自
筆
鈔
・他
筆
鈔
・積
学
鈔
の
特
徴
稲
葉
日 疋に
手
西 山 上 人 の 教 学 の特
徴 に 、 そ の 特 殊 名 目 及 び 用 語 の使
用 の変
化 が あ る 。 仁 空 実 導 上 人 の 「浄
土 希 聞 鈔 」 巻 第 一 に 、 「 西 山 上 入 法 門 ヲ 被 談 取 寄 名 目 始 中 終 ガ ア ル ナ リ 。初
ツ カ タ ハ 行 門 、 観 門 、 弘 願 ノ 三 ノ 謂 ニ テ 被 談 。 御 自筆
ノ 抄 ナ ン ド ハ 此 趣 ナ リ 。 中 比 ハ 顕 行 ・ 示 観、 正 因 ・ 正行
ナ ン ト 云 名 目 ヲ 被 用 。 他 筆 ノ 御 抄 等 ハ 専 此約
束 ヲ 以 テ 被 沙 汰、 終 リ サ マ ハ 三 重 亠 ハ 義 他 。 正 因 正 行 ノ名
目 ハ 後 マ デ被
通 用 。 此 則 法門
ノ 建 立 自 麁 至 細 見 ヘ タ リ 。 … … … 」 と あ っ て 、 西山
上 入 の 教 学 の被
談 に 使 用 さ れ る 特 殊 名 目 の 特 徴 を も っ て 始 ・ 中 ・ 終 の あ る こ と を 定義
す る 。 始 は 、 自 筆 鈔 に お け る行
門
. 観 門 . 弘 願 の 名 目 に よ る 展 開 、 中 は 、 他 筆 鈔 に け る 顕 行 ・ 示 観 、 正 因 ・ 正行
の 名 目 に よ る 展 開 、終
は 、 三 重 亠 ハ 義 の 展 開 と し て 受 け 止 め て い る 。 同 じ く 仁 空実
導
上 人 の 「 西 山 上 入 縁 起 」 巻 三 の 西 山 上 入 臨終
の 宝 治 元 年 十 一 月 に さ い し て の 記 述 の中
に 、 「 同 二 十 三 日 、 既 に 時 至 る と や 思 い給
い け ん 、 清 浄 の内
衣 を 服 し 鬱 多 羅僧
を 著 し て終
焉 を 待 た れ け る が 、今
夜 も 観 経 玄 義 分 定 散 料 簡 の 義 を 指 授 せ ら れ け り … … … 」 或 い は 法 然 上 人 四 十 八 巻 伝第
四 十 八 に、 自 筆 鈔 ・ 他 筆 鈔 ・ 積 学 鈔 の 特 徴西 山 学 報 「 … … … 二 十 三 日 は
清
浄
の 内 衣 を着
し 、 大 衣 を か け て 定 散 両 門 の義
を さ づ け − … ・ … 」 と あ る こ と か ら 始 ・中
・終
の 終 の 三 重 六義
の 展 開 は 現 存 す る 「 定 散 料 簡 義 」 を 指 す も の と 考 え ら れ る 。 と こ ろ が 、 西 山 上 入 の 著 述 に 関 し て は、 同 じ く仁
空 実 導 上 入 の 「 西 山 上 入 縁 起 」 巻 五 に 、 「 師 匠 の 所 持 し け る 西 山 他 筆 の 御抄
を 乞 ひ 請 け て 、 あ け く れ 披 見 せ ら れ け る 程 に 、 … … … 」 「 祖師
の 自 筆 の 御 抄 、 な ら び に積
学
抄 を ば、 當 寺 に て は じ め て披
閲 し 給 ひ け れ ば 、 : : ・ : … … : 。 た だ 蔵 に み ち、箱
に み て る 祖 上 人 の 御 抄、 な ら ひ に 積 学 坊 の 遺 書 等 を 披 覧 し て 、 … … … 」 「 さ れ ば 一 生 涯 聴 聞 の 趣 き を の こ さ ず 、 五 部 九 巻 に わ た り て 書 き を き た る抄
物 あ り 。積
学
坊 抄 と な つ く 。 上 人 の 御 抄 に 自 筆 他 筆 な ど と て あ る も 、 最 後 の こ ろ の 御 己 証 を ば 載 ら れ ざ る に 、 此 積 学抄
に は つ ぶ さ に こ れ を し る せ り 。 後 代 の龜
鏡
と 申 し ぬ べ し 。 … … … 」 と 記 さ れ て お り 、「 西 山 上 人 の 最 後 の こ ろ の 御 己 証 」 、 即 ち 終 の 教 学 は 積 学 鈔 に も 展 開 さ れ て い る こ と に な る 。 こ の 始 ・
中
・ 終 の 教学
の 比 較 を よ り 鮮 明 に す る た め 、 こ こ に 善 導 の観
経
疏 に 対 す る 西 山 上 入 の 自 筆 鈔 ・ 他 筆 鈔 ・ 積 学 鈔 に 中 に 駆 使 さ れ て い る 特 殊 名 目 及 び 術 語 の 使 用頻
度 あ る い は 使 用 方 法 等 の 特 徴 を 整 理 し 、 こ の 三 部 の 鈔 の 思 想 的 展 開 、 即 ち 西 山 上 人 の始
・ 中 ・ 終 の教
学
の 変 化 を考
察
す る 。今
日 に は 、 法事
讃 を 除 く 四 部 七 巻 の 自 筆 鈔 、 は そ れ ら の 特 徴 を 整 理 す る 。 観 経 疏 の 他 筆 鈔 、 観 経 疏 及 び 法事
讃
の積
学 鈔 が 現 存 し て い る 。 ま ず( 一 )
自
筆
鈔
自 筆 鈔 は 、 行 門 ・ 観 門 ・ 弘 願 の 三 門 の 特 殊 名 目 を 駆 使 す る 。 そ の 使 用 形 態 は 、 ω単
一 の 使 用 、 ω 対 比 し て の 使 用 、 組 み 合 わ せ の 使 用 、 と 分 類 で き る 。 こ こ に そ の 代 表 的 な 部 分 を 抽 出 し て み る 。単
一 の 使 用 例 行 門 自 力行
門 聖 道 行 門行 門 の
執
行
門 の 迷 行 門 の 法 行 門 の 益 漸 頓 の 行 門 娑 婆 入 道 の 行門
行 門 側 行 の 乱 想行 門 の 貪 取
行 門 の 行 相 行 門 の 菩 提 心 観 門 他 力 観 門 浄 土 観
門
観 門 の 教 主
観 門 の
悟
り 観 門 の 仏 心 観 門 の 受 法観
門 の 意観 門 の 道 理 能 詮 の 観 門 釈 迦 の 観 門 観
門
と い は 用 な り 釈 迦 観 門 欣慕
の 法 弘 願 弘 願 の 行 相 弘 願 の 冖 念弘 願 の
仏
心弘 願 の 体 弘 願 →
身
の 法 弘 願 一 乗 海 の 舟 弘 願 の 舟 弘 願 教 弥 陀 の 弘 願弘 願 と い は 体 な り
弥 陀 の 本 願 正 し き 弘 願 の 体 な り 働 対 比 し て 使 用 す る 例
行
門
と 観 門行
門 の 法 を 説 き て 観 門 の 由 序 と す る 自 筆 鈔 ・ 他 筆 鈔 ・ 積 学 鈔 の 特 徴3
西 山 学 報 行 門 の 衆 を 勧 め て 観 門 の 衆 に 入 ら し め ん 行 門 の 成 じ 難 き を 挙 げ て 浄 土 の 観 門 の 入 り 易 き … : … .
