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シェアと移転の契約による企業グループの分析

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Academic year: 2021

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著者 和田 美憲

雑誌名 經濟學論叢

巻 65

号 4

ページ 877‑899

発行年 2014‑03‑20

権利 同志社大學經濟學會

URL http://doi.org/10.14988/00027432

(2)

シェアと移転の契約による 企業グループの分析

和 田 美 憲   

1 は じ め に

 日本の企業グループに関する研究は,系列の構造や取引関係の分析を中心 に多岐にわたっている.また日本の企業行動や企業構造の特徴を欧米諸国と の比較や歴史的考察あるいは経済理論から明らかにしようとする研究も盛ん に行われている1).国際経営論では,日系多国籍企業の特徴に関する研究が展 開され,企業グループという観点から権限委譲や現地化政策の問題が議論さ れている2)しかしながら理論モデルを用いて日本企業や企業グループの特徴 を明らかにする試みはまだ十分であるとは言えない.確かにItoh(1992, 1993)

では,理論モデルを用いて日本企業に特徴的なチームワークの有用性につい て分析を行っている.しかしながらチームワークの理論的分析だけでは,日 本企業の戦略や制度の説明としては不十分であり,成果主義の導入や非正規 社員の増加によりチームワーク自体が,職場で重視されなくなったという報 告もある.つまりこれまでの日本企業や企業グループに関する研究では,理論,

実証の両方からのアプローチは存在するが,日本の特殊性を明らかにするこ とに議論が集中していた一方で,日本企業の特殊性を考慮しながら普遍的な

* 本稿の作成にあたり,同志社大学の中尾武雄教授より貴重なコメントを頂いた.ここに記し て感謝の意を表したい.尚,本稿に含まれる可能性のある誤りの全ては筆者に帰すものである.

1) 伊藤編(1996),Aoki and Dore ed.(1994),工藤・橘川・グレン編(2005)等を参照.

2) 吉原(2002)などを参照.

(3)

行動モデルとして定式化し,その理論モデルと現実との整合性を実証的に分 析するという研究は多くは存在しない.特に伊丹(1987, 2000),Aoki and Dore ed. (1994),Nonaka and Takeuchi(1995)で展開された「日本企業論」は日本経 済が良好な状況下での企業のパフォーマンスを評価する枠組みとして発展し た面もあり,デフレ経済下における日本企業の特徴を示すものではない3).す なわち「日本企業の再生」という観点は考慮されておらず,この緊急を要す る課題に取り組むためには,デフレ経済下での企業の行動を理論と実証の両 方の観点から詳細に分析する必要がある.

 近年,日本の企業グループにも大きな変化が起こっている.1990年代以降,

業績の不振を打開するために,グループの再編や取引関係の再整備を行った 企業グループも少なくはない.さらに2000年度からは,会計基準が変更さ れ,連結対象となる子会社や関係会社が実質的な支配関係を考慮する基準と なり,連結決算で報告する項目も増えている.その結果,企業グループ全体 が1つの企業体として報告されることになり,多くの子会社,関係会社を抱 える大企業の行動にも変化があったことが予想される.しかしながらこの変 化の背後にある理論的なメカニズムはまだ明らかにされていない.企業グルー プに関する研究はデータの制約上,十分とは言えないが,実証分析が中心と なり行われている.竹廣(2001)では,グループを形成する企業のパフォーマ ンスがグループを形成しない企業よりも優れている反面,グループ全体より も,親企業単独の方のパフォーマンスが望ましい状況が存在することを示し た.さらに竹廣(2007)では関係会社取引比率の大きさにより製造業の企業グ ループの分類を行い,関係の強度によってパフォーマンスに違いがあること を明らかにしている.和田(1999)では取引費用経済学の議論を一般的なモデ

3) そのような日本企業研究の状況下で,工藤・橘川・グレン編(2005)は,バブル崩壊以前の 良好なパフォーマンスを示していた日本企業の分析に留まらず,歴史的かつ国際比較の観点か ら「失われた10年」を経験した日本企業の特徴を分析しており,示唆に富んだ研究である.そ の中で,メインバンク制が日本企業の発展に一貫して貢献してきたという議論は誤りであるこ とが指摘されている.

(4)

ルに発展させ,企業の関係会社取引率を決定する資産や費用項目を明らかに しており,企業グループの取引構造に関する理論と実証の両面からの分析が 試みられている.しかしながら企業グループの理論モデルを用いた分析は十 分に行われているとは言えず,一連の日本企業論で中心的な議論となる「系列」

取引についての理論分析は,制度的アプローチが中心となっているのが現状 である.

