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クロムフリー表面処理溶融アルミめっき鋼板“ZC処理アルスター鋼板”

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Academic year: 2021

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1.緒 言. アルスター鋼板(溶融Al-9%Si合金めっき鋼板)は優. れた耐熱性,耐食性および外観の美麗さを有することか. ら,自動車の排気系部材,外装用建材,家電製品などに. 幅広く使用されている。. 通常,これらの用途には初期防錆の目的でクロメート. 処理が施されている。しかし,近年,EUでの「使用済. 自動車(ELV)指令」および「電気電子機器の特定有害. 物質使用規制(RoHS)指令」などにより,クロメート皮. 膜に含まれる6価クロムは鉛,水銀,カドミウムなどと. ともに有害物質に規定され,期限を定めてその使用が厳. しく制限されることとなった。. このため,国内の自動車,家電,OA機器メーカーで. は6価クロムを含まない表面処理鋼板を採用する方針. を打ち出しており,アルスター鋼板に対してもクロム. フリーの初期防錆処理を適用することが要望されてい. る。. そこで,耐熱用途での使用を考慮して,クロム代替の. 皮膜設計を当社独自の配合技術により無機系組成で開発. することを目指した。本報では,アルスター鋼板用とし. て開発した無機系クロムフリー表面処理の品質特性を紹. 介する。. 2.開発経緯. 2.1 皮膜設計の考え方. 従来のアルミ系めっき鋼板用のクロメート処理はクロ. ム酸およびフッ化物を含有し,さらに,用途に応じてリ. クロムフリー表面処理溶融アルミめっき鋼板“ZC処理アルスター鋼板”. 山 本 雅 也* 守 田 幸 弘** 武 津 博 文*** 朝 吹 光 夫****. Chromium-free Surface Treatment (ZC-treatment) for Hot-dip Alminized steel sheet “Alstar”. Masaya Yamamoto, Yukihiro Morita, Hirofumi Taketsu, Mitsuo Asabuki. 新商品紹介. ン酸を添加した処理液が汎用されている1~3)。処理後の. アルミめっき表面には6価クロムおよび3価クロムを含. むクロメート皮膜が形成される構成である。. クロメート処理は良好な裸耐食性のみならず,低付着. 量の無機系皮膜であるため耐熱性および抵抗溶接性に優. れる。一方,無機系皮膜の潜在的課題としては,材料に. 高面圧がかかる高加工部位では皮膜が脱落し,使用環境. によってはクロメート皮膜による耐食性向上効果が少な. い場合がある。. そこで,クロムフリー表面処理の開発に際しては,ク. ロメート処理の品質特性を維持し,潜在的課題である加. 工部耐食性のさらなる改善を目的とした無機系皮膜の設. 計を検討した。. 加工部耐食性の付与には,高面圧下の加工時において. も脱落しない皮膜の密着性と,腐食因子を遮断できる緻. 密なバリアー皮膜の形成が不可欠である。添加元素によ. り緻密なバリアー皮膜を形成可能なクロム代替組成を検. 討した。. 2.2 クロム代替組成の検討. クロムフリー表面処理の要求特性の中で,耐熱性およ. び抵抗溶接性は無機系皮膜を低付着量で形成させること. で付与することとした。. クロムに代わり緻密なバリアー皮膜を形成する可能性. のある成分として,チタン,ジルコニウム,モリブデン,. バナジウム,マンガンおよびカルシウム化合物などを候. 補として検討した結果,耐食性はチタン化合物の適用が. 最も優れることがわかった。しかし,クロメート処理と. 同等の表面導電性となる低付着量の場合,チタン化合物. のみでは皮膜の緻密化が図れず,その結果,裸耐食性が. 劣ることがわかった。