KONAN UNIVERSITY
情報リテラシー向けのe‑learning教材の構築
著者 井上 明
雑誌名 甲南大学情報教育研究センター紀要
巻 2
発行年 2003‑03
URL http://id.nii.ac.jp/1260/00001160/
情報リテラシー 情報リテラシー 情報リテラシー
情報リテラシー教育 教育 教育 教育向け 向け 向け e 向け ee e‐ ‐ ‐ ‐Learning Learning Learning Learning 教材の構築 教材の構築 教材の構築 教材の構築
井上 明
甲南大学情報教育研究センター
アブストラクト
大学などの教育機関において情報リテラシー教育は、情報化社会の必須の知識としてその重要性 が高まっている。IT(Information Technology:情報通信技術)の基本技術を理解し知識を得ること は、自らの専門分野において「ITを活用し現実社会の問題を解決する」能力へとつながっていく。
しかし、情報リテラシーとして「何をどのように学ぶのか」という学習内容と教育方法の関係が 明確化されていない場合が多く、学習内容に即した適切な教材活用やe-Learning などの新しい教 育形態の利用が一般化するまでには至っていない。
本論文は、甲南大学での情報リテラシー科目の学習内容の分類化をおこない、大学における情報 リテラシー教育に対する集合教育とe-Learning の適用範囲を明らかにする。また、実際に情報リ テラシー教育向けのe-Learning教材である、1)ソフトウェア操作を自学自習可能な動画コンテンツ、
2)ビデオカンファレンスソフトウェアを使った双方向学習指導システム、の作成を試みた。これら の実践を通じて、教育内容の変化、教材作成手法、e-Learningの適用プロセスの検討をおこなった。
本研究での取り組みは、インターネット授業における学習教材への活用も考えられる。
1. はじめに
e-Learningとは、コンピュータやインターネットを活用し、「いつでも」、「どこでも」、「誰でも」
様々な内容を学習できる学習形態である。ITインフラの整備された企業を中心に普及が進んでおり、
たとえば、IBMでは、2000年における社内研修の約43%をe-Learningで実施したと発表してい る[1]。
大学においても徐々に電子教材やe-Learning を用いた授業が試みられてきている。e-Learning を導入する場合に重要な点は、e-Learningを実際の授業の中で、どういった学習場面で活用するの か、またそこで必要とされる教材はどのようなものが適切か、といったカリキュラム全体の計画と 目標の明確化である。単にe-Learningまたは電子教材を、学習目標が無い状態で使用した場合、
教える側も教えられる側も消化不良となり、e-Learningは学習効果が期待できない、コスト高であ る、といったマイナスの側面だけが大きく取り上げられ、e-Learningの持つ可能性や教育的効果が 正しく評価されない場合がある。
本研究では、大学での情報リテラシー教育に焦点をあて、情報リテラシー教育での e-Learning の適用範囲を明らかにする。また、そこで必要とされる教材開発を試みる。そして、e-Learningを 組み合わせた授業の実践から、情報リテラシー教育におけるe-Learningの活用方法を検討する。
2. 情報リテラシー教育とe-Learning
2.1. 大学における情報リテラシー教育
大学では様々な情報教育が実施されている。特に、情報リテラシー教育は、文系・理系などの各 専門分野を問わず、社会生活に必要な基本的能力として、ほとんどの高等教育機関において実施さ れている。
一方で大学における情報リテラシー教育は大きな変革期を迎えつつある。高等学校では2003年 4月より、情報教育が必修化される予定であり、2006年度からはある程度の情報リテラシー能力を 習得した生徒が大学へ入学する。また、平成10年7月の教員免許法改正に伴い、「情報機器の操作」
の2単位がすべての教員免許で必修化された。つまり、大学での情報リテラシー教育で実施するカ リキュラムや学習者が習得すべき能力に変化が起こってきているといえよう。
情報リテラシーの定義には、一般的には、情報機器の操作などに関する観点から定義する場合(狭
情報活用能力 情報活用能力情報活用能力 情報活用能力 の
のの の習得習得習得 習得
情報 情報 情報
情報倫理の倫理の倫理の倫理の 理解理解
理解理解
技術的 技術的 技術的
技術的能力の能力の能力の能力の 習得習得
習得習得
プレゼンテーション、
問題発見・解決技法、
データマイニング
情報機器操作、ソフト ウェア操作、ネットワ ーク操作
セキュリティ、プライ バシー、著作権、ウィ ルス
図1.情報リテラシー教育の分類
義)と、操作能力に加えて、情報を取り扱う上での理解、更には情報及び情報手段を主体的に選択し、
収集活用するための能力と意欲まで加えて定義する場合(広義)の二つの定義が知られており、通常 は広義の情報活用能力まで含めた状態を情報リテラシーとしている。本研究においても、情報機器 操作および情報活用の双方を含んだ状態と定義する [2]。
つまり、このような情報リテラシーを教える「情報リテラシー教育」とは、情報科学の基礎及び 情報手段の特性の理解、基本的な操作能力の習得といった「技術的能力の習得」、情報技術の役割や 及ぼしている影響や情報モラルの必要性などを理解する「情報倫理の理解」、課題や目的に応じて情 報手段を適切に活用し,必要な情報を主体的に収集・判断・表現・発信・伝達できる能力の「情報 活用能力の習得」、以上の3分野と考える(図1)。
