個人情報保護法改正案及び民法(債権法)改正案の利用規約及びプライバシーポリシーにおける個人情報取扱条項への影響
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(2) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2015-EIP-68 No.14 2015/5/29. 利用規約で個人情報取扱条項が規定される場合,その眼. らみて全く想定できないものではなく,信義則に反しない. 目は,利用規約による同意又は一方的変更条項で,個人情. など社会通念上妥当であると客観的に認識される範囲との. 報取扱条項が変更できる点に置かれているように思われる.. 趣旨である.いずれにしても,個人情報取扱事業者の主観. この点は,2.2 定型約款の変更の実務,で後述する. 定型約款の変更の実務. 的判断に委ねるのではなく,社会通念により妥当と認めら れる範囲内にとどめようとの趣旨である.なお,OECD ガ. 1.2 個人情報保護法改正法案 個人情報保護法改正法案と個人情報取扱条項. イドラインでは, 『…その後のデータ利用は,…当該収集目. 個人情報保護法改正案には,直接的な,個人情報取扱条. 的に矛盾しない(incompatible)で,かつ,目的の変更毎に. 項の規律は用意されなかった.民事上の規律が一切導入さ. 明確化された他の目的の達成に限定されるべきである』と. れなかったわけではなく,開示の求めについて請求権性を. しており,本条の趣旨はこのガイドラインに沿ったものと. 導入する規定は盛り込まれている(新個人情報保護法 28. 考えられる.」[5],「『相当の関連性を有する』とは,当初. 条 1 項,29 条 1 項,30 条 1 項).. の利用目的からみて,予測が困難でない程度の関連性があ. 他方で,個人情報取扱条項に関連して導入されたのが,. ることを意味する.…(『合理的に認められる範囲を超えて. 個人情報の利用目的の変更にかかる新個人情報保護法 15. 行ってはならない』につき)個人情報取扱事業者が主観的. 条 2 項である.. に合理的と認めるのではなく,社会通念に照らして客観的 に合理的と認められることを意味する.」[6],とされてお. 新個人情報保護法 15 条 2 項. り,社会通念上妥当な範囲で利用目的が変更できる,とい. 個人情報取扱事業者は,利用目的を変更する場合には,変. う以上の規範は示されていない.具体例に乏しいが,個人. 更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範. 情報保護法の特別法であるところの「行政手続における特. 囲を超えて行ってはならない.. 定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」 (平 成 25 年法律第 27 号,以下「マイナンバー法」という.)の. 具体的には,「利用目的と相当の関連性を有すると合理. ガイドライン[7]では,以下の例が挙げられている.. 的に認められる範囲」に認められていた利用目的の変更が, 「利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲」. (利用目的の変更が認められる場合). に認められるようになった. 「相当の」を削除するという法. * 雇用契約に基づく給与所得の源泉徴収票作成事務のた. 案である.なお,文言を見れば分かるように,この場合の. めに提供を受けた個人番号を,雇用契約に基づく健康保. 利用目的の変更には本人の同意は不要である.. 険・厚生年金保険届出事務等に利用しようとする場合は,. この条項は,少なくとも公開の場では,詳細な議論を経. 利用目的を変更して,本人への通知等を行うことにより,. ていない.利用目的変更条項は,利用目的をオプトアウト. 健康保険・厚生年金保険届出事務等に個人番号を利用する. 方式で変更したいという一部産業界の強烈なロビイングを. ことができる.. 受けて, 「個人情報の保護に関する法律の一部を改正する法 律案(仮称)の骨子(案)」において,ほぼ無制限な形で導. 個人番号について,源泉徴収票作成以外に健康保険・厚. 入されようとしていた.これに対し, 「OECD プライバシー. 生年金保険届出事務等に利用するのは,個人番号関係事務. ガイドラインに適合しない」,「大綱案の修正時の約束に反. 実施者と雇用契約関係にある本人にとってはいわば当然で. する」,「大綱と齟齬がある」,「消費者との信頼関係の形成. あり,このような特殊な場合にしか用いることが出来ない. に資するところがなく,安直な発想であってそもそもだめ」,. とすると,旧個人情報保護法 15 条 2 項による,本人の同意. との,複数の「パーソナルデータに関する検討会」委員か. がない利用目的の変更については,個人情報取扱事業者に. らの強烈な反対もあり,政治レベルでの調整もあり,利用. おいてもなかなかリスクを取りきれないであろう.. 目的をオプトアウト方式で変更するという条項は,改正個. そこで,新個人情報保護法 15 条 2 項は「相当の」を削除. 人情報保護法案からは除かれるに至った(問題点について. するが, 「合理的に認められる範囲」は残っており,どの程. は[3][4]参照).. 度の緩和であるのかは,事案の集積を待たねばならない.. このような経緯を経て導入された条項であるので,「相 当の」が削除されることにより,本人の同意が不要な利用. 社会通念上相当な範囲がやや緩和された,といわれても, 何ら行為規範にはならない.. 目的の変更の範囲がどのように拡大したのかについては,. そして,本条によることのできない利用目的の変更は,な. 手がかりがない.そもそも,旧個人情報保護法 15 条 2 項も,. おもって,本人の同意がなければ行うことができないとい. ほとんど利用されてくることはなかったのである.コンメ. うことになる[8].. ンタールの類をみると,「『相当の関連性を有すると認めら れる範囲』とは,変更後の利用目的が変更前の利用目的か. ⓒ2015Information Processing Society of Japan. 2.
