平成 29 年度修士論文
参 加 者の 全体 評価 を 高めるエ デュ テイメ ントとし ての ガイド の特性
― 価値共 有を 媒介変 数 にして ―
Characteristics of the tour guides as a form of Edutainment that enhances participants’ satisfaction and loyalty
- Using Shared Value as the intermediate variable -
首都大学 東京 大学院 都市環境 科学 研究科 観光科 学域
16842408 鍋島 和弘
指導 教員 直 井 岳 人 准教 授
要 旨
観 光 に お い て は 、し ば し ば 、訪 問 客 が 観 光 に「 教 育( 学 び )」を 求 め る の か「 楽 し み( エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト )」を 求 め る の か と い う 二 項 対 立 的 な 問 題 意 識 が 見 ら れ る 。 観 光 地 で 行 わ れ て い る 対 象 物 へ の 理 解 を 促 進 す る 活 動 で あ る イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン の 研 究 に お い て も 、 イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン を 教 育 活 動 だ と と ら え る 立 場(
Kuo,2002;Tilden,1977)が あ る 一 方 で 、と く に 観 光 研 究 で は 楽
し み と 学 び の 両 方 役 割 が 求 め ら れ る (Poria et al.,2007; Ryan & Dewar,1995
) と す る 、 楽 し み と 教 育 の 両 者 を 二 項 対 立 的 に で は な く 融 合 的 に と ら え る 必 要 性 を 示 唆 す る 立 場 も あ る 。こ の よ う な 楽 し み と 教 育 が 複 合 し た も の の 概 念 と し て 、 エ デ ュ テ イ メ ン ト と い う 言 葉 が あ る が 、 観 光 分 野 の イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン の 研 究 で は 、 こ の 教 育 と 楽 し み の 関 係 ( エ デ ュ テ イ メ ン ト ) に つ い て 詳 細 に 研 究 し た 先 行 研 究 は 見 当 た ら な い 。そ こ で 本 研 究 で は 、 イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン の 中 で も 、 観 光 対 象 の 特 徴 の 理 解 を 深 め る う え で 有 効 だ と 考 え ら れ 、 更 に 説 明 者 と 説 明 を 受 け る 側 間 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 双 方 向 的 で あ り 、 エ デ ュ テ イ メ ン ト の 目 的 に も 適 し て い る と 考 え ら れ る た め 、 人 に よ る ガ イ ド を 対 象 に す る 。 そ し て 参 加 者 が 認 識 し た ガ イ ド の 特 性 と ガ イ ド ツ ア ー の エ デ ュ テ イ メ ン ト と し て の 特 性 と 、 ガ イ ド ツ ア ー の 全 体 評 価 ( 満 足 度 、 ロ イ ヤ ル テ ィ ) の 関 係 を 明 ら か に す る 。 更 に 、 そ の 関 係 性 に ツ ア ー 参 加 者 の 個 人 差 が 影 響 を 及 ぼ す 可 能 性 を 鑑 み 、 参 加 者 が ガ イ ド ツ ア ー 主 催 者 側 が 考 え る ガ イ ド ツ ア ー の 価 値 を ど れ ほ ど 認 識 し て い る の か 、「 価 値 共 有 」 と い う 概 念 を 用 い て 、 そ の 認 識 の 度 合 い に よ る 、 ガ イ ド の 特 性 と エ デ ュ テ イ メ ン ト 、 満 足 度 の 関 係 性 へ の 影 響 を 明 ら か に す る 。
本 研 究 で は 、 一 部 が 世 界 文 化 遺 産 に も 指 定 さ れ て い る 首 里 城 の 有 料 区 域 内 で 行 わ れ て い る ガ イ ド ツ ア ー の 参 加 者 を 対 象 に ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 っ た 。
分 析 で は 、 ガ イ ド の 特 性 に つ い て は 先 行 研 究 を も と に 設 け た ガ イ ド の 特 徴 に 関 す る
25
項 目 の 尺 度 上 の 評 定 値 を も と に 因 子 分 析 を 行 い 、「 説 明 」、「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 」、「 フ レ キ シ ブ ル 」、「 工 夫 説 明 」 の4
因 子 を 抽 出 し た 。 ま た 同 様 に エ デ ュ テ イ メ ン ト の 特 性 に 関 し て は 、遺 産 観 光 に お け る モ チ ベ ー シ ョ ン(Gieling et al., 2016)か ら 楽 し み と 学 び 、 教 育 学 の 分 野 の エ デ ュ テ イ メ ン ト に 関 す る 研 究
( 北 神
, 2000)か ら 、教 育 に 関 す る 項 目 を 設 定 し 、因 子 分 析 の 結 果 、エ デ ュ テ イ
メ ン ト の 高 度 が 異 な る と 考 え ら れ る 「 興 味 ・ 理 解 」、「 専 門 ・ 娯 楽 」 の
2
因 子 を 抽 出 し た 。 こ れ ら の2
因 子 は 、 ま た 価 値 共 有 に 関 し て もChaney et al. (2016)を
も と に 、 筆 者 が ガ イ ド ツ ア ー の 主 催 者 に イ ン タ ビ ュ ー 調 査 を 行 い 、 項 目 を 設 定 し 、 因 子 分 析 の 結 果 、1 因 子 を 得 た 。 次 に ガ イ ド の 特 性 を 独 立 変 数 、 エ デ ュ テ イ メ ン ト を 媒 介 変 数 と し 、 全 体 評 価 を 従 属 変 数 と し た 共 分 散 構 造 モ デ ル を 作 成 し た 。結 果 と し て は 、 満 足 度 、 ロ イ ヤ ル テ ィ と も に エ デ ュ テ イ メ ン ト の 「 興 味 ・ 理 解 」と い う 因 子 が 正 の 影 響 を 与 え て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。そ の 一 方 で「 専 門 ・ 娯 楽 」 は 、 本 研 究 の 調 査 結 果 か ら は 満 足 度 、 ロ イ ヤ ル テ ィ と も に パ ス が 有 意 で な か っ た た め 、 影 響 を 与 え て い る と は 言 え な か っ た 。 こ の こ と か ら 、 エ デ ュ テ イ メ ン ト の 中 で も 高 度 が 高 く な い ( 浅 い ) エ デ ュ テ イ メ ン ト が 全 体 評 価 に 影 響 を 与 え て い る と 考 え ら れ る 。 ま た 「 興 味 ・ 理 解 」 と 「 専 門 ・ 娯 楽 」 が 相 関 関 係 に あ る こ と も 認 め ら れ た 。
価 値 共 有 の 度 合 い に よ る 影 響 は 、「 興 味・理 解 」か ら 満 足 度 に つ い て は 、価 値 共 有 が 低 い グ ル ー プ の 方 が よ り 強 い 影 響 が あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。 こ の こ と か ら 、 価 値 共 有 が 高 い グ ル ー プ に 比 べ て 価 値 共 有 が 低 い グ ル ー プ に は 、 浅 い エ デ ュ テ イ メ ン ト が よ り 求 め ら れ て い る と 考 え ら え る 。 ま た 「 興 味 ・ 理 解 」 と
「 専 門 ・ 娯 楽 」 の 相 関 の 差 に つ い て は 、 価 値 共 有 が 低 い グ ル ー プ の 方 が 強 い 共 分 散 の 値 が 出 た 。こ の こ と か ら 、価 値 共 有 が 高 い グ ル ー プ は 、「 興 味・理 解 」と い う 相 対 的 に 高 度 で は な い ( 浅 い ) エ デ ュ テ イ メ ン ト と 「 専 門 ・ 娯 楽 」 と い う 相 対 的 に 高 度 な ( 深 い ) エ デ ュ テ イ メ ン ト を よ り 異 な る も の と し て 認 識 し て い る こ と を 示 す と 考 え ら れ る 。 ロ イ ヤ ル テ ィ を 従 属 変 数 と し た 時 も 同 じ 傾 向 が 見 ら れ た が 、「 興 味・理 解 」か ら「 ロ イ ヤ ル テ ィ 」へ の パ ス で は 、価 値 共 有 が 高 い グ ル ー プ と 価 値 共 有 が 低 い グ ル ー プ 間 の 差 は 有 意 で な か っ た 。
以 上 よ り 、 本 研 究 で は エ デ ュ テ イ メ ン ト の 側 面 が 、 教 育 、 エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト の 両 面 に 分 か れ て 認 識 さ れ る も の だ と は 限 ら ず 、 融 合 し た 、 深 さ の 程 度 の 異 な る 要 因 と し て 認 識 さ れ う る と い う 学 術 的 知 見 を 提 供 す る も の で あ っ た 。 ま た 実 学 的 に は 、「 説 明 力 」と い う ガ イ ド の 専 門 的 ス キ ル の 普 遍 的 な 重 要 性 を 示 す と と も に 、 比 較 的 ガ イ ド ツ ア ー に 対 す る 価 値 共 有 の 低 い 参 加 者 に 対 す る 、 よ り 具 体 的 な ス キ ル で あ る 「 工 夫 説 明 」 の 重 要 性 も 示 し た 。
目 次
第
1
章 は じ め に... 1
第
2
章 研 究 背 景... 2
2-1 対 象 物 の 特 徴 の 理 解 の 上 で の ま な ざ し の 限 界 ... 2
2-2 観 光 対 象 の 定 義 ... 5
2-3 対 象 物 の 特 徴 の 理 解 へ の 訪 問 客 の 欲 求 ... 5
2-4 観 光 に お け る イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン の 役 割 ... 7
2-5 エ デ ュ テ イ メ ン ト ... 9
2-6 イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン の 媒 体 の 種 類 ... 10
2-7 ガ イ ド の 評 価 ... 11
2-7-1 イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン と し て の ガ イ ド の 特 徴 ... 11