そこで,皮膜の緻密化を向上可能. ***技術研究所 表面処理研究部 表面処理第三研究チーム 主任研究員 **技術研究所 表面処理研究部 表面処理第三研究チーム ***技術研究所 表面処理研究部 表面処理第三研究チーム チームリーダー ****堺製造所 環境安全チーム. クロムフリー表面処理溶融アルミめっき鋼板“ZC処理アルスター鋼板”80. 日新製鋼技報 No.86(2005). クロムフリー表面処理溶融アルミめっき鋼板“ZC処理アルスター鋼板” 81. 日新製鋼技報 No.86(2005). な成分を複合配合する組成とした。. 図1に平坦部耐食性におよぼす塩水噴霧試験(JIS Z. 2371)時間の影響を示す。防錆皮膜を同一の低付着量で. 形成させた場合,チタン化合物のみでは塩水噴霧試験. 48時間以上で白錆の発生が顕著となる。これに対して,. チタン化合物と緻密な複合酸化物皮膜を形成可能な成分. を組合せたチタン系複合化合物の場合,塩水噴霧試験. 72時間でもクロメート処理相当の平坦部耐食性が得ら. れる。. また,チタン系複合化合物皮膜を形成させた供試材に. 円筒絞り加工を施した後,塩水噴霧試験(試験時間:. 24時間)に供した結果,加工品の側壁部においても良. 好な耐食性を保持できることを確認した。. 以上のように,当社独自の配合技術によりクロメート. 処理の特徴を維持し,無機系皮膜の潜在的課題である加. 工部耐食性を改善できる無機系クロムフリー表面処理. (以下,ZC処理とする)を開発した。. 図2に開発したZC処理アルスター鋼板の断面構成モ. デルを示す。. 3.開発材の品質特性. アルスター鋼板(板厚:0.8mm,母材:低炭素Alキ. ルド鋼,片面めっき付着量:60g/m2)にZC処理を施し. たものを供試材とした。また,同じアルスター鋼板にク. ロメート処理(以下,N処理と記す)を行ったものを比. 較材として用いた。. 3.1 耐熱性. 供試材を大気雰囲気で加熱試験を行った後の色差を測. 定するとともに,塩水噴霧試験に供することで皮膜の熱. 劣化を評価した。. 白 錆 発 生 面 積 率 ( % ). 100. 80. 60. 40. 20. 0 0. 20. 40. 60. 80. 100. クロムフリー処理(チタン化合物のみ). クロムフリー処理(チタン系複合化合物). クロメート処理. 塩水噴霧試験時間(h). 図1 平坦部耐食性におよぼす塩水噴霧試験時間の影響(皮膜の 付着量は同一). Fig.1 Effect of times in salt spray test on corrosion resistance at flat portion of specimens. (The coating mass of speci- mens is identical). 図3に加熱試験後の色差におよぼす加熱温度の影響を. 示す。ZC処理はN処理と同様に,400℃までの加熱温度. では著しい色調の変化は認められない。. 図4に加熱試験後の耐食性を示す。ZC処理は加熱温. 度:400℃の場合に白錆の発生が認められるが,白錆発. 生面積率としてはN処理と同程度である。. 以上のように,ZC処理はN処理と同じ無機系で皮膜. 設計を図っているため良好な耐熱性を有している。. 3.2 潤滑性・加工性. プレス加工時の金型への材料の滑り込み性の良否は,. ドロービード(摺動変形)試験時の引抜き力により評価. チタン系無機複合皮膜. 溶融Al-9%Si合金めっき. 鋼板. 図2 ZC 処理アルスター鋼板の断面モデル Fig.2 Schematic illustration of ZC treated hot-dip aluminized. steel sheet “Alstar”.. 色 差 ( ⊿ E ). ZC処理 N処理. 20. 16. 12. 8. 4. 0 0. 100. 200. 300. 400. 500 加熱温度(℃). 図3 加熱試験後の色差(⊿E)におよぼす加熱温度の影響(加熱 時間:100時間). Fig.3 Effect of heating temperature on colour difference after heating test. (Heating time : 100h). できる。