奈良教育大学学術リポジトリNEAR
カナダの教育制度と第2言語教育
著者 伊東 治己, PRIKRYL Yoko Azuma
雑誌名 教育実践研究指導センター研究紀要
巻 6
ページ 1‑13
発行年 1997‑03‑31
その他のタイトル Canadian Educational System and Second Language Teaching
URL http://hdl.handle.net/10105/4334
伊 東 治 己 (奈良教育大学英語教室)
Yoko Azuma PRIKRYL (Carleton University, Canada)
Canadian Educational System and Second Language Teaching
ITO Harumi
(Nara University of Education) Yoko Azuma PRIKRYL (Carleton University, Canada)
Synopsis二When describing any educational program, it is necessary to put it in the context of
the whole educational system. Keeping this in mind, this paper describes the general framework of the Canadian educational system and the second language teaching conducted in that framework. In doing so, the paper first refers to the decentralized nature of the Canadian educational system, focusing on the vital roles played by local school boards.
Secondly, it describes FSL (French as a Second Language) programs with a special focus on French immersion programs which are now attracting a lot of attention from educational circles throughout the world, not only as an innovative and successful approach to foster communicative competence in a second language but also as an important alternative of primary education. Finally, the paper refers to some of the major influences the immersion programs are exerting on the Canadian educational system.
Keywords: Second Language Teaching, Immersion Programs
1.はじめに
社会の急速な国際化の進展に対応すべく、母語以外の言葉で異文化間コミュニケーションが図 れる能力を子ども達の中に育成することが、 Egの内外を問わず重要な教育課題の一つになってき ている。学校を取り巻くそのような状況の中、カナダにおいて第2言語としてのフランス語での コミュニケーション能力の育成に多大な成果を収めつつあるイマーション・プログラムが世界的 に注目されているO特にわが国の場合、第15期中央教育審議会第一次答申(1996年7月)を受け、
公立小学校への英語教育の導入がたとえ部分的であれ現実的となった今、初等学校から展開され るイマーション・プログラムに今まで以上に熱い視線が向けられっっある。
これまでにも、数多くの外国語教授法が諸外国からわが国に移植されては、廃れてきた。その 原因を改めて考えてみるならば、それぞれの教授法が培われてきた教育風土を十分考慮すること
伊東 治己 Yoko Azuma Prikryl
なく、性急にわが国に移植してしまったところにその原因があったように思われる。本稿では、
このような歴史的反省に基づき、オンクリオ州(その中でも特にオタワ)を主なフィールドとし て、今注目を集めているイマーション・プログラムも含めてカナダにおける第2言語教育が、ど のような教育環境の中で実施されているのかを明かにすると同時に、特に初等教育に限定して、
第2言語教育が学校教育にどのような影響を及ぼしているのかという点についても論及する。
2.州によって異なる教育制度
カナダの教育制度の基本的性格は、 1876年に制定された「英領北米条例」によっておおかた決 められていると言っても差し支えない。緩い連邦制の下に各州政府にかなりの自治権が与えられ たが、教育もその点例外ではなく、個々の州における教育はその州の責任において実施すること になった。州によって、地理的・言語的・文化的環境が大きく異なることを考えるならば、ごく 当然のことだった。この地方分権型教育制度は、そのまま現代にまで受け継がれているo翼実問 題として、日本の27倍という広大な土地を有し、多くの言語や民族を有し、各州にかなり大きな 裁量権が与えられている連邦制を国の基本とする現在のカナダにおいて、統一された教育制度を 設けることは非常に困難と言わざるを得ない。よって、カナダ連邦政府の中には日本の文部省に 当る中央集権的な官庁は存在しない。各州で実施されている教育の内容に関しては、各州政府に 一任されている。要するに、連邦政府は基本的にはお金だけ出して、口は出さないのである。
