バレーボールのブロック技術に関する研究:
コンビネーション攻撃のサイド攻撃に対するブロックに着目して
吉田康成 *,西博史 **,福田隆 ***,遠藤俊郎 ****,橋原孝博 *****
Blocking Techniques in Volleyball : Blocking against Side Attacks with Combination Attacks
Yasunari Yoshida*, Hirofumi Nishi**, Takashi Fukuda***, Toshiro Endo****, Yoshihiro Hashihara*****
Abstract
The purpose of this study was to investigate double blocking techniques against side attacks with combination attacks in volleyball. 36 occurrences of blocking motions in 3 games (Poland vs Iran, Poland vs Japan, Iran vs Argentina) from the 2011 Men's World Cup Volleyball were analyzed by the Direct Linear Transformation Method. The results were as follows:
(1)When the ball was released from the setter, a middle blocker rotated one foot, put his weight on his directional foot on the spot (this motion saved time), and then, he took off with two steps (crossover step).
(2)After the ball was set, the middle blocker moved approximately 2m to the side attacker and jumped diagonally upwards after takeoff because he couldn't arrive at hitting point of the side attacker. When he touched the ball with his finger − tips, he touched the ball in the air as he was jumping upward.
(3)If the middle blocker wasn't very tall, he wasn't able to use read blocking techniques because he wasn't able to arrive at the path of the ball and touch the ball which had been hit by the side attacker. The authors concluded that shorter middle blocker’s only option was to move quickly to block against side attacks.
(4)The side blocker moved approximately 1m in the direction of the attacker after setting and he jumped vertically. The timing of side blocker’s takeoff was faster than that of the middle blocker’s (an average of 0.209 seconds before the left side attacker hit the ball and an average of 0.215 seconds before the right side attacker hit the ball).
(5)The side blocker was positioned approximately 0.5m at the inner hitting point against left side attacks and approximately 0.6m against right side attacks. The side blocker also blocked diagonal spikes (not in front of the hitting point).