2-7-2 ガ イ ド の エ デ ュ テ イ メ ン ト ... 13
2-7-3 全 体 評 価 ( 満 足 度 と ロ イ ヤ ル テ ィ ) ... 14
2-7-4 価 値 共 有 ... 14
2-7-5 価 値 共 有 と エ デ ュ テ イ メ ン ト の 関 係 性 ... 15
第
3
章 研 究 目 的 と意 義... 16
第
4
章 調 査 概 要... 17
4-1 調 査 対 象 地 の 選 定 理 由 と 概 要 ... 17
4-1-1 調 査 対 象 地 選 定 理 由 ... 17
4-1-2 首 里 城 ... 18
4-2 調 査 方 法 と 質 問 内 容 ... 20
4-2-1 調 査 の 概 要 ... 20
4-2-2 ガ イ ド ツ ア ー の 概 要 の 把 握 ... 20
4-2-3 質 問 内 容 ... 26
4-3 本 調 査 概 要 ... 31
第
5
章 分 析 結 果... 32
5-1 分 析 手 順 ... 32
5-2 回 答 者 の 属 性 ... 32
5-3
ガ イ ド に 対 す る 回 答 者 の 評 価 ( 記 述 統 計 )... 36
5-4 ガ イ ド の 特 徴 の 因 子 分 析 ( 分 析 ① ) ... 39
第
6
章 考 察 ... 68第
7
章 結 論 と 展 望 ... 707-1
結 論... 70
7-2 制 約 と 今 後 の 展 望 ... 71
付 録
... 84
表 リ ス ト
表
1 首 里 城 公 園 入 園 者 数 、( 有 料 区 域 ) 入 館 者 数 ... 19
表
2 ガ イ ド の 特 徴 に 関 す る 質 問 23
項 目... 28
表
3 ガ イ ド ツ ア ー を 受 け た 後 に 抱 い た 印 象 に 関 す る 質 問 12
項 目... 29
表
4 価 値 共 有 に 関 す る 質 門 5
項 目... 30
表
5 回 答 者 の 属 性 ... 34
表
6 ガ イ ド の 特 性 の 記 述 統 計 ... 37
表
7 問 6
か ら 問11
ま で の ( 問9
除 く ) 記 述 統 計 ... 38表
8 ガ イ ド の 特 性 に 関 す る 23
項 目 の 因 子 分 析 ... 40表
9 ガ イ ド ツ ア ー を 受 け て み て の エ デ ュ テ イ メ ン ト に 関 す る 12
項 目 の 因 子... 41
表
10 価 値 共 有 に 関 す る 5
項 目 の 因 子 分 析... 42
表
11 ロ イ ヤ ル テ ィ に 関 す る 5
項 目 の 因 子 分 析 ... 43表
12
ガ イ ド の 特 性 と エ デ ュ テ イ メ ン ト 、 満 足 度 に お け る 共 分 散 構 造 分 析 の 各 モ デ ル の 適 合 度... 45
表
13 ガ イ ド の 特 性 と エ デ ュ テ イ メ ン ト 、 ロ イ ヤ ル テ ィ に お け る ... 48
表
14 ガ イ ド の 特 性 と エ デ ュ テ イ メ ン ト に お け る 共 分 散 構 造 分 析 の 各 モ
デ ル の 適 合 度... 54
表
15
エ デ ュ テ イ メ ン ト と 満 足 度 に お け る 共 分 散 構 造 分 析 の 各 モ デ ル の 適 合 度... 59
表
16 エ デ ュ テ イ メ ン ト と ロ イ ヤ ル テ ィ に お け る 共 分 散 構 造 分 析 の 各 モ
デ ル の 適 合 度... 62
表
17 独 立 し た サ ン プ ル の T
検 定 の 結 果 : 価 値 共 有 高 い/低 い... 65
図 リ ス ト
図
1. ガ イ ド の 特 性 と エ デ ュ テ イ メ ン ト 、満 足 度 の モ デ ル ---17
図
2. ガ イ ド の 特 性 と エ デ ュ テ イ メ ン ト 、ロ イ ヤ ル テ ィ の モ デ ル ---17
図
3. 性 別 ---36
図
4. 年 代 ---36
図
5. 首 里 城 訪 問 経 験 --- 36
図
6. 首 里 城 の 歴 史 ・ 文 化 へ の 興 味( 訪 問 理 由 ) ---36
図
7. 首 里 城 の 建 物 へ の 興 味( 訪 問 理 由 )---36
図
8. 全 体 の 分 析 に お け る 共 分 散 構 造 分 析 初 回 モ デ ル ( 従 属 変 数 :「 満 足 度 」) ---46
図
9. 全 体 の 分 析 に お け る 共 分 散 構 造 分 析 最 終 モ デ ル( 従 属 変 数:
「 満 足 度 」)( パ ス 係 数 は 全 て 有 意 )---47
図
10.
全 体 の 分 析 に お け る 共 分 散 構 造 分 析 初 回 モ デ ル( 従 属 変 数:「 ロ イ ヤ ル テ ィ 」)---49
図
11.
全 体 の 分 析 に お け る 共 分 散 構 造 分 析 最 終 モ デ ル( 従 属 変 数:「 ロ イ ヤ ル テ ィ 」)( パ ス 係 数 は 全 て 有 意 )---51
図
12.
ガ イ ド の 特 性 と エ デ ュ テ イ メ ン ト と の 分 析 に お け る 共 分 散 構 造 分 析 初 回 モ デ ル( 従 属 変 数:
「 エ デ ュ テ イ メ ン ト 」)---53図
13.
ガ イ ド の 特 性 と エ デ ュ テ イ メ ン ト と の 分 析 に お け る 共 分 散 構 造 分 析 最 終 モ デ ル ( 従 属 変 数:「 エ デ ュ テ イ メ ン ト 」)( パ ス 係 数 は 全 て 有 意 )---55図
14.
エ デ ュ テ イ メ ン ト と 満 足 度 と の 分 析 に お け る 共 分 散 構 造 分 析 初 回 モ デ ル ( 従 属 変 数:「 満 足 度 」)---58
図
15.
エ デ ュ テ イ メ ン ト と 満 足 度 と の 分 析 に お け る 共 分 散 構 造 分 析 最 終 モ デ ル ( 従 属 変 数 :「 満 足 度 」)( パ ス 係 数 は 全 て 有 意 )---60図
16.
エ デ ュ テ イ メ ン ト と 満 足 度 と の 分 析 に お け る 共 分 散 構 造 分 析 初 回 モ デ ル ( 従 属 変 数 :「 ロ イ ヤ ル テ ィ 」)---61
図
17.
エ デ ュ テ イ メ ン ト と ロ イ ヤ ル テ ィ に お け る 共 分 散 構 造 分 析 最 終 モ デ ル ( 従 属 変 数:「 ロ イ ヤ ル テ ィ 」)( パ ス 係 数 は 全 て 有 意 )---63
図
18.
価 値 共 有 の 度 合 い ご と の 分 析 に お け る 共 分 散 構 造 分 析 結 果 の 違 い ( 従 属 変 数 :「 満 足 度 」)---64
図19.
価 値 共 有 の 度 合 い ご と の 分 析 に お け る 共 分 散 構 造 分 析 結 果 の 違 い ( 従 属変 数:「 ロ イ ヤ ル テ ィ 」)
---66
第 1 章 はじめ に
観 光 に お い て は 、し ば し ば 、訪 問 客 が 観 光 に「 教 育( 学 び )」を 求 め る の か「 楽 し み( エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト )」を 求 め る の か と い う 二 項 対 立 的 な 問 題 意 識 が 見 ら れ る 。訪 問 客 の 動 機 の 視 点 か ら 見 た 観 光 、特 に 遺 産 観 光 は 、し ば し ば「 学 び 」 の 欲 求 に 基 づ く も の (Boniface, 1995; Boyd, 2002; Crompton, 1979; Light, 1995a,
b; Prentice & Prentice, 1989; Thomas, 1989; Timothy & Boyd, 2003)だ と い わ れ る 。
そ の 一 方 で 、 遺 産 訪 れ る 訪 問 客 の 主 要 な 欲 求 は 、 彼 ら の 一 般 的 な 興 味 関 心 か ら 生 ま れ る 、 訪 問 を 「 楽 し み た い 」 と い う も の で あ り 、 遺 産 自 体 に 対 す る 特 別 な 関 心 は2
次 的 な も の で あ る と も 言 わ れ て い る (Thomas,1989)。 対 象 物 へ の 理
解 を 促 進 す る 活 動 で あ る イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン の 研 究 に お い て も ま た 、 イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン を 教 育 活 動 だ と と ら え る 立 場 (Kuo,2002
;Tilden, 1977)
が あ る 一 方 で 、 と く に 観 光 研 究 で は 楽 し み と 学 び の 両 方 役 割 が 求 め ら れ る
(
Poria et al., 2007; Ryan & Dewar, 1995)と す る 、楽 し み と 教 育 の 両 者 を 二 項 対
立 的 に で は な く 融 合 的 に と ら え る 必 要 性 を 示 唆 す る 立 場 も あ る 。更 に 多 く の 観 光 研 究 で は 、観 光 者 の 本 物 性 欲 求(Cohen,1972; Lew,1987)や 、都 市 部 に お
け る 探 索 の 深 さ (Hayllar & Griffin, 2005; McKercher & du Cros, 2002) に は 個 人
差 が あ る と し て お り 、訪 問 客 が ま な ざ し を む け る 対 象 物 の 特 徴 を 深 く 理 解 し た い と 思 っ て い る か ど う か に つ い て は 、 個 人 間 で 、 あ る い は 同 じ 個 人 で も 状 況 に よ っ て 異 な る と い う 理 解 が 近 年 の 観 光 研 究 で は み ら れ る 。こ の よ う な 、 観 光 対 象 に 関 す る イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン に お い て 、 ど の よ う な 訪 問 客 に と っ て 、 教 育 と 楽 し み の 側 面 が ど の よ う な 意 味 を 持 つ の か を 明 ら か に す る こ と は 、観 光 研 究 に お い て 頻 繁 に 議 論 さ れ て き た「 教 育( 学 び )」と「 楽 し み( エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト )」の 側 面 の 重 要 性 に 関 す る 知 見 を 提 供 す る と と も に 、 実 学 的 な 観 点 か ら も 、 訪 問 客 に よ り 彼 ら に と っ て 好 ま し い 経 験 を 提 供 し つ つ 、 彼 ら に 観 光 対 象 の 持 つ 本 来 の 意 味 を 理 解 し て も ら う と い う 、 訪 問 客 と 地 域 の 双 方 の 利 点 を 鑑 み た 観 光 の 実 現 の た め に 有 益 だ と 考 え ら れ る 。 し か し 、 観 光 研 究 の 分 野 の イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン に 関 す る 研 究 に お い て は 、 楽 し み と 教 育 の 関 係 を 詳 細 に 研 究 し た 先 行 研 究 は 見 当 た ら な い 。
