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初等整数論の現代化について
数学研究室 宮 田 二竜 雄
(1968年IO月9日受理)
はじめに
新制大学初年級における数学の講義内容が,いろいろの意味で現代化を試みられている 現在,その一環として初等整数論の教授内容も変化されなければならないと思われる。初 等整数論が包含するすべての内蓉を現代化することは不可能であろうと考えられるが,初 年級向きの基礎溝義の段階ではある部分は今まで慣習上整数論に組まれていたものを組替 えることが望ましいのではあるまいか。特に近代の代数学が初年級の課程で講ぜられるよ うになって来ている現状からして,整除,最大公約数,最小公倍数,合同の概念,指標等 はいわゆる代数学の講義内容に移行した方がより自然であり,一般的に取扱え,その結果 次の段階である代数的整数論や代数関数論への継なぎが好ましい形で行えるのではないか と思われる。したがって初等整数論の講義内容として例えば連分数論,整数論的関数論,
素数定理,算術級数論などを中心的課題として2単位程度の講義にまとめられるものと思
う。
これとは反対に初等整数論の一部を準備したあとで代数学を学習させる方法も考えられ
1)
るが,この方法は歴史的であり,概念の構成上自然と思われる点も多いが,公理論的立場 とやや対立するものであり,制限された講義時間内での内容として適切でないのではある まいか。むしろ群やイデアルの具体的な例として整数や多項式の性質を考える方がより広 範であり,適切であると思う。
以下不完全な形ではあるが上記の主旨の具体化のための資料をえたいと試みる。
1. 整数の整除,最大公約数,最小公倍数
以下整数といえばすべて有理整数を意味するものとする。また考える環Rは可換環で,
2)
単位元1をもつものとする。整除の概念を考えるときはRの零元は除外した方が簡単であ るのでここではそうするものとする。
環Rのイデアルa,bの和をα十b,積を
aS={Σコab(有限和)Ia∈α, b∈b}
とかく。イデアルa,bについてα⊆bならbをαの約イデアル,αをbの倍イデアル,
またはαがbで割り切れるなどという。2っ以上のイデアルの共通約イデアルをそれらの
イデアルの公約イデアルという。とくにイデアルα,b,…の和α+b+…はa, b,…を 含む最小のイデアルであり,また任意の公約イデアルの倍イデアルであるのでα+b+…
をα,b,…の最大公約イデアルという。
これと同様にして,2つ以上のイデアルα,b,…に共通な倍イデアルをそれらの公倍イ デアルという。とくにα(b(…はα,b,…に同時に含まれる最大のイデアルであり,
任意の公倍イデアルの約イデアルであるからα(b(…をa,b,…の最小公倍イデアル
という。
単項イデアル(の,(のにたいして (の(の・=(aのがなりたつ。また定義から直接 a6⊆α(b,(a(b)(α+b)⊆αbがいえる。さてR自身はRのイデアルであるがこれをRの 単位イデアルといいR=(Dと書くことができる。明らかに αR二α(D=α
Rのイデアルα,bについて a+b=(1)
すなわちa∈a,b∈bがあってa+b−1とかけるとき,α, bは互に素であるという。
Rのイデアルα、,a2,…,α.がそれぞれイデアルbと互に素であれば
α1…αnt α1(・・ (αn
もそれぞれbと互に素であり,αi(i=1,…,のがそれぞれb」(ブ=1,…,m)と互に素 であれば a、…a。,b,…馬 および αr(…(an, b1(…(bm
もそれぞれ互に素である。とくにα,bが互に素であれば
α(b == αb = (α(b)(α一←b)
さらにα1,…,αnの任意の2つが互に素であればα1,…,αnが互に素であるという。
3)
このときα1(…(a。=α1…α。がなりたつ。
いまZを整数全体のなす環とし,上でR=・Zの場合を考える。Zは単項イデアル環で あるから,その任意のイデアルαは(の,aは負でない整数,とかくことができる。 a, b∈
Zとすればalbである必要十分条件は b・−Tac, c∈Z
とかけることであり,a, b≧oとしてよいからこの条件は (の⊆(a)
すなわちイデアル(のはイデアル(のの約イデアルとなることと同値である。
イデアルα,b, Cにたいして
a,b⊆C⇒ α十b⊆C α⊆b⊆C⇒ α⊆C
であるから,これをZの元でいい換えれば, 或る整数の倍数の和または倍数の倍数はそ
宮田:初等整数論の現代化について 173
の整数の倍数である ということに対応する。
整除に関する限りZの元は負でないとしてよいから以下断らない限りZの元aはa≧O とする。a, b∈Zの最大公約数をdとすれば上述から