 本稿では,日本の企業グループの包括的考察の一環として,Bilateral

Agencyモデルを用いて,日本の企業グループの行動をモデル化し,上場企業

の財務データを用いて企業間の取引関係を決定する要因を検討する.理論モ デルによる分析では,親会社と子会社の間で情報の非対称性が存在するとい う状況を踏まえ,取引契約が結ばれるメカニズムを記述する.その際に「企 業グループでは収入のシェアと企業間の移転が,契約により決定される」と いう行動仮説をたてる.そして子会社,関係会社を抱える企業の財務データ を用いて,このシェアと移転の決定要因を推定する.そして推定結果に基づき,

日本の企業グループの親会社が,個々のグループ企業の「シェア」と「移転」

を決定するような契約を企業間で結んでいるかどうかを議論する.本稿では,

会計基準が変更された2000年以降の日本の企業グループの行動モデルを理論 と実証の両方の観点から分析することを目的として,これまでの日本企業論 を再考する.そして理論分析と実証分析の両方を踏まえ,日本企業のモデル が「人的資源調整モデル」として特徴づけられることを示す.そしてこの人 的資源による調整の実践が,伊丹(1987, 2000, 2009)で議論されている「従業 員主権」や「人本主義」という日本企業の特徴を示した用語とは一線を画す ことを説明する.

 本稿は以下のような構成となっている.2節では,理論分析で用いる

Bilateral Agencyモデルの特徴とそのモデルを用いた分析を紹介する.3節で

は理論モデルを用いて,企業グループの契約関係を記述する.4節では実証 分析で扱うデータと仮説の検討を行い,実証分析の結果を示す.5節では実

(5)

証分析の結果に基づき,日本の企業グループの行動の特徴について議論を展 開する.6節では,本稿での分析をまとめ,今後の課題を述べる.

2 Bilateral Agency

モデルの特徴

 この節では,Bilateral Agencyモデルの特徴について解説する.Bilateral

Agencyモデルとは,契約理論やメカニズムデザインに関する研究の中で,プ

リンシパルとエージェントの間に明確な役割の区別がないような設定をして いる理論モデルの総称のことである.契約に参加している経済主体は同時に エージェントでもありプリンシパルであるという解釈も可能であり,それゆ

えこのBilateral Agencyモデルの名を用いた.これまでの研究において明確に

この名称を使っている文献は少ないが,分析手法や問題設定が共通する研究 は多数存在している.この論文では,Bilateral Agencyモデルを「複数のエージェ ントが不確実性下で最適な契約をデザインするモデル」として定義を与える.

 プリンシパルの最大化問題において制約条件となるエージェントの誘引整 合性と個人合理性の問題も,Bilateral Agencyモデルでは,各エージェントに ついて考慮する必要がある.例えば,2者間での契約をデザインする場合に は,2つの誘因整合性の条件を考慮する必要がある.また目的関数はエージェ ントの効用全体を設定し,契約においては各エージェントの分配シェアを決 定するような状況を捉えている.一見このようなモデルの仮定と設定は,限 られた経済状況のみを記述するように思えるが,このBilateral Agencyモデル こそ,経済システム,制度,取引などを記述する普遍的な意思決定モデルと なる可能性がある.なぜなら不確実性下での複数の経済主体による意思決定 を,一般的なフレームワークに基づき,詳細かつ具体的に記述できるからで ある.特にグループやパートナー関係での契約といったこれまでの理論モデ ルでは扱いにくいとされていた経済状況も記述することができる.以下では,

Bilateral Agencyモデルの範疇に入る研究の中から,いくつかの文献を紹介し,

その分析手法とプリシパルとエージェントの関係が明確でないような不確実

(6)

性下での契約の特徴について議論する.

 まず理論的な研究の代表として,Myerson and Satterthwaite(1983)につい て解説する.彼らの研究では,不確実性下でリスク中立的なbuyer とseller の2者の間で貿易の行なわれる状況を想定し,その貿易メカニズムの効率性 について議論している.2つのoutcome functionをbuyerへの商品が与えられ

る確率とsellerに支払われる期待報酬として定義している.この2つの関数

はどちらもbuyer とsellerのhidden characteristic変数の関数である.この2 者が交渉ゲームに参加し,最初に商品がsellerからbuyerに与えられるべき かが決定され,次にbuyerがsellerに支払う金額が決定される.留意すべき 点は,seller, buyerの両者のhidden characteristicが独立した確立分布に従う 確率変数であるということである.さらに貿易への参加は自主的に行われる という想定である.この2つの想定が意味するのは,2者の誘因整合性の条 件と参加制約条件を考慮し,貿易のルールあるいは制度をデザインしなけれ ばならないということである.そして彼らの分析の定理として,「ベイジアン 誘引整合性と参加制約を満たし,かつ事後的に効率的な社会選択関数は存在 しない」という結果を導いている.この定理は,一般的な貿易ルールが効率 的にはデザインされないというインパクトのある経済的含意であるため,経 済制度やルールのデザインに関する分野の研究に影響を与えたと言える.

 Bilateral Agencyモデルの応用研究としては,さまざまな契約関係が分析さ れている.分益小作制(sharecropping)やフランチャイズ制の分析がその代表 である.これらの分析に共通の問題意識は,参加するエージェントによって 達成されるアウトプットのエージェント間での配分の問題である.モラルハ ザードを発生させる隠された行動(hidden action)としての努力水準の決定に 加えて,アウトプットのエージェント間でのシェアと移転を決定することが 重要となってくる.Bhattacharyya and Lafontaine(1995)では,最適なシェア リングのルールは一般的に線形の契約によって表現することができると主張 している.つまりアウトプットに比例的なシェアを決定する係数パラメータ

(7)

と固定項という慣習的な取引形態が理論的にも望ましいことを示している.

