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食習慣・肥満の心理学的・神経生理学的影響に関する研究 学位論文内容の要旨(平成28年度修了:平成19年度以降入学者) | 北海道大学 医学部医学科|大学院医学院|大学院医理工学院|大学院医学研究院

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Academic year: 2018

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学 位 論 文 内 容 の 要 旨

博士の専攻分野の名称 博士(医 学) 氏 名 宮崎 茜

学 位 論 文 題 名

食習慣・肥満の心理学的・神経生理学的影響に関する研究

(Studies on psychological and neurophysiological consequence of dietary habits and obesity)

【背景と目的】

食事・運動の生活習慣による死亡リスクは、障害調整生命年(disability-adjusted life year:

DALYs )の 10%と推定されている。肥満は摂取した栄養が自然に代謝できる限界を超えた結果、

過剰に脂肪を貯蔵している状態である。肉やパン、お菓子を多く摂取する欧米型の食事や不規則

な食習慣による影響が報告されており、肥満の改善のために生活習慣への介入が行われている。

日本の食習慣による不安・抑うつや良質な睡眠への効果が報告されているが、食習慣による心理

的影響について、肥満の程度による階層性については明らかになっていない。また、肥満者にお

ける認知処理の異常が報告されているが、肥満の状態と素因のどちらを反映するのかは明らかに

なっていない。

本検討の目的は、肥満および食習慣による心理的影響および神経生理学的影響を明らかにする

ことである。食習慣による肥満傾向への影響について検討するために、調査データを分析する。

肥満者での過剰な栄養摂取の背景と考えられている衝動性に着目し、食品の選択傾向との関連性

について検討する。肥満傾向に寄与する神経生理学的指標を探索するために、脳波を計測し、事

象関連電位を評価する。肥満傾向を反映する体格指数(Body mass index : BMI)と事象関連電位と

の関連を調べる。また、肥満との関連が報告されている食習慣についても評価する。

【対象と方法】

検討 1 食習慣の傾向による肥満への影響を検討するために、372 名の中高年を対象として実施

された調査データを分析した。肥満の指標に体格指数(Body Mass Index: BMI)を使用し、食品の

摂取頻度の調査に基づいて食品の摂取量およびエネルギーを推定し、総エネルギー量で補正した。

Barratt Impulsiveness Scale-11(BIS-11)を用いて衝動性を評価した。279 名のデータについ

て、因子分析を用いて食事における食品の摂取傾向を抽出し、因子得点にもとづいてグループに

分けて比較した。また、エネルギーとなる栄養素「たんぱく質」、「脂質」、「炭水化物」の摂取量

を主成分分析し、BMI を含めてクラスタリングし、衝動性との関連性を検討した。

検討 2 肥満傾向と神経生理学的指標の関連を検討するために、34 名を対象に脳波を計測し、

事象関連電位成分の 3 つの指標( P50, Mismatch negativity: MMN, P300)を評価した。食習慣は

質問紙を用いて評価した。肥満の有無による影響を検討するために、BMI 値 25 以上 (BMI 高値群)

(2)

【結果】

検討 1 因子分析の結果、「食事の健康度」、「飲酒・間食傾向」、「単品傾向」の 3 つの食習慣パ

ターンが抽出された。「食事の健康度」は、にんじん・かぼちゃ、だいこん・かぶ、緑葉野菜、き

のこ、とうふ・油揚げの因子得点が高く、食事の健康度を反映する得点が高いほど、BMI 値の低

い傾向が示唆された(β=-.13 ; 95% CI = -.07 - -.002 ; p=.035)。ビール、焼酎、脂がのった

魚で正の因子得点が高く、洋菓子やせんべいで負の因子得点の高い「飲酒・間食傾向」による BMI

への影響は示唆されなかった(β=-.02 ; 95% CI = -.03 - .04 ; p=.77)。また、生野菜、トマト、

パン、そばの因子得点の高い「単品傾向」は BMI への影響は示唆されなかったが(β=-.02 ; 95% CI

= -.04 - .03 ; p =.77)、得点が高いほど総エネルギー量が低下する傾向が示唆された(β=-.21 ;

