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(1)

北関東における有用微生物の探索

著者名(日)

三浦 健

雑誌名

工業技術 : 東洋大学工業技術研究所報告

32

ページ

70-71

発行年

2010

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00002064/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止

http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

◆◆技術報告◆◆

北関東における有用微生物の探索

三浦 健*

1.はじめに

 「微生物は、私たちの生活でどのように利用されています か?」と質問されたとき、皆さんだったら、どのように答えま すか?身近なところで、食吊・飲料、医薬品、エネルギーなど が思い浮かぶと思います。そのような微生物は、我々が生活し ている環境は、もちろんのこと、深海、地殻内、温泉などの我々 が暮らすことのできない極限環境にも多く生存している。残念 なことに、これまで発見されているのは、ほんの一握りである。 これまで、深海、地殻内から多くの微生物の取得に成功してき た。深海は、暗黒・低温・高水圧という“死の世界”というイメー ジがあるが、深海は、数百度ちかくの熱水と多くの重金属が吹 き出ている熱水噴出域や未知生物など“活動的な場所”も存在 する。その深海底泥からジュースの澱であるペクチンを分解す る深海酵母、高濃度銅イオン(50mM)存在下でも生存可能 な深海酵母など多くの微生物の取得に成功してきた。また、地 殻内は、酸素が少ないため、好気性微生物は生存していないと 言われてきた。しかし、地殻内コアサンプルから、直接、酵素 活性を検出することで好気微生物の存在を明らかにし、多くの 微生物の取得に成功した。その中には、プロテアーゼ、アミラー ゼ、キシラナーゼおよびアルギナーゼなどの有用酵素を産生す る微生物が多く見られ、非常に興味深い結果である。このよう に深海、地殻内は、未だ多くの未知な有用微生物が存在してお り、沢山の宝が眠っている可能性が高い。今年3月に、地球 深部探査船“ちきゅう”に乗船し駿河湾沖から採取した“地殻 内コアサンプル(60ヶ)”や7月に深海泥採取装置により採

取した“世界最深部であるマリアナ海溝の底泥サンプル

(14ヶ)”を所有しており、その中から、有用微生物を分離し 保存を行っている。  また、特殊な環境だけではなく、我々の身近な場所からも有 用微生物の取得を試みている。北関東は様々な自然に囲まれ、 湿地帯があり、多くの温泉もある。現在、板倉キャンパス内の 新実験棟の建築にともない行われた地質調査により得られたコ

アサンプル(掘削深度:5m∼38.75m)を用いて、有用微

生物の発見を試みている。まず、コアサンプル中に酵素活性を 検出することで、微生物の活動を明らかにした。地質調査コア サンプル(8箇所)中に存在する酵素活性を検出するために、 コアサンプルを3%NaCl(pH 7)で懸濁し遠心分離後、その 上清を用いて酵素検出キット(アピザイム)に供し、30℃、 18時間の反応を行った。また、過酸化水素水を用いた気泡発 生の有無によりカタラーゼ活性を検出した。チトクローム・オ キシダーゼ活性は試験紙を用いた。8箇所のコアサンプルに よって強弱はあるものの、全てのコアサンプル中において、酸 性ホスファターゼ、ナフトールーAS一フォスフォヒドロラー ゼ、カタラーゼおよびチトクローム・オキシダーゼが検出でき た。その中で、深度10mではエステラーゼ(C4)、エステラー ゼリパーゼ(C8)、リパーゼ(Cl4)なども検出でき、好気性 菌が活動していることが示唆された。一方、深度30mでは、 低い活性しか検出されなかった。そこで、次に、3%NaCl(pH 7)で各コアサンプルを懸濁し、ニュートリエント寒天培地 (pH4、7、10)に塗布し、30℃において3日間培養を行い、 生育したコロニー数を計測し、生菌数を確認した。深度10m が最も存在しており、pH7で、1ぴcells/cm・”オーダーの生菌 数が確認された。ほとんどの深度において、酸性よりアルカ リ性で増殖可能な微生物が多く見られた(図1)。出現したコ ロニーは、様々な色、形状をしたバクテリア、カビなどが見 られた(図2)。しかし、30、35mでは、酵素活性が検出さ れたにもかかわらず、pH4∼10で、ほとんどコロニーの出 現が見られなかった。そこで、pH4、10に調製した3%NaCl を用いて、30、35mコアサンプルを懸濁したところ、35 m では、中性からアルカリ性の培地で、コロニーの形成が見られ、 微生物の活動が明らかとなった。しかし、30mにおいては、 酵素活性がほとんど検出されず、微生物の活動がないことが 示唆された。  次に、各コアサンプルから様々な色、形状をしたコロニーを 選抜し、純化された好気性細菌(155株)の生産する酵素に ついて、ニュートリント寒天培地を用いたプレートアッセイ法 により、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、キシラナーゼ、 セルラーゼ等の生産の有無を調べた。また、カタラーゼ、チト クローム・オキシダーゼ活性は、コアサンプル中の酵素活性を 検出した時と同様な方法を用いた。深度に関係なく、ほとんど の好気性菌が、カタラーゼおよびチトクローム・オキシダーゼ を生産していた。プレートアッセイ法により、80%の好気性 菌がプロテアーゼを生産し、リパーゼ、アミラーゼ、キシラナー *

一70一

東洋大学工業技術研究所報告

(3)

三浦 健

ゼなどを生産する好気性菌が見出された。  このように、様々な環境から有用微生物を取得、保存してい る。将来、我々が発見した微生物を利用して、応用・開発研究 を地域産業と共同研究を行うことができるのではないかと考え ている。

CFU(cells/cm3)

︵∈︶

5

10

15

20

25

30

35

38.75

0

103

1◎6

109

図1.地質調査コアの深度別生菌数

■ pH4

■pH7

■pHIO

図2板倉キャンパスの地質調査コア中の微生物 工業技術No 32(2010)

一71一

参照

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