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訪日外国人における観光の態様に関する実証研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 師    耀 軒

学 位 論 文 題 名

訪日外国人における観光の態様に関する実証研究

― 留 学生 と 親族 訪 問 客を 事例 として―

学位論文内容の要旨

  訪日外 国人客( 訪日外客 )を増や すことは日 本における観光政策の重要課題である。し かし、2010年に訪日 外客の旅 行者数を1.000万人にするという政策目標の達成は困難な状 況にあ る。そう した中、 訪日外客 の一部と位 置づけることのできる留学生の人数は、増加 傾向に ある。ま た、日本 政府は留 学生30万人計 画を発表し、留学生受入を推進している。

留学生 は、日本 に居住す る外国人 として、日 本国内を旅行することなどを通じ、日本にお ける観 光業や地 域経済の 振興に貢 献すること も期待される。さらに、留学生の増加は、留 学生に 会うため に海外か ら日本に 来る留学生 の親族や友人を増やす効果も期待される。留 学 生や 親 族 友人 訪 問(Visiting Friends and Relatives)を目的と した外国 人来訪客(VFR 客)に ついては 、観光市 場におけ る重要なセ グヌントのーっとしてとらえられ、国際的に は多数 の研究例 がある。 しかしな がら、日本 において 、留学生 やVFR客に着 目した観光研 究は少ない現状にある。

  本論文 の課題は 、訪日外 国人の来 日期間中に おける観光の態様を、実証的に明らかにす ること である。 分析対象 とする訪 日外国人は 、留学生と親族訪問客とした。分析方法とし て、従 来の観光 研究で多 用されて きたアンケ ート調査だけではなく、毎日の生活行動すべ でを時刻ごとに調査する生活時間調査としゝう手法を観光研究に適用し、訪日外国人の詳細 な観光 実態に関 する事例 分析を実 施した。分 析対象者とした訪日外国人は、次の通りであ る。第1に、留学 生の観光 動向を解明するためのアンケート調査対象者は、北海道大学(北 大)に 在籍する 留学生と した。第2に、観光実 態に関す る事例分 析の対象 者も、北大に長 期に在 籍してい る留学生 ならびに 外国人研究 者に会いに来日した親族と、その親族受入側 である 留学生な らびに外 国人研究 者とした。 北大はアジアからの留学生が多く、とりわけ 中国か らの留学 生が国別 では最大 である。今 後、中国からの訪日客は、大幅な増加が期待 されて いること から、実 態調査の 対象者は中 国人とした。これらについて、以下の分析結 果を得ている。

  第1に、 日本にお ける親族 友人訪問 客の動向と 特徴を、 統計デー 夕分析に よって解明し た。親 族友人訪 問客は、 訪日外国 人全体と比 べ、中国・欧米、女性、主婦、同伴者なし、

個人旅 行の比率 が高い傾 向にある 点を明らか にした。親族友人訪問客は、訪日外国人全体 よりも 、長期間 滞在する 傾向にあ る点、また 、親族と友人の家に泊まるだけではなく、旅 館 や ホ テ ル な ど の 宿 泊 施 設 も 利 用 す る 傾 向 が み ら れ る 点 も 明 ら か に し た 。   第2に、 北大留学 生を対象 者とした アンケート 分析を通 じ、留学 生の北海 道内(道内)

におけ る観光動 向を解明 した。留 学生の道内 訪問先および道内観光目的は、外国人観光客 全体と 似ている 傾向がみ られる点 、また留学 生は外国人観光客全体よりも、宿泊日数が少

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ない点を明らかにした。留学生は、外国人観光客全体よりも、道内観光全体に対する満足 度が低いという傾向がみられる点も明らかにした。

  第3に、 北大留学生データを用いた統計的検定を通じ、日本語会話能カの違いが観光行 動にどのような違いをもたらすかを解明した。日本語の会話能カが高い留学生は、低い留 学生よりも、多くの観光地を訪問し、ドライプや郷土料理を楽しみ、ホテル・旅館に宿泊 し、またインターネットから観光情報を入手している傾向がより強い点を明らかにした。

  第4に、 北大留学生データを用いた統計的検定を通じ、中国人留学生と中国人以外の留 学生における観光行動の違いを解明した。中国人留学生は、中国人以外の留学生よりも、

観光旅館に宿泊し、またテレピなどの公共ヌディアから観光情報を入手している傾向がよ り強い点を明らかにした。

  第5に、 生活時間調査を通じて、北大に長期に在籍している留学生ならびに外国人研究 者に 会い に来日した親族(VR側)と、その親族受入側である留学生ならびに外国人研究者

