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佛教大學研究紀要 57号(19730314) 173高橋貞一「異本義經記」

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Academic year: 2021

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全文

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異 本 義 經 記 一 七 三

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一 七 四 凡 例 一 、 本 書 は 叡 山 文 庫 藏 、 異 本 義 經 記 を 底 本 と し て 、 略 注 を 施 し 、 章 段 を 設 け て 、 義 經 傳 読 の 研 究 に 資 せ ん と す る も の で あ る 。 一 、 底 本 の 片 假 名 を 夲 假 名 に 改 め 、 且 つ 假 名 遣 の 不 備 を 補 ひ 、 松 井 文 庫 舊 藏 本 を 以 て 誤 蛻 を 正 し 、 又 漢 字 の 誤 り を 訂 正 し て 、 研 究 者 の 便 に 供 し 、 本 文 に 句 讀 點 、 濁 點 を 付 し て 讀 解 に 便 な ら し め た 。 一 、 本 文 中 の 注 と 認 む べ き も の は 二 字 さ げ て 組 み 、 本 文 と の 別 を 明 確 に し た が 、 注 の 成 立 時 は 不 明 で あ る 。 一 、 本 書 の 出 版 に つ い て は 、 叡 山 文 庫 の 御 配 慮 を 深 く 感 謝 す る 次 第 で あ る 。 昭 和 四 十 五 年 九 月 十 一 日

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異 本 義 經 記 目 次 卷 上 義 朝 子 女 ・ 一 七 九 義 經 生 立 . 鞍 馬 入 一 八 〇 聖 門 坊 一 益 、遮 那 王 貴 船 詣 一 八 一 橘 次 季 春 . 深 栖 陸 助 重 頼 一 八 二 遮 那 王 海 道 卞 ・ 一 八 二 遮 那 王 奥 州 下 着 一 ゜八 七 鬼 一 法 眼 . 義 經 上 洛 一 ﹂八 七 湛 海 被 斬 、 ・ 曁 一 九 〇 増 尾 十 郎 權 頭 秉 房 ゜ 一 九 四 武 藏 坊 護 ・ . 充 四 常 陸 房 海 尊 , ・ ・ ' : ・ -・ 晶 九 五 鈴 木 重 善 、, ' " ・ 、 ' ・ 齟 ・ ° 一 九 六 異 本 義 經 記 洲 七 五 ゜

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一 七 六 、 鷲 尾 三 郎 b 源 八 廣 綱 心 江 田 源 三 ・ 熊 井 太 郎 ・ 駿 河 次 郎 一 九 八 備 前 夲 四 郎 -l o o 鎌 田 兵 衞 娘 牛 王 二 〇 〇 關 原 與 一 ・ 牛 王 最 後 二 〇 三 義 經 奥 州 下 向 二 〇 四 義 經 夲 家 追 討 鹽 二 〇 五 -義 經 大 嘗 會 前 驅 ・ 二 〇 七 屋 嶋 合 戰 二 〇 八 壇 浦 合 戰 義 經 景 時 不 和 , 三 〇 卷 下 義 經 鎌 倉 下 向 一二 四 土 佐 房 被 斬 三 ・六 義 經 都 落 一二 九 靜 鎌 倉 下 向 一ご 一三 梶 原 景 茂 靜 無 禮 二 二 五 義 經 多 武 峯 入 二 二 六

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禪 林 房 覺 日 糺 問 . 二 二 七 常 盤 糺 問 二 二 九 守 覺 法 親 王 述 懐 二 三 〇 義 經 小 舍 人 童 五 郎 丸 二 三 四 堀 彌 太 郎 景 光 生 捕 一一 三 五 佐 藤 忠 信 討 死 二 三 五 南 都 勸 修 坊 得 業 聖 弘 二 三 六 , 山 口 太 郎 家 任 二 三 七 景 時 家 人 河 津 小 五 郎 、 二 三 九 鈴 木 重 家 二 四 〇 義 經 討 死 二 四 二 義 經 室 家 仕 女 物 語 二 四 二 義 經 奥 州 下 向 二 四 三 頼 朝 奥 州 征 伐 二 四 四 秀 衡 死 去 二 四 七 忠 衡 討 死 二 四 八 義 經 首 葬 , 二 五 〇 異 本 義 經 記 一 七 七

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建 仁 二 年 蹊 謀 常 陸 國 流 誅 異 本 義 經 記 巻 上 (義 朝 子 女 ) ( 一 ) ( 二 ) 左 馬 頭 義 朝 の 息 男 以 上 十 人 の 内 、 八 田 筑 前 守 は 出 生 の 時 、 宇 都 宮 左 衞 門 尉 知 綱 が 子 に し て 、 義 朝 の 子 の 内 へ は 入 れ ず 、 姓 も 藤 原 と 改 む 。 義 朝 の 嫡 子 、 惡 源 太 義 夲 夲 治 二 年 誅 、 二 男 中 宮 大

(障

矇流ガ

熱 田 大 宮 司 秀 範 の 娘 の 腹 の 息 女 、 後 藤 兵 衞 實 基 養 君 に し て 育 て 、 左 馬 頭 良 保 朝 臣 の 妻 室 是 也 。 ( 六 ) 鎌 田 兵 衞 方 に て 育 て 給 ふ 息 女 、 李 治 の 亂 の 時 、 義 朝 の 命 に 依 て 、 政 家 指 殺 し た る ぞ 。 美 濃 國 青 ( 七 ) 墓 の 長 者 大 炊 が 娘 延 壽 女 が 腹 の 息 女 は 、 同 亂 の 時 自 ら 杭 瀬 川 へ 入 水 有 り し そ 。 (八 ) 小 田 系 圖 に 云 、 義 朝 子 、 八 田 四 郎 武 者 所 筑 前 守 左 衞 門 尉 知 家 、 李 治 沒 落 之 後 、 宇 都 宮 左 衞 門 知 綱 瓢 羈 守 養 育 之 爲 子 。 頼 朝 執 權 之 時 、 多 誅 源 氏 族 之 問 、 恐 其 權 威 、 子 孫 稱 藤 原 。 康 治 元 年 二 月 十 三 日 卒 、 七 十 五 歳 。 法 名 尊 念 、 號 極 樂 寺 云 去 。 或 云 、 爲 八 田 權 守 宗 綱 子 、 故 號 八 田 四 郎 藤 原 知 家 。 七 代 の 後 常 陸 介 正 三 位 左 中 將 治 久 代 、 尊 氏 上 洛 之 時 、 同 時 昇 殿 、 改 藤 原 源 氏 と 有 。 異 本 義 經 記 一 七 九

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一 八 〇 (義 經 生 立 ・ 鞍 馬 入 ) 大 夫 剣 官 伊 豫 守 從 五 位 下 義 經 、 母 九 條 院 官 婢 、 常 盤 、 夲 治 元 己 卯 年 、 洛 北 紫 竹 に て 生 ま る 。 父 義 朝 討 た れ し 時 、 常 盤 子 共 を 隱 さ ん が た め 、 今 若 丸 八 歳 、 乙 若 丸 六 戯 、 手 を 曳 き 、 牛 若 丸 二 歳 ( 九 ) な る を 抱 き 、 李 治 二 年 二 月 九 日 の 夜 、 清 水 寺 の 觀 音 へ 詣 う で 、 義 朝 の 菩 提 、 子 共 の 行 末 を 所 す ぐ ( 一 〇 ) り 、 其 れ よ り 直 に 大 和 國 宇 陀 郡 へ 志 し て 落 ち 行 く 。 龍 門 と 云 ふ 所 に 常 盤 が 母 方 の 叔 父 の 有 り け と ら れ ば 、 其 れ を 頼 み て 隱 れ 居 た り け る に 、 京 に て 常 盤 が 母 を 囚 へ て 、 常 盤 並 び に 子 共 の 行 衞 を 責 や め 問 ふ の 由 告 げ 來 た り し 故 、 常 盤 も 遣 る 瀬 な く 、 子 共 三 人 引 具 し て 京 へ 出 で た り 。 常 盤 は 今 ( = ) ゆ る 年 二 十 五 、 都 に 名 を 得 た る 美 女 な り し ゆ ゑ 、 清 盛 思 ひ 初 め て 、 子 共 を も 赦 し た り と に や 。 今 若 は 醍 醐 に 登 せ て 出 家 さ せ ・ . 鑒 全 成 ・ 後 阿 野 禪 師 と 云 う た ぞ ・ 乙 若 雛 鐸 圓 と て 、 八 條 宮 の 坊 官 法 師 に て ぞ 有 り け る 。 九 條 院 藤 原 呈 子 、 關 白 忠 通 公 女 、 實 太 政 大 臣 伊 通 公 女 、 近 衞 院 后 。 八 條 宮 、 後 白 河 院 皇 子 、 ( 三 井 ) 圓 滿 院 圓 惠 法 親 王 。 常 盤 清 盛 に 馴 れ て 息 女 を 産 み て 後 、 一 條 大 藏 卿 長 成 朝 臣 の 妻 室 に な り て 、 爰 に て も 子 共 出 で そ だ ( 一 二 ) 來 た り 。 牛 若 は 暫 く 繼 父 長 成 朝 臣 の 方 に て 育 立 つ 。 七 つ の 歳 鞍 馬 寺 の 阿 闍 梨 東 光 坊 圓 忍 の 弟 子 に な り 、 翌 年 二 月 鞍 馬 寺 に 入 る 。 十 四 歳 に て 圓 忍 の 弟 子 、 禪 林 房 阿 闍 梨 覺 日 が 附 弟 に な り て 、 改 名 、 遮 那 王 丸 ヒ 云 う た ぞ 。 清 盛 兼 ね て 常 盤 が 子 供 法 師 に な せ と 宣 ひ た る に よ り 、 兄 二 人 も 法 師

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に な し て け り 。 牛 若 も 十 三 の 年 得 度 さ せ 給 へ と 、 母 の 常 盤 も 繼 父 長 成 朝 臣 も 宣 ひ け れ ば 、 圓 忍 ( 一 三 ) も 良 智 房 の 快 圓 も 、 然 る べ き 事 の 由 宣 ひ し に 、 禪 林 房 覺 日 兎 角 延 ば し て 、 十 六 歳 ま で 得 度 な か り し 事 、 禪 林 房 色 に 愛 着 せ し 故 也 と そ 。 常 盤 容 貌 美 麗 な る を 、 義 朝 愛 し 妾 と し て 、 三 人 の 男 子 つ や こ ま を 産 み 、 遮 那 王 母 に 似 て 其 の 艶 濃 や か な り ヒ 語 。 (聖 門 坊 ) ( 一 三 ) 其 の 頃 四 條 坊 門 に 聖 門 房 と 云 へ る 者 有 り 。 鎌 田 政 家 が 妾 の 腹 の 嫡 子 に て 、 月 輪 院 に し て 出 家 に 成 り 山 門 記 に ば 月 輪 寺 と 有 り 、 諸 國 を 遊 行 し て 京 へ 歸 り 、 四 條 坊 門 に 住 み け り 。 治 承 年 中 還 俗 ( 一 四 ) し 、 鎌 田 藤 太 盛 政 と 云 ひ 、 弟 を 藤 次 光 政 と 云 ひ て 、 讃 岐 國 に て 兄 弟 共 に 討 死 す 。 末 は 女 子 に て つ い で 牛 王 女 と 云 ひ た る ぞ 。 聖 門 房 折 々 遮 那 王 殿 へ 参 り て 、 物 語 の 序 に は 、 御 家 を 興 し 給 へ と 勸 め し と メ 云 。 ( 遮 那 王 貴 船 詣 ) 遮 那 王 、 早 足 飛 越 な ん ど し 給 ふ に 、 外 の 人 よ り も 身 輕 く 有 り し そ 。 十 四 歳 の 秋 の 頃 よ り 、 惡 あ つ ぎ き 僣 な ど 聚 め 、 木 太 刀 に て 打 合 ひ 給 ふ に 、 手 利 に て 四 五 人 を 只 一 人 し て 打 勝 ち 給 ふ と に や 。 常 に す ぐ い つ ひ た 眦 沙 門 堂 へ 參 り 給 ひ て 、 直 に 貴 布 禰 へ 詣 う で 給 ふ 事 有 り 。 何 の 頃 よ り か 夜 毎 に 潜 と 貴 船 へ 參 り s 給 へ り 。 或 夜 禪 林 房 と 同 門 葉 、 和 泉 律 師 と 示 し 合 せ 、 跡 に 付 き て 行 き た る に 、 遮 那 王 、 先 づ 本 異 本 義 經 記 一 八 一

