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キーワード:レーザー、光学共振器、共鳴周波数、光強度補償、除算回路

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(1)

‒ 243 ‒

光強度変動補償機構を備えた参照共振器制御方法の開発

和 泉 勇 輝  

埼玉大学大学院教育学研究科

大 向 隆 三  

埼玉大学教育学部自然科学講座

キーワード:レーザー、光学共振器、共鳴周波数、光強度補償、除算回路

1.はじめに

 レーザー技術の研究は「量子エレクトロニクス」の分野に属するものである。量子エレクトロニ クスとは、原子・分子・原子核などと電磁波との相互作用を通信・制御あるいは測定などの目的 に役立てる研究分野である。レーザー技術は20世紀前半から急速に進展してきており、世界初の レーザーが開発されたのが1960年と非常に新しい研究領域である。レーザーの前身となるメーザ ーがタウンズらによって1954年に開発され、1960年にはメイマンらにより世界初のレーザーであ るルビーレーザーが開発された

1)

。レーザーは開発以前の光と比べて単色であること、指向性・集 光性に優れること、コヒーレントな光であることなど様々な特徴を持つ。現代では医療や通信、工 学などをはじめとして様々な分野で利用されている

2)

 さらに、レーザーは現在に至るまで発振周波数の拡大や狭スペクトル化など改善もなされてお り、その恩恵を受けて原子分光学の光源としても利用されている。原子分光学とは、原子がその 種類に特有の不連続なエネルギー準位を持つことを利用し、様々なエネルギーの光を原子へ照射 してそのときの光の吸収や放出から、原子の特性を知る研究分野である。新たに原子の詳細な分 光学的情報を得ることができれば、これまでより高精度の原子時計の実現、量子状態の重ね合わ せを利用して並列コンピューティングすることで、これまでにない計算速度を実現できると考えら れる量子コンピュータの実現が可能になると期待される

3)

 レーザーは発振を行うために、その内部に2枚の鏡を向かい合わせた共振器を利用している。

この共振器の共鳴周波数とレーザー媒質である物質の共鳴周波数が一致したときに、光が共振器 内で共鳴して発振が起こる。しかし、周囲の温度変化や振動などの外部環境の変化によって共振 器長は容易に変化する。共振器長が変化すると、それに伴ってレーザーの発振周波数が変動して しまう。原子の共鳴周波数幅は非常に狭いため、レーザーの発振周波数が僅かであっても変動し てしまうと原子を励起することができなくなり、測定を継続できなくなる致命的な問題となる。そ のため、原子分光用光源にレーザーを用いるために、その発振周波数を所望の値に保つための方 法の開発、研究が精力的に行われている。

 レーザーの発振周波数を制御するためには何らかの方法で参照信号を得て、これを基準の周波

数として変動したレーザーの発振周波数と基準の周波数の差からエラー信号を得ることで、フィ

ードバック制御を行う必要がある。この参照信号を得る方法としては代表的に2つの方法が用い

られてきた。1つは原子の飽和吸収スペクトルを利用する方法、もう1つはレーザーの外部にレー

ザーの発振周波数制御用の参照共振器を用いる方法である。しかし、原子の飽和吸収スペクトル

を利用する方法は高安定であるが汎用性に乏しく、参照共振器を用いる方法では汎用性には富ん

でいるが、レーザー内部の共振器と同様に外部環境によって共鳴周波数が不安定というデメリッ

埼玉大学紀要 教育学部,65(2):243-251(2016)

(2)

‒ 244 ‒

トがある。そこで、本研究室では高安定かつ汎用性の高いレーザーの発振周波数制御を可能にす るために、Rb原子の飽和吸収スペクトルを利用して安定化した近赤外LDを参照信号として、参 照共振器の共鳴周波数の安定化した。その結果、参照共振器として用いる共焦点型ファブリーペ ロー共振器の共鳴周波数を少なくとも15分間に渡って3.3MHz以下の安定度で制御することに成 功した

4)

 しかし、この方法にも未だ欠点が残されている。この方法では、参照共振器の透過光信号を一 定電圧減算することで0Vとの交点を作り、これをロッキングポイントとして設定して参照共振器 の共鳴周波数を安定化している。制御中に何らかの要因によって原子によって安定化したレーザ ーの光強度が減少すると、0Vとの交点が当初の共鳴周波数から変化してしまいロッキングポイン トを一定に保つことができない。さらにレーザー光強度が減少すると、ついには透過光信号と減 算信号の差が0より小さくなり、ロッキングポイントが設定できなくなり制御が維持できなくなる。

そこで、本研究ではこの問題を解決するために、除算回路を用いて新たに光源の光強度の変動を 補償する機構を組み入れた技術を提案し、その開発を試みた。具体的には、レーザー光をハーフ ミラーで2つに分け、ファブリーペロー共振器から得られる透過光信号と光強度変動モニター信 号を得る。ここで、共焦点型ファブリーペロー共振器の透過光強度I

t

は入射光強度をI

i

、共振器に 用いたミラーの反射率をr 、共振器長をd 、入射する真空中の光の波長をλ、その波数をkとすれば、

以下のようになる

5)

んでいるが、レーザー内部の共振器と同様に外部環境によって共鳴周波数が不安定というデメリ ットがある。そこで、本研究室では高安定かつ汎用性の高いレーザーの発振周波数制御を可能に するために、 Rb 原子の飽和吸収スペクトルを利用して安定化した近赤外 LD を参照信号として、

参照共振器の共鳴周波数の安定化した。その結果、参照共振器として用いる共焦点型ファブリー ペロー共振器の共鳴周波数を少なくとも 15 分間に渡って 3.3 MHz 以下の安定度で制御すること に成功した。

4)

