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加支援 ―自発的な活動参加を促す条件―

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加支援 ―自発的な活動参加を促す条件―

著者 川渕 竜也

雑誌名 明治学院大学心理学紀要 = Meiji Gakuin

University bulletin of psychology

巻 27

ページ 13‑22

発行年 2017‑03‑08

その他のタイトル Social participation support for adolescents and young adults with autism spectrum disorder

: Conditions to promote participation in

social activities on their own initiatives

URL http://hdl.handle.net/10723/3025

(2)

 

『心理学紀要』(明治学院大学)第 27 号 2017 年 13 22 頁

【原著】

青年期の自閉症スペクトラム障害者に対する社会参加支援

―自発的な活動参加を促す条件―

川 渕 竜 也

(明治学院大学心理学部)

はじめに

 自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum  Disorder:以下 ASD)は対人関係や社会的場 面などへの参加に特有の困難さを持つ社会性の 発達障害である。また近年 ASD の増加が指摘 されており,横浜市では小学 1 年生の ASD 発 生 率 は 4.2%, 有 病 率 は 5.4% を 示 し( 清 水,

2014),他地域においても医療機関へ受診者数 に経年的な増加がみられ(大橋ら,2014),早 期に ASD への支援体制の構築に着手すべきで あることなどが指摘されている(鷲見,2014)。

 ASD への支援のあり方について,本田(2009)

は社会適応の障害を予防することが重要である とし,幼児期から青年期の全てのライフステー ジにわたる包括的なコミュニティケア・システ ムが必要であり,彼らの属する複数のコミュニ ティに活動拠点となるサブ・コミュニティ,す なわち彼らの特性や興味に合わせた余暇活動や

仲間づくり支援プログラムなどを計画的に入れ 込んでいくネスティングという概念を提唱して いる(本田ら,2009)。このような余暇活動や 仲間作りなどの支援によって彼らが人と活動や 興味を共有して楽しむ経験を蓄積することは,

彼らの一般社会への統合を支える心理的な基盤 となると考えられる(日戸,2009)。藤野(2013)

は発達障害の子どもは思春期を過ぎても学校で 友人を作り,自力でその関係を維持・発展させ ていくことにかなりの困難を抱えている実態が あるが,彼らの興味に沿った社交の場が設定さ れ,適切なサポートが提供されれば他の様々な 社会的場面への参加も広がっていく可能性ある として,余暇活動支援の重要性を指摘している。

このように ASD への支援のあり方は,従来の ソーシャルスキルの獲得によって社会適応を目 指す支援のみならず,児童期から青年期にかけ て彼らの特性に配慮した活動の場を設定し,他 者との関わりのポジティブな経験を積むことを

要 約

 本研究は,青年期の高機能自閉症スペクトラム障害(HFASD)者が自ら参加できる社会的活動の条件を検討するこ とを目的として,平均して約 7 年,本学のフレンドシップ・プログラムに参加している 6 名の HFASD の青年を対象に,

彼らが現在自ら参加している活動への参加理由などを調査した。彼らは,一人で活動するよりも楽しい,メンバーや スタッフが親切そうであること,活動の内容が興味関心のあること,活動の回数が多すぎないこと,などを参加理由 に該当するとしていた。青年期の HFASD 者が自ら社会的活動に参加する条件として,彼ら自身に他者と一緒に活動 する意欲が育っていて,活動が興味関心のある事柄で見通しが持ちやすく,メンバーなどに受け入れられると感じられ,

回数などの負荷が少なく人間関係の親密さをあまり求められないことなどが考えられた。彼らに対する参加支援の方 法として,こうした条件を満たす活動の場を備えるとともに,そのことを彼らに伝える工夫などが必要であると考え られた。

キーワード:自閉症スペクトラム障害,青年期,社会的活動,社会参加支援

(3)

通して社会的活動への参加意欲を育て維持する ことが重要視されてきている。この社会的活動 は仕事や学業などの義務的な活動ではなく,部 活動やクラブ,サークル活動,趣味の集まりの 場など,自分の意思で参加し他者と興味や関心 を共有するような活動であり,彼らの社会生活 を支えうるものである。