(a),(の ⊆ (の
(の,(の ⊆ (c) ⇒ (d) ⊆ (c)
であるから (d)=(a)+(のが成り立ち,イデアルの意味での(のが(a),(のの最 大公約イデアルということに対応する。(の=(a)+(のよりZの元x,.yがあって(x,y は≧0とは限らない)
d=ax+by
とかける。すなわちいわゆるDiophantusの方程式が解ける。
a,b∈Zの最小公倍数を1とすればイデアルの一般論から
(1) ⊆ (の,(の
(m)⊆(a),(の⇒(m)⊆(1)
を用いて
(1)=(の((の
となり,イデアルの意味で(1)は(の,(のの最小公倍イデアルである。
2つ以上の整数の最大公約数,最小公倍数についても同様である。
a,b∈Zが互に素であれば前述より (a)十(の=(1)
である。したがってalbcのとき
(の=(c){(a)十(の}=(aの十(bの⊆≡(a)
がいえてこれからalCがでる。
a,b∈Zの最大公約数をdとすれば (d)=(a)十(の=(a,の
であるが
(a) 十(b)=(a−一・(qb) 十 (b),q∈Z であるから
(d)=(a− qb, b)
これはEudidの互除法に他ならない。
つぎに1次不定方程式について考えよう。
例えば
ax+by+cz=k, a, b, c, k∈≡Z ……①
の整数解κ,y,2を求める問題であるが,まず①が解をもつ必要かつ十分条件はkがa・
b,Cの最大公約数4で割り切れることである。それはイデアル(a)+(の+(のを考え れば,もし①が解X,y,9をもてば
k∈(a)十(の十(c)=(の
であるからdikは必要であり,逆にdikなら
k∈(の=(a)十(の十(の であるから①は解をもつ。
4)
なお具体的に①の解を求める方法は勿論初等整数論における通常の方法によらざるをえ まいが,これは代数学の立場からはあまり本質的ではあるまい。
2.素 数
PをRの素イデアルとする,すなわち剰余環R/Pが整域をなすとする。このとき ab∈p⇒aまたはb∈p
がいえる。Rと異なるイデアルmとRの間にm, R以外のイデアルが存在しない場合rnを Rの極大イデアルと呼ぶが我々の場合極大イデアルはつねに素イデアルであり・また剰余 環R/mは体をなす。
剰余環R/qにおける零因子はすべて巾零であればqはRの準素イデアルといわれる。
このとき
ab∈q, a〔E q⇒ヨn(自然数);bn∈q さてR−Zのとき,Pが素数であれば§1で述べた通り Plab ⇒ PlaまたはPlb
であるから(P)はZの素イデアルである。逆にP E O,1で⑫)が素イデアルであれば P−bc ⇒ b または C∈(P)
であるからPは素数でなければならない。すなわちPが素数であることと(P)が素イデア ルであることとは同じである。ただし,このとき(O),(Dは除外しなければならない。
また(m)がZの極大イデアルであれば(m)は素イデアルであるからmは素数であり 逆にmが素数であれば,イデアル(m)は極大である。何となれば
(m.)呈(の星(1)
となるイデアル(のが存在すれば m=ab,1<a<m
とかけmが素数であることと矛盾する。
以上から(0),(Dを除けば
宮田:初等整数論の現代化について
(i)Pが素数である
(ii) (P)が素イデアルである (iii)(P)は極大イデアルである
ことは同値である。したがってPが素数であれば剰余環Z/(P)は体をなす。
1ア5
環Rに昇鎖律を仮定する,すなわちRがNoether環であるとする。 Rのイデアルαが 2つのtrivialではないイデアルb, cの共通分であるとき, aを可約,そうでないとき 既約という。すなわちαが可約であるとは
α=b(c, α EEb,c畢R
となることである。たとえば素イデアルPは既約である。
RがNoether環であるからLasker−Noetherの定理
任意のイデアルαは有限個の準素イデアルの簡約された共通分として,しかも各準素イ デアルに対応する素イデアルがみな相異なるように表わすことができる。いま
α==:q1(・・。(qr===qlノ(・・。(q8ノ
をかかる2通りの表示とすれば,r=sであり,qiに対応する素イデアルPiとqノに対応 する素イデアルれ〆とは適当な順序でそれぞれ一致する。 が成り立つ。ここで準素イデ アルqに対応する素イデアルPとは
P=倒ヨπ;κn∈q,x∈R}
のことである。またこのときqをpに属する準素イデアルともいう。
qがpに属する準素イデアルである必要十分条件は (i) ab∈≡q, aGq⇒b∈P
(ii) q⊆P
(iii)x∈P⇒ヨn;xn∈q
となることである。なおRがNoether環であれば準素イデアルqに対応する素イデアル pにたいして