しかし、この方法にも未だ欠点が残されている。この方法では、参照共振器の透過光信号を一 定電圧減算することで 0 V との交点を作り、これをロッキングポイントとして設定して参照共振 器の共鳴周波数を安定化している。制御中に何らかの要因によって原子によって安定化したレー ザーの光強度が減少すると、 0 V との交点が当初の共鳴周波数から変化してしまいロッキングポ イントを一定に保つことができない。さらにレーザー光強度が減少すると、ついには透過光信号 と減算信号の差が 0 より小さくなり、ロッキングポイントが設定できなくなり制御が維持できな くなる。そこで、本研究ではこの問題を解決するために、除算回路を用いて新たに光源の光強度 の変動を補償する機構を組み入れた技術を提案し、その開発を試みた。具体的には、レーザー光 をハーフミラーで 2 つに分け、ファブリーペロー共振器から得られる透過光信号と光強度変動モ ニター信号を得る。ここで、共焦点型ファブリーペロー共振器の透過光強度

It

は入射光強度を

Ii

、 共振器に用いたミラーの反射率を

r

、共振器長を

d

、 入射する真空中の光の波長を

λ

、その波 数を

k

とすれば、以下のようになる。

5)

i

t

r r kd I

I r

) 4 cos(

2 + 1

) 1

=

8

‐ (

4 4

(1)

(1) 式から、透過光強度は入射光強度に比例する。そのため、レーザー光強度が変動すると透過 光信号と光強度変動モニター信号は同じ割合で変動する。そこで、透過光信号電圧をモニター信 号電圧で割り算した出力を得ることができれば、その出力は入射光強度の変動に依存せず常に一 定となる。この出力を一定電圧減算してエラー信号を得れば、入射光強度が変動してもロッキン グポイントの変動が起きることなく制御を維持することができると期待される。そのために必要 な除算回路を製作し、光強度の変動を補償することができる参照共振器制御の実現を目指す。

2. 除算回路の製作と動作確認

本研究では除算回路を用いて光強度補償を目指す。まず、必要な除算回路を製作するにあたり、

ANALOG DEVICES 社製の IC である AD538 を使用した。この IC は、ワンチップで回路を簡易に

製作することができる上に、 IC の出力誤差が 0.1 % 程度と高精度である特徴を持つ。 図 1 に AD538 を用いた除算回路の回路図を示す。この回路の出力電圧は

Vout

は、入力電圧

V1

V2

を用いる

と式 (2) のように表すことができる。

2

10

1

= V

V

out

V

(2)

(1)

(1)式から、透過光強度は入射光強度に比例する。そのため、レーザー光強度が変動すると透過 光信号と光強度変動モニター信号は同じ割合で変動する。そこで、透過光信号電圧をモニター信 号電圧で割り算した出力を得ることができれば、その出力は入射光強度の変動に依存せず常に一 定となる。この出力を一定電圧減算してエラー信号を得れば、入射光強度が変動してもロッキン グポイントの変動が起きることなく制御を維持することができると期待される。そのために必要な 除算回路を製作し、光強度の変動を補償することができる参照共振器制御の実現を目指す。

2.除算回路の製作と動作確認

 本研究では除算回路を用いて光強度補償を目指す。まず、必要な除算回路を製作するにあたり、

ANALOG DEVICES社製のICであるAD538を使用した。このICは、ワンチップで回路を簡易に 製作することができる上に、ICの出力誤差が0.1%程度と高精度である特徴を持つ。図1に AD538を用いた除算回路の回路図を示す。この回路の出力電圧はV

out

は、入力電圧V

1

、V

2

を用い ると式(2)のように表すことができる。

んでいるが、レーザー内部の共振器と同様に外部環境によって共鳴周波数が不安定というデメリ ットがある。そこで、本研究室では高安定かつ汎用性の高いレーザーの発振周波数制御を可能に するために、 Rb 原子の飽和吸収スペクトルを利用して安定化した近赤外 LD を参照信号として、

参照共振器の共鳴周波数の安定化した。その結果、参照共振器として用いる共焦点型ファブリー ペロー共振器の共鳴周波数を少なくとも 15 分間に渡って 3.3 MHz 以下の安定度で制御すること に成功した。

4)

しかし、この方法にも未だ欠点が残されている。この方法では、参照共振器の透過光信号を一 定電圧減算することで 0 V との交点を作り、これをロッキングポイントとして設定して参照共振 器の共鳴周波数を安定化している。制御中に何らかの要因によって原子によって安定化したレー ザーの光強度が減少すると、 0 V との交点が当初の共鳴周波数から変化してしまいロッキングポ イントを一定に保つことができない。さらにレーザー光強度が減少すると、ついには透過光信号 と減算信号の差が 0 より小さくなり、ロッキングポイントが設定できなくなり制御が維持できな くなる。そこで、本研究ではこの問題を解決するために、除算回路を用いて新たに光源の光強度 の変動を補償する機構を組み入れた技術を提案し、その開発を試みた。具体的には、レーザー光 をハーフミラーで 2 つに分け、ファブリーペロー共振器から得られる透過光信号と光強度変動モ ニター信号を得る。ここで、共焦点型ファブリーペロー共振器の透過光強度

It

は入射光強度を

Ii

、 共振器に用いたミラーの反射率を

r

、共振器長を

d

、 入射する真空中の光の波長を

λ

、その波 数を

k

とすれば、以下のようになる。

5)

i

t

I

kd r

r I r

) 4 cos(

2 + 1

) 1

=

8

‐ (

4 4

(1)

(1) 式から、透過光強度は入射光強度に比例する。そのため、レーザー光強度が変動すると透過 光信号と光強度変動モニター信号は同じ割合で変動する。そこで、透過光信号電圧をモニター信 号電圧で割り算した出力を得ることができれば、その出力は入射光強度の変動に依存せず常に一 定となる。この出力を一定電圧減算してエラー信号を得れば、入射光強度が変動してもロッキン グポイントの変動が起きることなく制御を維持することができると期待される。そのために必要 な除算回路を製作し、光強度の変動を補償することができる参照共振器制御の実現を目指す。

