教育学部学生における発達障害者への態度に関する研究
河西明日香 * ・細川美由紀 **
(2018 年 8 月 31 日受理)
A Study on Attitudes toward People with Developmental Disabilities in Faculty of Education Students
Asuka K
awanishi* and Miyuki H
osokawa**
(Accepted August 31, 2018)
はじめに
平成 25 年版「障害者白書」(内閣府, 2013 )によると,障害種を身体障害,知的障害,精神障害 の 3 区分に分けて行った厚生労働省の調査において,平成 18 年時点で身体障害児・者は 366.3 万人,
平成 17 年時点で知的障害児・者は 54.7 万人,平成 23 年時点で精神障害者は 320.1 万人いると報 告されており,その数は年々増加傾向にある。それに伴い,障害のある人もない人も全員が参加で きる共生社会が求められており,そのための法整備が進められている。
しかし,内閣府( 2000 )が指摘する障害のある人を取り巻く 4 つの障壁のうちの 1 つである「心 ない言葉や視線,障害者を庇護されるべき存在としてとらえる等の意識上の障壁(心の壁)」は社 会にいまだに存在すると考えられ,この障壁を除去するためには健常児・者が障害児・者に対して どのような態度をもっているのかを明らかにすることが必要であると言える。
これまで,健常児・者の障害児・者に対する態度についての研究は,様々な視点を通じて数多く 行われてきている。例えば,生川( 1995 )は健常者に対して行った調査において, 「実践的好意」 「能 力肯定」 「統合教育」 「地域交流」 「理念的好意」の 5 つを知的障害児・者への態度尺度として見出した。
また,「地域交流」「理念的好意」の態度尺度得点が高く,「統合教育」「実践的好意」の態度尺度得 点が低かったことから,健常児・者が知的障害児・者に対する態度項目において,理念的総論的な 内容には賛成し,具体的各論的な内容には反対すると報告している。
さらに菊池( 2011 )は,教育学部の学生に対して,生川( 1995 )の調査における対象人物を発 達障害児に変更して調査を行った結果,生川( 1995 )とほぼ同様の結果が得られた。このことから,
発達障害児へのイメージは知的障害児へのイメージと同様の因子構造をもつことが推測された。
*茨城県立勝田特別支援学校(〒 312-0062 ひたちなか市大字高場 2452; Katsuta Special Needs Education School, Hitachinaka 312-0062 Japan).
**茨城大学教育学部障害児教育教室(〒 310-8512 水戸市文京 2-1-1; Laboratory of Education for Children
with Disabilities, College of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan).
さらに生川( 1995 )は,健常者の知的障害児・者に対する態度について,自己との関わりの薄い,
理念的観念的な次元への態度得点は高く,反対に自己との関わりが深く,現実的具体的な次元への 態度得点は低くなると報告している。益山・東原・河内( 2008 )が小学 6 年生を対象として知的 障害児に対する態度を明らかにした研究においても,仲のよい友達と行うような活動よりも,保護 者的な要素が強い活動の方が,児童が知的障害児と一緒に取り組みやすいと感じていることが示さ れた。以上の報告より,障害児・者との関わり方の深さによって健常児・者の障害児・者への態度 が異なることが明らかとなっている。
続いて,健常児・者の障害児・者への態度と障害に関する知識との関連では,菊池( 2011 )は 発達障害に関する知識量が増えるにしたがって,自ら積極的に発達障害児に関わろうとする態度が 促進されると述べている。一方,福島・清水( 2016 )は,知識を障害の分類や特徴に関する基本 的知識と,障害者と接する際の対応の仕方に関する実践的知識の 2 つに分けて調査を行った。その 中で,実践的知識が少ないと発達障害者への対応が上手くいかず,発達障害者に対してネガティブ なイメージを抱いてしまうと考察しており,実践的知識の量が発達障害者への態度に影響を与える と述べている。このように,障害に関する知識は障害児・者への態度に好影響を与えるとされてい る研究が多いが,その一方で障害についての知識の質について検討することも必要とされている。
また,障害児・者との接触経験との関連について渡辺・植中( 2003 )が小学生を対象に行った 調査においては,障害児・者との交流経験が障害児への受容的態度に肯定的に働くとされている。
特に,児童が交流経験の中で「楽しさ」や「学び」を感じたときに,効果が大きくなると報告して いる。しかし,渡邊・青山・稲冨( 2016 )は,障害児・者との接触経験と言っても,ただ同じ教 室で障害児と過ごすというだけでは障害児・者に対する態度は変化しないことから,障害児との 積極的な関わりの有無が態度変化に重要な役割を果たしていると結論づけている。さらに,大谷
( 2001 )は小学 6 年生を対象に行った調査において,ダウン症の男児との交流経験後に,児童の障 害児への好意的イメージ得点が低くなったと報告しており,その要因を児童の障害児・者に対する 理解の程度が浅かったことと推察している。以上の報告より,障害児・者への態度と接触経験との 関連については,接触経験が障害児・者への態度を好意的にする場合と,逆に非好意的にする場合,
変化させない場合という 3 者が存在することが推測される(益山ら, 2008 )。
このように,健常児・者の障害児・者に対する態度形成とその影響要因についての研究は数多く 行われてきている。しかし,これらの研究の多くは,選択式による回答から障害児・者への態度を 明らかにするものであり,その態度が対象者の中でどのような根拠に基づいて形成されているのか を検討している研究は少ない。また,研究の対象者について,将来障害のある児童生徒と関わる可 能性の高い教育学部の学生を対象とすることが必要であると考えた。
そこで本研究では,教育学部学生を対象として,発達障害の特徴のある友人に対する学生の態度
について検討するとともに,質問紙の一部に自由記述による回答を設けることで,その態度がどの
ような根拠に基づいて形成されているのかについてあわせて検討することを目的とする。
方 法
1.調査対象