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一 八 二 く も い と く ら 堂 へ 參 り 、 其 れ よ り 貴 船 へ 詣 う で 給 ふ 。 折 篩 空 掻 暗 り 、 最 闇 き に 、 人 十 人 計 り の 聲 し て 、 山 の た に た ま し ひ ひ や く さ む ら や う や う は う 上 か と 思 へ ば 、 谿 の 底 に あ り 。 又 管 絃 の 音 聞 ゆ 。 禪 林 房 も 和 泉 も 魂 を 冷 し 、 叢 を 漸 々 匍 匐 て 寺 に 歸 り し と 云 へ り 。 遮 那 王 、 僣 正 が 谿 に て 大 天 狗 に 兵 法 を 習 ひ 給 ふ と 寺 中 沙 汰 し あ へ り 。 ひ そ か い さ さ 或 時 覺 日 密 に 遮 那 王 殿 に 此 の 事 を 尋 ね し に 、 聊 か も 宣 ふ 事 も な く 、 只 貴 船 へ 夜 毎 に 詣 す と 計 り 答 へ ら れ し と か や 。 ( 橘 次 季 春 ・ 深 栖 陸 助 重 頼 ) ( 一 亠 ハ ) こ か ね あ き 三 條 の 橘 次 季 春 と 云 ふ 金 商 人 有 り 。 後 の 堀 彌 太 郎 景 光 は 此 の 季 春 と 云 へ り 。 毎 年 奥 州 ( へ 下 し た し ふ か す を か の る ) 。 秀 衡 が 方 へ も 出 入 す と 也 。 遮 那 王 、 橘 次 が 參 詣 毎 に 眤 み 給 ふ 。 又 下 總 國 の 住 人 深 栖 陸 助 ( 一 七 ) 夜 イ 重 頼 と 云 へ る 者 、 其 の 頃 大 番 に て 在 京 し た り 。 鞍 馬 を 信 じ て 、 苺 度 參 籠 す る 。 遮 那 王 、 是 に も ち な う つ か 眤 み た る ぞ 。 去 年 橘 次 奥 へ も 下 る 時 、 秀 衡 が 方 へ 、 京 に も 住 み 憂 け れ ば 頼 み 下 ら ぼ や と 宣 ひ 遣 き ん だ ち お て は さ れ け れ ば 、 秀 衡 、 當 時 朝 敵 の 公 達 な れ ば 、 尊 敬 す る 事 、 上 へ 其 の 惶 れ も 有 り な ん 。 兩 國 は し ん だ い い か 秀 衡 が 身 帶 な れ ば 、 下 り 給 は ば 、 無 下 に は 爭 で か 計 ら ふ べ き と 申 し た り し ゆ ゑ に 、 思 ひ 立 ち 給 へ り 。 (遮 那 王 海 道 下 ) 陸 助 重 頼 、 大 番 明 け て 本 國 へ 下 る に よ り 、 橘 次 ど 示 し 合 せ た れ ど も 、 重 頼 所 勞 ゆ ゑ に 滯 り .

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( 一 八 ) か ど で 橘 次 、 遮 那 王 殿 を 相 件 ひ 、 承 安 四 年 三 月 三 日 、 鞍 馬 を 首 途 、 時 に 常 に 住 み 給 ふ 障 子 に 、 皈 り こ ん 皈 り こ ん と は 思 へ 共 定 め な き 世 に 定 め な け れ ば と 書 き 給 ふ ど に や 。 牛 若 丸 の 影 、 鞍 馬 に あ り 。 古 翁 云 ふ 、 往 昔 禪 林 房 阿 闍 梨 覺 日 、 天 性 畫 に 達 す 。 牛 若 丸 の 影 い つ を 畫 く と 云 ふ 。 何 の 頃 紛 失 し た る に や 。 鞍 馬 に 其 の 沙 汰 な し 。 今 有 る 處 の 牛 若 丸 の 影 は 、 う し ろ 土 佐 某 畫 く 所 な り 。 児 の 形 、 眉 を 取 り 長 絹 を 着 す 。 後 に 松 竹 を 畫 く 屏 風 あ り 。 左 の 方 に 太 方 イ か た は ら 刀 立 て 掛 け て 有 り 。 同 じ く 下 に 鳥 帽 子 筥 笛 あ り 。 又 本 堂 の 傍 に あ る 申 . 魔 王 僣 正 左 、 役 の 小 角 右 、 牛 若 丸 一 幅 に 畫 く 。 牛 若 の 面 相 右 に 顯 す と 同 じ 。 鞍 馬 寺 僣 の 云 は く 、 此 の 三 像 の 畫 、 狩 野 元 信 に 望 む の 處 に 、 魔 王 僣 正 の 姿 を 元 信 案 ず る の 時 、 心 空 に 成 っ て 、 忽 然 と 魔 王 僣 正 の 形 現 ず 。 元 信 奇 特 の 思 ひ を な し 、 則 ち 筆 を 執 っ て 此 の 姿 を 寫 さ ん と す る 時 、 天 井 よ り 一 つ の 蜘 蛛 ま ひ 下 り て 、 彼 の 三 像 の 姿 を 畫 く 如 く 糸 を 引 く 。 元 信 其 の 跡 を 留 め 、 成 就 す る の 後 、 俄 に 風 吹 き 來 た り 、 彼 の 三 像 の 畫 を 吹 き ま く り 、 盧 空 を 飛 ば し 、 鞍 馬 寺 の 内 陣 へ 吹 き 入 る る 、 世 に 奇 異 の 思 ひ を な せ り 。 則 ち 三 像 の 姿 を 糸 引 き た る 蜘 蛛 を も 同 じ く 畫 く 。 鞍 馬 寺 の 内 陣 に 有 る 處 の 三 像 是 な り 。 ( 一 九 ) 熊 坂 張 樊 と 云 ふ 盜 人 、 加 賀 國 熊 坂 の 者 と そ 。 美 濃 國 赤 坂 の 宿 に て 夜 討 し て 牛 若 丸 に 討 た れ し と 云 へ り 。 ( 二 〇 ) 傳 に 曰 く 、 張 樊 の 事 、 十 三 の 歳 、 伯 父 の 馬 を 盜 み 市 に 出 で て 費 り し よ り 鍛 錬 し た る と に や 。 異 本 義 經 記 ﹂ 一 八 三

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一 八 四 あ ぶ 二 十 一 の 歳 法 師 に な り 、 張 良 の 張 の 字 と 樊 喰 の 樊 の 字 を 取 り 、 張 樊 と 名 乘 る 。 國 々 の 溢 れ や ぎ し た あ さ ふ 者 を 集 め 、 其 の 將 た る の 由 云 ひ 傳 へ り 。 由 利 太 郎 、 藤 澤 入 道 、 柳 下 小 六 、 淺 生 松 若 、 三 國 九 郎 、 壬 生 小 猿 な ど 云 ふ 者 、 其 の 頃 の 盜 人 と 云 へ り 。 よ ろ こ も て な 遮 那 王 、 青 墓 に 着 給 ひ て 、 長 者 大 炊 が 方 へ 立 寄 り 給 ふ に 、 大 き に 歡 び て 饗 し 奉 り し そ 。 大 炊 は ( 二 一 ) 源 氏 の 恩 顧 の 者 也 。 大 炊 が 娘 延 壽 は 、 義 朝 の 愛 妾 也 。 大 炊 が 姉 は 六 條 剣 官 爲 義 の 乙 若 丸 以 下 四 ( t i l l ) 人 の 子 共 の 母 也 。 大 炊 が 兄 、 内 記 李 太 政 遠 は 、 保 元 の 亂 の 時 殉 死 し た る ぞ 。 大 炊 弟 、 李 三 郎 眞 わ し の づ う つ み あ ら は 遠 は 出 家 し て 、 鷲 栖 玄 光 と 云 ひ て 、 義 朝 を 内 海 へ 途 り 奉 り 、 長 田 が 家 人 と 戰 ひ 、 勇 武 を 顯 し た ひ た す ら る 也 。 大 炊 、 遮 那 (王 ) 殿 に 一 向 御 家 を 興 し 給 へ と 申 し た る と そ 。 玄 光 を 御 供 さ せ ん と 云 ひ し と ど を 、 季 春 止 め し と 云 へ り 。 か た み 青 墓 の 里 人 云 ふ 、 遮 那 殿 、 長 者 大 炊 が 庭 前 に 楊 枝 を 指 し て 詠 歌 あ り 。 さ し お く も 記 念 と な れ や 後 の 世 に 源 氏 榮 え ば よ し 竹 と な れ 其 の 楊 枝 よ り 竹 と な り て 、 枝 葉 茂 り て 今 に 有 り と 云 へ り 。 ( 二 三 ) 遮 那 王 、 尾 張 國 熱 田 大 宮 司 砧 範 の 方 に て 、 三 月 十 二 日 元 服 、 前 大 宮 司 季 範 の 娘 、 義 朝 の 本 妻 也 。 是 頼 朝 希 義 の 母 公 に て 、 其 の 弟 今 の 大 宮 司 砧 範 也 。 鳥 帽 子 に 小 結 し て 、 裝 東 相 調 へ 進 ら す る 。 則 ち 源 九 郎 義 經 と 號 す 。 か ね す べ 元 服 は 烏 帽 子 髮 に 髮 先 を か り 、眉 毛 を 剃 り 落 し 眉 を 作 り 、 黒 齒 黒 く す 。 上 臈 の 元 服 都 て 此 く の 如 し 。 鳥 帽 子 を 初 め て 着 す ゆ ゑ に 首 服 共 云 へ り 。 年 二 十 ま で の こ と 也 。 堂 上 に は 十 三 に

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な つ し て 眉 取 り 、 黒 齒 付 く る 、 十 八 歳 ま で と 云 へ り 。 東 妻 に て 小 結 し た る 鳥 帽 子 を 、 昔 は 號 け か ぶ と ぬ て 牛 若 帽 子 と 云 ふ 。 又 古 代 疊 鳥 帽 子 と 云 ふ 有 り 。 た ∼ み た る 烏 帽 子 を 着 し 、 甲 を 脱 い で 鳥 帽 子 を 用 ゐ る 時 ・ 藤 篶 撃 を 曳 き 立 て た 詮 見 え た り ・ 谿 密 に ・ 素 路 へ 耋 剣 官 基 盛 承 っ て 向 ふ に 、 淺 黄 絲 の 鎧 に 、 上 を り し た る 烏 帽 子 の 上 に 、 白 星 の 甲 を 着 す と あ り ・ 即 薔 ・ 覇 御 前 へ 召 さ る ・ 赤 地 の 錦 の 直 垂 ・ 折 鳥 撃 引 立 て と あ り 。 皆 以 て 疊 繕 子 の 事 也 。 前 漢 昭 帝 紀 、 元 鳳 四 年 春 正 月 乙 亥 、 帝 加 元 服 。 注 、 如 淳 日 、 元 服 謂 初 冠 、 加 上 服 也 。 師 古 日 、 如 淳 以 爲 滾 服 之 服 。 此 説 非 也 。 元 首 也 。 冠 ( 者 ) 首 之 所 着 。 故 日 元 服 。 其 下 汲 暗 荊序 云 、 上 正 元 服 。 是 知 謂 冠 爲 元 服 。 如 淳 臣 讃 等 漢 書 注 者 之 内 也 。 纛 杳 司 の 方 に 四 吾 逗 留 ま し ま し 、 其 れ よ り 三 河 麌 矧 の 長 が 許 に 宿 魏 騒 。 世 に 云 ひ 傳 ふ 、 三 河 國 矢 矧 の 宿 の 長 者 が 娘 、 淨 瑠 璃 姫 、 伏 見 源 中 納 言 師 仲 卿 息 女 と 云 ふ 。 夲 治 二 年 師 長 卿 配 所 、 室 の 八 嶋 へ 下 り 給 ふ 時 、 三 河 の 八 橋 に て 、 夢 に だ に 角 て 三 河 の 八 橋 を 渡 る べ し と は 思 は ざ り し を と 讃 み 給 ひ し を 聞 し 召 し て 、 程 な く 召 し 皈 さ れ 給 ふ と 云 ふ 。 矢 矧 に 逗 留 の 時 、 長 者 に 相 馴 れ 儲 け 給 ふ 子 と 云 へ り っ 母 鳳 來 寺 の 藥 師 を 信 じ て 出 生 す る ゆ ゑ 、 其 の 名 を 付 け た り 。 美 女 に て 有 り け り 。 纛 長 が 許 に 蘯 有 り し に ・ 婬 諍 へ 請 U 奉 り 雷 垂 み ・ 姫 も 轟 き ・ 婆 を 催 す . 義 經 姫 異 本 義 經 記 一 八 五