2. 除算回路の製作と動作確認

本研究では除算回路を用いて光強度補償を目指す。まず、必要な除算回路を製作するにあたり、

ANALOG DEVICES 社製の IC である AD538 を使用した。この IC は、ワンチップで回路を簡易に

製作することができる上に、 IC の出力誤差が 0.1 % 程度と高精度である特徴を持つ。 図 1 に AD538 を用いた除算回路の回路図を示す。この回路の出力電圧は

Vout

は、入力電圧

V1

V2

を用いる

と式 (2) のように表すことができる。

2

10

1

= V

V

out

V

(2) (2)

 また、AD538のデータシート上の性能は表1の通りである。スルーレートとは回路の応答速度

の指標であり、出力電圧の変化量を変化に要した時間で割ることで求めることができる。製作し

た除算回路から式(2)の出力を得ることができるか、また正常動作する入力電圧の範囲を確かめ

るための実験と、図1の除算回路のスルーレートを求めるための実験を行った。まず、式(2)の

(3)

‒ 245 ‒

出力を得られるか確かめるために、V

1

、V

2

に同 じ大きさの直流電圧を入力し、そのときの出力 電圧を測定した。図2は出力電圧の測定結果で ある。V

1

、V

2

には0.100Vから14.98Vの範囲で 直流電圧を入力した。式(2)の出力が得られ ていれば、V

1

、V

2

が同じ大きさであることから 10Vで一定の信号が得られる。しかし、実際に は 入 力 電 圧 が0.100V か ら4.08V の 範 囲 で は 9.95V、5.82Vから14.98Vの範囲では9.96Vと なった。

 この結果から、データシート上の出力式(2)

と実際の出力式の係数は一致していないと考え られる。しかし、入力電圧を変化させても出力

電圧はほぼ一定であることから、製作した除算回路は入力電圧が0.100Vから14.98Vの範囲では 正常に動作していることが確認できた。データシートには入力電圧が10V以下の範囲で正常に動 作すると記載されていたが、実際にはそれより広い入力電圧の範囲で動作していた。

 続いて、製作した除算回路のスルーレートを求めるためにV

1

に一定の直流電圧を入力し、V

2

に 発振器から矩形波(オフセット+4.12V、周波数1kHz、振幅2.36V)を入力した。このとき、矩 形波の変化に伴って変化する除算回路の出力電圧を測定し、その変化の大きさと変化に要した時 間からスルーレートを求めた。図3は測定結果である。矩形波の変化に伴って除算回路の出力電 圧が8.4V変化し、この変化に要した時間は6.10μsであった。この結果から、AD538のスルーレ ートを求めると1.4V/μsとなり、データシート上のスルーレートと本実験から求めたスルーレート は一致した。これらの結果から、製作した回路が本研究で用いる除算回路として適しているか考 察する。

 レーザー光強度が変動する要因としてはレーザー内部や周囲の温度変化が挙げられる。これら の温度変化が起きる要因としては、レーザーが発振を続けることによる熱の発生や、空調設備に よるものが挙げられる。しかし、これらの要因でマイクロ秒のオーダーで温度変化が急激に起き るとは考えにくいことから、この除算回路のスルーレートは本研究で用いるためには十分なもので あると考えられる。また、本研究では制御回路や除算回路の動作電源として±15Vの直流電源を 用いる。そのため各回路が動作する電圧は最大でも15Vであり、今回製作した除算回路の動作範 囲は十分なものであると考えられる。これらのことから、今回製作した除算回路は本研究に適した

図1 AD538を用いた除算回路の回路図 表1 AD538のデータシート上の性能 正常動作可能な入力電圧 スルーレート

~10V 1.4 V/μs

V1 ( = V2 ) ( V ) Vout ( V )

図4 従来のP I制御のみによる共振器の共鳴周波数安定化実験配置 ECLD

アイソレーター

NDフィルター

ファブリーペロー共振器 光検出器

光検出器

直流電源 減算回路

PI制御回路

オシロ スコープ 図2 V1 = V2 としたときの除算回路の出力電圧

3.

レーザー光強度を補償可能なファブリーペロー共振器の共鳴周波数の安定化制御

3-1

光強度を補償しないときの共鳴周波数の安定化制御

本研究ではファブリーペロー共振器の共鳴周波数を安定化するために

PI

制御回路を利用する。

PI

制御とは、比例

( P )

制御と積分

( I )

制御からなるフィードバック制御の

1

つである。

PI

そ れぞれの操作によって設定値と実測値の差

(

偏差

)

をなくすことで、ファブリーペロー共振器の 共鳴周波数を安定化することができる。そこで、後に除算回路による光強度を補償したときの制 御について評価をするために、従来の方法でファブリーペロー共振器の共鳴周波数を安定化し、

そのときの安定度を求めた。図

4

に実験の配置図を示す。

レーザー光をアイソレーターに通した後にハーフミラーで

2

つに分ける。

1

つはファブリーペ ロー共振器へ照射し透過光信号電圧を、もう

1

つからは光強度モニター信号電圧を得た。透過光 信号電圧は減算回路へ入力し、透過光信号電圧から直流電源から得た一定電圧を減算しエラー信 号電圧を得た。得られたエラー信号は

PI

制御回路に入力してフィードバック信号電圧を得て、こ の電圧をファブリーペロー共振器に備え付けたピエゾ素子にフィードバックすることで、ファブ リーペロー共振器の共鳴周波数を安定化した。

PI

制御によって共鳴周波数が正常に安定化されて いれば、透過光信号電圧は中心値が一定の変動幅をもった信号になり、その変動幅から安定度を 求めることができる。そこで、透過光信号電圧を測定して制御が正常にできているか、またその

時間 ( μs )

電圧 ( V )

図3 矩形波を入力したときの除算回路の出力電圧 除算回路の出力電圧

入力電圧

図2 V

1

= V

2

としたときの除算回路の出力電圧 図3 矩形波を入力したときの除算回路の出力電圧

(4)