ヨn(自然数);pn⊆q⊆P がなりたつ。
さてR=Zのとき・Pを素数とし,素イデアルψ)に属する準素イデアルを(q)とす れば,q=per, P十rとするときもしr>1なら上の(i)よりが庄(のとなるからr∈(P)
となりP十r に矛盾する。したがってq=peでなければならない。逆にq=(pe)とp=
(P)にたいし,上記(i),(ii),(iii)がなりたっから(Pつは⑫)に属する準素イデァ
ルであり,結局(P)に属する準素イデアルは(pe), eは正整数,の形のものに限るわけ
である。
このこととLasker−Noetherの定理から任意のm∈Zにたいして
(m)=(P、・う(…((ρ卿),(あは素数であ≒ρ (i ¥」))
のごとき準素イデアルへの分解をえるが群ブなら(Piei),(ρ戸)は互に素であるから§1 より
(m)一(P⊥eL)…(P7e7 )===(P、e 1…1brP「)
となる。m>Oであることを考え合はせて m==Plet…P7e「
とmは素数巾の積に分解され,なおLasker−Noetherの定理からP,・・…Prは一意に決 定し,このことから容易に指数eiも一意に決定することが示せる。したがって整数〃Zの 素数巾の積への分解は順序を除いて一意である。これで素因数分解の可能であり,分解の 結果の一意性をイデアル論的立場から見ることができた。
5)
つぎに素因数分解定理を群論的立場から調べてみよう。その第一としてa,b∈Zのと きZを加法に関する群と考え部分巡回群(の,(のを考える。部分群(のが部分群(の の直ぐ下にあるとは
(i) (の呈(の
(ii)(a)塁(の集(のとなる部分群(C)がない ことと定義する。
このときblaであるからa==btとおくとき, tがもし素数でなければ a=brs, t=rs, r>1, s>1
であるから
(a)呈(br)呈(の
となり仮定に反する。したがってtは素数でなければならない。逆にa=bP, Pは素数,
ならば(の⊆(の⊆(のとするときblC,claであるからC/bla/bで, a/b== pが 素数であるからc/b=1またはc/b=a/bで,c=bまたはc== aとなり(のは(のの直ぐ 下にある。
この概念を用いて整数勉の素因数分解可能とその一意性を示すことができる。
まず(m)からZ=(1)までの鎖
(m)=(m。)集(M1)…⊆@Mk);(1) …②
で各(〃のが(Mi+1)の直ぐ下にあるものを作ることはできる。それはZで極大条件が いえるからである。
このときmi/mi+,(i=O,1,…, k−一一1)を鎖②の指数ということにする。2っの鎖が
宮田:初等整数論の現代化について 177
等しいとは同じ長さと同じ指数をもつこととする。
m=_璽_塑塗__Mh−1.−
Ml M2 m lt
であるからmを素数巾の積として表わすことはできる。
mのある素数の積への分解
があるとき
m=P1…Pr
M1=Pi…Pr_1 M2=Pi…Pr_2
Mr=1 とおけば1つの鎖
(m)=(m・)皐(Ml)皐…皐(Mア)=(D
を作ることができ・相隣るものが直ぐ下にあるようにできる。かかる鎖にJordar1_H61der_
Schreierの定理を用いればmの素因数分解の一意性を容易にえる。
群論的考察の第二としてつぎのように考えることもできよう。
G−(a)を位数mの巡回群とし m==Pi…Pr
をmの素因数分解とする。
G==H。,Hi=(aPl…紛, (i=1,2,…, r)
とおけば剰余群Hi−,/Hi(i=1,2,…, r)はすべて単純群であるから G=H。≡〜H1⊇…⊇…Hr={e}
はGの組成列をなす。なお組成剰余群H向/H, (i=1,2,…,r)の位数はそれぞれP1,…,
Prであり・ Jordan−H51derの定理からP1・…, Prは順序を無視すれば全体として一意に確 定するが,このことはmの素因数分解の一・意性に他ならない。
上記三方法とや轍むきの変った方法としてつぎのように述べることもでき£
ZはEuclid整域である,すなわちZの各元aに整数q(のが対応して (i) bia⇒ψ(の≦ψ(の
(ii)a・ b∈z, b≒°⇒ヨq・r∈z; a−bq+r, q(・)<q(のがなりたっことである。
Zの場合q(a)−lalととればよい。
一方整i域RがUFD(Unique Factorization Domain)であるとは (iii)Rの各非単元が既約因子の有限積として表わすことができて
、(iv)その分解は順序と単元を無視すれば一意である
が成り立っことである.よく知られているようにEudid整域はUFDであるカ ら・Zで 素因数分解の一意性が成り立つ。