Key words: volleyball, side attack, blocking techniques キーワード:バレーボール、サイド攻撃、ブロック技術
Ⅰ. 緒 言
バレーボールにおけるサイド攻撃,特にレフトサイド攻 撃は,チームのエースアタッカーが打撃することが多く, それ故,他の攻撃に比べて使用頻度が高くなるのが常であ る.レシーブボールの返球位置がネット際まで届かない時 は,コートサイドにサイドへの高いトスを上げて攻めるが, 時間的に余裕があるので,ブロックがしっかり2人あるい は3人つき,レシーブも守備隊形を整えて攻撃を迎え撃つ ことができる.しかしレシーブボールがAパス注1)の時は, クイック攻撃を囮にした時間差攻撃で攻めてくるため,ト スリリースされるまでどこから攻撃されるか判断できず, ブロックの的が絞り難い.そして最近では,サイド攻撃の トス高が低く,トスリリースから打撃までの攻撃時間が約 1秒とスピードアップしているため,ブロックの移動が間 に合わず,ブロックに2人つくことが難しくなっている. 近年のバレーボールでは,スカウティング情報に基づい て,監督やスコアラーの指示により相手スパイカーあるい は攻撃パターンをマークしてブロックすることが試みられ ている.しかし常に相手対応の指示が出ている訳ではなく, 指示が出ない時は,ブロッカーはトスボールがリリースさ れたらできるだけ早く反応してブロックに移動する以外に 方法はない.そのような状況下ではどのように対応すれば よいのか,実際に競技されている場面を調査すれば,素早 く移動するためにどのように動作しているか,またブロッ カー同士あるいはブロッカーとレシーバーがどのような役 割分担をして組織的に動いているかなどが明らかになると 考えられるが,そのようなフィールド実験的方法により研 究された報告はこれまで極めて少ない. 佐賀野他(2002)1)は,バレーボール男子国際試合を2台 のS−VHSビデオカメラで撮影し,2次元DLT法によりコ ンビネーション攻撃のレフト平行に対するセンターブロッ カーのブロック動作を動作分析した.その結果,助走は右 足を踏み出し(1歩目),その右足で床を強く蹴り,ほとん ど同時であるが,左足(2歩目),右足(3歩目)の順で踏み込 * 四天王寺大学 Shitennoji University** 広島大学大学院総合科学研究科 Doctoral Program, Graduate School of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University
*** 愛媛大学教育学研究科 Graduate School of Education, Ehime University **** 大東文化大学スポーツ・健康科学研究科
Graduate School of Sports and Health Science, Daito Bunka University ***** 広島大学総合科学研究科
Graduate School of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University (受付日:2015年1月15日、受理日:2015年4月13日)
むクイックスリーステップ(田中,1996)2)と,その1歩目 を除いたツーステップで行われていた.そしてこのステッ プをしながら,両肘を肩の高さに保ったまま移動ジャンプ する方式(ダグ式)を用いている選手が2名,移動中は両肘 を下げて踏切の際に腕の振りを使ってジャンプする方式 (カール式)を用いている選手が5名であったが,踏切時間 において両者間に大きな差は認められなかった.そして空 中局面においては,両腕を進行方向に上げることによって, サイドブロッカーとの間をあけないようにしていたこと等 を報告している.この佐賀野他の研究報告は,ブロック技 術が発揮されていると考えられる競技場面の動作分析をし た貴重な資料である.しかしセンターブロッカーとサイド ブロッカーのブロックとしての役割が検討されていない. そこで本研究においては,技術を有していて,技術が発 揮されていると考えられる国際大会競技中のコンビネー ション攻撃のサイド攻撃に対するセンターブロッカーとサ イドブロッカーのブロック動作を3次元動作分析し,平行ト スによりスピードアップしたサイド攻撃に対抗するブロッ クとしての技術特性を明らかにすることを研究目的とする.
Ⅱ. 研 究 方 法