この地方分権体制のおかげで、カナダの教育制度について一般化することは極めて困難であり、
かつ、州ごとの教育制度の比較が目的でない限り、さほど生産的でもない。義務教育の期間、無 償教育期間およびその対象、カリキュラム構成、学校制度、教育支援体制、大学‑の入学条件、
大学院進学条件、授業料(特に外国人留学生の授業料)など、教育に関わるほとんど総ての面に おいて各州とも独自の政策を掲げているのが現実である。例えば、学校制度に関しても下の表1) が示すように、州ごとにかなりのばらつきが見られる。
州 名
初 等 学 校ブリティッシュ・コロンビア アルバ一夕
サスカチュワン マニトバ オンクリオ ケベック
ニュー・ブランズウィック ノノヾ・スコシア
プリンス・エドワ‑ド・アイランド ニューファンドランド
ユ‑コ ン
ノースウエスト・テリトリーズ
幼稚園から第7学年 幼稚園から第6学年 幼稚園から第8学年 幼稚園から第8学年 幼稚園から第8学年 幼稚園から第6学年 第1学年から第6学年 幼稚園から第6学年 第1学年から第6学年 幼稚園から第6学年 幼稚園から第6学年 幼稚園から第6学年
中 等 学 校 第8学年から第12学年 第7学年から第12学年 第9学年から第12学年 第9学年から第12学年 第9学年から第13学年 第1学年から第5学年 第7学年から第12学年 第7学年から第12学年 第7学年から第12学年 第7学年から第11学年 第7学年から第12学年 第7学年から第12学年 オンクリオ州では、初等教育は幼稚園も含めると10年間で、中等教育は5年間である。最後の
第13学年はOAC学年とも呼ばれ、大学進学に必要な授業単位を取得する学年である。この制度 はオンクリオ州独自の制度であり、他州あるいは外国からオンクリオ州の大学に進学しようとす る場合に、よく問題になっている。なお、このOAC学年制度は1998年度中等学校進学生徒から 廃止になる予定である。中等学校を4年間で修了し、 1年早く、大学に進学できることになる。
さらに、学校の運営母体も州によって大きく異なる。例えば、ケベック州の場合、もともと教 会(カトリック)と学校との繋がりが非常に強い。ニューファンドランド州などは、同じ教全組 織であっても、宗派ごとに独自の学校運営がなされている。オンクリオの場合は、公立の学校つ
まり宗教色のない学校とカトリック系の学校ならびにフランス語系の学校の三つが併存している。
このような状況を考えるならば、カナダの教育制度を一言で紹介することは不可能にちかい。も し、仮に一般化できるとするならば、それはただ実に多様化しているということだけであろう0 3.州教育省と地区教育委員会と地域住民
3. 1.州教育省と教育委員会
地方分権型教育制度の下、各州の教育は各州の教育省が担当し、教育省には教育長官が置かれ ている。各州の教育省は一部日本の文部省のような機能を果たしており、連邦政府から各州に交 付された教育予算は各州の教育省を通して、その管轄下にある各地方教育委員会に再配分される。
しかし、教育制度の地方分擬制は州レベルでの教育制度についても言える。つまり、教育省は 州レベルでの教育の大枠を決定する権利を有するものの、各地区の教育の具体的運営は当該地区 の教育委員会が実質担当している。独自にカリキュラムを編集するなど、かなりの自由度が各教 育委員会に与えられている。しかも、教育委員会の設置形態自体も地区ごとに大きく異なってい る。例えば、オンタリオ州オタワ地区(オタワ市内とその郊外を含む)を例に取ると、次に示す ように、言語(英語かフランス語)と宗教(カトリック系か公立)という2つの要素が絡んで、
全部で6つの独立した教育委員会が併存している。
旧 オ 市 タ 内
芸芸芸員会 蓋王墓主星 オ. 校 タフ教ワラ育 カス員. ン委 ル公一語会
ン学卜立
オ. ツタフク ワラ学. ン校 カス教一語育 ルカ委トト員 ンリ会 ワ
地 区
郊 外
芸毒芸昌芸 蓋蓋芸主蓋 .
オタワ教育委員会(Ottawa Board of Education)は、オタワ旧市内にある英語系公立学校 を管轄し、カールトン教育委員会(Carleton Board of Education)はオタワ周辺部にある英語 系公立学校を管轄している。オタワ・カトリック教育委員会(Ottawa Roman Catholic Separate School Board)は、オタワ旧市内にある英語系でカトUック系の学校を管轄し、カー ルトン・カトリック教育委員会(CarletonRomanCatholic School Board)はオタワ周辺部に
伊東 治己 Yoko Azuma Prikryl
ある英語系でカトリック系の学校を管轄している。オタワ・カールトン・フランス語公立学校教 育委員会(Le Conseil des Ecoles Publiques d'Ottawa‑Carleton)はオタワ全域に散在している フランス語系の公立学校を管轄し、オタワ・カールトン・フランス語カトリック学校教育委員会
(Le Conseil des壬Icoles Catholiques de Langue Fran§aise de la Region d'Ottawa‑Carleton)