Maness(1996)は,不完備契約下では,エージェント間でフランチャイズ制

が結ばれるよりも組織を統合した際に,より高い努力水準を引き出すという 意味において望ましいインセンティブが与えられることを導出している.

 日本の企業グループを分析するためにBilateral Agencyモデルに注目するの は,一般的で具体的な取引関係を記述できるという点と理論モデルで扱われ る変数が財務データを用いて表現可能な点である.具体的には,理論モデル で重要な変数である最適シェアが財務データを用いて計算が可能であり,そ の決定要因を検討することで企業グループの最適行動の分析が可能となる.

3 企業グループの理論モデル

 この節では,企業グループ内での取引関係をBilateral Agencyモデルを用い て定式化する.2節で概説したようにBilateral Agencyモデルはグループやパー トナー関係にある経済主体間の取引関係を分析する一般的なモデルである.

このモデルを用いて日本の企業グループを記述する目的は,特殊であるとさ れてきた日本の取引慣行や,親会社と子会社間の取引の契約内容を一般的な 理論モデルすなわち合理的経済主体の経済活動の結果として捉えることにあ る.Bilateral Agencyモデルなどの契約理論と同様に,モデル分析は,経済主 体間では互いの行動に関して情報の非対称性が存在するという前提に基づく.

 企業グループの行動モデルを記述する際に,一般的なBilateral Agencyモデ ルに用いられている設定を日本の企業グループの行動と取引に即して解釈し,

いくつかの仮定を設定する.以下に企業グループに属する企業iの効用関数 を定義する.ここでは,企業グループにはn個の企業が存在しているとする.

また企業-iとは,グループに属する,企業i以外の全ての企業を示している.

(8)

    Ui=ai$R^e ei, -ih+T e ei^ i, -ih-C ei^ ih (1)  

      ai : i企業の収入シェア( i 1

i n

1

a =

!

-

      R e e^ i, -ih:グループ全体の収入       ei : i企業の努力水準

      Ti (ei, e-i) : -i企業からi企業への移転 Ti 0

i n

1

=

!

=

      Ci (ei) : i企業のコスト

 (1)式は企業iの効用関数を示している.全ての変数に関して微分可能で あり,厳密に凹関数であるとする.グループ全体の収入であるRは企業iと 企業-iの努力水準の関数として表されている.グループ全体の収入の企業i の配分シェアを示すaiは,0≤ai≤1の範囲をとり,その総和は1であるとする.

つまり企業グループ内で収入は全て配分されるとする.配分シェアは,基本 的には,個々の企業の生産力やグループにおける役割によって決定される.

さらに企業間の取引関係や契約内容も配分シェアの重要な決定要因であると 言える.移転関数Tiは,企業の努力水準の関数とする4).「移転」については,

いくつかの解釈が可能である.グループ内の移転とは,取引内容や契約に含 まれる物的,人的資本や金銭的報酬などを指す.さらに実際の取引や契約で は,Nonaka and Takeuchi(1995),伊藤(1996)などの日本的経営論でも指摘さ れているような数量化できないようなノウハウや技術,企業文化・風土など も移転として捉えることができるであろう.具体的には,グループ内での生 産設備のレンタル,技術者や労働者の交流,知的財産の共有,そして目標達 成のためのインセンティブ報酬制度など様々な形式を取ることが予想される.

この移転の1つの解釈は,企業グループ内における各企業の交渉力の程度を 表すということである.企業グループにおいての交渉力とは,技術的な優位

4) フランチャイズ契約ではフランチャイザーに支払われる固定料に「移転」は相当し,努力水 準の関数ではなく定数として定義されている.Bhattacharyya and Lafontaine (1995),Maness (1996) を参照.

(9)

性やマーケットシェア,資本の規模など,様々な要因によって決定されるも のである.例えば,自動車産業において,中間財の自動車部品を生産する企 業と最終消費財を組み立て,販売する企業の間ではどちらに交渉力があるだ ろうか.一般的には最終消費財を組み立て,販売する企業の方に資本力があ り,交渉力を有すると考えられる.しかしながら,中間財を生産する企業が,

自動車産業全般に通用する新しい技術を生み出した場合,たとえ資本力に劣っ ているとしても,中間財生産企業の交渉力が増すことが考えられる.最終消 費財販売企業は,独占的にこの新しい技術を使うためのライセンス契約を結 んだり,コミッションを新たに支払わなければならない可能性も出てくる.

その場合,親会社から子会社への金銭的な移転が発生することが予想される.

このように企業グループの中で,移転は様々な形で発生しており,企業間の 関係や技術力,資本力によって,移転される方向も決定されると言えるであ ろう.