1.分析対象 2011年11月24,25日大阪市中央体育館において開催さ れたFIVBワールドカップバレーボール2011男子大阪大会 におけるポーランド(2位)およびイラン(9位)チームの3試 合,合計14セットにおけるセンターブロッカーおよびサイ ドブロッカーを分析対象とした.大会におけるブロック得 点(得点/セット)は,ポーランドは4位,イランは2位であっ た.また,ブロック賞ランキングは,Mozdzonek選手(ポー ランド)が1位,Nadi選手(イラン)が2位,Nowakowski選 手(ポーランド)が5位であった.これらのセンターブロッ カーは,いずれもブロック賞ランキングの上位選手であり, 競技中にブロック運動成果を発揮していた選手である. 2.分析試技の決定 試合会場で撮影したビデオを観察することにより全試技を 評価した.本研究では,1)男子バレーボール国際競技会にお いて決定力の高い4人のスパイカーによるコンビネーション攻 撃注2)(以下,4人攻撃)におけるサイド攻撃に対するブロック, 2) スパイカーが強打したサイド攻撃に対するブロック,3)サ イド攻撃に対して2人ブロックが成立しているブロック,ここ で,スパイカー打撃時までにブロッカーの手先がネット白帯 より上に出た試技をブロック成立とみなした.このような条 件を満たしている合計36試技(レフトサイド18試技,ライト サイド18試技)のブロック動作を分析試技として選択した. 3.試合の撮影 撮影は,3台のCCDカメラ(Victor社製,TK−C1381)を デジタルビデオカメラ(SONY社製,DCR−TRV30)にS端 子ケーブルで接続した装置を3台使用した.撮影装置の1 台はエンドライン後方の2階通路,残りの2台は味方コー トと相手コートのサイドライン後方の2階通路に三脚固定 具で床面に固定して設置した.試合時間が長時間におよぶ ため交流電源を使用して試合開始から終了までの全プレー を毎秒30コマ,シャッタースピード1/500秒で撮影した. 撮影範囲は,コート横幅9mが撮影画面に映るようにレン ズ焦点距離を調整した.較正器の撮影は試合前に行った. なお較正点は,15個であった.較正器の他に,バレーボー ルコート床面の位置及びネット白帯とアンテナの交点も control points (Walton, 1979)6)として使用した.4.データの解析 撮影されたVTRをパーソナルコンピューターに動画編 集ソフト(VirtualDub)を用いてキャプチャーした.その際, インターレース解除,フレームの倍化(毎秒30コマから毎 秒60コマ),映像ファイルの非圧縮化を行って分析試技の 各画像を整理した. 得られた画像を画像解析ソフト(ImageJ)により手動で デジタイズした.そしてVisual Basicによる自作の分析プ ログラムを用いてデータの解析を行った.なお,コート チェンジした場合でも同一の座標系でデータ解析が行える ように,ブロック動作をしているバレーボールコートのレ フトサイドラインとセンターラインとの交点を原点として DLT係数の算出,そして3次元座標の算出を行った(Walton, 1979)6).本研究の較正点における3次元座標の推定値と実 測値の標準誤差は,X方向(サイドライン方向)が0.006m~ 0.008m,Y方向(センターライン方向)が0.008m~0.018m, Z方向(鉛直方向)が0.006m~0.008mであった. 5.各種測定項目と算出法 (1)4人攻撃に対するブロック技能の評価 4 人攻撃の総攻撃回数(159 回)に対して遂行されたブ ロック技能を評価し,攻撃種類(レフトサイド・クイック・ パイプ・ライトサイド)およびブロック参加人数別に分類 整理した. 技能評価については,ブロックにより得点した回数(BK 決定),ブロックにより相手コートへ返球した回数(BK返 球),ブロックにワンタッチしラリー継続した回数(ワンタッ チ),ブロックアウトの回数(BO),ブロックにワンタッチ したがレシーブからのラリーで失敗し攻撃・返球ができな かった回数(ワンタッチ終了),ブロックにワンタッチした が吸い込みによってラリー継続できなかった回数(吸い込 み),ブロッカーの反則の回数(BF),ブロックに接触しな かった打球をレシーブ成功した回数(レシーブ成功),ブロッ クに接触しなかった打球をレシーブ失敗した回数(レシーブ 失敗),打球がブロッカーにもレシーバーにも接触せず直接 コートに落ちた回数(SPK決定),として分類整理した.
(2)サイド攻撃の攻撃時間と打点高 サイド攻撃の攻撃時間は,トスリリース時からスパイク インパクトまでのフレーム数にサンプリング時間を乗じて 求めた.