以上4つの方法を述べたが講義内容の立て方によってどれが適切であるかが決まるので あろうが通常は群論的考え方が現実的であるように思われる。理論的には第一一の方法がよ いと考えられる。
3.合 同
合同の概念はもともと群論的概念である。Abel群Gの結合を加法で書くときa・b∈Gが Gの部分群Hを法として合同であるとは
a−b∈H
となることであり,これをa≡b(H)とかく。この合同という関係は同値関係であるか らGの類別を生ずる。この類別の各類に属する元を1っつつえらんで作った集合をこの類 別の代表系という。よく知られているように類の間に自然な結合を定義すれば,この類の 全体は群をなす。これをGのHによる剰余群といいG/Hとかくわけである。
Gが特に整域Rで部分群HがRのイデアルnである場合・a・bがnを法として合同で
あることを
a≡b m」odn
とかく。明らかにa≡bmob n⇒ca≡cb mod n(vc∈R)がなりたち・このことから a≡≡〆,b≡b!mod n⇒ab≡〆∂ノmod n
がいえる。したがって剰余加群R/nは自然な結合で環をなす。これをRのnによる剰余
環という。
nが単項イデアル(n)であればmodnの合同をa≡b modnとかく。 このとき a._b=cn,c∈Rということと同一であるからnlaとa≡omodnとは同じことであ
る。aを含むZ/@)の元である剰余類をaとかこう。
(a,の=(1)のとき易をZ/(のの既約剰余類という。 このとき(a,の=1ともか く。また
ax十ny=1, x,.y∈Z
とかけるから薇7=了となりiはZ/@)の単元となるから・Z/(のの既約剰余類の全 体Eは可換乗法群をなす。
αc≡bcmodnで(n,の=(1)なら万∈E, ac=・bcであるからa・=b すなわち a≡bmodnがいえる。
Eの位数はいわゆるEulerの関数q(n)である:IEI=q(n)。したがってLagrangeの定
零宮田:初等整数論の現代化について 179 理から
vi∈E;b9(n).. i 換言すれば (a,n)=(1)のとき aip(n)≡lmodn
なるEulerの定理をえる。とくにnが素数ρのときはq(P)= P−1であるから(a, P)=
(1)のときa −1≡1m・dρをえる. v・わゆるF・・matの・J・定理がえられた。
Pを素数とすれば§2よりZ/(P)は体である。有限体の部分集合が2元以上を含み,
これが乗法に関して群をなせば,その群は巡回群であるからZ/(P)からiを除いた集合 (Z/(P))*は巡回群でその位数はP−1である。(Z/(P))*=(τ),Zは生成元であるか
らこのことからも
c羊o mod p⇒cP−1≡1mod p がえられる。とくに任意のa∈Zにたいして
aP≡a mod P ここでmod PのP個の剰余類は多項式 xp一ガ
の根であることがわかったが係数を体の元にもつ多項式の相異なる根の個数は次数を超す ことはないから
xp−x=T(x−a), a∈Z/(P)
両辺におけるXの係数を比較して
一1=Ta (a・≒o)
aに1,2,……,P−1を与えて
(P−1)!≡−1mod P すなわちWilsonの定理をえる。
ふたたび(z/・(P)・)*について考える.(z/CP))*一(i)においてilよP−1乗して始 めて1となるからCはPを法とする原始根に他ならない。すなわちPを法する原始根が存 在することが示せた。
一般に巡回群の位数がmのとき,その巡回群の生成元の個数は¢(m)であるからPを 法とする原始根の個数はψ(ρ一Dである。いずれにしても1つの原始根をCとすれば 1,c,……, cpa−2
はZ/(P)の既約剰余類の代表系をなす。
さて合同式
∫(x) ≡ O mod m
はZ/(m)で考えれば単なる方程式と考えることができる。(a,m)=(1)ならaはZ/(m)
で単元であるから互亙=b はZ/(m)でただ1つの解をもつ。すなわち ax≡b mod m
は(a,m);(1)のときは1っの解をもつ。具体的にはFermatの定理からaV(m)≡1 mod mであることから解は
κ≡〆(m)−1b mod m で与えられる。
つぎに連立合同式について考察しよう。一般に整域Rの各イデアルが素イデアルの積と して表わすことができるときRをDedekind環という。勿論ZはDedekind環である。
Dedekind環においてChinese Remainder Theoremは次の形で述べることができる。
Dedekind環Rにおいて,有限個のイデアルaiおよび有限個の元ti(i=1,2・…・n)
を与えたとき,連立合同式
x≡Xi (αi) (i=1, 2, ・・・… , n)
がRで解をもつための必要かつ十分条件は,ゴ≒ブならXi≡Xf(αi 十 aj)となることで
