博士(理 学) カウシク・ダス
Experimental study for granulite grade rocks in the K20‑FeO‑MgO‑Al203‑Si02‑H20 system under high oxygen fugacity and its application to natural occurrences
(K20
―FeO‑MgO‑Al203‑Si02‑H20 系における高酸素分圧下での
グ ラ ニ ュ ラ イ ト 相 の 実 験 的 研 究 と 天 然 へ の 応 用 )
学位論文内容の要旨
地 球 の 地 殻 が ど の よ う な プ ロ セ ス で 形 成 さ れ た か と い う 問 題 は 地 球 の 形 成 を 考 え る 上 で 重 要 な テ ー マ で あ り 、 近 年 色 々 な 手 法 で 研 究 が 進 ん で い る 。 特 に 大 陸 地 殻 の 形 成 に 関 し て は 変 成 鉱 物 の 組 み 合 わ せ や 組 織 か ら 形 成 時 の 温 度 圧 力 条 件 が 推 定 さ れ 、 形 成 プ ロ セ ス の 復 元 が 進 ん で い る 。 大 隅 石 は 比 較 的 低 圧 力 下 で 高 温 変 成 作 用 を 受 け た メ タ ペ ラ イ ト ( 泥 岩が 高温 変成 した 岩石 )中 に 産 出 し 、 大 陸 地 殻 が ど の よ う な 温 度 圧 カ を 被 っ て き た か を 解 明 す る 手 が か り を与えてく れる鉱物である。K20一Fe0−Mg0―Al203―Si02―H20 (KFMASH)およびFe0ー Mg0―Al203―Si02−H20 (FMASH)系 にお いて 、酸 素分圧の変化は産出鉱物の相関係 を 大 き く 変 化 さ せ る が 、KFMASH系 で の 大 隅 石 に 関 連 し た 実 験 的 研 究 は こ れ ま で 実 験 技 術 上 の 問 題 か ら 低 酸 素 分 圧 下 で 行 わ れ て い た 。 一 方 、 天 然 に お け る 大 隅 石 と 共 存 す る 鉱 物 組 み 合 わ せ は 高 酸 素 分 圧 条 件 を 示 唆 し て い て 、 従 来 の 実 験 で 得 ら れ た 相 平 衡 図 で は 天 然 の 産 状 を 説 明 す る こ と が で き な か っ た 。 本 研 究 で はHematite−Magnetiteバ ッ フ ァ ー を 用 い て 、 高 マ グ ネ シ ウ ム ― ア ル ミ ニ ウ ム ー バ ル ク 組 成 の 高 酸 素 分 圧 下 に お け る 大 隅 石 の 安 定 領 域 を 実 験 的 に 決 定 し 、 天 然 の 産 状 を 合 理 的 に 説 明 で き 、 鉱 物 組 合 せ か ら 過 去 の 変 成 作 用 の 温 度と圧カを 推定できる相平衡図を得ることを目的とした。
相 平 衡 実 験 は ピ ス ト ン シ リ ン ダ ー 高 圧 装 置 を 用 い た 。 高 圧 セ ル と し て 直 径 12. 5mmの パ イ レ ッ ク ス ガ ラ ス セ ル を 使 用 し 、 摩 擦 に よ る 圧 カ の 減 少 は13% と 推 定 し た 。 実 験 中 の 温 度 は5℃ 以 内 に 制 御 し た 。 実 験 は 温 度800℃ ―1000℃ 、 圧 力7kb―12. 5kb下 で2重 カ プ セ ル 法 で 行 っ た 。 水 を 含 ま な い 出 発 物 質 は Ag70−Pd30カ プ セ ル に 封 入 し た 後 、 そ れ を へ マ タ イト とマ グネ タイ ト粉 末か ら な る バ ッ フ ァ ー と 共 にPtカ プ セ ル に 封 入 し 、 内 部 の 試 料 が 一 定 の 酸 素 分 圧 に
なる よう にし た。 実験 終了後 急冷 し、 粉末
X線 回折 実験に より 回収 したバッ ファ ーが 有効 に働 いて いた事 を確 認し た。 回収 した 試料 は粉 末X 線 回折、光 学顕微鏡、EPMA で相の同定を行った。
実 験で 得ら れた 鉱物 組み合 わせ から 、KFMASH 系における状態図を得た。温 度850 ℃以上と圧力8 . 5kb 以下で黒雲母、シリマナイト、石英の溶融を経て、