2.2. 情報リテラシー教育におけるe-Learningでの適用分野
e-Learningの特徴は、1)レベルやペースに応じた学習ができる、2)時間・場所に依存せずに繰り
返し学習が可能、3)動画・音声といったマルチメディアが利用できる、4)双方向性を有する、など である。学習者はパソコンを媒介として、様々な知識を個人ごとに個別化された状態での幅広い学 習が可能になると期待されている。
前章では情報リテラシー教育での学習内容を分類化したが、次に、それらの学習内容の分類が
e-Learningと集合教育のどの学習形態に適しているかについて考察していく。
まず、「技術的能力の習得」では、ハードウェア・ソフトウェアに関する操作・手順の理解が主た る学習目標である。日常の道具として情報機器を操作できる能力を習得していくが、学習者それぞ れに理解度や進捗が異なる場合が多く、集合教育では一人の教師が全ての学習者に対し、個別に対 応するのは事実上不可能であった。e-Learningでは、Web上のマルチメディア教材などの活用に より、各自の進捗に応じた個別学習がおこなえる。ソフトウェアの操作習得は、一度では理解でき ない場合が多く、繰り返し何度でも学習可能なe-Learning は集合教育に比べ学習効果が期待でき ると考える。
「情報倫理の理解」では、セキュリティやプライバシー関係などの内容を理解する。この場合も、
情報化社会におけるプライバシー侵害・保護の内容やコンピュータウィルスといったセキュリティ に関する内容の理解が目標であり、時間や場所に依存しなくても各自のペースで学習できる内容で ある。
一方、「情報活用能力の習得」は、技術・倫理を理解した上で、実際に学習者自らが思考し、表現 する創造的活動が求められる。今までに学んだ事柄を全て活用しながら作品を作り、ディスカッシ ョンやプレゼンテーションをおこなう。テレビ会議などでもディスカッションなどはできるが、人 間同士の直接のコミュニケーションによって得られるノンバーバルな情報や、異なる意見・価値観
への対応、社会参加などを理解し経験することは非常に重要である。つまり、情報の活用実践の項
目はe-Learningではなく、集合学習において実施すべき内容といえる。
このように、「技術的能力の習得」と「情報倫理の理解」は、e-Learningで実施可能な学習分野 であり、「情報活用能力の習得」は集合学習で実施すべき内容と位置づける(図2)。
3. 情報リテラシー教育の設計とe-Learningの適用
前章では、情報リテラシー教育の学習内容による分類、またそれぞれに最適な学習形態を明らか にした。今回の研究ではこれらの分類を元に、情報リテラシー教育用教材の開発、授業実践をおこ なった。本章では対象とした授業について説明する。
3.1. 甲南大学における情報リテラシー教育
甲南大学では情報教育研究センターが全学部の学生を対象とした情報リテラシー教育を実施して おり、授業科目として、「情報処理入門B」「情報処理入門A」を開講している。
情報処理入門Bは「ベーシック」であり、高等学校などでコンピュータを学んだことがない初心 者を対象としている。1クラスの受講生は約80名程度で、授業期間は半期でおこなっている。前 期・後期に各16クラスを8人の教員(内非常勤6名)で担当し、また1クラス2名のTAが授業 のサポートにつく。同一科目を複数教員が担当するために、表1のような共通のシラバス概要を情 報教育研究センターにて作成し、授業内容の調整を図っている。各教員は、シラバス概要に書かれ
集合教育 集合教育 集合教育 集合教育
図2.集合教育とe-Learningの適用範囲 情報倫理の理解
技術的能力の習得 情報活用能力の 習得
eee
e‑‑‑‑LearningLearningLearningLearning
ている内容をベースに、「必須」項目については全ての担当者が教育をおこない、「選択」項目につ いては、それぞれの教員の判断で適宜授業に取り入れることができるようになっており、共通性と 独自性の双方を考慮したカリキュラムになっている。
情報処理入門Aは「アドバンスド」コースとしての位置づけであり、日本語入力、ワープロ・表 計算、インターネットなど基本的な情報リテラシー能力はすでに習得している学生を対象としてい る。1クラスの受講生は約30名程度で2クラスを前期に開講しており、1クラス専任教員1名と 2名のTAが授業を担当している。
3.2. 情報リテラシーカリキュラムの分類
情報リテラシー教育におけるe-Learningの適用にあたって、まず現在の教育内容の分類化をお こない適用範囲を定めた。今回対象としたカリキュラムは、筆者が担当している情報処理入門B・
Aの授業である。
3.2.1. 情報処理入門Bの授業概要
情報処理入門Bでおこなっているカリキュラムは、表2のとおりである。表の学習内容は、ほぼ 授業の項目 配分
目安 授業の内容 必須/
選択
1.情報機器のしくみ
2.センターの情報環境の説明(ソフト、ハード、ネットワーク) 3.パソコンの操作方法
4.ユーザIDとパスワードの入力
1 情報環境の説明 1週
5.センター利用上の諸注意
必須
1.キーボード操作とホームポジション