 我々は 2003 年度から知的障害のない ASD

(高機能 ASD,以下 HFASD)の子どもを対象に,

集団参加を支援し所属感の得られる場を提供す るプログラムを開発し,「フレンドシップ・プ ログラム」と名付けて支援の進め方を検討して きた(小林・松村他,2004,小林・小林他,

2005,小林・小林他,2007,川渕・小林他,

2008 ほか)。フレンドシップ・プログラムには 年齢に応じた複数のグループがあり,小学生の 新規参加者が参加する「導入グループ」,導入 グループを終了した小・中学生が参加する「継 続グループ」,さらに高校生以上を対象とした

「青年期グループ」で構成している。筆者らが 青年期グループの参加者を対象としてフレンド シップ・プログラムに継続して参加している理 由などを調査した結果,彼らはフレンドシッ プ・プログラムのメンバーと一緒に活動するこ とを楽しいと感じ,フレンドシップ・プログラ ムを他者と一緒に活動を楽しむために必要な場 所であると感じていた(柿沼ら,2015)。彼ら の よ う に 一 定 の 支 援 を 受 け て 成 長 し て き た HFASD 者は他者と関わりたいという意欲が育 ち維持されている一方で,彼らが集うための支 援,すなわち場や人と繋がること自体に支援が 必要であることが示唆された。彼らのような HFASD 者は発達障害の無い人と同様に高校や 大学に進学し就職するものも少なくない。また 彼らは学校や職場などの日常生活で高度な社会 性の発揮を求められるなど心理的負荷が高まり やすいにもかかわらず,進学や就職を機にそれ までの支援が終了することも少なくない。その ような彼らが適度で楽しく他者と関わり,彼ら の社会生活の支えとなる場は必ずしも専門的支 援の場である必要はないが,一般社会の中で自

分に合った社会的活動の場に自ら繋がっていく ことは容易ではないかもしれない。そのため青 年期以降の HFASD が社会的活動の場に繋がっ ていくことをどのように支援するのかを検討す ることは極めて重要である。そこで本研究では HFASD 者が自ら社会的活動に参加していくた めに必要な条件について検討することを目的と した。

方法

1.対象

 2015 年度フレンドシップ・プログラムの青 年期グループに参加している 6 名(男性 4 名,

女性 2 名)を対象とした。対象者はいずれも過 去に 1 年以上フレンドシップ・プログラムへの 参加経験があった。対象者の年齢は 16 歳〜20 歳(平均 17.8 歳)であり,高校生 3 名,専門 学校生 1 名,大学生 1 名,社会人 1 名であった。

対象者のフレンドシップ・プログラム参加開始 年齢は 9 歳〜16 歳(平均 11.7 歳),プログラム 参加継続年数は 4〜11 年(平均 7.3 年)であった。

参加開始時から継続的に参加している者もいれ ば,年度により参加したり参加しなかったりす る者もいた。参加者はいずれも社会性の発達に 困難を有し,HFASD と診断されている,ある いはその疑いがあるとされていた。

2.調査方法

 2015 年 8 月,青年期グループの活動実施前 に参加者 6 名に対して質問紙調査を実施した。

なお調査実施前に参加者および保護者に口頭に て研究趣旨を説明し同意を得た。質問紙は現在 彼らが自ら参加している活動について①活動に 関する基本情報(活動内容,活動参加時期,活 動を知った経緯),および②活動に参加した理 由を尋ねる内容のものであった。また②は「他 者との関わりへの期待感と親密さ」, 「メンバー,

スタッフ」,「活動内容」,「集う構造」の 4 領域

についての 5 件法 24 問の質問と,その他の理

由を尋ねた自由記述の 1 問から構成した。さら

(4)

に彼らが過去に参加を検討したが参加しなかっ た,あるいは途中で辞めた活動について,③活 動に関する基本情報および,④参加しなかった または辞めた理由を①②と同様の構成(④は全 21 問)の質問紙で尋ねた。質問項目および領 域を Table 1 に示す。