図5にドロービード試験時の引抜き力におよぼ. す加圧力の影響を示す。いずれの加圧力においてもZC. 処理はN処理と同程度の引き抜き力であり,同等の潤滑. 性を有している。. 加工性については円筒絞り加工試験での外径比により. 評価した。図6に示すように,ZC処理はN処理と同等. クロムフリー表面処理溶融アルミめっき鋼板“ZC処理アルスター鋼板”82. 日新製鋼技報 No.86(2005). 加熱温度. ZC処理. N処理. 100℃ 200℃ 300℃ 400℃. 図4 供試材の加熱試験後の耐食性(加熱時間:100時間,塩水噴霧試験:24時間) Fig.4 Corrosion resistance of specimens after heating test in atmosphere. (Heating time : 100h, salt. spray test : 24h). 優 ← 潤 滑 性 → 劣. 引 抜 き 力 (k N ). 8.0. 6.0. 4.0. 2.0. 0.0. 0.0. 2.0. 4.0. 6.0. 8.0. 10.0. 加圧力(kN). <ドロービード試験条件>. 引き抜き速度: 1.67×10-3m/s. 供試材(30×300mm) ・塗油あり. 加圧力:9kN. ビード高さ4mm (先端R:0.5mm). ZC処理 N処理. 図5 ドロービード試験時の引抜き力におよぼす加圧力の影響 Fig.5 Effect of pressure on drawing force in bead drawing test.. <円筒絞り加工条件> パンチ径 40mmφ 絞り比 2.15 しわ押え力 11.8kN 塗油あり. ZC処理. N処理. 0.75. 0.80. 0.85. 0.90 O. D. R.. 優← 加工性 →劣. 図6 円筒絞り加工における外径比(O.D.R.) Fig.6 Outer diameter ratio (O.D.R.) in drawing cup test of spec-. imens.. クロムフリー表面処理溶融アルミめっき鋼板“ZC処理アルスター鋼板” 83. 日新製鋼技報 No.86(2005). の加工性を有している。このようにZC処理は,N処理. の加工条件を大幅に変更することなく,同様の加工形状. にプレス加工することが可能である。. 3.3 表面導電性・スポット溶接性. 図7に供試材の層間抵抗試験値(JIS C 2550)を示す。. ZC処理はN処理同様,低付着量の無機系皮膜で設計し. ているため,N処理と同等の層間抵抗値である。. ZC処理. N処理. 0.0. 1.0. 2.0. 3.0. 4.0. 層間抵抗値(Ω・cm2/枚). 図7 供試材の表面導電性(JIS C 2550に準拠) Fig.7 Surface electric resistance of specimens. (The test condi-. tions conformed to JIS C 2550). 図8にスポット溶接時の適正溶接電流範囲を,図9に. 連続スポット溶接時の電極寿命を示す。ZC処理はN処. 理と同様の適正溶接電流範囲および連続スポット溶接性. を有している。自動車排気系部材用途においてZC処理. のスポット溶接性を部品製造用実スポット溶接機で評価. した結果,N処理と同一条件でスポット溶接が可能であ. ることを確認できている。. 3.4 耐アルカリ性. 図10に耐アルカリ性におよぼすアルカリ脱脂液のpH. の影響を示す。ZC処理はアルカリ脱脂液のpHが11を超. えると,N処理とほぼ同程度の皮膜残存率の低下が認め. ZC処理 N処理. JIS A級(3.8mm)以上. <スポット溶接条件> 電極 CF型(先端:4.5mmφ) 加圧力 2.2kN 通電時間 10サイクル 溶接電流 8.8kA. ナ ゲ ッ ト 径 ( m m ). 8.00. 6.00. 4.00. 2.00. 0.00 0 100 200 300 400 500. 打点数. 図9 連続スポット溶接時の電極寿命 Fig.9 Electrode life in continuous spot welding of specimens.. 