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奈良県の小中学校に於ける算数、数学?育の実態調 査の結果についての考察
著者 久保田 勇夫
雑誌名 奈良学芸大学紀要
巻 3
号 2
ページ 157‑159
発行年 1953‑12‑25
その他のタイトル A Research of Results of Investigations on Mathematical Educationin Primary and Lower Secondary School in Nara Prefecture.
URL http://hdl.handle.net/10105/5102
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奈良県の小中学校に於ける算数、数学教育の 実態調査の結果についての考察
久 保 田 勇 夫 (数学教室)
(昭和28年9月29日受環)
IsaoKUTl0TA:A Research ofReBults ofInvestigEItions on加bthematical Ed−lCationin PTimary and LowerSecondarySchool
iII Nara Prefecture.
党般奈良県教育委員会の協力を得て本県の小中学校の算数・数学・耶斗教育の実態について調 査研究をして見たのであるが其のうち算数・教学教育についてその詳細な統計などは紙面の都合
で省略してそれらの資料から窺われる結寛だけを一部摘記すれば次の如くである。
ト 小学校算数科
(a)教 科 書
本県の小学校で採用されている算数科の教科書は「新しい算数」(東京書籍、禰永)、「○年生 の算数」(大阪書簡・清水)「算数の学習」(学校図書・戸田)「算数の本」(中教出版・平田)の閉 種頭を出です各地方事務所管内毎に−後期乃至二種類に限定せられている。
その百分率は左指の如くであ るが県内に於ける分布は平地 では「新しい算数」「○年生の 算数」が殆んどで山間部には
「算数の学習」「算数の本」が多 い。
(b)算数利の指導者・参考図書・経費
本県の小学校で主として算数科の指導と研究に算数部員として尽力して居らる1方の出身は其 の約半数の48%が旧師範の卒業生で次いて旧制中学高女の19%各値の教員養成所の8%新制高校 の5%学芸大卒3%となっている。虎に′聞知の如く内吉野及吉野地方事務所管内耳他山間地方で は旧制中学高女卒が最多叉は第二位を示している。
小学校での算数についての児童用参考書の数は児童100人について7冊程度の平均となり教師 用参考書については一校平均19冊と云う統計になっている。算数科に於て使用せられる予算は児 童一人について平均一ヶ年問30円という貧弱なもので全予算に対する算数科の予算の割合は3.8
%という統計結果である。
(C)施設・備品・資料
県下の小学校で算数教室とか資料準備の部屋をもっているのは10校程度に過ぎない状態であり 備品や資料の準備については100%近くまで備えられているのは寒暖計・算磐・物指・巻尺・定木・
コンパスなど教壇の卑近な日常の用具に過ぎない。50%以上備えられているのは算数科として必 要な用具教便物約60種類中28種類程度で半数に満たす、大部分はそれ以下の準備状況である。一 般的に見て低学年に必要な用具資料は高学年に於て必要な資料に比べると比較的良く備えつけら れている。これは経費も安価で済み比較的容易に準備が出来るのと叉どうしても欠くことの出来
ない必要性によると考えられる。高学年では念頭算式指導法でも何とかその場を塞げることにも よるであろうし経費の点からもそれを作る労力の多さの点からも高学年の用具や教使物資料が準 備せられない理由が働いていると考えられる。本県の算数教育としては備品の画からは今後この
奈良学芸大学紀要 俸3巻第2号 昭和28年12 月28 日
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高学年に必要とするものを整備すべき要求に迫られている訳でそれが今後の小学校算数科の学習 効葉をあげる一つの途でもある。
2・中学校数学科
(孔)教 科 書
本県の中学校で使用せられている数学科の教科書は用常の数学」(大日本図書・数研)「中等 数学」(学校図書・昏田)「中等数学」(績史堂・矢野)「中等新数学」(日本書籍・阿部)が大部分 でその百分率は 下表
に示す如く「f]常の数学」が圧倒的に多く使用されて 居りそれについて「中等新数学」「中等教学(矢野)」
「中等敦学(皆野)」の帽であるが山間部は殆んど「日 常の数学」に統一されている。統計によると「日常 の数学」た使っているもの」うち的40%は不満をも っている様であるから適当な畝科害が得られ次第こ の教科書の分布は戎琵哩変化する運命にある。
(b)数学利の教員構成