(3) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 1.3 民法改正法案と 民法改正法案と個人情報取扱条項 民法改正法案には, 「定型約款」に関する条項が盛り込ま. Vol.2015-EIP-68 No.14 2015/5/29. 項について合意があったものとみなし,個別に相手方と合 意をすることなく契約の内容を変更することができる.. れた. 「定型約款」に関する規律の条文化は,全くの新規の. 一. 項目であり,法制審議会の議論でも最後まで保留(継続審. とき.. 議)とされた.平成 26 年 8 月 26 日の「民法(債権関係). 二. 定型約款の変更が,相手方の一般の利益に適合する 定型約款の変更が,契約をした目的に反せず,かつ,. の改正に関する要綱仮案」の段階では,唯一ペンディング. 変更の必要性,変更後の内容の相当性,この条の規定によ. だったのである[9].その変遷や攻防については民法の専門. り定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びそ. 的な論稿に譲らざるを得ないが,ともかくも,「定型約款」. の内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なもので. についての規律が条文化された.まずここではその条文を. あるとき.. 挙げる(いずれも新民法).. 2. 定型約款準備者は,前項の規定による定型約款の変更を. するときは,その効力発生時期を定め,かつ,定型約款を (定型約款の合意). 変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発. 第 548 条の 2. 生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により. 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者. を相手方として行う取引であって,その内容の全部又は一. 周知しなければならない.. 部が画一的であることがその双方にとって合理的なものを. 3. いう.以下同じ.)を行うことの合意(次条において「定型. 力発生時期が到来するまでに同項の規定による周知をしな. 取引合意」という.)をした者は,次に掲げる場合には,定. ければ,その効力を生じない.. 型約款(定型取引において,契約の内容とすることを目的. 4. としてその特定の者により準備された条項の総体をいう.. 約款の変更については,適用しない.. 第 1 項第 2 号の規定による定型約款の変更は,前項の効. 第 548 条の 2 第 2 項の規定は,第 1 項の規定による定型. 以下同じ.)の個別の条項についても合意をしたものとみな す.. まず,インターネット上で個人情報を取り扱うサービス. 一. 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき.. を運営している者が,通常,利用者との間で契約として用. 二. 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」と. いている利用規約が,新民法上の定型約款にあたるか,を. いう.)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を 相手方に表示していたとき. 2. 前項の規定にかかわらず,同項の条項のうち,相手方の. 検討する. 定型約款を用いる前提は, 「ある特定の者が不特定多数の 者を相手方として行う取引であって,その内容の全部又は. 権利を制限し,又は相手方の義務を加重する条項であって,. 一部が画一的であることがその双方にとって合理的なも. その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念. の」であるところの「定型取引」である.インターネット. に照らして第 1 条第 2 項に規定する基本原則に反して相手. サービスの利用関係は通常, 「不特定多数」の利用者を相手. 方の利益を一方的に害すると認められるものについては,. に展開されており,サービスの「全部又は一部が画一的」. 合意をしなかったものとみなす.. であり,また,そうであることは事業者及び利用者の双方 にとって合理的であるので,定型取引にあたると考えられ. (定型約款の内容の表示). る.. 定型取引を行い,又は行おうとする定型約. また,定型約款とは「定型取引において,契約の内容と. 