NDC 533. 45
エチルアルコールを燃料としたディーゼルエンジンの研究
牧 暢夫太田幹郎*
(昭和60年9月13日受理)
The study of Diesel Engine with Ethano Fulel
Nobuo MAm Mikiro OTA
(Received September 13, 1985)
This paper discusses the influence of engine performance by inJecting ethanol fuel up to the limit ot 50 per cent of total fuel amount into the suction tube of P. C diesel engine.
lhe result shows that both suitable compression ratio and coefficient of conversion of ethanol fuel supplement the reduction of thermal efficiency caused by tbe decrease Qf compression ratio and enable high therrnal efficieロcy to be obtain in low compre$sion耐io.
1 緒 言
石油資源が有限であるとの認識から,石油に代わるエネ ルギー源の確保や開発あるいはその使用方法に関する研究 が多くの分野で進められている。
使用燃料がほぼ石油のみに依存している自動車用も近年 水素,アルコール,LPG,石炭の液化,余剰電気の利用な ど各種の代替エネルギー源への適用性についての研究が進 められてきた。しかしそれらの代替エネルギー源は長所や 短所を持っているため,個々の燃料の優劣はつけがたい。
しかし自動車用燃料としては,(1)取扱いが比較的簡単で あること。(2)エネルギー密度と運搬のしゃすさから液体 である方が望ましい。(3)多少の漏洩に対しても危険性が 少ないなどの点を考慮に入れると,アルコールが最適であ
ると思われる。
本報では,エチルアルコールを代替燃料としてディーゼ ルエンジンを運転し,その適用性について検討することを 目的とした。一般に,アルコール燃料をディーゼル機関に 使用する場合,アルコール自体が発火性が悪いために,
(1)軽油と混合する方法(2)少量の軽油を噴射してアル
」・一一ル燃料の着火源とする方法(3)点火プラグやグローブ ラグなど着火促進用補助手段を用いる方法,などが考えら れる。そこで,この種の研究のために特に試作した燃料噴
射制御装置を用いて吸気管内にエチルアルコールを噴射 し,.少量の軽油の発火源で点火する(2)の方法を探用し
た。
2 実験装置および実験方法 2.1実験装置
実験装置の概略図をFig.1に示す。また供試機関の主要 諸元をTable 1に示す。
Table 1供試機関の主要諸元
諸 元
形 式
燃焼室形式
シリンダ内径×行程 行 程 容 積 最 大 出 力 連続定格出力 最:大トルク
(*)大阪府立大学工学部機械工学科
単気筒横形水冷4サイクルディー ゼルエンジン
予燃焼室式 65×80観 265cm3
4PS/2200rpm
3. 5PS/2200rpm 1. 4kgm/1900rpm
回転数はスロットルにより調整を行い,電磁式ピックア ップ14にデジタルタコメーター19を取付けて測定する。エ チルアルコールはインジェクションポンプ5で加圧して吸 気管に取付けた噴射ノズルから噴射する。エチルァルコー
MT ca H
津山高専紀要第23号(1985)
ルの噴射タイミングは光電式検出器18と増幅器21により調 整でき,その噴射量の調整は試作した噴射制御装置17の時 間間隔を変化させることによって行った。なお実験時の噴 射時期,噴射期間はオシロスコープ22により測定する。シ リンダ内圧力の変動は指圧計7により検出し,オシロス コープ22にその波形をかかせる。動力計荷重は直流電気動 力計13で変化させて測定する。サージタンク4に取付けた オリフィス前後の吸入空気の差圧はゲッチンゲン型マノ メーター16で測定する。吸気管内の空気温度はヒーター 9,15によって約50。C一定になるように調整し,実験を 行った。燃料消費量はビュレット1のエチルアルコールで 10cc,軽油では11ccを消費する時間を測定して求めた。
2.2実験方法
供試機関の圧縮比を22にして,その回転数を2200rpmと 一定させ,
(1)エチルアルコールの供給をストップして軽油のみ で荷重%をかけ,その時のオリフィス前後の吸入空気差 圧,吸気管の吸入空気温度,軽油の消費量を測定する。
(2)機関速度を2200rpm一定にして軽油の噴射量を減 じ,負荷を%まで減ずる。この状態でエチルアルコールを 吸気管内に噴射する。エチルアルコールによる供給熱量の 増加から回転数が上昇するが,負荷を増加させれば回転数 は2200rp皿一定に保つことができる。この状態で,オリフ ィスの差圧,吸入空気温度,軽油消費量エチルアルコー ル消費量など測定する。 (3) (2)の方法で%,%負荷
についても同様の実験
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from Pressure pickup
13 DC Dynamometer
14 一MagnO−tic p ck up 15 Transfor tner 16 Manometor 17Aし沈。(hange de>ice P 18 Ph cto trdi isistor 19 Digitat tachometer 20 DC power source 21 Amplifier
?2 Qscit[o scope 23 Cont rot pariet Fig.1 The arrangement of test equipment.
