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樹状 細胞 の機 能を 制御する細胞内情 報伝達機構の解析

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 飯 島 則 文

学 位 論 文 題 名

樹状細胞の機能を制御する細胞内情報伝達機構の解析 学位論文内容の要旨

【序 論】

  樹状 細胞(dendritic cells,DC)は,最も強い抗原提示能を有するプロフェッショナル抗原提示細胞である.実際,

DCの み が 未 感 作の ナ イ ー プT細 胞 を 活 性 化す る こ と が で きる .DCの抗 原 提 示機 構は, 成熟 分化に 伴って 巧妙に 調 節さ れ て い る . 病原 体 な ど の抗原 は,DC内で処 理され ,ペ プチド となっ て主要 組織適 合遺 伝子複 合体(MHC)分 子 とと も にT細 胞に 提 示 さ れ る .DCは 抗 原提 示 と 同 時に サイト カイン や共刺 激分 子を介 してT細胞 の活性 化や分 化 誘導 を 制御し ,その 後の 免疫応 答全体 を調節 して いると 考えら れてい る,し たが って,DCは生体 防御 反応の 始 動お よび制 御に非 常に重 要な役 割を 果たし ている .

  本 研 究 で は ,DCに お け るMHC分 子 や 共 刺 激 分 子 群(CD80,CD86やCD40な ど ) の 発 現 調 節 な ら び に ケ モ カイ ンによ って誘 導され る抗原 取り 込みや 細胞走 化性の 制御 に関与 する細 胞内情報伝達機構を解析し,新しい知見 が得 られた ので以 下に記 述する .

【結 果と考 察】

1) 樹迭細 胞ヒ 墨堕墨CD40発現Q選拯 的制 御 )

  DCのCD40の 発 現 量を 調 節 す る 詳細 な メ カ ニ ズム に 関し ては, 現在ま で不 明であ る.ま た,細 胞内酸 化還 元反 応(redox)がTNFやLPS刺 激 後 の シ グ ナ ル 伝達 経 路 に 関 与 して い る と 報 告さ れ て い る が,redox制 御 機 構 がDC 上 のMHCや 共 刺激 分 子 の 発 現に ど の よ う に関 わ っ て いる か明ら かにな ってい ない .そこ で本研 究ではTNF‑aによ っ て 誘 導 さ れ るDCの 成 熟 過 程 に お い て ,MHC分 子 や 共 刺激 分 子 の 発 現 量に , 抗 酸 化 物質 で あ るN‑acetyトLl cysteine (N AC)やglutathione(GsImが どのよ うな 影響を 与える か調べ た,マ ウスDCune(BC1) ,また は脾 臓 由 来DCの 成 熟 をTNpaで 誘 導 す る 際 にNACま た はGSHを 共 存 さ せ る と ,CD40の 発 現 量 は 完 全 に 抑制 さ れ た . 一 方,CD86,CD80発現 は わ ず か に抑 制 が ,MHC分 子 に 関 して は ほ と ん ど影 響 が認め られな かっ た.こ れらの 結 果 か ら , マ ウ スDCに お い て ,NACやGSHはCD40発 現 を 選 択 的 に 抑 制 す る こ と が 明 ら か に な っ た .   こ れ ま で にTN卜a刺 激 に よ るERKの 活 性化 がDCの分 化 や 機 能 を 負に 制 御 す る こと2) や , 接触 過 敏 症 を 誘導 す る化 合 物 ,2,41dinitrochlorobenZeneは ,TN卜a(15分 で 活 性 化 )と 異 なり ,添加 後3時間か らp38M鰮 くの 活 性 化 を 誘 導 し , 異 な る作 用 機 構 に よっ てDCの 成熟 を 誘 導 す る3) な ど を 明ら か に し て き た. し た が っ て,

Mitogen−activatedproteinklnases(M臘くs) などの シグナ ル伝達 経路は ,樹状細胞の成熟過程や機能に大きく関 与 して い る と 考 え られ た . し か し,NACは,TNF一aに よ っ て 誘 導さ れ るMAPKsの 活 性化 に は 影 響 しなか った.

そ こ で ,TNFlaに よ っ て 誘 導 さ れ るCD40mRNAの 発 現 量 増 加 に 対 す るNACの 影 響 を 調 べ た .NACはTNFlaに よ っ て 誘 導 さ れ るCD40mRNAの 発 現 量に 影 響 を 示 さ なか っ た . し たが っ て ,DCに お い てCD40の 発 現に 選 択 的 な転 写後調 節機構 が存在 すると 考え られた .