本 研 究 で は 、観 光 対 象 に 関 す る「 楽 し み( エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト )」を 通 じ た
「 学 び( 教 育 )」の 手 法 を 表 す「 エ デ ュ テ イ メ ン ト 」の 概 念 に 着 目 し 、イ ン タ ー
プ リ テ ー シ ョ ン の 中 で も 、 説 明 者 と 説 明 を 受 け る 側 間 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が イ ン タ ー ラ ク テ ィ ブ で あ り 、 エ デ ュ テ イ メ ン ト が 特 に 重 要 だ と 考 え ら れ る ツ ア ー ガ イ ド を 対 象 と し 、ガ イ ド ツ ア ー に 参 加 し た 訪 問 客 が 認 識 す る ガ イ ド の 特 性 、 ガ イ ド ツ ア ー の エ デ ュ テ イ メ ン ト と し て の 特 性 と 、 ガ イ ド に 対 す る 全 体 評 価 の 関 係 性 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と す る 、 さ ら に 、 そ の よ う な 関 係 に 個 人 差 が 影 響 を 及 ぼ す 可 能 性 に 鑑 み 、 訪 問 客 が ど の 程 度 経 験 や サ ー ビ ス ( ガ イ ド ツ ア ー の 場 合 は ガ イ ド ) の 提 供 者 の 持 つ 価 値 を 認 識 し て い る か と い う 「 価 値 共 有 」 の 度 合 い の 個 人 差 が 上 記 の 関 係 に 及 ぼ す 影 響 を 明 ら か に す る こ と も 目 的 と す る 。
第 2 章 研究背 景
本 章 で は 、 観 光 対 象 の 特 徴 の 理 解 が そ れ に 目 を 向 け る だ け で は 難 し い と 考 え ら れ る こ と を 説 明 し た 上 で 、本 研 究 の 背 景 と な る 基 本 的 な 概 念 で あ る 観 光 対 象 、
「 た だ 単 に 情 報 を 与 え る の で は な く 、 訪 問 者 の 直 接 体 験 や さ ま ざ ま な 媒 体 を 通 じ 、対 象 の 意 義 や 関 係 性 を 明 ら か に す る 教 育 的 活 動 」(
Tilden,1977)で あ る イ ン
タ ー プ リ テ ー シ ョ ン 、 イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン の 一 形 態 で あ る ツ ア ー ガ イ ド の 定 義 と 関 連 先 行 研 究 を 概 観 す る 。 次 に 、 イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン 、 ひ い て は ツ ア ー ガ イ ド の 主 な 役 割 と し て 、 教 育 的 側 面 と エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト の 側 面 の 両 面 か ら な る エ デ ュ テ イ メ ン ト と い う 概 念 に つ い て も 先 行 研 究 の 概 観 を 行 う 。 さ ら に 、 ガ イ ド ツ ア ー に 対 す る 参 加 者 の 意 識 に 影 響 を 与 え る 可 能 性 が あ る と 考 え ら れ る 、「 ガ イ ド ツ ア ー を 提 供 す る 視 点 を 訪 問 客 が ど の よ う に 認 識 す る か と い う 両 者 の 関 係 」 を 理 解 す る た め 「 価 値 共 有 」 の 概 念 に つ い て 概 観 す る 。2-1
対 象 物 の 特 徴 の 理 解 の 上 で の ま な ざ し の 限 界人 は 観 光 を す る 際 に 、 一 般 的 に 、 日 常 か ら 離 れ た 異 な る 景 色 、 風 景 、 町 並 み な ど に た い し て ま な ざ し 、 も し く は 視 線 を 投 げ か け る ( ア ー リ ら ,
2014)。 観
光 研 究 に お い て「 観 光 者 の ま な ざ し 」(tourist gaze)と い う 用 語 を 初 め て 用 い ら
れ た の は 、Urry(1990)の「The tourist gaze」で あ る 。Urryは 、当 該 著 書 の 序 章 に お い て 以 下 の 様 に 述 べ て い る :「 こ の 本 は 遊 び に か ん す る も の で あ り 、 余 暇 、 観 光 、 旅 行 に か ん す る も の で あ り 、 ま た 人 が な ぜ 、 ど の よ う に 日 常 の 仕 事 場 や 住 居 か ら 離 れ て し ば ら く の 間 出 か け る の か と い う 問 題 に つ い て の も の だ か ら だ 。 あ る 意 味 で は 必 然 性 の な い 財 と か サ ー ヴ ィ ス を 消 費 す る こ と に つ い て の 本 だ か ら な の だ 。 つ ま り 、 こ う い う も の の 消 費 と い う の は 、 日 常 生 活 で ふ だ ん 取 り 囲 ま れ て い る も の と は 異 な る 遊 興 的 な 体 験 で 発 生 す る と 思 わ れ て い る か ら で あ る 。 と は い え 、 一 方 、 す く な く と も こ う い う 体 験 で 、 私 た ち は た い て い 、 日 常 か ら 離 れ た 異 な る 景 色 、 風 景 、 街 並 み な ど に た い し て ま な ざ し も し く は 視 線 を 投 げ か け て い る 。 私 た ち は 「 出 か け て 」、周 囲 を 興 味 や 好 奇 心 を も っ て 眺 め る 。周 囲 は 私 た ち の 見 方 に 応 じ て 語 り か け て く れ る 、 と い う か 少 な く と も 語 り か け て く れ る で あ ろ う と 期 待 す る 。 言 い 換 え る な ら 、 私 た ち は 、 自 分 が 遭 遇 す る モ ノ ・ コ ト に ま な ざ し を 向 け る の で あ る 。」( ア ー リ ら
, 2014, p.1-2) (1)
以 上 の 記 述 は 、 観 光 者 が 、 楽 し み を 目 的 と し た 観 光 旅 行 に お い て 、 何 か し ら 日 常 と は 異 な る も の に 対 し 、 関 心 や 好 奇 心 を 持 っ て む け る も の で あ る こ と を 示 唆 し て い る 。
し か し な が ら 、人 は 必 ず し も ま な ざ し を 向 け る 、つ ま り「 見 る 」と い う 行 為 だ け で 対 象 物 の 特 徴 を 理 解 で き る と は 限 ら な い と 考 え ら れ る 。 そ の こ と は 観 光 者 が 自 身 の 日 常 生 活 圏 外 に お い て 、 日 常 生 活 で は 目 に す る こ と の な い 対 象 物 に ま な ざ し を 向 け る 場 合 に 特 に 顕 著 で あ ろ う 。 も ち ろ ん 、 対 象 物 の 中 に は 世 界 一 高 い ビ ル の 高 さ 、 黄 金 で 飾 ら れ た 宮 殿 の 豪 華 さ な ど 、 一 見 し て 分 か る 明 確 な 特 徴 を 持 つ も の は あ る 。ま た 、橋 本(
1999)が 観 光 を「( 観 光 者 に と っ て の )異 郷 に
お い て 、 よ く 知 ら れ た も の を 、 ほ ん の 少 し 、 一 時 的 な 楽 し み と し て 、 売 買 す る こ と 」( p.12) と し て い る 通 り 、 観 光 者 が 旅 行 中 の 一 時 的 な 接 触 時 間 に も 関 わ
ら ず 楽 し む こ と が で き る 対 象 物 は 、 観 光 者 自 身 が 旅 行 前 に 広 告 、 メ デ ィ ア な ど を 通 し て よ く 知 っ て い る 、 有 名 な も の も 多 い 。 た だ 、 橋 本 (1999) は 、 そ の よ
う な 有 名 な 対 象 物 の 場 合 で も 、 本 来 対 象 物 が 属 し て い る 文 脈 で 、 時 間 を か け て 本 格 的 に 堪 能 す る「 楽 し み 」を 享 受 す る に は 、「 観 光 の 時 間 」は「 不 十 分 」で あ る と 述 べ て い る 。 つ ま り 、 観 光 者 が 対 象 物 と 一 時 的 に 出 会 い 、 そ れ に ま な ざ しを 向 け る だ け で 、 彼 ら が そ の 特 徴 を 十 分 に 理 解 す る こ と が 出 来 る と い う 前 提 に 立 つ こ と は 難 し い と 考 え ら れ る 。
訪 問 客
(2 )
が ま な ざ し を 向 け る 可 能 性 が あ る 、 有 名 で 、 見 る べ き 価 値 が 顕 著 な 対 象 物 の 例 と し て は 、 文 化 財 が 考 え ら れ る 。 佐 藤 ら (2007) は 、 文 化 財 の 価 値
を 示 す も の の 一 つ と し て 、文 化 財 指 定 な ど の 法 に よ る 担 保 を 挙 げ て い る 。な お 、 日 本 に お け る 文 化 財 に 関 し て は 文 化 財 保 護 法 と い う 法 律 が あ り 、 そ こ で は 、 文 化 財 を 「 政 府 及 び 地 方 公 共 団 体 は 、 文 化 財 が 我 が 国 の 歴 史 、 文 化 等 の 正 し い 理 解 の た め 欠 く こ と の で き な い も の で あ り 、 且 つ 、 将 来 の 文 化 の 向 上 発 展 の 基 礎 を な す も の で あ る こ と を 認 識 し 、 そ の 保 存 が 適 切 に 行 わ れ る よ う に 、 周 到 の 注 意 を も っ て こ の 法 律 の 趣 旨 の 徹 底 に 努 め な け れ ば な ら な い 」(第 3
条)も の と し 、