2.ブラインドタッチにおける運指の練習 3.タイピング練習ソフトの説明と練習方法 4.かな漢字変換ソフトの解説と変換練習
2 文字入力とかな漢字変換 1週
5.文字コードについての解説
必須
1.情報化社会についての解説
2.インターネットの活用方法とネチケット 3.電子メールソフトウェアのしくみと使用方法 4.電子メールのやりとりにおけるモラルやネチケット 5.電子メール送受信実習
6.WWWブラウザのしくみと使用方法
7.ホームページの利用時における注意事項(著作権等)
3 コンピュータネットワークと 情報倫理
2週
8.ホームページ閲覧実習
必須
1.ドライブの階層とディレクトリ(フォルダの解説)
2.ファイルに関する解説(しくみ、ファイル名、分類方法など)
3.エクスプローラを使用したファイル管理 4.個人情報とセキュリティについての解説 5.ユーザ、グループの概念
6.ディレクトリ/ファイルのアクセスコントロール操作
4 ファイル管理とセキュリティ 1週
7.ディレクトリ/ファイルの共有
選択
表1.情報処理入門シラバス概要
(出展:「情報処理入門」シラバス概要一部抜粋)
授業で実施する順序にそっている。
情報処理入門Bでは、キーボード操作や日本語入力といったコンピュータに関する初歩的内容か らスタートする。情報機器の基本的操作が習得できれば、次に、ワープロによる文章作成を学習す る。ワープロのソフトウェアはMicrosoftWord2000を使用している。コンピュータ上での文章作 成・編集が可能になった段階で、一旦、機器操作から離れ、情報社会でのセキュリティの重要性や プライバシーといった倫理的内容を学習する。機器の操作から一度授業内容を倫理的学習に移すの は、情報リテラシー教育とは機器の操作習得だけではないことを理解させる目的と、授業全体が単 調にならないようにするためである。
その後、表計算の基本的操作を学ぶ。表計算についても、まず最も基本的な数値・文字入力から はじめ、四則演算、関数、グラフ作成へと徐々に高度なレベルへと移っていく。ソフトウェアは
MicrosoftExcel2000を使用している。プレゼンテーションは、実社会ではワープロ、表計算の次に
使用頻度が高い。文字・画像を使ったプレゼンテーション資料を作成や、背景の変更、グラフの挿 入など実用的な内容を学習する。使用ソフトウェアはMicrosoftPowerPoint2000である。
最後に、Webページ作成をおこなう。Web ページを作成するには、文字入力、ファイル操作、
ファイル・フォルダの関係など幅広い知識と技術が必要となってくるので、現在までに習得した技 術や知識の総まとめ的な学習といえる。ソフトウェアはIBM ホームページビルダーを使用した。
大分類 小分類
オリエンテーション 学内の情報環境の説明 コンピュータ室の機器の使い方 パソコンの使用方法
ウィンドウ基本操作 パスワード変更
コンピュータ基礎・章入力基礎 コンピュータのしくみ 文章章入力方法 日本語変換
ファイルへの保存 新規作成 文章の編集
ワープロ 空白行と段落挿入 文字列選択 訂正・削除
文字列の検索・置換 保存 フォント・スタイル
配置、行間隔 箇条書 タブ
表 クリップアート 図形描画
ワードアート 印刷
コンピュータネットワークと情報倫理 ネチケット プライバシー 著作権
電子メール 情報検索
表計算 各部の説明 文字・数値入力 オートフィル
数式の扱い 数式入力・コピー オートSUM
関数 表外観修正 罫線
配置・表示・列幅変更 グラフ
プレゼンテーション PowerPoint基礎 文字 図形
グラフ挿入 プレゼンテーション方法
Webページ Webページのしくみ HTMLとは タグ
Webページでの自己表現
表2.情報処理入門Bカリキュラム内容(分類前)
3.2.2. 情報処理入門Bのカリキュラム分類とe-Learning適用範囲
情報処理入門Bのカリキュラムで実施している授業内容が、「情報技術の習得」「情報倫理の理解」
「情報活用能力の習得」のどの分野に適合するか分類した(表3)。
その結果、ワープロ、表計算、プレゼンテーションなど対象とする学習分野が異なっていても、
ほとんどが技術的内容の操作習得と理解であることが示された。実際に、授業の大半は教員がハー ドウェア・ソフトウェアの操作を説明し、学生は教えられた操作をもとに課題を進めていくという 内容になっている。これらのことから本授業におけるe-Learningの適用可能性を示す。
・ 本授業では、技術的操作のスキル習得が主たる授業内容となっており、その学習内容の多くに 個別学習・反復学習をおこなえるe-Learningを活用できる。
・ 必要なe-Learning教材は、グループウェアやWeb上のコラボレーションツールなどの共同作 業を重視したものではなく、個別性、オンデマンド性といった、各自の要求に応じた内容を提 供する教材が必要である。
3.2.3. 情報処理入門Aの授業概要
情報処理入門Aのカリキュラムは、表4のとおりである。先にも述べたが、情報処理入門Aは基 礎的スキルがある学生を対象としているので、キーボード操作、日本語入力、ワープロといった内 容は基本的には実施しない。
情報機器を日常の道具として使いこなす能力の育成も考え、受講生には可能な限りノートパソコ
大分類 小分類
オリエンテーション 学内の情報環境の説明 コンピュータ室の機器の使い方 パソコンの使用方法 技術的能力の習得
ウィンドウ基本操作 パスワード変更 情報倫理の理解