 次に企業グループの行動と意思決定の問題について検討する.ここでの仮 説は,企業グループの親会社とグループ全体の収入関数が一致するというこ とである.その根拠を以下に示す.企業グループの親会社は連結決算報告を 行なう義務があることから,連結決算の対象となる子会社と関連会社を含め たグループ全体の利潤を最大化することが予想される.したがって親企業の 役割としては,グループ全体の経営を管理し,その分配率や移転などを決定 するというグループ全体のコーディネーターの役割があるということである.

Bilateral Agency モデルでは,一般的に1人の経済主体がこのコーディネーター

の役割を担うことが明示されていない.契約やゲームに参加していない第三 者が契約の仲介者として様々な手続きを行うという想定が一般的である.だ が実際の経済体系,特に私的所有経済システムにおいて,そのような第三者 を想定するのは現実的ではない.もちろん企業グループにおける意思決定も,

各企業の代表者が出席するような会議で,グループ全体での収益を考慮し,

企業間の契約内容,企業ごとの収入シェア,移転などを検討するということ

(10)

も可能である.しかしながらそのような場合にも最終的な企業グループにお けるシェアや移転を決める決定権は親企業にあり,実際に企業グループの行 動や契約交渉を鑑みた場合は,上述のように親会社のコーディネーターとし ての役割を仮定するのが妥当だと考えられる.モデルにおいてはi企業を親 企業と考え,努力水準とシェアを決定し,努力水準の関数として間接的に移 転を決定するものとする.この点については実証分析の結果に基づき検討す ることにする.

 以下に親企業をコーディネーターとするインセンティブ契約を記述する.

ここでは議論を単純化し,実証分析と理論モデルの関連性を明確にするため に,2つの仮定を置いてモデル分析を行う.1つ目の仮定は,それぞれの企業 にとって他企業の努力水準は観察できないことから,確率変数となり,収入 や利潤関数などの定式化は期待値によって記述すべきであるが,Maness(1996)

に倣い,ここでは全て期待値としての記述は行わない.2つ目の仮定は,親 企業とそれ以外の子会社グループが1つ形成され,意思決定を行うことがで きるとする.すなわちpを親企業,dを子会社の集団グループとする.

    maxU R e e, T e e, C e

, , , p T e e

p p d p p d p p

p p p d

a $

= + -

a ^ h ^ h ^ h (2)  

     ,

, ,

e U

e R e e

e T

de

dC 0 i p d

i

i i

i p d

i i

i

$ i

2 2

2 2

2 a 2

= ^ h+ - = ^ = h (I.C.) (3)  

    Ud$K (I.R.) (4)  

(2)式は,グループの親企業の効用関数を目的関数とし,収入のシェアと移転,

努力水準を操作変数としている.努力水準は観察ができないため,契約に反 映することができず,最終的にはシェアと移転によって契約を記述する.(3)

式は,各i企業すなわち親会社と子会社グループに関する誘因整合性の条件 である.(4)式は各i企業すなわち親会社と子会社の参加制約条件である.(3),

(4)式を制約条件として(2)式を最大化するように親会社はシェアと移転を 決定する.シェアと移転に関する制約条件を考慮した場合,この問題のラグ

(11)

ランジュ関数は以下のように定義できる.

     , , ,

L R e e T e e C e e

R e e

e T

de dC

p p d p p d p p p

p p d

p p

p

$ $ p

2 2

2

a m a 2

= ^ h+ ^ h- ^ h- ; ^ h+ - E

     

, , ,

L R e e T e e C e e

R e e

e T

de dC

p p d p p d p p p

p p d

p p

p

$ $ p

2 2

2

a m a 2

= ^ h+ ^ h- ^ h- ; ^ h+ - E

      eR , ,

e T

de

dC K R e e T e e C e

1 p 1

d d

p d

d p p d p p d d d

$22 2

n a 2 o a

- ;^ - h - - E- 6 - -^ h ^ h- ^ h- ^ h@

      , ,

eR e T

de

dC K R e e T e e C e

1 p 1

d d

p d

d p p d p p d d d

$22 2

n a 2 o a

- ;^ - h - - E- 6 - -^ h ^ h- ^ h- ^ h@

      m, n, o : ラグランジュ乗数 (5)  

 この親企業の最適化問題には均衡が存在し,その結果最適シェアと最適移 転も存在し,以下のような関数として表現できるとする.

 最適シェア

    ap)=F e e^ p, dh (6)  

 最適移転

    Tp)=G e e^ p, dh (7)  

 上記の最適化問題では,収入関数,移転関数,費用関数は企業の努力水準 の関数となっていることから,最適シェアと最適移転はそれぞれ(6)式と(7)

式のように努力水準の関数として表現している.企業の努力水準には,現実 的には経営を行う上で必要になるさまざまな企業活動が含まれる.そしてそ れらの企業活動の中からどのような項目がシェアと移転に影響を与えている のかを実証分析において検討する.