調査対象は,茨城大学教育学部の 3 ・ 4 年次に在籍する大学生 311 名であった。その中で回答のあっ た 269 名のうち,有効回答が得られた 232 名(男性 84 名,女性 148 名)を本研究の分析対象とし た(有効回答率 86.2 %)。
2 .調査時期
調査は 201X 年 7 月 24 日, 7 月 27 日に実施された。
3 .調査内容
調査に使用した質問紙は,友人関係質問紙,障害児・者との接触経験,発達障害に関する知識の 3 つの設問より構成した。以下に各設問の概要について示す。
( 1 )友人関係質問紙
益山ら( 2008 )が小学生を対象として作成した友人関係質問紙を,大学生を対象とした内容 に改変した。本研究では学習の困難を伴うと想定した A さんと,人との関わりに困難を伴うと想 定した B さんの 2 種類の人物像を提示し(表 1 ),それぞれ同一内容の 14 項目の質問について 4 件法(「まったくできない( 1 点)」 「ほとんどできない( 2 点)」 「ときどきできる( 3 点)」 「だいた いできる( 4 点)」)にて回答を求めた。この質問紙では,得られた得点が高いほど,提示された 架空の人物に対しての態度が好意的であることを示す。
加えて, A さんおよび B さんについて,質問項目の中からそれぞれ 1 項目ずつ指定し( A さん: 「空 き時間に 2 人で授業の課題を行う」, B さん:「ゼミ合宿の際同じ部屋に 2 人で泊まり行動する」),
その項目についてなぜ「できる」,または「できない」と回答したのか,その理由について自由 記述を求めた。
( 2 )障害児・者との接触経験
障害児・者との接触経験の有無が,障害児・者への態度に影響するのか調べるため,回答者に これまでの障害児・者との関わりの有無(ある・ない・わからない)について尋ねた。さらに,
障害児・者との接触経験が「ある」と答えた回答者には,接触経験の内容(表 2 )についても回 答を求めた(複数回答可)。
表
1 AさんならびにBさんの人物像
人物 人物像
Aさん
Aさんは,文字を書くことが苦手で,手書きで文字を書くのがとても遅かったり,上手に文 字を書くことができなかったりします。また,聞く人や読む人が分かりやすいように考えを 整理して話したり,文章にすることが苦手です。
Bさん
Bさんは,人と会話したり,他の人が考えていることを理解したりすることが苦手で,周囲 の人が言っていることをうまく理解できていないと感じています。また,自分が納得するま で質問してしまって人からしつこいと言われたり,クラスメートなどとトラブルになってし まったりすることがよくあります。
( 3 )発達障害に関する知識
対象者の発達障害に関する知識の程度につい て明らかにするため,発達障害に関する文章を 8 つ提示し(表 3 ),回答者にその文章の正誤 判断(正しい・誤り・わからない)を求めた。
4 .調査手続き
( 1 )質問紙の配布並びに回収
質問紙は,大学で行われた講義の最初の時間 に,講義を受講する学生全員に配布した。対象 者には質問紙配布後に本研究の目的と実施方法 について文書とともに口頭で説明した。質問紙 は,配布から 15 分が経過した段階で,調査者 が教室を回り座席の列ごとに回収した。時間内 に回答が終わらなかった学生に対しては,講義 終了後に再度回収することを伝え,講義終了後 に提出してもらった。
( 2 )分析方法
友人関係質問紙については,主因子法による 因子分析を行った。その結果得られた 2 つの 尺度の平均得点を算出し, 2 要因の分散分析を 行った。その後,友人関係質問紙の得点と,発 達障害に関する知識問題の得点や障害児・者と
の接触経験との関連を検討するため, 3 要因の分散分析を行った。また,記述による回答につい ては, KJ 法を用いたカテゴリー化による質的分析を行った。
5 .倫理的配慮
倫理的配慮として,質問紙とは別に文書を配布し,その中に参加は強制ではないこと,いつでも 回答を中止できること等を明記し,口頭においても十分に説明した。インフォームドコンセントに ついては,本研究が無記名での参加という特性上,質問紙への回答および提出によってその意思を 示すこととした。
結 果
1.友人関係質問紙における尺度得点
( 1 )尺度の命名
友人関係質問紙における対象者全体の各質問項目の回答結果について,人物( A さん, B さん)
表
2 障害児・者との接触経験の内容
No.
接触経験の内容1
家族・親戚の中に障害のある方がいる2
小学校・中学校・高校で障害のある児童生徒がいた
3
小学校・中学校・高校での障害のある方 との交流学習4
介護等体験5
障害児・者のための施設または団体での アルバイトやボランティア活動6
その他表
3 発達障害の知識に関する質問項目
No.
質問項目1
学習障害の略称はLDである2
学習障害は知的障害の一種である3
自閉症スペクトラムは,興味関心の限定および反復的なこだわり行動がみられる 障害である
4
自閉症スペクトラムは親のかかわり方に 問題があるために起こるものである5
ADHD(注意欠如・多動性障害)は薬を飲めば完治する
6
ADHDは青年・成人でも診断されることが ある7
特別支援教育の対象となる児童生徒と は,視覚障害・聴覚障害・肢体不自由の 障害のある児童生徒のみを表す8
特別支援教育では,通常学級に在籍する 児童生徒も対象となるごとに主因子法による因子分析を行い,益山ら( 2008 )を参考に 2 因子によるバリマックス回 転を行った。その結果をふまえ, 5 項目( 1 , 2 , 5 , 7 , 11 )を削除し,再び因子分析を行ったと ころ,既存の 2 因子が明らかとなった。 A さんならびに B さんの各項目における因子分析の結果 をそれぞれ表 4 ・表 5 に示す。
第Ⅰ因子に含まれる 4 項目については,益山ら( 2008 )と同様に,仲の良い友達と一緒に行 うような活動であったため,先行研究に倣い「同胞因子尺度」と命名した。また,第Ⅱ因子に含 まれる 5 項目の内容についても,先行研究と同様に保護者的な要素が強い活動であったため,先 行研究に倣い「見守り因子尺度」と命名した。
(2)尺度得点の平均
① 対象者全体
友人関係質問紙の得点について,対象者全体における A さんの同胞因子尺度の平均点は 2.84 点,見守り因子尺度の平均点は 3.63 点であった。また, B さんの同胞因子尺度の平均点は 2.54 点,
見守り因子尺度の平均点は 3.50 点であった。図 1 に友人関係質問紙における尺度得点の平均を 示す。
これらの平均点について,人物( A さん・ B さん)と 2 種類の因子(同胞・見守り)との関
表
4 因子分析結果(Aさん)
No.