款準備者は,定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当. することを目的としてその特定の者により準備された条項. の期間内に相手方から請求があった場合には,遅滞なく,. の総体」と定義づけられるが,まさにインターネットサー. 相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならな. ビスの利用規約は「特定の者」たる事業者が準備した「条. い.ただし,定型約款準備者が既に相手方に対して定型約. 項の総体」であり,事業者及び利用者の双方がこれを契約. 款を記載した書面を交付し,又はこれを記録した電磁的記. 内容とすることを目的としていることから, 「定型約款」に. 録を提供していたときは,この限りでない.. 該当する(典型例といっても良い).. 第 548 条の 3. 定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の請. そして,個人情報保護法改正案によっても,前述したと. 求を拒んだときは,前条の規定は,適用しない.ただし,. おり,同意によらない利用目的変更が可能な範囲は不明確. 一時的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある. であり,同意によらない第三者提供(オプトアウト方式に. 場合は,この限りでない.. よる提供)はむしろ要件が厳しくなっているところ(新個. 2. 人情報保護法 23 条 2 項,個人情報保護委員会への届出義務 (定型約款の変更). が追加されるなど),定型約款の変更により利用目的変更又. 定型約款準備者は,次に掲げる場合には,. は第三者提供に関する本人の同意を取得したい,取得当初. 定型約款の変更をすることにより,変更後の定型約款の条. 採用していなかったオプトアウトによる第三者提供を実現. 第 548 条の 4. ⓒ2015Information Processing Society of Japan. 3.
(4) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2015-EIP-68 No.14 2015/5/29. したい,第三者提供先や共同利用先を本人の同意による体 裁を整えた上で増やしたい,というニーズはなお見込まれ る.. 2. 定型約款の変更 定型約款の変更の の理論と実務 理論と実務 それでは,そのようなニーズに,個人情報保護法改正法 案及び民法改正法案は対応しているか.これは,民法改正. とする.さて,定型約款の変更の実務と噛み合っている か. 2.2 定型約款の変更の実務 2.2.1 「電気通信事業における個人情報保護に関するガイ ドライン(平成 16 年総務省告示第 695 号.最終改正平成 25 年総務省告示第 340 号)の解説」. 法案が想定している事案と,実際に,既に現時点において. 既に[1]でも紹介していたが,「電気通信事業における個. 定型約款の変更の実務がどのように展開しているかを検討. 人情報保護に関するガイドライン(平成 16 年総務省告示第. しなければならない.. 695 号.最終改正平成 25 年総務省告示第 340 号)の解説」 (以下,「電気通信事業ガイドライン解説」という.)にお. 2.1 定型約款の変更について想定されている事案. いては,以下のとおり解説されている.. 民法学者や民法改正法案が想定している定型約款の変更 事例は,実に素朴なものである可能性がある.山野目章夫 教授による定型約款条項の解説[10](時期的な問題で「民 法(債権関係)の改正に関する要綱案」 (平成 27 年 2 月 10 日法制審議会決定)に関するものである)が想定している 事案は,. 「本人の同意」については,個別の同意がある場合だけ でなく,電気通信サービスの提供に関する契約約款におい て,個人情報の第三者提供に関する規定が定められており, 当該契約約款に基づき電気通信サービス提供契約を締結し ている場合,当該規定が私法上有効であるときも, 「本人の 同意」がある場合と解される.. 「消費税が増税された場合に,支払額を 10800 円から 11000. この理は,契約約款が変更される場合も変わりはないの. 円にするのは振込額の変更を伴い煩わしいので,午前 10. で,契約約款の変更により個人情報の第三者提供に関する. 時から午後 8 時までのサービス提供時間を午前 10 時から午. 規定が設けられた場合であっても,当該変更が私法上有効. 