は、オタワ全域に散在するフランス語系でカトリック系の学校を管轄している。このように、オ タワ地区には合計6つの教育委員会が併存するものの、その規模はまちまちである。非カトリッ ク系で英語系の住民が絶対的多数派を占めているので、公立英語系のオタワ教育委員会とカール トン教育委員会が圧倒的に規模が大きく、フランス語系は管轄範囲は広いもののどちらもミニ教 育委員会である。
このように、オタワという小都市に6つの異なる教育委員会が併存している理由は、法律によっ て、カトリック系住民の子どものための教育を預かる教育委員会と、フランス語系住民の子ども の教育を預かる教育委員会の設置が保証されているからである。もちろん、カトリック系にしろ フランス語系にしろ、独自の教育委員会の設置に当っては、ある程度の需要がまず存在しなけれ ばならないということは言うまでもない。
各地区での教育の運営は地区の教育委員会に大きく任されており、州教育省は日本の文部省ほ ど、中央集権的な性格を有してはいない。しかし、州教育省は教育予算を交付するという形で各 地区の教育委員会に対して政治的な圧力をかけることはできる。もっとも、各州の教育省が地区 の教育委員会をコントロ‑ルする程度は州によって大きく異なる。ニュー・プランズウィック州 などは、州教育省の権限がかなり強い州である。一方、オンクリオ州の場合は、これまで比較的 多くの裁量権が各地区の教育委員会に委任されていたが、州政府での政権の交替を受けて、目下、
教育行政のみならず、カリキュラムの面でも州教育省による教育委員会のコントロールを次第に 強化しようとしているのが現状である。
3.2.教育委員会の組織・運営
カナダの学校教育を実質的に切盛りしているのは各地区に存在する教育委員会である。そこで、
オタワの力‑ルトン教育委員会の場合を例に取り、その組織と運営の実態を簡単に紹介してみるO カールトン教育委員会の管轄地域は、オタワ市の郊外に位置する8つの市区域に広がっており、
1996年現在、 64の初等学校と15の中等学校がその管轄下に存在している。これらの初等・中等学 校での教育に関わる基本的・全般的な問題は、 8つの地区から選出された教育委員(trustees) による全体会議で審議・決定される。現在、 8つの管轄区域から14名の教育委員が選出されてい る。任期は3年で、市会議員の選挙に合わせて、教育委員の選挙も実施される。教育委員による 全体会議の他に、教育委員会には各種の専門委員会(committee)が設置されており、管轄下の 学校での教育に関わる専門的な問題を特に扱っている。委員会審議の結果は、教育委員による全 体会議に報告されることになっている。
教育委員会自体の運営は教育委員会職員や研究員によって賄われているが、その中核を担って いるのは、教育長(Director of Education)、事務局長(Secretary of the Board)、財務局長 (Chief Financial Officer)、および6名の主事(Superintendent)で構成されている評議会 (ExecutiveCouncil)である。この評議会の構成メンバーは、いずれも教育行政・財政の専門家 であり、月に2度開催される教育委員全体会議に対して、管轄下の学校での教育に関わる基本方 針や方策を提案することになっている。しかし、最終的に事が決定されるのは、あくまで地域住
民によって選出された教育委員による全体会議においてである。
3. 3.教育委員会の財政基盤
州内各地区の教育委員会の財政は、州教育省からの交付金(grant)と地区に居住する住民か ら収められる財産税(propertytax)で賄われている。家族の中に就学年齢の子どもがいるいな いに拘らず、住民は地区の教育委員会に財産税の一部(教育委員会ごとにその割合が決められて いる)を支払わなければならない。つまり、子どもが全員学校教育を終えて仕事に就いている家 庭も地区の教育委員会に財産税を支払わなければならないのである。地区にひとつの教育委員会 しか存在しない場合は話しは簡単であるが、ここオタワのように地区に6つの教育委員会が併存 している場合には、若干、話しが複雑になってくる。各家庭は教育委員会および自分の家庭の性 格(英語系・カトリック系・フランス語系)に応じて、財産税の支払い先となる教育委員会を選 択することができるのである。基本的には、カトリック系の家庭はカトリック系教育委員会を、
フランス語系の家庭はフランス語系教育委員会を財産税の支払先として選択する傾向にあるが、
もちろんそれぞれが宗教色のない公立系で英語系の教育委員会を選択することも可能である。そ の半面、非カトリック系の家庭がカトリック系の教育委員会を選択したり、非フランス語系の家 庭がフランス語系の教育委員会を選択することはほとんどない。フランス語系かつカトリック系 の家庭は、原則的には、自分の地区に存在する4つの教育委員会すべてを選択の対象にすること ができる半面、英語系で非カトリック系の住民は選択の幅が自然に公立系のオタワ教育委員会と カールトン教育委員会に限られてくる。上で指摘したように、英語系で非力トリック系の住民が 大多数を構成しているので、オタワ地区の住民の多くがオタワ教育委員会とカ‑ルトン教育委員 会に財産税を収めているのが現状である。