項目内容 因子Ⅰ 因子Ⅱ 共通性10
Aさんと 2 人で外食に行く0.87 0.25 0.81 14
ゼミ合宿の際同じ部屋に 2 人で泊まり行動する0.85 0.21 0.77 8
空き時間に 2 人で授業の課題を行う0.70 0.29 0.57 13
放課後Aさんを含めたグループでカラオケに行く0.69 0.35 0.60
3
授業中に文房具を貸す0.22 0.79 0.68
4
体育のプレー中に皆でAさんを応援する0.15 0.74 0.57 9
自分がレポートを書き終えた後レポート執筆に使う課題図書を貸す0.31 0.69 0.57 12
Aさんが休んだ時に連絡事項をメールで伝える0.25 0.62 0.44 6
具合の悪いとき医務室に付き添う0.36 0.59 0.47
固有値
4.82 1.40
表
5 因子分析結果(Bさん)
No.
項目内容 因子Ⅰ 因子Ⅱ 共通性10
Bさんと 2 人で外食に行く0.90 0.17 0.85 14
ゼミ合宿の際同じ部屋に 2 人で泊まり行動する0.86 0.26 0.80 8
空き時間に 2 人で授業の課題を行う0.79 0.34 0.75 13
放課後Bさんを含めたグループでカラオケに行く0.69 0.35 0.59
3
授業中に文房具を貸す0.18 0.86 0.77
4
体育のプレー中に皆でBさんを応援する0.22 0.77 0.64 12
Bさんが休んだ時に連絡事項をメールで伝える0.23 0.71 0.56 6
具合の悪いとき医務室に付き添う0.31 0.68 0.56 9
自分がレポートを書き終えた後レポート執筆に使う課題図書を貸す0.36 0.61 0.50
固有値
5.14 1.49
連を検討するために, 2 要因の分散分析 を行った。その結果,人物と因子の交互 作用が有意であった(F ( 1, 231 )= 15.11, p <0.001 )。そのため,各要因の単純主効果 を分析した結果,同胞因子尺度において A さんに対する平均点が B さんに対する平均 点よりも有意に高く(F ( 1, 231 )= 37.48, p <0.001 ),その傾向は見守り因子尺度にお いても同様であった(F ( 1, 231 )= 14.49, p <0.001 )。一方,人物条件ごとの因子間に おける平均点の比較では, A さんにおい て同胞因子尺度得点に比べ見守り因子尺 度得点が有意に高く(F ( 1, 231 )= 306.21, p <0.001 ),その傾向は B さんにおいても同 様であった(F ( 1, 231 )= 408.07, p <0.001 )。
② 発達障害に関する知識得点との関連
発達障害に関する知識の設問(以下,知識問 題)における得点( 8 点満点)の対象者全体の 平均は 5.24 点であった。友人関係質問紙の尺 度得点と知識問題の得点の関連を検討するた め,知識問題の得点を低群( 0 点~ 4 点: 72 名)
と高群( 7 点・ 8 点: 58 名)に分類し,各群の 友人関係質問紙における因子尺度得点の平均を 算出した(表 6 )。
これらの平均点について, 3 要因(群×人物×因子)の分散分析を実施した結果, 人物と因子 間の交互作用は有意であった(F ( 1, 128 ) =5.67, p <0.05 )ものの, 3 要因間の交互作用は有意では なかった。
③ 障害児・者との接触経験との関連
友人関係質問紙の尺度得点と,対象者の障害児・者との接触経験との関連を検討するため,接 触経験に関する回答内容をもとに 3 群を抽出した。 3 群の内訳は,家族や親戚に障害のある方が いる「家族・親戚」群( 33 名),障害児・者のための施設や団体でアルバイトやボランティアを行っ ている「アルバイト・ボランティア」群( 46 名),介護等体験の経験のみの者,小中学校または 学校での障害児・者との交流学習の経験のみの者,介護等体験と交流学習の 2 種類のみの経験の 者を合わせた「介護等体験・交流学習のみ」群( 30 名)である。なお,対象者に障害児・者と の接触経験を尋ねる質問については複数回答可となっているため,「家族・親戚」群と「アルバ イト・ボランティア」群で重複が見られた際には,対象者を「家族・親戚」群に含めることによ
***
*** ***
***
2.84 3.63 2.54 3.50
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4
Aさん Bさん
同胞因子 見守り因子
***p<0.001
図 友人関係質問紙における尺度得点の平均
(対象者全体)
表
6 知識得点群ごとの友人関係
質問紙における尺度得点の平均
尺度 知識得点
高群
知識得点 低群 Aさん 同胞
2.92 2.76
見守り3.76 3.50
Bさん 同胞2.61 2.53
見守り3.61 3.41
図
1 友人関係質問紙における尺度得点の平均
(対象者全体)
り,群間で対象者の重複が起こらないようにした。各群における友人関係質問紙における尺度得 点の平均を図 2 に示す。これらの平均点について, 3 要因(群×人物×因子)の分散分析を実施 した結果, 3 要因間の交互作用が有意であった(F ( 2, 106 ) =3.27, p <0.05 )。そのため,各要因の 単純主効果について分析を行った。
まず各尺度得点に関して 1 要因(群)の分散分析を行った結果, B さんに対する同胞因子尺度 得点(F ( 2, 106 )= 3.16, p <0.05 ;「家族・親戚」群 < 「アルバイト・ボランティア」群)において のみ有意差が認められた。
続いて,経験の内容と人物,因子との関連を検討するために,経験群ごとに 2 要因(人物×因 子)の分散分析を行った。その結果,「アルバイト・ボランティア」群においては因子(F ( 1, 45 )
= 77.94, p <0.001 )のみ主効果が有意であったが,交互作用は有意でなかった。また,「介護等
体験・交流学習のみ」群においても因子(F ( 1, 29 )= 47.54, p <0.001 )のみ主効果が有意であっ たが,交互作用は有意でなかった。一方,「家族・親戚」群においては人物(F ( 1, 32 )= 18.60 , p <0.001 )ならびに因子(F ( 1, 32 )= 73. 30 ,p <0.001 )の主効果が有意であり,さらに人物と因 子の交互作用についても有意であった(F ( 1, 32 )= 9.49, p <0.01 )。そのため,各要因の単純主効 果について分析を行ったところ,同胞因子尺度において A さんに対する平均点が B さんに対する 平均点よりも有意に高く(F ( 1, 32 )= 19.61, p <0.001 ),その傾向は見守り因子尺度においても同 様であった(F ( 1, 32 )= 12.26, p <0.01 )。また,尺度間における平均点の比較で, A さんにおいて 同胞因子尺度得点に比べ見守り因子尺度得点が有意に高く(F ( 1, 32 )= 44.81 ,p <0.001 ),その 傾向は B さんにおいても同様であった(F ( 1, 32 )= 70.01, p <0.001 )。
