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(1)

英国REIT税制における論点整理

その他のタイトル The Issues of Tax Law about UK‑REIT

著者 藤原 拓哉

雑誌名 關西大學法學論集

巻 56

号 4

ページ 939‑979

発行年 2006‑12‑15

URL http://hdl.handle.net/10112/12365

(2)

英国 RE IT 税制における論点整理

* 

英国

R E I T 税制における論点整理

0

一︑英国における直接不動産投資にかかる税法上の取り扱い

1

個人所得税

2

二︑英国の集団的投資スキーム

1

( A u t h o r i z e d u n i t   t r u s t s ; A  UT s)

( o p e n

, en d e d

  i n v e s t m

e n t   c o m p a n i e s  

OE IC s)  

AI TC s )  

2

( A p p r o v e d m v e s t m e n t   t r u s t   co

mp am es

  ; 

3

既存の投資ビークルを用いた不動産投資 三 ︑ R e a l E s t a t e   I n v e s t m e n T r t   u s t s   (U K RE IT )

1

導入の背景とこれまでの経過

F i n a n c e   A ct  2006UKREIT 四︑英国REIT税制における論点整理

1

英国式課税免除方式とわが国の支払配当損金算入方式

RE

IT

g既存法人の移行と投資法人の新設ーー!

3

非居住者に対するREITの収益分配の取り扱い

︵ 九

三 九

(3)

進税率による課税がなされる︒ 課税の対象となる︒所得税の税率は︑それぞれ一

0

%

わが国に不動産投資信託︑

によって投資法人の投資対象資産の範囲が︑それまでの﹁有価証券関連取引﹂から不動産等にも拡大されたことにより︑

不動産投資信託

( R e a E s l t a t e   I n

v e

s t

m e

n t

  T r

u s

t s

  : R

EI T)   の組成が可能となった︒信託という名を冠しているが︑法形式は法人

( 2 )  

形態を採る︒わが国の

RE IT は︑﹁資産運用型﹂集団投資スキームとしてクローズド・エンドかつ会社型の形態で導入された︒

本稿では︑英国において二

0

0

七年度から施行される類似のスキーム

を指摘する︒わが国は投資信託法の下に設立される投資法人

( R

E I

T )

ば二重の構造を採るが︑英国

RE IT は単純に税制として導入される︒英国

RE IT

税制には︑わが国

RE IT

法制・税制に比較して

その基本的構造において大きな相違がみられる︒英国における既存のビークル税制を概観することで昨今の

RE IT

導入論の背景

を探るとともに︑英国

RE IT

が先

行国

の(

R ^ EI T"

との関係で惹起する論点についても若干の指摘を試みる︒

個人所得税

(1   )

いわゆるJ

RE IT

が導入されたのは︑二

000

年の投信法改正によってである︒すなわち︑本改正 譲渡収益については︑譲渡収益税に服し︑税率はそれぞれ一

0

%

は じ め に

関 法 第 五 六 巻 四 号

九 ︵

O )

いわゆる に対して︑対応的に法人税法上の優遇を与えるといういわ

一︑英国における直接不動産投資にかかる税法上の取り扱い

不動産投資の果実として収入を得るための経路は︑大きく分けると賃貸料収入と譲渡収入の二つのパターンに分けられる︒英国

では︑所得をいくつかのシェジュールに分類する︒そのうち︑賃貸料収入は不動産所得として

UK

P r

o p

e r

t y

n   i

c o

e m

に該当し総合

︵ 氏

2090

まで

︶︑

︱ニ

‑%

︵ わ

2090

32 40 0)

0 ]

%

£32400

ー ︶

︵ わ

2090

まで

︶︑

0

%

となり︑累

(209032400)

︑四

0

%

︵ わ

32 40 0 )

︵以

下︑

英国

ER IT

とい

う︶

の税制を概観し︑その特徴 二

0

(4)

英国 RE IT 税制における論点整理

( A u t h o r i z e d   u n i t  

t r u s t s :   AU Ts ) 

0

( A u t h o r i z e d   u n i t   t r u s t s ;   AU Ts ) 