4 実証分析による企業グループモデルの検証

 この節では,3節の理論モデル分析に基づき,企業グループの行動を実証 分析によって検討する.まずその準備として,データの説明と推定式に関す

(12)

る仮説の検討を行なう.次に回帰分析の結果に基づき企業グループ行動につ いて考察する.3節のBilateral Agencyモデルを応用した企業グループの行動 分析から導出された結果から,企業グループ内での取引において売上高シェ アと移転は,企業グループの収入関数と費用関数を形成している努力水準に よって決定されるということが分かった.よって推定式は,(6)式と(7)式 を線形近似し,収入と費用に影響を与えるような変数を代理変数として用い る.データは2005年度版会社年鑑に記載されている上場企業の製造業の中か ら,輸送機器,機械,電気機器に属する企業の報告書を使用する.

 企業グループという概念を実際の企業間関係でみた場合,その範囲を規定 するのは容易ではない.親会社にとってグループ企業とは連結対象となる子 会社や持分法適用関連会社以外にも,非連結子会社,関連会社,持分法適用 の非連結子会社・関連会社などを含む.本来はこれらすべての企業のデータ を集計し,グループ企業の行動を考察すべきである.しかしながらデータ上 の制約や各企業の親企業との取引関係の違いを特定化することが困難である ため,「親企業は連結対象とする会社を合理的に決定しており,その契約はグ ループ全体での利害調整も含めてデザインされている」という仮定のもとに 実証分析を行う.よって親会社の単独決算書や連結決算書にはグループ全体 での行動原理が反映されているものとする.

 分析の目的が企業グループの取引構造や行動原理の解明であるため,製造 業の中でも大企業を含み,グループを形成する傾向にある業種を選択した.

連結決算となるのは,具体的には親会社が議決権の過半数(50%超)を所有し て場合が挙げられる.それ以外にも,親会社の議決権が40%未満であっても,

実質的な議決権を持ち,財務,営業,事業の方針を決定できるような支配が 行われていれば,その会社を連結対象として決算報告をする必要がある5).  今回の分析では,企業グループの行動を明らかにするという目的から,連

5) 連結財務諸表規則第2条を参照.

(13)

結決算対象となる子会社を持たない企業は分析の対象外とした.また労務関 連項目として勤続年数や平均年齢を考慮することから,上場してから5年 未満の会社は分析対象とはしなかった.その結果,分析対象となる企業数は 439社である.最新のデータではなく,2005年の決算報告データを使用し,

分析を行う理由は,2007年のリーマンショックや2011年の東日本大震災の ような外生的なショックのため企業グループのパフォーマンスが著しく悪化 した直近のデータでは,日本の企業グループの普遍的な性格が反映されにく いと判断したためである.また2005年の決算報告は2000年度の新会計基準 の導入より5年が経過しており,企業グループに新しい会計基準が浸透した 時期と判断した.さらに2004年度は,2001年度以降の本格的な「デフレ経済」

となっている一方で,2002年以降の景気回復でGDP成長率が2%台と安定し ていた年度でもあり,デフレ経済下における再編された企業グループの普遍 的な行動がデータに反映されていると判断した.

 被説明変数について解説する.被説明変数は,企業グループの「収入シェアa」 と「移転T」の代理変数となる.「収入シェアa」の代理変数は,企業が報告 する単独売上高と連結売上高を用いて表すことが可能である.すなわち     収入シェアa= 単独売上高

連結売上高

「移転T」の代理変数を以下のような計算式で表す.

    移転T=単独営業利潤

正規社員数 −連結営業利潤 連結社員数

 この移転Tの式に関しては説明を要する.3節のモデルで「移転」と定義 したのは,取引上での個々の企業の交渉力によって決定され,企業グループ 全体では相殺される変数であった.上式では,単独と連結の1人あたりの営 業利潤の差を用いて,親企業のグループ全体,あるいはグループ全体から親 企業に対する収益性の指標としている.親企業1社と企業グループの関係が この指標を通じて観察される.この値が正の場合は,親会社単独の方が,収

(14)

益力がより高いことを表す.これは親会社への企業グループに属しているグ ループ企業(子会社)からの移転が存在する可能性を示している.子会社が移 転を行うということは,子会社にとってグループを維持する必要があり,そ のために親会社の方に交渉力があることを示していると解釈する.グループ 全体での収益力が,親会社単独よりも低いにも関わらずグループとして存続 させる行動の合理的な解釈である.この値が負の場合は,グループ全体での 収益性がより高いことを示し,親会社が子会社に移転を支払うことでグルー プとして存続するような状況を示していると考えられる.つまり子会社の方 に交渉力があるような企業グループと解釈ができる.

 次に説明変数について検討する.2つの被説明変数に関する推定式を立て る必要があるが,そのための説明変数については,理論モデル分析から具体 的な変数とその被説明変数への影響は導出できなかった.しかしながら親企 業と子会社両方の収入関数と費用関数が理論モデルでは扱われていることか ら,単独決算と連結決算両方の項目から収入関数と費用関数を形成する変数 に相当する項目を説明変数として用いる.その場合,親企業の支配力や交渉 力に影響を与えるような変数で理論モデルにおける努力水準に相当するとし て労務関連項目にも注目する.欧米を中心に発展した戦略的人的資源管理論

(strategic human resource management)では,企業が戦略的に人事や労務管理を 通じて企業のパフォーマンスを高めるプロセスに関する分析が行われている.

