Title
Synergistic growth inhibition by acyclic retinoid and
phosphatidylinositol 3-kinase inhibitor in human hepatoma cells(
内容と審査の要旨(Summary) )
Author(s)
馬場, 厚
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学) 甲第946号
Issue Date
2014-03-25
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/49079
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏名(本籍) 学 位 の 種 類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与要件 学位論文題目 審 査 委 員 馬 場 厚(岐阜県) 博 士(医学) 甲第 946 号 平成 26 年 3 月 25 日 学位規則第4条第1項該当
Synergistic growth inhibition by acyclic retinoid and
phosphatidylinositol 3-kinase inhibitor in human hepatoma cells (主査)教授 國 貞 隆 弘
(副査)教授 中 川 敏 幸 教授 前 川 洋 一
論 文 内 容 の 要 旨
レチノイド X 受容体 RXRα は,核内受容体 superfamily における master regulator であり,他の 核内受容体とヘテロダイマーを形成することで,正常な細胞の分化・増殖・死を制御している。近 年,RXRα が異常リン酸化修飾を受け機能不全(レチノイド不応状態)に陥ることが,ヒト肝発癌 に深く関与していること,すなわち,リン酸化 RXRα は,肝発癌抑制・肝癌細胞増殖抑制における 重要な標的分子であることが明らかになってきている。RXR のアゴニストとして開発された非環式 レチノイド(Acyclic retinoid; ACR)は,大規模臨床介入試験において,初発肝癌根治治療後の二 次肝発癌を有意に抑制し,生存率を改善することが報告されている。ACR は,ヒト肝癌細胞株の増 殖を阻害し,動物モデルにおける肝発癌を抑制するが,その機序として,ACR は肝癌細胞における RXRα の異常リン酸化修飾を解除し,その機能を修復することが明らかになっている。さらに ACR は,異なる作用機序を持つ薬剤と併用することで,肝発癌や肝癌細胞の増殖に対し強い抑制効果を 発揮することより,相乗効果を期待した「併用化学肝発癌予防」の key agent としても高い注目を 集めている。 Ras/MAPK や PI3K/Akt シグナルの過剰活性化は,RXRα のリン酸化修飾において重要な役割を果た している。特に PI3K/Akt シグナルは,細胞の分裂や成長など細胞の生存促進シグナルとして機能し ていることが知られており,抗癌剤の target として期待されている。今回我々は,有効な新規併用 化学肝発癌予防法を開発すべく,ACR と PI3K 阻害薬の併用処理が,ヒト肝癌細胞に対して相乗的な 増殖抑制効果を及ぼすか検討し,その機序について解析した。 【対象と方法】 ヒト肝癌細胞株(HLF,Hep3B,Huh7,HepG2)とヒト正常肝細胞株(Hc)を,ACR と PI3K 阻害薬 である LY294002 または BKM120 で,それぞれ単独あるいは併用処理し,細胞増殖抑制の相乗効果を MTS assay と combination index (CI)を用いて検討した。また,HLF 細胞を ACR と LY294002 で併用 処理し,RXRα,ERK, Akt のリン酸化と,RARβの発現を western blot 法にて検討した。さらに,同条 件下における RARβ,p21CIP1,cyclin D1 mRNA の発現をリアルタイム PCR 法で,apoptosis の誘導を
TUNEL 法および Caspase-3 活性測定法で,RXRE の転写活性を luciferase reporter assay でそれぞれ 検討した。
【結果】
まず始めに,ヒト肝癌細胞株 HLF とヒト正常肝細胞株 Hc を,ACR と LY294002 でそれぞれ単独ある いは併用処理し,細胞増殖抑制に及ぼす影響を検討したところ,ACR および LY294002 の単独処理