2 .友人関係質問紙の自由記述
友人関係質問紙における自由記述についての分析を行うために,まず A さんならびに B さんにお いてそれぞれ 1 つずつ指定した自由記述を要求する質問項目( A さん:「空き時間に 2 人で授業の 課題を行う」, B さん: 「ゼミ合宿の際同じ部屋に 2 人で泊まり行動する」)において 4 件法のうち「 4 :
3.09 3.76
2.41 3.39
2.92 3.72 2.88 3.64
2.75
3.53 2.54 3.46
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4
同胞 見守り 同胞 見守り
Aさん Bさん
家族・親戚
アルバイト・ボランティア 介護等体験・交流学習のみ
*
*** **
*** ***
*p<0.05
**p<0.01
***p<0.001
図 経験群ごとの友人関係質問紙における尺度得点の平均
図2 経験群ごとの友人関係質問紙における尺度得点の平均
だいたいできる」 「 3 :ときどきできる」を選択した対象者を「できる」群,「 2 :ほとんどできない」
「 1 :まったくできない」を選択した対象者を「できない」群に分類した。その後, A さんにおける「で きる」群と「できない」群, B さんにおける「できる」群と「できない」群の計 4 つのグループご とに KJ 法を用いて記述内容をカテゴリー化した。本文中ではカテゴリーを【 】,サブカテゴリー を< >で示す。
( 1 )Aさんの質問に対する回答のカテゴリー化
①「できる」群
学習の困難を伴うと想定した A さんについては,「できる」群に 143 名が該当し, 147 の記述 回答が得られた。このうち,<友達なら可能>,<個人で行うから可能>,<人柄がよければ可 能>,<課題という目的があれば可能>,<課題の内容が良ければ可能>の 5 つのサブカテゴリー で構成される【条件付きであれば可能】,<理由はない>,<できると感じた>の 2 つのサブカ テゴリーで構成される【理由はない】,<効率が良い>,<自分のためになる>,<モチベーショ ンを保てる>の 3 つのサブカテゴリーで構成される【自分にメリットがある】,<気にならない>,
<障害を気にしない>,<支障がない>,<抵抗がない>の 4 つのサブカテゴリーで構成される
【一緒に課題を行うことに抵抗がない】,<仕方なく行う>,<できないことはない>,<自分に 不利益はない>の 3 つのサブカテゴリーで構成される【消極的な肯定】,<サポートすれば良い>,
< A さんには能力がある>,<誰とでも可能>の 3 つのサブカテゴリーで構成される【その他】
という,合計 6 個のカテゴリーが抽出された。カテゴリーとサブカテゴリーを構成する記述内容 例および人数の内訳を表 7 に示す。
②「できない」群
一方「できない」群には 89 名が該当し, 93 の記述回答が得られた。このうち,< 1 人でやっ たほうが早い>,<時間がかかる>,<意味がない>の 3 つのサブカテゴリーで構成される【自 分にメリットがない】,< 2 人は苦手>,<グループなら可能>の 2 つのサブカテゴリーで構成 される【 2 人きりになることを拒否】,<イライラ>,<自分の負担>,<自分の時間が大切>
の 3 つのサブカテゴリーで構成される【自分への影響】,<課題は 1 人でやる>,<対応への不 安>,< A さんの人物像が苦手>,< A さんへの配慮>,<自分からは誘わない>,<仲の良さ による>,<機会がない>の 7 つのサブカテゴリーで構成される【その他】という合計 4 個の カテゴリーが抽出された。カテゴリーとサブカテゴリーを構成する記述内容例および人数の内訳 を表 8 に示す。
( 2 )Bさんの質問に対する回答のカテゴリー化
①「できる」群
人との関わりに困難を伴うと想定した B さんについては,「できる」群に 101 名が該当し, 117 の記述回答が得られた。このうち,<友達なら可能>,<仲が良ければ可能>,<短期間なら可 能>,< 2 人であれば可能>,<ずっと 2 人で過ごさないから可能>,<関わらなければ良い>
の 6 つのサブカテゴリーで構成される【条件付きであれば可能】,<気にならない>,<障害を
気にしない>,<支障がない>,<抵抗がない>の 4 つのサブカテゴリーで構成される【一緒に 過ごすことに抵抗がない】,<苦手を受け入れる>,<個性や性格として受け入れる>,<しつ こいとは思わない>,<理解へのフォロー>の 4 つのサブカテゴリーで構成される【受け入れる】,
<できないことはない>,<消極的な肯定>,<我慢する>という 3 つのサブカテゴリーで構成 される【消極的な肯定】,<事前の理解>,<こちらの工夫>の 2 つのサブカテゴリーで構成さ れる【事前の理解に基づく対応】,<理由はない>,<直感的にできる>の 2 つのサブカテゴリー で構成される【理由はない】,<相手を知る機会>,<力になりたい>,<友情を深めたい>の 3 つのサブカテゴリーで構成される【積極的な肯定】,<対応に自信がある>,<誰でも大丈夫>,
<公平に接したい>,<お互い様である>の 4 つのサブカテゴリーで構成される【その他】とい う合計 8 のカテゴリーが抽出された。カテゴリーとサブカテゴリーを構成する記述内容例および
表
7 「できる」群で得られたカテゴリーとサブカテゴリー(Aさん)
カテゴリー サブカテゴリー 記述内容の例
人数 サブカテ
ゴリー カテ ゴリー
条件付きであ れば可能
友達なら可能 ・友達だから
19
32
個人で行うから可能 ・課題といっても個人の課題だから同じ場所で一緒にやっても構わない
8
人柄が良ければ可能 ・自分と性格が合う子だと思えれば障害の有無にかかわらず仲良くしたいと思うから
3
課題という目的があれば可能
・課題を行うという目的があるので,自分で 話の内容を考えたりする必要があまりない から
1
課題の内容が良ければ 可能
・課題による
1
理由はない 理由はない ・断る理由がない
20
できると感じた ・できると感じたから