(受入側)の観光行動に関する事例分析を実施した。VR側が子供を連れて来日したか否か、

また平日か休日かの遠いが、VR側の在宅時間割合や外出時間帯に影響する点が確認された。

訪日 中に おけるVR側 と受 入側 の食 事時 間は、日本平均と比ベ、長い傾向が見られた。VR 側と受入側の全食事内容を、和食・洋食・中華に分類した結果、和食の食事回数が最も少 なく、中華の食事回数が最も多い点が明らかとなった。VR側と受入側の教養・娯楽時間と 買 物 時 間 は 、 い ず れ も 日 本 平 均 よ り も 長 い 傾 向 に あ る 点 も 明 ら か と な っ た 。   第6に、 旅行の動機や満足度などを評価するためのアンケート調査と訪日中の消費動向 を解明するための消費実態調査を通じて、北大に長期に在籍している留学生ならびに外国 人研 究者 に会いに来日した親族(VR側)と、その親族受入側である留学生ならびに外国人 研究者(受入側)の観光実態に関する事例分析を実施した。観光への満足度については、

食事を除いた全観光項目で、VR側が受入側より高い傾向がみられる点、VR側と受入側が訪 日中に出かけた日帰り旅行や宿泊旅行については、旅費を安価に抑えようとする傾向がみ られる点が明らかとなった。土産・買物の消費額は、全訪日期間における全消費額の中で、

最大 費目 である 点、 また 外出 時間 割合 が増加すると、1人1日当たりの消費金額も増加す る傾向がみられる点も明らかとなった。

  以上のように、本研究は、留学生と親族訪問客を事例として、訪日外国人の来日期間中 にお ける 観光の態様を、実証的に分析したものである。本論文の主な新規性は、第1に、

毎日の生活行動すべてを時刻ごとに調査する手法である生活時間調査という手法を観光研 究に 適用 し、訪日外国人による観光行動の詳細な実態を解明できた点である。第2に、生 活時間調査と同時に、消費実態調査も実施し、訪日外国人による観光消費の詳細な実態を 解明できた点である。こうした生活時間調査と消費実態調査を通じた事例分析だけではな く、従来の観光研究で多用されてきたアンケート調査分析も実施した。このような多様で、

また新しい研究アプ口ーチの採用により、本論文では、留学生と親族訪問客を事例として、

既存研究では十分に解明できなかった訪日外国人における観光の態様を、より詳細な内容 として、明らかにすることができたものと考える。

  本研究の成果は、以上のような学術的貢献だけではなく、訪日外国人数増加のための観 光政策を推進していく上で、また留学生と親族訪問客を対象とした新しい観光市場の展開 を 推 進 し て 行 く 上 で の 、 基 礎 的 知 見 と し て も 、 有 用 だ と 考 え る 。

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学位論文審査の要旨 主査    教授    山本康貴 副査   教授    飯澤理一郎 副査    助教    中谷朋昭

学 位 論 文 題 名

訪日外国人における観光の態様に関する実証研究

一 留 学 生 と 親 族 訪 問 客 を 事 例 と し て ―

  本 論 文 は8章 か ら 社 り 、 図73、 表44、 文 献171を 含 む 頁 数173の 和 文 論 文 で あ り 、 別 に参 考論 文3編 が付 され てい る。

  訪日 外国 人客 (訪 日外 客 )を 増や すこ とは 日本における観光政 策の重要課題である。

し か し 、 訪 日 外 客 数の 政策 目標 達成 は容 易で はな い状 況に ある 。そ う した 中、 訪日 外 客 の 一 部 と 位 置 づ ける こと ので きる 留学 生の 人数 は、 増加 傾向 にあ る 。日 本政 府は 留 学 生30万 人 計 画 を 発表 し、 留学 生受 入を 推進 して いる 。留 学生 は、 日 本に 居住 する 外 国 人 と し て 、 日 本 国内 を旅 行す るこ とを どを 通じ 、日 本に おけ る観 光 業や 地域 経済 の 振 興 に 貢 献 す る こ とも 期待 され る。 さら に、 留学 生の 増加 は、 留学 生 に会 うた めに 海 外 か ら 日 本 に 来 る 留学 生の 親族 や友 人を 増や す効 果も 期待 され る。 留 学生 や親 族友 人 訪 問(Visiting Friends and Relatives)を 目 的 と し た 外 国 人 来 訪 客(VFR客) につ い て は 、 観 光 市 場 に おけ る重 要な セグ メン トの ーっ とし てと らえ られ 、 国際 的に は多 数 の 研 究 例 が あ る 。 し か し な が ら 、 日 本 に お い て、 留学 生やVFR客に 着 目し た観 光研 究 は 少な ぃ現 状に ある 。