  以 上 の 結 果 か ら ,DCのCD40発 現 に 選 択 的 な 転 写 後 調 節 機 構 が 存在 し ,NACやGSHなど のreducingsuppuer は これ ら の調節 機構を 介し てCD40発 現量を 選択的 かつ可 逆的に 制御 してい ると考 えられ た. したが って, 二次ル ン パ 組 織 な ど 生 体 内 に お い て も ,GSHな ど に よ るredoxconditionの 変 化 がDC上 のCD40発 現 量 を 調節 し , さ らに その後 のT細胞の 活性化 や分化 に影響 を与 えると 考えら れる.

2)靈Rヱ リ 擾2Eヒ よ2エ 誘導 童 担墨 成熟QCQ拭歴 亟り込 丑能増 加と 細胞走iヒ 性立進 !三園 生立歪 細胞鹵 憧報 伝達     ―908−

(2)

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  ケ モ カ イン は 細 胞 の 走 化性 を 誘 導 す るサ イ ト カ インと して 知られ ており ,その 中で もCCR7のり ガン ドであ る CCL19やCCL21は , リ ン パ 節や 脾 臓 に 高 頻度 で 発 現 して いる, 最近,CCR7リガ ンドは ,細胞 走化 性だけ でなく , これ ま で未 成熟DCに しか認 めら れなか った抗 原取り 込み能 亢進 など多 様な機 能を誘 導す ること が報告 された .つ まル ケ モ カ イ ンは 成 熟DCにお い て 抗 原 取り 込 み 能 と細胞 走化 性とい う2つの異 なる機 能を誘 導し ,これ らの2つ の機能 を制御 する細 胞内情 報伝 達経路 が存在 するこ とが 示唆さ れた.

  こ れ ま でCCR7ル ガ ンド に よ る 抗 原取 り 込 み 能 増強 に は ,Rho,Rac,Cdc42な ど のRho small GTPase蛋白 の 中で も ,RacとCdc42が 関 与 する こ と が 示 唆 され て いる .そこ で,Fluorescein isothiocyanateで標 識し たデキ スト ラ ン(FITC一Dex)を 用 い, 成 熟DCのェ ン ド サ イ トー シ ス ( 抗 原取 り 込 み ) と 細胞 走 化 性 に 対するCCL19と CCL21の 影 響 を 調 べ た .CCL19は 成 熟DCに よ るFITC−Dexの 取 り 込 み を濃 度 依 存 的 に, ま た 添 加 後数 分 以 内 に著 し く 増 加 させ た , 一 方 でCCL19は 成 熟DCによ る 細 胞 走 化性 を 濃 度 依 存的 に 増 強 し た が, と の増 強はCCL19 添加後30分以降 に認 められ た(図4).

  CCL19で 刺 激 し た 成 熟DCに お い て , 抗 原取 り 込 み 能 や細 胞 走 化 性 亢 進とMAPKやPI―3kinase活 性 の 関 係に つい て は明 らかに なって いない .そこ で,CCR7リガ ンドに よって 誘導さ れる抗 原取 り込み 能と細 胞走化 性亢 進が 各種MAPKやPト3kinaseの 特 異 的 阻 害 剤に よ っ て ど のよう な影響 を受け るか 検討し た.そ の結果 ,抗原 取り 込み 能に対 するこ れらの特異的阻害剤の効果はほとんど認められないことが判明した.一方,細胞走化性に関しては,JNK の 特 異 的 阻 害 剤(SP600125)に よ っ て , 著し く 抑 制 さ れた .JNK活性 はCCL19添 加 後15分 で 誘 導 され , こ の 活 性化 はSP600125に よ っ て 抑 制さ れ る こ と が 確認 さ れた ,これ らの 結果か ら,CCR7リガン ドによ る抗原 取り 込み 能の 誘 導 に はJNKは 関 与せ ず , 細 胞 走 化性 の 誘 導 にJNKが 関 与し て い る こ とが初 めて明 らか になっ た.T細胞 に おいて は,CCR7リガン ドによ って誘 導さ れる細 胞走化 性には ,Rho一associated kinaseの関与が示唆されている.