劣 ← 耐 ア ル カ リ 性 → 優. ア ル カ リ 脱 脂 液 浸 せ き 後 の 皮 膜 残 存 率. ( % ). ZC処理 N処理. 100. 80. 60. 40. 20. 0 9.5 10.0 10.5 11.0 11.5 12.0 12.5. アルカリ脱脂液のpH. 図10 耐アルカリ性におよぼすアルカリ脱脂液のpHの影響(液温: 40℃,浸せき時間:1分). Fig.10 Effect of pH in alkaline degreasing solution on alkaline resistance of specimens. (Solution temperature : 40℃, dipping time : 1min.). <スポット溶接条件> 電極 CF型(先端:4.5mmφ) 加圧力 2.2kN 通電時間 10サイクル. A:ナゲット径不足. B:適正範囲. C:チリ発生. ZC処理. N処理. 6 7 8 9 10 11 12. スポット溶接電流(kA). A B CA B C. 図8 スポット溶接時の適正溶接電流範囲 Fig.8 Weldable current range of spot welding.. られる。未処理のアルスター鋼板をpHが11を超えるア. ルカリ脱脂液(液温:40℃)に1分間浸せきした場合,. アルミめっきの浸食が発生することから,皮膜残存率の. 低下はアルカリ脱脂液が皮膜に浸透して下地のアルミめ. っきが浸食されることに起因していると考える。このた. め,アルカリ脱脂を行う場合はN処理同様,アルミめっ. きの浸食を生じない範囲にアルカリ脱脂条件を管理する. 必要がある。. 3.5 耐溶剤性. 表1に供試材の耐溶剤性を示す。ZC処理はN処理同. 様,各種有機溶剤に浸せき後も皮膜成分の溶出は認めら. れず,良好な耐溶剤性を有している。. クロムフリー表面処理溶融アルミめっき鋼板“ZC処理アルスター鋼板”84. 日新製鋼技報 No.86(2005). 表1 耐溶剤性 Table1 Solvent resistance of specimens. 4.用途例. 図11に開発材の用途例を示す。開発材は環境対応型の. 初期防錆処理が要望されている自動車部品用途に対し,. エギゾーストカバー,タンクプロテクターおよびカーナビ液. 晶フレームで採用されている。その他にも,亜鉛めっき鋼. 板では対応が難しい湯沸器,風呂釜,ガステーブルおよび. 石油ストーブ部材等の耐熱用途への適用が可能である。. 5.結 言. 環境適合性に優れたアルスター鋼板用の初期防錆処理. として,ZC処理を当社独自技術により開発した。ZC処. 理は,アルミめっきとの密着性および腐食因子に対する. バリアー性に優れた薄膜のチタン系無機複合皮膜を形成. させる皮膜構成としている。. このため,ZC処理は従来のクロメート処理と同等の. 良好な裸耐食性,耐熱性,潤滑性,加工性および抵抗溶. 接性のみならず,優れた加工部耐食性を有している。. このような特性を有する開発材は自動車排気系部品,. 家電,OA機器,厨房機器での耐熱用途を中心として,. 幅広い用途に適用可能である。. 図11 開発材の用途例 Fig.11 Applied example of the developed product.. 参考文献. 1)表面改質技術総覧, 材料技術研究協会編, 産業技術. サービスセンター, 東京, (1993), 261.. 2)生駒雄太郎:塗装技術, 28 (1989), 92.. 3)小泉宗栄:アルトピア, 20 (1990), 54.. [耐溶剤性試験法] ・溶剤浸せき時間:200時間 ・薬品:アセトン,エタノール,塩化メチレン,灯油,. 速乾プレス油(アクア化学製アクアレンGS-5) [評価法] 試験後での皮膜成分の溶出有無により評価, ○:皮膜成分の溶出無し,×:皮膜成分の溶出あり. アセトン エタノール 塩化メチレン 灯油 速乾 プレス油. ZC処理 ○ ○ ○ ○ ○. N処理 ○ ○ ○ ○ ○

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