ある。
ここでRがDedekind環であるという条件をさらに弱わい条件でおきかえることができ る。すなわちRにおけるイデアル間の演算(と+とが互に分配的:
α((b+bノ)=(α(b)+(α(bつ
α一ト (6(bノ) = (α一トb) ( (α一←bノ)
であれば十分である。Debekind環ならつねにこれが成り立つ。
Rが1をもつ可換環のときはイデアルにさらに条件を追加すればChinese Remainder Theoremは次の形で成り立つ。すなわち
Rを1をもつ可換環とし,α1,……,anはRのイデアルで餅ブならaiとajとは 互に素であるとする。このときκ1,……,Xn∈Rを任意に与えれば
x≡Xi (αi) (i=1, 2, ・・・… , n)
はRに解xをもつ。
R=Zのとき上述をいいかえれば n個の合同式 x≡ai modmi, i=1,2,……, n
の解があるための必要かつ十分条件はi> 」ならば ai≡aゴmod(mi, mj)
がなりたつことである。
このとき解はMl、 M2,……, mnの最小公倍数を法として一意である。
宮田:初等整数論の現代化について 181
第二の形をR=Zの場合に述べれば
M1, M2,……, Mnが2っづっ互に素で, Xl,κ2,……, xnが任意の整数であれば κ≡絢 mod mi, i=:1,2,……, n
は解を.もつ。
このとき解はM=M、M、……mnを法としてただ一通りにきまる。
素数Pを法とする合同式
f(x) ≡ o mod」ク は体Z/(P)では方程式
∫(x)=o
を考えることと同じであるから,n次の合同式はnよりも多くの解を有しない。
fi(X)を多項式とし連立合同式
fi(x)≡o mod mi, i=1,2,・_・・, n
を考えよう。ただし痔ノなら(mi,〃mゴ)=1とする。この連立合同式の法MIM2…mnの 解の総数をN,fi(x)≡omod miの解の個数をNiとすれば N=N、N2……Nnである
ことはつぎのようにしてわかる:
fi(x)≡o mod miの解をXiとしベクトル (tt, x2、……, Xn)
を考える。このベクトルの全体と上の連立合同式の解の全体とが全単射的に対応すればよ い。上のベクトルに
x≡κ¢mod mi,(i=1,2,……,の
の解x・を対応させることができることはChinese Remainder Theoremの第二形から
わかる。
x・≡銑 mod mi, (i=1,2,……,の であるから
fi(Xo) ヨノ≧(Xi) ≡ O mod mi, i=1,2,・。・…,n
であるからこのX。は上の連立合同式の解である。この対応が単射であることは:
2つのベクトル
(Xl, x2, …°°, Xn),(yi,y,,……, y。)
が異なればあるiに対して娩羊錫mod m・iであるが対応するx。, y。に対して x。ii −Yo mod MIM2……mn
が成り立てば
Xo≡≡Xi mod mi,3,。≡.yi modmi
であることよりXi≡)li mod miとなり仮定に反するからである。
つぎにこの対応が全射であることは,いまx。を連立合同式の任意の解とすれば fi(x)≡o mod mi
の解XiでXi≡x。 mod miとなるものをえらぶ。つぎにベクトル(ユゴ1,X2,… 。・・, Xn)
をつくれば,このベクトルがX。に対応する。
さて上記fi(X)をすべて同一のプ(X)にとればm=ρ、αφ、α・……P.αnのとき ∫(x)≡o mod m
を解くことと連立合同式
ノ(x)≡o mod Piαi, i;1,2,……, n
を解くこととは同値である。またよく知られているように素数巾を法とする合同式 f(x)≡…o mod Pn ・ の解は∫(x)≡omod Pの解から導かれるので一般の法mが合成数のとき合同式 ∫(x)≡o mod m
7)
の解法は法が素数の場合に帰着するから原則としてはZ/(P)の方程式論を考えればよい ことになる。
したがって以下では素数Pを固定し,法Pに関する合同式を考えることとする。Z/(P)
をKとかく。∫(X)∈K〔X〕がn次多項式なら ∫(x)≡o mod P
の次数はnであるという。このときn===deg f(X)とかけば
deg .f(x)9(x)=degノ(x)十degタ(x),ノ(x),タ(x)∈K〔x〕
よって
ノ(x) 9(x)≡o mod P⇒ノてκ)≡o またはタ(x)≡≡o mod P 8)
であるからK〔x〕も整域である。体の上の多項式環の理論からf(x),タ(x)∈K〔x)
ならば
ノ(x)≡9(x)q(x)十r(x) mod P deg r(x)<deg 9 (x)