行
門 の 心 を 捨 て て 釈 迦 観 門 の仏
力 に 依 り て … : : :行
門 を 捨 て て 観 門 を 説 く 観 門 に 依 り て 行 門 に よ ら ざ れ と 勧 む る 今 の 観 門 を も っ て 彼 の 諸 経 の 行 門 に 相 対 し て 出 離 の 道 唯 こ の 一 門 な る こ と を 顕 す 今 の 観 門 の 心 を も っ て 釈 す れ ば 光 台 現 国 の 時 は 韋 提 な ほ 行 門 の 心 に 住 し て … … … 観 門 に依
り て 行 門 あ り 観 門 即 ち 行 門 を 成 ず彼
の行
門 の 諸 の 得 益 は 観 門 よ り 成 じ け り と い う こ と を 顕 し て … … …法
は行
門 の 法 な り 、 喩 は 観 門 の 喩 な り行
門 の 法 を 聞 く 功 に よ り て 今 日 の 観 門 を 聞 く組
み合
わ せ て 使 用 す る 例 ω観
門 か ら 弘 願観
門開
け ぬ れ ば 弘 願 顕 る観
門 よ り 弘 願 に帰
す る観
門 よ り 弘 願 成ず
’ 観 門 に よ り て 弘 願
開
く観
門
顕 れ て 弘 願 を 得 る 観 門 は 凡 夫 の為
に 弘 願 を 説 く 相 観 門 は 弘 願 を 離 れ ず 観 門 に 帰 依 す れ ば 弘 願 に 相 応 す 観 門 よ り 弘願
に帰
す れ ば 定 散 等 し く 浄 土 に 入 る 謂 立 つ弘 願 か ら 観 門 弘 願 を 開 き て 観 門 と す 弘 願 を 顕 す 観 門 弘 願 よ り
観
門
分 か れ て … … … 弘 願 は観
門
を 存 す る 弘 願 成 ぜ る に 依 り て 襯 門 の 道 理 を 得 る 弘 願 顕 れ て 凡夫
の 出離
成 ず る な り こ の 自 筆 鈔 開 講 は 師 法 然 上 人 滅 後 三 年 目 か ら 始 ま っ て い る 。 普 通 、 こ の 時 期 に は い ま だ 師 の 法然
上 人 の 薫 陶 の余
韻 が 残 る も の と 考 え ら れ る 。 先 の 仁 空 実 導 上 入 の 「 浄 土 希 聞 鈔 」 巻 第 一 に 、 「 凡 そ御
自 筆 の 抄 と は 法 然 上 人 の 口決
し 玉 へ る 趣 を先
づ 其 の ま ま に 記 し 置 か れ た る 書 な り と申
伝 た り 。 他 筆 の御
抄 以 下 は 此 口 伝 の 趣 き を 切 磋 琢磨
し て 微 細 に 義 理 を 成 じ て宗
旨
の 淵 源 を被
盡 に て あ る 也 。 」 自 筆 鈔 ・ 他 筆 鈔 ・ 積 学 鈔 の 特 徴 一 5 一西 山 学 報 と あ る の は
常
識 的 な 判断
で あ る 。 と こ ろ が 、 後 の 他 筆 鈔 や積
学
鈔
に は 法 然 上 人 を指
し 示 す 祖 師 上 人 あ る い は 選 択集
の名
前 が 登 場 し て く る も の の 、自
筆 鈔 の 実 際 の 文章
上 の表
現 に お い て は 全 く な い 。 こ の 疑 問 を解
く に は 、深
草 立 信 上 人 の 「 玄 義 深 草 鈔 」 に、 「 さ て 先 師 ( 西 山 上 人 ) の常
の 物 語 に は 、 我 所 立 の 法 門 は専
ら 故 上 人 ( 法 然 上 入 ) 相 承 の 外 に 別 の 秘 曲 な し 、 但 し 其 の 大旨
を 得 て 料 簡 を 加 へ た る こ と は我
稽 古 の 功 な り 。 」 と 述 べ て い る こ と の よ う に、 自筆
鈔 の 表 面 的 な 面 か ら の 判 断 で は な く 、 主 張 の 内 容 面 か ら の 教 義 継 承 を 探 る 必 要 が あ ろ う 。 そ れ で は そ の 法 然 上 人 の 教 義 継 承 を 匂 わ す も の を 見 て み よ う 。 自 筆 鈔 の 最 も特
徴
付
け る の は 行 門 ・ 観 門 ・ 弘 願 の 三 門 で あ る 。 こ れ は善
導 の 観経
疏 の 序 題 門 に お け る 娑婆
化
主 の 浄 土 之 要 門 即 ち定
散 二 善 と 安 楽 能 入 の 別 意 之 弘 願 と い う 観 経 の 分 析 か ら 、 法然
上 人 は そ の 著 述 の 三 部経
大 意 の 至 誠 心 釈 に 「 定 善 と散
善
と 弘 願 と の 三 門 」 と 迷 べ て 観経
を 理 解 し て い る 。 こ の 意 を汲
ん で 西 山 上 人 は 自 筆 鈔 に 於 い て 、 善 導 観 経 疏 序 分義
散善
顕 行 縁 釈 の 「 言 當 修 三 福 者 總標
行 門 也 」 の 文 と、 定 善示
観
縁
釈 の 「 言清
浄 者 依 下 観 門 専 心 念 仏 注 想 西 方 」 の 文 を も と に 行 門 ・ 観 門 の 名 目 を 導 き 出 し た も の で あ ろ う 。 こ の 二 門 は ω の 使 用 例 か ら も判
断 出 来 る よ う に、行
門 は 自力
修
行 門 の 諸 行法
門 を指
し 、 観 門 は 他 力 す な わ ち 凡 夫 救 済 力 つ ま り 弥 陀 の 弘 願 を 知 ら し あ る 観 経 定 散 二 善 法 門 を 指す
。 法然
上 入 の往
生 大 要 鈔 の 深 心 釈 に は 、 「 こ の 観 経 の 三 福 九 品 定 散 二善
を と き て 、 か の ほ と け の依
正 二報
を 證 讃 し て 、 人 を し て 欣 慕 せ し め 給 ふ 事 … … 」 ( 法 然 上 人 全 集 五 十 七 頁 ) と あ る こ と は、 ω の 「 釈 迦 観 門 欣 慕 の 法 」 に 受 け 継 が れ て お り 、 の 使 用 例 の よ う に 、 行 門 と観
門 を 対 比 さ せ な がら 行 門 の 聖
道
諸 経 の 教 え は 凡 夫 に 不 相 応 の も の と 訴 え て い る 。 こ の よ う な 「 行 門 を 捨 て て 観 門 を説
く 」 と い う 主 張 は 、 法 然 上 入 の 東 大 寺 に 於 け る 無 量 寿経
釈 や 観無
量 寿 経 釈 等 に 度 々 用 い ら れ る 、「 諸 行 を 廃 し て 念 仏 一 門 に 帰 す … … … 」 の
表
現 に 酷 似 し て い る 。 つ ま り、 法 然 上 人 の 選 択 集 に 貫 か れ て い る 諸行
と 念 仏 と の 廃 立 の 立 場 は 、 西 山 上 入 の 行 門 ・ 観 門 の 対 比 に 表 現 さ れ て い る 。 ま た 、 の 使 用 例 の よ う な 観 門 と 弘 願 の組
み合
わ せ は、 弘願
の 実体
の 存在
を 指 摘 す る た め に 観 門 が 観 経 に 施 設 さ れ て い る こ と を 示 す 。 法 然 上 人 の 三部
経
大 意 の 観 経 に た い す る 釈 の 、 「惣
テ 弥 陀 ノ 浄 土 ヲ 儲 給 事 ハ 、 願 力 ノ 成 就 ス ル 故 也 。 然 ラ バ 又 念 仏 ノ衆
生 ノ 正 ク ハ 生 ス ベ キ 國 土 也 。 乃 至 十 念若
不 生 者 不 取 正 覚 ト 立 給 テ 、 此騒
ニ ヨ リ 感得
シ 給 ヘ ル所
ノ 國 土 ナ ル ガ 故 ナ リ 。 」 ( 法 然 上 人 全 集 四十
四 頁 ) に 相当
す る 。 西 山 上 入 が 言 う と こ ろ の 能 詮 所 詮 関 係 の 観 門 弘 願 は 、 法 然 上 人 の 念 仏 一行
を 顕 し て い る 。 行 門 ・ 観 門 の 廃 立 の の ち の 観 門 か ら 弘 願 へ の移
行 は 、 釈 迦 が 説 き 示 す観
経 の 観 門 に よ っ て こ そ 、無
量寿