また,打点高については,スパイカーのボールイ ンパクト時におけるボール中心と床面との鉛直距離を打点 高とした. (3)ブロック動作中のボール位置 4人攻撃のサイド攻撃について,トスリリース時,サイ ドブロッカー1歩目接地時,センターブロッカー1歩目接地 時,スパイカー離地時,トスボール最高点,サイドブロッ カー離地時,センターブロッカー離地時,打撃時,ブロッ クワンタッチ時(ワンタッチ無の場合は打撃3/60秒後)の各 時刻において,レフトサイドラインとセンターラインの交 点を原点として求めたボール中心の3次元位置を求めた. (4)サイド攻撃に対するセンターブロッカーおよびサイド ブロッカーの動き トスリリース時,サイドブロッカー1歩目接地時,セン ターブロッカー1歩目接地時,スパイカー離地時,トスボー ル最高点,サイドブロッカー離地時,センターブロッカー 離地時,打撃時,ブロックワンタッチ時(タッチ無の場合 は打撃3/60秒後)の各時点において,レフトサイドライン とセンターラインの交点を原点として求めたブロッカーの 左右の手先の3次元位置を求めた. (5)サイド攻撃に対するブロック位置および離地時刻 ブロック位置は,トスリリース時およびブロッカー離地 時における各ブロッカーの左右の手先の中点の位置をレ フトサイドラインからの距離として算出したもの. また, 離地時刻は,セッターリリース時から各ブロッカー離地時 までのフレーム数にサンプリング時間を乗じて求めた. (6)ブロック動作 のスティックピクチャー レフトサイド攻撃に対するブロック動作を,各センター ブロッカーについて1試技ずつ合計3試技,またサイドブ ロックはセンターブロッカーの試技数と合わせて合計3試 技を選択してスティックピクチャーを作成した.試技選択 について,センターブロッカーで最も多く見られたファー ストステップを踏み出さないクイックスリーステップ,ラ イトサイドブロッカーで最も多く見られたツーステップの スティックピクチャーを作成した.センターブロッカーは スプリットステップ片足接地時からブロッカー離地時ま で,サイドブロッカーは右足離地時からブロッカー離地 時までの身体各部位21点を手動でデジタイズし,DLT法 (Walton, 1979)6)を用いて3次元座標を算出した.その後, 各試技の動作局面を一致させ,規格化した時刻ごと(1%ず つ)の位置データを加算し分析試技数で除して平均値を求 めた.このようにして規格化・平均化したデータ(橋原他, 1988)4)を用いて,センターブロッカーとサイドブロッカー それぞれのブロック動作を,コート後方から見たスティッ クピクチャーとして作成した. (7)サイド攻撃の打撃位置に対するサイドブロッカーの相 対位置 サイドブロッカーがスパイカーの打撃時にどのようなブ ロックの位置取りをしているかを検討するために,スパイカー の打撃位置に対するサイドブロッカーの相対位置を算出した. 原点は打撃位置のセンターライン上の位置として,すなわち 打撃時のボール中心のY成分の値を0として,サイドブロッ カーの左右の肩関節中心の中点との相対位置を求めた. (8)サイド攻撃の打球方向に対するサイドブロッカーの腕角度 サイドブロッカーがスパイカーの打球方向に対して,空中 でどのように腕を出しているのかを検討するために,打球方 向に対するサイドブロッカーの左右の腕角度を算出した. 打球方向は,リリース地点から打撃1コマ後の地点へ向 かうベクトル(合成)がネットとなす角度を算出し打球方向 を求めた.また,左右の腕角度変化は,打撃時,打撃1/60 秒後,打撃2/60秒後,打撃3/60秒後における肩関節中心 から手先へ向かうベクトルがネットとなす角度を算出し, 左右の腕角度を求めた.
Ⅲ. 結 果
1.コンビネーション攻撃に対するブロック技能評価 分析対象の試合14セット中,攻撃回数はサーブレシー ブからの攻撃が310回,ラリーからの攻撃が159回の合計 469回であった.この内コンビネーション攻撃が行われた 回数は,サーブレシーブからの攻撃が285回,ラリーから の攻撃が88回の373回であった.そして,このコンビネー ション攻撃373回の内,159回(43%)が4人のスパイカーに よるコンビネーション攻撃であった. 表1 は,4 人攻撃の攻撃種類別にブロック技能評価を まとめたものである.4 人攻撃が決定した割合は,BO, ワンチラリー終了,吸い込み,BFの32 回,ブロックに 接触しなかった打球をレシーブしたが失敗した26 回,ブ ロッカーにもレシーバーにも接触せずに打球がコートに 落ちた43 回の合計101 回を攻撃回数159 回で除した64% であった. 一方,4人攻撃を守備した割合は,ブロック成功のBK決 定,BK返球,ワンタッチの45回,ブロックに接触しなかっ た打球をレシーブで成功した13回の合計58回を攻撃回数 159回で除した36%であった.なお,守備成功の58回の内 78%がブロックによるものであり,ブロックなしで守備成 功した回数は極めて少ない. 攻撃種類別の攻撃回数は,レフトサイドが55回,クイッ クが47回,ライトサイドが44回,そしてパイプが13回であり,中央攻撃よりもサイドからの攻撃回数が多かった. そしてサイドからの攻撃に対するブロック参加人数は,2 人ブロックの場合が多いが,1人ブロックになることもレ フトサイドでは55回の内13回(24%),ライトサイドでは 44回の内15回(34%)あった.なお,サイド攻撃に対する ブロックが2人ブロックの時も1人ブロックの時も常にブ ロックに跳んでいるのはサイドブロッカーであった. 