‒ 246 ‒

ものであり、この回路を用いて光強度の変動の補償を目指すこととした。

3.レーザー光強度を補償可能なファブリーペロー共振器の共鳴周波数の安定化制御

3-1 光強度を補償しないときの共鳴周波数の安定化制御

 本研究ではファブリーペロー共振器の共鳴周波数を安定化するためにPI制御回路を利用する。

PI制御とは、比例(P)制御と積分(I)制御からなるフィードバック制御の1つである。PIそれ ぞれの操作によって設定値と実測値の差(偏差)をなくすことで、ファブリーペロー共振器の共 鳴周波数を安定化することができる。そこで、後に除算回路による光強度を補償したときの制御 について評価をするために、従来の方法でファブリーペロー共振器の共鳴周波数を安定化し、そ のときの安定度を求めた。図4に実験の配置図を示す。

V1 ( = V2 ) ( V ) Vout ( V )

図4 従来のP I制御のみによる共振器の共鳴周波数安定化実験配置 ECLD

アイソレーター

NDフィルター

ファブリーペロー共振器 光検出器

光検出器

直流電源 減算回路

PI制御回路

オシロ スコープ 図2 V1 = V2 としたときの除算回路の出力電圧

3. レーザー光強度を補償可能なファブリーペロー共振器の共鳴周波数の安定化制御 3-1 光強度を補償しないときの共鳴周波数の安定化制御

本研究ではファブリーペロー共振器の共鳴周波数を安定化するために PI 制御回路を利用する。

PI 制御とは、比例 ( P ) 制御と積分 ( I ) 制御からなるフィードバック制御の 1 つである。 PI そ れぞれの操作によって設定値と実測値の差 ( 偏差 ) をなくすことで、ファブリーペロー共振器の 共鳴周波数を安定化することができる。そこで、後に除算回路による光強度を補償したときの制 御について評価をするために、従来の方法でファブリーペロー共振器の共鳴周波数を安定化し、

そのときの安定度を求めた。図 4 に実験の配置図を示す。

レーザー光をアイソレーターに通した後にハーフミラーで 2 つに分ける。 1 つはファブリーペ ロー共振器へ照射し透過光信号電圧を、もう 1 つからは光強度モニター信号電圧を得た。透過光 信号電圧は減算回路へ入力し、透過光信号電圧から直流電源から得た一定電圧を減算しエラー信 号電圧を得た。得られたエラー信号は PI 制御回路に入力してフィードバック信号電圧を得て、こ の電圧をファブリーペロー共振器に備え付けたピエゾ素子にフィードバックすることで、ファブ リーペロー共振器の共鳴周波数を安定化した。 PI 制御によって共鳴周波数が正常に安定化されて いれば、透過光信号電圧は中心値が一定の変動幅をもった信号になり、その変動幅から安定度を 求めることができる。そこで、透過光信号電圧を測定して制御が正常にできているか、またその 安定度はどの程度であるかを調べた。

図 5 は透過光信号電圧の測定結果である。制御開始前に使用した半導体レーザーの発振周波数

時間 ( μs )

電圧 ( V )

図3 矩形波を入力したときの除算回路の出力電圧 除算回路の出力電圧

入力電圧

図4 従来のP I制御のみによる共振器の共鳴周波数安定化実験配置図

 レーザー光をアイソレーターに通した後にハーフミラーで2つに分ける。1つはファブリーペロ ー共振器へ照射し透過光信号電圧を、もう1つからは光強度モニター信号電圧を得た。透過光信 号電圧は減算回路へ入力し、透過光信号電圧から直流電源から得た一定電圧を減算しエラー信号 電圧を得た。得られたエラー信号はPI制御回路に入力してフィードバック信号電圧を得て、この 電圧をファブリーペロー共振器に備え付けたピエゾ素子にフィードバックすることで、ファブリー ペロー共振器の共鳴周波数を安定化した。PI制御によって共鳴周波数が正常に安定化されていれ ば、透過光信号電圧は中心値が一定の変動幅をもった信号になり、その変動幅から安定度を求め ることができる。そこで、透過光信号電圧を測定して制御が正常にできているか、またその安定 度はどの程度であるかを調べた。

 図5は透過光信号電圧の測定結果である。制御開始前に使用した半導体レーザーの発振周波数 を微調整してファブリーペロー共振器の共鳴周波数に近付けた後、PI制御回路を減算回路に接続 したところ、透過光信号電圧は0.012Vを中心とした振幅0.005Vの変動幅をもった信号となった。

この結果から、ファブリーペロー共振器の共鳴周波数の安定化が正常に開始されたと考えらえる。

そこで、この時の共鳴周波数の安定度を透過光信号電圧の変動幅から求める。図6はファブリー

ペロー共振器のピエゾ素子に三角波を印加すると得られる透過光電圧のスペクトルである。2つ

のフリンジピーク間隔はファブリーペロー共振器のFSRであり250MHzに相当する。制御開始後

の透過光信号電圧の最大値は0.0168V、最小値は0.0064Vであった。この最大・最小値の幅に対

応する周波数幅とFSRを比べることで共鳴周波数の安定度を求めたところ、1.33MHzであること

(5)

‒ 247 ‒

がわかった。典型的には原子の自然幅が十数メガヘルツ程度であり、この値と比べても高い安定 度で共鳴周波数を安定化できていると言える。また、この後2時間に渡り制御を続けたところ、同 じ安定度でファブリーペロー共振器の共鳴周波数を安定化することができた。以上のことから、

入射光強度が変動しなければ、従来のPI制御によってファブリーペロー共振器の共鳴周波数を少 なくとも2時間に渡り1.33MHzの安定度で安定化することができることがわかった。

を微調整してファブリーペロー共振器の共鳴周波数に近付けた後、 PI 制御回路を減算回路に接続 したところ、透過光信号電圧は 0.012 V を中心とした振幅 0.005 V の変動幅をもった信号となっ た。この結果から、ファブリーペロー共振器の共鳴周波数の安定化が正常に開始されたと考えら える。そこで、この時の共鳴周波数の安定度を透過光信号電圧の変動幅から求める。図 6 はファ ブリーペロー共振器のピエゾ素子に三角波を印加すると得られる透過光電圧のスペクトルである。