そ の 保 護 す る べ き 価 値 を 説 明 し て い る 。し か し 、 こ の よ う な 文 化 財 に 関 し て も 、 見 る 側 ( 例 と し て 訪 問 客 な ど ) が 、 そ れ を 見 る だ け で 、「 文 化 財 に 指 定 さ れ て い る 」と い う 事 実 認 識 だ け に 留 ま ら な い 、 そ の 価 値 が 生 み 出 さ れ る 背 景 ま で の 理 解 に 達 す る こ と が で き て い る と は 必 ず し も 言 え な い だ ろ う 。 も ち ろ ん 前 述 の 通 り 、 ま な ざ し を 向 け る だ け で 訪 問 客 が そ の 価 値 の 一 端 を 感 じ る こ と が 出 来 る 、 目 に 見 え る 明 ら か な 特 徴 が あ る 文 化 財 が 存 在 す る 場 合 は あ る 。 た だ 、 文 化 財 に は 当 時 の 姿 が そ の ま ま 残 さ れ て い な い も の も 少 な く な い 。例 え ば 、2015年 、ユ ネ ス コ の 世 界 文 化 遺 産 に「 明 治 日 本 の 産 業 革 命 遺 産 」 と し て 多 く の 産 業 遺 産 が 登 録 さ れ た が 、 そ の 中 に は 、 佐 賀 県 の 三 重 津 海 軍 所 跡 や 岩 手 県 の 橋 野 鉄 鉱 山・高 炉 跡 な ど 、「 ~ 跡 」と い う 名 が 付 い た 、当 時 の 姿 を 目 に す る こ と が で き な い も の が あ る 。こ れ ら の 遺 産 に お い て は 、 た だ 見 る と い う 行 為 を 通 し て そ の 価 値 を 生 み 出 す 特 徴 を 理 解 す る こ と は 極 め て 難 し い と 考 え ら れ る 。
ま た 、 知 名 度 の 高 い 観 光 対 象 の 中 に は 当 時 の 建 物 が 残 っ て お ら ず 、 復 元 さ れ た も の も あ る 。 有 名 な も の で 言 え ば 、 世 界 文 化 遺 産 に 登 録 さ れ て い る ポ ー ラ ン ド の ワ ル シ ャ ワ 歴 史 地 区 や 、 沖 縄 の 首 里 城 な ど は 、 当 所 の 建 物 で は な く 、 復 元 さ れ た 建 物 が 現 在 観 光 対 象 と な っ て い る 。 こ の よ う な 対 象 物 は 、 目 に 見 え る 範 囲 で は 、 当 時 の 特 性 を 再 現 で き て い る 様 に 思 え る が 、 破 壊 さ れ た 、 あ る い は 復 元 さ れ た 経 緯 ( 首 里 城 に お い て は 、 当 時 の 資 料 が 戦 争 に よ り 焼 失 し て し ま い 、 本 土 に 残 っ て い た 資 料 を か き 集 め る こ と で 、 復 元 を 進 め て い っ た こ と ) な ど 、
建 物 な ど の 物 理 的 な 事 物 を 見 る だ け で は 分 か り に く い 文 化 財 と し て の 価 値 を 十 分 感 じ る こ と が で き な い 場 合 も あ る 。 こ う し た 見 え に く い 特 徴 の 理 解 が 訪 問 客 の 経 験 に 付 加 す る も の は 大 き い と 考 え ら れ る 。
2-2 観 光 対 象 の 定 義
こ こ で 、観 光 対 象 を 語 る う え で そ の 定 義 に つ い て 確 認 す る 。日 本 国 内 の 事 業 論 的 観 点 か ら は 、「 観 光 対 象 」と は 、観 光 者 の 観 光 行 動 を 喚 起 し 、彼 ら の 欲 求 を 満 た す も の で あ り 、 類 似 し た 用 語 と し て あ る 「 観 光 資 源 」 は 、 観 光 対 象 を 生 成 す る た め の 原 材 料 と 捉 え ら れ 、 観 光 資 源 に 観 光 事 業 な ど が 供 給 す る 財 貨 、 観 光 施 設 、 サ ー ビ ス が 付 加 さ れ る こ と で 、 観 光 対 象 が 生 ま れ る と さ れ て い る ( 足 羽
, 1997;
前 田, 1998;
北 川, 1999)。そ の 一 方 で 、観 光 対 象 を「 観 光 者 の 欲 求 を 充 足
さ せ る 対 象 物 、 ま た は 観 光 行 動 の 目 的 に な る あ ら ゆ る 事 象 」 と 捉 え る 研 究 も あ る( 香 川2007 p.101)。ま た 、観 光 対 象 に 対 応 す る 英 語 の 用 語 と さ れ る attraction
( 尾 家 ,2009) の 定 義 に お い て も 、 訪 問 客 の 楽 し み の た め に 管 理 さ れ る も の で あ る (
Gunn, 1994; Middleton & Clarke , 2001) と す る 立 場 と 、 「 訪 問 客 を 引 き
付 け 、 あ る 場 所 へ の 訪 問 を 選 択 さ せ る 観 光 商 品 の 要 素 が attraction で あ る 」(
Medlik 1997) と い う 立 場 、 さ ら に 「 人 が attraction
だ と 認 識 す る も の の み がattraction
と な る 」(Nyberg 1994)と い う 、訪 問 客 あ る い は 潜 在 的 訪 問 客 の 認 識
に よ っ て 事 物 がattraction
か ど う か が 決 ま る と い う 立 場 が あ る 。そ の 古 く か ら 知 ら れ る 名 所 に お い て も 、 歴 史 遺 産 の よ う な 観 光 資 源 と し て の 価 値 が そ の ま ま 観 光 対 象 の 価 値 の 中 心 と な っ た も の が 多 い と 考 え ら れ る 。 そ の 一 方 で 、 近 年 知 ら れ る よ う に な っ た ス ポ ッ ト な ど 、 事 業 者 な ど が 計 画 し た も の ( 付 加 要 素 ) の 影 響 が 大 き い 観 光 対 象 も 存 在 す る 。 本 研 究 で は 、 ど ち ら の 立 場 も 踏 ま え 、 観 光 事 業 者 に よ る 付 加 の 有 無 に か か わ ら ず 、 現 在 、 観 光 者 が 訪 れ る 価 値 を 持 っ て い る も の を 「 観 光 対 象 」 と す る 。2-3
対 象 物 の 特 徴 の 理 解 へ の 訪 問 客 の 欲 求前 述 の 橋 本 (1999) が 観 光 を 「 よ く 知 ら れ て い る も の を 、 ほ ん の 少 し 、 一 時 的 に 楽 し む こ と 」 と し て い る 通 り 、 訪 問 客 が 本 当 に 「 ほ ん の 少 し 」 以 上 に 対 象 物 の 特 徴 に 関 す る 深 い 理 解 を 求 め て い る か ど う か に つ い て は 疑 問 の 余 地 が あ る 。
も し そ の よ う な 訪 問 客 の 理 解 へ の 希 求 が な い の で あ れ ば 、 少 な く と も 訪 問 客 の 立 場 か ら 考 え れ ば 、 対 象 物 の 特 徴 に 関 す る 理 解 が 十 分 で な か っ た と し て も 問 題 は な い と い う こ と に な る 。例 え ば 、Boorstin(
1964)
は 、「 メ デ ィ ア な ど に よ っ て 演 出 さ れ た 現 実 の イ メ ー ジ が 現 実 よ り も 現 実 感 を 持 つ 」 と 人 が 考 え る 事 象 を「 疑 似 イ ベ ン ト 」 と 呼 び 、 そ の よ う な 疑 似 イ ベ ン ト の 一 例 と し て 観 光 を 挙 げ 、
「 観 光 者 は 、自 身 が イ メ ー ジ す る 疑 似 イ ベ ン ト を 確 認 す る こ と で 満 足 感 を 得 る 」 と 述 べ て い る 。 彼 の 主 張 は 、 観 光 者 が 、 対 象 物 が 本 来 持 つ 意 味 の 理 解 を 必 ず し も 求 め て い な い こ と を 示 唆 し て い る 。
そ れ に 対 し て 、MacCannell(
1976)
は 、時 間 な ど の 諸 々 の 制 約 に よ り 難 し い こ と が 多 い と は い え 、 観 光 者 は 演 出 さ れ な い 本 物 性 を 求 め て い る と 反 論 し て い る 。ま たCohen( 1972)
は 、観 光 者 の 特 性 を「 演 出 を 求 め る 」か「 本 物 性 を 求 め る 」 か 、 と い う 二 項 対 立 的 枠 組 み で 理 解 す る の で は な く 、 彼 ら の 求 め る 本 物 性 は 個 人 に よ っ て 異 な る と し 、 本 物 性 の 強 さ の 異 な る5
つ の 旅 行 者 経 験 モ ー ド を 提 唱 し て い る 。Lew(1987)
も ま た 、「 観 光 地 の 本 物 性 を 感 じ 取 る た め に リ ス ク を 冒 そ う と す る 程 度 が 、 様 々 な タ イ プ の 人 々 の 経 験 の 指 標 に な る 」 と い う 考 え の も と 、 安 全 と リ ス ク を 両 極 と し た 軸 上 の 観 光 者 の 観 光 地 に 関 す る 評 価 の 違 い を 基 に 観 光 地 の 魅 力 特 性 を 把 握 す る 視 点 (cognitive perspective) を 提 唱 し て
い る 。 さ ら に 、 同 じ 観 光 者 で あ っ て も 彼 ら の 本 物 性 の 希 求 度 は 変 化 す る (Ooi, 2002) と い う 、 観 光 者 の 個 人 内 差 に 言 及 す る 主 張 も あ る 。
以 上 の よ う に 、 訪 問 客 が ま な ざ し を む け る 対 象 物 の 特 徴 を 深 く 理 解 し た い と 思 っ て い る か ど う か に つ い て は 、 個 人 間 で 、 あ る い は 同 じ 個 人 で も 状 況 に よ っ て 異 な る と い う 理 解 が 近 年 の 観 光 研 究 で は み ら れ る 。 こ れ に 鑑 み る と 、 訪 問 客 が 見 た だ け で は 分 か り に く い 対 象 物 の 特 徴 の 理 解 を 求 め る 訪 問 客 が 存 在 す る 可 能 性 は あ り 、 彼 ら の 理 解 の 促 進 の た め の 対 策 が 、 彼 ら の 経 験 の 質 の 向 上 と い う 観 点 か ら も 求 め ら れ る と い う こ と に な る 。
ま た 、 理 解 の 促 進 の た め に は 、 価 値 を 知 っ て も ら う と い う 教 育 的 な 面 が 考 え ら れ る 一 方 で 、 橋 本 (1999) が 述 べ て い る 通 り 、 観 光 は 一 時 的 な 楽 し み で あ る と い う こ と か ら も 、 楽 し み と い っ た エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト な 要 素 を 考 え る 必 要 も あ る だ ろ う 。こ の 教 育 と 楽 し み の 関 係 に つ い て は 、「 エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト は ま れ に 、 学 習 を 支 持 す る 手 段 と し て 言 及 さ れ る 」
(Light, 1995a; Timothy&Boyd,
2003)と い う 観 光 研 究 か ら も 、何 か し ら の 関 係 性 が う か が え る 。こ の 関 係 性 は エ