オンクリオ州にある地区教育委員会のうち、管轄内に大きな商業地区を抱えるオタワ教育委員 会とトロント教育委員会については、地域住民ならびに企業から収められる財産税が高額なため、
州教育省はこの二つの教育委員会に対しては教育交付金を支出していない。よって、この二つの 教育委員会は地域から収められる財産税によってその財政の大半を賄っているのである。それで いて、この両教育委員会は他の教育委員会と比べて財政的に恵まれている状態である。しかも、
ともに大きな商業地区を含むため、法定地価が高く、新しく家を購入しようとしていた多くの住 民が地価の低い郊外に家を求めた結果、子どもの数は減少傾向にある。大きな予算で少ない子ど もを教育しているのである。それだけ、優れた教育を施すことができるのは言うまでもない。
一方、同じオタワ地区にあるカールトン教育委員会の場合は、管轄区域がオタワの郊外に当る ため、法定地価が低く、かつ、商業地区も少なく、住民や企業からの財産税は相対的に少なくなっ ている。そこで、州教育省から交付金を受領している。それでも、教育予算はオタワ教育委員会 よりも少ないのが現状である。さらに、ドーナッツ減少により、就学年齢の子どもの数はますま す増える傾向にある。オタワ教育委員会の場合とは反対に、少ない予算で多くの子どもを教育し なければならないのである。オンクリオ州では、現在、このような教育委員会問の財政的較差が 問題になりつつある。州政府は、この較差を是正する方策を目下模索中である。そのひとつの方 策として、オタワ教育委員会とトロント教育委員会に対して、財産税の上納を要求している。当 然、教育委員会伽はこの提案を拒否している。もう一つの手段として、州レベルでの教育の中央 集権化に即した動きの一環として、財産税を教育委員会が集める代わりに、州教育省が‑括して 徴収し、それを各教育委員会に分配する方法も検討している。解決までにはまだまだかなりの曲
伊東 治己・Yoko Azuma Prikryl
折がありそうである。このように、ここオンクリオ州では、地方教育委員会の財政問題を軸に、
教育の地方分権体制と中央集権体制がしのぎを削りつつあるのが現状である。
3. 4.教育委員会と学校および地域住民
各教育委員会の下には、初等学校と中等学校(場合によっては成人学校も)が設置されている。
各教育委員会にかなりの自由度が認められているように、各学校にも学校運営の面においてある 程度の自由度が認められている。特に、校長の権限がかなり強いのが大きな特徴である。学校で の教育予算の配分は校長の重要な仕事である。教頭も含め新しい教員の採用に当っても最終的か つ実質的な判断は校長に任されている。
教育委員会および学校とその地域の住民との関係は日本のようにかならずLも上意下達的では ない。上で述べたように、地域住民は、学齢児童のあるなしに拘らず、財産税を教育委員会に収 めなければならない。ただし、オタワ地区のように、その地区に複数の教育委員会が存在する場 合には、各家庭は財産税の振込先となる教育委員会を選択することができる。自身がカトリック であればカトリック系の教育委員会を選び、自己の財産税をその教育委員会に収めることができ るし、フランス系であればフランス系の教育委員会を選択することができる。教育委員会に財産 税を収めることと引き換えに、地域住民は自分が所属する教育委員会の教育委員を選挙で選ぶこ とができる。選出された教育委員は、地域住民の代表として、住民の意見や希望を教育委員会に 反映させることができる。さらに、選挙で選ばれた教育委員だけでなく、地域住民も直接自分達 の意見や希望を教育委員会および学校に反映させることができる。例えば、カールトン教育委員 会の場合、教育委員による全体会議および専門委員会の例会の最初の15分は、地域住民が単独あ るいはグループで、直接、委員会に様々な問題を投げかけることができる時間として設置されて いる。もちろん、地区の学校の校長や地区選出の教育委員と、学校の運営方針や教育方針につい て直接話しをすることができるようにもなっている。大きな教育改革が、このような地域住民か らの直訴から始まることもカナダでは珍しくない。
学校や教育委員会へ様々な注文を突き付けることと平行して、地域住民による学校教育に対す るボランティアも実に盛んである。教室の中に子どもの親が入って来て、教師の手伝いをするな どは決して希なことではない。筆者自身、オタワ地区のいくつかの学校を訪問する機会があった が、訪れたいずれの学校においても、親達がボランティアで学校に来て、教室で教師の手伝いを したり、図書館で図書の整理をしたりしていた。いずれにしても、カナダにおける教育の大きな 特徴は、教育の地方分権化によって、教育委員会が果たす役割が非常に大きくなっていることと、
教育委員会・各学校と各家庭との繋がりが非常に密接であり、しかも、その関係が一方通行的で はなく双方向的であることである。
4.教育課程と学校制度
4. 1.教育課程と学校制度のずれ
日本の場合、小学校6年間、中学校3年間、高等学校3年間という6 ‑ 3 ‑ 3制が、戦後、ア メリカの教育制度を基盤に確立され、今日に到っている。この6 ‑ 3 ‑ 3制は学校制度の区切り を示すと同時に、カリキュラムの区切りも示している。カリキュラムが学校制度の区切りに合わ せて作られていると言った方がよいかもしれない。その結果、日本の学校教育の根幹をなす学習