 なお,質問項目として設定した 4 領域および 質問内容は,対象者が青年期グループに参加す る理由についての研究(柿沼ら,2015)を参考 にし,またフレンドシップ・プログラムの運営 において留意している構造や配慮事項等を踏ま えて作成した。

結果

(1)現在自ら参加している活動について

 参加者が現在自ら参加している活動に関する 基本情報の内訳を Table 2 に示した。参加者は いずれも何らかの活動に自ら参加していた。活 動の内容は趣味的なサークル活動から,発達障 害をもつ者を対象とした支援プログラムまで,

その活動の目的や趣味性にはやや幅が見られ た。また複数の活動の場を持つ者もいた。なお 複数の活動に参加している者については,特に 自発性と参加意欲の高い活動について回答する よう求めた。

(2) 現在自ら参加している活動への参加理由に ついて

 現在自ら参加している活動への参加理由に関 する質問の結果を Table 3 に示した。回答は「あ てはまる」と回答したものを◎,「ややあては まる」と回答したものを○で示し,質問ごとに

「あてはまる」または「ややあてはまる」と回 答した人数を示した。

 「他者との関わりへの期待感と親密さ」の領 域では,「一人で活動するよりも楽しいから」,

「誰かと一緒に何かしたかったから」,「人数は 少なくても話の合う友人を作りたいから」の項 目に半数以上が「あてはまる」 「ややあてはまる」

と回答した。特に「一人で活動するよりも楽し

いから」の項目には対象者全員が「あてはまる」

または「ややあてはまる」と回答した。「メン バー,スタッフ」の領域では, 「メンバーやスタッ フがよくしてくれる(親切そう)だから」,「苦 手なタイプの人がいないから」「話(趣味)の 合いそうな人がいたから」の項目に半数以上が

「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した。

「活動内容」の領域では,「活動の内容が興味関 心のあることだから」,「活動の内容が自分に とって難しすぎないから」,「活動の内容が自分 のよく知っている(なじみのある)ことだから」

の項目に半数以上が「あてはまる」「ややあて はまる」と回答した。「集う構造」の領域では,

「活動の回数が多すぎないから」,「参加するの によく分からないルール,決まりが少なそうだ から」, 「1 回の活動時間が長すぎないから」, 「活 動の日時がおおむね決まっているから」の項目 に半数以上が「あてはまる」「ややあてはまる」

と回答した。「その他」の理由についての自由 記述では「チラシを見て気の合いそうな人がい ると思ったから」,「(活動参加を)履歴書にか けるから」, 「勉強と仕事を学ぶため」, 「家でゲー ムをしていてパソコンに興味があったから」,

「(Web 上の)動画で興味になった」と回答し ていた。

(3) 過去に参加を検討したが参加しなかった,

または参加していたが途中で辞めた活動に ついて

 過去に参加を検討したが参加をしなかった活 動,あるいは参加していたが途中で辞めた活動 があると答えた者は 2 名であった。いずれも参 加していたが途中でやめた活動であった。それ らの活動の内訳を Table 4 に示し,辞めた理由 に関する質問の結果を Table 5 に示した。回答 は「あてはまる」と回答したものを◎,「やや あてはまる」と回答したものを○で示した。

 活動を辞めた理由について,共通して「あて

はまる」あるいは「ややあてはまる」と回答し

た項目は,「苦手なタイプの人がいたから」「活

動内容が自分にとって難しすぎるから」の 2 項

(5)

Table 1.質問項目 1.現在自ら参加している活動に関する質問項目

①活動に関する基本情報

 ⑴ 現在参加している活動はどんな活動ですか ⑵ いつから参加していますか ⑶ 活動をどうやって知りましたか  a. ポスターやチラシ,Web などの紹介を見た b. 人から紹介された(紹介者:    ) c. その他(      )