デ ュ テ イ メ ン ト と も 呼 ば れ て お り 、 詳 細 は 後 述 す る が 、 本 研 究 に お い て は こ の エ デ ュ テ イ メ ン ト に 注 目 す る 。さ ら に 、前 述 の 先 行 研 究(Ooi, 2002)は 、訪 問 客 の 対 象 物 の 特 徴 の 理 解 を 研 究 す る 際 、 観 光 者 を 同 一 に 扱 う の で は な く 、 彼 ら の 間 の 、 対 象 物 に 関 す る 認 識 の 差 異 を 変 数 と す る こ と の 重 要 性 を 示 し て い る 。 こ の 観 点 に つ い て は 、 後 の 「 価 値 共 有 と エ デ ュ テ イ メ ン ト の 関 係 性 」 に 関 す る 議 論 で 詳 し く 議 論 す る 。
2-4 観 光 に お け る イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン の 役 割
対 象 物 の 特 徴 を 訪 問 客 に 理 解 し て も ら う 上 で 、 重 要 な 役 割 を 果 た す の が イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン で あ る 。 イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン と は 日 本 語 で 「 解 釈 」 や
「 説 明 」 と い っ た 意 味 の 言 葉 で あ り 、 観 光 の 世 界 で は ガ イ ド や パ ン フ レ ッ ト 、 説 明 看 板 な ど が と い っ た も の が イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン の 媒 体 と し て 挙 げ ら れ 、 博 物 館 や 自 然 公 園 、 動 物 園 、 文 化 的 観 光 地 な ど で 行 わ れ て い る (
Huang et al., 2015)。し か し 、訪 問 客 の 経 験 の 観 点 か ら 考 え た イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン は 、単
な る 解 釈 や 説 明 に と ど ま ら ず 、「 た だ 単 に 情 報 を 与 え る の で は な く 、訪 問 者 の 直 接 体 験 や さ ま ざ ま な 媒 体 を 通 じ 、 対 象 の 意 義 や 関 係 性 を 明 ら か に す る 教 育 的 活 動 」(Tilden,1977)と 言 わ れ て い る 。Kuo(2002)も ま た 、イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ
ン は 、 発 表 者 、 見 物 人 、 情 報 、 情 報 媒 体 の4
つ の 構 成 要 素 を 必 要 す る も の で あ り 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 用 い て 、 文 化 遺 産 の 隠 れ た 意 味 を 説 明 す る 、 教 育 ベ ー ス の 一 連 の ア ク テ ィ ビ テ ィ で あ る と も 述 べ て い る 。 以 上 の よ う に イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン は 教 育 的 要 素 が 強 い 活 動 で あ る と 考 え ら れ る 。そ の 一 方 で 、Poria et al.(2007)は 、観 光 者 は イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン に 対 し て 、 楽 し め て 学 べ る 経 験 が 提 供 さ れ る こ と を 好 ん で い る こ と も 明 ら か に し て い る 。 彼 ら の 研 究 で は 、 具 体 的 に は 、 イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン に 関 す る 「 面 白 い 経 験 を 提 供 し て く れ る 」、「 楽 し ま せ る 経 験 を さ せ て く れ る 」、「 目 的 地 に つ い て の 知 識 を 提 供 し て く れ る 」 と い う
3
つ の 項 目 が 「 楽 し め る 学 び 」 と い う1
因 子 に ま と ま り 、 そ の 因 子 得 点 は 全 て の 因 子 得 点 の 中 で1
番 高 か っ た 。 ま た 、 イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン を 行 う 上 で の 効 果 に 関 し て は 、Ryan & Dewar( 1995) も 、
文 化 的 遺 産 に お け る イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン は 、観 光 者 の 経 験 や 楽 し み に 加 え 、そ の 場 所 へ の ポ ジ テ ィ ブ ま た は ネ ガ テ ィ ブ な 影 響 を 与 え る 自 分 自 身 の 行 動 に 関 す る よ り 深 い 認 識 に 影 響 を 与 え る こ と を 示 唆 し て い る
(Moscardo, 1996 ; Ryan &
Dewar, 1995)。 つ ま り 、 イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン に は 、 往 々 に し て 教 育 的 要 素
と 、 エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト 的 要 素 が 合 わ さ っ た 特 徴 が あ り 、 そ れ が 訪 問 客 に 求 め ら れ て い る こ と が 示 唆 さ れ る 、 こ の よ う な 教 育 的 要 素 と エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト 的 要 素 の 関 係 に つ い て は 、「 エ デ ュ テ イ メ ン ト 」と い う 概 念 を 用 い て よ り 詳 し く 議 論 す る 。観 光 地 マ ネ ジ メ ン ト の 観 点 か ら は 、 イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン は 、 持 続 可 能 な 観 光 に お い て も 重 大 な 役 割 を 果 た す と 言 わ れ て い る (
Moscardo, 1996)。 そ れ は
イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン を 用 い る こ と に よ っ て 訪 問 客 の 行 動 に 影 響 を 与 え 、 破 壊 さ れ や す い 環 境 か ら 訪 問 客 を 離 れ さ せ る こ と が で き る か ら で あ る (Cooper, 1991)。こ の 特 性 ゆ え 、入 域 規 制 な ど を 必 要 と す る エ コ ツ ー リ ズ ム な ど で よ く こ
の 言 葉 は 用 い ら れ る が 、 観 光 者 の 管 理 以 外 に も イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン は 、 地 域 経 済 、 地 域 環 境 、 地 域 と の 関 わ り あ い と い っ た 点 で ポ ジ テ ィ ブ な 影 響 を 与 え る こ と が 出 来 る と さ れ て い る (Bramwell et al., 1993)。
更 に イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン は 、 同 じ く 保 全 が 重 要 視 さ れ る 歴 史 的 建 造 物 を 対 象 と す る 観 光 に お い て も 重 要 な 役 割 を 果 た す と 考 え ら れ る 。
Hall
&McArthur (1993)( in Moscardo, 1996. p.378-379) は 、 歴 史 的 建 造 物 で の イ ン タ ー
プ リ テ ー シ ョ ン の 目 的 と し て 、 訪 問 者 の 経 験 を 高 め 歴 史 的 建 造 物 へ の 公 共 的 な 補 助 を 手 に 入 れ る こ と 、 そ し て 教 育 を 通 じ て 訪 問 者 の 行 動 を ふ さ わ し い も の に す る 、 と い う2
点 を 挙 げ て い る 。 つ ま り 、 遺 産 ( ま た は 文 化 財 ) の 価 値 あ る 特 徴 と そ の 保 全 の た め に 望 ま し い 行 動 を 訪 問 客 に 理 解 し て も ら う た め の イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン が 適 切 に 行 わ れ る こ と で 、 訪 問 客 の 遺 産 の 特 徴 に 関 す る 理 解 が 深 ま る と と も に 、 遺 産 の 保 全 に も 繋 が る 可 能 性 が あ る と 考 え ら れ る 。2-5 エ デ ュ テ イ メ ン ト
前 章 で は イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン の 持 つ 教 育 的 要 素 と エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト 的 要 素 の 関 係 に つ い て 述 べ た が 、 こ の よ う な 関 係 を 理 解 す る の に 有 効 な 概 念 と し て エ デ ュ テ イ メ ン ト (
edutainment) が 挙 げ ら れ る 。 エ デ ュ テ イ メ ン ト と は 英
語 のeducation
とentertainment
を 組 み 合 わ せ た 言 葉 で あ る 。 そ の 定 義 を 明 確 に 示 し た 研 究 は 筆 者 の 知 る 限 り 見 当 た ら な い が 、Merriam-Webster
(2018
年1
月10
日 参 照 ) で は 、 エ デ ュ テ イ メ ン ト と は 、 教 育 的 に デ ザ イ ン さ れ た エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト で あ る と 述 べ て い る 。 ま た 、 ロ ン グ マ ン 現 代 英 英 辞 典 で は 、 エ デ ュ テ イ メ ン ト は 、「 教 育 し つ つ 楽 し ま せ る よ う な コ ン ピ ュ ー タ ー ソ フ ト ウ ェ ア や 映 画 、 テ レ ビ 番 組 の 事 で あ る 」( ロ ン グ マ ン 現 代 英 英 辞 典 (2018 年1
月10
日 参 照 )) と さ れ て い る 。学 術 研 究 で の 適 用 例 に 目 を 向 け る と 、 エ デ ュ テ イ メ ン ト の 概 念 は し ば し 教 育 学 、 そ の 中 で も コ ン ピ ュ ー タ ー ゲ ー ム や オ ン ラ イ ン 学 習 の 分 野 で 使 わ れ て い る
(
Ito, 2006; Okan, 2003)。 教 育 学 の 研 究 者 で あ る Buckingham et al.