経 に 説 く と こ ろ の 法 蔵 の 十 八 願 を 中 心 と す る 四 十 六 願 成 就 の 体 、 即 ち 弥 陀 成 仏 の 実 体 で あ る 弘 願 の 存在
を 凡夫
に 領 解 せ し め る こ と の 出 来 る 関 係 を 説 く の で あ っ て 、 観 門 を 通 し て こ そ 凡 夫 救 済 力 の 弘 願 が 凡 夫 に 対 し て 生 き て く る こ と を 示 す 。 調 機 の 次 第 は 行 門 ・ 観 門 ・ 弘 願 と 進 め ら れ て い る 。 さ て 、 西 山 上 入 は 、 自 筆 鈔 玄 義 分 に 「 自 力行
門 を 以 て 垢 障 の 凡 夫 が 出 離 の 正 門 を 得 る 由 序 と す 」 と し て 、 観 門 を 領 解 す る に 至 ら な い 者 を 調 機 す る た め に 暫 く自
力 の 行 門 は 施 設 さ れ て い る 、 と し て い る が 、 更 に後
に講
述 さ れ た 般舟
讃 自 筆 鈔 に は 、 「 弘 願 の真
実 な る事
を 知 り 、仏
を 礼 し 浄 土 を 観 ず る 助業
を 存 し て 称名
の 正 行 を 成 ず べ し … … … 」、 自 筆 鈔 ・ 他 筆 鈔 ・ 積 学 鈔 の 特 徴 一 7 一西 山 学 報 あ る い は 、 「
自
力
行 門 の善
も つ い に 今 の 観 門 の 善 に帰
す と 心 う れ ば 一 切 の善
皆 相 応 の善
と と ら る べ し 」 、 と し て行
門 を 引 き 上 げ て い く 。「 弘 願 よ り 観 門 分 か れ て … … … 」 「 観 門 に 依 り て 行 門 あ り 」 の よ う に、 教 の 次 第 は 弘
願
・観
門 ・ 行 門 と 進 め ら れ て い く 。 さ き の 調 機 の 次 第 の 行 門 ・観
門 ・ 弘 願 と こ の 教 の 次第
の 弘 願 . 観 門 . 行 門 の 関 係 と あ わ せ て 、 行 門 ・ 観 門 ・ 弘 願 の 三門
は 鼎 関係
を さ す 。 こ れ は 、 法 然 上 入 の 選 択 集 第 四章
段
で の 廃 立 ・ 助 正 ・ 傍 正 の 三義
に お け る 「但
此 等 三 義 殿 最 難知
」 や 、 さ ら に は 第 十 亠 ハ章
段 の 総結
三 選 の 文 の 、 「夫
速 欲 離 生 死 二種
勝 報 中 且 閣 聖 道 門 選 入 浄 土 門 欲 入浄
土 門 正 雑 二 行 中 且 抛 諸雑
行 選 応 帰 正 行 欲 修於
正 行 正 助 二 業 中 猶 傍 於 助 業 選 応専
正 定 … … … 」 に お け る 「 且 」 「 猶 」 の 言 葉 に含
み が あ る こ と に 対 す る 追 補 の 感 が あ る 。 ま た 、 こ の 三 例 の 中 、 ω ・ の よ う な行
門 に 関 す る 使 用 頻 度 を 見 て み る と 、 観 経 疏 自筆
鈔 に お い て は 例 を あ げ た よ う に 度 々 使 用 さ れ る も の の 、 観 経 疏 自筆
鈔 の 講 説 の 後 に 引 き 続 き 講説
さ れ た 具 疏 の 観 念 法 門 . 般舟
讃 . 往 生 礼 讃 自 筆 鈔 に お い て は 非 常 に 使 用 例 は 少 な く な り 、 観 念 法 門自
筆 鈔 で は 一 回 、 般 舟 讃 自 筆 鈔 で は 三 回 、 往 生 礼 讃 自 筆 鈔 で は 一 回 の 使 用 、 と い う 頑 度 の ア ン バ ラ ン ス が あ る 。 こ れ は 観 経 疏 自筆
鈔 の 講 説 に よ っ て 既 に 五 種 正 行 の 行為
は 弘 願 を 通 し て の行
為
で あ り 、自
力 の 行門
の 立 場 は 具 疏 に は 存 在 し な い 前 提 に よ る も の だ か ら で あ り 、 観 経 疏 自筆
鈔 時 代 の 後 に講
説 さ れ た 具 疏 の 講 説 時 期 に お い て は 行 門 の 捉 え方
に 変 化 が み ら れ る 。 そ の 他 の術
語 と し て は 、 名 体 不 二 、 願 行 具 足 、 聞 見 具 足 、 等 が あ る が 、 こ れ は 後 に も 多 用 さ れ 、 そ の 示 す 意 味 は か わ り な い 。 た だ、 こ の自
筆 鈔講
録 段 階 で は 術 語 と し て 使 用 す る ま で に 至 ら ず 、 の ち に 使 用 さ れ る 術 語 を 想 像 さ せる 文 章 が あ る 。 こ れ は 思 想 の 体 系 化 の 素 地 の 時
代
を 示 す も の と 言 え る 。 そ の 例 を 挙 げ る 。 機 法 一 体 を 指 す も の 機 と 法 と 相 応 し ぬ ( 西 全 三ー
74
) 既 に 弘願
に 帰 し ぬ れ ば 、 行 者 の 心仏
心 と 相 応 す 、 故 に 弘 願 に 帰 し ぬ れ ば 、 行 者 の 心 を 指 す に 仏 願 に乗
ず る 謂 あ り ( 西 全 三 ー74
) 両 会 一 致 を 指 す も の 王 宮 の 会 終 わ り て耆
闍 に 還 り 給 ひ つ る は、耆
闍 会 の 序 な り け り と 知 ら る ( 西 全 三ー
117
) 序 正 一 同 を 指 す も の 光台
現 国 を 韋 提 の 見 し も 、 十 六 観 門 を 我 等 が 聞 く も 仏 語 体 } な る べ し ( 西 全 三1182
) 韋 提 未 来 一 同 を 指 す も の 此 の 未来
の 機 は 、韋
提 を 縁 と し て 教 を 起 し て 浄 土 に 生 ず べ き故
に 、 韋 提 を 機縁
と 云 ふ な り ( 西 全 三ー
ユ83
) ま た、自
筆 鈔 の 講 録 は 逐 語 訳 形 態 を と っ て お り 、 そ の 逐 語釈
も 一 般 的 な 仏 教 用 語 に 関 し て は ご く 常 識 的 な 用 語 説 明 に 終 始 し て い る 部 分 も 多 く 、 や は り 自 筆 鈔 は 先 の 「 我 所 立 の 法 門 は専
ら 故 上 人 ( 法 然 上 人 ) 相 承 の 外 に 別 の 秘 曲 な し 、 但 し 其 の 大 旨 を 得 て 料 簡 を 加 へ た る こ と は 我 稽古
の 功 な り 。 」 の 評価
が 妥 当 な も の で あ ろ う 。 ( 二 )他
筆
鈔
他 筆 鈔 は 、 顕 行 ・ 示 観 、 正 因 ・ 正行
の 特 殊 名 目 を 駆 使 す る 。 勿 論 自筆
鈔 を 特 徴 付 け た 行 門 . 観門
. 弘 願 の 三 門 も 自 筆 鈔 ・ 他 筆 鈔 ・ 積 学 鈔 の 特 徴 一9
一西 山 学 報 引 き
続
き 使 用 さ れ 、 さ ら に 他 筆 鈔 を 特 徴 付 け る 新 し い 術 語 の 使 用 例 も み ら れ る 。 こ こ に そ れ を 整 理 す る 。 ω顕 行 ・ 示 観 顕
行
自 力顕 行 の 位
顕 行 の 機
顕 行 の 面
顕 行 の 行
顕 行 の 韋 提 の 位
顕 行 諸 経
顕 行 の
縁
顕
行
の 定 散 顕 行 の 教 主 示 観 他 力 示 観 の 位示 観 の 機
示 観 の 面
示 観 の 観 示 観 の 益 示 観 の 大 衆 示 観 す る
示 観 領
解
示 観 の 謂 示 観 の 解 悟 ω正 因 ・ 正
行
正 因 の 謂正 因 の 面
正 因 の 慈 悲
正 因 の 道 理
正 因 の 位
正 因 の 仏 果 正 因 の 菩 提 心
正 因 の 仏
体
正 因 の真
如正 因 の 観 仏
正 因 の 願 力
凡
夫
往 生 の 正 因諸
仏
浄 業 の 正 因正 因 の 三 宝
正 行 の 謂
正 行 の 面 正
行
の 慈 悲正 行 の 心 正 行 の 辺 正 因 ・ 正 行 の 組 み
合
わ せ 正因