1 21
自分にメリッ トがある
効率が良い ・授業の課題であれば2人でやるほうが効率 がよい
12
自分のためになる ・教えることで自分のためにもなる20
・逆に自分が得られることがある
3
モチベーションを保てる
・2人でやったほうがモチベーションが保て ると思うから
5
一緒に課題を 行うことに抵 抗がない
気にならない ・特に気にならないから
2
障害を気にしない ・特に障害は気にならない
6 14
支障がない ・課題を行うことに支障はない
4
抵抗がない ・特に嫌悪感を抱かないから
2
消極的な肯定
仕方なく行う ・課題だったらやるしかないと思えるから
4
13
できないことはない ・2人で何かするのは少しためらいというか気を遣うことが多いなとは思うが,できな いことではない
2
自分に不利益はない ・こちらに不利益はないから
7
その他
サポートすれば良い ・苦手ならば手助けしてあげたら良い
・文字を書くことの補助などならできる
35
47
Aさんには能力がある ・文字を書くのが苦手なだけで,話し合い等ならできるから
9
誰とでも可能 ・誰と 2 人でもできる
3
人数の内訳を,表 9 に示す。
②「できない」群
一方,「できない」群には 131 名が該当し, 142 の記述回答が得られた。このうち,<トラブ ルになる人は嫌>,< B さんのような人が嫌>,<コミュニケーションが不安>,<しつこいの が嫌>の 4 つのサブカテゴリーで構成される【人物像への苦手意識】,< B さんと 2 人は嫌>,
<誰でも 2 人は嫌>,<グループなら可能>の 3 つのサブカテゴリーで構成される【 2 人きりに なることを拒否】,<イライラ>,<ストレス>,<疲れる>,<傷つく>の 4 つのサブカテゴリー で構成される【精神的負担】,<面倒>,<トラブルになりそう>の 2 つのサブカテゴリーで構 成される【面倒ごとの回避】,<休息の時間がほしい>,< 1 人の時間がほしい>,<静かにし たい>の 3 つのサブカテゴリーで構成される【静かに休む時間がほしい】,<仲の良い人が良い>,
<仲の良さによる>の 2 つのサブカテゴリーで構成される【仲の良い人と過ごしたい】,<自信 がない>,<気まずい>,<相手の負担>,<無理>,<障害に対する先入観>,<泊まりはき つい>の 6 つのサブカテゴリーで構成される【その他】という合計 7 のカテゴリーが抽出された。
表
8 「できない」群で得られたカテゴリーとサブカテゴリー(Aさん)
カテゴリー サブカテゴリー 記述内容の例
人数 サブカテ
ゴリー カテ ゴリー
条件付きであ れば可能
1 人 で や っ た ほ う が 早い
・授業の課題は1人でやったほうが早く終わ るから
11
時間がかかる ・授業の課題の進行が遅れそう9 26
意味がない ・課題をやるなら自分より上か同じレベルの人とやるのが自分にとって学びが多い
6
2 人きりにな ることを拒否
2 人は苦手 ・2人きりという状況はきついと思うから
17
グループなら可能 ・グループなどなら他の子と協力しながらや20
Aさんにわかりやすい方法,盛り上がる会 話ができるかもしれない
3
自分への影響
イライラ ・行動が遅くイライラしそう
4
16
自分の負担 ・課題もやる必要があるし,Aさんへの配慮も必要だから自分がいっぱいいっぱいにな りそう
8
自分の時間が大切 ・貴重な空き時間をAさんのために割くのは 厳しい
4
その他
課題は 1 人でやる ・課題は 1 人でやりたいから
16
31
対応への不安 ・Aさんにどう接していけば良いか分からないから
7
Aさんの人物像が苦手 ・発達障害の有無にかかわらず意思疎通に難のある人が苦手だから
2
Aさんへの配慮 ・自分ばかりが課題を先に進めてしまうと,仲が険悪になりそうだから
2
自分からは誘わない ・自分から誘えるかはわからない2
仲の良さによる ・障害のあるなしではなく,単純に仲が良いか良くないかで変わってくると考えてお り,偏見ではないが仲が良い確率のほうが 低いと感じたため。
1
機会がない ・一緒に課題を行う機会がないと思ったから
1
なお,「できない」群の回答として分析することが難しいと判断した 2 つの記述に関しては,今 回は除外として分析は行わなかった。カテゴリーとサブカテゴリーを構成する記述内容例および 人数の内訳を,表 10 に示す。
表
9 「できる」群で得られたカテゴリーとサブカテゴリー(Bさん)
カテゴリー サブカテゴリー 記述内容の例
人数 サブカテ
ゴリー カテ ゴリー
条件付きであ れば可能
友達なら可能 ・友達だから
16
32
仲が良ければ可能 ・仲良いなら関係ない
4
短期間なら可能 ・合宿くらいの期間は問題ない
2
2 人であれば可能 ・2人だけなら対応できると思うから5
ずっと 2 人で過ごさないから可能
・ゼミ合宿で同じ部屋の人だけとずっと一緒 にいるとは思わなかったから
2
関わらなければ良い ・意見を交換したりの作業があまりないならできそう
3
一緒に過ごす ことに抵抗が ない
気にならない ・あまり気にしない
8
17
障害を気にしない ・障害があっても気にしない2
支障がない ・特に支障はないと思ったから
3
抵抗がない ・その子と2人で泊まるからと言って特に抵 抗がある訳ではない
4
受け入れる
苦手を受け入れる ・人が考えていることを理解するのが苦手な だけだから
3
14
個性や性格として受け入れる
・Bさんは苦手なことがあって,それは個性 だったり性格と考える
3
しつこいとは思わない ・しつこさは私は感じない5
理解へのフォロー ・言っていることが理解しにくいならできるように話せばよい
3
消極的な肯定
できないことはない ・できないことはないから
3
消極的な肯定 ・仕方がない場合はできるが積極的にしたい11
とは思わない
6
我慢する ・自分が感情を抑えれば済む話だから2
事前の理解に 基づく対応
事前の理解 ・発達障害を理解していれば行動する中で戸 惑うことはない
7
・本人の状態を知っていれば悪意ではないと
11
分かるこちらの工夫 ・こちらの行動によってはうまくやっていけ ると思う
4
理由はない 理由はない ・断る理由がない
9
直感的にできる ・直感的にできると考えたから
1 10
積極的な肯定
相手を知る機会 ・相手のことをよく知って仲良くなるチャン スかなと思ったから
4
力になりたい ・基本的に力になりたい
3 8
友情を深めたい ・ゼミ合宿は友情を深めるためのものだから
1
その他
対応に自信がある ・トラブルにならないようにやんわりと接す ることができる自信がある
5
14