(2000) は 、 エ デ ュ テ イ メ ン ト は 、 視 覚 的 な 素 材 や 物 語 、 ゲ ー ム の よ う な も の 、 も し く は 形 式 ば ら ず 、 あ ま り 説 教 的 で は な い 講 演 な ど の 形 式 に 依 存 す る 混 成 的 な ジ ャ ン ル だ と 述 べ そ の 目 的 は 、 学 習 者 の 感 情 を 没 頭 さ せ 、 彼 ら の 興 味 を 惹 き つ け る こ と で あ る と 述 べ て い る 。 ま た オ ン ラ イ ン 学 習 の 研 究 者 で あ るGreen et al.( 2000)
は 、 エ デ ュ テ イ メ ン ト の 主 な 目 的 は 、 そ れ を 受 け 取 る 人 が 、 学 ん で い る と は っ き り と 自 覚 せ ず に 楽 し め る よ う な 探 検 や 双 方 向 的 な 事 を 通 じ て 学 習 す る こ と で あ る と 述 べ て い る 。
な お 、 教 育 分 野 の 研 究 の 教 育 享 受 者 の 意 識 に 関 す る 研 究 で は 、 こ う し た 手 段 の 教 育 効 果 に 関 す る 調 査 項 目 が 主 で あ り 、 エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト に 関 す る 項 目 は あ ま り 見 ら れ な い
(Virvou & Katsionis, 2008;
出 口 ら, 2008; Kara & Yeşilyurt,
2008)。つ ま り 、こ れ ら の 研 究 で 言 及 さ れ る エ デ ュ テ イ メ ン ト は 、教 育 を 主 目 的
と し つ つ 、 そ れ を 学 ぶ 側 に 明 確 に 意 識 さ せ ず 、 楽 し ん で い る と 感 じ て い る う ち に 何 か を 学 ば せ る 手 段 を 表 す 概 念 だ と 考 え ら れ る 。 こ の こ と か ら 、 教 育 分 野 に お け る エ デ ュ テ イ メ ン ト に 関 す る 研 究 は 、 観 光 地 に お け る イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン に も 有 効 だ と 考 え ら れ る 一 方 、 そ の 知 見 を 、 橋 本 (1999) が 「 一 時 的 な 楽
し み 」 と 述 べ た よ う な 、 楽 し み が 主 で あ る と 考 え ら れ る 観 光 に そ の ま ま 援 用 する に は 難 が あ る と 考 え ら れ る 。従 っ て 、Merriam Webster が 定 義 し た 、エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト と し て の 側 面 に よ り 焦 点 を 当 て る 必 要 が あ る と 考 え ら れ る 。
観 光 研 究 に お い て も ま た 、 数 は 少 な い が 、 エ デ ュ テ イ メ ン ト に 言 及 し た 研 究 が 見 ら れ る 。
Němec et al.(2007
) は 、 観 光 に お い て も 、 い く つ か の ア ト ラ ク シ ョ ン は エ デ ュ テ イ メ ン ト を 取 り 入 れ て い る こ と に 言 及 し て お り 、 そ う し た ア ト ラ ク シ ョ ン の 例 と し て 、 博 物 館 、 環 境 保 護 セ ン タ ー 、 動 物 園 を 挙 げ て い る 。 彼 ら が 挙 げ る ア ト ラ ク シ ョ ン は 、 し ば し イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン 研 究 の 対 象 と な っ て お り 、 例 え ば 環 境 保 護 セ ン タ ー に 関 し て は 、Pratt & Suntikul, (2016)が 、 ド
ル フ ィ ン ウ ォ ッ チ ン グ 参 加 者 を 対 象 と し た ワ イ ル ド ラ イ フ ツ ー リ ズ ム に お け る エ デ ュ テ イ メ ン ト に 注 目 し た 研 究 を 行 っ て い る 。 し か し 、 こ の 研 究 で も 、 実 際 の 調 査 に お い て は 教 育 的 要 素 が 重 視 さ れ 、 エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト に 関 し て は 質 問 項 目 も 設 定 さ れ て い な い 等 、 深 い 議 論 が さ れ て い な い 。 こ の よ う に 、 観 光 研 究 の 分 野 の イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン に 関 す る 研 究 に お い て も 、 楽 し み と 教 育 の 関 係 を 詳 細 に 研 究 し た 例 は 見 当 た ら な い 。 ま た 、 エ デ ュ テ イ メ ン ト と い う 概 念 を 明 示 し 、 観 光 地 に お け る イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン の エ デ ュ テ イ メ ン ト と し て の 側 面 を 実 証 的 に 研 究 し た 試 み は 見 当 た ら な い 。 こ の こ と か ら も 訪 問 客 が 認 識 す る イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン に お け る エ デ ュ テ イ メ ン ト の 特 性 を 明 ら か に す る こ と は 、 重 要 で あ る と 考 え ら れ る 。2-6 イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン の 媒 体 の 種 類
イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン に 関 し て は 、
1-1-3
で 挙 げ た イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン の 構 成 要 素 で あ る 発 表 者 、見 物 人 、情 報 、情 報 媒 体(Kuo,2002)の 一 つ で あ る
媒 体 自 身 の 特 徴 に つ い て も 考 え る 必 要 が あ る 。 イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン の 媒 体 に は1-1-3
で 述 べ た よ う に 、 パ ン フ レ ッ ト や 説 明 看 板 、 ガ イ ド な ど が 挙 げ ら れ る 。 こ の よ う な イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン の 媒 体 は 、 人 を 介 さ な い も の (non- personal)と 人 を 介 す も の( interpersonal)( Munro et al., 2007)、ま た 、言 語 を 用
い る も の (verbal) と 用 い な い も の ( non-verbal
) に 大 別 で き る と さ れ て い る(
Zeppel & Muloin, 2008)。 こ の う ち Munro et al.( 2007) は 、 人 を 介 す る イ ン タ
ー プ リ テ ー シ ョ ン は 観 光 者 の 感 情 的 な 経 験 を 高 め る の に よ り 効 果 的 で あ る と 述 べ て い る 。ま たZeppel & Muloin(2008
)は 、言 語 を 用 い る イ ン タ ー プ リ テ ー ショ ン は 観 光 者 の 受 け 身 で は な い 積 極 的 な 経 験 を 促 進 す る と 述 べ て い る 。 ま た 、
Io(2013
) は 、 マ カ オ の 歴 史 的 見 所 に お け る 中 国 人 ガ イ ド ツ ア ー 参 加 者 に 、 ガ イ ド ツ ア ー に 参 加 し た 後 の 訪 問 地 へ の 理 解 度 、 満 足 度 、 感 情 、 他 の 歴 史 的 見 所 へ の 訪 問 意 向 を 尺 度 評 定 さ せ た 結 果 、 彼 ら の 訪 問 地 に 関 す る 理 解 が 、 ガ イ ド ツ ア ー に よ っ て 高 ま っ た こ と を 示 し て い る 。 さ ら に2-4
で 述 べ たKuo(2002
) に あ る よ う に 、 イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン で は コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン も 大 事 な 一 要 素 で あ り 、 こ れ も ま た 先 述 し た エ デ ュ テ イ メ ン ト の 目 的 の 一 つ で あ る 双 方 向 性(
Green et al., 2000) を 実 現 す る た め の 有 効 な 手 段 だ と 考 え ら れ る 。
以 上 の こ と よ り 本 研 究 で は 、 訪 問 客 の 観 光 対 象 の 特 徴 の 理 解 を 深 め る う え で 有 効 だ と 考 え ら れ 、 エ デ ュ テ イ メ ン ト の 目 的 に も 適 し て い る 形 態 の イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン と し て 、 人 に よ る ガ イ ド に 焦 点 を 当 て 、 以 降 で は ツ ア ー ガ イ ド に よ る イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン に 絞 っ て 議 論 を す る 。 ま た 本 研 究 で は 、 一 般 的 に ツ ア コ ン や 添 乗 員 と 呼 ば れ る 、 複 数 の 観 光 地 を 長 時 間 か け て 巡 る コ ー デ ィ ネ ー タ ー ( 案 内 役 ) と し て の ツ ア ー ガ イ ド で は な く 、 一 つ の 観 光 地 を 案 内 し イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン を 行 う 、 つ ま り 、 旅 程 管 理 者 で は な く イ ン タ ー プ リ タ ー と し て の ガ イ ド に 特 に 焦 点 を 当 て る 。
2-7
ガ イ ド の 評 価2-7-1 イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン と し て の ガ イ ド の 特 徴
ガ イ ド の 定 義 は 様 々 で あ る が 、
Professional Tour Guide Association of San
Antonio
(1997)で は 、
「 熱 意 と 知 識 、人 間 的 魅 力 、そ し て 高 貴 な ふ る ま い と 倫 理 観 を 効 果 的 に 持 ち 合 わ せ 、 グ ル ー プ を 価 値 の あ る 場 所 へ と 導 く 人 」 を ツ ア ー ガ イ ド と 定 義 し て い る 。ま た 、DeKadt(1979)は「 仲 介 者 」、Cohen
(1985)は「 助
言 者 」、と 端 的 に 定 義 づ け て い る 。こ れ ら か ら は 、訪 問 客 と 訪 れ る 価 値 の あ る 場 所 を つ な ぐ 媒 介 と な る の が ツ ア ー ガ イ ド で あ る と い う 共 通 認 識 が う か が え る 。 そ の 一 方 で 、 ガ イ ド は 「 情 報 提 供 者 」、「 知 識 の 源 」、「 エ ン タ ー テ イ ナ ー 」 と も 言 わ れ て い る(Cohen, 1985; DeKadt, 1979; Schuchat, 1983)。 こ れ ら か ら は 、 訪 問
客 に 対 し て 知 識 を 与 え る と 同 時 に エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト の 要 素 を 提 供 す る と い う 点 で 、 ツ ア ー ガ イ ド に は エ デ ュ テ イ メ ン ト と し て の 特 性 が あ る 可 能 性 が 考 えら れ る 。 こ れ に 関 し て は
2-7-2
に て 後 述 す る 。続 い て ガ イ ド に 求 め ら れ る 特 性 に つ い て 確 認 す る 。Pond(1993)は ガ イ ド の 役 割 と し て 、「 責 任 を 引 き 受 け る こ と の で き る リ ー ダ ー で あ る こ と 」、「 訪 問 客 の 訪 れ た 場 所 に つ い て の 理 解 を 手 助 け す る 教 育 者 で あ る こ と 」、「 親 切 な も て な し を し 、 も う 一 度 再 訪 し て く れ る よ う に 目 的 地 を 見 せ る 代 表 者 で あ る こ と 」、「 お 客 の た め に 心 地 よ い 環 境 を 創 り 上 げ る 主 催 者 で あ る こ と 」、「 以 上 の
4
つ の 役 割 を い つ 、ど の よ う に 実 行 す る か を 理 解 し て い る 進 行 役 で あ る こ と 」、と い う5
つ の 役 割 を 提 示 し て い る 。Pond
の 説 明 す る ツ ア ー ガ イ ド の 役 割 に は コ ー デ ィ ネ ー タ ー と し て の ツ ア ー ガ イ ド の 役 割 も 多 分 に 含 ま れ て い る と 思 わ れ る が 、 そ の 中 に は 「 理 解 を 手 助 け す る 教 育 者 で あ る こ と 」 と い っ た 、 ツ ア ー ガ イ ド の 教 育 的 側 面 を う か が わ せ る も の も あ る 。 ま た 、Reisinger とSteiner(2006
) は 、「 ツ ア ー ガ イ ド は 、観 光 に 限 ら な い 、幅 広 い 学 問 領 域 に 関 す る 知 識 を 持 つ 必 要 が あ る 」 と 述 べ て お り 、Ap(2001)は 、ガ イ ド の 専 門 性 に つ い て 、仕 事 へ の 態 度 も 重 要
で あ る が 、知 識 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ス キ ル が 重 要 で あ る と 述 べ て い る 。ま た 、Ryan et al.