2 つのフリンジピーク間隔はファブリーペロー共振器の FSR であり 250 MHz に相当する。制御 開始後の透過光信号電圧の最大値は 0.0168 V 、最小値は 0.0064 V であった。この最大・最小値 の幅に対応する周波数幅と FSR を比べることで共鳴周波数の安定度を求めたところ、 1.33 MHz であることがわかった。典型的には原子の自然幅が十数メガヘルツ程度であり、この値と比べて も高い安定度で共鳴周波数を安定化できていると言える。また、この後 2 時間に渡り制御を続け たところ、同じ安定度でファブリーペロー共振器の共鳴周波数を安定化することができた。以上 のことから、入射光強度が変動しなければ、従来の PI 制御によってファブリーペロー共振器の共 鳴周波数を少なくとも 2 時間に渡り 1.33 MHz の安定度で安定化することができることがわかっ た。

次に、図 4 と同様の実験配置でファブリーペロー共振器の共鳴周波数を安定化した後に、 ND フィルターを用いて人為的にファブリーペロー共振器への入射光強度を減少させた。一般に共鳴 周波数の安定化制御が維持できていれば、フィードバック信号電圧は連続的に変化する信号とな り、制御が維持できなくなると急激に変化する。そこで、このときのフィードバック信号電圧を 測定することで、入射光強度が減少したときの共鳴周波数の安定化への影響を考察した。図 7 は フィードバック信号電圧の測定結果である。はじめ、 PI 制御回路を切断していたため 0 V であっ たフィードバック信号は、 PI 制御回路を接続した瞬間に – 3 V に変化してそのまま連続的に変化 する信号となった。このことから、共鳴周波数の安定化が正常に開始されたと考えられる。その 後、 ND フィルターによってファブリーペロー共振器への入射光強度を減少させたところ、モニ ター信号が 0.054 V になった瞬間にフィードバック信号が – 13 V へと急激に変化した。このと きの入射光強度は、モニター信号が当初 0.120 V であったことから当初の 45.0 % であった。よ って、入射光強度が当初の 45.0 % になった瞬間にファブリーペロー共振器の共鳴周波数を安定 化できなくなったと考えられる。制御が維持できなくなった要因としては、入射光強度が減少す ることで得られる透過光電圧が小さくなり、透過光電圧ピークから減算回路によって減算した一

図6 透過光電圧スペクトルと制御時における 透過光信号電圧幅との比較

図5 制御開始直後の透過光信号電圧 時間 ( s )

透過光電圧 ( V )

制御開始 0.0168 V

0.0064 V 透過光電圧 ( V )

周波数 250 MHz

1.33 MHz

0.0168 V 0.0064 V

図5 制御開始直後の透過光信号電圧 図6  透過光電圧スペクトルと制御時における透 過光信号電圧幅との比較

 次に、図4と同様の実験配置でファブリーペロー共振器の共鳴周波数を安定化した後に、NDフ ィルターを用いて人為的にファブリーペロー共振器への入射光強度を減少させた。一般に共鳴周 波数の安定化制御が維持できていれば、フィードバック信号電圧は連続的に変化する信号となり、

制御が維持できなくなると急激に変化する。そこで、このときのフィードバック信号電圧を測定す ることで、入射光強度が減少したときの共鳴周波数の安定化への影響を考察した。図7はフィー ドバック信号電圧の測定結果である。はじめ、PI制御回路を切断していたため0Vであったフィ ードバック信号は、PI制御回路を接続した瞬間に–3Vに変化してそのまま連続的に変化する信号 となった。このことから、共鳴周波数の安定化が正常に開始されたと考えられる。その後、NDフ ィルターによってファブリーペロー共振器への入射光強度を減少させたところ、モニター信号が 0.054Vになった瞬間にフィードバック信号が-13Vへと急激に変化した。このときの入射光強度 は、モニター信号が当初0.120Vであったことから当初の45.0%であった。よって、入射光強度が 当初の45.0%になった瞬間にファブリーペロー共振器の共鳴周波数を安定化できなくなったと考 えられる。制御が維持できなくなった要因としては、入射光強度が減少することで得られる透過 光電圧が小さくなり、透過光電圧ピークから減算回路によって減算した一定電圧の差が0Vを下 回ってしまい、ロッキングポイントが設定できなくなったことが挙げられる。

 以上の結果から、従来のPI制御を主と した入射光強度の変動を補償する機構を 含まないファブリーペロー共振器の共鳴 周波数安定化制御では、透過光電圧ピー クと減算した電圧の差が0Vを下回るよ うな入射光強度(本実験で設定したロッ キングポイントであれば当初の45.0%)

に達した段階でファブリーペロー共振器 の共鳴周波数を安定化できなくなること が確認できた。また、共鳴周波数を安定 定電圧の差が 0 V を下回ってしまい、

ロッキングポイントが設定できなくな ったことが挙げられる。

以上の結果から、従来の PI 制御を主 とした入射光強度の変動を補償する機 構を含まないファブリーペロー共振器 の共鳴周波数安定化制御では、透過光 電圧ピークと減算した電圧の差が 0 V を下回るような入射光強度 ( 本実験 で設定したロッキングポイントであれ

ば当初の 45.0 % ) に達した段階でフ

ァブリーペロー共振器の共鳴周波数を安定化できなくなることが確認できた。また、共鳴周波数 を安定化できえいても、入射光強度の減少に伴ってロッキングポイントの変動は生じていると考 えられ、ファブリーペロー共振器を安定化するという目的に適う制御はなされていないと考えら れる。

3-2 除算回路による光強度補償を兼ね備えた共鳴周波数の安定化制御

前節の結果を踏まえて、除算回路によって光強度の変動を補償した上で PI 制御によるファブリ ーペロー共振器の共鳴周波数を安定化した。図 8 は実験の配置図である。図 4 の配置で行った実 験とは、透過光信号電圧とモニター信号電圧を除算回路に入力し、その出力を減算回路に入力し ている点が異なる。前節の実験と同様に、ファブリーペロー共振器の共鳴周波数の安定化を開始 した後に ND フィルターを用いてファブリーペロー共振器への入射光強度を減少させた。このと きのフィードバック信号電圧を測定して制御の維持が可能な入射光強度の範囲について、除算回 路の出力電圧を測定して共鳴周波数の安定度とロッキングポイントについて考察した。