の 上 の 正 行 正 因 の 道 理 、 正 行 を 顕 し 万 機 を 摂 し て 仏 位 を成
ず 正 因 の 上 に 顕 る る 所 の行
を 即 ち 正 行 と 云 ふ 正 因 と 言 ふ所
の 正 行 正 因 正行
の観
仏 正 因 正行
の無
量 寿(
5
) (4
) (6
) (7
) 正 因 正 行 の 益 此 の 三 心 を 正 因 正 行 の 心 と 云 ふ 行 門 ・ 観 門 ・ 弘 願 顕 ・密
の 対 照 密 の 謂 に て は 欣 浄 縁 即 説 の 体 な る 。 是 を 亦 非 是 無 時 仏 語 と 云 ふ 。 顕 の 面 は 黙 然 と し て 坐 し た ま え り 。 顕 の 面 は 三 福 を 総 と 云 ふ な り 。 密 の 謂 れ は 散 と 云 ふ に も 定 を 具 足 し て 定 散 を 総 と 云 ふ と 心 得 べ し 。 顕 行 の 未 来 は 唯 散 善 の 機 な り 、 此 れ は 顕 の 面 な り 。 顕 行 の 未 来 も 定 散 に 亘 る な り、 此 れ は 密 の意
な り 。 釈 迦 ・ 弥 陀 の 対 照 釈 迦 発 遣 の 遺 教 に 依 っ て 弥 陀 来 迎 の 本 願 に 帰 す 、 此 は深
心 決 定 の 位 に 喩 ふ る な り 。 苦体
の 念 仏 来 迎 を ば 弥 陀 正 因 と 名付
け 、 楽 の 体 の 念 仏 来 迎 を ば 釈 迦 正 行 と名
つ く、 苦 楽 の 二 体 即 是 れ 二 尊 の 発 遣 来 迎 の 意 密 な り 。 三 輩 散 善 の 料簡
は 釈 迦 教 の 義 な り、 下 輩 無善
の 料簡
は 弥 陀 教 の 意 な り 。 善 體 還 得 す る は 釈 迦 教 な り 、 還 得 し て 往 生 す る は 弥 陀 教 な り 。 持戒
は 釈 迦 教 、 破 戒 は 弥 陀 教、 持 破 共 に 念 仏 に 帰 し て往
生 す 。 弥陀
摂 取 門 ( 正 因 平 等 ) 、 釈 迦 抑 門 止 ( 正 行 差 別 ) 弥 陀 教 は 起 行 門 に 就 き 、釈
迦 教 は 安 心 に 帰 す 、 之 を 領 解 す る を 悟 り と 云 ふ な り 。 ○ 〇 一 同 と し た も の 自 筆 鈔 ・ 他 筆 鈔 ・ 積 学 鈔 の 特 徴 一 11 一(
8
) (9
) 西 山 学 報 序 正 一 同真
仮 一 同善
悪 一 同聞 見 一
同
見 説 一
同
韋 提 未 来 一 同
在 世 滅
後
一同
臨
終
平 生 一 同 発 三 心 と 往 生 と 聞 見 と 一 同 通 別 其 の 体 一同
○ 〇 一 体 と し た も の 通 別 一 体 機 法 一 体 生仏
一 体 聞 見 一 体OO
即OO
と し た も の 観 即 三 心往 生 即 仏 体
諸 仏 即 弥
陀
仏
体
即 法湘
生 往 生 即 念 仏念 即
声
称
名
即 往 生 念 仏 即 護念 教 即 願 願 即 仏 体 住 立 の 仏
体
即 本 願 を 顕 す 教 体 説 も 聞 も 仏 体 も 即衆
生 往 生衆
生 の 帰命
の 心 即 三 心 観 仏 の 来 迎 即 念 仏 の来
迎散 善 自 説 即 三 心 自 説
所
求 即 衆 生 往 生 の 去 行 そ の 他 願 行 具 足依 正 具 足
名 体 不 二
心 眼
体
無 二両 会 一 致 観 仏 念 仏 具 の 体 一 解 経 念 仏 は 只 一 所 求 去 行
体
一三 福 正 因 と 三 心 正 因 と 其 の
体
一 な り ω の 顕行
. 示 観 は、 観 経 序 分 に て 韋 提 の 心 理 的 内 面 が 自 力 か ら 他 力 へ 移 行 し た 時 点 を 、 散 善 顕 行縁
と 定 善 示 観 縁 の わ か れ め に あ て る、 と い う 理 解 に よ っ て編
み 出 さ れ た も の で あ る 。 欣 浄 縁 に て 光 台 現 国 を 見 た 韋 提 は 別 去 行 で あ る と こ ろ の 思 惟 正 受 の 定 善 行 を 請 う 。 こ れ に 対 し て 仏 は 散 善 顕 行 縁 に て 、 三 福 の 散 善 行 を 自 開 す る 。 こ れ が 顕 行 で あ る 。 こ の 時 、 韋 提 は未
だ 定善
の 機 も 散 善 の 機 も 平等
に 阿 弥 陀 仏 の救 済 力 に 預 か れ る 謂 れ を 領
解
す る に 至 らず
に 自 力 行 に 固 執 し て い る 。 よ っ て 顕行
は 韋 提 に と っ て自
力 の 立場
で あ る 。 と こ ろ が 次 の 定善
示 観 縁 に て、 仏 は 韋 提 に た い し て 、 「 汝 是 凡 夫 」 「 諸 仏 如来
有
異 方 便令
汝 得 見 」 と 説 く 。 こ れ が 示 観 で あ る 。 こ れ を 受 け た 韋 提 は 「 如我
今 者 以 仏 力 故 見 彼 国 土 」 と 述 べ 、 定 散 二 善 は 仏 力 に よ る 他 力 救済
の 表 現 で あ る こ と を 領 解 す る 。 所 謂 示 観 領 解 の 立 場 に 入 る 。 よ っ て 示 観 は 韋 提 に と っ て は 他 力 の 立 場 に 入 る 。自
筆
鈔 の行
門 ・ 観 門 は 自 力 ・ 他 力 の 分 別 で あ る が、 そ の 分 別 は 韋 提 を 代 表 と す る 凡 夫 の 行 動 を 基 準 と し て い る 。 と こ ろ が 顕行
・ 示 観 は 、行
門
・ 観 門 を 施 設 さ れ る こ と に よ っ て 受 け 手 の 韋 提 が 起 こ し た 心 理 状 況 に 対 す る仏
の 対 応 し た 動 き を 分 別 し た も の で あ る 。序
分 義 他 筆 鈔 の 散 善 顕行
縁
の 釈 に 、「 凡 そ 此 の
縁
の 本 意 は 欣 浄縁
の 密 益 を 顕 さ ん が 為 な り 。 其 の 密 益 を 顕 す と い う こ と は 定 善 示 観 縁 な り 。 此 れ を 顕 行 縁 と 名 つ く る こ と は 韋 提 所請
の 定 善 に 向 か ひ て 散 善 を自
開 し た ま ふ 、 此 の 散 善 に 就 い て 定 善 も 等 し く 生 ず と い う 道 理 を 顕 す な り 。 」( 西 全 五 ー
1
) と 示 し 、仏
の 散 善 自 開 と い う 動 き の 存 在 が あ り、 そ の 散 善 の 裏 に は 定 善 を も含
ん で い る 。 そ こ に は 所 謂 仏 の 密 益 の 存 在 が あ る 。 同 じ く 定 善 示 観 縁 の 釈 に 、 「 凡 そ 此 の 示 観 縁 の 大 意 は 欣 浄 縁 の 韋 提 の 思 惟 正 受 に 付 い て 正 因 能 詮 の 観 を 示 す な り 。 」( 西 全 五
ー
30
) 即 ち 正 因 能 詮 の 観 を 示 す の は仏
力 の 対 応 が 存 在 し て い る こ と で あ る 。 章 提 に お い て は、 顕 行 は 自 力 固 執 の 立場
、 示 観 は 他 力 領 解 の 立 場 を 示 し 、 仏 に お い て は 、 顕 行 は 三 福 自 開 の 対 応 、 示 観 は 仏 力 開 示 で あ る 。 そ の裏
に 仏 の 対 応 す る 動 き 、 即 ち 弘 願 が あ り 、 自 筆 鈔 の 行 門 ・観
門 よ り 具 体 的 に 練 ら れ て い る こ と が 窺 い 知 れ る 。 そ れ は ω の 使 用 例 の 「 示 観 す る 」 と い う よ う に 示 観 を 動 詞 句 と し て 多 用 す る と こ ろ に も 示 さ れ る 。 自 筆 鈔 ・ 他 筆 鈔 ・ 積 学 鈔 の 特 徴 一13
一西 山 学 報 ω の 正 因 ・ 正
行
は 、 善 導 散 善 義 のコ
明 三 福 以 為 正 因 、 二 明 九 品 以 為 正 行 」 に よ る 。 こ の 文 に対