は,Hc 細胞と比較し,HLF 細胞の増殖をより低い濃度で抑制すること,またこの抑制効果は,両剤の併 用処理によって相乗的に増強することが明らかになった。ACR と LY294002 の併用は,Huh7 および Hep3B 細胞に対しても強い増殖抑制効果を示した。また,HLF 細胞の増殖は,ACR と BKM120 の併用 によっても相乗的に抑制された。次に,HLF 細胞を 1μM ACR(IC15値)と 5μM LY294002(IC25値)
で併用処理したところ,相乗的な apoptosis の誘導が認められた。また同条件下の HLF 細胞におい て,ACR と LY294002 の併用は,RXRα,ERK, Akt のリン酸化を抑制し,RXRE promoter の転写活性を上 昇させ,RARβ蛋白,RARβ mRNA,p21CIP1 mRNA の発現を増強させるとともに,cyclin D1 mRNA の発現を
低下させた。 【考察】
肝癌は近年の診断法や治療法の発展にも関わらず,未だ予後不良な癌の一つである。したがって, 有効な肝発癌予防法および治療法の開発は緊急の課題であり,ACR を key agent とした「併用化学 肝発癌予防」の開発に対する期待は大きい。本研究で観察された,ACR と PI3K 阻害剤 LY294002 の 相乗的肝癌細胞増殖抑制の機序として,以下の仮説が考えられる。まず ACR は,ERK や Akt のリン 酸化抑制を介して RXRαのリン酸化を阻害し,その核内受容体としての機能を回復させるとともに, ACR 自体が RXRαのリガンドとして作用することで RXRE promoter の転写活性を上昇させ,下流にあ る RARβ,p21CIP1,cyclin D1 をはじめとする標的遺伝子の発現を制御する。さらに LY294002 は,
PI3K/Akt シグナルを抑制することで RXRαのリン酸化を阻害し,functional な非リン酸化 RXRαを 増加させる。これらの結果,apoptosis の相乗的な誘導が起こり,肝癌細胞の増殖が強く抑制され るものと考えられた。なお,今回相乗効果が確認された ACR(1μM)および LY294002(5μM)の濃 度設定が,これまで行われてきた臨床試験の結果と解離していないことを特記する。
【結論】
ACR と LY294002 の併用は,Ras/MAPK と PI3K/Akt シグナルの抑制を介して共同的に RXRαのリン 酸化を阻害し,最終的には RXRE の標的遺伝子の発現を制御することで,肝癌細胞に対して相乗的な apoptosis の誘導効果と増殖抑制効果を発揮した。本研究結果は,ACR と LY294002 の併用が「併用 化学肝発癌予防」を実践する上で,有効な regimen の一つであることを期待させるとともに,ACR を用いた(併用化学)肝発癌予防において,リン酸化 RXRαが重要な標的分子である可能性をあら ためて示唆するものであり,今後,肝癌に対する新規化学肝発癌予防法(薬)の開発を進めていく 上で,意義深い研究結果であると考えられた。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 肝臓全体を一つのフィールドとして多発することを特徴とする肝臓癌では,発癌自体を予防す る方策の確立が患者の予後を改善する上で不可欠である。申請者 馬場 厚 は非環式レチノイド (ACR)と PI3K 阻害剤 LY294002 併用の有用性を培養肝癌細胞株で検討し,両者が相乗的な増殖抑制 効果を発揮すること,その機序として ACR により誘導された Ras/MAPK 阻害と PI3K/Akt 阻害が重層 することにより,増殖抑制とアポトーシス誘導が増強されることを明らかにした。本論文の結果は 肝発癌予防に必要な発癌メカニズムに関連する新知見として,消化器病学,腫瘍学の進歩に少なか らず寄与するものと認める。
[主論文公表誌]
Atsushi Baba, Masahito Shimizu, Tomohiko Ohno, Yohei Shirakami, Masaya Kubota, Takahiro Kochi, Daishi Terakura, Hisashi Tsurumi, and Hisataka Moriwaki: Synergistic growth inhibition by acyclic retinoid and phosphatidylinositol 3-kinase inhibitor in human hepatoma cells. BMC Cancer 13, 465 (2013)