図 9 はフィードバック信号の測定結果である。最初 0 V であったフィードバック信号は、 PI 制御回路を接続した瞬間におよそ - 2 V の信号となり、連続的に変化する信号となった。このこ

フィードバック電圧( V ) モニター電圧( V )

時間 ( s )

図7 光強度減少時のフィードバック信号電圧 フィードバック電圧

モニター電圧

図8 除算回路により光強度を補償した共鳴周波数安定化実験配置図 ファブリーペロー共振器

ECLD

アイソレーター

NDフィルター

光検出器

光検出器

除算回路 減算回路 直流電源

PI制御回路

オシロスコープ

図7 光強度減少時のフィードバック信号電圧

(6)

‒ 248 ‒

化できえいても、入射光強度の減少に伴ってロッキングポイントの変動は生じていると考えられ、

ファブリーペロー共振器を安定化するという目的に適う制御はなされていないと考えられる。

3-2 除算回路による光強度補償を兼ね備えた共鳴周波数の安定化制御

 前節の結果を踏まえて、除算回路によって光強度の変動を補償した上でPI制御によるファブリ ーペロー共振器の共鳴周波数を安定化した。図8は実験の配置図である。図4の配置で行った実 験とは、透過光信号電圧とモニター信号電圧を除算回路に入力し、その出力を減算回路に入力し ている点が異なる。前節の実験と同様に、ファブリーペロー共振器の共鳴周波数の安定化を開始 した後にNDフィルターを用いてファブリーペロー共振器への入射光強度を減少させた。このとき のフィードバック信号電圧を測定して制御の維持が可能な入射光強度の範囲について、除算回路 の出力電圧を測定して共鳴周波数の安定度とロッキングポイントについて考察した。

図8 除算回路により光強度を補償した共鳴周波数安定化実験配置図 定電圧の差が 0 V を下回ってしまい、

ロッキングポイントが設定できなくな ったことが挙げられる。

以上の結果から、従来の PI 制御を主 とした入射光強度の変動を補償する機 構を含まないファブリーペロー共振器 の共鳴周波数安定化制御では、透過光 電圧ピークと減算した電圧の差が 0 V を下回るような入射光強度 ( 本実験 で設定したロッキングポイントであれ

ば当初の 45.0 % ) に達した段階でフ

ァブリーペロー共振器の共鳴周波数を安定化できなくなることが確認できた。また、共鳴周波数 を安定化できえいても、入射光強度の減少に伴ってロッキングポイントの変動は生じていると考 えられ、ファブリーペロー共振器を安定化するという目的に適う制御はなされていないと考えら れる。

3-2 除算回路による光強度補償を兼ね備えた共鳴周波数の安定化制御

前節の結果を踏まえて、除算回路によって光強度の変動を補償した上で PI 制御によるファブリ ーペロー共振器の共鳴周波数を安定化した。図 8 は実験の配置図である。図 4 の配置で行った実 験とは、透過光信号電圧とモニター信号電圧を除算回路に入力し、その出力を減算回路に入力し ている点が異なる。前節の実験と同様に、ファブリーペロー共振器の共鳴周波数の安定化を開始 した後に ND フィルターを用いてファブリーペロー共振器への入射光強度を減少させた。このと きのフィードバック信号電圧を測定して制御の維持が可能な入射光強度の範囲について、除算回 路の出力電圧を測定して共鳴周波数の安定度とロッキングポイントについて考察した。

図 9 はフィードバック信号の測定結果である。最初 0 V であったフィードバック信号は、 PI 制御回路を接続した瞬間におよそ - 2 V の信号となり、連続的に変化する信号となった。このこ とから共鳴周波数の安定化が正常に開始されたと考えられる。その後、 ND フィルターを用いて ファブリーペロー共振器への入射光強度を減少させたところ、モニター電圧が 0.006 V になるま

フィードバック電圧( V ) モニター電圧( V )

時間 ( s )

図7 光強度減少時のフィードバック信号電圧 フィードバック電圧

モニター電圧

図8 除算回路により光強度を補償した共鳴周波数安定化実験配置図 ファブリーペロー共振器

ECLD

アイソレーター

NDフィルター

光検出器

光検出器

除算回路 減算回路 直流電源

PI制御回路

オシロスコープ

 図9はフィードバック信号の測定結果である。最初0Vであったフィードバック信号は、PI制 御回路を接続した瞬間におよそ-2Vの信号となり、連続的に変化する信号となった。このことか ら共鳴周波数の安定化が正常に開始されたと考えられる。その後、NDフィルターを用いてファブ リーペロー共振器への入射光強度を減少させたところ、モニター電圧が0.006Vになるまでフィー ドバック信号は連続的に得られ、モニター電圧がこの大きさに達した瞬間に急激に変化した。入 射光強度を減少させる前のモニター電圧が0.135Vであったことから、入射光強度が当初の4.4%

になるまで共鳴周波数を安定化できていたと考えられる。ファブリーペロー共振器への入射光強 度の変動を補償しないと、入射光強度が当初のおよそ半分(前節の場合当初の45.0%)になると 共鳴周波数を安定化できなくなっていたが、除算回路によって入射光強度の減少を補償すること でフィードバック信号は連続的に得られ、モニター電圧がこの大きさに達した瞬間に急激に変化 した。入射光強度を減少させる前のモニター電圧が 0.135 V であったことから、入射光強度が当