コンピュータ基礎・章入力基礎 コンピュータのしくみ 文章章入力方法 日本語変換 情報活用能力の習得
ファイルへの保存 新規作成 文章の編集
情報活用能力の習
ワープロ 空白行と段落挿入 文字列選択 訂正・削除
文字列の検索・置換 保存 フォント・スタイル
配置、行間隔 箇条書 タブ
表 クリップアート 図形描画
ワードアート 印刷
コンピュータネットワークと情報倫理 ネチケット プライバシー 著作権
電子メール 情報検索
表計算 各部の説明 文字・数値入力 オートフィル
数式の扱い 数式入力・コピー オートSUM
関数 表外観修正 罫線
配置・表示・列幅変更 グラフ
プレゼンテーション PowerPoint基礎 文字 図形
グラフ挿入 プレゼンテーション方法
Webページ Webページのしくみ HTMLとは タグ
Webページでの自己表現
表3.情報処理入門Bカリキュラム内容(分類後)
ンの購入を促している。ノートパソコンを持参できない場合は、情報教育研究センターから授業毎 に貸し出している。
基礎的内容としては、本学ネットワーク環境の理解、ネットワークドライブの意味やその設定方 法などを学ぶ。情報処理入門Bで使用するデスクトップパソコンでは、ネットワークドライブなど は自動的に接続されているが、ノートパソコンでは、利用者がその都度接続作業の一部を手動でお こなわなければならないなど、情報処理入門Bと比較すると高度な内容になっている。
受講者の大半は、ワープロに関してはほぼ問題なく自由に操作できるが、表計算はかなりスキル にばらつきがある。そのために、スキルの確認とレベルの統一化の意味を含めて、数回授業で実施 している。ソフトウェアは情報処理入門B同様にMicrosoftExcel2000を使用している。
本授業でのポイントは、情報処理入門Bと比較すると、課題作成、プレゼンテーションといった 実践的内容に重点を置いている点である。文字・画像などを使ったプレゼンテーション資料の作成 方法や、Webページの作成方法を学び、インターネット環境下での情報発信技法を学習する。そし て、実際に具体的課題を提示し、その課題に対し自らの考え、問題解決策をレポートとしてまとめ 発表する。レポートは、プレゼンテーション資料とWebページの両方を作成し、実際にそれらの 資料を使って数分間のプレゼンテーションをおこなう。
3.2.4. 情報処理入門Aのカリキュラム分類とe-Learning適用範囲
情報処理入門Aのカリキュラム分類(表5)とe-Learning適用範囲を考察する。
表5の分類後の結果を見ると、情報処理入門Bと比較して、技術的能力の習得が減少し、情報倫 理、情報活用の項目が増加していることがわかる。これは授業目標が、情報活用の実践を重視して いるところから妥当な結果である。情報処理入門Bに比べ情報処理入門Aでは、授業の実施項目の
「小分類」の項目数が減少しているが、これは、教える内容を低下させたのではなく、ひとつの課 題に対する各自の考える時間を増加させたいという意図からである。
e-Learningの適用範囲としては、情報処理入門B同様に、ソフトウェア操作などの技術習得分
野に関係する範囲になる。問題発見や解決策の策定は、可能な限りe-Learningを使わず、ディス カッションやQ&Aなどを実際の授業の中で実施する。特に、プレゼンテーションは、前章でも説 明したように、自分の発表内容に対し相手が興味を持っているか、あるいは理解しているか、質問 にどう対応するか、といった受け手の反応をリアルタイムで感じることが重要であり、現在の
e-Learning用ツールや遠隔講義用システムでは細かな状況までの把握は困難である。
以上のように、情報処理入門B・Aのそれぞれの授業でのカリキュラム内容を分析し、学習内容 の分類化とe-Learningの適用箇所を考察した。情報リテラシー教育としてどのような内容を教授 するか、さらにその内容を詳細化し、どこにe-Learning を適用するかを「設計」する作業は授業 運営の観点からも重要である。
大分類 小分類
オリエンテーション 学内の情報環境の説明 パスワード変更
ノートパソコン設定
コンピュータ基礎・章入力基礎 本学におけるネットワーク環境 ネットワークドライブ 情報倫理・コンピュータネットワーク 情報化社会とは ネチケット
プライバシー 著作権
コンピュータウィルス 電子メール環境の設定と利用
Webでの情報検索
表計算 各部の説明 文字・数値入力
オートフィル 数式の扱い
数式入力・コピー オートSUM
関数 表外観修正
罫線 配置・表示・列幅変更
グラフ
プレゼンテーション PowerPoint基礎 文字
図形 グラフ挿入
プレゼンテーション方法
Webページ Webページのしくみ HTMLとは
タグ Webページでの情報発信
情報活用の実践 課題の発見 解決案の策定
レポート作成 プレゼンテーション資料作成
発表 評価
大分類 小分類
オリエンテーション 学内の情報環境の説明 パスワード変更 技術的能力の習得
ノートパソコン設定 情報倫理の理解
コンピュータ基礎・章入力基礎 本学におけるネットワーク環境 ネットワークドライブ 情報活用能力の習得 情報倫理・コンピュータネットワーク 情報化社会とは ネチケット
プライバシー 著作権
コンピュータウィルス 電子メール環境の設定と利用
Webでの情報検索
表計算 各部の説明 文字・数値入力
オートフィル 数式の扱い
数式入力・コピー オートSUM