となり所得税類似の税率構造を採るが︑諸控除などが異なり︑所得税とは全く別の体系として課税されている︒

個人の場合と同じく︑不動産投資のリターンとしては賃貸料収入と譲渡収入が考えられる︒賃貸料収入は不動産所得としてシェ

ジュール

A

所得に該当し︑法人の益金に算入される︒現行の法人税率は単一税率で︑三

0

譲渡収益について譲渡収益税に服する点は個人の場合と同じである︒しかし︑法人の譲渡収益税の税率は累進税率構造を採らず︑

諸外国における

REIT

と同等のスキームを組成することは、既存のスキームの課税取り扱いの変更•修正によっても可能とな りうる︒後に述ぺるように英国ではそのような選択をせず︑全く新たな﹁税法上のスキーム﹂として

RE IT を導入ようとしてい

( 3 )

4

) 

る︒既存スキームの特徴を特に税制面から捉え︑英国における

RE IT 導入論の制度的合理性について考察する︒

RE IT 以前に設立可能である現行の集団的投資スキームとして︑認可ユニット・トラスト オープン・エンド投資会社

(0p en   , e nd ed   in v e s t m e n t   c o m p a n i e s  

O

EI Cs

) ︑及び適格インベストメント・トラスト・カンパニー

(A pp ro ve d  i n v e s t m e n t   t r u s t   c o m p a n i e s ; A  IT Cs ) を検討の対象とする

c

不動産投資にパートナーシップ等の他の投資形態を選択 することも可能であるが︑ここでは不特定多数の者から出資を募るスキームとして︑公募型を前提としておく︒

認可ユニット・トラスト オープン・エンド投資会社

(0

p e n e n d e d   i n v e s t m e n t   c o m p a n i e s   OE IC s)  

二︑英国における既存の集団的投資スキーム

おおむね実効税率は三

0

%程度となる︒

2

︵九

四一

(5)

同様の課税取り扱いを受けることになる︒

IC TA   19 8 8

FSAの認可による

AU Ts ( I C T A 1 9 8 8   s .   4 6 8   ( 6 ) ,   FS MA   20 0 0   s .   3 ) 2 4  

さらに規定を設けている︒

IT CA 1 9 8 8 OE IC sについての特別の条項は存在しないが︑命令により︑

EO IC

s

AU Ts

と全く の定義をそのまま引用し︑その上で

1

│ 2  

上の取り扱い 集団投資スキームに該当するため︑ 金融サービス庁

( F i n a n c i S a l e r v i c e s   A u t h o r i t y )  

により認可されたものを特に︑認可ユニット・トラストと呼ぶ︒事実上︑公衆

に対して公募できるものはこの

AU Ts

のみである

(F SM 2 A 0 0 0   s .   2 4 3 )

FSAの規制を受けるオープン・エンド型のスキームとして︑

が信託型であるのに対し︑

OE IC sは︑その名の通り会社型のスキームで︑

ユニット・トラストと同じくFSAの規制を受ける

(F SM A2 00 0s .   2 3 6 )

Ma rk et s  A ct   20 00   : FSMA 

2 0 0 0 )  

に吸収され更新された︒

一九九七年に導入されている︒オープン・エンド型の ユニット・トラストは︑信託型のオープン・エンド集団投資スキームである︒

( 6 )  

以前から︑当局の規制の対象となっていた︒公衆に対して募集・販売するにあたり︑受託者サイドの適格性を事前審査する必要性

一九三九年詐欺︵投資︶防止法

( P r e v e n t i o o f n   Fr au d  ( I n v e s

t m e n t ) c   A t  1)   9 3 9 制という形で顕著に現れており︑概ねその枠組のままで一九八六年金融サービス法が成立するまで継続した︒これに伴い︑監督官

一九八六年金融サービス法は二

0

0

年金融サービス市場法

0

( F i n a n c i a l S e r v i c e s   an d  (7

) 

オープン・エンド投資会社がある︒ユニット・トラスト 庁が商務省から金融サービス庁に移行した︒ が認められたためである︒そのことは︑による規

1

│ 1

分けてみていく︒

(5 ) 

ユニット・トラストは一九八六年金融サービス法

まず︑先に挙げたスキームのうちォープン・エンド型という括りで

AU Ts 0 EI Cs

の二つのスキームについて法制と税制に

0

(6)

英国 RE IT

税制における論点整理

AU Ts

OE IC sは ︑

1997

  ¥ 1

15 4)

︒ 止

吋 鹿

臥 凸

切 が

5

心 は

︑ 叶

l八 抜

恰 を

JP た

ふ は

い 居

E式 乱

の 刑 土

AU Ts

についても︑法人税に服するとする点である︒

s .  