Wada(2005)では,日本企業が実施する残業規制や出向・転籍などの雇用調 整が日本経済のパフォーマンスと関連していることが示されている.本稿の 分析では戦略的人的資源管理の議論と日本企業の実践を考慮し,「企業は労働 や労務に関する項目を調整して企業グループ内で収入シェアと移転を決定し ている」という仮説を検証していく.具体的に収入シェアaに影響を与える 項目として,有形固定資産,無形固定資産,研究開発費などの企業の戦略と 関わる重要項目に加え,給与,退職給付額引当金6),正規社員数,平均年齢,

6) 給与,勤続年数,平均年齢は親会社のみのデータを用いている.有形固定資産,無形固定資産,

研究開発費,退職給付額引当金は連結ベースでの値が報告されている.ここでは無形固定資産,

(15)

勤続年数,従業員比ダミー変数7)を検討する.また移転Tに関する説明変数 としても同様の理由に基づき,連結従業員数,有形固定資産,無形固定資産,

研究開発費,退職給付額引当金8),平均年齢,勤続年数,給与,従業員比ダミー 変数9)とする.また実証分析の目的として,Bilateral Agencyモデルとしての 企業グループモデルの妥当性,つまり企業グループ全体での合理的な契約に 基づく行動を取っているかの検証も行う.よって上記の説明変数のうちどの 説明変数が有意に影響を与えているかについても注目する.そして得られた 結果から説明変数の有意性と符号なども考慮し,親企業と企業グループの行 動や特徴についての解釈を行う.

 推定を行うためには変数が満たすべき条件が多く存在する.クロスセクショ ンデータを用いて推定を行う場合は,誤差項の分散不均一性によって生じる 問題がある.ゆえに誤差項が分散不均一の場合であっても,推定値に一致性 のある最小二乗法を用いて推定を行った10).尚,多重共線性の問題については,

説明変数間の相関係数を調べ,推定結果に影響を与えるような問題は生じて いないと判断した.以下に推定結果を第 1 表,第 2 表にまとめ,被説明変数 ごとに解説を行う.

 第1表は被説明変数が収入シェアの時の回帰分析の結果を示している.推 定した説明変数の中で5%水準で有意になった変数は,正規社員数,給与,

平均年齢,退職給付額引当金,有形固定資産,そして従業員比ダミー変数で ある.企業グループの経営に重要であると思われた無形固定資産と研究開発

有形固定資産と研究開発費は正規社員数で割った値を説明変数としている.退職給付額引当金 については,連結従業員で割った値を用いている.

7) 連結従業員数/正規社員数の値が5以上の場合は1,それ以外の場合は0として設定している.

従業員比ダミーを説明変数とすることで親会社単独と企業グループ間の従業員ベースの規模の 違いを考慮している.

8) 有形固定資産,無形固定資産,研究開発費,退職給付額引当金については,連結ベースでの 値が報告されているが,ここでは全ての項目について正規社員数で割った値を,説明変数とし ている.

9) 被説明変数がシェアの場合と同じ計算で求めることができるが,移転を説明する変数として,

3以上を1,それ以外を0として設定している.

10) 分散不均一の問題については,和合・伴(1988),マダラ(1996)などを参照.

(16)

費は有意とはならず,従業員に関連する項目が有意に収入シェアに影響を与 えていることが分かる.また有意になった説明変数の被説明変数への影響を 表す係数の符号は,退職給付額引当金がプラスである以外はマイナスを示し ている.収入シェアが親会社の企業グループにおける売上高の比率を表して いることから,この値が大きいということは,親会社の企業グループにおけ る支配力が大きいことを示している.したがって係数がマイナスである説明 変数は親会社の支配力に負の影響を与えていることを意味する.すなわち正 規社員数,給与そして平均年齢の値が大きくなると親会社の支配力は小さく なるということになる.これは従業員によって形成される人的資本や技術力 が競争優位な企業を形成し,支配力の指標である収入シェアも上昇するとい う従来の「日本企業論」や「日本経営論」の議論に反している結果のように 見える.しかしながら企業グループにおける行動と捉えた場合,親会社が人 員整理などを行わず,余剰となる従業員を多数抱え,非効率な経営を行った 結果,売上高のシェアを下げ,グループ内における支配力を低下させている

説明変数 係数 標準偏差 t値

正規社員数 -0.130926 0.34851 -3.75673

給与 -0.263331 0.11705 -2.24958

勤続年数 -0.117960 0.32988 -0.35757

平均年齢 -0.533889 0.11066 -4.82456

退職給付額引当金 0.12589 0.527097 2.38837 従業員比ダミーA -0.70163 0.32192 -2.17950 無形固定資産 -0.820437 0.182822 -1.55679

研究開発 0.111628 0.105009 1.06303

有形固定資産 -0.820437 0.00112 -2.10957 第 1 表 被説明変数:収入シェアの回帰分析結果

自由度修正済み決定係数:0.293569.

網掛けの項目は5%水準で有意.

(17)

という解釈が可能である.