誰でも大丈夫 ・誰と 2 人でもできる
3
公平に接したい ・他の人からBさんが何と言われているかは 自分にとっては関係なく,公平に接したい と思うから
3
お互い様である ・我慢する部分は出てくると思うが,それは お互い様であると考えるため
3
考 察
1.発達障害の特徴のある友人への態度に関する傾向
本研究の目的は,発達障害の特徴のある友人に対する大学生の態度および態度決定に関する根拠 を明らかにすることである。よって,本項では発達障害のある友人への大学生の態度の傾向につい
表
10 「できない」群で得られたカテゴリーとサブカテゴリー(Bさん)
カテゴリー サブカテゴリー 記述内容の例
人数 サブカテ
ゴリー カテ ゴリー
人物像への苦 手意識
トラブルになる人は嫌 ・クラスメートとよくトラブルになる人と2人 で行動することは苦痛であるから
5
Bさんのような人が嫌 ・Bさんのような人が嫌いだから8 37
コミュニケーションが不安
・うまくコミュニケーションが取れず一緒にい ることが苦痛になっていると思う
14
しつこいのが嫌 ・しつこく聞かれることが苦手だから10
2 人きりになることを拒否
Bさんと 2 人は嫌 ・2人だとどう対処していいかわからない
21
誰でも 2 人は嫌 ・Bさんに限らず他人と2人きりは嫌だから5 32
グループなら可能 ・グループ行動なら大丈夫
6
精神的負担
イライラ ・長い時間一緒だとお互いにイライラしそう
14
28
ストレス ・身勝手な理由だがストレスがたまると思ったから
3
疲れる ・自分が気を遣って疲れてしまうと思うから7
傷つく ・傷つくことを言われた場合,同じ部屋にいるのはつらいから
4
面倒ごとの回避
面倒 ・関わるのが面倒だと思ってしまいそうだから
3
トラブルになりそう ・トラブルになる可能性を感じるから9 12
静かに休む時 間がほしい
休息の時間がほしい ・部屋ではゆっくりしたいから
7
1 人の時間がほしい ・一人の時間が欲しいから2 11
静かにしたい ・眠りがとても浅いので,できるだけ静かにしたい
2
仲の良い人と過ごしたい
仲の良い人が良い ・できれば仲の良い人と活動したいから
3
仲の良さによる ・どれくらい仲が良いかにもよる3 6
その他
自信がない ・一緒に行動できる自信がない
4
14
気まずい ・何を話そうか迷って気まずい空気になるかもしれないから
3
相手の負担 ・もし相手に不快な気持ちを与えたり自分がそれに気を遣うのも嫌だから
2
無理 ・やりたいと思わない
2
障害に対する先入観 ・偏見や先入観を捨てきれない
2
泊まりはきつい ・普段学校で会話する分にはOKだが寝食を共にするとなると少しきつい
1
除外
・一緒にいても特に自分から話しかけることは ほぼないから同じ部屋に泊まってもあまりか かわることはないから
1
・誰かに依頼されたのであれば許諾するが,ま
2
た,Bさんのペアがいなければ可能だが自ら 進んではケースバイケース1
て検討するとともに,発達障害に関する知識および障害児・者との接触経験が,発達障害者に対す る態度に与える影響についても検討していく。
友人関係質問紙における尺度得点に関する分散分析の結果,因子と人物における交互作用が有意 であった。すなわち,同一人物内では同胞因子に比べ,見守り因子における尺度得点が有意に高く,
同一因子内では B さんに比べ, A さんに対する尺度得点の方が有意に高かった。
上記の結果について,まず同胞因子と見守り因子の 2 つの因子内容についてみると,同胞因子に おいては,「 2 人で外食に行く」「 2 人で授業の課題を行う」など関わりが親密と考えられる項目が 多く含まれていた。一方,見守り因子においては,「授業中に文房具を貸す」「体育のプレー中に皆 で応援する」など関わりが浅いと考えられる項目が多く含まれていた。このように関わりが親密で ある同胞因子尺度に比べ,関わりが浅い見守り因子尺度において得点が高いという結果は,益山ら
( 2008 )の結果とも一致していた。また,生川( 1995 )が指摘している,自分自身と障害児・者と の関わりが深くなる態度尺度得点は低くなり,自分自身との関わりが薄い態度尺度得点は高くなる こととも一致していた。このことより,発達障害者への態度は,関わりが親密な行為よりも関わり が浅い行為において,より好意的になるということが示唆された。
一方,人との関わりに困難を伴うと想定した B さんに比べて,学習の困難を伴うと想定した A さ んの尺度得点が高かった。この結果は,相手が分かりやすいように話したり文章にしたりすること が苦手な特徴をもつ学生よりも,周囲の人とトラブルになったり,他者からしつこいと思われてし まったりするという特徴をもつ学生の方が,周囲の学生から友人として受容されづらいと報告して いる宮崎ら( 2015 )の知見と一致していた。これらのことから,人との関わりに困難を伴う学生 よりも,学習の困難を伴う学生のほうが友人として受容されやすいということが示唆された。以上 のことより,大学生における発達障害の特徴のある友人への態度に関して,全体的な傾向としては,
関わりの深さにおいては親密な行為より浅い行為に対して好意的になり,人物の特徴においては,
人との関わりに困難を伴う人物より学習の困難を伴う人物に対してより好意的になるということが 明らかとなった。
次に,発達障害に関する知識が発達障害の特徴のある友人への態度に影響を及ぼすのかについて みてみると,友人関係質問紙の尺度得点に関して,知識得点群間における統計的な差は認められな かった。この結果から,発達障害に関する知識は,発達障害の特徴のある友人に対する態度に影響 を及ぼさないことが推測された。一方で菊池( 2011 )は,発達障害に関する知識量が増えること により,自らが発達障害児に関わろうとする態度が促されると報告しており,本研究で得られた結 果とは異なっていた。このような差が生じた背景には,菊池( 2011 )は発達障害児に対する全般 的なイメージについて質問していたのに対し,本研究では特定の人物像を想定して質問していたこ とが影響していると思われる。
続いて,これまでの障害児・者との接触経験の種類の違いが発達障害の特徴のある友人への態度 に影響を及ぼすのかについてみてみると,「家族・親戚」群においては対象者全体と同様の傾向が 認められた。しかし,「アルバイト・ボランティア」群および「介護等体験・交流学習のみ」群に おいては,同胞因子尺度得点に比べて見守り因子尺度得点の方が高いという傾向は一致していたが,
人物による主効果および因子と人物の交互作用は有意ではなかった。このことから,「アルバイト・