2.4人攻撃のサイド攻撃におけるボール位置変化 図1は,相手コートで行われている4人攻撃のサイド攻撃 におけるセッターリリース時からブロッカーワンタッチ時 までのボールの位置変化を味方コート側から見たネット面 で示したものである.なお,サイド攻撃の攻撃時間,トスボー ル最高点および打撃時のボール高は,表2にまとめて示した. レシーブ返球位置が必ずしもAパスではないために,トス ボールのリリース位置がセッターの定位置である3m~4mの 範囲,すなわちセリンジャーのセットシステム(1993)2)注3)に 従えば,スロット0の位置よりも広く,約2m~5mの範囲に あった.しかし,各トスごとに長さを調節して,ほとんど のトスがレフトサイドではスロット5の8m~9mの範囲,そ してライトサイドではスロットCの0m~1mの範囲に届くよ うにトスされていた. トスボール最高値は,レフトサイドが3.54m~4.38mの 範囲にあり平均3.95m,ライトサイドが3.62m~4.26mの範 囲にあり平均3.96mであった.そしてセッターリリース時 からスパイカーインパクト時までの攻撃時間は,レフトサ イドが0.817秒~1.083秒の範囲にあり平均0.950秒,ライ トサイドが0.783秒~1.050秒の範囲にあり平均0.921秒で あった.そしてスパイカーがサイド攻撃のトスを打撃した インパクト時のボール高は,レフトサイドが2.94m~3.34m の範囲にあり平均3.11m,ライトサイドが3.01m~3.25mの 範囲にあり平均3.10mであった. 3.サイド攻撃に対するブロッカーの動き 図2は,相手レフトサイド攻撃に対して,トスボールリ リース時の構えの時点からブロックワンタッチ時までの手 先の位置変化からみたブロッカーの動きをネット面で示し たものである.原点は,味方レフトサイドラインとセンター ラインの交点であり,上図はセンターブロッカーの動き, 下図はライトサイドブロッカーの動きを表している.実線 は右手先,破線は左手先を表し,各線上の○印はブロッ カー離地時,●印はスパイカー打撃時,◇はワンタッチ時 (ワンタッチ無の場合は打撃3/60秒後)を表している.また, 各試技のブロッカーの指尖高,ブロック位置,離地時刻は 表2にまとめて示した.
レフトサイド攻撃のトスボールがリリースされる時点で は,センターブロッカーはコート中央の平均4.42mの位置 に,またライトサイドブロッカーはサイドラインから約 2m半内側の平均6.78mの位置に構えている. トスボールがリリースされると,ライトサイドブロッ カーは右側に約1m移動し,平均7.89mの位置で踏切離地 し,直上に向かってブロックジャンプしている.ジャンプ のタイミングはリリース後平均0.741秒,すなわち打撃の 平均0.209秒前である.一方,センターブロッカーは右側 に約2m移動し,平均6.85mの位置で踏切離地し,右斜め 上方に向かってブロックジャンプしている.ジャンプのタ イミングは,ライトサイドブロッカーよりも遅く,リリー ス後平均0.877秒,すなわち打撃直前の平均0.073秒前に離 地している.センターブロッカーのワンタッチ時の指尖高 を示す◇印が打撃時の指尖高を示す●印より高い位置にあ るのは,空中で上昇しながらワンタッチしていることを示 している.なお,ほとんどの試技の移動中の指尖高が,セ ンターブロッカーもライトサイドブロッカーも一度小さく なってから大きくなっているのは,腕のスイング動作を利 用してジャンプしていることを示している. 図3は,相手ライトサイド攻撃に対する味方センターブ ロッカーおよびレフトサイドブロッカーの動きを,図2の 場合と同様にしてネット面で示したものである.センター ブロッカーおよびレフトサイドブロッカーは,レフトサイ ド攻撃に対するブロッカーの動きとほぼ左右対称の動きを している.すなわち,センターブロッカーはコート中央の 平均4.25mの位置に,またレフトサイドブロッカーはサイ ドラインから約2m内側の平均2.17mの位置で構えている. そしてトスボールがリリースされると,レフトサイドブ ロッカーは左側に約1m移動して,平均0.93mの位置で踏 切離地し,直上に向かってブロックジャンプしている.一 方,センターブロッカーは,左側に約2m移動し,平均2.10m の位置でサイドブロッカーよりも平均0.146秒遅れて踏切 離地し,斜め左上方に向かってブロックジャンプしている. レフトサイド攻撃のブロックと異なる点は,ライトサイ ド攻撃の攻撃時間が平均0.921秒とレフトサイド攻撃の攻 撃時間の平均0.950秒より短いため,センターブロッカー およびサイドブロッカーの離地時刻がそれぞれ平均0.852 秒,0.706秒であり,ブロックジャンプのタイミングがレ フトサイド攻撃の場合よりも早くなっていることである.