(1995)は ガ イ ド の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 と 受 け 手 の 理 解 に 関 す る
研 究 を 行 っ て い る 。こ う し た ガ イ ド の 知 識 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 に 加 え ガ イ ド の 仕 事 に 対 す る 姿 勢 、 身 だ し な み 、 気 づ き の 力 と い っ た 、 よ り ジ ェ ネ リ ッ ク な 能 力 の 重 要 性 を 指 摘 す る 研 究 者 も い る 。例 え ば 、Huang(2010)は 、外 国 人 向 け の ツ ア ー ガ イ ド に 関 し て 、「 倫 理 、語 学 力 、ユ ー モ ア の セ ン ス 、身 だ し な み 、共 感 力 、参 加 者 へ の 配 慮 、 文 化 理 解 、 不 測 の 事 態 へ の 対 応 能 力 、 ツ ア ー の 組 織 ・ 管 理 能 力 、 ガ イ ド の 仕 事 へ の 情 熱 が 求 め ら れ る 」と 述 べ て い る 。ま た 、実 証 研 究 に お い て は 、
Kuo et al.(2015)は 、イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン の 中 身 の 特 徴 や 、フ レ キ シ ビ リ テ
ィ に 関 連 し た ガ イ ド の 特 徴 と 観 光 者 の 満 足 度 や ロ イ ヤ ル テ ィ な ど の ガ イ ド に 対 す る 全 体 評 価 に 関 す る 研 究 を 行 っ て い る 。さ ら に 、Chang(2014)は 、ガ イ ド の パ フ ォ ー マ ン ス が 観 光 者 の 購 買 行 動 に ど う 影 響 す る か を 明 ら か に し て お り 、 ガ イ ド 自 身 の 特 徴 と し て 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ・ プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン ス キ ル ( フ レ ン ド リ ー で あ る 、時 間 を 守 る な ど )、プ ロ と し て の 能 力( よ く 教 育 さ れ て い る 、 細 か な 事 に 注 意 を 払 う な ど )、規 範・プ ロ と し て の 知 識( 誠 実 で あ る 、そ の 場 所 に つ い て 知 識 が あ る な ど ) の 主 に3
つ の 項 目 を 用 い て お り 、 そ れ ら と 観 光 者 の満 足 度 ま た 購 買 行 動 へ の 影 響 を 明 ら か に し て い る 。
以 上 の よ う に ガ イ ド 自 身 の 具 体 的 な 特 徴 と 満 足 度 に 関 す る 研 究 は 行 わ れ て い る が 、 前 述 の 通 り 、 そ も そ も エ デ ュ テ イ メ ン ト の 概 念 を 明 示 し た イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン に 関 す る 研 究 は ほ と ん ど 見 当 た ら な い 。 そ の た め 、 こ れ ら の 特 徴 と エ デ ュ テ イ メ ン ト と の 関 係 、 更 に そ う し た 関 係 が 訪 問 客 の 満 足 度 に 影 響 に 関 し て 検 証 し た 研 究 は 見 当 た ら な い 。 す で に 議 論 し た 通 り 、 ガ イ ド と 受 け 手 の 双 方 向 性 を 持 ち 、 受 け 手 の 対 象 物 に 関 す る 理 解 を 深 め る 効 果 が あ る と 考 え ら れ る ガ イ ド は 、 エ デ ュ テ イ メ ン ト と し て の 側 面 を 強 く 持 つ と 考 え ら れ る 。 従 っ て 、 エ デ ュ テ イ メ ン ト と し て の 側 面 と 強 く 関 係 す る ガ イ ド の 特 徴 を 明 ら か に し 、 さ ら に エ デ ュ テ イ メ ン ト と し て の 側 面 と 訪 問 客 の 満 足 度 な ど の ガ イ ド に 対 す る 全 体 評 価 と の 関 係 性 を 明 ら か に す る こ と は 重 要 だ と 考 え ら れ る 。
2-7-2 ガ イ ド の エ デ ュ テ イ メ ン ト
前 述 し た 通 り 、ガ イ ド は 情 報 、知 識 の 提 供 者 と し て の 役 割 が あ る 一 方 で 、「 エ ン タ ー テ イ ナ ー 」の 一 面 も 持 っ て い る(
Cohen 1985; DeKadt 1979, Schuchat 1983)
に も か か わ ら ず 、 教 育 者 と し て の ガ イ ド と 、 参 加 者 を 楽 し ま せ る エ ン タ ー テ イ ナ ー と し て の ガ イ ド の 関 係 に 明 確 に 注 目 し た 研 究 は 見 当 た ら な い 。 ガ イ ド に 関 す る 訪 問 客 の 意 識 を 研 究 し た 先 行 研 究 (Chang 2014; Huang et al. 2015; Poria etal. 2006; Io, 2013; Zhang et al., 2004) に お い て も 、「 ユ ー モ ア が あ っ た 」 や 「 楽
し め た 」と い っ た エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト に 関 わ る と 思 わ れ る 質 問 項 目 、「 現 地 の 慣 習 を 教 え た 」、「 現 地 に 関 す る 情 報 を 提 供 し た 」 等 の 教 育 に 関 す る 項 目 が 混 在 は し て い る が 、 両 者 間 の 関 係 を 分 析 し た 研 究 は 見 当 た ら な い 。 つ ま り 、 ガ イ ド の 研 究 に お い て は 、 教 育 、 エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト の 両 側 面 の 重 要 性 は 潜 在 的 に 認 識 さ れ て い る と は 思 わ れ る も の の 、 両 者 の 融 合 概 念 で あ る エ デ ュ テ イ メ ン ト と し て の 特 性 は 明 確 に は 意 識 さ れ て い な い と 思 わ れ る 。 従 っ て 、 教 育 的 な 面 と エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト な 面 を 複 合 的 に 分 析 す る 研 究 が 重 要 だ と 考 え ら え る 。 そ こ で 本 研 究 で は 、 ガ イ ド の 特 性 で あ る 、 教 育 者 と し て の ガ イ ド と エ ン タ ー テ イ ナ ー と し て の ガ イ ド と 全 体 評 価 と の 関 係 性 に 注 目 す る 。2-7-3 全 体 評 価 ( 満 足 度 と ロ イ ヤ ル テ ィ )
イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン や そ の 媒 体 の 一 つ で も あ る ガ イ ド に つ い て は 、 訪 問 客 の 満 足 度 に も 影 響 を 与 え る こ と が 先 行 研 究 で 提 示 さ れ て お り(
(Powell & Ham, 2008; Huang et al., 2015)、 本 研 究 に お い て も エ デ ュ テ イ メ ン ト や 価 値 共 有 を 介
し て の 満 足 度 を 測 る 。 ま た 訪 問 客 の 訪 問 地 へ の ロ イ ヤ ル テ ィ も 、 ガ イ ド ツ ア ー が 訪 問 客 に 与 え る 影 響 を 考 え る 際 の 観 点 の 一 つ で あ る 。 ロ イ ヤ ル テ ィ は 、 特 定 商 品 の 再 購 買 と い う 実 際 の 行 動 の 関 連 か ら 定 義 さ れ う る (Tellis, 1988) 一 方 、
特 定 の 商 品 や サ ー ビ ス へ の 傾 倒(commitment)や 愛 情(affection)と い っ た 感 情
の 産 物 と し て も 定 義 さ れ て い る(Lee, Jeon, & Kim, 2011)。 観 光 研 究 に お い て は 、
ロ イ ヤ ル テ ィ は 、 訪 問 客 の 意 向 と し て し ば し ば 捉 え ら れ 、 再 訪 意 向 と 他 者 訪 問 推 薦 意 向( 以 降 他 者 推 奨 )の 観 点 か ら 測 定 さ れ る 場 合 が 多 い(Huang & Hsu, 2009;
Lee et al., 2011)。ガ イ ド の 研 究 に お い て も 、こ れ ら の 指 標 は 用 い ら れ て お り( Kuo et al., 2015; Huang et al., 2015)、 し ば し ば 、 場 所 へ の 再 訪 意 向 が 使 わ れ る 。 し か
し な が ら 、 観 光 地 ロ イ ヤ ル テ ィ に 関 す る 先 行 研 究 が 示 す よ う に 、 ロ イ ヤ ル テ ィ に は 特 定 の 目 的 地 や 場 所 、 ブ ラ ン ド へ の 愛 、 価 格 や 価 値 、 訪 問 地 イ メ ー ジ 、 ア ク テ ィ ビ テ ィ へ の 関 わ り 合 い 、満 足 、不 平 な ど 様 々 な 要 因 が 影 響 し て い る(Kyleet al., 2004; Lee et al., 2011; Prayag & Ryan, 2012; Yoon & Uysal, 2005)。 従 っ