し て自
筆 鈔 に は 、 次 の よ う に 解 釈 し て い る 。 コ ニ 福 を 明 か し 九 品 を 明 か す 道 理 観 門 な る 故 に 能 詮 の 教 の 本 意 を 指 し て 正 因 正 行 と 判 ず る な り 。 此 れ 則 ち 釈 迦 の 要 門 に 当 た る な り 。 観 門 成 じ ぬ れ ば 弘 願 顕 は る 。 此 の 弘 願 を ば 正 し く 正 因 正 行 の 体 と 意 得 る べ き な り 。 能 詮 の教
の 道 理 を 得 つ れ ば 行 者 の 心 は 三 心 に 定 ま る べ き な り 。 十 一門
中 の 辨 定 三 心 以 為 三 心 の 釈 と合
す べ き な り 。 正 因 正 行 の 差 別 を 謂 は ば 、 因 は善
の 体 を 指 す 、 行 は 修 行 の作
法 な り 。 」( 西 全 三
13
ー ユ ) 即 ち、 三 福 は 九 品 す べ て に 隠 顕 と な っ て行
き 渡 り、 九 品 は 観 門 と な っ て 開 か れ て 弘 願 が 顕 れ る 。 そ の 弘 願 の 領 解 は 三 心 に 尽 き、 そ こ に 正 因 が あ り、 そ の 正 因 か ら 発 露 す る 凡 夫 の 行 為 を 正行
と す る 。 観 門 に よ っ て 三 心 が 興 さ れ 弘 願 の 弥 陀 功 徳 を 知 ら さ れ る と い う 三 心 正 因 へ 引 き 上 げ て い く 。 凡 夫 に よ る称
名
が 正 因 、 凡 夫 に よ る 信 心 が 正 因 と い う の で は な く、 三 心 領 解 は 仏 に よ る 他 力 で あ り 、 阿 弥 陀 仏 の存
在
即 ち 仏 体 が 正 因 で あ り 、 正 因 は す べ て の 凡 夫 に 平 等 に 行 き 渡 っ て い る こ と に な る 。 さ す れ ば 平等
な 正 因 に よ っ て裏
打 ち さ れ た行
為
は 個 々 の 凡 夫 に は 差 別 相 と し て あ ら わ れ て く る も の の 、 そ れ は 正 行 と し て 引 き 上 げ ら れ る 。 弘 願 に よ っ て 観 門 が 施 設 さ れ 、 観 門 に よ っ て 行 門 が 止 揚 さ れ る こ と と 同 じ 論 理 で あ る 。 即 ち 凡 夫 の 弘 願 領 解 を 正 因 と し 、 そ の 正 因 か ら 発 露 す る 凡 夫 の 行為
が 正 行 と し て 引 き 上 げ ら れ る の で あ る 。 と こ ろ が 他 筆鈔
で は 、 仏 の 正 因 に よ る 正 行 の 止 揚 の 論 理 を の 使 用 例 の よ う に 、 正 因 は 仏 の 存在
意 義 を 深 め る 説 明 に 多 く 使 用 さ れ る 。韋
提 に お い て は 第 七 所 現 の 三 尊 の存
在
そ の も の 、 凡 夫 に お い て は 別 願 酬 因 の 阿 弥 陀 仏 そ の も の を 正 因 と し て い る 表 現 が 非常
に 多 く 見 ら れ る 。 こ の 正 因 の 領納
が 正 行 と し て 現 れ る 。 正 因 は 平 等 相 、 正 行 は 差 別相 を 表 現 す る 名 目 と し て そ の 意 味 が
皐
鈔 の そ れ よ り も 広義
に な ・ て い く 。 意 味 が 広 義 に な れ ば な る ほ ど 、 正 因 . 正行
の 使 用 範 囲 は 拡 大 さ れ 、 様 々 な 解 釈 に 用 い ら れ る よ う に な る 。 「 帰 す る 所 の 三 宝 、 正 因 の 三 宝 な る べ し 。 正 因 の 三 宝 と は 、 第 七 所 現 の 三葺
り 、 此 の 三 尊 は 別 願 酬 因 の 身 な り , 」 ( 西 全 四1252
) 「 正 因 の 仏 は 衆 生 の 願 往 生 の 心 を体
に 得 て 成 じ た ま え る 故 に…
・ … 」( 西 全 四
1255
) 「 経 の 題 の 無 量 寿 の 三 字 を 釈 す る な り 。 此 に 正 因 正 行 の無
量 寿 あ り 。 正 因 に 又 能 詮 所 詮 の 無 量 寿 あ り 」 ( 西 全 四ー
288
) 「 正 因 は 称 名 の 時 節 な り 。 正 行 は 臨 終 の 時 節 な り 。 」 ( 西 全 五1155
) 「 正因
の 面 は 九 品 一機
な り 、 正 行 の 面 は 各 別 な り 。 」( 西 全 五
i167
) 「 釈 迦 正 行 、 弥陀
正 因 」( 西 全 五
ー
200
) 次 の 顕 ・ 密 の 対 照 の 使 用 は 序 分 義 に 多 用 さ れ る 。 序 分 欣 浄 縁 に お け る 光 台 現 国 は 、 善 導 序 分 義 に、 「 此 彰 如 来 意 密 也 」 、 と し て 、 序 分 欣 浄 縁 に お け る 韋 提 の 光 台 現 国 の 「 見 」 は 定 善 示 観 縁 に て 「 不 見 」 と し て、 韋 提 の 主 体 性 を 否 定 す る も 、 定善
第 七 観 住 立 空 中 三尊
仏
の 出 現 に よ っ て 、 光 台 現 国 の 「 見 」 は 仏 に よ っ て 見 せ し め ら れ た真
「 見 」 と し て 生 き て く る 意 図 が 存 在 す る 、 と い う 。 こ の 光台
現 国 と い う 仏 の表
現 の な か に 密 意 が 隠 さ れ て い る こ と に 対 し て、 自 筆 鈔 に は 、 「 如 来 意 密 と い は 観 門 の 意 な り、 序 題 の中
に 仏 密 意 弘 深 な り と 云 ふ と 其 の 義 同 な り 。 」 ( 西 全 三i175
) と し て 、 観 門 の 中 に 弘 願 が 存 在 し て い る こ と を 必 要 条 件 的 に 捉 え て い る 。 こ の 意 密 を 明 ら か に す る た め に 、 散 善 顕 行 縁 の 父 王 得 益 に お け る仏
の 微 自 筆 鈔 ・ 他 筆 鈔 ・ 積 学 鈔 の 特 徴 一 15 一西 山 学 報 笑 、
告
命 許 説 の去
此 不 遠、 三福
自 開 の 定 散 相 違 や 浄業
正 因 等 々 の 施 設 が あ る の で あ る が 、自
筆
鈔 で は こ れ ら の 施 設 は 韋 提 の 行 門 の執
着
を 取 り 除 く た め の も の と し て 分析
し て いく
。 と こ ろ が 他筆
鈔
に な る と、仏
の あ ら ゆ る 場 面 の 行 動 表 現 の な か に 密 意 が 隠 さ れ て い る こ と を 、 顕 ・ 密 の 二 面 性 を も っ て 分 析 し て い く 。 特 に 序 分義
他 筆 鈔 に都
合
十
六 回 に わ た っ て 多 用 さ れ て い る 。 禁 父 縁 の 起 化 処 の 影 現 霊 儀 か ら 始 ま っ て 、 光 台 現 国 、 散 善 顕 行縁
の 父 王 得 益 に お け る 仏 の 微 笑、 告命
許 説 の 仏 無 言 や 去 此 不 遠 の 三 義 、 浄業
成 の 安 心 住 行 、 三 福 自開
の 定 散 相 違 や浄
業
正 因 等 々 、 更 に 定 善 示 観 円 の 韋 提 未 来 相 違 ま で多
面 に 広 げ て い き 、 仏 の 内 面 的 な 意 識 を 分 析 し て い き 、 さ ら に は仏
の 行 動 の み な ら ず、 韋 提 の 行 動 に も 顕 ・ 密 の 二 面 性 の 存 在 を 分 析 す る 。 「 微 笑 に 顕密
の 二 の 意 有 る 可 し 」 ( 西 全 五11
) 「 密 の 謂 に て は 欣浄
縁 即 説 の体