となるq(x),r(x)がmodPでただ一通りにきまる。ただしタ(x)…≒omod Pとする。
このことからK〔x)におけるEuclidの互除法が実行できて,ノ(x),9(x)のmod Pに 関する最大公約数d(x)を決めることができる。このことからさらに多項式をmod Pに 関して既約因子の積に一意に分解できることが示される。Kを係数とする多変数多項式に 9)
ついてもいくつかの結果が知られているがこの程度までくればmod Pに関する合同式論
は体論的に扱ってはじめて明快になると思われる。
宮田:初等整数論の現代化について 183
4・Eulerの関数q(m)
環Rのイデアルα1・α2・…,α・が2っつつ互に素であるとする:αi+αi=(1),(倉ノ)。
このとき剰余環R/aiの直積
S=R/α1×……×R/αn
を考える。RからSへの自然写像fをつぎのように定義しよう。
くわ
r∈≡Rがmodαiで剰余類r(i=1,2,……, n)に含まれているとする。このとき
_(1) _(2) _(n)
f:r→(r,r,……, r )
なる対応を考える。Chinese Remainder Theoremによって
_(1) _(2) __(23,
(x1, κ2,……, Xn)∈S
を臆に与えれば進婿 σ一1,2,一,n)となるx∈Rが存在するからσll 謬
_(n) _(1) _(2ノ 、、一..(nJ
…… CXn)=(x,X,……, X)となり
_(1) _(2) _(%)
f:x→(Xl,κ2,一・,x。 )
したがってfは全射である。またfがR→Sなる準同型であることはいうまでもない。
つぎに
_(i) ..−
Ker f=倒κ=o(Vの}
={xIx∈αi(Vの}
=∩αi i=1
であるから準同型定理により
R/∩ αizR/α1×……×R/αn i=1
この事実はChinese Remainder Theoremを用いなくとも帰納法などによって直接示す 10)
こともできる。
R=Zの場合,m>1, m∈Zの素因数分解を
m=P、Pt・P、「2……Pn「n, ri≧1
とする。このとき上でαi・=(Pi i)とすればαiは上記条件を満足する。さらに (吻=(P、「・)((P。・r・)(……((P。・・n)
であることに注意すれば
Z/(m) …≧Z/(P,「i) × Z/(P2r2) ×……× Z/(Pnrn)
がえられる。これは法mの剰余環の構造を与えるものである。
φ
一般にRorSを2っの環の問の同型とし,R,Sの単元全体のなす乗法群をそれぞれ R*,S*とかけば,φをR*に縮小して
φ*
R*≡≡S*
がえられる。したがって
(Z/(m))* ≡≧…(Z/(ρみ) × Z/(P,「2) ×……× Z/(Pn n))*
or−一(Z/(Plr i))*× (Z/(ρ2ア2))*×・…・・× (Z/(P・「n))*
さてここでEulerの関数q(m)はmより小さい自然数でmと互に素となるものの個
数である。一 ン∈Z/(m)が単元,したがって万∈(Z/(m))*となるための必要十分条件は
(a,m)=1となることであるから
gn(m)=1(Z/(m))*1
がいえる。ここでMを集合としたときIMjはその濃度をあらはすものとする。同型な上 の関係の両辺に着目して
n ψ(m)=T「ψ(Pi「i)
i・=1
さらにPが素数でr≧1のときは
ψ(グ)=P7 −i(P−1)
がいえる。それはr=1なら,Z/(P)なる体の乗法群(Z/(P))*の位数は ψ(P) = 1(Z/(P))*1=P−1
となる。r≧1のとき対応
タ: Z/(P「+i)→Z/(グ)
NA を,modグ+1でaを含むma aにmodグでaを含むta aに写すものと定義すれば,タは 全準同型であることは明らかであり,9からさらに全準同型
9* : (Z/(PPt+t))* →(Z/(P「))*
_ の
が誘導される。a∈Kerタ*ならばa=1すなわちa≡1 modグであるから a≡1十陛グ modグ+1,x∈Z
ここでxに順次0,1,……,P−1を与えればP個の異なる(Z/(グ+1))*の元で,しかも Ker 9*に含まれるものがえられる。逆にKer 9*の任意の元は上のようにしてえられた いずれかの元であるから1 Ker.9*1=Pで
(Z/(pr+1))*/Ker 9*!lif!(Z/(Pり)*
の両辺の位数を比べて
ψ(グ+1)/P=ψ(グ), q(グ+1)=卿(グ)
であるから
ψ(グ)=グー1(P−1) (r≧D 以上から
q(m)一重1q(P…)一孟帥(1一か
宮田:初等整数論の現代化について 185
一甥並(レエ Pi)・m一立、P…i
とくにこの結果から(a,の=1ならψ(ab)=q(a)q(の。