ボランティア」群と「介護等体験・交流学習のみ」群の学生は,発達障害者に対する態度に関して,
人物像の影響をあまり受けていないことが推測された。渡邊ら( 2016 )は,大学において障害の ある人に関わるボランティアをしている学生は,障害児・者を特別視することが少ないと報告して いる。そのため,「アルバイト・ボランティア」群の学生は,どのような人物像の友人に対してで も同様の対応をできるのではないかと推察される。一方,「介護等体験・交流学習のみ」群の学生 においては,障害児・者との接触経験が少ないため,それぞれの人物像が「机上の空論的イメージ」
(益山ら, 2008 )となってしまい,回答に大きな差が出なかった可能性が考えられる。
一方で,「家族・親戚」群のみが対象者全体と同様の傾向になったことに関しては, B さんの同胞 因子尺度得点において,「アルバイト・ボランティア」群に比べて「家族や親戚」群で有意に低い という差が生じたことが要因ではないかと考えられる。この結果を「当事者性」という視点でみると,
家族や親戚という身近な存在として障害児・者と関わっている学生は,その当事者性の高さゆえに
「美辞麗句では済まされない経験」(渡邊ら, 2016 )をしていると推察される。そのため,障害児・
者との関わりが一時的であり,発達障害のある人を支援の対象として位置づけている可能性の高い
「アルバイト・ボランティア」群の学生よりも,受容されにくいことが推測される人との関わりに 困難を伴う友人に対する親密な関わりへの得点が低くなったと考えられる。
2 .発達障害の特徴のある友人への態度決定に関する根拠
本項では,発達障害の特徴のある友人への態度決定に関する根拠について,態度を肯定的および 否定的の 2 つの側面に分けて述べていく。
(1)肯定的態度に関する根拠
A さんと B さんの「できる」群において,【条件付きであれば可能】【理由はない】【一緒に課題を 行う( B さんにおいては一緒に過ごす)ことに抵抗がない】 【消極的な肯定】の 4 つのカテゴリーが 共通していた。両者において,特に【条件付きであれば可能】の中の<友達なら可能>というサブ カテゴリーは,カテゴリーの中で多くの人数を占めていた。宮崎ら( 2015 )は,自閉症スペクト ラム障害に対する大学生の援助意識を調査した研究において,「困難さの内容に関わらず,学生同 士の親しさがその援助意識を左右する」と述べている。このことから,相手の人物像や行為の内容 に関わらず,相手との関係性が良好であれば行為を遂行することが可能であると考える学生の存在 が示唆された。
また,【理由はない】【一緒に課題を行う( B さんにおいては一緒に過ごす)ことに抵抗がない】
という回答が存在したことに加え, A さんにおいては<自分のためになる>, B さんにおいては<
相手を知る機会>といった回答が見られた。このことから,大学生の中には発達障害者との関わり への抵抗を感じないだけではなく,関わりを前向きに捉えている者も存在することが示された。
一方で,「できる」と回答している学生の中でも,<仕方なく行う><関わらなければ良い>な ど消極的な意見も見られた。このことから,「できる」と回答している学生全てが必ずしも前向き な根拠を基に回答している訳ではないということが示された。
また, A さんにおいて特徴的なサブカテゴリーとして,<サポートすれば良い>が挙げられ,「苦
手ならば手助けしてあげたら良い」 「文字を書くことの補助などならできる」といった, A さんの苦
手に対してサポートするという記述が多く見られた。このような記述は B さんに対してはほとんど
見られなかったため,学生が他者理解や対人関係など,日常生活全般に関わる困難を特徴とする B
さんよりも,書字や文章化など学習面での困難が特徴的な A さんに対しての方が,サポートしやす いと感じていると解釈することができる。
一方, B さんにおいて特徴的なカテゴリーとしては, 【事前の理解に基づく対応】が挙げられ, 「発 達障害を理解していれば行動する中で戸惑うことはない」「本人の状態を知っていれば悪意ではな いと分かる」というような,相手の特徴を把握しておくことで対応が可能になるという記述が多く 見られた。益山ら( 2008 )によると,「事前の情報提供が無い場合は知的障害児に対する態度が否 定的になる危険性」があると示唆されており,学生の交流においても,同様に発達障害のある人物 の「興味,関心,特技や性格などの情報を提供すること」(大谷, 2001 )が相手のことを受け入れ やすくするために必要であると考えられる。
以上のことより,肯定的態度の根拠には,自分と対象人物との「親しさ」や対象人物の「困難の 程度」,対象人物に関しての「事前の情報の有無」が関わっているということが示唆された。また,
一口に「肯定的態度」と言っても,前向きな態度から消極的な態度とその度合いは人によって異な るということも明らかとなった。
( 2 )否定的態度に関する根拠
「できない」群においては, 【 2 人きりになることを拒否】というカテゴリーのみが共通しており,
A さん, B さんそれぞれの人物像において多くの回答数を得ていた。また,<グループなら可能>
と記述している学生が存在していることから,学生が自分 1 人で発達障害の特徴がある友人と関わ ることに不安を感じており,自分以外にも発達障害の特徴がある友人への対応を行ってくれる存在 を求めていることが推察された。
また, A さんにおいては, 「できる」群の中に A さんと課題を行うことを【自分にメリットがある】
と考える学生がいたのに対し,「できない」群では【自分にメリットがない】と対照的に考える学 生が存在した。両者の記述内容を詳しく見ると,【自分にメリットがある】と考える学生は, 2 人 で課題を行う方が<効率が良い>と考えているほか,「教えることで自分のためにもなる」「逆に自 分が得られることがある」など, A さんに教えることを通して,自分の学びが高まると考えていた。
一方,【自分にメリットがない】と考える学生は,< 1 人でやったほうが早い><時間がかかる>
など,効率の悪さを気にしている回答が多く目立ったほか,「課題をやるなら自分より上か同じレ ベルの人とやるのが自分にとって学びが多い」など, A さんと課題を行っても自分にとって学びや 利益がないと考えていた。これらのことから,「効率」と「自分の学び」という 2 つの観点が, A さんへの態度決定に影響を与えていることが推測された。
また, A さんの人物像に関わらず<課題は 1 人でやる>ものと考える学生が一定数おり,本来の 研究目的とは異なるが,学生の課題に対する意識について垣間見ることができた。
