った被爆者の奥本博氏は,会場の袋町小学校近くに当時から住んでおられた方である.袋町小学校に通う児童, あるいは小学校出身の参加者にとっては,同級生,友人の祖父にあ

参照

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