46 8,

T 

CG A 

1992 s .  

1 0 0

S I

,  

  1997

  ¥ 1154 R

eg . 

(1 ))

 

,Til~

7

の た

5いユニット・トラストについては︑このキャピタル・ゲイン免税は適用

( J C T   A 

1988 s .  

46 9,

T 

CG A 

1992 s .  

1

゜ )

︒ 碑

{ さ

h

たインカム・ゲインの部分については︑所得税の軽減税率と等しい税率すな

(8 ) 

わち二

0

%で課税される

( I C T A

1988 s .  

468 

( I A ) F;   A 1999 s .  

28 

( 3 )

)︒英国内国法人から受け取る配当については︑他の内国法人と同

( 9 )

1 0 )

 

様に︑法人税の課税対象とはならない︒それに対して︑国内利子所得や外国源泉の利子・配当などは法人税の課税を受ける︒

AU Ts

及 ぴ

OE IC

sは︑定められた分配期間に応じて︑純所得のすべてを投資家に分配しなければならない︒分配せず再投資さ

れた場合でも︑すべての所得が分配されたものとみなされる︒

一投

資家

段階

AU Ts 又は OE IC

sから個人が受け取った収益の分配は︑シェジュールD

ケース川︵公債以外の利子︶

︵ 配

当 ︶

•居住個人投資家

0 九

1 0

 

%の税率が適用される納税者においては︑ それらの所得について︑標準的な課税スケジュールの下で︑原則として法人税の課税を受ける

( S I AU

Ts

OE IC

sは︑それらのキャピタル・ゲインに対する課税を免除されている

( I C T A

1988 

に該当する︒負債証書に対する投資割合が六

0

%を超える場合には︑その収益全体を利子とみなし︑投資家段階で利

居住投資家が配当を受け取った場合には︑当該配当はシェジュールF

所得

に該

当し

︑ 取り扱いがなされる︒支払時にビークルによる源泉徴収はなされないが︑受取配当には一

0

%の税額控除が付され︑配当の合計額

に対し︑三ニ・五%又は一

0

%のいずれかの税率で所得税が課される︒したがって︑ か︑あるいはシェジュー

追加的な課税は生じない︒三ニ・五%税率の適用のある納税者に限り︑ニニ・五%%相当分の追加的課税が生じる︒

居住投資家が利子分配を受け取った場合には︑分配時に二

0

%で源泉徴収されるとともに同率の税額控除が付され︑利子の合計 子所得に分類される︒

F

されない 原則法人段階で課税されるが︑

︵九

四三

一般の法人から配当を受け取ったのと同じ

(7)

利に

なる

︒ 控除(10

%︶がない︵居住地国で考慮されない︶ため︑

(︱

一条

③国

国︶

こと

とさ

れる

︵九

四四

︶ 額に対し四0%又は二0%のいずれかの税率で所得税が課される︒高率で課税される納税者に追加的負担が生じる点で配当と異な らない︒利子所得については︑より低率の一0%で課税される場合と非課税の場合が存する︒その場合はそれぞれ︑還付を受ける

個人投資家が受益証券

( O

E I

C s

の場合は株式︶を譲渡した場合は︑キャピタル・ゲイン所得控除︵二00六年度で

£8,500)

控除した後の残額に応じて︑それぞれ一0%︵ゎ竺090まで︶︑二0%︑四0%︵£32,400

超 ︶

•居住法人投資家

AU Ts

又は

OE IC

s から法人が受け取る配当は︑ビークルの配当原資の構成に応じて︑負担済所得

( f r a n k e d

i n

c o

m e

)  

