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最近のオリンパスの不祥事についての雑感

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Academic year: 2021

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アカデメイア

最近のオリンパスの不祥事についての雑感

法学部長 畠 田 公 明

はじめに

最近、日本の光学機器・電子機器メーカーである オリンパスがイギリス人社長を電撃的に解任したこ とや、イギリスの医療機器メーカーの会社を買収(M

&A)する際に投資助言会社に過大の報酬を支払っ

ていたことなどが話題になった。オリンパスといえ ば、内視鏡分野では世界シェアの大部分を占めるな ど、医療用の光学機器や顕微鏡分野では世界最大手 となっている。オリンパスの不祥事をニュースで聞 いたり新聞などを読んだりしたが、会社法の研究分 野においても典型的なものの1つとして興味深い。

オリンパスの不祥事

オリンパスの不祥事が発覚して、オリンパスでは 弁護士と公認会計士から構成される第三者委員会が 設置された。この委員会による調査によって、オリ ンパスが10年代以降、バブル期の投機性の高いデ リバティブ(金融派生商品)へ走ったが、バブル崩 壊によって金融商品の価格が急落し多額の含み損が 発生した。その損失を決算で計上せず先送りするた めに、外部のファンドなどに「飛ばし」(含み損を 抱えたままの実態よりも高い価格で一時的に売り渡 す方法)を行うことにより隠蔽が続けられ、上記の 買収の際の巨額の報酬などがその穴埋めに利用され たことが明らかとなった。結局、東京証券取引所で はオリンパスは監理銘柄に指定され、上場廃止とな る見込みである。

オリンパスは、光学機器・電子機器の製造という 本業により営業利益を増大させるということに専念 せずに、財テク、すなわち投機性の高いデリバティ ブに手を出して高収入を目指したが、当時の多くの 会社がそうであったように、バブル崩壊により多額 の損失を被った。しかも、経営者は、会社の株主や その他の利害関係者の利益のためでなく、自分らの

保身のため、その損失を巧妙に隠蔽した。

会社の目的

ところで、会社法の研究分野において、会社の目 的とは何か、会社は誰のものかということが理論的 に問題とされる。わが国でも、近時、会社の目的と して、とくに株主利益の最大化ということが取りあ げられることが多い。アメリカでは、株主中心の会 社 法 の 構 造 を し ば し ば 株 主 第 一(shareholder pri-

macy)主義と呼び、また、とくに取締役が株主の

最善の利益に合致する決定をすべき信任義務を負う ことは、株主第一規範(shareholder primacy norm) るいは株主の富の最大化の規範(shareholder wealth

maximization norm)と称される。このような考え方

を背景に、とりわけ10年代に敵対的な企業買収 ブームが加熱して、多くの買収者が買収対象企業を 買収した後にこれを解体して売却すること(裁定取 引〔arbitrage〕)により裁定利益のみを目指す事態 に至り、地域において当該企業が消失し、大量の失 業者が出て、その地域が疲弊してしまうことが問題 とされるようになった。

日本においても、第二次世界大戦前の会社のなか には、アメリカのように、株主が自己の利益の最大 化を実現するものが多かったものと推測される。戦 前の企業は、会社の最高かつ万能の決定機関である 株主総会制度のもとで、獲得した利益の大部分を、

利益の多寡に応じて直ちに配当し、経営者に対する インセンティブ・システム(役員賞与)も、株主の 利益に合致するように設計されていた。大正5年当 時、会社の従業員の知らない間に、会社の株式が大 量に移動する度毎に経営首脳者が変わり、方針が一 向に定まらなく、また、株主の権力が絶大で、経営 首脳者は会社の基礎をよくすることよりも株主の歓 心を得るために、高率の配当をして株の値上がりを

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ねらっており、支配人は会社の業績の良否よりも株 価の上下に心を使うありさまであったとの指摘がな されていた。また、昭和5年当時、会社経営の腐敗 堕落が厳しく批判され、事業経営の態度がその場主 義で、いわゆる事業百年の繁栄を目標としていない こと、企業財政の乱脈、不正決算・蛸配当の横行、

事業道徳が消磨して反生産的な虚業的事業経営が平 然と許されていること、重役の著しい無能・腐敗・

不正等のために事業の多くが食い物にされているこ と、その場主義の大株主の横暴と高配当および多額 の重役賞与による事業基礎の衰弱などが指摘されて いた。このような当時の指摘や問題点については、

最近の企業不祥事をみていると、現在の日本でも同 じようなことがいえるのであり、何時の時代でも人 間の本質は変わらないとか、進歩がないとかいわれ ても仕方がないのではないかと感じる。

近時のアメリカの多数の州では、会社の取締役が その義務を履行する際に、株主以外の利害関係者(従 業員・顧客・供給者・地域社会等)の利益を考慮す ることを認める利害関係者制定法(constituency stat-

utes)が定められており、従来の伝統的な株主第一

規範の考えが修正されてきている。日本においても、

著名な八幡製鉄政治献金事件の最高裁判決(最大判 昭和45年6月24日民 集24巻6号65頁)以 後、企 業 の社会的責任(CSR)の議論が盛んに行われるように なり、日本経済団体連合(経団連)の企業行動憲章 にもその精神が明記されている。

結び

会社の経営者は、会社の利益、いいかえれば企業 価値を最大化する義務を負うものであって、株主や 経営者自身のためだけでなく、その他の多くの利害 関係者のためにも企業価値の確保・向上をさせるよ うにしなければならないと考えられる。このような 企業価値の向上は、財テクに走って利ざやを稼ぐこ とではなく、本業により営業利益を増大させるとい うことに専念することによるべきものである。この ような本業に専念することが、企業の存在意義であ り、かつ社会的責任を果たし社会貢献に繋がるもの と考える。このことは、会社以外の組織・団体にも 共通するものであると考える。以上のようなことが、

最近の企業不祥事をめぐる私の雑感である。

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