②参加した理由 ⑴〜   (25)  ※ 5 件法(あてはまる,ややあてはまる,どちらでもない,ややあてはまらない,あてはまらない)

他者との 関わりへの 期待感と 親密さ

⑴ 誰かと一緒に何かしたかったから

⑵ 活動以外の場面でも親しく付き合う友人を作りたいから

⑶ 一人で活動するよりも楽しいから

⑷ 顔見知りの人を作りたいから

⑸ 一人ぼっちは嫌だから

⑹ たくさんの友人を作りたいから

⑺ 人数は少なくても,話の合う友人を作りたいから メンバー

スタッフ

⑻ メンバーやスタッフに知っている人がいたから

⑼ メンバーやスタッフがよくしてくれる(親切そう)だから

⑽ 話(趣味)の合いそうな人がいたから

⑾ 苦手なタイプの人がいないから

活動内容

⑿ 活動の内容が興味関心のあることだから

⒀ 活動の内容が自分にとって難しすぎないから

⒁ 活動の内容が自分のよく知っている(なじみのある)ことだから

⒂ 活動の内容が初めてやってみることだから

⒃ 他にその内容の活動をするところがないから

集う構造

⒄ 参加することを勧められたから

⒅ メンバーや知り合いに誘われたから

⒆ 定期的に参加の案内があるから

⒇ 1 回の活動時間が長すぎないから  

(21)活動の回数が多すぎないから  

(22)活動する場所が知っている(なじみのある)ところだから  

(23)参加するのによく分からないルール,決まりが少なそうだから  

(24)活動の日時がおおむね決まっているから その他 (25)その他の理由(自由記述) 

2.過去に参加を検討したが参加しなかった,または参加していたが途中で辞めた活動に関する質問項目

③活動に関する基本情報

 ⑴ 現在参加している活動はどんな活動ですか ⑵ いつから参加していますか ⑶ 活動をどうやって知りましたか  a. ポスターやチラシ,Web などの紹介を見た b. 人から紹介された(紹介者:    ) c. その他(      )

④参加しなかった,または辞めた理由⑴〜(21)  ※ 5 件法(あてはまる,ややあてはまる,どちらでもない,ややあてはまらない,あてはまらない)

他者との関わ りへの期待感 と親密さ

⑴ 一人で活動するほうが楽しいから

⑵ メンバーと活動以外で親しく付き合いたくないから

⑶ メンバーとの付き合いが面倒だから メンバー

スタッフ

⑷ メンバーやスタッフに知っている人がいないから

⑸ メンバーやスタッフがよくしてくれない(不親切)だから

⑹ 話(趣味)の合いそうな人がいないから

⑺ 苦手なタイプの人がいたから

活動内容

⑻ 活動の内容が興味関心のないことだから

⑼ 活動の内容が自分にとって難しすぎるから

⑽ 活動の内容が自分のよく知らない(なじみのない)ことだから

⑾ 活動の内容が初めてやってみることだから

⑿ 他にその内容の活動をするところがあるから

集う構造

⒀ 参加することを勧められなかったから

⒁ メンバーや知り合いに誘われなかったから

⒂ 定期的に参加の案内がないから

⒃ 1 回の活動時間が長すぎるから

⒄ 活動の回数が多すぎるから

⒅ 活動する場所が知らない(なじみのない)ところだから

⒆ 参加するのによく分からないルール,決まりが多そうだから

⒇ 活動の日時がおおむね決まっていないから その他 (21)その他の理由(自由記述) 

(6)

Table 2. 現在自ら参加している活動の基本情報の内訳

活動に関する基本情報についての質問項目 回答の内訳

(1)現在参加している活動はどんな活動ですか

・文化系サークル

・学校行事の実行委員

・地域での趣味の教室(2 名)

・発達障害対象の就労支援プログラム

・文化系の部活動

(2)いつから参加していますか

・3 ヶ月前から

・本年度から(2 名)

・昨年度末から

・昨年度から

(3)活動をどうやって知りましたか

a. ポスターやチラシ,Web などの紹介をみた(3 名)

b. 家族から紹介された

c. 学校に活動があった/自分から参加した(2 名)