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一 八 六 に 密 通 契 り 給 ふ 。 其 の 後 、 重 頼 も (出 で ) 來 た り 。 相 俘 ひ 奥 へ 下 り 給 ふ 。 姫 は 別 れ を 惜 み て 勞 り 臥 し て 、 絡 に 空 敷 な る 。 年 十 四 、 弄 ぶ 所 の 器 物 、 鳳 來 寺 に 納 む と 云 へ り 。 其 の 時 の 鏡 、 鳳 來 寺 巖 本 院 に 今 に 有 り 。 古 代 の 物 と そ 。 義 經 笛 の 器 量 有 り と 云 へ り 。 或 説 ( 二 八 ) ま ゐ ( 二 九 ) に 彈 折 義 朝 に 有 り し を 、 常 盤 是 を 取 り て 御 曹 司 に 進 ら せ し と 云 へ り 。 駿 河 國 有 度 郡 久 能 山 縁 起 に 曰 く 、 源 義 經 有 笛 、 號 薄 墨 、 寄 進 此 寺 、 嘉 祿 年 中 回 祿 、 笛 も 又 燒 失 す ヒ ♂ 。 と ど 義 經 其 れ よ り も 下 總 國 に 着 き 給 ひ 、 重 頼 が 方 に 逗 ま り 、 橘 次 は 奥 へ 下 り し と そ 。 義 經 深 栖 が 館 い ま ひ げ に 在 す 内 、 其 の 邊 の 野 に 馬 盜 人 有 り て 、 人 々 騒 ぐ 。 大 の 髯 男 の 大 太 刀 を 拔 い て 待 ち 掛 け た り 。 へ き え き た め ら 重 頼 が 家 人 を 初 め 、 是 に 辟 易 し て 獪 豫 ひ 居 た る 處 へ 、 義 經 御 曹 司 走 り 來 た り 給 ひ て 、 小 太 刀 を う で く び む ね し た た か 拔 い て 、 彼 の 盜 人 の 太 刀 持 ち た り し 腕 首 を 、 太 刀 の 心 に て 強 に 打 ち 給 へ ば 、 打 た れ て 太 刀 を む ね う ち う 取 り 落 す 所 を 、 太 刀 の 心 に て 重 ね 敲 に 擣 ち 倒 し 、 袴 の 腰 を 蹈 み 付 け 給 ふ 處 へ 、 人 皆 寄 り て 搦 め あ り さ ま わ ざ け り 。 其 の 形 勢 、 凡 夫 の 業 に 非 ら ず と 重 頼 を 初 め と し て 、 皆 々 大 き に 驚 き た り 。 其 の 上 、 下 總 あ れ あ れ 國 に て も 鳴 黎 は 誰 が 領 ぞ 。 打 殺 し 押 領 せ ん 、 鳴 黎 が 館 は 要 害 に 能 き 所 な れ ば 、 防 ぐ に よ し な ん も ど 宣 ひ し 程 に 、 重 頼 も 角 て は 夲 家 へ 聞 え な ん と 持 て 扱 ひ ( て ) 居 た し が 、 其 の 年 の 秋 、 と て も い く 思 召 す 事 あ ら ば 猛 勢 の 者 こ そ 便 も 候 へ 、 重 頼 な ん ど が 領 幾 ( ぼ く ) な ら ず 候 へ ば 、 秀 衡 が 方 へ よ く よ く し た し 御 越 し あ っ て 、 能 々 眤 近 み お は し ま せ か し と 申 し た り し に 、 御 曹 司 も 、 實 に も と や .思 召 し け ん 、 さ ら ば 下 ら ば や と て 、 九 月 中 旬 に 出 で 給 ふ 。 小 侍 一 人 、 僕 從 二 人 添 へ て 途 り け り 。 ( 三 〇 ) 深 栖 陸 助 、 舊 本 に 重 頼 に 作 る 。 頼 重 也 。 兵 庫 頭 源 仲 政 二 男 、 三 位 頼 政 弟 、 深 栖 三 郎 光 重 子

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也 。 ( 遮 那 王 奥 州 下 着 ) つ ら だ ま し ひ い か さ ま 上 野 國 松 井 田 と 云 ふ 處 に 宿 し 給 ふ 。 主 の 男 二 十 四 五 計 な る が 、 頬 骨 何 樣 用 に 立 つ べ き 者 と 見 は た ざ し 給 ひ て 、若 し も の 事 あ ら ば 、 旗 指 に も よ か り な ん と 思 召 し 、自 然 の 事 も あ ら ん 時 は 頼 む べ し と 宣 へ ば 、 あ讌 じの 云 は く 、 殿 は い ま だ 少 年 の 身 と し て 、 何 事 の 有 り て 自 然 の 事 の 有 り と は 宣 ふ ぞ 。 何 事 ぞ ・ 有 腑 譴 螢 ハの 時 の 事 に て こ そ 候 は ん と て ・ し か ぐ 共 云 は ず ・ 心 の 内 に て は ・ 擁 慰 お ぽ ゆ る ひ き い れ 者 哉 。 馬 盜 人 ご ざ ん な れ 。 但 し 色 好 き 小 冠 者 な れ ば 、 人 の 搖 れ て 心 を 許 さ せ 、 夜 盜 の 引 入 せ ん ( = 二 ) 爲 か と 思 ひ 、 心 を 許 さ ざ り け る と に や 。 季 和 泉 に 着 き 給 へ ば 、 秀 衡 、 我 が 館 へ 入 れ 參 ら せ 、 兩 國 は 秀 衡 が 身 帶 な り 。 礎 ∼ぎ 冠 者 殿 な れ ば 、 子 な き 者 は 子 に も し 、 娘 持 ち た ら ん 者 は 聟 公 に も 取 い と ほ り 奉 り な ん 。 其 の 内 は 秀 衡 が 方 に 御 坐 せ と て 、 最 愛 し み け る と そ 。 ( 鬼 一 法 眼 ・ 義 經 上 洛 ) 都 一 條 堀 河 に 陰 陽 師 鬼 一 法 眼 と 云 ふ 者 有 り 。 希 代 の 軍 書 を 持 つ 。 是 醍 醐 帝 延 長 元 年 五 月 、 從

(三 四 ) (三 五 ) 公 、 張 良 に 傳 ふ る 所 の 兵 書 と 夢 。 維 時 七 代 の 後 、 式 部 大 輔 匡 時 告 げ に 依 っ て 鞍 馬 へ 奉 納 有 り し 秘 書 也 。 鬼 一 、 夢 想 を 請 け 、 奏 聞 を 經 、 下 し 預 る と 云 へ り 。 義 經 是 を 聞 き 給 ひ 、 甚 だ 執 心 し 、 異 本 義 經 記 一 八 七

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一 八 八 都 へ 上 り 拵 へ て 見 ぼ や と 思 ひ 立 ち 給 ふ と に や 。 橘 次 季 春 が 京 上 り を 幸 ひ に 、 安 元 二 年 二 月 十 一 日 、 夲 和 泉 を 出 で 給 ふ 。 道 に て 橘 次 に 宣 ふ は 、 下 り の 時 、 上 野 の 松 井 田 と 云 ふ 所 に 宿 し た り 。 い か さ ま 主 の 男 、 何 樣 用 に 立 っ べ き 者 と 見 え た り 。 松 井 田 に 宿 し て 、 彼 の 男 の 方 へ も 尋 ね て 見 ば や と 宣 此 前 イ ひ て 、 松 井 田 に 宿 し 給 ひ 、 義 經 以 前 の 主 の 方 へ 尋 ね 給 へ ば 、 主 立 ち 出 で 、 此 れ 以 前 も 見 え た る 人 よ 。 何 の 用 ば し 有 り て 來 給 ふ ぞ 。 家 の 内 の 物 に 用 事 侍 る か と 云 ひ た る に 、 義 經 、 吾 は 人 の 心 を 頼 み て 用 有 り 。 但 し 和 殿 は 器 用 の 人 な る に 、 か ∼ る 所 に 住 み 給 ふ 事 ぞ 。 當 時 夲 家 の 繁 昌 な る ノ か ら か ら わ ら に 、 都 へ 上 り 夲 家 方 を 頼 み 身 を 立 て 給 は ざ る や と 宣 ひ け れ ば 、 主 、 呵 々 と 打 嘆 ひ 、 無 盆 の 事 を は 宣 ふ 物 哉 。 吾 は 未 だ 目 あ り 。 耳 あ り 、 何 の 用 に 夲 家 の 被 官 に 成 る べ き や 。 喰 む 物 無 (く ば ) 頸 く く さ て あ た 拘 り て も 死 ぬ ぞ か し と 申 し た り 。 義 經 、 偖 は 和 殿 は 李 家 の 人 々 に 仇 有 る 人 歟 。 主 、 詮 無 き 事 を ね ( 一二 亠ハ ) 云 ひ 出 し 根 問 ひ し 給 ふ ぞ 。 某 は 生 國 伊 勢 の 國 の 者 に て 候 。 親 に て 候 者 は 、 河 嶋 二 郎 俊 盛 と 申 し て 、 勢 州 三 重 郡 河 嶋 と 申 す 所 に 住 み 候 。 俊 盛 が 親 、 左 衞 門 尉 俊 實 、 堀 河 院 の 北 面 に て 、 彼 の 河 嶋 を 賜 は り 、 代 々 領 し て 候 所 、 某 四 歳 の 年 、 親 に て 候 俊 盛 病 死 し て 、 母 計 に て 候 を 、 伊 勢 守 つ 景 綱 、 彼 の 河 嶋 を 押 領 す 。 母 吾 を 連 れ て 都 へ 上 り 、 此 の 事 を 夲 家 へ 訴 ふ と い へ ど も 、 馬 の 耳 に 風 の 吹 く が 如 く 、 用 も な き や つ 哉 と て 、 景 綱 が 代 官 に 云 ひ 付 け て 、 河 嶋 を 追 ひ 出 さ れ て 候 、 某 十 七 の 歳 、 河 嶋 へ 行 き て 、 景 綱 が 代 官 を 夜 討 に し 、 其 れ よ り 鈴 鹿 山 の 麓 に 居 て 、 景 綱 が 古 市 ひ と や よ り 京 上 り す る を 待 ち 請 け て 、 一 箭 射 ば や と 思 ひ 候 に 、 何 者 の 云 ひ け る に や 、 山 賊 の 有 る ぞ と い け ど て 押 寄 せ た る に 、 太 刀 拔 き 合 せ 切 り 結 ぶ 。 然 れ ど も 大 勢 に 取 籠 め ら れ 虜 ら れ て 、 此 の 所 へ 流 さ