 有形固定資産の値は,正規社員数で割ってあるので,正規社員数が多くな るか,グループ全体の有形固定資産量が増えれば,親会社の支配力が小さく なることを意味する.この結果の経済的な解釈をするためには,有形固定資 産のグループ内での持分や親会社の所有する資産の種類などを特定化する必 要がある.1つの解釈としては,不必要なオフィスや生産設備などの有形資 産を所有し,非効率な経営を行った結果,グループ内での支配力を低下させ たという解釈が可能である.

 退職給付額引当金は,連結社員数で割った値を用いており,生産高シェア にプラスの影響を与えている.これは退職後の従業員への報酬が親会社のグ ループへの支配力を高めていると解釈できる.従業員比ダミーは,負の影響 を与えていることから,企業グループ(子会社)の相対的社員数が増えれば,

親会社の相対的な支配力が減少し,親会社の売上高のシェアも減少すること を示している.

 第2表は,被説明変数が移転の時の回帰分析の推定結果を示している.連 結従業員数,平均年齢,従業員比ダミー変数は5%水準で有意となり,給与,

勤続年数,退職給付額引当金は10%水準で有意という結果となった.移転の 決定要因としても労働や労務管理に関連する項目が挙げられ,研究開発や無 形固定資産は有意とはならなかった.有意となった項目で連結従業員数,勤 続年数は被説明変数に負の影響を与え,給与,退職給付額引当金,従業員比 ダミー変数は,正の影響を与えるという結果となった.被説明変数は,親会 社の得る移転の大きさの代理変数であることから,この値が大きくなればな るほど,親会社が得る移転は大きくなることを示し,そのことから交渉力は 大きくなると解釈できる.したがって係数が負である連結従業員数と勤続年 数の変数の値が大きくなればなるほど,親会社の交渉力は小さくなることを 示している.逆に給与,平均年齢,退職給付額引当金の値が大きいほど,親 会社の交渉力は大きくなることを示している.また従業員比ダミーの正の符

(18)

号は親会社の従業員数が相対的に小さくなれば,親会社の交渉力は増えるこ とを示している.このような説明変数の移転や交渉力への影響は現実の企業 グループの行動として解釈することも可能である.興味深いのは,正規社員 の勤続年数が長いほど,親会社の交渉力が低下しているということであろう.

これは,従来の日本型モデルが人的資本の蓄積によって技術やノウハウを形 成し,そのことが交渉力の増大につながるという議論を否定する結果と解釈 することも可能である.その一方で給与や退職給付額引当金などの労働者へ の報酬の増大が,親会社の交渉力を増大させるという関係は,成果主義や目 に見える形の報酬制度を企業が導入した結果として解釈できる.

5 人的資源調整モデルとしての日本企業論

 この節では,実証分析より明らかになった点と日本企業に関するこれまで の議論を検討し,人的資源による調整を重視する日本企業の特徴について論 じる.

 日本の企業グループの行動の特徴の1つである労務関連項目すなわち人的

説明変数 係数 標準偏差 t値

連結従業員数 -0.224451 0.1007013 -2.09742

給与 0.173663 0.922309 1.88292

勤続年数 -0.510791 0.275898 -1.85138

平均年齢 0.12602 0.473824 2.65962

退職給付額引当金 0.641110 0.337619 1.89892 従業員比ダミーB 1.99335 0.858195 2.32272 無形固定資産 -0.324425 0.277759 -1.16801

研究開発 -0.076373 0.069830 -1.09369

第 2 表 被説明変数:収入シェアの回帰分析結果

自由度修正済み決定係数:0.174024,

網掛けの項目は5%水準で有意,囲み線の項目は10%水準で有意.

(19)

資源とそれを形成する資産や費用が,企業グループ内のシェアと移転の決定 に関与していることが実証分析によって明らかとなった.すなわち人的資源 である従業員に関する変数によって企業クループにおける調整が戦略的に行 われているのである.ここで注意を要するのは,そのメカニズムは複雑であ るが,企業が無条件に常に従業員の利害を優先し,非合理的に従業員の意思 を重視しているのではないという点である.なぜなら親企業を中心とする企 業グループの契約において親企業の利潤最大化行動と従業員主権は必ずしも 一致しないからである.もし従業員を最優先することと親企業の利潤最大化 行動とが一致しているとすれば,それは日本企業の特徴として重視すべきで ある.しかしながら昨今の非正規労働者の増大,失業率の増加,終身雇用の 崩壊などを鑑みれば従業員を最優先しているとは言えない.いずれにせよ実 証分析の結果から企業グループは,従業員を人的資源として戦略的に企業グ ループ内の利害の調整に用いていると解釈すべきである.言い換えれば,企 業のパフォーマンスが良好な時は,従業員に関する項目を用いて戦略的な企 業グループ内での利害の調整が,従業員を優先している経営と映ったという 解釈が可能ではないだろうか.その一方で景気が後退し,業績が悪化した状 況になれば,業績回復のために最初に従業員の苦痛を伴うような解雇や新入 社員の採用の抑制,減給や成果主義による従業員間の競争を戦略的に実践し ているのであろう.