指導要領は、小学校、中学校、高等学校別に編纂されている。カナダ・オンクリオ州の教育制度 を非常に複雑にしている要素の一つは、教育課程の区切りと学校制度の区切りが一致していない ことである。そこで、まず、オンクリオ州の教育課程を簡単に紹介してみよう。幼稚園から大学 入学までの教育課程が下の表のように区切られている。幼稚園年少組から第3学年までがプライ マリ、第4学年から第6学年までがジュニア、第7学年から第9学年までがトランジション、第 10学年から第13学年(OAC学年とも言われる)までがスペシャライゼ‑ションという異合いに、
全部で15年間に渡る教育が5・3・3・4という割合で、 4つの段階に区切られている。
(学 年) (教育課程) (学 校)
なお、表中のJKはJunior Kindergarten (幼稚園年少組)を、 SKはSenior Kindergarten (幼稚園年長組)を指している。最後のOACとは、 Ontario Academic Creditsの略で、大学進 学を希望する中等学校の生徒は、進学希望先の大学に合わせてある一定数のOAC単位を揃えな ければならない。大学進学を希望しない生徒は、もちろん、このOAC単位を取得する必要はな い。第12学年を終了すれば、中等学校から卒業できる。義務教育は第1学年から始まり、子ども が16歳になる学年まで続く。義務教育期間が、日本と違って、カリキュラムの区切りで規定され ていないのが、大きな特徴である。カナダ国民である限り、 OACの段階まで学校教育は無料で ある。
問題は、この5・3・3・4という区切りが、あくまで教育課程の区切りを示しているだけで あって、学校制度の区切りを意味しないことである。オンクリオ州の場合、大学入学前の学校教 育は、初等学校と中等学校で行われる。初等学校は、幼稚園年少組から第8学年までをカバーし ている。 []本流に言えば、この初等学校は、幼稚園と小学校および中学校の一部が併設されてい
る学校である。中等学校は第9学年から第13学年のOACまでをカバーしている。上記の教育課 程の区切りを参照するならば、初等学校はプライマリ、ジュニアおよびトランジションの最初の 2年間の教育を受け持ち、中等学校はトランジションの最後の1年間とスペシャライゼ‑ション の3‑4年間を受け持っことになる。学校制度での一番の区切りは、第8学年と第9学年の問、
つまり、初等学校と中等学校の間の区切りであるD ほとんど総ての子どもは、この段階で、通学 している学校を替ることになる。しかし、この区切りは、教育課程の上ではトランジションの途 中であり、新しい上級の学校に進学しても、初等学校の時と同じカリキュラムで教育を受けるこ
とになる。しかし、教育を担当している教師は全員替る。トランジションという名前通りには、
教育・学習面での連携がうまくいかないのが現状である。
4.2.多様化した初等学校
カナダ(少なくともオンクリオ州)での教育を複雑にしているもう一つの要素は、すべての初 等学校に第8学年まで設置されているとは限らないという事実である。第5学年や第6学年まで
しか設置されていない初等学校もあるし、その逆に第7学年と第8学年しか設置されていない初
伊東 治己 Yoko Azuma Prikryl
等学校もあり、その種類は実に多岐に渡っている。オタワ教育委員会の場合、全部で55校の初等 学校が存在するが、次に示すように多様な形態の学校が混在している2)。
ア)幼稚園から第8学年まで 12校 エ)幼稚園から第4学年まで 1校 イ)幼稚園から第6学年まで 36校 オ)第4学年から第8学年まで 1校 ウ)幼稚園から第3学年まで 1校 力)第7学年から第8学年まで 4校 第6学年までしか設置されていない初等学校に通っている子ども達は、第7学年に進級する時点 で、第8学年まで設置している近くの初等学校に移るか、第7学年と第8学年しか設置されてい ない初等学校に移ることを余儀なくされる。しかも、近くに適当な学校が無い場合には、自宅か
らかなり遠く離れた学校までスクールバスで通うことになる。
カ‑ルトン教育委員会の場合も、すべての初等学校が第8学年まで設置しているわけではない。
第6学年や第5学年で終る初等学校もある。初等学校は全部で64校あるが、その種別はつぎのよ うになっている3)0
ア)幼稚園から第8学年まで 15校 エ)幼稚園から第4学年まで 2校 イ)幼稚園から第6学年まで 20校 オ)第6学年から第8学年まで 6校 り)幼稚園から第5学年ま 19校 カ)第7学年から第8学年まで 2校 第8学年まで設置していない初等学校は、その校名がエレメンタリ・スク‑ルではなく、パブリッ ク・スクールとなっている場合が多い。幼稚園年少組が設置されていない初等学校が2校存在し ているが、これらは学校の性格上(後で紹介するイマ‑ション・プログラムに特化されている)、
該当学年の子どもが非常に少なく、一つの学年を形成できなかった学校である。その場合、その 地域の当該学年の子どもは他の初等学校に通うことになる。第6学年から第8学年あるいは第7 学年から第8学年までしか設置されていない初等学校は、制度上、インターミ‑ディエイト・ス クールと呼ばれ、校名はミドルスクールとなっている場合が多い。第5学年あるいは第6学年ま でしか設置されていないパブリック・スク‑ルの子ども達の中には、第6学年あるいは第7学年 から始まるインターミ‑ディエト・スクールにそのまま進学するものもあれば、通学距離の関係 で、地域の他の初等学校に編入する場合もある。このように、現在通っている学校の性格によっ て、いずれかの段階で転校しなければならなくなるのは、オタワ教育委員会の場合と同様である。