今回 成 熟DCに お い てRho一associated kinaseの 役割 を 解 析 し たが ,CCL19によ って誘 導され る細胞 走化 性は,

Rho‑associated kinaseの 特 異 的 阻 害剤 で あ るYー27632処 理 に よ っ て著 し く抑 制され た.し たがっ て,CCR7ル ガン ド に よ るDC走 化 性 の 誘導 に は ,JNK経 路 とRho‑associated kinase経路 が重 要であ ること が示唆 され た.さ らに こ れ ら ニ つの 誘 導 経 路 の関 連 性 を 明 らか に す る た め ,CCL19に よ っ て誘 導さ れるJNKの活 性化に 対するY― 27632の影 響 に つ い て検 討 し た . その 結 果 ,JNKの 活性 化は,Y―27632処理に よって ほとん ど影 響を受 けず, さ らに 細 胞 走 化 性の 抑 制 はSP600125とY―27632を同 時 処理に よりそ れぞ れの単 独処理 と比べ て著 しく増 強した . した が っ て ,CCR7ル ガン ド に よ る 細胞 走 化 性 の 誘 導に は ,JNK経 路 とRho‑associated kinase経 路の独 立した2 つの経 路が必 須であ ること が示 された .

 1. Iijima N, Yana8awa Y,lwabuchi K, Onot K. (2003) Immunology 110:197‑205 2.  Yanagawa Y,Iijima N,lwabuchi K, Onof K (2002) J. Leukoc. Biol. 71:75‑80.

3.  Iijima N, Yanagawa Y, On06 K (2003) Immunol08y 110: 322‑328̲

909

(3)

学位論文 審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 助教授 助教授

松田 五十嵐 高橋 井/口

学 位 論 文 題 名

    正 靖之 和彦 仁一

樹状 細胞 の機 能を 制御する細胞内情 報伝達機構の解析

   平 成 15 年 12 月 17 日 に 当 該 申 請 者 に 対 す る 学 位 論 文 の 発 表 , 同 18 日口 頭 試問 を 行い ,ま た 平成 16 年 1 月28 日 主論文に関する 審査員によ る書面審査を実施した・

   発表内容はマウス脾臓由来の樹状細胞 (D C) を用いたDC の細胞表面抗原 の発現や遊走を制御する細胞内情報伝達機構の解析であり,次の諸点を明 ら かに し た. 1 ) 抗酸 化 物質 であ る NAC が , DC に おけ る CD40 発 現 を選 択的かつ 可逆的に制御 していること を見いだした. 2 )TNF‑Q は,DC に おけ る p38 MAPK の 活 性化 をそ れ それ 早期に誘導 し, NAC 非感受性経 路 によ っ てCD80 , CD86 分子 およ び MHC 分子 の発現量を制 御することを 明 らかにした.一方,接触性皮膚炎を誘導する2 ,4‑ dinitrochlorobenzene (DNCB) は , p38 MAPK の活 性 化を 遅 延期に誘 導し,NAC 感受性経 路によ って 共 刺激 分 子や MHC 分 子 の発 現 量を制 御することを 明らかにした . 3 ) CCR71J ガン ド で刺 激 した 成 熟DC において,細 胞走化性亢進を 制御 する細胞内情報伝達機構の詳細は不明であった.今回,CCR7 リガンドに よる成熟DC の走 化性誘導にJNK が関 与していることを初めて見いだした

.また, CCR7 リ ガンドによる DC の 走化性誘導に は,JNK 経路とRho 経路 の少なくと も独立した2 つの 経路が必須であることを明らかにした.DC は,生体防御反応の始動及び制御に非常に重要な役割を果たしており,今 後のシグナル伝達分子を標的とした種々の治療薬の開発に極めて有益な知 見を示した・

   論文発表に続いて発表内容を中心として関連ある専門分野を含めた口頭 試問を実施した.その内容は,本研究の背景,目的および関連分野等にお ける知識,またDC cell line の有用性や薬剤開発への応用とその根拠など 多岐に亘った.これらに対する回答は,適切かつ高度なものであり,博士 の学位を与えるに相応しいと判断した・

   提出された学位論文の内容はよくまとまっており,その研究成果は独創

的かつ有用性に富み,本専門研究分野の中で高く評価されるに値する内容

(4)

であると判断した.

   以上の結果,本論文審査委員会は,飯島則文氏を博士(薬学)の学位

を授与するに相応しい十分な学カと研究能カを有するものと認めた.

参照

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