な り 。 是 を 亦 非 是 無 時 仏 語 と 云 ふ な り 。 顕 の 面 は 黙 然 と し て 坐 し た ま え り 。 是 を 総 未 言 説 と 云 な り 。 」 ( 西 全 五15
) 「 此 去 不 遠等
と 云 ふ 事、 問 云 、第
一 釈 の 意 如 何 。 答 云 、 此 に 亦 顕密
の 二 意 あ る べ し 。 」( 西 全 五
i5
) 「 欲 生 彼 国者
當 修 三 福 等 と 云 り 、 往 生 に向
か い て 今 凡 夫 を 勧 む る と 言 う こ と 疑 う 可 か ら ず 。 但 し 此 に 顕密
の 二 の 意 有 る 可 し 」( 西 全 五
ー
29
) 「 顕 行 と 示観
と 二 縁 を 立 つ る 面 は 、 顕 行 の 未来
は 唯 散 善 の 機 な り 。 此 は 顕 の 面 な り 。 … … … 此 の 謂 れ に て 顕 行 の 未 来 も 定 散 に 亘 る な り 、 此 は 密 の 意 な り 。 」( 西 全 五
i31
) 「 顕 の 面 は荘
厳 精 華 の 故 な り 、密
の 面 は 四十
八 願 所 成 の 謂 な り 。 」( 西 全 四
ー
416
) 顕 は 相 対 的 に 、密
は 絶 対 的 な 弥 陀 の 意 図 を 顕 し 、 さ ら に 顕 ・密
同 体 へ と 止 揚 し て い く 展 開 が 他 筆 鈔 の 特 徴 で あ る 。の 釈 迦 . 弥 陀 の 対 照 は 散 善 義 に 多 用 さ れ て い る 。 自 筆 鈔 に は 、 釈 迦 ・ 弥 陀 の 対 照 に 関 し て 、 「 弥 陀 本 誓 願 極 楽 之 要 門 と は 、 此 の 二 句 は 正 し く 出 離 の 正 門 に 遇 へ る こ と を 明 か す 。 此 の 中 に 初 め の 句 は 所 詮 の 法 を 顕 す 、 次 の 句 は 能 詮 の 教 を 顕 す 。 所 詮 は 即 ち 弥 陀 の 本 願 正 し き 弘 願 の 体 な り 。 一 代 の 本 懐 こ れ な り 。 能 詮 は 即 ち 釈 迦 の 要 門 な り 。 … … … 」
( 西 全 三
ー
20
) 「 是 は 能 説 の仏
な れ ど も 而 も今
の 釈 に は 能 所 を 分 別 せず
。 能 所 を 兼 ね て 総 じ て 仏 の 義 を 釈 す る な り 。 釈 迦 弥 陀 一 仏 と 釈 す る 意 な り 。 」 ( 西 全 三ー
36
) と し て 、 釈 迦 の 観 門 、 弥 陀 の 弘 願 が 能 所 →体
と な っ て 凡 夫 往 生 を 果 た し て い く 捉 え 方 で あ り、 こ れ は 他 筆 鈔 に も 受 け 継 が れ て い く 。 他 筆 鈔 で は 、 次 の よ う に 表 現 す る 。 「 能 説 の 如来
十 六 観 法 を 説 き た ま ふ こ と は 観 仏 三 昧 の智
を 開 発 し て 一 心信
楽 の 機 と 成 ぜ ん が た め な り 。 之 に 依 っ て 所 為 の 機 を 釋 す る に は 一 心 信 楽 求 願 往 生 等 の 釋 し た ま ふ な り 。 是 則 能 詮 の観
門 を 説 く 位 を ば能
説 の 如 来 と 云 ひ所
詮
の 一 心 信 楽 の 機 に 向 か う 位 を ば 能 為 の 如来
と 云 ふ な り 。 」( 西 全 四
1304
) 「 娑 婆 化 主 と 云 ふ 面 は 十 六 観 門 を 説 い て 弥 陀 の 依 正 二報
を 顕 し て 人 を し て 欣 は し む 。 此 の 位 を 能 説 の 如来
と 云 ふ 。 此 の説
に 落 居 す る所
に 三 身 の 仏 、 共 に 弥 陀 の 位 に 入 り て 法 界 身 の 謂 れ を 説 く 時 、能
為
の 如 来 と 云 ふ 。 」 ( 西 全 四ー
304
) 「 三身
は 三 身 な が ら 観 の 位 は 必 ず 法 界身
の 三身
と云
ふ べ し 。 法 界 身 と は 弥 陀 に 同 じ て能
為 の謂
を 成 ず る な り 。 」 ( 西 全 四f304
) 釈 迦 . 弥 陀 の 二 尊 の 一体
化 し て の捉
え 方 は 自 筆 ・ 他 筆 鈔 で は 基本
的 に 同 じ で あ る が 、 他筆
鈔 で は こ の 二 尊 一 体 化 自 筆 鈔 ・ 他 筆 鈔 ・ 積 学 鈔 の 特 徴 一 17 一西 山 学 報 を 前 提 に し て 、 次 の よ う な 更 な る 別 の 分 別 に 応 用 す る
使
用 例 が 多 く 見 ら れ る 。 「 釈 迦 発 遣 の 遺 教 に依
っ て 弥 陀来
迎 の 本 願 に 帰 す、 此 は 深 心決
定 の 位 に 喩 ふ る な り 。 」 ( 西 全 五ー
ユ46
) 「苦
体 の 念仏
来 迎 を ば 弥 陀 正 因 と名
付
け 、 楽 の 体 の 念 仏 来 迎 を ば 釈 迦 正 行 と名
つ く 、苦
楽
の 二 体 即 是 れ 二 尊 の 発 遣 来 迎 の 意 密 な り 。 」 ( 西 全 五1174
) コ ニ 輩 散 善 の 料 簡 は 釈 迦 教 の義
な り 、 下 輩 無善
の料
簡 は 弥 陀 教 の 意 な り 。 」 ( 西全
五ー
107
) 「 善 體 還 得 す る は釈
迦 教 な り 、 還 得 し て 往 生 す る は 弥 陀 教 な り 。 」( 西 全 五
ー
109
) 「持
戒 は 釈 迦 教 、 破 戒 は 弥 陀 教 、 持 破 共 に 念仏
に 帰 し て 往 生 す 。 」 ( 西 全 五ー
180
) 「 弥 陀 摂 取 門 ( 正 因 平 等 ) 、 釈 迦 抑 止 門 ( 正行
差 別 ) 」 ( 西 全 五 ー187
) 「 弥 陀 教 は 起 行 門 に 就 き 、 釈 迦 教 は 安 心 に帰
す 、 之 を 領 解 す る を 悟 り と 云 ふ な り 。 」 ( 西 全 五 ー190
) ω の ○ 〇 一 同、 の ○ 〇 一 体 、 の00
即 ○ ○ 、 そ の 他 の 願 行 具 足 依 正 具 足名 体 不 二
心 眼 体 無 二 両
会
一致
観 仏 念 仏 具 の 体 一観 経 念 仏 は 只 一
所 求 去 行 体 の 一 = 、 福 正 因 と 三 心 正 因 と 其 の
体
一 な り、 等 々 の 使 用 例 は 、 、 の 例 の よ う な、 一 見 別 の よ う な 事 象 を 最 終 的 に 包 括 す る 論 理 が そ の ま ま 滲 み 出 て く る も の で あ り 、 他筆
鈔 の 特 徴 と し て い っ そ う 色 濃 く 示 し て い る 。 ( 三 )積
学
鈔
積
学 鈔 に 関 し て は、 森 英 純 元 法 主 に よ る 「 観 門 義草
案 に 就 い て 」 ( 西 山 学報
第 六 号 ) 、「 再 度 「 観 門 義
草
案
」 に 就 い て 」 ( 西 山学
報 第 十 一 号 ) 、 ま た 西 山 全書
第
四 巻 解 題 に よ っ て 論 述 さ れ て い る 。 そ れ に よ れ ば 、 西 山 全 書 第 四巻 の
癲
門 義 草 案 」 と 昭 和 八 年 + 月 二 +吉
発 見 の 比 叡 山 坂 本 天 台 宗 真 盛 派葉
山 西 教 寺 所 蔵 の 写 本 を 比較
検 討 を も と に ・ 現 行 の 観 門 義肇
と 西 教 寺 所蔵
の 写 本斐
信 房 の 積 学 鈔 で は な い か 、 と の 示撃
与.毛
い ・ 。 更 に黌
純 元 法 主 に よ ・ て 両 本 の精
密 な臻
校
訂 が な さ れ た も の が 森 菊 子内
室 の 元 に 保 存 さ れ て い る 。 本 論 は こ の禽
蕈
案 並 び に 西馨
所 蔵 の 写 本 の羹
純 元 法 主 に よ ・ 両本
の 校 訂篆
を 、 積 学 鈔 で あ る と の 前 提 で 論 考 を す す め る 。 こ の 積 学 鈔 写 本 は ・馨