4.3.複雑化の要因
このように、カナダの教育制度は実に複雑な様相を呈している。文部省から都道府県教育委員 会さらに市町村教育委員会へと繋がる縦系列の教育行政制度と幼・小・中・高・大へと繋がる極 めて系統だった学校制度に慣れ親しんでいるわれわれにとっては、 「複雑」を通り越して「混沌」
の域に達していると思える程である。その第‑の要因としては、やはり徹底した教育の地方分権 主義を挙げることができる。より具体的には、日本の文部省のような国民の教育を中央で管轄す る省庁が存在せず、教育は各州政府に一任されていることに加えて、各州の教育行政の大半が各 地区の教育委員会に委譲されていること、各学校長に学校運営に関してかなりの自由裁量が認め られていること、地域住民が子どものいるいないに拘らず財産税を直接地域の教育委員会に収め なければならないこと、当該教育委員会での教育政策の立案に多大な影響力を持つ教育委員の選 出が公選であることなどが、複雑化の要因として挙げられるであろう。要するに、地方分権を基 本とする教育の枠組みそれ自体が、学校教育の複雑化を招いているのである。
当然、学校教育の一一・環として実施されている第2言語教育も大きな影響を受けることになる。
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しかし、カナダの場合、非常に興味深いことに、第2言語教育そのものが学校教育、それも特に、
初等教育をさらに複雑にしているという部分も否定できない。そこで、次にその点に焦点を当て て、カナダ(特にオンクリオ州)における第2言語教育の現状を紹介したい。
5.第2言語としてのフランス語教育の現状
5.1.多様なプログラム
最初にフランスによって、その後、イギリスによって植民地化されたという国の生い立ちの関 係から、カナダでは、 1969年に制定された公用語条例によって英語とフランス語が正式な国の公 用語として認められている。英語系住民とフランス語系住民の生活全般における基本的言語権利 を擁護すると同時に、両言語系住民の平和・共存を目指した公用語政策が積極的に推進されてい る。両言語系住民の平和・共存のためにはまずそれぞれが相手側の言語と文化を学ぶことが重要 であるという認識から、英語系が多数派を占める地域における学校現場では、第2言語としての
フランス語教育(French as a Second Language)が積極的に推進されている。
英語を母語とする子どもに対する第2言語としてのフランス語教育プログラムの最も基本的な 類型は、日本の英語教育のように、フランス語を一つの教科として設定し、毎Eト一定時間(20分 から40分)開講するという形である。これは、コア・フランス語(Core French)プログラムと 呼ばれ、フランス語が公用語となっているケベック州も含めて、すべての州で実施されている。
ただ、一一日の開講時問や継続年数など異体的な実施要領は、州や教育委員会によってまちまちで ある。因みに、オンクリオ州では第4学年から第9学年まで必修となっているが、カナダ連邦政 府の首都であり、バイリンガル都市としての性格が濃いオタワにあるオタワ教育委員会と力‑ル
トン教育委員会においては、幼稚園から第9学年まで必修となっている。
さらに最近では、このコア・プログラムに加えて、英語を母語とする子ども達の中にさらに高 度なフランス語コミュニケーション能力を育成することに主眼を置いたフランス言吾イマーション・
プログラムがカナダ全国で実施されている。そもそもイマーション教育とは、母語とは違う第2 言語で通常教科を教える教育的試みである。その意味では、カナダや米国へやってきた移民の子 ども達が第2言語である英語で学校教育を受ける場合も広い意味ではイマ‑ション教育と見なせ ないこともない.しかし、一般にイマ‑ション教育という場合、 「国民の大多数が話す言語を母 語とする学習者が、教育のある部分を第2言語で、残りを母語で受けるバイリンガル教育の一形 態」を指す4)。よって、カナダにおけるフランス語イマ‑ション・プログラムは、英語を母語と する子ども達を主たる対象にしてフランス語および英語で学校教育を行う教育的試みと定義する
ことができる。
当該プログラムがイマーションと認められるためには、原則として、 ‑E]の授業時間の50%以 上が第2言語で行われることとされているが5)、その具体的実施形態は決して一様ではない。ま ず、その開始時期に応じて、幼稚園から開始される早期イマーション、初等学校の中学年(多く の場合第4学年)から開始される中期イマ‑ション、そして、初等学校高学年(多くの場合第7 学年)から開始される後期イマーションの三種類に分けられる。加えて、フランス語でのイマ‑
ションの度合に応じて、完全イマーションと部分的イマ‑ションに分けられるO完全イマーショ ンとは、開始当初学校で教えられるすべての教科をフランス語で教える場合のことであり、部分 的イマーションとは、一部の教科あるいは授業時間帯の一部(例えば午前中または午後のみ)香
伊東 治己 Yoko Azuma Prikryl
フランス語で教える場合を指している。カナダ全体では、早期・中期・後期イマ‑ションと、完 全・部分的イマーションが適当に組み合わされ、実に多様な形態のイマーション・プログラムが 展開されている。
5.2.カリキュラムの枠組み
