博 士 ( 医 学 ) 小 池 雅 彦
学 位 論 文 題 名
Function of culturing monolayer hepatocytes by collagen gel coating and co‑culture with nonparenchymal cells
(コラーゲンゲル積層と混合培養による単層培養肝細胞の機能増強の試み)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
1. 目 的
各 種 肝 補 助 療 法 の 進 歩 に も か か わ ら ず 、 劇 症 肝 炎 ・ 慢 性 肝 炎 の 急 性 増 悪 ・ 術 後 の 肝 不 全 の 救 命 率 は 、40% 以 下 と 低 く 、 強 カ な 肝 補 助 装 置 の 出 現 が 望 ま れ て い る 。 肝 は 解 毒 ・ 代 謝 ・ 合 成 ・ 免 疫 な ど 多 彩 で 高 度 な 機 能 を 有 し て お り 、 こ の 機 能 を 代 償 す る に は 現 状 で は 肝 細 胞 を 装 置 に 組 み 込 む 以 外 に な い と い う 考 え か ら 、 当 科 で は1987年 よ り 肝 細 胞 を 単 層 培 養 し こ れ を 積 層 す る 積 層 型 人 工 肝 を 開 発 し 、 検 討 し て き た 。 こ の 人 工 肝 は 無 肝 犬 ・ 無 肝 兎 の 生 存 時 間 を 二 倍 以 上 延 長 す る こ と が 確 認 さ れ て い る が 、 臨 床 応 用 に は 解 決 し な け れ ば 詮 ら な い 問 題 点 が あ る 。 そ の ー っ と し て 、 人 工 肝 の 機 能 を 増 強 し 維 持 す る こ と が あ る 。 そ こ で 我 々 は 細 胞 培 養 で 有 効 と 考 え ら れ て い る 混 合 培養 と コ ラ ー ケ ゛ン ケ . ル を 組み 合 わ せ て 、肝 非 実質 細胞 と肝細 胞との 混合培 養し た上に コラー ケ゛ン ケ゛
ル を 積 層す る と い う 新 しい 培 養 形 態 を考 案 し て そ の有 用 性 を 検 討し た 。
2.方 法
1. 実 験 材 料 . 雄 性Wistar系 ラ ヴIの 門 脈 か ら0.05%コ ラ ケ ゛ ナ ー セ . を 灌 流 し 肝 を 細 胞 浮 遊 液 と す る 速 沈 を 繰 り 返 し 肝 細 胞 を 精 製 し た 。 こ の 際 、 上 清 を 集 め フ ゜ ロ ナ ー セ ゛Eで 肝 細 胞 を 消 化 し て 非 実 質 細 胞 を 得た 。O.3%コラ ーケ゛ ンにMediumと緩 衝液を 加えて コラー ケ゛ ン溶液 として 、コラ ーケ゛ンケ゛ルの用意をした。培 養液には10‑。Mインスリン、10ー。Mテ゛キサメサリ゛ン、10‑。Mク゛ルカコ゛ン、7n g/mlヒI上皮細胞増殖因子、100彫g/mlク ロ ラ ム フ ェ ニ コ ー ル 、48肛g/mlケ ゛ ン ゥ マ イ シ ン を 添 加 し た ウ ィ ル ア ム ス ゛E培 地 を 使 用 し た 。 2. 実 験 群 , 次 の4群 に つ い て 検 討 し た 。I群 : コ ラ ー ケ ゛ ン コ ーI上 に 肝 細 胞 を 単 層 培 養 、II群 : コ ラー ケ ゛ ン コ ーI上 に 肝 細 胞 と 非 実 質 細 胞 を 混 合 培 養 、m群 :I群 の 上 に コ ラ ー ケ ゛ ン 溶 液 を 積 層 し ケ ゛ ル 化 さ せ る 、 W群:II群の上に〕ラーケ゜ン溶液を積層しケ゛ル化させる(n=7)。
3. 検 討 項 目 , 位 相 差 顕 微 鏡 で 肝 細 胞 お よ ぴ 非 実 質 細 胞 の 形 態 を 観 察 す る 。 培 養 開 始 後1、2、3、 5、7、14日 に 尿 素 合 成 能と 分 泌 ア ル7. ゛ ミ ン を 測定 し た 。 尿 素 はア ン モ ニ ア を負 荷 し 生 成 され た 尿 素 量 をシ ゛ アセ チルモ ノオ キシム 法によ り測定 した 。アルフ゛iンは細胞培養上清中に分泌されたアルフ゛iン量をサンI゛イサチELI SA法で測定した。
4. 統 計 学 的 処 理 , 得 ら れ た 数 値 は 平 均 値 土 標 準 誤 差 で 表 し 、ANOVA法 に て 解 析 し 、 有 意 差 の 検 定にはScheffe法を用い、p<0.05を有意とした。
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3.結 果