後 7 時 50 分までに短縮する」. であり変更前に契約締結を行った当事者にも変更後の規定 が効力を有すると判断される場合には, 「本人の同意」があ. というものである.これをして山野目教授は定型約款条 項(新民法 548 条の 4 第 1 項に相当)にあてはめ,. る場合と解される. なお,同意は有効なものでなければならないので,民法 (明治 29 年法律第 89 号)第 90 条の公序良俗に反する場合. 「定型約款準備者は,定型約款の変更が,相手方の一般の 利益に適合し(話題にした通信サービスの例では,客の側 の銀行の手続を避けることができる),かつ[a],契約をし た目的に反せず(通信サービスを受ける,という核心のと ころに変更はない),しかも,変更の必要性(消費増税への 対応として理由がある),変更後の内容の相当性(便乗して 利用時間が大幅に減らされるものではない),定型約款に変 更に関する定めがある場合にはその内容(変更に不満があ る者が契約を解除することができる旨の定めなどは,あっ. や同法第 95 条の要素の錯誤がある場合,消費者契約法(平 成 12 年法律第 61 号)第 10 条の消費者の利益を一方的に害 するものとされる場合など同意が私法上無効とされる場合 は,有効な同意があるとは言えないので,同意がある場合 とは言えないことは当然である. また,無制限に第三者提供を認める規定等契約約款の規 定が,利用者の利益を阻害していると認められるときは, 電気通信事業法上の業務改善命令の対象となりうる. (ガイドライン第 15 条関係,24 頁). てよい工夫である)など,変更に係る諸事情に照らして合 理的なものであるときに,変更後の定型約款の条項につい て合意があったものとみなし,個別に相手方と合意をする ことなく契約の内容を変更することができる(第 28, 4(1)[b])(筆者注:要綱案の参照箇所)」. [1]で論じたとおり,「私法上」の契約の有効無効が,個 人情報保護法という公法上の同意の有効無効と直結するか どうかというのは,必ずしも自明な話ではない.総務省の 見解にとどまる点はある.とはいえ,個人情報保護法上の 同意と定型約款の定めを完全に二元的に解する必要はなく,. [a] 山野目教授は「かつ」で繋いでいるので,新民法 548 条の 4 第 1 項 1 号及び 1 号の双方の要件を満たす必要があるとの説を採用しているとみえ るが,同条第 3 項が「第 1 項第 2 号の規定による定型約款の変更」を独立 して挙げていること及び条文に普通の読み方からは,1 号と 2 号は選択的な 要件であると考えるべきであろう. [b] 「定型約款準備者は,次に掲げる場合には,定型約款の変更をすること により,変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし,個 別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる.. ⓒ2015Information Processing Society of Japan. 「公法上の同意を行うという私法上の契約」を観念したと 「公法上の同意を行うという私法上の契約」 ア 定型約款の変更が,相手方の一般の利益に適合するとき. イ 定型約款の変更が,契約をした目的に反せず,かつ,変更の必要性, 変更後の内容の相当性,この4の規定により定型約款の変更をすることが ある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理 的なものであるとき.」. 4.
(5) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report すると(当事者の合理的意思解釈からは,このような内容. Vol.2015-EIP-68 No.14 2015/5/29. 2.2.2 定型約款の変更の実例. の契約であると認定することが自然であろう)が無効であ. 既に行われている定型約款の変更―一方的変更条項によ. ると考える根拠にも乏しいと思われ,一先ずは承認してよ. る利用規約の一方的変更―の実務は,壮絶である.「現状,. いであろう([1]の問題提起に対する自らの応答である).. ウェブサービスにおける利用規約などの変更同意について. さて,電気通信事業ガイドライン解説は当然の事ながら,. は,最初の利用規約などへの同意と比較しても,かなりラ. 民法改正法案を取り込んではいないが, 「同意は有効なもの. イトな感覚で考えられています.」と指摘する文献[11]があ. でなければならないので,民法(明治 29 年法律第 89 号). るが,これはかなり言葉を選んでいる.. 