博 士 ( 農 学 ) 荒 木 和 秋
学 位 論 文 題 名
北 海道 酪農 にお ける
畜産的 土地利用方式の展開に関する実証的研究 学位論 文内容の要旨
本 論文 は 、7章 か らな る 総頁 数264ベ ージ の 和文 論 文で ある 。図51、表 124お よ び和 文52の 引用 文献、 参考文献を含み 、他に参考論 文10編が添え られている。
北海道酪農は1960年 〜 90年の間に飛躍的な発展を遂げた。その要因とし て、草地面積の増大と制度資金による畜舎、施設、機械等への投資が活発に行わ れ、かつ絶え間ない技術革新が行われたことによる。しかし、規模拡大のスビー ド が 余 り に も 急 激 で あ っ た た め 、 様 々 な 問 題 が 発 生 す るこ と にな る 。 これらの問題に対しては多くの調査研究が行われてきたものの、ややもすれば 地域別の静態的な把握にとどまり、全道的、動態的把握が不十分であったため北 海道酪農の生産構造把握が明確になっていなかった。また分析対象となった酪農 地帯の位置づけが不明確であった。
本研究では、 これらの反省 に立って1960年以降、 特に70年以降の北海道 酪農の発展のメカニズムの解明を行うなかで北海道酪農の生産構造の特質を明ら か に し 、 今 後 の 北 海 道 酪 農 の 展 望 を 示 す こ と を 目 的 と し て い る 。 第1章では1960年以降の北海道酪農の展開と課題接近への視角を提示する。
北海道酪農の時代区分は大きくIま、70年代までの草地開発期と80年代の草地 整備期に分けることができる。また、サイレージと配合飼料の給与が増加する一 方、生牧草、乾牧草が減少するという飼料構造の変化は、生乳生産の年間平準化 という生乳の生産構造の変化をもたらす。さらに、生産主体の大きな階層変動を みることができる。以上のような生産構造の変化を伴いながら、北海道酪農の生 産基盤は70年代後半に形成されたことが明らかになった。さらに、北海道酪農 の生産構造を解明するためには、酪農経営を飼料生産部門と飼養管理部門の循環 的複合体とみなし、土地基盤、自給飼料生産、自給飼料の調製・利用、家畜飼養 という一連の技術体系を畜産経営の観点から組織的に統合した畜産的土地利用方 式が有効であることを指摘し、それを踏まえて北海道酪農の類型区分を行い、草
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地型夏期放牧型、草地型通年舎飼型、畑地型通年舎飼型の三つの設定を行った。
第2章では北海道酪農の生産カの展開と再生産構造および生産構造の変動概況 の把握を行った。北海道酪農の生産カの展開は70年代中盤までは「省力偏進型」
の展開であり、それ以降は「省力個体乳量併進型」へと大きな展開をみせるが、
その経済的背景として固定資本収益率の低下が、技術的背景として濃厚飼料給与 量の増大がそれぞれ強く働いていることが明らかになった。また、頭数規模と個 体乳量の増加スピ―ドの違いによって地域分化が生じ、全道的傾向として75年 以降頭数規模拡大よりも個体乳量の増加率が相対的に早くなっていることを明ら かにした。
そして、第3章から第6章は第1、2章の課題、分析視角および全道の統計分 析の結果を踏まえて、実態調査を行うことで具体的な実証を行った部分である。
第3章「草地型夏期放牧型酪農の実態分析」では宗谷支庁管内稚内市を取り上 げ、道内で最も不利な土地条件のもとで土地基盤の改良を行うと同時に放牧を生 かした初妊牛販売を行っている宗谷酪農の生産構造の特質を明らかにした。また 泥炭地の改良、放牧用品種であるペレニアルライグラスの栽培、電牧利用による 集約放牧、季節分娩および育成牛の冬期放牧を組合せた新たな畜産的土地利用方 式 の 構 築 が 行 ・ わ れ て い る 事 例 に つ い て の 普 遍 性 の 検 討 を 行 っ た 。 第4章「草地型夏期放牧型(育成牛預託)の実態分析」では釧路支庁浜中町を 取り上げ、大規模経営の経営構造を明らかにし、家族経営が労力的にも資本装備 の面においても限界に達していることを明らかにし、その補完的機能を果たして いる酪農支援システム〓地域的畜産的土地利用方式の重要性の指摘と機能の把握 を行った。特に、新規入植者を卜レーニングし、離農跡地に入植させる就農者研 修牧場の畜産的土地利用方式を継承、発展させる仕組み等、今後の北海道酪農の 発展にとって重要な仕組みであることを明らかにした。