初の 4.4 % になるまで共鳴周波数を安定化できていたと考えられる。ファブリーペロー共振器へ

の入射光強度の変動を補償しないと、入射光強度が当初のおよそ半分 ( 前節の場合当初の 45.0 % ) になると共鳴周波数を安定化できなくなっていたが、除算回路によって入射光強度の減少を補償 することで入射光強度が当初の 4.4 % という極めて弱い入射光強度になるまで共鳴周波数を安定 化することが可能となり、入射光強度を補償しない場合に比べて制御可能な入射光強度の範囲が 格段に広がった。

次に入射光強度の減少を補償したときの除算回路の出力電圧を測定した。入射光強度を補償で きていれば、透過光電圧とモニター電圧が同じ割合で変化するため、除算回路の出力電圧は入射 光強度が減少しても中心値が一定の変動幅を持った信号となると考えられる。実際に測定した除 算回路の出力電圧は図 10 の黒線のようになった。最初 0 V であった除算回路の出力電圧は PI 制 御回路を接続した瞬間におよそ 1 V を中心とした変動幅を持った信号となり、その後継続して同 様の信号が得られた。このことから正常に共鳴周波数の安定化が開始されたと考えられる。その 後 ND フィルターによって入射光強度をモニター電圧が 0.016 V になるまで減少させた。当初の モニター電圧が 0.135 V であったことから、このときの入射光強度は当初の 12 % である。入射 光強度が減少すると、それに伴い除算回路の出力電圧の変動幅が大きくなった。このことから、

入射光強度の減少によって共鳴周波数の安定度が低下していると考えられる。そこで、入射光強 度が当初の 12 % まで減少したときの共鳴周波数の安定度を求めた。図 11 はファブリーペロー共 振器のピエゾ素子に三角波を印加すると得られる除算回路の出力電圧のスペクトルである。制御 開始後の除算回路の出力電圧の最大値は 1.60 V 、最小値は 0.40 V であった。この最大・最小値 の幅に対応する周波数幅と FSR を比べることで共鳴周波数の安定度を求めたところ、 1.96 MHz であることがわかった。図 4 の実験結果から、入射光強度を一定に保ちつつ従来の PI 制御で共鳴 周波数を安定化したときの安定度が 1.33 MHz であることが確認できたが、この値と比べると安

定度が 0.63 MHz 悪化した。安定度が悪化した要因としては、入射光強度が減少に伴い得られる

透過光電圧とモニター電圧が小さくなることでノイズの影響が大きくなり、除算回路の出力電圧 が不安定になっていることが挙げられる。しかし、安定度が悪化しても 1.96 MHz という原子の 自然幅と比べると十分に小さい値であることから、入射光強度が当初の 12 % まで減少したとき

図9 光強度補償時のフィードバック信号電圧 時間 ( s )

0.135 V

0.006 V フィードバック信号

モニター信号

モニター電圧( V )

フィードバック電圧( V )

図9 光強度補償時のフィードバック信号電圧

(7)

‒ 249 ‒

で入射光強度が当初の4.4%という極めて弱い入射光強度になるまで共鳴周波数を安定化すること が可能となり、入射光強度を補償しない場合に比べて制御可能な入射光強度の範囲が格段に広が った。

 次に入射光強度の減少を補償したときの除算回路の出力電圧を測定した。入射光強度を補償で きていれば、透過光電圧とモニター電圧が同じ割合で変化するため、除算回路の出力電圧は入射 光強度が減少しても中心値が一定の変動幅を持った信号となると考えられる。実際に測定した除 算回路の出力電圧は図10の黒線のようになった。最初0Vであった除算回路の出力電圧はPI制御 回路を接続した瞬間におよそ1Vを中心とした変動幅を持った信号となり、その後継続して同様の 信号が得られた。このことから正常に共鳴周波数の安定化が開始されたと考えられる。その後ND フィルターによって入射光強度をモニター電圧が0.016Vになるまで減少させた。当初のモニター 電圧が0.135Vであったことから、このときの入射光強度は当初の12%である。入射光強度が減少 すると、それに伴い除算回路の出力電圧の変動幅が大きくなった。このことから、入射光強度の 減少によって共鳴周波数の安定度が低下していると考えられる。そこで、入射光強度が当初の 12%まで減少したときの共鳴周波数の安定度を求めた。図11はファブリーペロー共振器のピエゾ 素子に三角波を印加すると得られる除算回路の出力電圧のスペクトルである。制御開始後の除算 回路の出力電圧の最大値は1.60V、最小値は0.40Vであった。この最大・最小値の幅に対応する 周波数幅とFSRを比べることで共鳴周波数の安定度を求めたところ、1.96MHzであることがわか った。図4の実験結果から、入射光強度を一定に保ちつつ従来のPI制御で共鳴周波数を安定化し たときの安定度が1.33MHzであることが確認できたが、この値と比べると安定度が0.63MHz悪 化した。安定度が悪化した要因としては、入射光強度が減少に伴い得られる透過光電圧とモニタ ー電圧が小さくなることでノイズの影響が大きくなり、除算回路の出力電圧が不安定になっている ことが挙げられる。しかし、安定度が悪化しても1.96MHzという原子の自然幅と比べると十分に 小さい値であることから、入射光強度が当初の12%まで減少したときでも分光用光源として用い るレーザーの発振周波数制御用のファブリーペロー共振器の共鳴周波数の安定度としては十分な 値で制御できているといえる。また、図10の測定結果から入射光強度が減少しても除算回路の出 力電圧の中心値は変化していないことがわかる。この中心値がロッキングポイントとなることから、

光強度を補償したことで入射光強度が減少してもロッキングポイントを一定に保ちつつ共鳴周波 数を安定化することができていたと考えられる。

 これらの結果から、除算回路によって透過光電圧とモニター電圧を除算して光強度の補償をす でも分光用光源として用いるレーザーの発振周波数制御用のファブリーペロー共振器の共鳴周波 数の安定度としては十分な値で制御できているといえる。また、図 10 の測定結果から入射光強度 が減少しても除算回路の出力電圧の中心値は変化していないことがわかる。この中心値がロッキ ングポイントとなることから、光強度を補償したことで入射光強度が減少してもロッキングポイ ントを一定に保ちつつ共鳴周波数を安定化することができていたと考えられる。