今回の調査の主な対象の一つであるオタワ教育委員会では、イマーション・プログラムの先進 地らしく、比較的早い時期から早期・中期・後期イマーション・プログラムが、フランス語を教 科として教えるコア・プログラムと並行して開設されている。次図は6)、各プログラムごとに初 等学校(幼稚園から第8学年まで)段階でのフランス語による授業の割合を示している。
類 型 S K
コア . プログラム 30 分/ 日 40 分/ 日
早期 イマ‑ シ ヨン 100 % 50 %
中期 イマ‑ シ ヨン コア . プログラム 8 0 % 65 %
後期 イマI シ ヨン コア . プログラム 75 %
イマーションに参加しない子ども達には、幼稚園年長組から第9学年にかけてコア・プログラ ムが必修である。授業時間は幼稚園年長組が一日30分、それ以降は一日40分となっている。なお、
州の基準では第4学年からが必修である。早期イマーションは、幼稚園年長組から実施され、第 1学年の終りまでは一目の授業すべてがフランス語で実施される.第2学年から第5学年にかけ ては一日の授業の80%が、第6学年から第8学年にかけては50%がフランス語で実施される。英 語での読み書きを教える前にフランス語での読み書きを教えることが最大の特徴である。中期イ
マーションは第4学年から開始され、第6学年の終りまでは一日の授業の80%が、第7学年と第 8学年においては65%が、フランス語で行われる。なお、このプログラムに参加する児童はそれ までの4年間コア・プログラムを履修し、ある程度フランス語の基礎が身についている。ただ、
中期イマーションを開設している学校の数はごく限られているO後期イマ‑ションは第7学年か ら実施され、第8学年の終りまで一日の授業の75%がフランス語で実施される。このプログラム に参加する児童はそれまでの7年間コア・プログラムを履修しており、フランス語の基礎がかな り身についている。早期イマ‑ションと違って、自分の意志で参加する児童が大半で、学習意欲 も旺盛である。
なお、参考までに中等学校(第9学年からの4‑5年間)においては、コア・プログラムと並 行して、一日の授業科目の約半分をフランス語で受講するイマ‑ション・プログラムと、教科と
してのフランス語授業に加えて1‑2教科をフランス語で受講する拡大(Extended)プログラ ムが開設されている。以上のカリキュラムの枠組みは、あくまでオタワ教育委員会の第2言語と してのフランス語教育の枠組みに過ぎず、同じオタワにあるカールトン教育委員会の場合はまた 別な枠組みが設定されている。
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5.3.初等教育への影響
1965年9月、ケベック州モントリオール郊外にあるセント・ランバート地区の小さな幼稚園で の実験的プログラムとして始まったフランス語イマ‑ション・プログラムも、その後、この実験 プログラムの有効性を調査した研究者達による好意的評価や、連邦政府・州政府による公的資金 援助を受けて、見る見るうちにカナダ全土に普及して行った。現在、すべての州で設置されてお り、全国で30万もの子ども達がイマ‑ション・プログラムに参加している7)。特に、バイリンガ ル都市としての性格の濃いオタワにおいては、早期イマーション・プログラムが開始される時点 で、当該学年の子ども達の半数近くがこのプログラムに参加している。その結果、今日では、こ のフランス語イマ‑ション・プログラムは、第2言語としてのフランス語教育の枠にとどまらず、
初等教育の有力な選択肢として認知されつつある。その結果、初等教育全体に大きな影響を及ぼ
しつつある。
まず、第一の影響は、初等教育の複線化であり、それに伴う教育資源の分散化である。イマー ション・プログラムが住民の大きな支持を得て発展・普及してきた結果、一つの学校の中に、大 多数の子どもにとって第1言語である英語で教育が行われる通常プログラムと第2言語であるフ ランス語で教育が行われるイマ‑ション・プログラムが併存している場合が多く見かけられるよ うになった。現地ではこの種の学校をdual‑trackschoolと呼んでいる。さらに、イマ‑ション・
プログラム自体もその開始学年の違いに応じて異なる形態が存在するため、時には同一の学校に 三つの異なるプログラムが併置されている場合もある。初等学校自体、様々な規模で存在する上
に、個々の初等学校の中に複数の初等教育プログラムが並行して走ることになるのである。学齢 期の子どもの総数は減ることはあっても増えることはないので、当然、各プログラムに在籍する 子どもの数は少なくなる。しかしながら、行政を担当する教育委員会としては、教育の機会均等
の立場から、どのプログラムに対しても適切な教育環境を提供する義務を負うことになる.イマ‑
ション・プログラムを走らせることによる若干の予算の上積みがあるものの、基本的には一つの パイを分けあうことになる。人的・物理的教育資源の分散はやむを得ない。
第二の影響は、初等教育の複線化に伴って、子どもの選別が結果的に進行しているという点で あるo母語である英語での読み書き能力の育成を遅らせる早期イマ‑ションに自分の子どもを参 加させることには、やはり多くの親達が不安を感じている。その結果、早期イマ‑ションに子ど もを参加させる親達の多くが、家庭での教育に自信のある中流階級以上の親達で占められている。
さらに、良く理解できない第2言語で通常教科の内容を学習していくことは、いくら学習意欲旺 盛な子ども達と言えども、心理的に大きな負担となる。その結果、早期イマ‑ションに参加した 多くの子どもが途中でイマ‑ション・プログラムから脱落し、通常プログラムに回されてくる。