  本 論 文 の 課 題 は 、訪 日外 国人 の来 日期 間中 にお ける 観光 の態 様を 、 実証 的に 明ら か に す る こ と で あ る 。 分 析 対 象 者 と し た 訪 日 外 国人 は、 次の 通り であ る。 第1に 、留 学 生 の 観 光 動 向 を 解 明す るた めの アン ケー ト調 査対 象者 は、 北海 道大 学 (北 大) に在 籍 す る 留 学 生 と し た 。 第2に 、 観 光 実 態 に 関 す る事 例分 析の 対象 者も 、 北大 に在 籍し て い る 留 学 生 な ら び に外 国人 研究 者に 会い に来 日し た親 族と 、そ の親 族 受入 側で ある 留 学 生 な ら び に 外 国 人 研 究 者 と し た 。 ま た 、 実 態 調 査 の 対 象 者 は 中 国 人 と し た 。   第2章 で は 、 日 本 に お け る 親 族 友 人 訪 問 客 の動 向と 特徴 を、 統計 デ ータ 分析 によ っ て 整 理 し た 。 親 族 訪問 客は 増加 傾向 にあ る点 、親 族友 人訪 問客 の訪 日 情報 源は 、友 人 や 親 族 か ら の 口 コ ミ が 多 い 傾 向 に あ る 点 な ど を 明 ら か に し た 。   第3章 で は 、 留 学 生 を 対 象 者 と し た ア ン ケ ート 調査 を通 じ、 留学 生 の北 海道 内( 道 内 ) に お け る 観 光 動向 を分 析し た。 留学 生の 道内 訪問 先お よび 道内 観 光目 的は 外国 人 観 光 客 全 体 と 似 て いる 傾向 がみ られ る点 、留 学生 は外 国人 観光 客全 体 より も道 内観 光 全 体 に 対 す る 満 足 度 が 低 い と い う 傾 向 が み ら れ る 点 な ど を 明 ら か に し た 。   第4章 で は 、 留 学 生 デ ー タ を 用 い た 統 計 的 検定 を通 じ、 日本 語会 話 能カ の違 いが 観 光 行動 にど のよ うな 違い を もた らす かを 分析 した。日本語の会話 能カが高い留学生は、

低 い 留 学 生 よ り も 、多 くの 観光 地を 訪問 し、 ドラ イブ や郷 土料 理を 楽 しみ 、ホ テル ・

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旅館に宿泊し、またインターネットから観光情報を入手している傾向がより強い点な どを明らかにした。

  第5章では、留学生データを用いた統計的検定を通じ、中国人留学生と中国人以外 の留学生における観光行動の違いを分析した。中国人留学生は、中国人以外の留学生 よりも、観光旅館に宿泊し、またテレビなどの公共メディアから観光情報を入手して いる傾向がより強い点などを明らかにした。

  第6章では、毎日の生活行動すべてを時刻ごとに調査する生活時間調査を通じ、来 日した親族(VR側)と、その親族受入側である留学生ならびに外国人研究者(受入側)

の観光行動に関する事例分析を実施した。VR側が子供を連れて来日したか否かの違い がVR側の在宅時間割合や外出時間帯に影響する点が確認された。全食事内容を、和 食・洋食・中華に分類した結果、和食の食事回数が最も少なく、中華の食事回数が最 も多い点なども明らかとなった。

  第7章では、旅行の動機や満足度などを評価するためのアンケート調査と訪日中の 消費動向を解明するための消費実態調査を通じ、VR側と受入側の観光実態に関する事 例分析を実施した。観光への満足度にっいては、VR側が受入側より高い傾向がみられ る点などが明らかとなった。土産・買物の消費額は、全訪日期間の全消費額の中で、

最 大費目である点、外出時間割合が増加すると1人1日当たりの消費金額も増加する 傾向がみられる点なども明らかとなった。

  以上のように、本研究は、留学生と親族訪問客を事例として、訪日外国人の来日期 間中における観光の態様を、実証的に分析したものである。本研究は、従来の観光研 究で多用されてきたアンケート調査分析のみならず、毎日の生活行動すべてを時刻ご とに調査する生活時間調査と毎日の消費内容すべてを調査する消費実態調査を同時に 観光研究に適用し、既存研究では十分に解明できなかった訪日外国人における観光の 態様を、より詳細な内容として、明らかにしている点で、高く評価できる。本研究の 分析結果は、訪日外国人数増加のための観光政策を推進していく上で、また留学生と 親族訪問客を対象とした新しい観光市場の展開を推進して行く上での、基礎的知見と して有用である。

  よって、審査員一同は、師耀軒が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有 するものと認めた。

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参照

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