Title
The Significant Role of Telomerase Activity in Human Brain
Tumors( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
中谷, 圭
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)甲 第368号
Issue Date
1998-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/14744
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氏名 (本籍) 学位の種頬 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 中 谷 圭(岐阜県) 博 士(医学) 甲第 368 号 平成10
年
3 月 25 日学位規則第4条第1項該当
The Significant RoleofTeIomerase Activityin Human Brain Tumors
(主査)教授 坂 井 昇 (副査)教授 森 秀 樹 教授 高 見 剛 論文内容の要旨 ヒトの染色体の末端部分には,テロメアと呼ばれるTTAGGGという繰り返し構造か何百と連続した部分があ り,これは染色体の安定性を保ちこれを保護する働きがあると考えられている。テロメアは加齢や細胞の分裂に 際して徐々に短縮されることが明らかとなりt この事実は細胞の分裂寿命を決定する一つの要素と考えられてい る。テロメレースはt テロメアを新生する鋳型RNAをともなったリボ蛋白質で,テロメレース活性を有する細 胞は分裂時のテロメアの短縮を抑制し,無限の分裂能を有し,いわゆる不死化するとされている0
1994年にKimらによってPCRを応用してテロメレース活性を検出するtelomeric repeat amplification
protocol(TRAP)法が考案されて以東 さまざま組敵組胞における活性の有無が検討された0その結果・ヒ トでは生殖細胞や幹細胞などごく一部を除いて.正常体細胞ではテロメレース活性が認められなかった一方,調 べられたほとんどの癌および悪性腫瘍においてこの活性があることがわかり,癌の診断および治療に直結するも のとして注目されている。申請者は今まで報告されていなかった種々のヒト脳腫瘍におけるテロメレースの活性 を検索し,その組織化学的特級 腫瘍増殖能,患者予後との関連について検討した。 対象および方法 対象は1994年から1996年までに当施設および関連病院にて39例の患者から手術的に摘出された41検体の脳腫瘍
で,その内訳はglioblastoma multiforme(以下GBM)18例20検体(primary tumor14検軋 recurrent
tumor 6検休),anaplastic astrocytoma(AA)3臥low grade astrocytoma(LGA)4例・
01igodendroglioma(OG)2例,meningioma(MN)9例.metastaticbraintumor(MBT)3例である0また・ 6例の腫瘍患者(GBM 5例,AAl例)においては,手術時.corticotomyに際し得られた正常脳をコントロー ルとして用いた。6例の再発GBM例のうち2例は初発腫瘍と再発腫瘍の両方について調べた。標本は摘出後直ち に凍結保存され.Kimらの方法に基づき蛋白質を抽出し,Rlを用いたTRAP法を行い,オートラジオグラフイ一 によってテロメレース活性の有無を調べた。また,GBMについては,MIB-1抗体を用いた免疫染色を行い,そ の陽性率をテロメレース活性陽性群,陰性群に分けて比較検討した。さらに,GBMの症例11例についてはテロ
メレース活性陽性群,陰性群に分けてKaplan-Meier法により生存曲線を作成,Wilcoxon's rank sun testを用
いてその生存率を比較検討した。 結 果 テロメレース活性は,コントロールとして用いた正常脳では全例陰性であった。 GBMのテロメレース活性は初発腫瘍14例中8例の57%,再発腫瘍6例中4例の67%の陽性率で認められ,GBM 全体では20例中12例60%が陽性,MBTでは全例が陽性であった。また,OGは2例とも陽性であったが,オート ラジオグラフイーのラダーは他の腫瘍のものに比べ明らかに淡かった。AA,LGA,MNは全例が陰性を示した。 再発したGBM6例のうち再発時に陽性に転じたものが1例あった。GBM群に行ったMIB-1検索では,テロメレー ス活性陽性群(12例)のMIB-1陽性率は平均20.8%,陰性群(8例)は平均26.8%を示し,陰性群でMIB-1陽性率 が若干高い傾向を示したが統計学的有意差はなかった。GBM群においてテロメレース活性と生命予後との関係 をみると,テロメレース活性陽性群の平均生存月数が8カ月,陰性群が13.8カ月と,テロメレース活性陽性群で -47一
生存期間が短い傾向を示した(P=0.126)。 考 察 テロメレース活性は脳腫瘍のうちGBMおよびMBT等のより悪性な腫瘍で高頻度に発現していること,また腫 瘍特異性を有していることが明らかとなった。しかしながら,maliganant gliomaの中でGBMとAAとの間に テロメレース活性陽性率が相違したことに関して,同一一症例で再発時により悪性化した腫瘍では活性が陽性に転 じたことなどから,aStrOCytic typeでは腫瘍の悪性化の最終段階(AAからGBMへ移行した後)でテロメレー ス活性を獲得するものと推察された。また,GBMは組織学的にheterogeneousであるため各々の症例でその活性 に差を生じたと考えられた。OGにおいてその活性が明らかに弱かったものの陽性率100%であったことについ ては.起源と考えられる発生母細胞が他のgliomaと異なっていると指摘されており,それによるものと推察し た。 また,テロメレース活性と腫瘍の増殖能の指標であるMIB-1陽性率との問に相関は認められなかった。これは テロメレース活性がcellcycleに関与していることを否定するものであった。しかし.テロメレース活性と患者 の生命予後についてみると.陽性群が陰性群に比して悪く,特にMIB-1陽性率20%以上の症例の中でもテロメレー ス活性陽性例ではその予後がさらに不良であったのに対し,MIB-1陽性率が20%未満でかっテロメレース活性陰 性例は比較的予後が良い傾向を示すことが明らかとなった。この事実は.ce11cycleが速く,急速に増大する腫 瘍の維持にテロメレース活性が不可欠であることを示唆するものであった。 以上より,テロメレース活性の有無が腫瘍特異的にその悪性度を示し.かつ患者予後判定に有用な因子となる と結論した。 論文審査の結果の要旨
申請者 中谷 圭は,telomericrepeat amplification protocol(TRAP)法を剛、て外科的に摘出したヒト 脳腫瘍におけるテロメレース活性の有無を検索し,その意義について検討した。その結果,各種の脳腫瘍におけ
るテロメレース活性の有無は腫瘍自身の悪性度と相関し,かつ患者の生命予後の判定に有用であることを明らか
にした。本研究の成果は脳神経外科の発展に少なからず寄与するものと認める。
[主論文公表誌]
The Significant Role of Telomerase Activityin Human Brain Tumors
平成9年発行 Cancer 80:471∼476