一方, B さんにおいて特徴的なカテゴリーとしては,【人物像への苦手意識】が挙げられ,トラ ブルになるような人や,しつこくされることに苦手意識をもつ学生が多く存在することが示された。
人物像への苦手意識という点で記述内容を見ると, B さんに対して苦手意識をもつ人が 37 名いる のに対し, A さんに対して苦手意識をもつ人は 2 名しかいないことから,人との関わりに困難を伴 う人物の方が学習の困難を伴う人物よりも受容されにくいということが示唆された。
以上のことより,否定的態度の根拠には,自分 1 人で対象人物に関わることへの「不安」や, 「自
分にメリットがない」という意識,対象人物への「苦手意識」が関わっているということが示唆さ れた。
3 .まとめと今後の課題
本研究では,発達障害の特徴のある友人に対する教育学部大学生の態度及び態度を形成する根拠 について検討することを目的としていた。
その結果,発達障害の特徴のある友人に対する態度については,先行研究と同様に,発達障害者 との関わりが親密な行為に比べて,関わりが浅い行為において好意的になることが示された。また,
人物の特徴では,人との関わりに困難を伴う人物に比べて,学習の困難を伴う人物に対してより好 意的になることが示された。
また,態度と障害児・者との接触経験との関連については,家族や親戚という立場で障害児・者 と関わっている学生は,ボランティアとして障害児・者と関わっている学生に比べて,人との関わ りに困難を伴う友人に対する態度が非好意的であることが示された。家族や親戚のように「当事者」
として障害児・者と関わっている学生の中には,障害児・者との深い関わりの中で否定的な態度を 構築している者も存在すると推察できる。そのため,障害児・者に対する否定的な態度の根拠につ いて,一人一人の話に耳を傾け,丁寧に働きかけることが必要であると考える。
一方,発達障害の特徴のある友人に対する態度を形成する根拠については,肯定的態度において,
自分と対象人物との「親しさ」や対象人物の「困難の程度」,対象人物に関しての「事前の情報の有無」
が関わっているということが示された。特に,対象人物との「親しさ」を重要視する回答が多く見 られたことから,健常児・者が障害児・者に親しみをもつことができるような機会を提供する必要 性があると推察できる。
また,否定的態度においては,自分 1 人で対象人物に関わることへの「不安」や, 「自分にメリッ トがない」という意識,対象人物への「苦手意識」が関わっているということが示された。特に,
自分 1 人で対象人物に関わることへの不安は, A さん B さんの両者において多く見られた。このこ とから,交流学習などを行う際には,ペアよりもグループでの活動を取り入れることで,障害児・
者と関わることへの不安感を軽減させることができると推察できる。
最後に,今後の課題として二点挙げておく。一点目は,学生の所属学部についてである。本研究 においては,学生の発達障害の特徴のある友人に対する態度が,同胞的な行為よりも見守り的な行 為において好意的になることが示されたが,対象が子どもの教育に携わる可能性の高い教育学部の 学生であったために,見守り的な行為に対する得点が高くなったとも推察することができる。その ため,教育学部以外の学部に所属する学生においても,同様に検討することが必要であると考える。
二点目は,学生と対象人物との関係についてである。本研究においては,学生と発達障害の特徴 のある人物を友人関係と設定し,学生の友人への態度について検討したが,学生が教育学部に所属 していたことから,学生と対象人物との関係を教師と児童生徒と設定して検討することも可能で あった。今後は,教育学部の学生の友人に対する態度と児童生徒に対する態度に違いがあるのかに ついても検討する必要があると考える。
また,本研究において, A さんおよび B さんの発達障害の特徴を文章で示した際,否定的な表現
を多用したことが今回の結果に影響を及ぼしたことも予想される。障害があることによって困難を
伴うこともある一方で,個人において良い面も存在すると考えられるため,今後の研究においては,
人物像を設定する際は,障害による困難についての記述だけではなく,肯定的な記述も取り入れて いく中で検討する必要があると考える。
引用文献
福島久美子・清水寿代. 2016. 「大学生の自己・他者受容と発達障害に関する知識が発達障害者に対する態度に 与える影響」『幼年教育研究年報』38, 35-42.
菊池哲平. 2011. 「教育学部学生における発達障害のイメージ:接触経験・知識との関連」『熊本大学教育実践研究』
28, 57-63.
益山篤子・東原文子・河内清彦. 2008. 「通常学級における知的障害児に対する級友の態度に及ぼす接触および 性別の影響について」『障害科学研究』32, 1-10.
宮崎紗織・中田洋二郎・佐藤秀行・永井智・田村英恵. 2015. 「発達障害特性による大学生活の困難性への支援
―自閉症スペクトラム障害に対する大学生の援助意識に関する調査―」『立正大学臨床心理学研究』13, 19-
29.
内閣府. 2000. 「平成
12
年版障害者白書」http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/gaikyou-h12/index.html(2017 年12
月30
日閲覧).内閣府. 2013.「平成
25
年版障害者白書」http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h25hakusho/zenbun/index-pdf.html(2017
年12
月30
日閲覧).生川善雄. 1995. 「精神遅滞児(者)に対する健常者の態度に関する多次元的研究―態度と接触経験,性,知識 との関係―」『特殊教育学研究』32(4)
, 11-19.
大谷博俊. 2001. 「交流教育における知的障害児に対する健常児の態度形成―態度と事前指導における情報提供,
交流経験,評価対象となる知的障害児の特定との関連性の検討―」『特殊教育学研究』39(1)
, 17-24.
渡辺弘純・植中慶子. 2003. 「小学生の障害児(者)に対する態度に及ぼす交流経験の影響」『愛媛大学教育学部 紀要,第Ⅰ部,教育科学』49(2)
, 15-30.
渡邊照美・青山芳文・稲冨まどか. 2016. 「障害児・者との接触経験の時期および内容と障害児・者に対する態 度との関連について」『教育支援センター紀要』7, 11-28.