大隅石と花崗岩組成のメルトが直接形成された。大隅石中におけるX ‥ヨは温度 圧カにはほとんど依存せず、高い値(Xh ョ>O .95 )を持つ。大隅石は低圧側(く
7. 5kb) でコーディエライト(XMg 〜O .90 )と、7 .5kb 一8 .5kb ではスピネル
(XMg=O .70 −O .75) と共存する。低酸素分圧下での実験と同様、大隅石とサフ ィリ ンは 共存 しな い。 低酸素 分圧 下で はガーネットと大隅石の共存領域が存 在するが、高酸素分圧下ではみられず、コーディエライト十大隅石、スピネル 十大隅石の鉱物組み合わせが安定になる。圧カの上昇に伴い、コーディエライ ト十大隅石はスピネル十大隅石の鉱物組み合わせに変わる。この際、コーディ エラ イト はス ピネ ルと 石英に 分解 する 可能性が高い。この反応が安定かどう かは不明である。大隅石+スピネルの安定領域が正確に得られ、その高圧側で は950 ℃以下で斜方輝石十シリマナイトに、低圧側では950 −1000 ℃以上でサフ ィリン十斜方輝石に変わる。低酸素分圧下におけるガーネットと大隅石と同様、
高酸素分圧下ではスピネル十大隅石の安定領域は8 . 5kb 以下に制約される。し たがって、この組み合わせは高酸素分圧では低圧―高温下でのみ存在すると予 想される。
最 後に 、本 研究 によ り高酸 素分 圧下 では大隅石はスピネルと共生すること
が実 験的 に明 らか にさ れ、天 然の 産状 は高酸素分圧下での生成であることが
証明 され た。 また 得ら れた相 平衡 図か ら変成相の温度圧力履歴を正確に見積
もることが可能となった。
学 位論文審査の要旨
主査 教授 藤野清志 副査 教授 渡辺暉夫 副査 助教授 菊地
武 副査 講師 三浦裕行
副査 教授 有馬 眞(横浜国立大学教育学部)
副 査
教 授
ソ ム ナ ッ ト ・ ダ ス グ プ 夕
( ジ ャ ダ プ ー ル 大 学 地 質 科 学 科 )
学 VL 論文題名
Experimental study for granulite grade rocks in the K20‑FeO‑MgO‑Al203‑Si02‑H20 system under high oxygen fugacity and its application to natural occurrences
(K20‑FeO‑MgO‑Al203‑Si02‑H20
系における高酸素分圧下での
グ ラニ ュ ライ ト 相の 実 験的 研究 と 天然 へ の応 用 )
大陸地 殻の形成過 程を知る ためには 変成鉱物 の組合せ や組織か ら温度圧力条 件を推 定しプロセ スを復元 する研究 が進んで いる。変 成鉱物の 中で大隅石は比 較的低 圧力下で高 温変成作 用を受け たメタペ ライト中 に産出し 、地殻がどのよ うな温 度圧カを被 ってきた かを解明 する手が かりを与 えてくれ る有用な鉱物で ある。K20ーFe0−Mg0―Al203−Si02−H20 (KFMASH)系において酸素分圧の変化は産出鉱 物の相 関係を大き く変化さ せるが、 技術上の 問題から 従来は低 酸素分圧下での 実験の みが行われ て来た。 一方、天 然におけ る大隅石 と共存す る鉱物の組合せ は高酸 素分圧条件 を示唆し ていて、 従来の実 験で得ら れた相平 衡図では天然の 産状を 説明するこ とができ なかった 。本研究ではHematite−Magnetiteバッファ ーを用 いた2重カプ セル法に より、高 マグネシウム―アルミニウム―バルク組成 の高酸 素分圧下に おける大 隅石の安 定領域を 初めて実 験的に決 定した。本研究 により 高酸素分圧 下では大 隅石はス ピネルと 共生する ことが実 験的に明らかに され、 天然の鉱物組み合わせは高酸素分圧下での生成であることが証明された。
また得 られた相平 衡図から 変成相の 温度圧力 履歴を正 確に見積 もることが可能
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となりKFMASH 系における変成作用の解明に大きく貢献することが期待される。
よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認 める。
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