これらの結果から、除算回路によって透過光電圧とモニター電圧を除算して光強度の補償をす ることで、従来の PI 制御のみでは光強度が当初の 45 % 程度まで減少すると制御が維持できなく なる問題を解決し、入射光強度が当初の 4.4 % とごくわずかな大きさになっても共鳴周波数を安 定化することができるようになったと言える。また、その安定度は入射光強度が当初の 12 % に 減少しても 1.96 MHz と高い安定度を有しており、制御の基準となるロッキングポイントも一定 に保つことができた。

4. まとめ

ファブリーペロー共振器の共鳴周波数を安定化する上で、参照信号を得るためのレーザー光強 度が変動したときに生じるロッキングポイントの変動や制御の維持ができなくなる問題を解決す るために除算回路を製作した。製作した除算回路は 0.100 V から 14.97 V まで正常に動作し、ス ルーレートも

1.4 V/μs

と本研究で用いる上では十分な性能を有していたことから、この回路を用 いて光強度の補償を目指した。従来の PI 制御のみでファブリーペロー共振器の共鳴周波数を安定 化した状態で入射光強度を減少させたところ、入射光強度が当初の 45 % になると制御ができな くなった。そこで、除算回路で光強度を補償したところ、入射光強度が当初の 4.4 % になるまで 共鳴周波数を安定化することができた。また、入射光強度減少時の共鳴周波数の安定度を求める と、入射光強度が当初の 12 % に減少しても 1.96 MHz と原子の自然幅に比べて十分に小さい値 であり、制御の基準となるロッキングポイントも一定に保てていた。これらの結果から、ファブ リーペロー共振器の共鳴周波数を安定化するために必要な参照信号を得るためのレーザー光の強 度が変動しても、除算回路を用いることで光強度を補償できると期待される。

時間 ( s )

モニター電圧( V )

除算回路の出力電圧( V )

図10 光強度補償時の除算回路の出力電圧 除算回路の出力電圧

モニター電圧 1.60 V

0.40 V

除算回路の出力電圧( V )

周波数

図11 除算回路の出力電圧スぺクトルと制御時に おける除算回路の出力電圧幅との比較

1.60 V

0.40 V

250 MHz

図10 光強度補償時の除算回路の出力電圧 図11  除算回路の出力電圧スぺクトルと制御時

における除算回路の出力電圧幅との比較

(8)

‒ 250 ‒

ることで、従来のPI制御のみでは光強度が当初の45%程度まで減少すると制御が維持できなくな る問題を解決し、入射光強度が当初の4.4%とごくわずかな大きさになっても共鳴周波数を安定化 することができるようになったと言える。また、その安定度は入射光強度が当初の12%に減少し ても1.96MHzと高い安定度を有しており、制御の基準となるロッキングポイントも一定に保つこ とができた。

4.まとめ

 ファブリーペロー共振器の共鳴周波数を安定化する上で、参照信号を得るためのレーザー光強 度が変動したときに生じるロッキングポイントの変動や制御の維持ができなくなる問題を解決する ために除算回路を製作した。製作した除算回路は0.100Vから14.97Vまで正常に動作し、スルー レートも1.4V/μsと本研究で用いる上では十分な性能を有していたことから、この回路を用いて光 強度の補償を目指した。従来のPI制御のみでファブリーペロー共振器の共鳴周波数を安定化した 状態で入射光強度を減少させたところ、入射光強度が当初の45%になると制御ができなくなった。

そこで、除算回路で光強度を補償したところ、入射光強度が当初の4.4%になるまで共鳴周波数を 安定化することができた。また、入射光強度減少時の共鳴周波数の安定度を求めると、入射光強 度が当初の12%に減少しても1.96MHzと原子の自然幅に比べて十分に小さい値であり、制御の基 準となるロッキングポイントも一定に保てていた。これらの結果から、ファブリーペロー共振器の 共鳴周波数を安定化するために必要な参照信号を得るためのレーザー光の強度が変動しても、除 算回路を用いることで光強度を補償できると期待される。

参考文献

1) 日本物理学会:「量子エレクトロニクス」(朝倉書店 1965)pp.1-16

2) 山口一郎、角田義人:「半導体レーザーと光計測」(学会出版 1992)pp.1-29

3) 嶺重慎・高橋義朗・田中耕一郎:「光と物理学」(京都大学学術出版会 2007)pp.27-43

4) 管野敬之:「レーザーの発振周波数制御に向けた高安定参照共振器の開発」(埼玉大学大学院教育学研 究科修士論文 2013)pp.57-72

5) 左貝潤一:「光学の基礎」(コロナ社1997)pp.172-177

6) ANALOG DEVICES社:「AD538 Data Sheet」http://www.analog.com/static/imported-files/data_

sheets/AD538.pdf

7) 岡村廸夫:「定本OPアンプ回路の設計」(CQ出版 1990)pp.161-230

(2016年3月11日提出)

(2016年5月10日受理)

(9)

‒ 251 ‒

Development of a Control Method for a Cavity by Compensating for Optical Intensity Fluctuation

IZUMI, Yuki

Graduate School of Education, Saitama University

OHMUKAI, Ryuzo

Faculty of Education, Saitama University

Abstract

Stabilizing the resonance frequency of a reference cavity cannot be achieved when the laser intensity fluctuates. To solve this problem, we attempted cavity control that compensates for laser intensity by dividing the transmitted light intensity of the cavity by the monitor signal intensity of an incident optical power. When stabilizing the cavity resonance without compensating for laser intensity, stabilization failed when the incident laser intensity decreased to 45.0% of the initial in- tensity. When stabilizing the resonance by compensation, stabilization was maintained until the in- cident intensity was decreased to 4.4 % of the initial intensity. With our technique, highly stable cavity resonance is expected to be achieved when the incident coherent light is generated from a complicated laser cavity like an external cavity for efficient frequency doubling .

Keywords: laser, cavity, resonance frequency, compensation for intensity fluctuation, division cir-

cuit

参照

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