て 、 本 研 究 で は ガ イ ド ツ ア ー の 印 象 だ け で は そ の 場 所 へ の 再 訪 意 向 、 ま た 他 者 推 奨 意 向 は 説 明 し き れ な い と 考 え 、 ガ イ ド ツ ア ー そ の も の へ の 再 参 加 意 向 と 他 者 へ の ガ イ ド ツ ア ー の 推 奨 意 向 を 聞 く こ と で 、 ガ イ ド ツ ア ー 参 加 者 と ガ イ ド ツ ア ー へ の ロ イ ヤ ル テ ィ と の 関 係 を 分 析 す る 。2-7-4 価 値 共 有
こ こ ま で は 訪 問 客 の 視 点 か ら ガ イ ド ツ ア ー に 言 及 し て き た が 、 そ の 一 方 で ガ イ ド ツ ア ー を 提 供 す る 側 の 視 点 も 考 え る 必 要 が あ る 。 な ぜ な ら ば 、 ガ イ ド ツ ア ー を 提 供 す る 視 点 を 訪 問 客 が ど の よ う に 認 識 す る か と い う 両 者 の 関 係 が 、 ガ イ ド ツ ア ー に 対 す る 訪 問 客 の 意 識 に 影 響 を 与 え る 可 能 性 が あ る と 考 え ら れ る か ら で あ る 。 こ の よ う な 、 訪 問 客 へ の サ ー ビ ス 、 経 験 の 提 供 者 の 考 え に 関 す る 訪 問 客 の 認 識 を 理 解 す る 上 で 有 効 だ と 考 え ら れ る 概 念 に 「 価 値 共 有 」 が あ る 。 価 値 共 有 と は 英 語 で は
shared value
と 呼 ば れ 、 経 営 学 の 分 野 で し ば し ば 用 い ら れ てい る 用 語 で あ る 。
Porter et al.( 2011) は 、 価 値 共 有 と は 、 経 済 的 な 価 値 を 生 み
出 す と と も に 、 社 会 的 な 必 要 性 や 課 題 に 取 り 組 む こ と に よ っ て 社 会 的 価 値 も 創 り 出 す こ と と 述 べ て い る 。 ま た 観 光 経 営 の 点 に お い て は 、( 1 ) よ り 富 裕 な 観 光 産 業 へ の 促 進 、( 2 ) 地 元 住 民 の 生 活 の 質 の 向 上 、( 3 ) 環 境 の 質 の 保 護 、 こ れ ら3
つ の 点 を 同 時 に 最 小 の 代 償 で 貢 献 す る こ と と 述 べ て い る 。こ の よ う な 価 値 共 有 を サ ー ビ ス 、 経 験 の 提 供 者 と 訪 問 客 の 両 方 の 視 点 を 勘 案 し て 測 定 し た 試 み が 、Chaney et al.(2017) の 研 究 に み ら れ る 。 彼 ら は 、 音 楽 フ ェ ス テ ィ バ ル の 参 加 者 と 主 催 者 の 価 値 共 有 と ロ イ ヤ ル テ ィ の 関 係 性 に つ い て 検 証 し て い る 。 こ の 研 究 で は 、 ま ず イ ン タ ビ ュ ー を 通 し て 得 ら れ た フ ェ ス テ ィ バ ル 主 催 者 の 価 値 が 「 社 会 的 責 任 」「 プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ リ ズ ム 」「 関 係 性 」「 立 ち 位 置 」「 イ ノ ベ ー シ ョ ン 」 の 5 つ に 分 類 さ れ て 、 そ れ ら を 基 に 作 成 さ れ た 尺 度 項 目 で 、 フ ェ ス テ ィ バ ル 参 加 者 が ど の 程 度 主 催 者 の 価 値 を 認 識 し て い る か と い う 価 値 共 有 が 測 定 さ れ て い る 。 こ の 研 究 に お い て は 、 行 動 に 関 す る ロ イ ヤ ル テ ィ に は 価 値 共 有 は 影 響 を 与 な い が 、 口 コ ミ や 態 度 に 関 連 し た ロ イ ヤ ル テ ィ に 影 響 を 与 え る と い う 結 果 が 出 て お り 、 ま た 、 よ り 高 い 価 値 共 有 が あ れ ば あ る ほ ど 音 楽 フ ェ ス テ ィ バ ル へ の ロ イ ヤ ル テ ィ の 低 下 の 速 度 が 落 ち る と い う 関 係 も 明 ら か に な っ て い る 。
2-7-5 価 値 共 有 と エ デ ュ テ イ メ ン ト の 関 係 性
本 研 究 に お い て も 、 ガ イ ド ツ ア ー 主 催 者 と ガ イ ド ツ ア ー 参 加 者 の 価 値 共 有 を 測 り 、 そ の 度 合 い が 及 ぼ す 影 響 を 分 析 す る 。 な お 、 価 値 共 有 と イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン に 関 し て 実 証 的 に 研 究 し た 試 み は 見 ら れ な い 。 た だ 、 前 述 し た 通 り 、 ガ イ ド ツ ア ー に お け る エ デ ュ テ イ メ ン ト と し て の 側 面 の 重 要 性 を 考 え る と 、 教 育 と エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト の 両 面 を 持 つ ガ イ ド ツ ア ー の 提 供 が 、 ガ イ ド ツ ア ー 主 催 者 の 価 値 の
1
つ と な っ て い る こ と が 推 察 で き る 。 そ こ で 、 こ の 研 究 で は 、Chaney et al.( 2017) の 研 究 の 研 究 方 法 に の っ と り 、 ま ず は ガ イ ド ツ ア
ー の 主 催 者 に 彼 ら の 「 社 会 的 責 任 」「 プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ リ ズ ム 」「 関 係 性 」「 立 ち 位 置 」「 イ ノ ベ ー シ ョ ン 」 に 関 し て 問 う イ ン タ ビ ュ ー を 実 施 し 、 彼 ら の 価 値 を 抽 出 、 分 類 し た 、 そ れ に 基 づ い た 参 加 者 へ の 質 問 項 目 ( 尺 度 ) を 用 い て 、 ツ ア ー 主 催 者 と 参 加 者 の 価 値 共 有 を 測 定 す る こ と と す る 。第 3 章 研究目 的 と 意義
本 研 究 で は :
・ ガ イ ド ツ ア ー に 参 加 し た 訪 問 客 が 認 識 す る ガ イ ド の 特 性 、 ガ イ ド ツ ア ー の エ デ ュ テ イ メ ン ト と し て の 特 性 と 、ガ イ ド に 対 す る 全 体 評 価 の 関 係 性 を 明 ら か に す る こ と
・ そ の よ う な 関 係 に ガ イ ド 主 催 者 と 訪 問 客 の 価 値 共 有 の 度 合 い が 及 ぼ す 影 響 を 明 ら か に す る こ と
を 目 的 と す る 。
そ の た め 、 イ ン タ ビ ュ ー を 通 し て 調 査 対 象 地 の ガ イ ド ツ ア ー の 主 催 者 の 持 つ 価 値 を 抽 出 し 、 次 に ガ イ ド ツ ア ー 参 加 者 へ の 質 問 票 調 査 を 用 い て 、 ガ イ ド の 特 徴 に 関 す る 評 価 、 ガ イ ド ツ ア ー 全 体 の エ デ ュ テ イ メ ン ト と し て の 特 性 の 評 価 、 ガ イ ド ツ ア ー に 関 す る 全 体 評 価( 満 足 度 お よ び ロ イ ヤ ル テ ィ )、ガ イ ド 主 催 者 の 価 値 へ の 賛 同 の 度 合 い に 関 す る 尺 度 評 定 を 依 頼 す る 。 な お 、 前 述 の 通 り 、 ガ イ ド の 特 性 を 表 す 項 目 に は 知 識 、 態 度 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 と 臨 機 応 変 さ と い っ た ス キ ル に 加 え 、 ガ イ ド 自 身 の 特 徴 ( 例 と し て 、 早 口 で あ る 、 時 間 を 守 る 、 と い っ た こ と ) が あ げ ら れ る 。 こ の う ち 本 研 究 で は 、 仕 事 へ の 態 度 は 訪 問 客 の 視 点 か ら は 判 断 が 難 し い 場 合 が 多 い と 考 え 、 対 象 か ら 除 き 、 そ れ 以 外 の ガ イ ド の 特 徴 に 関 す る 項 目 を 用 意 し て い る 。
こ の 研 究 は :
・ イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン で 重 要 だ と 考 え ら れ る 、 教 育 と エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト の 側 面 を 複 合 的 に 研 究 す る 点
・ 人 に よ る ガ イ ド の 研 究 に 、 教 育 的 側 面 と エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト の 側 面 の 両 面 に 注 目 し た エ デ ュ テ イ メ ン ト の 概 念 を 詳 細 に 持 ち 込 ん だ 点
・ イ ン タ ー プ リ テ ー シ ョ ン の 研 究 に 価 値 共 有 の 概 念 を 持 ち 込 ん だ 点
に 学 術 的 な 独 自 性 が あ る 。 ま た 、 エ デ ュ テ イ メ ン ト の 研 究 の 観 点 か ら も 、 観 光 地 に お け る ガ イ ド を 対 象 と す る こ と で 、 エ デ ュ テ イ メ ン ト の エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト の 側 面 に よ り 踏 み 込 ん だ 研 究 を 行 っ た 点 で 学 術 的 な 独 自 性 が あ る 。
ま た 実 学 的 な 観 点 か ら も 、 こ の よ う な 研 究 は 、 今 後 の ガ イ ド の や り 方 や 、 育 成 方 法 等 に 新 し い 示 唆 を 与 え る こ と が 期 待 さ れ る と と も に 、 訪 問 客 側 の 利 益 に な る だ け で な く 、 ガ イ ド を 提 供 す る 側 に と っ て も 大 き な 利 益 を 生 み 出 す こ と が