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殿 も イ あ り れ 、 六 年 を 經 候 。 殿 に も 若 し 迷 ひ 歩 行 き 給 ふ 人 な ら ば 油 斷 ば し し 給 ふ な と そ 語 り け る に よ り て 、 義 經 、 吾 は 義 朝 の 子 の 由 宣 ふ 。 主 大 き に 驚 き て 、 さ れ ば こ そ と よ 、 只 人 に て は な か り け り し り ぞ す の こ と て 、 座 を 立 ち 退 き て 、 次 の 簀 子 に 蹲 踞 す 。 義 經 、 自 然 の 事 も 有 ら ん 時 は 頼 む べ し と 宣 へ ば 、 は や 速 今 日 よ り 主 君 と 仰 ぎ 奉 ら ん と 云 へ り 。 伊 勢 三 郎 武 盛 と 云 ひ た り し を 、 義 の 字 を 賜 は り 、 義 盛 と 名 乘 る 。 其 の 時 隨 ひ 奉 り て よ り 二 心 な く 忠 勤 を 抽 ん で 、 名 を 今 の 世 ま で 殘 し た り し 伊 勢 三 郎 つ 義 盛 是 也 。 則 ち 御 供 仕 る べ き と て 、 屬 き 奉 り 暫 く 在 京 し た り が 、 故 郷 も 心 元 な く 思 ふ ら ん と て 、 義 盛 を ば 上 野 へ 皈 し 給 ふ と そ 。 (三 七 ) 、 義 盛 親 俊 盛 の 宅 地 の 跡 同 一 塚 、 勢 州 川 嶋 に あ り 。 義 經 、 都 一 條 大 藏 卿 長 成 朝 臣 の 方 へ 上 着 有 り て 、 後 、 四 條 の 聖 門 房 を し て 、 一 條 堀 河 の 鬼 一 法 眼 が 方 へ 宣 ひ た り し そ 。 ( 三 八 ) 吉 岡 本 に 、 四 月 廿 日 義 經 法 眼 が 方 へ 來 た り 給 ふ と 語 。 ( 三 九 ) 鬼 一 法 眼 、 生 國 伊 豫 國 吉 岡 の 者 と に や 。 都 へ 上 り 陰 陽 師 に て 有 り し そ 。 宇 治 殿 の 諸 大 夫 、 式 部        大 輔 盛 憲 が 所 縁 に よ り て 、 頼 長 公 法 眼 に な し 給 ひ て 、 吉 岡 法 眼 憲 海 と 云 ひ た る と に や 。 童 名 鬼 一 丸 と 云 ひ し ゆ ゑ に 、 宇 治 殿 常 に 鬼 一 法 師 と 召 さ る 。 是 に 依 つ て 世 人 も 鬼 一 法 眼 と 呼 び た る と 云 へ り 。 義 經 鳥 帽 子 に 小 結 し て 、 絹 紋 紗 の 直 垂 、 白 き 大 口 、 金 作 り の 太 刀 、 虎 の 皮 の 励 韈 入 れ か ね て 兒 立 な れ ぼ 、 (眉 取 っ て ) 黒 齒 黒 に し て 、 時 に 年 十 八 歳 、 麗 質 婦 人 の 如 し 。 聖 門 房 、 伊 勢 三 郎 其 の 砌 り に あ り 。 異 本 義 經 11flII 1 八 九

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一 九 〇 目 利 書 曰 く 、 金 作 り の 太 刀 、 備 前 友 成 作 、 二 尺 一 寸 。 法 眼 齷 露 の 袴 、 銀 に て 覊 讐 た る 刀 嵳 し 、 女 二 人 に 介 錯 せ ら れ 、 座 に 驟 り 、 (讐 司 を 席 に 招 き 、 詞 細 か な り と 雖 も 、 兵 書 を 深 く 秘 し て 出 さ ず 、 是 に 依 つ て 義 經 、 法 眼 が 娘 と 密 ぬ す 通 、 彼 の 祕 書 を 娘 に 愉 み 出 さ せ 、 寫 し 取 り 、 悉 く 其 の 指 要 を 納 め 得 ヒ 語 。   ヨ う 張 商 英 天 覺 が 素 書 の 序 に 曰 く 、 夫 れ 素 書 六 篇 は 、 按 ず る に 、 列 傳 黄 石 公 妃 橋 で 所 授 子 房 者 也 。 世 人 多 以 三 略 爲 是 。 蓋 傳 之 者 誤 也 。 晋 亂 有 盜 、 發 子 房 塚 、 於 玉 枕 中 獲 此 書 。 凡 一 千 二 百 四 十 六 言 と 云 。 下 略 。 ( 湛 海 被 斬 ) 、 法 眼 門 弟 に 白 川 の 湛 海 と 云 ふ 者 、 一 年 出 雲 路 の 印 地 の 時 四 五 人 に て 持 つ べ き 石 を 輕 々 と 投 げ た る に よ り 、 世 人 岩 投 げ の 湛 海 と 云 ふ 。 彼 の 祕 書 を 度 々 望 む と 雖 も 、 法 服 許 さ ず 。 義 經 寫 し 取 り 給 ふ 事 を 聞 き て 、 甚 だ 驫 み 法 眼 に 麸 へ た り 。 姫 に 通 じ 給 ふ 事 は (兼 ね て ) 法 眼 も 聞 き た れ ど も 、 獪 豫 し た る 所 に 、 祕 書 を 取 ら れ 腹 立 し た る 氣 色 ( し て ) 云 ひ け る は 、 重 衡 朝 臣 の 度 々 宣 ひ し こ ひ む ご だ に も 用 ひ ず し て 、 か 丶 る 事 を 仕 出 で た る こ そ 奇 怪 な れ 。 夲 家 の 公 逹 を 嫌 ひ て 、 源 氏 を 乞 聟 に 傲 鎧 な ん ど 入 道 殿 聞 き 給 ひ て は ・ 以 て の 外 の 大 妻 れ ・ 殊 覆 の 人 の 子 を 姫 撻 し た る の 由 、 一 味 の 稽 騾 る る 所 な し 。 い ま だ 披 露 な き 前 に 追 ひ 失 ふ か 、所 詮 討 つ て 捨 つ る か の 外 あ ら じ と や み う ち 思 ふ の 由 云 へ り っ 湛 海 云 は く 、彼 の 人 五 條 の 天 神 を 信 じ て 、 毎 度 參 詣 有 り 。 其 れ を う か が ひ 闇 討

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じ に す べ き の 由 云 ひ て 退 出 す る を 、 法 眼 が 仕 女 障 子 を 隔 て て 是 を 聞 き ( て ) 、桂 女 に 密 に 語 る 。 姫 驚 き 御 曹 司 に 告 げ た り 。 義 經 此 の 由 を 聞 き て よ り 、 毎 夜 天 神 へ 詣 う で 給 ふ , 桂 女 止 む る と 雖 も 欲 あ ぶ せ ず 。 十 二 月 十 六 日 の 夜 湛 海 、 溢 れ 者 共 四 五 人 集 め て 、 五 條 の 天 神 の 門 前 に 待 ち 掛 け た る に ・ 義 經 事 共 せ ず 、 湛 海 が 持 ち た る 長 刀 の 柄 を 切 り 折 り . 湛 海 土 ハ に 二 人 當 座 に 斬 り 殺 し 、 殘 り は 追 ひ 拂 ひ 、 其 の 身 は 恙 な く し て 堀 川 へ 皈 り 給 ふ が 、 爰 に 長 居 し て は 此 の 事 露 顯 し 、 若 し 犬 死 す る 事 も や 有 り な ん と 思 ひ 給 ひ て 、 其 れ よ り 山 科 の 増 尾 秉 房 が 方 へ 立 ち 退 ぞ き 給 ひ し と に や 。 傳 に 冨 、 塁 が 女 、 冪 二 位 大 納 言 藤 成 瀚 矩 桂 の 書 一云 う 妾 の 劈 息 女 と 云 へ り ・ 三 歳 に て 成 通 卿 に 離 れ 、 母 に 添 ひ 桂 の 里 に .居 住 ゆ ゑ に 桂 姫 と 云 ふ 。 四 歳 の 年 母 を 法 眼 蹴 り 、 其 の 蠶 耄 子 に し た る ぞ ・ + 四 の 歳 晦 龍 露 へ 召 さ れ て 參 り し に ・ 萎 の 名 を 得 た り 。 去 年 六 月 十 二 日 女 院 相 模 守 業 房 が 淨 土 堂 へ 御 幸 の 時 、 御 酒 宴 有 り し に 、 藏 人 頭 重 衡 朝 臣 桂 姫 L .羅 め き 給 へ る も 、 姫 更 に 羅 け ず ・其 の 後 人 し て 麈 々 宣 ひ ・ 又 父 法 眼 も 幸 ひ 患 ひ 、 鑾 し け れ ど も 承 引 せ ず ・ 顏 拶 給 ひ て ・ 父 の 許 へ 皈 り 住 み し に も ・ 慕 ふ 方 の み 多 か り け れ ど む 、 一 度 の 返 事 だ に せ ざ り し に 、 去 る 五 月 義 經 に 傾 き 、 其 の 志 深 く ・ 義 經 は 又 姫 の 嬋 娟 耄 姦 び 、 偕 老 の 契 り 爨 じ か り し そ か も ・ 然 る 磨 蘿 法 眼 の 許 を -立 ち 退 き 給 ひ し に も 、 姫 は 薯 の 思 ひ 繦 え ず し て 、 其 の 蹴 を 慕 ひ 、 山 科 に 來 (た り ) 親 の 方 へ 皈 、b ず 。 母 は 是 姦 き 法 眼 も 靄 が と が め も あ ら ん か 患 ひ 按 U け れ ど も ・ 何 の 沙 汰 も な か り し 程 に 、 東 光 房 の 圓 忍 は 義 經 の 師 檀 、 法 眼 が 爲 に も 檀 越 な れ ぼ 、 圓 忍 阿 闍 梨 兎 角 犠 異 本 義 經 記 轡 九 一

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一 九 二 め て 、 義 經 と 仲 直 り さ せ 、 姫 を も 法 眼 呼 び 返 し た り と 云 へ り 。 安 元 三 年 三 月 言 、 桂 姫 義 經 の 息 女 を 薐 、 鱗 湾 く な る . 年 + 八 . 死 骸 を 驚 に 葬 る と に や 。 此 の 息 女 を 以 て 伊 豆 守 仲 綱 男 、 右 衞 門 尉 有 綱 義 經 の 聟 と な る 。

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鮪鏡

脚豐

鞴価

靭騨

律 師 と 云 ふ 。 頼 義 此 の 律 師 を し て 湯 月 の 八 幡 の 社 僣 に し 給 ふ 。 又 頼 義 の 四 男 、 伊 豫 權 介 親 清 、 河 野 新 大 夫 親 經 の 聟 と し て 、 其 の 家 督 を 繼 ぐ 。 然 れ ど も 子 の な き こ と を 親 清 室 家 歎 き て 自 ら 豫 州 三 嶋 大 明 神 に 參 籠 通 夜 あ り し に 、 宮 内 に 大 蛇 顯 は る 。 是 三 嶋 大 明 祚 な り 。 室 家 更 に 隴 れ ず し て 、 彼 の 大 蛇 と 密 通 有 り て 懷 妊 、 男 子 を 産 め り 。 河 野 通 清 是 な り 。 通 夜 し て 儲 け た る ゆ ゑ に 、 通 の 字 を 家 の 通 り 字 と す 。 又 律 師 所 濤 の 丹 誠 を 抽 ん ず 。 之 に 依 つ て 河 野 の 暫 の 師 と し て ・ 親 羹 婦 信 心 あ り ・ 其 の 駈 欝 四 代 の 孫 ・ 霪 の 吉 岡 に て 崖 、 鬼 一 丸 と 云 ・つ 者 、 法 師 に な り て 吉 岡 憲 登 云 ふ と あ り 。 仗 イ 又 同 本 に ・ 法 眼 も 牛 若 殿 と 知 り た れ ど も 、 詞 に も 出 さ ざ り け り 。 我 が 先 租 慊 杖 律 師 の 事 、 も て な 頼 義 朝 臣 の 恩 顧 の 者 な り と 申 し て 、 我 が 主 の 子 な ん ど を 持 賞 す ご と く に そ し た り 。 軍 學 を 傳 ふ に も ・ 其 の 穫 蕎 勝 れ て 器 用 な り し ゆ ゑ 、 法 眼 も 世 に 祕 藏 の 人 に 思 ひ け り 。 彼 の 祕 書 を 望 み 給 ふ 時 も 、 法 眼 云 は く 、 乞 ひ 願 ふ 者 多 く 候 へ ど も 、 一 人 に も 見 せ ざ れ ば 、 其 の 聞 え 憚