この最後の結果はつぎのようにして示すこともできる。そしてそれからρ(M)を計算 することができるのは当然である。
いま位数abの巡回群Gを考える。ここで(a,の=1とする。よく知られているよう にGは位数aの部分巡回群と位数bの部分巡回群の直積:G=H×Kとかける。これによ
ってx∈Gをx=yg,.y∈H,2∈Kとかく。y,2がそれぞれH, Kの生成元であるとき,
かつそのときに限ってxはGの生成元であるから,両辺の生成元の個数を比べて
q(aの=ψ(a)q(の, (a,の=1
なお位数πの巡回群Gにおいてnの任意の約数4にたいして 且={x∈Gl xCt=e}
はGの部分巡回群でlHi=dである。したがってGに含まれる位数4の元の総数はq(の 個で,Gの各元の位数はnの約数であるから
Σψ(d)=n dln
がいえる。ここで左辺の和はnのすべての正の約数4の上をわたるものとする。
5.指 標
Gを有限Abel群とし,その位数IGi=nとする。 Gから複素数体Cの中への準同型対 応ZをGの指標という。すなわちXはa∈Gで定義されX(a)∈C,X(a)≒0で
z(aa )=・x(a)x(〆)
を満足する関数である。任意のa∈Gにたいしてan=1であるからX(a)n=1であり したがってz(a)は1のn乗根の1つである。
Z,ZノをGの2っの指標とするとき
ZZノ(a)=Z(a)Zノ(a)
と定義すればZガもGの指標であり,この積に関してGの指標の全体GiよAbe1群をなす。
Gの単位元は
Z。(a)=:1 (Va∈G)
となる指標x。である。なお
Z(の=iX(a) (va∈≡G)
と定義すればZ∈Gで
xx(の==Z(のZ(a)=一 IZ(a)i2=1
であるからxz =x。でx=ズ1
Abe1群の基本定理からGは底ω1,……,ω。をもち, a∈Gは
a;ZVI k 1……ttlr le r
とかける。巡回群(wi)の位数をniとすれば鳥はmod〃iでとればよい。 したがっ
てZ∈Gは
z(Wi)=εi, εzni=1
が与えられれば完全に決定する。逆に1のni乗根εiを与えたとき
x(a)=ε、鳶1・…・・ε西,a=w、ん・……w, kr
でZを定義すればZ∈G。このことから容易に G≧…G
を示すことができる。
つぎにG,(i=・1,2,……,r)を有限Abel群とし直積
G=G1×G2×……×Gr
を考える。a∈Gがa=(al, a2,……, ar), ai∈G,であるときZt∈G,にたいし Zi(a)=Xi(ai)
とおき,XiをGの指標と考え積
X=XIX2 Xr
を作り,(Xi,κ2,……, Xt)→xなる対応を考えれば
GorG1×G2×……×Gr
上述から
Z(の=1(VZ∈G)く=⇒a=e Z(a)=Z(aノ) (VZ∈G)仁⇒a=aノ 指標の和についてよく知られているように
嵩zω一{∵∵;諜
および
z壽zω一r∴∵塞
カミなりオこつ。
さてHがGの部分群でZ∈Gが
宮田:初等整数論の現代化について 187
z(の=1(∀a∈H)
であるとき,Z(a), a∈GはGのHによる剰余類では一定の値をとる,すなわちZ(の は類関数であるからZは剰余群G/Hの指標と考えることができる。逆にG/Hの各指標 は上の性質をもっGの指標とも考えることが出来る。かかる指標の全体はGの部分群貢を なす・したがって君頂をσの部分群と考えることができて,蘭一且としてよい.対 応H→HはGの部分群の集合と,Gの部分群の集合との間のGalois対応である。
ここでGとして(Z/(m))*を考えればIGI=q(m)であるから(Z/(m))*の指標の総数 1(Z/(m))*1=q(m)
であることはG{yGからいえる。特に素数Pにたいしては
[(Z/(P))*1=P−−1 であるから
VZ∈(Z/(P))*⇒zp−1=X。
いまZの位数を0(Z)とかけば zσ=Z。仁⇒0(z)ld
であることは位数の定義から明らかであり,したがって(Z/(P))*の指標Zにたいして 0(x)lP−1
また
(Z/(P))*or (Z/(P))*
で(Z/(P))*は位llk P−一 1の巡回群であるから
A A
ヨZ∈ (Z/(P))*; 0(Z)=P−1 このとき
A A A x,x2,……, zpa−
はすべて異なり,これが(Z/(P))*のすべての指標を与える。また(Z/(P))*は有限巡回 群であるから(Z/(P))*に含まれる位tw dとなる指標の個数はq(d)である。したがっ てzd=Xo, dはP−1の約数,となるZの個数は
ΣP(δ)=d δld
またP−1の約is( qiでゴ≒ブなら(qi,9「ゴ)=1であるときQ=qq,……qsとおくとき 0(Xi)=qi, i=1,2,……, sとなる)Ciにたいし