Table 3.現在自ら参加している活動への参加理由に関する質問の結果

対象者 A B C D E F

「あてはまる」

「ややあてはまる」

と回答した人数

④参加した理由 他者との関わりへの期待感と親密さ ⑴ 誰かと一緒に何かしたかったから 4

⑵ 活動以外の場面でも親しく付き合う友人を作りたいから 3

⑶ 一人で活動するよりも楽しいから 6

⑷ 顔見知りの人を作りたいから 2

⑸ 一人ぼっちは嫌だから 2

⑹ たくさんの友人を作りたいから 3

⑺ 人数は少なくても,話の合う友人を作りたいから 4

⑻ メンバーやスタッフに知っている人がいたから 1

⑼ メンバーやスタッフがよくしてくれる(親切そう)だから 5

⑽ 話(趣味)の合いそうな人がいたから 4

⑾ 苦手なタイプの人がいないから 5

活動内容

⑿ 活動の内容が興味関心のあることだから 5

⒀ 活動の内容が自分にとって難しすぎないから 4

⒁ 活動の内容が自分のよく知っている(なじみのある)ことだから 4

⒂ 活動の内容が初めてやってみることだから 3

⒃ 他にその内容の活動をするところがないから 2

構造

⒄ 参加することを勧められたから 0

⒅ メンバーや知り合いに誘われたから 1

⒆ 定期的に参加の案内があるから 0

⒇ 1 回の活動時間が長すぎないから 4

 

(21)活動の回数が多すぎないから 5

 

(22)活動する場所が知っている(なじみのある)ところだから 3

(23)参加するのによく分からないルール,決まりが少なそうだから 5

(24)活動の日時がおおむね決まっているから 4

(7)

目であった。またその他の理由として 1 名が自 由記述で「準備と時間(ルーズ)が苦手」と回 答していた。

考察

 本研究は,青年期の HFASD 者が自発的に 社会的活動に参加するために必要な条件を,継

続的に活動に参加している当事者を対象に調査 した。青年期の HFASD 者に対する支援につ いて,友人や仲間作りに失敗を重ね,二次的に 情緒・行動の問題を生じた人への対応がしばし ば議論されるが,本研究では数年にわたり活動 に参加し,仲間作りに成功している HFASD の青年を対象にした点で重要な意義がある。

 本研究の結果から対象者は他者との関わりに

Table 5. 活動を辞めた理由に関する質問項目の結果

対象者 E F

④参加しなかった︐または辞めた理由

他者との関わりへの 期待感と親密さ

⑴ 一人で活動するほうが楽しいから

⑵ メンバーと活動以外で親しく付き合いたくないから

⑶ メンバーとの付き合いが面倒だから

メンバースタッフ

⑷ メンバーやスタッフに知っている人がいないから

⑸ メンバーやスタッフがよくしてくれない(不親切)だから

⑹ 話(趣味)の合いそうな人がいないから

⑺ 苦手なタイプの人がいたから

活動内容

⑻ 活動の内容が興味関心のないことだから

⑼ 活動の内容が自分にとって難しすぎるから

⑽ 活動の内容が自分のよく知らない(なじみのない)ことだから

⑾ 活動の内容が初めてやってみることだから

⑿ 他にもその内容の活動をするところがあるから

集う構造

⒀ 参加することを勧められなかったから

⒁ メンバーや知り合いに誘われなかったから

⒂ 定期的に参加の案内がないから

⒃ 1 回の活動時間が長すぎるから

⒄ 活動の回数が多すぎるから

⒅ 活動する場所が知らない(なじみのない)ところだから

⒆ 参加するのによく分からないルール,決まりが多そうだから

⒇ 活動の日時が決まっていないから

Table 4.参加していたが途中で辞めた活動の基本情報の内訳

活動に関する基本情報についての質問項目 回答の内訳

(1)その活動はどんな活動ですか ・文化系の部活動

・体育系の部活動

(2)いつまで参加していましたか ・昨年秋まで

・小学校高学年まで

(3)活動をどうやって知りましたか a. ポスターやチラシ,Web などの紹介を見た b. 友人の紹介

(8)