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る ゆ ゑ 、 今 は 叶 ふ べ か ら ず 。 見 せ 奉 る 時 節 も 有 り な ん と て 、 見 せ 參 ら せ ざ る ゆ ゑ 、 姫 に 通 ゆ じ 彼 の 軍 書 を 寫 し 取 り 給 ふ 。 湛 海 も 兼 ね て 此 の 書 を 度 々 望 め ど も 、 許 容 る さ ざ り し に 、 此 そ ね の 事 を 聞 き て 、 甚 だ 僭 み て 法 眼 方 へ 來 た り 、 義 經 の よ し を 云 ひ 、 又 姫 君 の 事 は 、 重 衡 朝 臣 の 度 々 宣 ひ し 時 、 所 勞 の 由 に て 返 事 な し な ど 支 へ た り 。 此 の 法 師 後 藤 兵 衞 盛 長 と 親 し く 、 重 な か だ ち 衡 の 姫 が 方 へ 鹽の 艶 書 も 此 の 法 師 媒 し け る 程 に 、 若 し 夲 家 へ 告 げ ら れ て は 惡 し か り な ん と も て 法 眼 も 思 ひ 、 今 初 め て 聞 き た る 躰 に 持 賞 な し 、 湛 海 と 相 談 し た る に 、 湛 海 も 云 ( は く ) 、 か の 小 冠 者 五 條 の 天 騨 信 U 參 詣 す る 程 に 、 某 付 け 行 き 闇 討 に す べ し 。 姫 君 の 事 は 彼 の 子 を い た は よ う 懷 妊 、 月 重 な る の 由 な れ ば 、 其 の 間 は 勞 り ( い ま だ ) 宜 し か ら ず と 披 露 有 り て 、 産 後 必 ず つ く ろ よ 藏 人 頭 殿 へ 參 り 給 ふ や う に 計 ら ひ 給 へ 。 重 衡 朝 臣 の 前 は 能 く 繕 ひ 、 又 盛 長 を も 能 く 能 く こ し ら へ 侍 ら ん と て 皈 る 。 法 眼 も 詮 方 な く 思 ひ 、 急 ぎ 此 の 事 を 妻 に 語 り 、 姫 に 通 じ 義 經 の 法 か つ 眼 の 方 を 立 ち 退 き 給 ふ や う に 計 ら ひ け れ ど も 、 義 經 此 の 事 を 聞 き て 、 曾 て 驚 き 給 は ず 。 此 の 法 師 遣 り 立 て て こ そ 後 の 害 に も 成 る べ し 。 三 日 は す ご さ せ ま じ き と 宣 ひ し と そ 。 絡 に 天 紳 の 門 前 に て 湛 海 は 討 た れ た り 。 同 本 に 、 義 經 山 階 へ 立 ち 退 き 給 ふ 時 、 姫 の 局 の 庭 に 楊 枝 さ を 指 し て 、 詠 歌 有 り 。 ( 五 一 ) 後 の 爲 指 し お く 楊 枝 根 延 び し て つ ひ に む す ば ん 青 柳 の 絲 姫 も 楊 枝 を 指 し て 返 歌 、 我 も 又 結 ぶ し る し の 玉 柳 い ど ゆ ひ か は す 枝 な わ す れ そ 異 本 義 經 記 一 九 三

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﹂ 九 四 (五 二 ) 其 の 楊 枝 根 つ き て 後 は 大 木 と な り 、 二 本 相 並 び 、 鬼 一 が 宅 地 に 有 り 。 名 付 け て し る し の 柳 冖と 云 ふ と そ 。 ㍉ (五 三 ) (五 四 ) 古 翁 の 云 (は く ) 、 文 明 十 年 臘 月 十 五 夜 に 、 若 宮 の 御 方 よ り 姉 小 路 基 綱 の 妹 に 賜 は る ど 奥 書 イ 書 の あ る 檜 草 子 、 義 經 虎 の 卷 と 云 ふ あ り 。 鬼 一 が 軍 學 の 事 な り 。 其 の 雙 紙 に も し る し の 柳 の 事 、 此 の 歌 あ れ ば 昔 は 有 り た る に や 。 兵 亂 の 頃 燒 け た る に ぞ 有 り な ん と 云 へ り 。 治 承 二 年 十 月 十 日 鬼 一 法 眼 卒 。 祗 陀 林 寺 に 葬 る と 吉 岡 本 に 有 り 。 ( 増 尾 十 郎 權 頭 兼 房 ) ( 五 五 ) め の と 増 尾 十 郎 權 頭 兼 房 は 、 近 衞 院 の 役 人 に て 有 り し そ 。 常 盤 の 門 葉 に て 義 經 の 乳 母 の 親 也 。 丹 ( 五 亠ハ ) む ま ち 波 の 國 馬 路 の 郷 を 領 知 せ り 。 彼 の 所 の 百 姓 と 李 家 の 侍 、 越 中 守 盛 俊 が 領 分 の 百 姓 と 水 掛 の 論 に 付 き 、 象 房 が 百 姓 を 農 具 に て 打 殺 し た り 。 秉 房 此 の 事 を 聞 き 、 安 か ら ず 思 ひ 、 殺 さ れ た る 者 の 一 子 十 四 五 に 成 り け る 童 に 、 吾 が 家 人 を 相 添 へ 、 盛 俊 が 百 姓 の 家 へ 押 込 み 、 念 な う 敵 を 討 た せ た り 。 此 の 事 秉 房 が 所 爲 の 由 に て 善 惡 の 沙 汰 も な く 、 清 盛 公 の 計 ら ひ に て 、 馬 路 の 郷 を 沒 收 せ ら れ て 、 山 階 の 音 羽 の 郷 に 閑 居 し た り 。 ( 武 藏 房 辨 慶 ) ( 五 七 ) 武 藏 房 辨 慶 の 事 、 安 元 二 年 六 月 十 二 日 の 夜 、 五 條 の 天 神 に て 初 あ て 見 參 し た る と そ 。 義 經 時

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な ぶ に 十 諌 歳 、 辨 慶 は 二 十 六 の 歳 の 事 也 。 辨 慶 色 々 と 義 經 を 嬲 り し ゆ ゑ 、 後 に は 口 論 に な り 、 打 物 の 勝 負 に 及 ぶ と 雖 も 、 辨 慶 叶 は ず し て 皈 り し と 云 へ り 。 同 十 七 日 の 夜 、 五 條 の 橋 に て 行 き 逢 う た り 。 此 の 度 は 勝 負 に 依 つ て 、 負 け た ら ん 者 家 人 と な ら ん と 約 諾 し て 戰 ふ 。 此 の 時 も 辨 慶 勝 っ ノ そ 事 能 は ず 。 是 よ り 主 君 と 仰 ぎ 、 其 の 心 金 鐵 の 如 く に し て 影 の 如 く 付 き 屬 ひ 奉 り 、 忠 勤 を 盡 し た

て灘

5長 信 都 の 弟 子 、 西 塔 北 谷 定 泉 房 付 き の 中 房 と 云 々 。 又 西 坂 本 一 乘 寺 村 に 櫻 本 房 月 輪 寺 の 舊 あ ざ な 跡 あ り 。 東 坂 本 田 地 の 異 名 に も 櫻 本 屋 (敷 ) と 云 ふ あ り 。 是 は 里 坊 の 跡 歟 。 辨 慶 寺 の 古 跡 、 西 塔 北 谷 に あ り 。 辨 慶 屋 敷 鴨 川 の 東 二 條 と 三 條 と の 中 間 に あ り 。 所 の 者 辨     と ム ふ の 鬣 暫 次 rina に . 安 元 の 頃 五 條 の 橋 援 遊 の 讐 り て ・ 往 來 の 人 を 叢 す と あ り ・ 辨 麋 事 歟 。 (常 陸 房 海 尊 ) ( 六 〇 ) 常 陸 房 海 尊 の 事 、 園 城 寺 の 出 家 、 刑 部 卿 禪 師 と 云 へ り 。 強 力 者 ゆ ゑ 荒 刑 部 と 云 ひ け る 。 義 經 う や ま 法 眼 が 許 に 在 (り し ) 時 も 志 を 通 じ 敬 崇 ひ け る ( と ) 也 。 季 家 追 討 の 時 義 經 に 屬 し 、 常 陸 房 海 尊 と 名 乘 る と 銃 。 異 本 義 經 記 一 九 五

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一 九 六 ( 鈴 木 重 善 ) 紀 州 熊 野 の 住 人 鈴 木 二 郎 重 善 と 云 ふ 者 有 り 。 是 は 鈴 木 庄 司 が 弟 也 。 (安 元 二 年 の 頃 ) 在 京 し さ め う し た り 。 八 月 十 五 日 佐 女 牛 の 若 宮 八 幡 へ 參 詣 せ し 時 、 宮 前 に 於 て 歳 の 程 十 七 八 計 な る 人 の 兒 立 か か ね は と 見 え て 、 眉 取 っ て 黒 齒 黒 な る が 、 繍 紗 の 直 垂 、 精 好 の 大 口 着 て 、 金 作 り の 太 刀 を 偲 き 、 沙 門 二 人 俘 ひ た る に 行 き 逢 ひ た り 。 重 善 も 誰 人 や ら ん と 思 ひ て 過 ぎ 行 き た り 。 其 の 後 重 善 鞍 馬 へ 參 り て 、 東 光 房 の 許 に 寄 り し に 、 晩 景 な れ ば 彼 の 房 に 宿 し た る 處 に 、 若 宮 に て 見 た る 僣 の 立 ち 出 も て な で て 饗 し け る に 、 重 善 、 以 前 佐 女 牛 に て 見 奉 る の 由 申 す に 、 圓 忍 阿 闍 梨 の 弟 子 、 禪 林 房 の 阿 闍 梨 の 由 、 重 善 、 其 の 時 の 兒 立 の 御 方 は 誰 人 な れ ば 麗 質 な る 由 稱 美 し た り 。 禪 林 房 、 吾 が 門 葉 な よ も す が ら ひ そ の か み り と 答 ふ 。 通 宵 物 語 の 序 に (禪 林 房 ) 重 善 が 心 を 曳 き 見 ん が 爲 に や 、 往 昔 の 事 な ど 語 り 出 し 、 も の い 今 に も 源 季 の 亂 出 で 來 た ら ば 、 何 れ へ か 參 り 給 は ん や と 尋 ね し か ば 、 重 善 、 壁 に 耳 、 岩 の 言 ふ 世 の 申 な れ ぼ 申 し が た し 。 某 が 親 に て 候 重 邦 は 、 六 條 廷 尉 に 不 便 を 蒙 む り し 者 也 。 前 の 熊 野 別 ( 亠ハ 一 ) ( 六 二 ) 當 行 快 は 、 爲 義 の 外 孫 、 今 の 別 當 湛 増 は 夲 家 の 恩 顧 を 厚 く 請 く 。 其 の 時 代 變 つ て 人 の 心 も 計 り 難 し 。 行 快 は 指 出 で た る 心 も 無 き 人 に て 、 爲 義 の 末 子 、 十 郎 義 盛 と て 、 熊 野 の 新 宮 に 居 給 へ ど む つ ま ひ い き も 、 さ の み 眤 U か ら ず と 語 り て 、 や 丶 も す れ ば 源 氏 の 贔 屓 口 な る ゆ ゑ 、 覺 日 重 善 が 心 を 見 て 、 ( 亠 ハ ゴ 一 ) て ん き う そ だ 以 前 佐 女 牛 に て 見 給 ひ し は 、 故 左 典 厩 の 末 子 、 當 寺 に て 育 立 ち 給 ひ し 牛 若 殿 也 。 昨 日 幸 ひ に 當 房 へ 來 た り 給 ふ の 由 を 云 ひ て 、 嚢 經 を 呼 び 出 し 、 引 き 合 は せ 奉 る 。 重 善 座 を 立 つ て 、 梵 郵 断 し