第 90 条の公序良俗に反する場合や同法第 95 条の要素の錯 誤がある場合,消費者契約法(平成 12 年法律第 61 号)第. 以下が,実際に用いられている一方的変更条項の現状で ある.. 10 条の消費者の利益を一方的に害するものとされる場合 など同意が私法上無効とされる場合は,有効な同意がある. ヤフー株式会社. とは言えないので,同意がある場合とは言えないことは当. 第 1 編 基本ガイドライン. 然である.」との見解は,当然に,新第 548 条の 4 を取り込. 第 1 章 総則(2013 年 7 月 1 日改定)[11][12]. むであろう.. 16. 利用規約の変更について. YAHOO! Japan 利用規約. そうすると,個人情報の利用目的の変更や個人データの. 当社が必要と判断した場合には,お客様にあらかじめ通. 第三者提供の同意等が, 「①定型約款の変更が,相手方の一. 知することなくいつでも本利用規約を変更することができ. 般の利益に適合するとき」か「②定型約款の変更が,契約. るものとします.. をした目的に反せず,かつ,変更の必要性,変更後の内容. ただし,ご利用いただいているお客様に大きな影響を与. の相当性,この条の規定により定型約款の変更をすること. える場合には,あらかじめ合理的な事前告知期間を設ける. がある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事. ものとします.. 情に照らして合理的なものであるとき」にのみ,私法上も, 個人情報保護法上も,有効であるということになる(新第. 楽天株式会社. 548 条の 4 第 2 項以下の要件は一旦置く).いままで,個人. [11][13]. データの第三者提供に同意をしていなかったのに,新たに 同意をするということが, 「相手方の一般の利益に適合」す る場面というのは,容易には考え難い.利用目的の変更に ついても同様である.定型約款による同意というハードル を超えるインセンティブが生じるためには,新個人情報保. 楽天会員規約(2006 年 11 月 24 日改定). 第 17 条(本規約の改定) 当グループは,本規約を任意に改定できるものとし,ま た,当グループ各社において本規約を補充する規約(以下 「補充規約」といいます)を定めることができます.本 規約の改定または補充は,改定後の本規約または補充規約. 護法 15 条 2 項による利用目的の変更が可能な範囲が,「相. を当グループ所定のサイトに掲示したときにその効力を生. 手方の一般の利益に適合するとき」より狭い必要があるが,. じるものとします.この場合,会員は,改定後の規約およ. 現時点で文言を並べて考えても,答えは出ない.山野目教. び補充規約に従うものといたします.. 授の挙げている例は, 「客の側の銀行の手続を避けることが できる」というものである.これも,毎月銀行に利用者が サービス利用料を振込に行くという牧歌的な例を想定して おり,そもそも 2015 年のインターネットサービスでそのよ うな事例が存在するかという問題を措くとしても,第三者 提供先をハガキに書いて郵送するような事案をパラレルに 想定すると, 「相手方の一般の利益に適合」する利用目的の. クックパッド株式会社 【第 1 条. クックパッド利用規約[14]. 本利用規約について】. 4. 当社は,相当の事由があると判断した場合には,利用者 の事前の承諾を得ることなく,当社の判断により,本利用 規約をいつでも変更することができるものとします.. 変更や第三者提供の同意が,直ちには浮かび上がってこな いのである. そうすると,新第 548 条の 4 第 1 項 1 号による変更は期. 株式会社マネーフォワード. マネーフォワード利用規約. [15]. 待できず,2 号のバスケットクローズによる変更の有効性. 第 23 条(規約改訂). を期待することとなるが,これもまた,予測可能性に乏し. 当社は,当社が必要と判断した場合,利用者への事前の通. い. 「この条の規定により定型約款の変更をすることがある. 知及び承諾を得ることなく,本サイトまたは本アプリ上に. 旨の定めの有無」以外は規範的評価の問題であり,事業者. 掲載することにより本利用規約及びマネーフォワードサー. においては自らの判断で行った後,評価に任せるほかない.. ビス利用契約の変更・追加・削除等を行うことができるも. 実例を見ていこう.. のとし,如何なる変更・追加・削除等も本サイトまたは本 アプリ上に掲載されると同時にその効力が生じるものとし. ⓒ2015Information Processing Society of Japan. 5.