4.規格化・平均化したブロック動作のスティックピクチャー 図4は,レフトサイド攻撃に対するセンターブロッカー のブロック動作を,そして図5 は,ライトサイドブロッ カーのブロック動作を規格化・平均化したスティックピク チャーで示したものである.センターブロッカーもサイド ブロッカーも,構えの姿勢から移動して踏み込み,踏切離 地してジャンプするまでのブロック動作を示している. センターブロッカーについてみると,スプリットステッ プ終了直後に,左膝関節を伸展させながら体幹全体を進行 方向に傾ける.右脚は体幹の傾きを支えるように右膝関節 を屈曲させ,右足先を進行方向へ回外する.この右脚の動 きは,ステップするのを我慢しているような動きであり ステップとみなさなければ,踏切に移る左足を1歩目,そ して踏切中盤の右足接地を2歩目とするツーステップでブ ロックジャンプしていることになる. 上肢の動作は,移動開始から踏切離地まで上半身をネッ トに向けたまま,肘関節をやや屈曲させてコンパクトにス イングしている. ライトサイドブロッカーについてみてみると,右利き選 手のスパイカーと同じ足運びで,すなわち1歩目を右足か ら踏み込み,2歩目の左足を接地させて踏切離地するブロッ クジャンプを行っている.逆足でなく順足で動作すればよ いから,素早い動きにもスムーズに対応できる.ただし, スパイクジャンプの場合と違うところは,右足の位置を越 して左足を接地させないところである.右足の位置を越し て左足を接地させると,当然,体幹が右側に回転してネッ トに背を向けることになるから,ブロックするのが難しく なる.なお,スパイクジャンプ様のブロック動作以外に,ネッ トに正対したまま右側に横移動し,スタンディングでブロッ クジャンプする例,また右利き選手の逆足となる左足そし て右足のツーステップでブロックジャンプする例もあった. 5.サイド攻撃の打撃位置に対するサイドブロッカーの相対位置 図6はレフトサイド攻撃そして図7はライトサイド攻撃 における打撃時のボール中心のY成分を0,すなわち打撃 時のセンターライン上の位置を原点としたブロッカーの左 右の肩の中点の相対位置をコートの真上からみたものであ る.図中の●印は打撃時のボール中心,○印はサイドブロッ カーの左右の肩の中点の位置を表し,+字の印は平均値± 1標準偏差を表している. ライトサイド攻撃の打撃位置が,レフトサイド攻撃よ りもセンターラインから離れた位置にある試技が多いの は,ライトサイド攻撃にはフロントスパイクばかりでなく, バックアタックも含んでいるからである. サイドブロッカーは,打撃位置の正面でブロックしてお らず,レフトサイド攻撃では平均−0.50m,ライトサイド 攻撃では平均0.59mのコート内側の位置でブロックしてい る.遅れてブロックジャンプしてくるセンターブロッカー との間を抜かれない位置であり,俗に言う間チャンのコー スを塞ぐように位置取りしていた.
6.打球方向とサイドブロッカーの腕角度との関係 図8は,打球方向とサイドブロッカーの打撃3/60秒後の 腕角度との関係を示したものである.そして表3は,各試 技の打球方向およびサイドブロッカーの打撃時から打撃 3/60秒後までの腕角度変化をまとめて示したものである. 打球方向は,40~140度の広い範囲にわたって打ち分けら れているが,サイドブロッカーの腕角度は,右腕が平均88度, 左腕が平均86度でほぼ一定であり,打球方向とサイドブロッ カーの腕角度との間には有意な関係は認められなかった. そして,打撃時から打撃3/60秒後までの腕角度変化を みると,右腕は85~90度の範囲で,左腕は83~89度の範 囲でほぼ一定であった.つまり打撃直後の時点では,ブロッ ク動作中の腕は,ほぼ体の上方で伸ばした姿勢であり,ク ロスあるいはストレートの打球コースに対応するような左 右の動作となっていないことがわかる.