外の所得

( U

n f

r a

n k

e d

i n

c o

m e

)  

キャピタル・ゲインについては︑その全額が法人の課税所得とされる︒

で課

税さ

れる

とそれ以

に分けられ︑負担済所得は配当所得として所得を構成しないが︑それ以外の所得については︑ニ 0%の税額控除が与えられた上で法人の課税所得に取り込まれる︒

AU Ts

の受益証券及び

OE IT s

の株式を譲渡した場合︑その

非居住投資家の場合︑居住投資家の場合にない考慮が必要となる︒配当を非居住投資家が受け取った場合︑通常適用される税額

これに対処するため︑

いくつかの租税条約ではそのような配当の場合に払い戻しの可能性を示している︒たとえば︑旧日英租税 条約によれば︑英国居住者が支払う配当を日本国の居住者が受け取る場合に︑仮にそれが英国居住者であったならば税額控除

( T

a x

  C r e d i t ) を受ける権利を有しているというときには︑当該税額控除の一部分について支払を受ける権利を有するとされ︵旧 日英︱一条③固︶︑支払い配当額と税額控除の合計額について︑英国で一五%の源泉徴収ができる

しかし︑二00六年二月に署名された新日英租税条約では︑旧条約の上記条項に相当する規定が見当たらないため︑新条約の正式 •非居住投資家

とが

出来

る︒

関 法 第 五 六 巻 四 号

一般的に言って他の条件が全く同じケースの居住投資家の場合よりは不

二︱

(8)

英国 RE IT

税制における論点整理

2

̲ 2  

c o m p a n i e s : A   IT Cs ) 

会社法

( C o m p a n i e s Ac t  1

98 5)  

るスキームであり︑クローズド・エンドの形式を採るものである︒二

0

のインベストメン

0 0

三年六月末時点において︑約三七

( 1 2 )  

ト・トラスト・カンパニーが存在し︑その総資産はおおよそ五一

0

億ポンドにのぼる︒

IT Cs

に出資する投資家は︑そのほとんど

( 1 3 )  

が機関投資家の様である︒

( 1 4 )   IT Cs は ︑ AU Ts

OE IC s SF A

の規制を受けない︒これは︑

FS Aがオープン・エンド型しか規制対象に取り込んで

いないことに起因する︒したがって︑

クローズド・エンド型のインベストメント・トラスト・カンパニーは︑

の規制およびその上場する取引所の上場基準等に服することになる︒

AU Ts

OE IC sと異なる特 徴的な点は︑営利法人とインベストメント・トラスト・カンパニーを区別する法律上の根拠が︑税法においても重畳的に設けられ ている点にある︒税法上の要件を満たしたものを特に適格インベストメント・トラスト・カンパニー

課税上の取り扱い

( 1 5 )   IT Cs

がその決算期を通じて

IC

T88  84219条の要件を満たす場合︑すなわち

AI TC

s に該当する場合には︑その

AI TC

s は当 インベストメント・トラスト・カンパこー 2

1

とで︑還付請求をすることができる︒ 発効後いかなる課税関係になるかは現時点では正確に示すことができない︒

利子分配を受け取る非居住投資家は︑租税条約の制限税率を超えて源泉徴収された部分について︑非居住者証明書を提出するこ

( A p p r o v e d   i n v e s t m e n t   t r u s t   c o m p a n i e s A   ;  IT Cs )  ( I

n v e s t m e n t   t r u s t   c o m p a n i e s ; I   T C s )  

2

適格インベストメント・トラスト・カンパニー

︵ 九

四 五

( A p p r o v e d   i n v e s t m e n t   t r u s t  

一般の法人と同じく︑

( 1 1 )  

は広義の集団的投資スキームに位置づけられ

(9)

該期間のキャビタル・ゲインに対する法人税を免除される

(T CG A

1 9 9 2

 s .  