0(ZiX2……Xs)=o(z、)0(x2)……0(Zs)=Q
ここでmod mの場合に帰ろう。 mod mの既約代表系をR(m)とかけば集合として
R(m)=(Z/(m))*
と考えてよくz(a)が類関数であることから前に述べた指標の和の公式はつぎのように 書き直すことができる。
(p(m), z二z。のとき
譲傷)==i。,編のとき
および
2].Z(a)一(q(m) ・ a≡1 m°dm°とき
z 【o ,a美1 mod mのとき さて b∈R(m)なら
ヨc∈Z;bc…≡1 mod m であるから
z(bc)=・−z(D=1 =x(のx(の
であり
憂(の__1−z(の x(の
したがって
9(湯ヲ憂(b)x(n)−9(h)ヲz(c)z(n)
一φ(振)ヲx(cn)一{11:に1撒£ご
さらに
cn≡1mod m
であれば両辺にbを掛けて n≡b mod m
であるから結局
論乎(b)・z(n)一{1:挺糊:購
が成り立つ。
ふたたびGを有限Abe1群とし, Gの部分群 H={x2【x∈G}
を考える。前に述べた意味でHに対応する指標群Gの部分群HをGの2次指標群という。
の
Z∈≡H←⇒Z(x2)=1 (vx∈≡G)
宮田:初等整数論の現代化について 189 であるから
Z∈H仁⇒X2=Z。
したがってZがGの2次指標であるための必要十分条件はZの値が±1のいずれかとな ることである。いまGの底Wiのうち0(Wi)二2の倍数となるものの全体がs個であっ
s
たとすればHは(2,2,…,2)型の不変系をもっAbel群である。逆にHの各元aはZ(の
==1・X∈Hを満足するからGの元aがGの平方元であるための必要十分条件は Z(の:=1 (VZ∈H)
となることである。
前述のようにHはG/Hの指標群と考えられるからG/Hも不変系(2,2,……,2)を もつ。もっともこのことはHの定義から直接に示すこともでぎる。
a∈Hとして・方程式x2 ・=aの解κを考える。1っの解κ。2=aをとって固定すれば xl=κqy, y2==eである。 Gの部分群
U={夕ly2=e}
に対応する指標群はHと同型であるからUも(2,2,……,2)型の不変系をもつ。したが って方程式
x2=a, a∈G
がもし解ければ,その解の個数は2・,2s=IUI,である。
G=Z/(m)*のときGの指標Zをmod mの指標ということにする。いまmの素因数分 解を
吻=ρ・たψ,々2……ρみ とすれば
(Z/(m))*≡≡ (Z/(P,k1))*×……× (Z/(P7妬))*
であるから前に述べたことからZ∈(Z/(m))*は
X ・= XPI XP2……XPT, ZPi∈(Z/(Pi「i))*
Xm(a) ==Xpi(aPi) , aPi∈ (Z/(Pt r2))*
と考えられるから
x(a)=・TXpai(の Pilm
aをmod mの2次剰余・Zをmod mの任意の2次指標とすればX(a)=1であ
るから勿論
Xm(a)= 1, Xpai∈≡ (Z/(Pi,t))*
がいえる。
(i)P≒2を素数とすれば
1(Z/(Pり)*[二P? −i(P−1)
であるから(Z/(グ))*の底をzv,1+Pで
0(w)=P−1, 0(1十P)==グー1 1D
ととることができるから
a≡ωα(1+P)β .・d・P・のときX。(の一(−Dα
ア−2 (ti)P=・2のとき(Z/(2r))*の底は一1,5ととれ,0(−1)=・2・0(5)=・2 で
あるから
a≡(_Dα5β mob 2 rのとき x,…(の一(−1)α
Z2(2)(a) = (−1)β
の二通りをとることができる。なお (iii)a,bEZが同符号である事実を a≡b mod OO
とかけば形式的に○○をmの素因数と考えてP=○○のとき(Z/(P))*の底を一1・0(−D
=2ととることができるから
a≡(−1)αmod OOのときX。。(の=(−1)α
したがってmod mでaが2次剰余であるための必要十分条件は
(i) 」ウlm, PAf2, 00
(ii) 22 1 m
(iii) 23 【 m
(iv)○Olm
のとき のとき のとき のとき
XP(a)=1
×2(1)(a)=1
λ:出(2)(a) :== 1
x。。(の=1 となることである。
このことからmod mの2次乗IJ余全体の作る群をQmとおくとき
1(Z/(m))*:Qm 1・=2r+δ2+δ。。
ここでrはmの中の2,00以外の素因数の個数,また2αがmの中の素因数2の最高巾で あればα<2のときδ2=O,α=2のときδ2=1,α>2のときδ2=2,最後にm>0 ならδ。。=0,m<0ならδ。。=1とする。
したがってaがmod mの2次剰余であれば x2≡a mod m
1