第5章「草地型通年舎飼型の実態分析」では根室支庁管内別海町にある新酪農 村を取り上げ、建売型農場制農業の評価を行った。ここでは近代酪農技術の枠を 集め、かつ事前にセットされた畜産的土地利用方式が、地域の気象条件の影響も あって牧草調製共同作業組織の解散、スチ―ルサイロ・自動給餌機というサイレ ージ給与の機械化一貫体系の崩壊によって十分な生産カを発揮しないまま再編を 余儀なくさせられている。また、規模拡大における土地基盤、施設規模の限界に よって、新たな土地問題、施設問題が生じている。さらに、土地条件の悪さが生 産効率を低下させ負債累積に拍車をかけ、酪農生産カのゆがみをもたらすという 新酪農村の生産構造を明らかにした。
第6章「畑地型通年舎飼型の実態分析」では、十勝支庁管内にある中札内村と 上士幌町を取り上げ、高泌乳酪農における畜産的土地利用方式の展開を明らかに
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した。中札内村での濃厚飼料多給の高泌乳酪農が、単当栄養収量の高いデントコ
―ンの作付の増加と放牧地、兼用地の減少を促すという土地利用の規定を行って いる一方、上士幌町での自給飼料調製技術の革新と飼料生産の集約化が高泌乳を 結果すると。ヽうニつの畜産的土地利用方式の流れを解明した。また、中札内村で の高泌乳酪農を可能としている条件として機械センターへの自給飼科調製の委託 と公共育成牧場への育成牛の預託によって、労働カの飼養管理部門への集中を可 能 にし てい る等 、地域 的、 集団 的畜 産的土 地利用方式の機能を明らかにした。
第7章 では、 調査対象地の位置づけを通して展開類型との組合せによって北海 道酪農の発展段階区分を行うとともに、酪農単一経営の展開論理を明らかにした。
また、これまでの北海道酪農における畜産的土地利用方式の評価を行い、技術導 入のあり方、生産性追求のあり方、収益性との関係についての問題点の指摘を行 った。そして、北海道酪農の今後の発展にとっては、それぞれの地域資源を生か し な が ら 、 畜 産 的 土 地 利 用 方式 の 高度化 を図 る必 要が あるこ とを 指摘 した。
以上、本研究は北海道酪農の展開構造を畜産的土地利用方式という新しい総合 的な観点から解明し、さらに主要酪農地帯の生産構造を分析するとともに北海道 酪農の類型区分および発展段階の位置づけを行った。このような観点からの北海 道酪農の生産構造についての克明な実態調査にもとづく把握分析は、構造把握の 方法として極めて独創的であると同時に、今後の北海道酪農の発展に対して多く の実践的な示唆を与えるものである。
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学位論文審査の要旨 主査
副査 副査
教授 教授 教授
七戸 黒柳 太田原
長生 俊雄 高昭
学 位論 文 題 名
北 海 道 酪農 に お け る 畜 産 的 土 地 利 用 方 式の 展開 に関 する 実証 的研究
本 論 文 は 、 7章 か ら な る 総 頁 数264ベ ー ジ の 和 文 論 文 で あ る 。 図51、 表l 24お よ び 和 文 52の 引 用 文 献 、 参 考 文 献 を 含 み 、 他 に 参 考 論 文10編 が 添 え ら れ て い る 。
北 海 道 酪 農 は1960年 〜 90年 の 間 に 飛 躍 的 な 発 展 を 遂 げ た 。 そ の 要 因 と し て は 草 地 面 積 の 増 大 と 制 度 資 金 に よ る 畜舎 、 施 設 、 機 械 等 へ の 投 資 が 活発 に行 わ れ 、 か つ 絶 え 間 な い 技 術 革 新 が 行 わ れ たこ と が 挙 げ ら れ る 。 し か し 、 規模 拡大 の ス ピ ― ド が 余 り に も 急 激 で あ っ た た め 様々 な 問 題 が 発 生 し 、 こ れ ら の 問題 に対 し て は 多 く の 調 査 研 究 が 行 わ れ て き た も のの 、 や や も す れ ば 地 域 別 、 静 態的 な把 握 に と ど ま り 、 全 道 的 、 動 態 的 把 握 が ウ ィー ク で あ っ た た め 北 海 道 酪 農 の生 産構 造 把 握 が 不 十 分 で あ っ た し 、 分 析 対 象 と なっ た 酪 農 地 帯 の 位 置 づ け も 不 明確 であ っ た 。 そ こ で 本 研 究 で は 、1960年 以 降 、 特 に70年 以 降 の 北 海 道 酪 農 の 発 展 の メ カ ニ ズ ム の 解 明 を 行 う な か で 北 海 道 酪農 の 生 産 構 造 の 特 質 を 明 ら か にし 、今 後 の 北 海 道 酪 農 の 展 望 を 示 す こ と が 目 的 とさ れ た 。