関数 表外観修正
罫線 配置・表示・列幅変更
グラフ
プレゼンテーション PowerPoint基礎 文字
図形 グラフ挿入
プレゼンテーション方法
Webページ Webページのしくみ HTMLとは
タグ Webページでの情報発信
情報活用の実践 課題の発見 解決案の策定
レポート作成 プレゼンテーション資料作成
発表 評価
表4.情報処理入門Aカリキュラム内容(分類前)
表5.情報処理入門Aカリキュラム内容(分類後)
4. 情報リテラシー教育向けe-Learning教材の構築
情報処理入門の各授業で最も活用範囲が広いe-Learning 教材は、ソフトウェアの操作習得のた めの教材である。多くの情報関係の授業では、まず教員がソフトウェアの操作を実際におこない、
学生はその様子を見ながら一緒に操作する、といった授業風景が一般的であろう。しかし、作業全 体の流れが理解できていない受講生は、教員の説明についていくのがやっとで作業手順を覚えると ころまでいかず、後日、一人で作業できない場合が多い。また、一度、操作を誤ると作業の流れに 取り残され、その後の作業が全て分からなくなってしまう。その結果、「説明が早い」「理解できな い」といった問題を指摘し、理解度が上がらない場合がある。e-Learningでは「繰り返し学習」「個 別学習」が可能であり、それらの特徴を生かした教材開発を実施した。
次にe-Learning 教材で必要な機能がインタラクティブ性である。一方的に情報を受けるだけで
は、従来のビデオ学習や通信教育と変わらない。e-Learningの持つ特徴を最大限に発揮するには、
他者とのコミュニケーション機能を加えたリアルタイムなインタラクティブ性が不可欠である。
しかしながら、e-Learning教材というと、その開発費用や作成時間に莫大なコストがかかり、教 員一人での作成が困難というイメージが強い。従来の集合教育で使用されてきた教材は、「教員自ら が作成できる」ことが基本であり、それにより容易に内容をアップデートし、手軽に授業で使用で
きた。e-Learningにおける教材も「容易・安価に」誰もが作成し、利用可能なものが求められてい
ると考える。
以上の内容を教材の設計方針として実際にe-Learning教材を構築した。
4.1. ソフトウェアスキル習得用マルチメディア教材
ソフトウェアの操作を教える際によく利用されている電子教材は、PowerPointで資料を作成し、
スライド毎に操作画面を貼り付け、コメントや説明を書き足したものである(図3)。 筆者も数年このような教材を作成し、授業で使用してきたが下記のような問題があった。
・ 説明したい画面毎に、取り込み・編集・貼り付け作業をおこなう必要があり、非常に多くの時 間がかかる
・ 画面のスナップショットであるため、全ての操作を説明できない
図3の例では、Word での表作成を説明している画面であるが、1枚のスライドには収まりきれ ず、学生は何回も次のページに飛びながら説明画面を見ていく必要があった。また、操作画面を複 数枚使用するなど、作成に非常に多くの時間がかかっていた。
そこで、ソフトウェアの操作やWindowsの使い方といった操作を、全て動画で説明する教材を 構築した(図4)。たとえば、ファイルを開く、編集する、保存するなどの操作手順を、画面そのま まの状態で見られるので理解できなかった点は何度でも繰り返し学習できる。また、操作の要点を 文章として動画の横に記載し、より理解しやすいようにした。さらに、インターネットを通じて自 宅からでも利用できる。
図5の例では、IBMホームページビルダーを使って、Webページにハイパーリンクを設定する 手順を説明している。本論文では画面キャプチャーの静止画であるが、実際は全て動画である。ま ず、リンクを設定するための文章を書く(図5上段)。続いて、その文字列を選択し、リンク挿入ボ タンを押す。リンク設定画面が表示するので、リンク先のURLを記入する(図5下段)。以上のよ うな一連の作業を全てひとつの画面で参照できる。また、動画の部分をクリックすると、一時停止 の状態になり、操作説明が早ければ停止できる。このように、Windows のデスクトップ上の作業 であれば、ほとんどの内容がほぼそのままの状態で再現可能である。クライアント側は、
InternetExplorerとWindowsMediaPlayerがインストールされていればよい。
本教材の作成手順を説明する。今回使用したハードウェア・ソフトウェア環境は以下のとおりで ある。動画による操作画面の取り込みは、サイバーリンク社のストリーミングコンテンツ作成ソフ
トStreamAuthor の「画面録画」機能を使用した。特定のアプリケーションの画面取り込みや、
Windowsデスクトップの任意の範囲の取り込みもおこなえ、取り込んだ動画は、wmv形式で保存
される。今回は画面取り込みにStreamAuthorを使用したが、Microsoft社が提供しているフリー のMicrosoftMediaEncoderなどでも同様の作業を実施できる。
操作順序や流 れを文章で説 明
説明したい画 面毎にキャプ チャーし、貼 り付け
説明に対応す る画面箇所を 矢印で指示
図3.静止画像を使ったPowerPoint教材
作成に多くの 労力・時間が かかる。全て 説明しきれな い・・
次に、PowerPoint で操作説明スライドを作成し、さきほどの動画ファイルを各スライドへイン サートする。最後に、PowerPointのWebページ保存機能を使って、HTML形式で出力し、Web ページとして公開する。