(6) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2015-EIP-68 No.14 2015/5/29. ます.また,利用者が,当社が通知を掲載した時点以降,. 事業者がサービス上必要な個人情報取扱条項の導入につい. 本サービスの利用を継続した場合は,利用者は,これらの. ては,やはり個別の同意を丁寧に取得していく他なく,ユ. 変更・追加・削除等を変更なく受け入れることを表明した. ーザーインターフェースの工夫を含めた,丁寧なサービス. ものとみなします.. 運用を心がけることになろう.. いずれも,個人情報の取扱いを含み,我が国で広く用い られているインターネットサービスの利用規約である.な お,我が国の国民の個人情報をこれらの社以上に保有して いるのは明らかに Google,Amazon,Apple,Microsoft など のシリコンバレーの企業であるが,利用規約の準拠法の問 題があるため,敢えて取り上げていない. これらの社に限らず,インターネットサービスを運営す る事業者は,一方的変更条項を根拠に, 「相手方の一般の利 益に適合」しない条項でもどんどん利用規約を変更してい る.Yahoo! Japan の利用規約にあるような事前告知期間の 設定(新第 548 条の 4 第 2 項及び第 3 項参照)があること すら,一般的ではない. また,サービスの利用継続で変更後の条項への合意とみ なすような条項は,新第 548 条の 4 との関係では,無効で あろう.定型約款条項は,定型約款準備者の相手方の保護 の趣旨を含む以上,強行法規であると考えられる.これに 反して,みなし合意を行うような条項を定めても,それ自 体では合意とはみなされず,定型約款の定めとは別に個別 に合意があるかを判断されることになろう.. 3. 個人情報取扱条項への影響 以上まとめると,個人情報取扱条項への影響は以下のと. 参考文献 [1]板倉陽一郎「個人情報の取扱いに関する利用規約上の定めに関 する考察」情報処理学会研究報告 EIP [電子化知的財産・社会基盤] 2013-EIP-62(4),1-6 頁,(2013 年) [2]藤原宏高・板倉陽一郎「インターネット関連」 『契約書式実務全 書[第 2 版]第 3 巻』(ぎょうせい,2014 年)457 頁 [3]高木浩光「それからどうなった?」鈴木正朝・高木浩光・山本 一郎『ニッポンの個人情報』(翔泳社,2015 年)346 頁 [4]板倉陽一郎「パーソナルデータ法制の行方―『パーソナルデー タの利活用に関する制度改正大綱』から『個人情報の保護に関す る法律の一部を改正する法律案(仮称)の骨子(案)』に至るじき のスナップショット」社会情報学 3 巻 3 号(2015 年)掲載予定 [5]園部逸夫編『個人情報保護法の解説<<改訂版>>』 (ぎょうせい, 2005 年)120 頁 [6]宇賀克也『個人情報保護法の逐条解説[第 4 版]』 (有斐閣,2013 年)80 頁 [7]特定個人情報保護委員会『特定個人情報の適正な取扱いに関す るガイドライン(事業者編)』(2014 年 12 月 11 日)15 頁 [8]前掲宇賀 [9]潮見佳男『民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案の概要』 (金融財政事情研究会,2014 年)1 頁 [10]山野目章夫「民法(債権関係)改正のビューポイント Viewpoint⑩」NBL1047 号(2015 年 4 月 1 日)56 頁 [11]雨宮美季・片岡玄一・橋詰卓司『良いウェブサービスを支える 「利用規約」の作り方』(技術評論社,2013 年)96 頁 [12]http://docs.yahoo.co.jp/docs/info/terms/chapter1.html( 2015 年 4 月 22 日閲覧) [13]http://www.rakuten.co.jp/myrakuten/rule/(2015 年 4 月 22 日閲覧) [14]https://cookpad.com/terms/free(2015 年 4 月 22 日閲覧) [15]http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900244.html(2015 年 4 月 22 日閲覧). おりである. 改正個人情報保護法案においては,本人の同意なしに利 用目的を変更できる場合が, 「利用目的と相当の関連性を有 すると合理的に認められる範囲」から「利用目的と関連性 を有すると合理的に認められる範囲」に拡大されたが(新 個人情報保護法 15 条 2 項),社会通念上妥当な範囲で利用 目的が変更できるとされていた旧法下の解釈からどの程度 緩和されたのかは,現時点では予測可能性がない. 改正民法法案においては,定型約款の変更の条項が導入 される(新民法 548 条の 4).個人情報保護法上の同意を行 う私法上の契約を観念すれば,これによって個人情報保護 法上の同意を含む定型約款の変更を想定できるが,同条 1 項 1 号による定型約款の変更に該当しそうな場面は想定困 難であり,同条 1 項 2 号による定型約款の変更は可能であ るとしても,バスケットクローズによることになるので, これも予測可能性がない.他方,新民法 548 条の 4 に反す るようなみなし合意条項は,強行法規違反で無効であると 考えられるので,これに頼ることはできなくなる. 結局,改正個人情報保護法案によっても,改正民法法案 によっても,事業者の予測可能性は担保されてはいない.. ⓒ2015Information Processing Society of Japan. 6.
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