しかも、これらの子どもの多くが、単にフランス語の理解に問題がある子どもではなく、教科内 容自体の理解に問題をもっ学習困難児や授業それ自体に参加できない子ども達である。その結果、
初等学校修了時点までイマーション・プログラムに残っているのは、単にフランス語ができる子 どもではなく、学力的に非常に優れた子ども達である。よって、巷ではイマ‑ション・プログラ ムはエリート主義的というレッテルが張られ、英語で教育が行われる通常プログラムは二流とい うレッテルが張られることになる。その結果、就学年齢を迎えた親達の中には、就職に有利なフ ランス語能力が身に付くということもさることながら、通常プログラムでは良い教育が受けられ ないという理由でイマ‑ション・プログラムを選択する親達も多いoこのように、イマ‑ション・
プログラムには原則的に誰でも参加できることになっているが、結果的に初等教育の複線化が選
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伊東 治己 Yoko Azuma Prikryl
別的教育を推進する形になっている。
初等教育の複線化は、日々のクラス運営にも多大な影響を及ぼしつつある。一つの学校に二つ のプログラムを走らせようとしても、もともと各学校の物理的・人的教育資源は限られている。
教室が不足し、教師も不足してくる。当然の帰結として、同じ学年内の合併クラスや学年を越え た複合クラスが編成されることになる。その場合のしわ寄せは、もっぱら通常プログラムの方が 被ることになる。当然、新しい指導法や教材の開発も迫られる。その結果、二つのプログラムの 間に無視できないアンバランスも生まれてくる。イマ‑ション・プログラムからの脱落者をたく さん抱え、ただでさえ大変な通常プログラム担当の教師の仕事はますます困難になって行く。一 方、脱落者を送り出す側のイマ‑ション・プログラム担当の教師達は待遇面でも比較的恵まれて おり、その結果、通常プログラム担当の教師集団とイマーション・プログラム担当の教師集団の 問に心理的軋蝶も生まれている。
6.おわリに
以上、教育プログラムと教育風土の関連性を見極めるという視点から、世界的に注目されてい るイマ‑ション・プログラムも含めて、カナダにおける第2言語としてのフランス語教育が実施 されている教育環境を明かにするとともに、第2言語教育が学校教育全般に及ぼしている影響力 について論及してきた。部分的ながら公立小学校への英語教育の導入が現実的となった今、第2 言語でのコミュニケーション能力に多大な成果を収めっつあるイマ‑ション・プログラムへの関 心は着実に高まりつつある。既に静岡県の加藤学園では日本人児童を対象にした英語イマ‑ショ ン・プログラムを実施しており、英語教育関係者ばかりでなく、マス・メディアからも熱い視線 を送られている。
今回のイマ‑ション・プログラム先進地オタワでの現地調査を通じて8)、このイマ‑ション・
プログラムが、地方分権と教育ニーズに合致した多様性を旨とするカナダの教育風土から生まれ た極めてカナダ的なプログラムであることが理解できた。さらに、その教育効果もさることなが ら、初等教育全般に多大な影響を及ぼしつつあることも理解できた。国際化がさらに進展する21 世紀においては、このイマ‑ション・プログラムがバイリンガル教育のための有力なモデルとし てますます教育関係者の注目を集めることは必至である。しかし、今回の調査は、日本の英語教 育の改革に当って、日本の教育風土を十分考慮した上での改革の必要性を痛感させてくれたO折 しも、カナダの教育自体も財政難を背景に大きな転換期を迎えている。さらに、第2言語教育と 深く関係してくるケベック独立問題も予断を許さない。今後、カナダの第2言語教育がどのよう な展開を見せるのか、慎重に見守って行きたい。
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1 ) Dale, I. 1995. Medium of instruction: a matter of choice. Carleton Papers in Applied Language Studies, Vol. 12, p. 29.
2)オタワ教育委員会発行の情報パンフレット(Information, Fall 1995)に掲載されている学 校リストより算出。
3)カ‑ルトン教育委員会発行の情報パンフレット(Schools andStaff 1995‑96)に掲載され
lL)
ている学校リストより算出。
4 ) Genesee, F. 1987. Learning through Two Languages, Newbury House, p. 1.
5)前掲書 p.l.
6)オタワ教育委員会発行の情報パンフレット {FrenchasaSecondLanguage)より。
7 ) Commissioner of Official Languages. 1995. Annual Report 1994, p. 10.
8)今回の現地調査を実施するに当っては、村田学術振興財団研究者派遣制度および文部省の海 外研究開発動向調査等に係る研究者派遣制度のお世話になった。この場を借りて謝意を表し aw
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