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〈新刊紹介〉『日本簿記学説の歴史探訪』上野清貴 編著, 『日本・税務会計形成史-法人税・企業会計・商法の関連性-』矢内一好 著

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Academic year: 2021

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彦根論叢 Autumn / Oct. 2020 / No.425 110

新刊紹介

過去約2年間に発行された書籍の中から時事的で 話題性があり内容豊かなものを会員のご要望に応 えながら編集委員会が選択して紹介いたします。 『日本簿記学説の歴史探訪』 上野清貴 編著|創成社、2019、288pp.  本書は、日本の代表的な簿記学者

19

名の学説を 総合的にとりあげ、彼らの学説の系譜をたどることに よって、その学説がどのように発展していったかを確 認するとともに、それらの学説が現代の簿記理論へ 与えた影響を考察する本である。  従来から、簿記は会計と比較され、「会計学」に 対する「簿記学」の存在そのものを問われ、何か会 計の「下」に位置する一技術論に分類されることも多 い。一概に言えないが、日本の大学の多くの教育課 程において、まず「技術」としての簿記を学習させた 後に会計学を基礎から学ばせようとする方式は、便 利(?)な反面、簿記そのものを深く学ぶ機会をすっ かり奪い去っているのかもしれない。しかし、本書で は日本における簿記学説の発展段階を、明治期の下 野直太郎の貢献に始まる黎明、発展、成熟、そして 新田忠誓に終わる新展開と四段階に分けたどること によって、評者には一面、簿記学説という視点から日 本の会計学の発展を跡づけていることにもつながっ ているようにも思える。  こうした書物の常で、過去から現代まで順に各学 者の考え方の要点を読み進めることがよいだろうが、 必要に応じて

19

人の中から自分が興味を持つ学者 の紹介から読み、その後、他の論者の考え方と比較 していく読み方もあるだろう。  実学である側面を意識し、学生諸君はとくに資格 取得のための一教科として簿記をとらえることも多い と思う。しかし、評者としては彼らにこそ、その根底に 実はどっしりと存在する理論なり学説を紹介する本 書を一読し、歴史研究なり学説研究としてそこに掲 げられる著作をさらに学習・研究してもらいたいと感 じるのである。 評/『彦根論叢』編集委員長/太田善之

(2)

新刊紹介 111 『日本・税務会計形成史  −法人税・企業会計・商法の関連性−』 矢内一好 著|中央経済社、2019、248pp.  本書は、日本の税務会計に関する事項について、 時代を所得税創設から第二次世界大戦終戦までの 第

1

期、終戦からシャウプ勧告後までの第

2

期、

1965

年の法人税の全文改正前後の第

3

期、そして平成に おける改正動向をあつかう第

4

期に区分して検討し、 最終的には、現在における法人税法と企業会計等 の関係を分析することを目的とする。  本書の特徴は、法人税の課税所得計算の進展に 関与した者として、その分野における強い発言力を 持つ、いわゆる「メインプレイヤー」の言ないし著作 を多く参考にしていることである。税務会計という領 域では、法律家や会計学研究者(会計専門家)が関 わることはもちろんのこと、それ以上に税法全般を含 む立法や実務作業という技術的側面に携わる官庁 勤務の公務員とその退職者から構成される国税関 係者、税理士、経理担当者などの実務家の意見とそ の考え方が重要である。したがって彼らの手になる 膨大な資料にもとづき、微妙に変化しつつある法人 税法、企業会計、商法(から会社法)の三者の力関係 を明らかにしている点に特筆すべき点がある。  本書の内容は、一会計学研究者である評者の視 点から見ても参考になることが多かった。その一端 を紹介すれば、第

9

章や第

10

章などにまとめられる

1967

年の税制改正により創設された法人税法第

22

条第

4

項の、いわゆる「公正処理基準」に至るまでの 経緯とその意義が、

1974

年の商法改正によって規定 された商法第

32

条第

2

項の「斟酌規定」、その後の 会社法第

431

条の制定の流れの中で読み砕くことが できるという点である。  さらにもう少し掘り下げて論究すべきと思われる 箇所があったり、論述の重複がみられる箇所が散見 されるが、税務会計を研究する者のみならず、広く企 業会計や商法に関連する分野を学習・研究する方々 に勧めたい書物である。   評/『彦根論叢』編集委員長/太田善之

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