楽しみや期待感を持っていながらも,一方で交 友関係の広がりや親密さをさほど求めていない ように思われた。また活動に参加するかどうか には,メンバーやスタッフが受け入れてくれそ う,気が合いそうと感じられるかどうかが重要 であり,興味関心のある活動内容で見通しが持 ちやすく,自分にとって丁度いい難易度のもの に参加しやすいようであった。また参加条件に 暗黙のルールなどのない明快さが重要であり,

楽しみな内容であっても活動の回数が多すぎた り,活動時間が長すぎたりすると彼らの参加意 欲は低下するようであった。該当者 2 名があげ た過去に参加していた活動を辞めた理由は,半 数以上の者が活動参加の理由にあげた項目と相 反しており,一緒に活動する人(メンバーやス タッフ),活動内容についての安心感が活動参 加の動機付けや継続に必要な要素であると考え られた。

 柿沼ら(2015)の調査では,青年期グループ の参加者は同じプログラム内のメンバーとの関 わりについて楽しみだと答えていたが,本調査 では彼らは青年期グループやそのメンバーに限 定せずに他者と一緒に活動することを楽しいと 感じていたことが分かった。他者との関わりを 楽しいと感じることや,活動に参加する意欲を もっていることは,社会的活動への自発的参加 を可能にするための,HFASD 者個人の側の条 件と考えられた。このことは彼らが一般の社会 的活動に参加するために必要な基本条件であ り,適切な支援を受けてきた HFASD 者に社 会的活動への参加意欲が育つ可能性が改めて示 唆された。その一方で彼らは,交友関係の広が

りや親密さをさほど期待していないようであっ た。内山(2014)は「自閉症スペクトラムの人の 対人交流の能力はさまざまであり,定型発達の 人が持つような深くて広い人間関係を持つのは 目標として現実的ではない。友人を求める人に 対しても共通の趣味を基盤にしたグループなど に参加するなどの淡い関係を維持することを目 標にとしたほうが現実的なことが多い」と指摘 しており,本研究の結果もこれを支持するもの であった。彼らが社会的活動に参加できる条件 として,彼らにとって適度な対人関係の濃さや 距離感が尊重されることも必要であると言える。

 メンバーやスタッフが受け入れてくれそうと 感じられるかどうかには,意地悪をされたり排 斥されたりする心配がないかといった,彼らの 経験から来る不安との関連が強いことが考えら れた。参加していた活動を辞めた理由としても

「苦手なタイプの人がいたから」が挙げられて おり,メンバーやスタッフの中に過去の嫌な経 験を思い起こさせる人がいないかを活動参加の 判断基準としているように思われた。また気が 合いそうかという点も,自分と同じポイントを おもしろいと感じてくれる人かどうか,楽しみ 方のスタイルが同じ人かどうかを気にかけてい るようにも思われる。自分と興味関心のポイン トが異なる人と活動をともにすることで,自分 が楽しくなくなるということを経験的に理解し ているのかも知れない。活動時間が長すぎたり 頻度が多すぎたりすることが動機づけになりに くいことは,内容的には楽しみな活動であって も,社会的場面への参加に彼らは一般の人より も多くの心理的な疲労を伴うことなどが背景に

Table 6. HFASDの青年が自ら社会的活動に参加することを可能にする条件

〈HFASD 者側の条件〉

HFASD 者自身が他者と一緒に活動することを楽しいと感じていること。

〈活動側の条件〉

①活動の場で交友関係を広げることや親密さをあまり求められないこと。

②活動内容が彼らの興味関心のある事柄であること。

③加入や参加の方法が簡単で,活動に見通しが持ちやすく暗黙の了解などが無いこと。

④興味関心の対象や楽しみ方が似ているメンバーがいること。

⑤スタッフが ASD の特徴を理解し,参加者に合わせて肯定的な態度やコミュニケーションが取れること。

⑥活動の時間が長すぎず,頻度が高すぎないこと。

(9)