1 0 0  

(1))

要件中の

適格投資所得とは︑﹁株式又は有価証券からの所得﹂及び﹁適格賃貸料収入﹂である︒﹁株式又は有価証券からの所I I

得﹂とされるものとして︑たとえば︑通常の配当や債券利子︑英国債の利子︑

AU

Ts

,O

E I

C s

からの収益の分配などが含まれる︒

預貯金の利子︑短期貸付金の利子︑株式貸付手数料などは含まれない︒

T r u s

t s ;  

H I

T )

 

( 1 6 )  

一九九六年FA

により適格投資所得として追加された︒いわゆる住宅投資信託

( H o u

s i n g

I n v e

s t m e

n t  

の設立を可能にするためである︒英国政府は︑懸案であった住宅不足問題に対してサプライサイドに誘引を働かせ

ることによる問題解決を意図した︒

HI

T の要件を満たした場合には︑キャピタル・ゲイン非課税措置に加えて︑当該﹁適格賃貸

( 1 7 )  

料収入﹂について小規模法人に対する軽減税率の適用を認めた︒非課税には程遠いが︑インカム・ゲインにまで租税優遇を拡大し

︵ 二

0

0

二年以降の法人税率は三

0

%であり︑小規模法人の軽減税率は一九%である︶

の期待に反して二

0

0

三年時点において住宅投資信託

( H

I T

)

インセンティブを与えている︒しかし︑そ

( 1 8 )  

は一件も設定されていない︒事実上︑存在しうる

AI

TC

s

の投資対

象資産は︑﹁株式又は有価証券﹂に限定されている状況となっている︒

キャピタル・ゲインを原資として配当することは八四二条で禁じられている︒この要件は︑会社法において定められている義務

( 1 9 )  

規定を︑税法においても確認的に定めたものとされる︒

AI

TC

s はインカム・ゲイン部分を原資としてのみ収益の分配を行うこと

ができ︑元本及びそこから生じたキャピタル・ゲインは常に再投資にまわされなければならないという制度趣旨に基づくものと考

( 2 0 )  

えら

れる

︳投

資家

段階

( 2 1 )  

AI

TC

s の株式について投資家が受け取った配当は︑英国法人からの配当と同じように扱われる︒すなわち︑シェジュール

F

︵配

当︶

所得

とし

て︑

AU

Ts

等からの配当と同様の取り扱いとなる︒

﹁適

格賃

貸料

収入

﹂が

関 法 第 五 六 巻 四 号

~

非居住投資家についての問題も︑

AU

Ts

・O

EI

Cs

の場合と同様である︒条約適用上︑

AI

TC

s からの分配は配当として取り扱わ

︵九

四六

(10)

英国 RE IT

税制における論点整理

3

1  

( P r o p e r t y   u n i t   t r u s t s   : P UT ) 

れるが︑税額控除についての問題はここでも生じうる︒

AU

Ts

OE IC

s

AI TC

sについての課税上の優遇措置は︑

る二重課税排除とはその基本姿勢が異なることは明らかである︒しかしながら︑既存ビークルを

RE IT

として機能させるために︑

一定の投資︵不動産賃事業︶を行う場合には︑さらに追加的要件を課したうえで︑インカム・ゲインにまでその非課税枠を広げる ことは理論的にはありうることである︒既存ビークルの非課税範囲がキャピタル・ゲインに限定されていることのほかに︑

RE IT への転用との関係で残っている問題点について整理しておく︒

AU Ts

及び

OE IC s

一九八六年金融サービス法

(F SA )

以前

は︑

AU Ts の投資対象資産は法律によって一定の証券に限定されていたが︑

FS A及 び

( 2 2 )  

それに続く規則制定により対象資産が拡大された︒その拡大された投資対象資産の︱つに︑不動産がある︒

不動産ファンド a p p r o v e d   i m m o v a b l e s )  

キャピタル・ゲイン非課税に限定されており︑

RE IT

に求められ

は︑そのファンド資産の二

0

%から八

0

を 承 認 不 動 産 ( P e r m i t t e d an d  とされる不動産に直接投資しなければならないファンドである︒従来は︑

オープン・エンド型のユニッ ト・トラストが直接不動産に投資することは︑その投資対象資産の非流動性ゆえに不適当とされた︒規制緩和の一環として不動産 ファンドを解禁するにあたり︑非常に厳格な要件が多角的に定められている︒

まず︑承認不動産として認められるためには︑投資対象となる不動産︵上の権利︶が︑評価可能であり︑譲渡が比較的容易な不 動産である必要がある︒抵当権などが設定されている場合︑この要件を満たさない︒二

0

年を超える不動産賃借権も︑承認不動産

に含まれる

( R e g .