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に ん ち や う け る は 、 人 定 に て 存 ぜ ざ る 事 こ そ 本 意 無 く 候 へ 。 某 紀 州 熊 野 の 住 人 鈴 木 二 郎 重 善 と 申 す 者 に て 候 。 某 が 親 に て 候 重 邦 、 六 條 廷 尉 公 の 御 恩 を 厚 く 蒙 む り し 者 に て 候 。 白 川 院 の 御 時 、教 眞 を 熊 野 の 別 當 に 補 せ ら れ し 時 も 、 六 條 殿 の 御 息 女 、 龍 田 姫 君 を 教 眞 へ 遣 は す べ し の 由 勅 定 に て 遣 は さ れ し 時 も 、 重 邦 方 へ (先 づ ) 龍 田 姫 を 入 れ 奉 り て 、 重 邦 が 方 よ り 別 當 の 方 へ 入 れ 給 ふ に よ り 、 も て な 重 邦 は 教 眞 偏 に 親 の 如 く 持 賞 し 給 ふ 。 廷 尉 公 も 熊 野 へ 渡 ら せ 給 ふ 時 は 、 必 ず 重 邦 が 方 へ 入 ら せ よ 給 ひ て 、 餘 に 不 便 の 思 召 に て こ そ 候 ひ し に 、 思 は ざ る 保 元 夲 治 の 亂 出 で 來 て 、 御 一 門 悉 く 失 せ お と づ 給 ひ て 、 李 家 一 統 の 世 と な り し 程 に 、餘 り に 心 憂 き 事 に 存 じ 、 新 宮 十 郎 殿 へ 音 信 れ け れ ど も 、 如 む つ ま お は し 何 思 ひ 給 ひ し に や 、 眤 じ き 沙 汰 も な く 過 ぎ 候 ひ き 。 土 佐 の 御 曹 司 四 國 に 御 座 ま せ 共 、 蓮 池 權 頭 ( 六 四 ) ( 六 五 ) お と つ が 前 を 思 ひ て 見 參 に も 參 ら ず 、 右 兵 衞 佐 殿 、 又 六 郎 御 曹 司 は 國 を 隔 て 給 ふ 事 な れ ぼ 、 音 信 れ 奉 ( 六 六 ) か う の と の ( 六 七 ) に イ る 事 も な く 、 都 に こ そ 頭 殿 の 公 達 渡 ら せ 給 へ ど も 、 御 法 躰 の 御 姿 、 君 も 當 寺 へ 入 ら せ 給 ふ 由 承 あ っ ぱ れ や う さ す か ひ り 、 天 晴 御 出 家 無 き 樣 に と 心 底 に は 存 じ 候 へ 共 、 世 の 風 俗 に 流 石 曳 か れ て 、 今 ま で 見 奉 る 事 も 有 る や イ な か り し に 、 去 る 頃 奥 の 方 へ 御 下 向 の 由 承 り 、 如 何 な る 御 心 も や と 存 じ 候 ひ し に 、 不 思 議 に 見 な み だ 奉 る 事 の 嬉 ル さ よ と て 、 落 涙 し た り け る に 、 義 經 も 禪 林 房 も 重 善 が 詞 を 感 U て 、 共 に 泪 を 流 し よ も す が ら よ く じ つ 給 ふ 。 其 の 夜 通 宵 語 り 明 し て 、 翌 日 重 善 は 皈 り ぬ 。 其 れ よ り し て 誠 に 二 心 も な く 志 を 通 し た り ( 六 八 ) と そ 。 治 承 李 家 追 討 の 時 、 重 善 所 勞 ゆ ゑ 、 甥 の 鈴 木 三 郎 重 家 、 箍 井 六 郎 重 清 兄 弟 を 義 經 の 家 人 い た は り に 參 ら せ 、 付 き 從 ひ 奉 り 、 甚 だ 以 て 忠 勤 を な す 。 鈴 木 三 郎 重 家 は 李 家 亡 び て 後 、 老 母 所 勞 に 付 ( 六 九 ) ま し き 、 紀 州 藤 代 に 有 り 。 義 經 都 を ひ ら き 給 ひ て 後 、 其 の 御 先 途 し れ ざ り し に 、 奥 州 に 在 ま す 由 を 異 本 義 經 記 一 九 七

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一 九 八 聞 き て 、 文 治 五 年 の 春 、 藤 代 を 忍 び 出 で て 奥 州 に 下 る 。 伯 父 鈴 木 二 郎 重 善 、 是 も 義 經 に 志 深 や は ぎ く 、 重 家 が 跡 を 追 ひ て 奥 州 に 赴 く の 時 、 三 河 國 矢 矧 に て 足 を 損 じ て 勞 り 遲 引 す 。 其 の 内 に 義 經 な み 沒 落 の 由 を 聞 き て 、 三 州 賀 茂 郡 高 橋 の 庄 、 矢 並 の 郷 に 住 す 。 時 に 落 髮 し て 、 鈴 木 入 道 善 阿 彌 と ( 七 〇 ) さ る 移 號 す 。 猿 投 山 に し て 一 宇 の 精 舍 を 建 つ と 云 去 。 當 時 鈴 木 の 姓 多 く は 此 の 善 阿 彌 の 後 胤 と 云 云 。 鈴 木 の 系 圖 に 日 ( は く ) 、 人 王 五 代 孝 照 天 皇 く ま 五 十 三 年 戊 午 化 人 あ り 。 岩 基 隈 の 北 、 新 宮 御 山 に 於 て 、 十 二 所 權 現 と 崇 め 奉 る 。 是 を 新 宮 ど 號 す 。 垂 跡 の 初 あ 、 權 現 龍 に 乘 り 、 千 尾 の 峯 に 降 臨 あ り 。 奉 幤 使 の 氏 人 を 召 さ る る 時 え の ぎ に 、 漢 司 符 將 軍 の 嫡 子 、 眞 俊 進 み 出 で て 、 權 現 を 新 宮 鶴 原 明 神 の 前 に 十 二 本 の 榎 木 の 本 に 崇 め 奉 ち 。 之 に 依 っ て 榎 木 の 姓 を 賜 は る 。 二 男 基 成 は 丸 子 の 氏 を 賜 ふ 。 三 男 基 行 は 御 馬 の 草 稻 を 獻 ず 。 之 に 依 つ て 穂 積 の 姓 を 給 は る 。 是 鈴 木 龜 井 の 租 也 。 . (鷲 尾 三 郎 ・ 源 八 廣 綱 ・ 江 田 源 三 ・ 熊 井 太 郎 ・ 駿 河 二 郎 ) 鷲 尾 は 播 磨 の 國 鷲 尾 庄 司 武 久 が 嫡 子 也 。 義 經 鵯 越 を 落 し 給 ふ 時 、 案 内 者 に 召 さ れ 、 熊 王 丸 と ( 七 一 ) 云 う て 、 歳 十 八 に て 有 り け る を 、 元 服 さ せ て 、 則 ち 諱 の 字 を 賜 は り 、 鷲 尾 三 郎 義 久 と 付 け 給 ふ 。 父 武 久 は 元 來 備 中 の 國 の 者 也 。 領 地 を 李 家 の 爲 に 押 領 せ ら れ 、 浪 々 し て 播 州 鷲 尾 と 云 ふ 所 に 住 す と 云 へ り 。 今 に 武 久 が 末 流 彼 の 所 に 有 り と 云 云 。

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( 七 二 ) ( 七 三 ) 源 八 廣 綱 は 信 濃 の 諏 訪 の 一 族 也 。 夲 家 追 討 の 時 、 廷 尉 の 使 に 上 り 、 院 よ り 兵 衞 尉 に 成 さ る と 云 う た ぞ 。 , . ( 七 四 ) 江 田 源 三 弘 基 、 是 も 清 和 源 氏 の 庶 流 と そ 。 ( 七 五 ) か た う ど 熊 井 太 郎 忠 基 は 丹 波 國 の 住 人 、 志 内 景 澄 が 甥 也 。 伯 父 景 澄 は 季 治 の 時 、 悪 源 太 義 夲 の 方 人 し て 討 死 せ り り . み ち す か ら 駿 河 三 郎 清 重 の 事 、 義 經 駿 河 國 淨 嶋 が 原 を 通 り 給 ひ し 時 、 獵 人 有 り て 行 き 連 れ 、 絡 道 物 語 す s る や 如 何 な る 者 ぞ ど 名 を 尋 ね 給 ふ 時 に 、 駿 河 國 、 竹 下 二 郎 清 重 と 答 ふ 。 其 の 時 見 參 し 奉 り て 後 ・ 義 經 豢 追 討 の 篝 薑 を 尋 籍 つ て ・ 則 ち 家 人 と な り ・ 觀 墾 郎 と 云 へ り ・ 豢 亡 び て 後 、 頼 朝 義 經 の 中 不 和 に な り て 、 義 經 奥 州 へ 落 ち 下 り 、 秀 衡 を 頼 み 給 ふ 時 、 秀 衡 頼 朝 公 と 不 和 ひ い き う か か に し て 、 義 經 を 贔 屓 し 奉 る 事 強 し 。 依 つ て 秀 衡 と 示 し 合 は せ 、 時 々 鎌 倉 の 案 内 を 窺 ひ 給 ふ 。 物 し の び し の び 見 を 鎌 倉 に 竊 盜 入 れ 置 き 、 鎌 倉 の 事 を 奥 州 へ 逋 ず 。 清 重 も 其 の 竊 盜 の 内 に て 、 山 伏 の 姿 に 成 り て 、 鎌 倉 に 隱 れ 居 た る と も 云 へ り 。 西 國 中 國 の 者 を 頼 み 給 は ん が 爲 に 御 使 に 遣 は さ れ た り と も か た せ 云 ふ 。 固 瀬 川 に て 舟 越 の 者 に 見 咎 め ら れ て 討 た れ た る と 云 云 。 ( 七 七 ) け は ひ お ろ 鎌 倉 假 粧 坂 の 上 に 六 本 松 あ り 。 清 重 此 の 所 に 休 み 居 て 鎌 倉 を 見 降 し た る 所 と 俗 語 に 云 ふ 。 又 固 瀬 川 の 西 、 民 家 の 後 、 竹 藪 の 際 に 、 清 重 笈 を 燒 き し 所 と て 松 あ り 。 笈 燒 松 と 云 ふ 。 片 瀬 川 は 清 重 戰 死 の 所 と 里 人 云 ひ 傳 へ た り 。 異 本 義 經 記 一 九 九

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l o o ( 備 前 夲 四 郎 ) ( 七 八 ) ( 七 九 ) 備 前 夲 四 郎 成 春 事 、 久 我 内 大 臣 雅 通 公 の 諸 大 夫 、 備 前 守 李 秉 房 が 男 也 。 安 元 三 年 の 夏 、 或 夜 ( 八 〇 ) ( 八 一 ) あ か 義 經 世 尊 寺 の 邊 に し て 、 松 殿 基 房 公 の 青 侍 四 五 人 行 き 連 れ 通 り し が 、 月 の 旭 か り し 影 に て 、 御 や さ た は ゑ 曹 司 を 見 て 、 か か る 譁 し き 人 こ そ な け れ と て 戯 ぶ れ た り し 程 に 、 義 經 も 酒 に 醉 ひ た る 者 よ と 思 す か む す ひ て 僞 寄 し 宥 め て 行 き 過 ぎ 給 ふ を 、 四 五 人 の 者 共 手 を 結 び 合 ひ て 、 通 さ ざ り し ゆ ゑ 、 既 に 事 に か ど な ら ん と し た り し 處 に 、 前 廉 よ り 義 經 の 跡 に 付 き て 來 た る 男 一 人 有 り し が 、 此 の 由 を 見 て 中 へ な だ 走 り 入 り 、 兎 角 (無 事 に ) 宥 め て 、殿 下 の 青 侍 共 を 先 へ 皈 し 、御 曹 司 を 守 護 し た る 躰 な り し ゆ ゑ 、 い つ ぞ や 義 經 、 御 邊 は 誰 人 ぞ 。 某 を も 見 知 り 給 へ る に や と 宣 ひ し に 、 象 房 申 す 樣 、 日 外 長 成 公 に て 見 奉 ふ る ま ひ り 候 。 君 は 正 し き 故 左 馬 頭 殿 の 御 公 達 に て 渡 ら せ 給 ふ に 、 危 き 御 擧 動 か な 。 某 は 本 國 越 後 の 城 に イ ( 八 二 ) の 氏 族 に て 候 處 、 城 資 國 と 中 惡 し く 妨 げ ら れ 、 本 國 を 浪 々 の 身 と 罷 り 成 り 、 只 今 は 久 我 内 府 殿 の 仕 官 と な り 候 と 申 し て 、 長 成 朝 臣 の 許 ま で 途 り 屆 け 、 い 騒 懇 控 瓣 響 ひ た り 。 義 經 も 禮 を な し て ( 八 三 ) み ま か 皈 し 給 ふ 。 木 曾 退 治 の 時 入 洛 有 り て 、 備 前 守 を 尋 ね 給 ひ し に 、 終 命 り た り し ゆ ゑ 、 一 子 備 前 夲 四 郎 成 春 を 家 人 に 仕 ひ 給 ふ と に や 。 (鎌 田 兵 衞 娘 牛 王 ) ( 八 四 ) (八 五 ) 鎌 田 兵 衞 が 娘 牛 王 は 、 新 夲 剣 官 資 行 に 嫁 し 、 最 最 愛 し た り 。 資 行 が 母 は 牛 王 が 母 方 の 叔 母