あると考えられる。これらのことは我々がフレ ンドシップ・プログラムの運営の中で配慮して いる点やスタッフが日々実感としている事柄と も重なるものでもある。そのような安心感が得 られれば,彼らはむしろ人間関係の機微にあま りとらわれずに活動に参加していけるのではな いだろうか。

 本研究の結果をもとに HFASD の青年が自 ら社会的活動に参加することを可能にする条件 を整理し Table 6 に示した。彼らが活動に参加 する際,活動の勧誘や案内,既知の人間関係が あるといった 後押し はあまり重要ではない と考えられた。単に活動への勧誘や案内をする だけでなく,活動の場の対人関係の濃さや量,

興味関心のポイントや楽しみ方のスタイル,不 安を生じる要素などの条件がクリアできそうだ と彼らが感じられるように情報提供することに よって,自ら活動の場に足を運ぶ可能性が高ま ると思われる。また彼らが何かの活動への参加 を検討する際に,こうした条件についての情報 を集めるように促すことも有効と思われる。ま た HFASD の人が参加することを視野に入れ た活動を実施する際にも,これらの条件を含め て活動を計画し,彼らに伝わりやすいように情 報を工夫することなども留意すべきと思われる。

 最後に,本研究は本学で実施しているプログ ラムの少人数の参加者を対象としているため,

本研究の結果を HFASD の青年に一般化する には限界がある。仲間作りに成功しているより 多くの HFASD の青年を対象に調査を行い,

彼らに一般化できるか検討する必要がある。本 研究では青年期グループ実施時に短時間で調査 を実施する必要から質問紙調査を用いた。その ため個々の回答の背景にある情報や経緯などを 加味して検討することなどができなかった。彼 らが何かしらの活動に関心を示す時,活動の内 容が興味関心のある事柄と一致したり興味を抱 いたりするかどうかが重要であり,活動の詳細 や条件に目を向けるのはその後かも知れない。

活動内容を彼らがどのような順番や優先度で検 討するのか,また今回示唆された以外の条件も

含まれてくるのかなどについて検討が必要であ る。

謝辞

 本研究にご協力いただきましたフレンドシッ プ・プログラムの参加者の皆様,プログラムを 統括しご指導頂きました小林潤一郎先生,なら びにプログラムの運営に携わった池田麻衣子 氏,新沼優理氏,田村茉奈氏に深く感謝申し上 げます。

引用文献

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(11)

Social participation support for adolescents and  young adults with autism spectrum disorder

:Conditions to promote participation in social  activities on their own initiatives

Tatsuya KAWABUCHI

(Faculty of Psychology, Meiji Gakuin University)

Abstract

     This study was intended to examine conditions of social activities that adolescents and young adults 

with  high-functioning  autism  spectrum  disorder(HFASD)can  participate  on  their  own  initiatives.  We 

asked  6  young  adults  with  HFASD  reasons  to  participate  some  social  activities  in  the  past.  They  had 

decided whether to participate in the activities or not, depending on whether they were pleasant to be active 

with others than alone, other members and staff  of them seemed to be kind, and contents of them were 

interesting. We considered that motivations to be active with others, interesting contents, appropriate cues 

to participate easily, low frequency and no expectation to have close human relations were conditions of 

participation in social activities on their own initiatives. In addition, to support their participation in social 

activities, it is necessary to recommend them to make sure whether the activity meets the conditions.

Table 2. 現在自ら参加している活動の基本情報の内訳 活動に関する基本情報についての質問項目 回答の内訳 (1)現在参加している活動はどんな活動ですか ・文化系サークル ・学校行事の実行委員 ・地域での趣味の教室(2 名) ・発達障害対象の就労支援プログラム ・文化系の部活動 (2)いつから参加していますか ・3 ヶ月前から ・本年度から(2 名) ・昨年度末から ・昨年度から (3)活動をどうやって知りましたか a

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