5.

 3

3)

︒借り手がいないか又は収益を生み出す状況にない不動産︑又は開発中︑再開発中︑もしくは改装中であ る不動産はたとえ承認不動産であってもファンド資産の二五%を超えて投資することができない

( R e g .

5.  3 6.

 2

︒最大限承認不動)

3

既存の投資ビークルを用いた不動産投資

~

九 四

七︶

(11)

産に投資した場合︵八

0

%

︵九

四八

︶ でも︑二

0

%の残余部分が存することになるが︑この承認不動産以外の投資部分は︑不動産会社の株

式に代表されるような﹁不動産関連資産

( P r o p e t r r e y l a t e d   a s s e t s ) ﹂ ︵

R e g .

5.

 3

4)

に投資されるか︑非流動性を緩和するために国債 などに投資されなければならない︒ただし︑このような証券の形で保有できるのはファンド資産の三五%までである

( R e g .

5.  3 2.   4)

︒さらに︑分散投資の観点からは︑単一の不動産には︑原則として︑

ファンド価値の一五%を超えて投資できない

( R e g .

5.

 3 .8  

1)

一方

で︑

OE IC s

つい

ては

FSA

規則により︑資産運用目的で不動産を保有することが認められておらず︑これらの保有は会

( 2 3 )  

社の業務の執行に直接必要な範囲に限られる

( O p e

n , E

nd ed   In v e s t m e n t   C o m p

a n i e s   R e g u l a t i o n s  

19 97  s .  

5.  0 2.  1

)

以上のような状況にある

AU Ts

及び

OE IC s

対し

て︑

RE IT

類似の効果を新たに期待し︑制度的に修正を加えるというやり

まず

RE IT

と比べると︑その免税対象となる事業の射程が相当異なったものであることが指摘できる︒前述のように︑

PUT

については不動産ファンドが解禁されて以降︑投資対象等に多くの制限が定められていた︒承認不動産として認められるために︑

﹁完全所有権﹂と

﹁ 二

0

年超の不動産賃借権﹂を要件化することはともかく︑﹁借り手がいない又は収益を生み出す状況にない不

動産︑又は開発中︑再開発中︑もしくは改装中である不動産はたとえ承認不動産であってもファンド資産の二五%を超えて投資す ることができない﹂という要件は︑資金の運用先に相当の縛りをかけてしまうことになる︒また︑﹁単一の不動産に︑

値の一五%を超えて投資できない﹂との要件も同様である︒以上のことは︑

RE TI

について過度の規制を布かないように産業界か

( 2 4 )  

ら求められたことを受けて︑政府が市場による統制に委ねるよう一定の理解を示したことからも伺えるところである︒このように 考えると︑換金性の高さという点に加え︑会社法および上場基準等による情報開示規制や監督を行う仕組みが併せて要求されたこ

とに

︑ クローズド・エンドの会社型ビークルが嘱望された背景を見て取れるのではないか︒少なくとも︑流動性を維持するための 小口投資家による分散投資を前提とするならば︑クローズド・エンドかつ会社型という選択は国際的にみてもベーシックなもので

( 2 5 )  

あり︑ディスカッションペーパーもその点に触れているところである︒

PUT

に限

らず

OE IC

sについてもォープンエンド型であ

方は現実的なものと言えるのであろうか︒

関 法 第 五 六 巻 四 号

二︱四

ファンド価

(12)

英国 RE IT

税制における論点整理

て︑②不動産の経費︵建設︑修復および改装を含む︶が年間八五︑

000

ポンド

︵ニ

︱年

以上

の残

余期

間の

ある

かつ低コスト

AI TC

sはクローズド・エンドの会社型を採用する点で

RE IT と共通している︒また︑﹁賃貸料収入﹂を主たる稼得収益とする

点でも共通しており︑

AI TC sRE IT に転用することが︑組織法的には最も近しい︒前述のように︑現行制度においてはその投 資対象資産が株式又は有価証券に事実上限定されているが︑