Ⅳ. 考 察
1.コンビネーション攻撃のサイド攻撃 クイック攻撃を伴った時間差で,しかも平行トスによる 速攻で仕掛けられるサイド攻撃は,ブロックするのが難し い攻撃である.本研究の一流選手がどのようにこの攻撃に 対応してブロック成果を出しているのかを分析することに より,コンビネーション攻撃のサイド攻撃に対するブロッ ク技術を明らかにしようとした. 本研究で分析対象としたコンビネーション攻撃は,スパ イカーの人数がブロッカーの人数より1人多い4人のコン ビネーション攻撃である.競技レベルが高いコンビネー ション攻撃であり,ブロック技術を身に付けている選手で なければ防御できない攻撃である. 橋原他(2009)5)は,2006年男子世界選手権におけるブラ ジル対イタリア戦の4人攻撃を分析し,サイド攻撃のトス ボール最高値の平均は,レフトサイド,ライトサイドそれ ぞれブラジルが3.83m,3.82m,イタリアが4.18m,4.06m であった.サイド攻撃の攻撃時間の平均は,レフトサイド, ライトサイドそれぞれ,ブラジルが0.893秒,0.900秒,イ タリアが1.011秒,0.981秒であった.そして,スパイカー 打撃時のボール高の平均は,レフトサイド,ライトサイド それぞれ,ブラジルが3.10m,3.11m,イタリアが3.18m, 3.19mであったと報告している. 本研究における4人攻撃のサイド攻撃は,橋原らが報告 している一流選手のサイド攻撃とほぼ同等の運動成果を発 揮していたと言える.したがって,このコンビネーション 攻撃に対抗しているブロック動作を分析すれば,本研究目 的を明らかにする資料が得られると考えられる. 2.センターブロッカー クイックとパイプの中央攻撃に対するブロックは,攻撃 時間が短いので,複数の人数でブロックをすることが難し い.ブロック参加人数が1人になった例が最も多かったが (表1参照),この時にブロックに跳んでいたのはセンター ブロッカーであった.また,ブロック参加人数を0人と技 能評価した例は,センターブロッカーが跳ぶ動作はしてい るが,クイックの打撃後に遅れてジャンプした.あるい はCクイックの場合では,センターブロッカーとサイドブ ロッカーが構えている間の位置で打撃されるので,斜めに ジャンプして手を出そうと試みているが届かず,打撃時に 白帯より上に手が出ていない.いずれもブロックとしての 機能を果たしていない事例であった. このように,クイックとパイプの中央攻撃にセンターブ ロッカーが多くかかわっているのは,センターブロッカー が構えている位置の近くでクイックとパイプの中央攻撃が 行われるからである.コンビネーション攻撃の各攻撃に対 するブロックに役割分担があるとすれば,クイックとパイ プの中央攻撃に対するブロックは,センターブロッカーが 中心となって役割を担っていると言うことができる. サイド攻撃に対するブロックでは,センターブロッカー のジャンプのタイミングがサイドブロッカーよりも遅れた (表2参照).コンビネーション攻撃のトスがコート中央か らの攻撃でないことを確認してから移動を開始しなければ ならないこと,時間的余裕がなく,コート中央からコート サイドまでの長い移動距離を素早く移動しなければならな いからである.そのために,最小限のステップで移動して いる.レフトサイド攻撃に対しては,逆足の左足(1歩目) そして右足(2歩目),またライトサイド攻撃に対しては順 足の右足(1歩目)そして左足(2歩目)を接地させるツース テップで踏切動作している.ツーステップで移動するため には,移動開始時に脚をクロスオーバーしなければならな い.クイックとパイプの中央攻撃の打撃位置の違いに広範 囲で対応しようとスタンスを広くとって構えているから, 一度進行方向の脚へ体重移動して動作のきっかけを作らな ければ,クロスオーバーが開始できない(図4参照).進行 方向への体重移動するだけで,1歩踏み出してクイックス リーステップにしないところが,動作時間を節約した工夫 であると考えられる. このように素早く動作しても,ブロックの踏切離地位置 がサイド攻撃の打撃位置まで届かず,腕を斜め上方に上げ ながらジャンプし,空中で上昇中にブロックワンタッチし ている(図2および図3参照).センターブロッカーが長身選 手であるからリーチを活かしてブロックワンタッチをとれ ているが,形態的要因が利用できない身長が低いセンター ブロッカーであれば,スカウティング情報を活用したり, セッターの動きを観察して予測する以外に,現状ではサイ ド攻撃をブロックするのは不可能と言わざるを得ない. 3.サイドブロッカー サイドブロッカーのステップは,レフトサイド攻撃でも ライトサイド攻撃でもスパイクの場合と同じ右足(1歩目) そして左足(2歩目)の順足で踏切動作をしていた(図5参 照).日頃使い慣れたスパイクと同様のステップと腕のス イング動作で踏切動作をすれば,スタンディングジャンプ 動作のブロックよりも,水平方向の運動量を利用できるの で,ブロックジャンプの跳躍高を高めることができる.サ イドブロッカーが長身選手でない場合,スタンディング ジャンプよりもスパイク様の順足ジャンプを使用する方 が,ブロック高の点からみれば有利であると考えられる. サイドブロッカーのブロック位置は,サイド攻撃の打撃 位置の正面ではなく,レフトおよびライト攻撃ともにコー トの内側でブロックに跳んでいた(図6および図7参照). そして腕は,打球方向の違いにより左右に動かさず,体の 前上方で伸展させた姿勢を維持してブロックしていた(図 8参照).これは,センターブロッカーが遅れて,サイド ブロッカーが1人でサイド攻撃のブロックをする状況を想定して,コートの真ん中へスパイクされたらレシーバーが 誰もいなくて守備できないけれど,左右に打ち分けた打球 はレシーバーに任せることができるとみなして採った動き であると考えられる.しかし,レシーバーの配置状況につ いては分析しておらず,これ以上の詳細は本研究のデータ の範囲では検討することができないので,これは今後の課 題として研究を進めて行くべきである.