[ハードウェア]
IBM IntelliStation M Pro
CPU Pentium4 1.5Ghz,Memory 256Mbyte,HD 20GByte(Windowsパーティション側)
[ソフトウェア]
Windows 2000 Professional SP3,Microsoft Office2000,サイバーリンク社 Stream Author, Windows MediaPlayer7
さらに、今回は時間の関係上本格的な利用にはいたっていないが、Stream Authorを使って上記 の教材に教員のビデオ説明を付加したオンデマンド教材も試作した(図6)。画面右側に表示されて いるアプリケーションの操作画面は、アニメーションで表示され、その操作を教員が説明している。
教員のビデオ撮影は、安価なPCカメラをパソコンへ接続して撮影している。
各ページのタ イトル
操作に関する ポイントのみ 記載。操作全 て記載する必 要なし
動画による操 作説明。クリッ クで再生・一時 停止が可能
動画説明範囲 (点線エリア内)
図4. ソフトウェアスキル習得用マルチメディア教材
教員は、さきほどと同じ図4の教材を作成しておき、その教材を見ながら普段の授業と全く同じ ように説明をすれば、自動的にビデオ映像が付加されたコンテンツが構築される。教員のビデオ映 像を同時に見ることで、より詳細な説明を加えられ、利用者の理解度が向上すると考えられる。ま た、様々な場面で活用できるe-LearningコンテンツをStream Authorといった3万円程度の比較 的安価なソフトウェアで、専門のコンテンツ作成業者に頼まなくても簡単に自分で作成できるメリ ットは大きい。今後、実際に授業で使用し詳細を調査したい。
4.2. ビデオカンファレンスソフトを利用した双方向学習指導システム
実際に何かを学ぶという行為をおこなった場合、全て一人で完結するとは考えにくい。他者に聞 く、議論するといった行為を通じて解決策を見つけ出し、次の一歩に進む。e-Learningにおいて
動画開始 画像の下に文
字列を記入
文字列を選択 中
リ ン ク 先 の
URLを記入
図5. ソフトウェアスキル習得用マルチメディア教材を使った教材例(リンク挿入)
も同じく、学習者は知りたいと思っている内容を全てe-Learningから得ることは不可能であり、
なんらかの方法でリアルタイムに他者とコミュニケーションを図る手段が必要になってくる。
今回構築した双方向学習指導システムは、自宅や遠隔地からの利用を想定している。学習の途中 でわからなくなった時に、リアルタイムに教員へ質問する。もちろん、教員は常にパソコンの前に いるわけではないので、ある一定の時間的制限は存在する。また、本教材は複数人でのディスカッ ションなど高度なコミュニケーション環境を提供するものではなく、手軽な連絡手段としての利用 になるだろう。しかし、「何かあった場合にコミュニケーションがとれる」という安心感は、学習意 欲の向上にも役立つと考えられる(図7)。
使用したソフトウェアはMicrosoft社が提供しているフリーのビデオカンファレンスソフトウェ アのNetMeetingである。NetMeetingを採用した理由は、Windows環境であればほとんどのユー ザでインストールされており汎用性が高いからである。
図8のように、Webページ上の教員の顔写真をクリックすると、自動的にNetMeetingが起動し、
教員側のNetMeetingへ接続する。受信側では、事前にNetMeetingを起動しておくだけである。
双方にPCカメラ、マイクが接続されていれば、すぐにテレビ会議がおこなえる。PCカメラがな い場合でも、音声のみでの接続やアプリケーションの共有が可能である。通常、NetMeetingで相 手へ接続する場合、相手側のIP アドレスまたはホスト名を指定する必要があるが、本教材では、
通常のWeb ページのハイパーリンクと同様に、写真をクリックすれば、自動的に指定されている アドレスへ接続するようにした。今回は一人の教員へのアクセスであるが、たとえば複数教員の写 真があり、それぞれの箇所をクリックすると当該教員へ接続するといった双方向学習指導システム
ビデオ映像に
よる説明 動画による操 作説明
図6. 情報リテラシー教育向けオンデマンド用教材(試作)
授業で教員がおこなっているこ と(会話による説明・操作)をそ のまま再現
の作成も可能である。
また、NetMeeting のアプリケーション共有機能を使えば、教員側パソコンから、学生側パソコ ンで起動しているアプリケーションソフトの遠隔操作もおこなえる。図9の例では、学生側で
PowerPoint の練習をしており、使い方が分からない場合に教員へ接続し、教員側から学生側パソ
コンを直接操作している場面である。ビデオ会議とアプリケーション操作を同時に使うことで、個 別の対面教育に近い状態を再現できる。教育内容によっては多人数でのコラボレーションがおこな える高機能・高価格なビデオカンファレンスシステムも必要であるが、NetMeetingのような手軽 に誰でも使えるソフトウェアを有効に活用すれば、ビデオ会議やアプリケーション共有もより身近 なものになり、授業での利用も増加すると思われる。
5. 考察
これらの e-Learning教材を情報処理入門B・Aの授業で使用した。実践を通じて得られた内容