を行う。以上の実験方 法によって,圧縮比18,
15,13および機関速度 1600rpm,1200rpmに ついても行い,エチル アルコールへの代替時 に及ぼす圧縮比と機関 速度の影響を調べた。
3 実験結果 および考察
3.1エチルアル:コー ルの添加割合と軸出 力の関係
圧縮比δと回車日数n をパラメーターとし て,エチルアルコール の添加割合と軸出力の 関係をFig.2(a)〜(d)
に示す。
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Ethanot volume,O/o(xlO)
Fig.2 Relation between Ethanol volume and Brake horse power
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メチルアルコールを燃料としたディーゼルエンジンの研究 牧・太田.
圧縮比が22の場合はエチルアルコール量が35%程度,圧縮 比が18および15の場合は28%程度,圧縮比13の場合は25%
程度までなら軽油をエチルアルコールに代えても軽油のみ で運転する場合と同程度の軸出力が得られる。また圧縮比 が高いほどエチルアルコールへの転換率が高くできる。一 方前述の限界転換率をこえてエチルアルコールを加えた場 合は,徐徐にノッキングが激しくなり,冷却水への熱損失 が増加して機関出力が減少することになる。また回転速度 が遅いほどシリンダ壁から冷却水への熱伝達量が増加する ので,機関速度が速いほどエチルアルコールへの転換率が
ら 辺璽︑のらガ⊂遷↑↑Φ♂∈﹂①β
高くなるといえる。
なお,エチルアルコールへの転換率が限界値を越えた際 の著しい出力低下は,前述のノッキング以外に吸気管に多 量に噴射されるエチルアルコールが完全に蒸発できずに,
シリンダ内に流れ込むことが考えられ,後燃え量の増加に よる出力低下も原因の一つと考えられる。
3.2 エチルアルコールの添加割合と熱効率の関係 圧縮比εと回転tw nをパラメーターとして,エチルアル コールの添加割合と熱効率の関係をFig.3(a)〜(d)に示 す。圧縮比22および18の場合は35%程度,圧縮比15で30%
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Ethanol vo[umo ,O/,(xlO)
Fig.3 Relation between Ethanol volttme and Thermal efficiency.
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2200rpm一一一テ一一一1600一一一+一一荊200
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E=15 s=13
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01そ。)3 401そ、9401餐、)3401綾、94
Energy consumption , KcaUs
Fig.4 Relation between Energy consumption and Brake horse power.
程度,圧縮比13で35%
程度までならエチルア ルコールに転換しても 軽油のみで運転する場 合と同等の熱効率が達 成できる。また圧縮比 が22の場合を除けば,
エチルアルコールへの 転換率が20%前後で熱 効率が軽油のみの運転 時よりも,改善される といえる。一方軽油の 代替燃料としてエチル アルコールを使用する 場合, 回車打数1600日余m 時の熱効率が各圧縮比 の変化に対して最も安 定しており,圧縮比が 22と高い場合はどの回 転数に対しても安定し た熱効率が達成できる ことがわかる。
3.3 総消費工ネル ギーと軸出力の関係 圧縮比εと回転数n をパラメーターとし て,軽油とエチルアル コールの発熱量の違い を加味して,総消費エ ネルギを横軸にして 軸出力の増減関係を
Fig.4(a)〜(d)に示す。
Fig.4(a)〜(d)によれ ば,圧縮比に関係なく 総エネルギが増加すれ ば,エチルアルコール
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メチルアルコールを燃料としたディーゼルエンジンの研究 牧・太田
量がある限界内の量までは軸出力がほぼ直線的に増加する ことがわかる。これは吸気管内に噴射されたエチルァル
・コール量がある限界内の量であれば,軽油のみで運転した 場合と同様ほぼ有効にシリンダ内の燃焼に関与できること を意味してあり,同一回転速度で表示された曲線の右端 部,すなわち,エチルアルコールへの転換率が高くなった 場合は加えられたエチルアルコールの大部分が熱損失とし て費いやされ,もはや機関出力の増加が期待できないこと になる。
4 結 言
以上,実験結果を要約すると
(1)エチルアルコーールの添加量またはエチルアルコール
への転換率が30%程度までなら,軽油と同程度の出力が得 られる。またこの添加率または転換率は圧縮比が高いほ ど,回転速度が速いほど多くできるといえる。
(2)エチルアルコールへの転換率が30%程度までなら,
軽油のみで運転するより熱効率の改善が期待できる。
(3)一般に圧縮比が低くなるほど,機関の熱効率が低下 する。しかし圧縮比が22と18の場合・を比較したときの熱効 率はそれほど大差がない。適切な圧縮比で適切なエチルア ルコールへの転換率があれば,圧縮比の低下による熱効率 の減少を,逆に補うことができ,圧縮比が低くても熱効率 が高くなることも可能である。
最後に本研究に熱心に協力された本校卒業生に深く感謝 いたします。
一一@46 一