本県に於いて中学校数学科教師として活躍して居られる方々をその出身から分類すると県全体 としては旧師範卒が39%次いで工業専門学校出身・工業以外の高等専門学校出身者が夫々15%宛 学芸大以外か大学卒が7%旧青年師範学校卒が7%旧制中学校辛が3%、学芸大学出身者は未だ 2%に過ぎない。奈良市内だけから云えば旧師範卒粛%工業専門卒28%其他の高専卒11%で、他 は云うに足らない。旧制中学・新制高校卒は奈良市内には皆無であるが山間部には衷高1ユ%の地 方事務所管内平均のところも存在する。これによって数学科教員の素質の上からも教員分布の不 平衡が窺われる。
(C)数学科の参考図書・経費
県内の中学校での数学科の生徒用参考図書については100人につき10貯程度でそのうち比較的 恵まれているのは奈良市の100人につき35冊であり恵まれていないのは宇智・吉野管内の100人 につき5個である。教師用参考図書としては県内一校平均10暦でそのうち多いのが、奈艮市の一 校につき25冊平均で砂ないのが吉野・内吉野管内の一校平均6冊となっている、やはり山間部は 教師としての自己研鋸にも不便だとの結論になるようである。
数学科の予算について見ると生徒一人について県内平均一ヶ年問の数学科の経費が36円である がその一八割の金額は泰良市が11円で最低、山添・字智・吉野・内吉野管内は50円間近を上下し ている。叉全予算に対する数学科の予算額は平均2.77%であるがこれも奈良市、生駒管内が1.5
%程度で最低なのに対し吉野、内吉野管内は5%を上下している。これから見ると山間部の管内 は生徒一人についての費用叉他の学科の経費に対する数学科経費の相対的な割合に於ては相当数 学科に力を入れていると判断することが出来るが教員構成と学校全体としての経費予算の絶対・額 に於て山間部は平地に及ばないと云うことが出来る。これは地域社会そのもの1経済力と収容生 徒数の多い少いの差異が甚しいことに原因するものと見ざるを得ない。
(d)施設・備品・資料
本県内の中学校で数学科の教室として多少の施設のあるのは20校を精々上廻る程度で別に数枚 が資料室、準備嚢などを備えている、たいていの中学校は数学科の戸棚が備えてある程度を出 でない。数学教壇のある中学校のうち10校は生駒管内で庇の点生駒郡は恵まれていると云うこと
が出来る。
次に備品や資料の整備状況についてはそのうち90%前迄に備えつけられているのは方眼黒板・
奈良県の′ト中学校に於ける算数数学教育の実態調査の結果についての考察 (159)
物指、巻尺、コンパス、定木、分度器、温度計、算磐など数種のものに過ぎす、計算尺、平板測量器、
天秤など多少経費のか1るものは45%程度の整備状況である。中学校数学科に入用な約75項目の 備品資料のうち約50%程度に整備されているのはそのうちの20項目に過ぎない。展開図とか相似 形、各種の幾何図形的な説明具や、教使物の整備状況は甚だ不良であり叉地域社会の予算・決算・
人口・面積・生産・消費・運輸・交通・衛生などに関する資料は40%程度の整備状況であるが租税・
商取引・預金・有価証券・保険など実務に関する資料は概して10%以下の整備状況である。数学 科の指導に必要な度毎に銀行や会社に足を運んだり借りて廻る時間と労力を省くためにも何時で も使える状況におくことが是非とも必要である。実務に関する資料などは左程費用をかけずとも 教師の継統的な努力と注意で漸次に整備充実出来るものであるから本県中学校の数学教師諸賢の 熱意と実行を期待したい。現実にはこれらの資料をあまり使用せずに生徒は巽社会に出れば必要 な度毎に覚えて行くであろうと云う様な昔の数学科の考え方で中学校数学科の教育を其社会に可 能な点をも直結することを怠り、一般の中学生にとって中学校が最後の然も完成教育であること を忘れて戦前式の念頭算に終始して其の場をやり過している学校が多いと推定せざるを得ない。
(e)数学科のクラブ活動・其他
本県の中学校での数学科のクラブ的活動は約弼%の学校において行われて居り、それに参加し ている生徒は数学科のクラブ活動を行っている学校の総生徒数の約11%という統計になってい る。次にどのような事柄がクラブ活動の主題になっているかを統計的に見ると クラブ数では珠 算57%測量捜製図7%統計7%其他29%となって居りクラブ活動に参加している生徒の人数では 珠算79%測量及製図2%統計7%其他12%となっていて珠算が絶対多数である。
其他上に述べたこと以外にその地域社会の必要からその中学校で特に工夫設定されている資料 単元についての調査統計も行ってあるがそれらについての検討は都合で今回は省略することにし たい。
以上の本県の算数・数学教育の現状について、これを他府県の同種の実態統計と比較検討する 資料が未だ得られないのは甚だ遺鰭であるが此の調査研究の結果に鑑みて本県の算数・数学教育 が今後どのような方向に努力の重点が向けられるべきかについて十分な熟慮と検討が加えられな ければならない。