( 2 8 )  

適格賃貸料収入とは︑適格不動産の賃貸から生じる賃貸料その他の収入であるとされる

( I C T A 1 9 8 8 ,   s .   5 0 8 A ( 2 ) )

︒そして︑当該適

格賃貸料収入には軽減税率(‑九%︶が適用されるという優遇措置がある︒それでもなお敬遠された理由は︑﹁適格賃貸料収入﹂

を生み出す原資としての﹁適格不動産﹂の要件に起因するものと考える︒ここでいう﹁適格不動産﹂とは︑インベストメント・ト ラストが一九九六年以降に取得した国内不動産に対する権利

( i n t e r e s t )

︵ 二

0

ポンド/年・ロンドン近郊は一︑

000

ポン

ド/

年︶

わち

HI T)

の設定がなされなかったのであろうか︒

3

│ 2  

リットも考慮されていると思われる︒ ることには変わりがない︒英国においては︑

クローズド・エンド型は

RE IT

の基本要素と考えられたようである︒

る ︒ Th eA s s o c i a t i o n   o

f  r e a l   e s t a t e   f un d  ( AR EF ) 

ところで︑現在のところ︑不動産を投資対象とする集団的投資スキームである

PUT

には︑相当の資金が集まっているようであ

( 2 6 )  

の資料によると︑二

0

0

六年三月末における

AR EF

会員となっているPUT

︵約

五兆

円以

上︶

二︱

︵ロ

ンド

ン近

郊は

年間

︱二

五︑

000

ポンド︶を

に上り︑平均利回りは概ね四%前後で推移している︒オープ

ン・エンド型のPUT

とクローズド・エンド型の

RE IT は︑それぞれの特徴を生かし相互補完的に機能していくことで︑英国に

( 2 7 )  

おける商業及び居住不動産市場全体の活性化に寄与するとされる︒不動産投資チャネルとしての投資ビークルに対する投資家の需

要は多様であり︑オープン・エンド型

(P UT ) 及びクローズド・エンド型

(R EI T) AI

TC s 

五二本であり︑その時価総額は約二七四億ポンド

のそれぞれが市場に存することの補完性のメ いかなる理由から適格賃貸料収入の獲得を目的とした

AI TC s

( す

な のうち︑①その権利が

自由保有権I I

I I

であるか又は長期

の不動産賃借権であっ

︵九

四九

(13)

AI TC s

の投資対象に不動産を含める試みは︑ 一八歳を超える個人は︑年間わ7.

00 

(そのうち現金はわ

超えないこと︑③取得時に賃借人がいないか若しくは短期賃貸借が保証されていることなどを満たす不動産をいうとされている︒

この要件の設定は︑この

HI T

の投資対象を﹁小規模住宅投資﹂に仕向け住宅供給を活性化しようとする政策的意図から導かれ た︒すなわち︑①の要件は︑排他的に不動産を使用・収益する権利を有していることを求めている︒たしかに︑権利関係の変動が 頻繁になると住宅としての運用は難しい面がある︒②の要件は︑

までしか認めていないが︑これは商業不動産には明らかに不向きな要件である︒③の要件は︑既に賃借人がいる物件について

HI Tに投資させても︑英国内の住宅供給は増大しないから政策目的に資することにならないということであろうか︒このように︑

HIT

の政策的射程は﹁小規模住宅投資﹂に絞られており︑その意味で租税優遇の効果は非常に限定的なものに留まってしまった ということができる︒要するに︑不動産市場に対して包括的に投資できるビークルとしてそもそも設計されていないのである︒

別の視点からみると︑住宅投資信託

(H IT )

ロンドン近郊においてでさえ物件あたり約二︑五

0

0

万円の投資

としての

AI TC

sに投資した投資家に︑

SI A ( I n d i v i d u a l   S av in g  A cc ou nt )

制度の

利用可能性がなかったことも︑ディスインセンティブの一っとして考えられる︒

IS

Aとは︑個人の所得計算において︑政令にリ

ストされている一定の投資商品に投資した場合に︑そこから得られた所得について︑

I( CT A  1 9 8 8   s .  