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也 。 牛 王 常 に 李 家 の 繁 昌 を 牒 瞭 く 思 ひ け る に や 、 或 時 何 と な く 資 行 に 云 ひ け る は 、 吾 が 方 樣 の 人 々 は 、 有 る か 無 き か の 風 情 を 見 聞 く に 付 け て も 、 口 惜 し く 侍 る な り 。 君 御 志 變 ら ず は 、 若 し 源 家 の 人 々 の 思 ひ 立 ち 給 ふ 事 も 有 ら ば 、 必 ず 力 を 合 は せ 給 は ん に や と 云 ひ た り し 程 に 、 資 行 、 斯 く 夫 妻 の 鰾 艦 を な す 上 は 、 疎 略 す べ き に 非 ら ず 、 若 し 思 ち 立 ち 給 ふ 御 方 も 有 ら ば 、 一 番 に 資 そ ね 行 こ そ 參 ら あ と 語 る に 、 ・ 牛 王 も 女 心 の 無 墓 も う ち と け 語 る 程 に 、 李 家 の 繁 昌 を 僭 み 、 源 氏 の 衰 へ た る 髴 姦 き た り ・ 蠱 轡 監 物 太 郎 頼 方 が 弟 ・ 武 藤 小 二 郎 蘿 ・ 新 翡 簒 方 へ 螂段 轄 た り ・ 誓 月 隣 な く 亭 多 入 り た る 景 色 読 面 白 か り け れ ば ・ 酒 な ん ど 出 だ し 爨 し け る 。 兩 人 數 盈 を 傾 け し 程 に 、 資 行 沈 醉 の 餘 り に や 、 牛 王 が 常 々 語 り し 事 な ん ど を 云 ひ 出 だ し た る に 、 圭 は し か ぐ の 凱 護 ひ け る を ・ 資 行 ・ 諍 ひ 給 ひ そ ・ 其 の 時 は 斯 く 宣 ひ た り 。 挫 は 加 樣 籟 ま れ し な ど 、 あ郎 ら睡 ぞ 云 ひ し 程 に 、 (資 頼 聞 き て ) 今 此 の 世 に か か る 心 の 付 き し 事 以 て の 外 也 。 ゆ め ゆ め 我 が 兄 頼 方 な ど 若 し 聞 き な ぼ 、 資 行 ま で も 難 儀 な る べ し 。 努 々 有 る べ う も な き こ と と 制 し た る ゆ ゑ ・ 圭 驫 で 女 礎 騁 侍 る べ き や ・ 智 殿 の 酒 狂 の 癖 婁 陳 じ け る 程 に ・ 蘿 も 轡 左 そ こ は か と 有 る 覽 、 誰 も 沈 醉 し て は 無 若 な き 事 酒 の 習 ひ な ん ど 云 ひ し を 、 資 行 、 我 は 酒 に は 醉 は ず 、 正 し か し ら た た く 斯 く 牛 王 が 我 を 頼 み た る 詞 の 相 違 す る 事 の 意 得 ず と 云 ひ て 、 持 ち た る 扇 子 に て 牛 王 が 頭 を 敲 き た り し 程 に 、 髮 を も 打 損 じ て 取 り 亂 し た り 。 牛 王 も 興 醒 め て 思 ひ け れ ど も 諍 は ざ り し 。 資 頼 も 嘆 と 是 を 寥 て 皈 り し と に や ・ 安 埀 一年 正 月 三 日 ・ 蓄 爨 靭 七 回 忌 に 當 れ り ・ 其 の 方 樣 の 人 々 獸 畢 に 磊 静 事 作 蠱 算 た り し に ・ 圭 も 讐 共 に 彼 の 璽 毒 よ り 通 夜 し て 蠍 異 本 義 經 記 二 〇 一

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二 〇 二 る さ し た と ど 逢 に 眤 し き 者 の 方 へ 立 寄 り 、 其 の 夜 は 彼 方 に 逗 ま り 、 明 る ,四 日 に 牛 王 資 行 が 方 へ 皈 り て 、 し か け し き ぐ の 由 を 云 へ り 。 資 行 以 て の 外 な る 氣 色 し て 、 佛 事 は さ る 事 な れ ど も 、 道 の 逗 留 密 夫 の 爲 に や 。 但 し は 源 氏 の 方 人 を 頼 ま ん が 爲 か と 云 ひ て 散 々 醜 搭 歟 引 。 牛 王 は 聊 か も 諍 は ず し て 、 最 前 酒 狂 と 思 ひ し に 、 か か る 不 覺 人 と は 知 ら ず し て 、 .驥 ぎ く 思 ひ た る 我 が 心 の .響 よ 愚 ひ て 艦 蒼 な り 、 資 行 が 方 急 け て 、 袰 許 へ 皈 り 住 み た り ・ 資 行 莓 生 .虧 圭 義 意 に 任 せ て 資 行 を 嫌 ひ し と 意 得 た り し 程 に 、 或 時 資 行 が 母 、 鎌 田 が 後 家 の 方 へ 部 絛 れ し 其 の 鵬 翫 ・ 義 經 鎌 田 が 後 家 の 所 に 居 給 ふ を 見 て 、 其 の 翌 日 資 行 が 母 、 夲 剣 官 康 頼 が 方 へ 行 き て 、 牛 王 が 資 行 を 瀞 い は か た ら ひ け た る こ そ 謂 れ 候 。 今 は 牛 王 、 牛 若 御 曹 司 と 機 關 を な し て 、 偏 に 謀 叛 の 事 を 勸 む る と 聞 え 候 な い か ら か メ ど 語 ら ひ 出 だ し た る に 、 康 頼 聲 を 嗔 恚 し 、 か か る 卒 怱 な る 事 を 承 り 候 物 哉 。 當 時 誰 有 り て 謀 叛 と 云 ふ 事 思 ひ 立 つ べ き や 。 其 の 上 九 郎 御 曹 司 い ま だ 二 十 に だ に 成 り 給 は ぬ 人 を 、 誰 か 方 人 す べ き 。 此 の 事 露 顯 せ ば 、 誠 か 僞 を 正 さ れ ん 時 、 若 し し か ら ざ る 時 は 、 獪 聾 憲 とを 聞 か ん 爲 ・ 蹤 か を も 責 め 問 ふ べ き な れ ぼ 宀 其 の 證 據 な く ば 、 由 々 し き 身 の 大 事 に な る べ し と 云 ひ た り け れ ば 、 女 あ な か し こ も ら は 相 違 し て 、 穴 賢 、 人 に な 洩 し 給 ふ な 。 告 げ 知 ら す る 者 有 り て 斯 く は 申 し た り 。 其 の 實 を 知 ら ず 、 若 し 夲 家 へ 聞 え て は 、 身 の 爲 如 何 に 候 と て 、 母 ぼ 皈 り ぬ 。 其 の 夜 に 入 り て 、 康 頼 資 行 が 方 ゆ め ゆ め へ 越 え て 、 斯 う 斯 う 母 儀 の 宣 ひ し そ 。 努 々 有 る ま じ き 事 也 。 牛 王 女 の 不 縁 の 事 は 世 に 有 る 習 な あ な か と か れ ぼ 、 強 ち に 尤 め 給 へ る 事 に 非 ら ず 。 大 事 の 儀 に て 候 程 に と 制 し て 歸 り た る と 云 へ り 。 此 の 康 頼 は 左 馬 頭 (殿 ) の 代 に も 常 に 參 り し と そ 。 弓 馬 の 事 な ど 義 朝 の 宣 ふ 旨 を 信 じ た る と な り 。 左

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典 厩 亡 び 給 ひ し 後 、 康 頼 尾 張 國 の 守 護 た り し ゆ ゑ 、 水 田 三 十 町 を 寄 附 し て 一 宇 の 精 舍 を 建 立 と ぶ ら し 、 義 朝 の 御 菩 提 を 弔 ひ 奉 り し と 也 。 今 の 内 海 の 大 坊 是 な り 。 ( 八 八 ) す さ い 建 久 元 年 十 月 廿 五 日 、 頼 朝 公 、 左 馬 頭 殿 の 御 廟 へ 御 參 詣 の 時 、 須 細 治 部 大 輔 爲 基 に 御 尋 ね し る し レ 有 り し に 、 し か ぐ の 由 申 す 。 黷 の 厚 志 を 感 じ 思 召 さ れ 、 御 褒 美 有 り し と そ 。 後 代 の 驗 ・ に 我 が 齷 黝を も 圖 し 置 く べ き と の 仰 せ 有 り と 云 々 。 其 の 時 の 頼 朝 公 の 御 影 、 今 に 大 坊 に あ あ ら り 。 義 朝 を 討 ち 奉 り し 測 殿 の 跡 、 内 海 の 田 上 と 云 ふ 處 に あ り 。 同 じ く 御 頭 を 濯 ひ し 所 と て ・ 大 坊 の 門 前 に 小 池 あ り ・ 報 遡 金 王 丸 等 長 田 豢 人 と 戰 ひ し 暫 て 小 警 り ・ 鮮 橋 つ ぶ ど 云 へ り 。 大 坊 に 其 の 時 の 縁 起 具 さ に あ り 。 義 朝 並 び に 政 家 が 墳 墓 有 り 。 至 り て 古 し 。 長 む ね ( 九 〇 ) は り つ け 田 忠 致 、 先 生 景 致 、 地 磔 に 掛 り し 所 と て あ り 。 (關 原 與 市 ・ 牛 王 最 後 ) ( 九 一 ) 安 元 三 年 初 秋 の 頃 、 美 濃 國 の 住 人 、 關 原 與 市 重 治 と 云 ふ 者 在 京 し た り 。 私 用 の 事 有 り て 江 州 に イ を り ふ し さ く り へ 赴 き た り 。 山 階 の 邊 に て 御 曹 司 に 行 き 逢 ひ 、 重 治 は 馬 上 、 時 節 雨 の 後 に て 、 蹄 蹟 に 水 の 有 り と か し を 蹴 掛 け 奉 る 。 義 經 其 の 無 禮 を 尤 め て 重 治 絡 に 討 た れ ぬ 。 家 人 は 皆 逃 げ た り 。 重 治 が 男 犬 王 け な げ あ り 丸 と て 十 二 三 成 る 小 童 の 小 太 刀 を 拔 い て 立 ち 向 ふ 。 義 經 其 の 太 刀 を 打 落 し 、 小 童 の 健 氣 な る 形 さ ま 勢 を 見 て 打 捨 て て 通 り 給 へ り 。 異 本 義 經 記 二 〇 三

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二 〇 四 け あ げ け あ げ 今 此 の 所 を 蹴 擧 と 云 ふ 。 清 水 あ り 。 蹴 擧 の 水 と 云 ふ 。 重 治 が 討 た れ し 所 と 云 ひ 傳 ふ 。 犬 王 丸 が 母 方 の 叔 父 鯑 嶋 李 次 と 云 ふ 者 如 何 聞 き た り け ん 、 犬 王 丸 が 後 見 し て 、 夜 甦 に 鎌 田 が 後 た た よ 家 の 門 を 敲 き 、 李 相 國 殿 よ り 御 使 な る ぞ 。 爰 を 開 け よ と 喚 ば は り し 程 に 、 牛 王 は 夲 家 よ り 御 曹 さ め た め ら 司 の 討 手 來 た る と 心 得 て 、 小 長 刀 を 取 り て 待 ち 掛 け た る に 、 内 は 暗 し 、 鮫 嶋 を 初 め 獪 豫 ひ 居 た は か な り し に 、 獪 も 構 へ て 待 ち た ら ん に は 、 左 右 な く は 取 ら れ ま じ き に 、 女 心 の 無 墓 さ は 、 小 長 刀 を あ へ な く い ま し 打 振 つ て 奔 り 出 で た り し 程 に 、 不 才 生 捕 ら れ た り 。 禁 肆 め て 大 宮 を 下 り に 五 條 の 邊 ま で 連 れ 行 ( 九 二 ) き け る が 、 道 に て 刺 し 殺 し 捨 て た る と に や 。 牛 王 が 下 女 、 片 岡 弘 經 が 方 へ 馳 せ て 、 此 の 事 を 告 (九 三 ) げ た る に 、 弘 經 兄 の 片 岡 二 郎 經 春 、 去 年 よ り 大 番 役 に て 在 京 せ り 。 俘 ひ て 弘 經 も 京 に あ り 。 女 も イ を 思 ひ て 鎌 田 が 後 家 の 近 所 に 通 ふ 。 其 の 夜 彼 の 女 の 方 に 有 り し が 、 太 刀 取 っ て 追 ひ か け た れ ど し か い も 、 早 敵 の 者 共 行 方 知 れ ず な り ぬ 。 牛 王 が 死 骸 の 途 中 に 有 り し を 肩 に 打 掛 け て 歸 り し に 、 母 は 囃 く 泣 く 六 波 羅 蜜 寺 の 僭 を 顰 て ・ 死 骸 を 彼 の 寺 の 内 舞 り ・ 佛 事 作 善 藏 懋 算 と 一云 へ り 。 牛 王 は 鎌 田 政 家 が 乙 娘 に て 、 今 年 二 十 一 な り 。 去 る 李 治 の 亂 の 時 、 政 家 三 條 堀 川 の 吾 が 宅 あ ゆ ま い だ に 火 を 掛 け 落 し 時 、 妻 は 兄 二 人 の 子 を 歩 行 せ 、 牛 王 を 抱 懷 き て 逃 げ 延 び 大 宮 に 住 み し と そ 。 (九 四 ) ま つ (九 五 ) 六 波 羅 蜜 寺 の 内 に 東 向 の 小 祠 あ り 。 辨 才 天 な り 。 俗 語 に 、牛 王 女 を 鎭 り し 瓧 な り と 云 ひ 傳 ふ 。 (義 經 奥 州 下 向 ) 其 の 頃 夲 相 國 の 常 盤 が 子 ど も 皆 法 師 に な せ と 云 ひ つ る に 、 誰 が 計 ら ひ に て 牛 若 丸 を ぼ 男 に な