 今回の分析に基づき,示された日本の企業像は,伊丹(2009)によって展 開されている「従業員主権」や「人本主義」の議論とは一線を画すことを指 摘しておくべきである.従業員に主権があるという議論は,会社は実質的に は従業員のもの,すなわち従業員の利害を最優先させるという考えに基づく.

本稿では,「従業員を用いた戦略的な利害の調整メカニズム」について論じた.

つまり従業員は主権をもつ主体ではなく,企業の戦略としての手段すなわち 資源なのである.確かに従業員のなかのコアメンバーにより,企業の意思決 定が行われ,株主の利害だけでなく従業員の利害が重視されるような実践が

(20)

日本の企業では一般的であろう.しかしながらそのコアメンバーが従業員の 利害を最優先しているという事実は存在せず,長期的な企業の成長を鑑みた 結果,従業員の利害と一致するような意思決定が戦後の経済発展のある一定 期間に行われてきたということである.また近年のコーポレートガバナンス の発展による社外取締役の存在や,終身雇用制の衰退,非正規社員の増大に よりコアメンバーという概念も曖昧かつ希薄なものになりつつある.正規従 業員を減らし,非正規社員を増やす昨今の日本企業の現状を「(コア)従業員 の利害を守るという従業員主権の原理に基づく行為」として解釈し,今後も

「従業員主権」に基づく日本企業の再生を提唱するのであれば,日本企業本来 の優位性をなくすことになるであろう.

 本稿の研究から日本企業や企業グループの特徴として,「人的資源による戦 略的調整」ということを示した.その特徴から,好況時には従業員の利害を 優先し,不況時には従業員をあたかも増減可能な資源のように扱う企業の二 面性が伺える.このような日本企業の特徴を踏まえて,現在の労働者の過酷 な状況の改善と日本経済を再生する制度上の措置が必要である.

6 お わ り に

 かつて「日本的経営」として評価された日本企業の特徴はすでに影を潜め,

「失われた10年」を経験した日本企業は現在も業績が低迷している.終身雇用,

年功序列,企業内労働組合などの制度的な変化は言うに及ばず,チームワー クや企業内訓練といった日本的経営の根幹をなすような労務管理や労働の在 り方にも変化が生じてきたのではないだろうか.

 本稿は,そのような問題意識に基き,Bilateral Agencyモデルのフレームワー クを用いて日本の企業グループの構造と契約をモデル化し,実証分析を通じ てその特徴を明らかにする試みである.モデル分析では,親会社の役割を特 定化し,企業グループでの契約においては,収入のシェアと企業間の移転を 決定するという仮説に基づき分析を展開した.移転については,いくつかの

(21)

解釈が可能であったが,その中でも特に企業グループの交渉力によって決定 されるという考えに立ち,議論を展開した.実証分析を用いたモデルの検証 では,理論モデルより導出された企業グループの収入関数と費用関数とを構 成する変数を,連結決算を行っている主要製造業の財務データから抽出して きた.収入シェアと移転の代理変数を被説明変数とし,この2つの変数に影 響を与える項目を説明変数とし,回帰分析を行った.その結果,親会社の支 配力と交渉力を表わす「シェア」と「移転」の決定には,従業員に関する変 数が大きく関与していることが明らかとなった.すなわち従業員に対するマ ネジメントが,企業グループにおける親会社の支配力や交渉力に影響を与え ることが分かった.これは従来から議論されてきた「従業員主権」という従 業員を優先する経営あるいは,従業員が経営の主権を担っているという経営 スタイルではなく,従業員を用いて経営の調整を行うという戦略的人的資源 管理の考え方を反映したものだと言える.私は,この日本型企業モデルを「人 的資源調整モデル」と解釈し,日本企業のエッセンスであると主張し,それ に基づく制度設計や政策立案が景気回復には必要であることを提案する.

 本稿の分析では,理論モデルを構築し,財務データを用いて日本企業グルー プの特徴を理論と実証両方の観点から明らかにすることを試みた.しかしな がら日本企業の特徴をより客観的に示すためには,同様の理論モデルと財務 データを用いた国際比較を行うことが望ましいと思われる.また長期的な分 析として財務データをプールしたパネルデータ分析や年度ごとの分析の比較 などをすることでより具体的かつ詳細な日本企業の特徴が明らかとなるであ ろう.以上の点を考慮した研究は今後との課題としたい.

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(わだ よしのり・同志社大学経済学部准教授)

(24)

The Doshisha University Economic Review, Vol. 65 No. 4 Abstract

Yoshinori WADA, The Analysis on the Contract for ‘Share’ and ‘Transfer’ in the Conglomerate

  This paper analyzes theoretically and empirically the behavior of conglomerates. First we illustrate the incentive contract in which the share of revenue and transfer are determined within the conglomerate and derive the optimal share and transfer. Second we estimate the determinants for the share and transfer by using date in the unconsolidated and consolidated PL sheets and find out that such human resource factors as wage, labor duration, reservation for the retirement payment and the number of workers are statistically significant.

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