95% CI = -.001 - .000 ; p <.001)。また、エネルギー栄養素の摂取傾向と衝動性との関連は、

肥満未満のグループにおいて、たんぱく質・脂質の摂取傾向と「衝動的行動」(r= .18, p=0.05)、

炭水化物の摂取傾向と「計画性のなさ」との関連性が示唆された(r= -.21, p=0.03)。

検討 2 事象関連電位の頂点振幅および頂点潜時を BMI 高値群と BMI 非高値群で比較したとこ

ろ、持続長 MMN 成分は BMI 非高値群よりも BMI 高値群での振幅低下が示唆された( t(26.90) = -2.32,

p=.028)。他の指標において群間差は観察されなかった。

【考察】

検討 1 これまでの食事調査から肥満との関連を検討した横断研究は、例えば、野菜や根菜、

豆加工品を含む日本食パターンおよび肉や魚を含む動物食パターン、そしてパンやマヨネーズ、

卵などの洋風の朝食を代表する食事パターンを報告している。本検討の分類は、食事の献立を反

映するパターンとは異なるが、健康的な献立を反映する因子得点でグループに分けたとき、食事

の健康度の高いグループほど、BMI 値の低い傾向が観察されたことから、健康的な食事を反映す

る因子であると考えられる。

衝動性が高いほど脂質摂取量が多くなることが報告されているが、肥満のあるグループでの衝

動性と食品の選択傾向との関連は示唆されなかった。肥満のないグループにおいて、たんぱく質

や脂質の摂取割合が高いほど衝動的行動をとる傾向および炭水化物の摂取割合が高いほど計画性

のない行動をとる傾向が示唆された。食事調査票に含まれない食品の摂取は評価できないため、

特に肥満のある対象者への食事調査については、より詳細な評価の必要性が示唆された。

検討 2 事象関連電位の 3 つの指標について、BMI 高値群と BMI 非高値群とで比較したところ、

BMI 高値群の MMN 成分振幅は BMI 低値群よりも減弱していた。他の指標では肥満の有無による効

果は観察されなかった。MMN 成分は聴覚感覚記憶を反映し、遺伝的背景との関連が報告されてお

り。BMI による MMN 成分への直接的な影響関係の有無は明らかになっていないが、MMN 成分の減弱

の背景に肥満の生物学的な素因と関連する可能性が示唆された。

【結論】

健康的な食事摂取傾向は肥満傾向と関連することが示唆された。衝動性は、脂質、たんぱく質、

炭水化物の摂取傾向との関連したことから、日本食における「主食」「主菜」の選択に影響を与え

ている可能性があるかもしれない。持続長 MMN 成分の障害に寄与する要因と肥満傾向との関連か

参照

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2)医用画像診断及び臨床事例担当 松井 修 大学院医学系研究科教授 利波 紀久 大学院医学系研究科教授 分校 久志 医学部附属病院助教授 小島 一彦 医学部教授.

URL http://hdl.handle.net/2297/15431.. 医博甲第1324号 平成10年6月30日

学位授与番号 学位授与年月日 氏名 学位論文題目. 医博甲第1367号

金沢大学学際科学実験センター アイソトープ総合研究施設 千葉大学大学院医学研究院

東京大学 大学院情報理工学系研究科 数理情報学専攻. hirai@mist.i.u-tokyo.ac.jp

鈴木 則宏 慶應義塾大学医学部内科(神経) 教授 祖父江 元 名古屋大学大学院神経内科学 教授 高橋 良輔 京都大学大学院臨床神経学 教授 辻 省次 東京大学大学院神経内科学

⑹外国の⼤学その他の外国の学校(その教育研究活動等の総合的な状況について、当該外国の政府又は関

東北大学大学院医学系研究科の運動学分野門間陽樹講師、早稲田大学の川上