1. 位 相 差 顕 微 鏡 所 見 ,I群 : 肝 細 胞 は 播 種 後2時 間 で 接 着 し 、24時 間 後 に は 伸 展 が 始 ま っ た 。 肝 細 胞 は 播 種 後3日 ま で は 良 好 顔 形 態 を 保 っ た が 、 そ の 後 急 速 に 脱 落 し た 。H群 : 混 合 培 養 で は 非 実 質 細 胞 の 脱 落 が 播 種 後2日 か ら 始 ま り 、 以 後 急 速 に 脱 落 し た 。 肝 細 胞 はI群 と 同 様 に3 日 ま で は 良好 詮 形 態 を保 ち 、 以 後脱 落 し た 。m群: コラーケ ゛ンケ .ルを 積層享 ること によっ て肝細 胞は 比 較 的 コ ン ハ . クIな 形 態 を 保 ち 、 辺 縁 は 明 瞭 で あ っ た。 ま た 、 観察 し た14日 間 に わ たっ て 良 好 詮形 態 を維持 した。W群:混合培養にコラーケ゛ンケ゛ルを積層した群では丶I肝細胞はやはルコンハ゜クIで辺縁が 明瞭であり、、肝細胞も非実質細胞も良好な形態を14日間にわたって保った。
2. 尿 素 合 成 能 ,I群 : 尿 素 合 成 能 の 最 高 値 は3日 目 の1.585±0.431肛g/ml/9 0minで あ り 、14日 目 に は ほ と ん ど 合 成 能 を 認 め ナ ょ か っ た 。II群 : 尿 素 合 成 能 は3日 目 の1.378±O.366ハg/ml/9 0min が 最 高 で14日 目 に はほ と ん ど 合成 能 を 認 め詮 か っ た 。m群: コ ラ ー ケ゛ ン ケ ゛ ルを 積 層 し た群 で は、 最 高 値 は17.844±1.764皿g/ml/9 0minであ り 、14日 目 で も3.816±O.909弘g/ml/9 0minで あ っ た。W 群 :混合 培養の 上にコ ラーケ .ンケ゛ ルを積 層した 群は最 高値が19.249±1.099皿g/ml/9 0minと著増し、
14日 目 で も7.569+1.716/1 g/ml/90minと 高 値 で あ っ た 。 統 計 学 的 に はI群 とII群 の 間 に は 有 意 差 を 認 め な か っ た が 、I群 とm群 、I群 とlv群(p<0.0001) 、H群 とm群(p<0.0001) 、II群 とW群 (p<0.0001)、IIl群とW群(p=0.0014)に有意差を認めた。
3. アルフ ゛ミン 分泌能 .I群: アルフ .ミン 分泌は7日間保持され、0.94‑‑0.556ヰg/ml/24hrであった。II 群:アルフ.ミン分泌は7日間保持され、O.509〜1.601皿g/ml/24 hrであった。m群:コラーケ゛ンケ゛ル積層に よ ル ア ル7. ミ ン 分 泌 は 減 少 し た が 、14日 目 ま で 持 続 し た 。W群 :m群 と 同 様 の 結 果 を 得 た 。 統 計 学 的には各群間に有意差を認めをかった。
4.考 察
最近 テ.メ19ユーら はフ゛ タ肝細胞 を利用 した人 工肝を 短期間 使用後 、肝移 植を行ったケースを報告してお り 、 人 工 肝 は 現 実 性 を 帯 ぴ た も の と 毅 っ て き て い る 。 し か し 、 こ の 報 告 で は 全 例6〜7時 間 の 使 用 に と ど ま り 、 人 工 肝 は そ れ だ け で 肝 不 全 を 治 療 で き る ほ ど の 能 カ は 現 時 点 で は 持 ち 合 わ せ て い な い 。 従 っ て 、 さ ら に 強 カ に 肝 機 能 を 補 助 で き る 人 工 肝 へ の 期 待 は む し ろ 高 ま っ て い る と 思 われ る。
そ こ で 従 来 よ り 第 一 外 科 で 開 発 し て き た 積 層 型 人 工 肝 の 機 能 を 増 強 す る 試 み と し て 、 混 合 培 養 と コラ ー ケ . ンケ . ル 積 層に よ る 新 しい 培 養 形 態を 検 討 し た。 混 合 培養 単独で は非実 質細胞の 脱落に よ り 肝細 胞 単 独 と差 が な っ かっ た 。 し かし 、 こ こ にコ ラ ー ケ ン ケ . ルを 積層す ること により非 実質細 胞が14日問維 持され 、他の 実験群に 対して いずれ も顕著 な有意 差を認 めた。
非 実 質 細 胞 は 肝 細 胞 増 殖 因 子 な ど 様 々 詮 サ イIカ イン を 分 泌 して い る こ とが 判 明 し てき て お り 、培 養 肝 細 胞 の 増 殖 に 影 鬢 を 及 ば し て い る と 推 察 さ れ 、 今 回 の 研 究 で は 、 安 定 し た 培 養 状 態 で は 肝 細 胞機 能の増 強にも効 果が期 待でき ると思われた。また、アルフ゛ミン分泌能がコラーケ゛ンケ.ル積層群でや や低 い傾向 にあった ことは 、コラ ーケ゛ ンケ゛ ルの網 目状構造にアルフ゛iン分子が捕らえられている可能性 が 強 く 、 今 後 コ ラ ー ケ ゛ ン ケ ゛ ル の 厚 さ に つ い て も 検 討 を 要 す る と 思 わ れ た 。
5. 結 語
混合 培 養 と コラ ー ケ ゛ ンケ ゛ ル 積 層を 組 み 合 わせ た 培 養 形態 は 肝 細 胞の 機能 を著し く高め 、積層 型人工 肝へ の 応 用 が期 待 さ れ る。
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