疏 に 対 す る も の の み で あ り 、葉
的 に は 逐 語 調 で 進 め ・ り れ て い く が 、皐
鈔
の 逐 語 調 に 比 べ る主
原 文 の蟹
に あ た ・ て ・ 他雷
所 の 引翠
禽
て か な り の 広疆
に わ た る 論 ・ 日 の 展 開 が あ る 。 ま た 経文
や 釈 文 の 引 用 句堯
分 に 咀 嚼 し・三
心 既蠡
尸某
成 の 正 因 L 、霊
苦 所 逼 の壅
の 為 ・ L 、 「 念 仏 衆 生叢
不 捨 の整
」等
の よ う に 経 文 や嬰
を畠
橿
用 句 と し て 使 用 し て い る 。 し か し 残 念 な が・ り 、 序 分 義 ・ お い て は 、 序 分 六 縁 の 解 釈 は な く・ 証 信 序 の み の 部 分 し か 現 存 し な い 。 と ・ う が 定 善義
や 散 善 義 の蟹
の 中 に 序 分 の 六縁
を 引 用 し て い る 箇 所 が 多 く 、 そ こ か ら 序 分 義 の 不 足 分 を 補 う に 充 分 な 量 が あ る 。 さ て 積 学 鈔籌
い て は ・自
筆 鈔 ・ 他筆
鈔 の よ う な 特 徴 的 な 新 し い 名 目 は 登 場 し て ・ な い も の の 、皇
鈔 の 行 門 . 観 門 ゜ 弘願
あ る い は墾
鈔 の 顕 行 ・ 示 観 、 正 因 ・ 正 行 の名
目靠
用 し畠
・ 駆 使 し て蟹
し て い く 。 し か し 「 示 観 の 能 詮 ゜鏨
の 弘壓
の 組客
わ せ 、 「 示 観 正 因 」 、 「 顕 行 に 反 へ る 九 品 正 行 」 等 の 使 用 例 の よ , つ に 自筆
. 他 筆 鈔 の特
殊 名 目 の 組合
わ せ に よ ・ て 、 よ り 深鐘
蟹
求
め よ う と の 工 夫 が な さ て い る ・ と が 特 徴 と し て 挙げ
り れ る 。 こ こ に そ の 例 を 挙 げ て み る 。 ( 引 用 文 の 下 の 括 弧 内 数 字 は 森 英 純 校 訂 写 本 の 頁 数 を 示 す 。 ) ω 行 門 ・ 観 門 ・ 弘 願 と 顕 行 ・ 示 観 の 組 み合
わ せ 自 筆 鈔 ・ 他 筆 鈔 ・ 積 学 鈔 の 特 徴 一19
一(
2
) 西 山 学 報 「 諸 師 自 力行
門 の 心 に 異 に て 今 師 ひ と り 示観
二 尊 教 の 心 を え て … … … 」( 玄 義 分
91
) 「 顕 行 因 果 の 分斉
、行
門 随 機 の利
益 」 ( 玄 義 分92
) 「 示 観 の 領解
起 こ れ ば 観 門 の 智 そ な は る 故 也 。 」( 玄 義 分
154
) 「 示 観 の 所詮
、 弘願
念 仏 三 昧 也 。 」( 玄 義 分
169
) 「 因 よ り 果 に 向 か ふ修
行 の 作 法 、 顕 行 行 門 の 心 也 。 」 ( 玄 義 分273
) 「 示 観 弘 願 に帰
す る 相 」 ( 玄 義 分277
) 「 定 善 示 観 の 故 に 観 門 散 善 に わ た れ ば 、 定 散 の 機 等 し く 摂 す る 」 ( 定 善 義357
) 「 能 詮 示 観 の 日輪
に 、 所 詮 弘 願 の 摂 取 の 光 明 顕 は る る 故 に・ … … : 」 ( 定善
義379
) 「 観 門 の 説 は 大 ・小
を 兼 ね 世善
に 亘 っ て 示 観 領解
の 心 発 す る 時 … … ・ : 」 ( 定 善 義415
) 「 示 観 能 詮 弘 願 所詮
の 道 理 一経
の 首 尾 序 正 流 通 定 ま れ る事
を 顕 す 也 」 ( 定 善 義442
) 「 今 の 経 は 凡夫
領解
の 示 観 衆 譬 の 体 也 。 衆譬
と い は 定 散 に へ て 一 経 の 示 観 領解
心 よ り 弘 願 に 帰 す る 智 を さ し て 此 に 名 づ け た り 。 」 ( 定 善 義460
) 「 示 観 弘 願 に 帰 し て 顕 行 に 反 へ る … … … 」 ( 散 善 義1184
) 観 門 ・ 弘 願 と 正 因 ・ 正 行 「 定 散 共 に能
詮 の門
と し て 弘 願 の 正 行 に 帰 し て 生 ず る 故 に 定 散 還 っ て 弘 願 の 功 に 成 ぜ ら れ て 生 ず … … … 」( 玄 義 分
24
) 「 此 の 定善
散 善 の行
を 能 詮 の 文 と し て、 此 の 上 に 別 の 本 意 た る 弥 陀 弘 願 の 所 詮 の 念 仏 三 昧 あ り と 心 得 ら る る 也 。(
3
) 是 れ 凡夫
出 離 の 正行
也
。 L 顕 行 ・ 示 観 と 正 因 ・ 正 行 「 正 因 の 意 を 以 て 顕 行 の諸
経
を 悉 く 下 し て … … … 」(
玄
義
分84
) 「 示 観 正 因 の 出 離 」 ( 玄 義 分107
) 「 元 観 正 因 の体
」 ( 玄 義 分114
) 「 彼 喚 此 遣 と は 譬 の こ と ば に よ せ て 示 観 二 尊 教 の 心 を 結 し 顕 す 也 。 」 ( 玄 義 分126
) コ 不 観 正 因 の 説 の 中 に各
々 正 行 随 機 の 説 有 る 事 を 顕 す 也 。 示 観 正 因 の 説、 顕 る れ ば 諸 経 顕 行 の 説 、 第 五 の 機 に 於 い て 正行
の 説 と 成 る 也 。 L( 玄 顕 分
139
) 「 い ま 依 報 に取
る事
は 、 光 台 所 求 の 境 を 點 ず る に 、 第 三 の 機 の 示 観 領解
、 正 因 一 仏 の 上 に 顕 行 に 反 っ て 正行
各 別 の 相 を 釈 し 分 つ 時 、 依 ・ 正 ・ 通 ・ 別 ・ 真 ・ 仮 等 の 相 、=
に 混 乱 せ ざ る 故 也 。 」( 玄
義
分149
) 「 示 観 の 故 に 成 ず る 九 品 正行
を説
く 教 な れ ば 、 必 ず し も彼
の 二蔵
二 教 の 配 立 に は 同 ず 可 か ら ざ る の み 。 示 観 弘 願 を 詮 す れ ば 凡 夫 の 出 離 此 の典
に 極 ま る 。 」( 玄 義 分
174
) 「 第 五 の 簡機
は 顕 行 の 差 別 を 成 ず る 故 に 、 九 品 正 行 の 配 立 今 云 ふ 所 の 示 観 領解
の 機 に は 異 な り ( 定 善 義424
) 「 示 観 の 即 便 往 生 を 得 る 故 に 、 顕 行 に 反 へ る 九 品 正 行 を含
花 来 出 と 云 ふ也
」( 定 善 義
438
) 「 示 観 顕 行 に 反 へ る 九 品 の 得 果真
実 な る 者 也 」 ( 定 善 義440
) 「 顕 行 に 返 っ て 九 品 正行
立 す る 故 に … … … 」( 序 分 義
285
) 「 今 の定
善
は 示 観 の 上 に 顕行
に 反 へ る 正 行 の 体 な れ ば … … … 」( 定 善 義
461
) 自 筆 鈔 ・ 他 筆 鈔 ・ 積 学 鈔 の 特 徴 一21
一(
4
) 西 山 学 報 「 定善
示観
の 顕 行 に 反 へ る 九 品 正 行 の 心 也 」 ( 定善
義470
) 「 示 観 正 因 の 上 の 九 品 正 行 の 相 」( 定
善
義
534
) 「 定 善 示 観 の 開 悟 よ り 成 ず る 正 因 正 行 の 散善
な る が 故 に 三 輩 散 善 と 讐 て 示 観 領 解 の 観十
六 に 通 ず る事
を 顕 す 」 ( 散善
義
756
) 「 示 観 の 心 を 以 て 三 心 既 具 無 行 不 成 の 故 に 三 福 共 に 正 因 と 成 る 事 を釈
し 顕 す 也 」( 散
善
義769
) 「 示 観 の 心 に 依 っ て 正 因 成 ず る 事 を 顕 す 」 ( 散 善 義769