を考察する。
インターネット
画面の同期・共有
ビデオ会議
リアルタイムコミュ ニケーション
遠隔地からでも相手 の画面を見ながら説 明
図7. ビデオカンファレンスソフトを利用した双方向学習指導システム
5.1. 教育的視点からの検証
まず、ソフトウェアスキル習得用マルチメディア教材について考察する。本教材は、授業時間中 またはそれ以外の時間での個別学習向け事前・事後学習用として使用した。
授業では、ソフトウェア操作に関して一度教員が実際に操作の説明をおこない、その後、学習し 図8. WebページからのNetMeeting起動
図9. 教員側パソコンから学生側パソコンの操作
教員側PC 学生側PC
教員側パソコンから直接 学 生 側 パ ソ コ ン の PowerPointを操作
た項目が理解できているかの課題をおこなうといった授業の進め方であった。このような授業の進 め方は、多くの情報系科目で実施されているものである。特徴的なことは、本教材の使用により、
学生からのソフトウェア操作に関する質問が減少した点である。従来のアニメーション無しの教材 の場合は、かなり詳細な説明画面を作成していても、「聞き逃した」「よくわからなかったのでもう 一度説明してほしい」という質問があったが、本教材の使用後は皆無になった。教員の操作を全て 確認できるので、理解できなかった箇所は各自が教材を使用して学習していた結果と思われる。
それにより、教員が授業中に説明する内容や速度を向上できた。従来は、どうしても理解の遅い 学生のペースに合わせたり、質問対応に時間をとられ、予定した内容まで教えられない、という場 合があったが、分からなかった学生がすぐに復習できた結果、質問対応の時間が減少し、授業計画 通り進められたのが要因と思われる。特に情報処理入門Aでは、ソフトウェアの操作説明を最小限 にでき、授業では個別の質問対応、ディスカッションに多く時間を費やせた。
一方、授業範囲外のより高度な内容の質問が増加した。理解の早い学生やすでに情報リテラシー 能力の有する学生は、教材を見ながら自分で次々と演習問題をこなしてしいき時間があまっている ようであった。そこで、「必須の作業ではないが、時間のある人はたとえばこんな作業をしてみれば」
といったいくつか作業例を提示すると、かなりの学生が作業に取り組んでいた。その中で自分の興 味がある内容やより高度な作業についての質問が見られた。特に質問が多かったのが、Webページ 作成課題での、JavaScriptやスタイルシート、動画編集に関する質問である。このようにスキルが 異なる学習者へレベルに応じた作業をおこなわせることもできた。
次に、ビデオカンファレンスソフトを利用した双方向学習指導システムであるが、利用頻度とし てはあまり高くなかった。その理由として考えられる点は、1)週に1回授業があるので、質問など があれば次回授業まで待っている、2)自宅パソコンや情報処理演習室内パソコンには、PCカメラ などのハードウェアが整備されていない、といった理由であろう。おそらくハードウェアが整備さ れていない点よりも、ビデオカンファレンスソフトを使用しなくても、すぐに実際に会える状態で あったという点が大きい。しかし、例えば、実際に会う機会がほとんど無い遠隔地を結んだ授業や インターネット授業といった授業形態では、利用頻度は向上すると思われる。
5.2. 情報処理リテラシー授業のWeb化への可能性
本学の情報リテラシー科目である、情報処理入門B・Aの両科目は、教室の定員数、教員数に制 限があるため、1クラスに集中しないよう履修登録前に事前の受講希望申請をおこない、その状況 を見てクラス分けをしている。1クラスの定員を超えた場合は抽選をおこない、自動的に空いてい る別のクラスへ振り分ける。その振り分けられたクラスで本登録するかどうかは本人の判断になる。
情報処理入門B・Aでは、基本的には新入生全員分の座席数を確保しており、全ての新入生の受 講ができるようになっているが、2年次生や科目等履修生などの登録による人数増加や、振り分け
られたクラスが他の科目と重なってしまった、といった理由などにより受講できない場合がある。
本学の基本的な方針として、全ての学生の情報リテラシー能力習得を目指しており、本学におけ る情報リテラシー向上への将来的な対応として本教材の可能性を考えていきたい。情報リテラシー の技術的能力を学ぶ分野は、今回の研究で構築した教材類を使用することで、インターネット上で 授業をおこなう「Web授業化」が可能であると考える。特に、情報処理入門Bはそのほとんどを Web授業化できよう。学生は、自宅や研究室などのパソコンをインターネットへ接続し、WWWブ ラウザを起動する。情報リテラシー授業のWeb ページから、教員のビデオ説明やアニメーション による操作説明教材を使って、都合の良い時間・場所で受講する。最終的には、個別課題や試験に より知識の定着度や理解度を確認する。このように、新しい学びの形態を創出し、教室の定員や時 間に依存していた大学における教育形態の変革が期待される。
Web授業化するにあたっては、受講者の学習進捗管理、ランダムな課題提示、試験などの機能を 有する「e-Learning用プラットフォームシステム」が必要になる。本教材とこのようなe-Learning プラットフォームシステムを融合すればかなり高度な学習環境を実現できると考えられる。残念な がら現時点では本学にはこのようなe-Learning プラットフォームシステムは未導入であり、早急 な対応が求められる。