333 

an

d  3

33 B,

T 

CG A  1 9 9 2   s .   1 5 1 ,

FA  

1 9 9 8   s .   7 5 )

4t4

関 法 第 五 六 巻 四 号

一定額の所得控除を与えるという特典である

二︱六

︵ 九

O )

3, 00 0)

を上限として

IS

Aに従った投資を行うことができ︑その果実については︑所得税及びキャピタル・ゲイン税は課せられな

( 2 9 )  

い︒その投資対象は限定的であり︑株式又は有価証券︑現金︑生命保険に限られるが︑さらに具体的な投資商品を規則で詳細に掲

げて

いる

AI TC s

のう

ち︑

HI

Tは除外される

n d ( I i v i d u a l S a v i g n s   A c c o u n t   R e g u l a t i o n s   S I 1 9 9 8 / 1 8 7 0 ,   R eg

 

( 7

) ) ︒なお︑二

0

四年度

0

( 3 0 )  

で︑およそ二八

0

億ポンドの資金が

IS

Aを通じて投資されている模様である︒

一般

的に

HI

Tと呼ばれるスキームとして法制化されたが︑政策目的とのリン

ケージを重視して投資対象を小規模住宅投資に限定するものであった︒改めてこれを

RE IT

として組み替えるとすれば抜本的な

変更を強いられることになるが︑証券投資ビークルとしての

AI TC

sは︑それはそれでニーズを満たしてきているわけで︑証券投

(14)

が期待されている︒同時に︑小口投資家が商業不動産市場に参入する機会を提供することも︑重要視される︒

︱つの解決法として︑諸外国にみられるような

RE IT 制度の導入の有用性が指摘された︒その指摘に強く影響を受け︑

U

KR

e a

l  

なく﹂導入することを意図している︒

英国

RE IT 税制における論点整理

二 ︱ 七

資ビークルとしての

AI TC s にまで影響を及ぼす必要もない︒また︑

AI TC

sが普通法人並みに規制を受ける点︑すなわち︑不動

産投資ビークルとしては不要な制約が余りにも多いという問題が併せて指摘されているが︑これは結論からいって導入された英国 RE IT と余り相違ないであろう︒それが真に阻害要因として働くとすれば問題ではあるが︑

RE IT と単純に比較できない面があろ う︒少なくとも住宅投資自体に国内的なニーズがあったとすれば︑

HI

Tを促進できなかった最大の要因は無税で投資できる

IS A 適格の投資とされなかったことが主因と考えられる︒結局のところ︑ビークルを仕組む側及び投資家の両方が︑条件面から不動産 投資についてインベストメント・トラストの利用を望まなかった︑ということが今日の結果をもたらしていると考えられる︒

F i

n a

n c

e   A

c t

  2

006によって

RE IT

が導入された後は︑

HI

T関係法規はその効力を失うものとされた

( F i n a n c e A c t   2

00 6 s .  

14 3)

︒詳し

くは後述するが︑英国における

RE IT 導入論は住宅供給問題の解消に端を発したとされるものの︑決して

HI T

の轍を踏むことな

く商業不動産にまでその投資対象を拡大し︑ビークル段階の課税を根本的に排除する

RE IT という枠組みを推し進めることに よって不動産市場を活性化させようという大胆な政策的誘導の結果であると言えよう︒

三 ︑

R e

a l

E s

t a

t e

  I n

v e

s t

m e

n t

  T r

u s

t s

  ( UK

R E I T)   導入の背景とこれまでの経過

英国

政府

は︑

の成

立 ヨーロッパの他の国でも実際に成功した新しい投資ビークルである︑不動産投資信託

( R

E I

T )

︑を﹁国庫の負担

RE IT 導入によって︑不動産投資市場を活性化させるのみならず︑商業不動産部門により大きな柔軟性と換金性をもたらすこと

( 3 2 )  

英国が慢性的に抱えてきた住宅供給不足という問題について︑経済学的な視点から分析がなされた

K a

t e

B a

r k

e r

論文

にお

いて

︵ 九

五 一

参照

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