) 観 門 ・ 弘 願 と 顕 行 ・ 示 観 と 正 因 ・ 正 行 「 示 観 、 弘 願 に 帰 し て 顕 行 に か え る 九 品 正行
成 ず る時
、修
因 感 果 の利
を こ る 故 な り 。 」( 玄 義 分
98
) 「 十 六 の 観 門 、 顕 行 に 返 っ て 正 行 九 品 の 不同
有 る 事 を 料 簡 : … ・ … 」( 玄
義
分191
) 「 示 観 弘 願 に 帰 す る の 故 に 顕 行 に 反 へ る 九 品 の 制 悪 修 福 に対
し て、 行 門 の 制 悪 修 福 を斥
ふ 心 也 」 ( 定 善 義42
9
) 「 示 観 弘 願 に帰
し て 證 得 往 生 の益
に 預 か る 時 、 三 心 既 具 無 行 不 成 の 正 因 成 ず 。 故 に 宿 因 の 催 す 所 顕行
に 反 っ て 機 に 随 っ て各
九 品 の 正 行 立 す る 故 に・ … … : 」 ( 散 善 義766
)自
筆 鈔 に お い て の行
門 ・ 観 門 ・ 弘願
は 仏 が 調 機 す る 意 識 を 以 て の 三 法 門 で あ り 、 他 筆 鈔 に お い て の 顕行
. 示 観 は 行 門 ・ 観 門 ・ 弘願
を う け た 韋 提 の 心 理 変 化 を 示 す も の で あ り 、 正 因 は 弘 願 の 具 体 性 を 示 し 、 そ こ か ら 発露
す る 凡 夫 の 行為
を 正 行 と し て 示 す も の で あ る が 、 積 学 鈔 に 至 っ て は こ れ ら を 緊 密 に あ わ せ も っ て 逐 語 を 進 め て い く 。玄 義 分 の 「 亦 以 念 仏 三
昧
為 宗 」 に 関 し て 、 「 亦 以 念 仏 三 昧 為宗
と い は 、 示 観 の 所 詮、 弘 願 念 仏 三 昧 也 。 此 れ 則 ち 所 詮 を 以 て 宗 と 為 す 。 二尊
教 の 故 に能
詮所
詮 不 相 離 の 故 に 、 示 観 の 観 仏 三 昧 立 す れ ば所
詮 の 念 仏 三 昧 具 足 す 。 故 に 観 仏 の 成 ず る 所 の 念 仏 三 昧 此 の 観経
の 正 宗 と 顕 す也
。 」 ( 玄 義 分169
) の よ う に 、 示 観 と 弘 願 と の 結 び つ き を、 能 詮 ・ 所 詮 の 関 係 に 結 び つ け 、 ま た 、 「 今 経 は 顕 行 示 観 の 二 縁 を 立 て、 行 成 の 位 に 弘 願 を 顕 し 、帰
心 成ず
れ ば 願 行 円 満 し て 顕 行 の 諸 善 即 ち 九 品 の 正 行 と 成 る を も て 詮 と 為 。 」 ( 玄 義 分244
) と し て 自筆
鈔 に 於 け る 弘 願 帰 入 の 後 の 行 門 を 止 揚 し て 正行
と し て 引 き 上 げ て い く 。 の 例 の 「 顕 行 に 反 へ る 正 行 」 が 多 用 さ れ て い る こ と か ら も 窺 い し れ る 。 ま た 、 の 例 の よ う に 正 因 を よ り 具 体 的 に す る た め に 、「 示 観 正 因 」 と い う 語 彙 を 多 用 す る 。 さ て 、 従
来
、 善 導 五 部 九 巻 の 内、 法事
讃 の み が自
筆
鈔 に 含 ま れ て い な い こ と に 対 し て 、 空 覚 は 観 門 要 義 鈔 開 版 の 際 に実
信
房 の 法 事讃
積
学 要 義 鈔 を 以 て補
充 し て い る 。 こ の 法事
讃積
学 鈔 に お け る 特 殊 名 目 を拾
い あ げ て み る と 、 既 に 論 じ た 観経
疏 積 学 鈔 に お け る 名 目 の 使 用 例 と は 大 き な 違 い が あ る 。 前 記 し た 観経
疏 積学
鈔 に お け る 名 目使
用
例 の ω 、 、 の よ う な 、 行 門 ・ 観 門 ・ 弘 願 ・ 顕 行 ・ 示 観 、 正 因 ・ 正 行 の 組 み 合 わ せ に よ る 使 用 は ほ と ん ど 見 ら れ な い 。 ま た 、 自筆
鈔 や実
信 房 の 述 誠 と 内 容 が 重 複 し て い る 三 縁 義 や 、 あ る い は 浄 土安
心 抄 と同
じ よ う に 、 観経
疏積
学 鈔 の 中 に は 大経
の十
七 願 を 称 讃 我 号 の 願 と し て い る の に 、 法 事 讃 積 学 鈔 に は、 諸 仏 咨 嗟 の 願 と し て使
用 さ れ て い る 。 さ ら に 観 経疏
積
学
鈔 に 特 徴 な ○ 〇 一 体 、 ○ 〇 一 轍 な ど の使
用 例 の 違 い も 大 き い 。 こ れ ら の こ と か ら 、観
経
疏積
学 鈔 自 筆 鈔 ・ 他 筆 鈔 ・ 積 学 鈔 の 特 徴 一23
一西 山 学 報 と 法 事 讃 積
学
鈔 と は 同 じ シ リ ー ズ の も の と考
え る の は 不 適 当 と い え る 。 こ の よ う に 臼 筆 鈔 、 他筆
鈔
、 積 学 鈔 と 、 そ の 中 の 特 殊名
目 の 使 用 例 を抽
出 し て 比 較 し て み た 。 加 え て 釈 文 解 釈 の変
化 に 関 し て み る と 、 森 英純
元 法 主 に よ る 「 再 度 「 観 門義
草 案 」 に 就 い て 」 ( 西 山 学 報 第十
一 号 ) に 序 分 三 相 違 の 整 理 過 程 や 能 詮 仏 所 詮仏
の 確 立 な ど の 変 化 が 指 摘 さ れ て い る が 、 こ の よ う な 変 化 を 玄 義 分 の帰
三 宝 偈 に お け る 仏 . 法 ・ 僧 の 捉 え 方 に 注 目 し て み る 。自
筆 鈔 に は 、 「 法 性 真 如海
報
化 等 諸 仏 と ら い は、 先 す 仏 宝 に帰
命
す 。 此 の 中 に 初 の 一 句 は 法身
を 挙 ぐ 。 次 の 一 句 は報
化
二 身 を 挙 ぐ と 。 仏 宝 の 体 広 し と 雖 も 、 三身
を 出 で ず 。 故 に 是 を 挙 ぐ 。 … … ・ : 」 ( 西 全 三115
) と し て 、 一 一菩
薩
身
よ り 以 下 は 、 「仏
果 あ る い は 仏 宝 の 中 の 因 位 の 功 徳 を 顕 す 」 と こ ろ の 僧 宝 と し て 受 け 止 め て お り 、 多 分 に 常 識 的 な解
釈 で あ る 。 と こ ろ が 他筆
鈔 に な る と、 「 法 性 真 如海
報 化 等 諸 仏 と 云 ふ 二 句 は 仏 宝 な り 。 一 一 菩 薩 身 と 云 ふ よ り 十 地 三 賢 海 に 至 る ま で は 僧 宝 な り 。 時 劫 満 未 満 と 云 ふ よ り 證 智 未 證 智 に 至 る ま で は仏
僧 二 宝 を 挙 ぐ 。 妙 覚 及等
覚 、 是 の 如 し 。 仏 僧 二 宝 は 無 量 と 雖 も 唯 第 七 観 の 三尊
と 云 こ と を 顕 す 。 正 受 金 剛 心 と 云 ふ よ り 果 徳 浬 槃 者 に 至 る ま で は 三尊
は 今 の 仏 体 と釈
し 顕 す な り 。 … … … 」 ( 西 全 四ー
260
) と ・ 仏 宝 の範
囲 が 広 ま っ て い く 。 こ れ は、 「 正 因 の仏
体 、 依 正 二 報 、 通 別真
仮 一 同 に 具 足 す べ し 」 と し て 、 正 因 の 上 の 正 行 は 弘 願 の 発 露 で あ る 立 場 と み な し て 仏 宝 の範
囲 を 広 げ て い く 。 さ ら に 積 学 鈔 で は、 「 法 性真
如海
と 云 よ り 荘厳
及 変 化 ま で は 是 れ 仏 宝 也 。 十 地 三 賢 海 よ り 果 徳 涅 槃者
ま で は 是 れ 僧 宝 云 。 :・ : : . ・ 」( 玄 義 分