(33)

( 九 六 ) し た る ぞ と 宣 ひ た る 由 沙 汰 有 り し を 聞 き て 、 常 盤 も 長 成 朝 臣 も 薄 氷 を 踏 む 心 地 し て 、 急 ぎ 奥 へ ( 九 七 ) い さ 下 り 給 ふ べ し と 宣 ひ 、 鞍 馬 の 阿 闍 梨 も 兎 角 諌 言 め 給 ふ ゆ ゑ 、 さ ら ば 下 る べ し と て 、 八 月 申 旬 都 と ど を 立 ち 給 ふ 。 聖 門 房 は 京 都 の 事 を 通 ぜ ん ( が ) 爲 に 都 に 止 ま り 、 辨 慶 法 師 、 片 岡 八 郎 は 供 し た る と 云 へ り 。 (義 經 李 家 追 討 ) 義 經 二 十 二 の 年 、 治 承 四 年 頼 朝 公 義 兵 に よ つ て 、 季 和 泉 を 出 陣 有 り 。 十 月 廿 一 日 黄 瀬 川 の 宿 ー ( 九 八 ) に し て 初 め て 頼 朝 公 に 謁 し 給 ふ 。 壽 永 三 年 正 月 入 洛 有 り て 、 木 曾 義 仲 を 李 ら げ 、 同 じ く 二 月 李 ひ よ ど り こ え や ぶ 家 三 草 山 の 陣 を 夜 討 に し て 、 鵯 越 を 落 し 、 一 の 谷 の 城 郭 を 印 時 に 敗 つ て 、 宗 徒 の 夲 氏 を 討 ち 取 り 、 其 れ よ り 讃 岐 の 八 嶋 、 長 門 の 赤 間 壇 浦 に し て 、 夲 族 を 悉 く 討 つ に 、 向 ふ 所 必 ず 敗 ら ず と 云 は か ふ 事 な し 。 圖 る 所 必 ず 落 ち ず と 云 ふ 事 な く 、 其 の 右 に 出 つ る 人 な し 。 弱 冠 の 時 よ り 、 心 猛 く 勇 ほ こ い く さ ま し く し て 、 其 の 戈 先 に 向 ふ 者 な し 。 先 祀 頼 義 義 家 等 の 師 を 蕁 ね 求 め 、 鬼 一 法 眼 が 軍 法 の 奥 義 き は き を 究 め 、 秀 衡 な ど に も 常 に 清 衡 等 の 軍 慮 を 聽 い て 、 其 の 道 を 得 度 有 り と 云 へ り 。 一 の 谷 の 軍 散 そ な じ て 後 、 首 實 檢 の 時 も 、 後 藤 兵 衞 實 基 父 子 二 十 五 騎 に て 前 に 備 へ さ せ 、 田 代 冠 者 信 綱 十 八 騎 に て 前 の 嚢 ( に ) 立 つ ・ 義 饗 赤 地 の 錦 の 直 垂 に く纏 雛 . 鐙 を 養 鍬 形 打 つ た る 囀 .の 緒 を 緬 め ・ な ぎ な た き よ く ろ く 薙 刀 を 横 た へ 、 曲 最 に 腰 を 掛 け て 中 央 に 有 り 。 左 に 佐 藤 繼 信 、 同 忠 信 、 鈴 木 重 家 、 螽 井 重 清 、 か こ (九 九 ) 片 岡 弘 經 、 熊 井 忠 基 、 常 陸 房 、 江 田 弘 基 に 構 園 ま せ 、 右 に は 鎌 田 盛 政 、 同 光 政 、 伊 勢 義 盛 、 駿 異 本 義 經 記 ・ 二 〇 五

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ゾ ・ 二 〇 六 河 溝 重 、 源 八 廣 綱 、 備 前 成 春 、 八 瀬 勘 八 忠 實 、 菊 池 八 郎 な ん ど 備 へ さ せ 、 堀 景 光 、 武 藏 房 、 佐 志 藤 八 長 俊 に 分 捕 高 名 を 正 さ せ 、 三 方 の 後 に は 、 義 經 の 手 の 郎 從 五 百 餘 騎 に て 打 圍 む 。 一 町 前 に は 土 肥 ・ 岡 崎 千 餘 騎 に て 鑵 へ た り ・ 土 嘆 板 垣 八 百 驫 、 磐 畠 山 憙 、 熊 谷 、 缶 あ り 。 ミ い そ べ 鱶 力 驤 ま の 上 に て 頸 共 を 集 め 、 高 名 不 覺 を も 尋 ね 給 へ り 。 舍 兄 の 蒲 殿 は 磯 邊 を 差 し て 逃 ぐ る 敵 を や ぶ 追 は れ け る が 、 是 を 見 給 ひ て 、 義 經 は 意 得 ぬ 陣 の 取 り 樣 不 審 さ よ 。 敵 は 既 に 敗 れ し に 何 事 有 り お そ ろ て か 斯 く 騰 し く 陣 す 覽 。 九 郎 は 勇 也 と 宣 へ ど も 、 敵 と な れ ば 能 く 怖 し き に や と 宣 ひ し と そ 。 義 い く さ つ た お は し ま 經 ( 此 の 事 を ) 後 に 聞 き 給 ひ て 、 不 覺 な る 蒲 殿 の 兄 な が ら も 加 程 に 師 の 拙 な き 人 に て 御 坐 す あ ぶ ぞ 。 將 の 軍 に 勝 ち て 首 實 檢 し て 高 名 勝 劣 を 尋 ぬ る に 、 油 斷 に 兵 を 立 て て 有 る 時 は 、 敵 の 浴 れ 者 身 を 捨 て て 將 の 陣 へ 紛 れ 入 り ・ 讐 刺 蠡 ふ る 事 (有 り ) 、 又 兵 二 嘉 、 三 驫 麁 へ て 直 に も ま け の み 騒 け 入 る 事 も 有 り 。 然 れ ば 勝 ち た る 軍 に 思 ひ の 外 な る 負 を す る 物 に て 侍 る ぞ 。 其 れ 而 已 な ら ず ・ 將 の 亡 命 立 處 に 有 る ゆ ゑ 、 軍 も 負 け て 怖 る る 事 な く 、 勝 ち て 油 斷 す る こ と 勿 れ と 書 か れ し は 是 也 ・ 斯 く 軍 の お懸 に 欝 嚢 せ ば こ そ 、 大 手 生 田 の 森 に て 新 中 納 言 が 郎 從 と 不 覺 な る 軍 を し 給 ひ し そ か し と 川 越 の 重 房 に 宣 ひ し と に や 。 コ       元 暦 元 年 八 旦 ハ 日 、 義 經 左 衞 門 少 尉 に な る . 使 の 諮 喋 り 、 大 夫 智 と 云 ふ 。 頃 日 頼 政 の 嫡 男 故 伊 豆 守 仲 綱 の 一 子 、 伊 豆 の 冠 者 有 綱 、 歳 十 六 、 義 經 の 聟 と す 。 河 羹 郎 轟 の 覇 爲 姫 と 云 へ る 、 籍 て 美 麗 の 沙 汰 あ り . 蓬 是 を 謂 護 ど も 、 鎌 倉 殿 の 思 召 を 憚 る 處 ・ 鸚 は す べ き の 由 、 頼 朝 公 の 仰 せ に 依 っ て 、 八 月 十 四 日 重 頼 息 女 首 途 す 。 重 頼 家

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の 子 郎 從 等 を 付 く る と そ 。 九 月 五 日 婚 姻 あ り 。 (義 經 大 甞 會 前 驅 ) ( 一 〇 三 ) さ さ や 同 十 月 廿 五 日 大 甞 會 の 行 幸 義 經 前 驅 す 。 京 童 部 の 囁 き し は 、 同 U 東 の 士 な れ ど も 、 木 曾 義 仲 み か げ ふ つ つ か び ん の か み え も ん か た さ か も の い つ す ね こ を か は 見 懸 よ り 無 形 に し て 、 鬢 取 り 亂 し 、 裝 東 の 衣 紋 片 降 り に 言 ひ た る 詞 付 き 素 媚 び て 険 し か り む ま れ つ き あ い ぎ や う も の ご と し が 、 義 經 其 れ に は 格 別 變 つ て 、 天 性 尋 常 に 愛 敬 有 り て 、 物 毎 に 京 馴 れ た る 風 惰 ぞ か し 。 さ れ て い た ら く 亀ど 播鳳 イ つ ぶ や か た は ら あ い ど も 夲 家 の 人 々 の か か る 時 の 爲 躰 に は 似 る べ く も な く 劣 り て 見 え た る な ど 謐 き た る に 、 傍 に 藍 ず ば か 老 人 イ い や と よ さ ( 一 〇 四 ) 摺 り の 直 垂 着 た る 六 十 計 り の (男 の ) 、 辭 言 、 左 は 宣 ひ そ 。 木 曾 は 父 帶 刀 義 賢 討 た れ し 時 三 歳 な い お る を 、 母 抱 懷 き て 信 濃 へ 逃 げ 下 り 、 乳 母 の 夫 木 曾 の 申 三 兼 任 を 頼 み た り し に 、 兼 任 請 取 り て 、 そ だ や う や う 木 曾 の 山 家 に 育 立 ち 、 信 濃 よ り 外 の 事 を 十 七 八 ま で は や は か ゆ め に も 知 ら ず 、 漸 々 に 十 計 り に す ね わ ら て 京 上 り し た れ ど も 、 山 家 育 立 ち の 詞 の 拗 張 た る を 険 笑 は れ て 、 京 に も は か ば か し き 方 へ も 出 ゆ か で ず し て 、 又 木 曾 へ 露 り 住 み し ゆ ゑ 、 裝 東 の 衣 紋 な ん ど の 曲 み た る を も 直 す 心 も な く 、 只 弓 ち か ら わ ざ の み か た く な を か 矢 、 力 業 而 己 に て 、 其 の 心 計 り を 基 と せ し 程 に 、 京 の 者 に 逢 ひ て は 、 物 事 癡 に 、 嘆 し き 事 も 理 き な り 。 義 經 は 十 六 ( の ) 歳 ま で 鞍 に 兒 し て 、 京 の 差 別 も 能 く 見 聽 き 、 其 の 年 に 奥 へ 下 り 給 ひ け あ ま す れ ど も 、 幾 程 も な く 又 京 上 り し て 、 十 八 九 ま で 京 に 住 み て 、 都 の 事 は 甘 き も 酸 き も 能 く 知 り 給 あ づ ま ふ ぞ 。 吾 妻 の 事 は 無 案 内 の 事 も 多 く 有 り な ん 。 去 々 年 先 帝 の 御 禊 の 行 幸 の 時 、 李 家 の 人 々 の 供 あ り さ ま ま こ と か 奉 せ ら れ し 分 野 、 寔 に 其 の 事 柄 物 馴 れ て 優 に 、 見 懸 け よ り 物 重 く 有 り し 事 も 、 丞 -家 繁 昌 な れ ば 異 本 義 經 記 二 〇 七

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