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論文審査の要旨

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Academic year: 2021

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論文審査の要旨 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 教育学 )

氏名 権 田 あ ず さ 学位授与の要件 学位規則第4条第1・2項該当

論 文 題 目

母親の対児行動と子どもの対人行動との関連

−幼稚園登園場面の縦断的観察を通して−

論文審査担当者

主 査 教授 今川 真治 審査委員 教授 平田 道憲 審査委員 教授 柴 静子 審査委員 教授 七木田 敦

〔論文審査の要旨〕

本論文は,幼稚園の登園場面で観察される母親の対児行動と,幼稚園の自由遊び場面におけ る子どもの対人行動の特徴を,行動観察と分析の手法を用いて明らかにし,母親の対児行動と 子どもの対人行動,特に向社会的行動との関連を検証することを目的としている。

本論文は5章で構成されており,第1章「序論 研究の背景と目的」に続いて,第2章「研 究1 日常的な母子のかかわりと母親の対児感情」,第3章「研究2 幼稚園登園場面における 母親の対児行動」,第4章「研究3 幼稚園自由遊び場面における子どもの対人行動と母親の対 児行動との関連」において,行動観察法(ビデオを用いた観察と直接観察)と分析法(統計的手 法を含む)を用いた実証的研究がなされ,第5章「総合論議」で研究の成果が論じられている。

第1章は4つの節から構成されている。第1節「親子のアタッチメント」では,先行研究を 検討し,アタッチメントの形成に係わる要因の中で,特に身体接触の重要性について述べてい る。第2節「集団保育場面における子どもの対人行動の発達と母親との関係」では,幼児期の 子どもの対人行動の発達に係わる,母親の養育態度や母親とのアタッチメントの様相につい て,先行研究の動向をまとめている。第3節「幼稚園の登園場面における母親の役割」では,

幼稚園の登園場面が母子の社会的分離場面であることを示し,本研究が登園場面に着目した理 由と意義を述べている。第4節「本研究の目的」では,以上のような背景を踏まえて,登園場 面における母親の行動と,自由遊び場面における子どもの行動に関連があるかを検証するとい う,本研究の目的を述べている。

第2章は3つの節から構成されている。第1節「幼稚園3歳児の日常的な母子のかかわりと 園生活の進行に伴う母親の気持ちの変化」では,わが子を初めて集団保育の場に預ける3歳児 の母親が,家庭内で日常的に子どもにどのような世話行動を行い,どの程度一緒に行動してい るのかを,質問紙によって検討した。その結果,子どもが第1子であり子どもと離れることに 対して強いさみしさを感じていた母親は,日常的な子どもとの共行動の頻度が高かった。第2 節「5歳児に対する母親の日常的なかかわりかけ−3歳時と比較して−」では,5歳となった子 どもに対して,母親が家庭でどのようなかかわりかけを行っているのか,その特徴を子どもの 3歳時と比較した。その結果,母親の世話行動と共行動の頻度は3歳時と比較して大きく低下 した。第3節「子どもの3歳時と5歳時における母親の対児感情」では,母親が自分の子ども

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に対して抱いている感情を3歳時と5歳時とで比較検証し,母親の対児感情には有意な変化が 認められないことを明らかにした。

第3章は2つの節から構成されている。第1節「幼稚園3歳児の登園場面における母親の対 児行動」では,幼稚園入園から間もない3歳児の登園場面において,母親がどのような対児行 動を表出しているかを観察し,分析した。その結果,母親は,登園してすぐの時間帯には世話 行動を多く行い,子どもとの分離前には,愛情表出行動(なでる,抱きしめるなど)と分離時特 有の行動(手をふる,あいさつするなど)を多く行っていた。また,一人っ子の子どもの母親は 対児行動が多く,その中でも月齢が小さい子どもの母親では,対児行動の出現頻度がより高か った。第2節「幼稚園5歳児の登園場面における母親の対児行動−3歳時との比較−」では,前 節と同じ母子を対象に,子どもの5歳時における登園場面の母親の対児行動を観察し,分析し た。その結果,母親の愛情表出行動と世話行動は,3歳時と比較して5歳時では減少したが,

分離時特有の行動は減少しなかった。このことから,あいさつを中心とした分離時特有の行動 は,子どもがアタッチメントを母親から他者へと一時的に切り替えるために重要な行動であ り,母親がそれを有効に利用していると結論づけた。

第4章は2つの節から構成されている。第1節「3歳時と5歳時における自由遊び場面の子 どもの対人行動」では,子どもの3歳時と5歳時に,幼稚園の自由遊び場面における子どもの 対人行動,特に他児への向社会的行動の出現の様相を観察し,分析した。その結果,3歳時に 他児に対する向社会的行動を表出した子どもは,5歳時においても向社会的行動を表出する傾 向がみられた。また,向社会的行動を多く示す子どもは,表出する向社会的行動の種類も多様 であった。第2節「母親の対児行動と子どもの対人行動との関連」では,登園場面で母親が子 どもに示した行動の生起と,自由遊び場面で子どもが表出した対人行動の質や量に関連がある かを検討した。その結果,3歳時には,世話行動が少なく,愛情表出行動と分離時特有の行動 を多く表出した母親の子どもに,向社会的行動が多く観察された。5歳時では,愛情表出行動 が多いか,分離時特有の行動が多い母親の子どもに,向社会的行動が多く観察された。

第5章「総合論議」では,主に母親の行動と子どもの行動との関連について,研究1,研究 2および研究3で得られた結果から本研究の成果と今後の展望を述べている。

本論文は,以下の点において高く評価することができる。

(1)子どもが幼稚園に入園した直後からの3歳時と,入園から2年を経過した5歳時の登園 場面と自由遊び場面を,行動観察の手法を用いて長期間縦断的に観察し,定量的に分析 することで,母親の対児行動と子どもの対人行動のそれぞれにおける発達的変化と不変 性,およびそれら相互の関連性を明らかにしたこと。

(2)登園場面において,子どもとの分離の際に母親が子どもに向ける愛情表出行動とあいさ つ行動が,母子の円滑な分離に重要な役割を担うことを見いだしたこと。

(3)登園時に愛情表出行動やあいさつ行動が多い母親の子どもに向社会的行動が多いなど,

登園場面の母親の対児行動と,自由遊び場面の子どもの対人行動との関連を示したこと。

以上,審査の結果,本論文の著者は博士(教育学)の学位を授与される十分な資格があるも のと認められる。

平成 25 年 7 月 1 日

参照

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