第1章 で は1960年 以 降 の 北 海 道 酪 農 の 展 開 と 課 題 接 近 へ の 視 角 を 提 示 す る 。 北 海 道 酪 農 の 時 代 区 分 は 大 き く は 、70年 代 ま で の 草 地 開 発 期 と80年 代 の 草 地 整 備 期 に 分 け る こ と が で き る 。 ま た 、 北 海 道 酪 農 の 生 産 基 盤 は70年 代 後半 に 形 成 さ れ た こ と が 明 ら か に な っ た 。 さ ら に、 北 海 道 酪 農 の 生 産 構 造 を 解 明す るた め に は 、 酪 農 経 営 を 飼 料 生 産 部 門 と 飼 養 管理 部 門 の 循 環 的 複 合 体 と み な し、 土地 基 盤 、 自 給 飼 料 生 産 、 自 給 飼 料 の 調 製 ・ 利用 、 家 畜 飼 養 と い う 一 連 の 技 術体 系を 畜 産 経 営 の 観 点 か ら 組 織 的 に 統 合 し た 畜 産的 土 地 利 用 方 式 の 観 点 が 有 効 であ るこ と を 指 摘 し 、 そ れ を 踏 ま え て 北 海 道 酪 農 の類 型 区 分 を 行 い 、 草 地 型 夏 期 放牧 型、 草 地 型 通 年 舎 飼 型 、 畑 地 型 通 年 舎 飼 型 の 三 つ の 設 定 を 行 っ た 。 第2章 で は 北 海 道 酪 農 の 生 産 カ の 展 開 と 生 産 構 造 の 変 動 概 況 の 把 握 を 行っ た 。 北 海 道 酪 農 の 生 産 カ の 展 開 は70年 代 中 盤 ま で は 「 省 力 偏 進 型 」 の 展 開 であ り 、
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それ以降は「省力・高泌乳追求併進型」へと大きな展開をみせるが、その経済的 背景としては固定資本収益率の低下が、技術的背景としては濃厚飼料給与量の増 大がそれぞれ強く働いていることを明らかにした。
第3章 「草 地型 夏期 放牧型酪農の実態分析」では宗谷支庁管内稚内市を取り上 げ、道内で最も不利な土地条件のもとで土地基盤の改良を行うと同時に放牧を生 かした宗谷酪農の生産構造の特質を明らかにした。また新たな畜産的土地利用方 式 の 構 築 が 行 わ れ て い る 事 例 に つ い て の 普 遍 性 の 検 討 を 行 っ た 。 第4章 「草 地型 夏期 放牧型(育成牛預託)の実態分析」では釧路支庁管内浜中 町を取り上げ、大規模経営の経営構造を明らかにし、家族経営が労力的にも資本 装備の面においても限界に達していることを明らかにし、その補完的機能を果た している酪農支援システム=地域的畜産的土地利用方式の重要性の指摘と機能の 把握を行った。
第5章 「草 地型 通年 舎飼型の実態分析」では根室支庁管内別海町にある新酪農 村を取り上げ、建売型農場制農業の評価を行った。ここでは近代酪農技術の粋を 集め、かつ事前にセットされた畜産的土地利用方式が、再編を余儀なくさせられ ている原因の究明を行った。
第6章 「畑 地型 通年 舎飼型の実態分析」では、十勝支庁管内にある中札内朽と 上士幌町を取り上げ、高泌乳酪農における畜産的土地利用方式の展開を明らかに した。中札内村での濃厚飼料多給の高泌乳酪農が、土地利用の集約化を行う一方、
上士幌町での自給飼料調製技術の革新と飼料生産の集約化が高泌乳を結果すると いうニっの畜産的土地利用方式の流れを解明した。
第7章 では 、北 海道 酪農の発展段階区分を行うとともに、酪農単一経営の展開 論理を明らかにした。また、これまでの北海道酪農における畜産的土地利用方式 の評価を行い、北海道酪農の今後の発展にとっては、それぞれの地域資源を生か し な が ら 、畜 産 的 土 地 利 用 方 式 の 高 度 化を 図る 必要が ある こと を指摘 した 。 以上、本研究は北海道酪農の展開構造を畜産的土地利用方式という新しい総合 的な,視点から解明し、さらに主要酪農地帯の生産構造を分析するとともに北海道 酪農の類型区分および発展段階の位置づけを行った。このような観点からの北海 道酪農の生産構造についての克明な実態調査にもとづく把握分析は、構造把握の 研究方法として極めて独創的であると同時に、今後の北海道酪農の発展に対して 多くの実践的な示唆を与えるものである。
よって審査員一同は、別に行った学力確認試験の結果と合わせて、本論文の提 出者、荒木和秋は博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格があるものと認定 した。
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