5.3. コンテンツ構築の促進
次に、教員側からの考察をおこなう。e-Learningを普及させるためには教材の質・量を高める必 要がある。しかしながら、情報技術の専門家でない教員が容易に教材を作成するのは困難であった。
特に、情報処理関係の授業で頻繁に使用されるPowerPointでの操作説明教材は、作成時間、内容、
作成の容易さなどは優れているとはいえなかった。ソフトウェアの画面をPrintScrnボタンを何回 もクリックしながら、説明したい画面ごとにキャプチャーし、さらにPowerPointで操作の説明文 書を書き、操作の流れが理解しやすいように矢印や丸を適宜挿入しながら教材を作成していたが、
これらの作業にはかなりの時間とスキルが必要である。
ソフトウェアスキル習得用マルチメディア教材では、ソフトウェア操作を動画として取り込める ので、静止画と比較し大量の情報を蓄積・公開でき、作成も容易である。例えば、静止画では、あ る作業を説明するのに、操作ごとの画面キャプチャーを複数枚用意する必要があったが、動画では ひとつのキャプチャー画面で済む。動画での取り込みは、ソフトウェアの操作を普段どおりおこな うだけであるため、説明したいソフトウェアの使用方法を知っている人であれば誰でも作成できる。
動画での画面キャプチャーには、市販のオーサリングソフトを使用したが、このソフトウェアも非 常に簡易な操作となっているので、初心者でも使いこなすことが可能であろう。
あくまでも概算ではあるが、同じ操作を静止画と動画で教材として構築した場合、動画は静止画 と比較し、教材ページ数で約1/3、作成時間で約2/3程度の枚数・時間で構築できた。
5.4. e-Learningの適用プロセス
今回の情報リテラシー教育におけるe-learning教材の開発を通じて得られた結果を元に、教育機 関におけるe-Learning適用プロセスをまとめる。
・ 詳細な授業設計をおこない、e-Learningの適用箇所を明確化する
・ 適材適所のe-Learning教材を活用し、授業の価値を高める
・ 授業を遠隔配信やオンデマンド化し、より多くの受講生へ配信する
・ 受講者の意見、要望を迅速に把握し、次の教育へフィードバックする
大学などの教育機関では、今後、e-Learningが増加すると思われるが、それにより集合教育が無 くなるという状況は考えにくい。その理由は、ヒューマンコミュニケーションから得られる定量化 できない学習効果の存在である。学習者の受講態度やその場の雰囲気を感じながら、人間同士のコ ミュニケーションの中で何かを学習していくことは非常に重要である。一方、e-Learningによって 時間・場所に依存しない学習の場の提供も重要である。集合教育とe-Learningのどちらがすぐれ ているのか、という議論ではなく、双方の利点や特性を総合的に活用した教育の実現を考える必要 がある。
e-Learningの目指すべきところは、遠隔授業による講師の出張費削減や、テストの自動採点では
ない。教育そのものの質の向上こそが目指すべき目標である。e-Learningはそれを実現するための ツールであるという点を理解し、教科内容や学習形態による使い分けや、集合教育で培った資産を
e-Learningによってさらに発展させる教育カリキュラムが必要であろう。
6. まとめ
本研究では、大学における情報リテラシー教育に着目し、学習者のスキル向上、理解度を上げる
ためにe-Learningの適用を試みた。e-Learningを適用するにあたって、現在おこなわれている情
報リテラシー教育のカリキュラムを学習内容毎に検討し、学習内容の分類化とe-Learningの適用 範囲を明らかにした。また、分類化された学習内容で活用できるe-Learning教材の開発をおこな った。ひとつは、教員が実際に説明するソフトウェアの操作を、そのまま動画の形態で学習する、
ソフトウェアスキル習得用マルチメディア教材である。本教材はインターネット上へ公開されてお り、いつでもどこでも実際の授業で教員が説明するソフトウェア操作と同じ内容を学習できる。本 教材を授業の事前・事後学習へ活用し、学習者と教育内容の変化について考察した。また、ビデオ カンファレンスソフトを利用した双方向学習指導システムを構築し、学習者と教員がリアルタイム にコミュニケーションを図れる環境を構築した。これらの教材は、情報リテラシー教育における
Web授業化への発展はもとより、集合教育とe-Learning の融合した教育形態への活用も期待さ れる。
本研究で対象とした情報リテラシー教育は、決して特殊な内容ではなく、おそらく多くの大学で 実施されているカリキュラムとほとんど同じであろう。つまり、情報リテラシー教育を実施するに あたっての教材開発手法や授業運営については広く応用が可能と考える。
平成13年の大学設置基準の改定により、通学制大学においても最大60単位までをインターネッ トなどを利用した遠隔講義で単位取得が可能になった。本学も今後Web 授業の増加が期待される が、集合教育とe-Learningのそれぞれの特徴を生かしたより高度な教育を提供していくためにも、
本研究で構築したe-Learning教材などを活用していきたいと考えている。
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