Ⅴ. ま と め
本研究の目的は,コンビネーション攻撃のサイド攻撃に 対するセンターブロッカーとサイドブロッカーのブロック 動作を3次元動作分析(DLT法)し,平行トスに対する組織 ブロックの技術特性を明らかにすることであった.得られ た知見をまとめると次のようになる. 1.ほとんどのケースにおいて,センターブロッカーは, 進行方向の脚に体重移動する動作はするが,1歩踏み 出すことはせず,移動時間を節約したツーステップの 足運びで踏切動作をしていた.しかし,踏切離地位置 がサイド攻撃の打撃位置まで届かず,斜め上方に腕を 伸ばしてブロックジャンプし,ブロックワンタッチし ていた. 2.形態的要因が利用できない身長が低いセンターブロッ カーは,クイックとパイプの中央攻撃に対するブロッ クの役割を担った後,平行トスによるサイド攻撃の防 御に参加するには,予測により反応動作を早くする以 外は不可能であると考えられた. 3.サイドブロッカーは,打撃位置の正面ではなく,約 50cmインナーの位置でブロックに跳んでいた.平行 トスによるサイド攻撃を1人ブロックで防御すること を想定して,レシーバーがいないコート中央への打球 コースを塞ぐ位置でブロックしたものと考えられた.注 記
1) Aパスとは,セッターのセット・アップ定位置へサー ブレシーブされ,全てのスパイク・オプションが使用 可能なもの. 2) 本研究では,コンビネーション攻撃を「クイック攻撃を 含む複数のスパイカーによる攻撃」とする. 3) セリンジャーのセットシステム(1993)2)では,ネットを 1m幅のスロットに9等分し,各スロットはセンターライ ンからアタックラインまで延びている.最も左側のスロッ トから5,4,3,2,1,0,A,B,C,と定義されている.文 献
1 ) 佐賀野健 他:男子バレ−ボ−ルにおけるコンビネ−ショ ン攻撃に対するリードブロックの技術特性に関する研究− 2次元DLT法を用いたセンターブロッカーの映像分析−. スポーツ方法学研究,15, (1), pp.87−89, 2002.2 ) Selinger A., Ackermann−Blount J. 都沢凡夫訳:セリン ジャーのパワーバレーボール.ベースボールマガジン社, 東京,pp.145−147, 1993. 3 )田中幹保:リードブロックのためのスリーステップ.月刊 バレーボール,50(9), pp.153−156, 1996. 4 ) 橋原孝博 他:規格化・平均化の手法による運動技術解 析の試み−バレーボールのスパイク技術について−,体 育学研究,33(3),pp.201−210, 1988. 5 ) 橋原孝博 他:バレーボール男子世界トップレベルチー ムの戦術プレーに関する研究 −2006年男子世界選手権に おけるブラジルおよびイタリアチームの分析− バレー ボール研究,11(1), pp.12−18, 2009.
6 ) Walton J. S. : Close − range Cine − Photogrammetry: another approach to motion analysis. J. Terauds (edt), Science in Biomechanics Cinematography. Academic Publishers: Del Mar, pp.69−97, 1979.
付 記
本研究は日本バレーボール協会科学研究委員会の援助に より行われたものである.