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JapaneseJournalofEducationalPsychology,1994,42,415‑420 415

中学生 における一般的統制感 と時間的展望の関連性

杉 山 成

l

AN ANALYSIS OF RELATIONSHIP BETWEEN THE GENERAL PERCEIVED CONTROL AND THE TIME PERSPECTIVE IN JUNIOR HIGH SCHOOL STUDENTS

ShigeruSuGIYAMA

Thepurposeofthepresentstudywastoclarifytherelationshipbetweenthetime perspectiveandthegeneralperceivedcontrol.A questionnaireofthetimeperspec tiveandascaleofthegeneralperceivedcontrolwereadministeredto284juniorhigh schoolstudents(140malesand144females). Byfactoranalysis,thetimeperspective questionnairewasdividedintothreefactors,namedasfollows:"unsatisfactionfor past,presentandfuture","futureorientation"and"pastorientation". Themain resultsweresummarizedasfollows:(1)Thelowgroupofthegeneralperceivedcontrol showedhigherdegreeofunsatisfactionforpast,present,andfuturethanthehigh group.(2)Inthehighgroupofthegeneralperceivedcontrol,therelationshipbetween theunsatisfactionforpast,presentandfuture,andthefutureorientationshowed positive.

Keywords:timeperspective,generalperceivedcontrol,pastorientation,future

orientation.

個人 の過去や未来 に対する認知や態度 は時間的展望 (timeperspective)といわれている。Lewin(1942)は, 場 の理論 のなかで時間的展望 を生活空間の要素の

1つ

として位置づ け,個人 の生活空間が現在 だけで はな く 未来や過去 をもその中に含んでいると考 えてお り,集 団のモラール,粘 り強 さ,要求水準(目標設定),お よび リーダーシップなどが時間的展望のあ り方に強 く依存 していることを指摘 している。 また,臨床心理学の立 場か らも,Minkowski,E.らによって人格 の構造 と時 間の関係や精神病者 における時間感覚の障害な どの問 題が述べ られて きた (僕,1974)0

個人 の時間的展望 に影響 を及ぼす要因には,社会経 済地位 に関す る要因をはじめ としてさまざまな ものが

・ 立教大学文学研究科 (RikkyoUniversity)

とりあげられて きたが,主要な心理的要因 としては「自 分が望 んだ とき (その気になったとき)に, 自分の欲す る 結果が得 られる可能性 についての期待 (樋口・鎌原・大塚, 1983)」と定義 され る個人の統制感(perceivedcontrol)が 考 えられ る。

従来,個人 の統制感 を扱 う概念 には,対象や状況 に 特殊的な期待 に関係す るもの と

,

信念」のような比較

的安定 した存在 として個人 の行動 のすべてに一貫 して 関わる一般的期待 に関係するものがあ り,後者 の代表 的な ものは,Rotter(1966)LocusofControl概念 である。 この概念 においては,個人の統制 に関する一 般化 された期待が,内的統制 と外的統制 とい う両極 を 持つ一次元的な連続体 として とらえられる。内的統制 への期待 は, 自分 自身の行動がある成果 をもた らす と い う期待 (一般的統制感が高い)を指 し,外的統制への期 待 は, 自分の行動以外の外的な力が結果の生起 を左右 す るとい う期待 (一般的統制感が低い)を指す.

‑ 53

(2)

416 教 育 心 理 学 研 究 第42巻 第4一般的統制感 はこのように未来 における成果獲得 に

対する期待が一般化 された ものであるので,個人 の未 来への時間的展望の形成 と密接 な関連 を持つ。た とえ , 5, 8,11学年生 の自己責任性 と未来的時間展望 の長 さとの関連性 を検討 したLessing(1968)は,彼 ら の自己責任性得点 と未来的時間展望 の長 さとが対応 を 持 ちなが ら,学年が上がるにつれて上昇 してい くこと を兄 いだしてお り, この ことは, 自分が行動 を統制 し うるという認知が未来的時間展望の発達 において基礎 的役割 を担 っている可能性 を示唆す るもの といえる。

さらに,一般的統制感 と時間的展望 との間には,一 般的統制感が未来的時間展望 を形成するのみでな く, さらにそれを通 じて現在 の活動への動機づ けの強 さに 影響 を及ぼす過程が推測 され る 彬 山,1993)。すなわち, 現在 における高い一般的統制感 は,未来への統制感 ま で拡張 され,自己の活動(たとえば学生にとっての勉強活動) の積み重ねによる未来の成功への期待, それに基づい positiveな時間的展望 (個人的未来に対するpositive 態度,長く,かつリアリティのある時間的展望等)を構成す る。

そして,Calster,Lens&Nuttin (1987)が,現在 の勉 強が 自己のpositiveな未来 に結 びつ くと考 えてい る 学生の勉強 に対する動機づ けが他の学生 に比 して高い ことを示 しているように, この場合 も,高い一般的統 制感 を持つ個人 においては,現在の活動がpositive 未来 に対する主観的な道具性(perceivedinstrumentality)

を持つため,その活動 に対す る動機づ けが上昇するの である。

このように,個人が高い一般的統制感 を獲得 した場 合 には,それ を軸 として未来へのpositiveな展望が形 成 され,それによって未来の成果獲得 を目指 して現在 の行動が調整 され るのに対 し,一般的統制感が未獲得 であった り,低い ものであったために統制不可能事態 で喪失 して しまった場合 には,positiveな未来への展 望 を形成することがで きず, それゆえに未来的時間展 望 によって現在 の行動が調整 されない行動,た とえば, 非行のような剃郡的 ・短絡的な行動や,無気力のよう な動機づ けの低下 した状態 を示す ことが推測 され る。

本研究では, こうした時間的展望 と一般的統制感 お よび行動 との関連 を検討する端緒 として,一般的統制 感 の個人差 と時間的展望の各側面,特 にこれ まであま

り統制感 との関連が検討 されて こなかった時間的志向 性や時間的態度 との関連性 を検討する。

被験者 は青年期 にあたる中学生である。青年期 は, 時間的展望 に関 して深刻な変化の時期であ り,現実 と 非現実の水準が漸次分化 しはじめ, 自分 自身の理想 目

標や価値 と,他方の期待の現実構造が考慮 されな くて はいけない現実 とい う両方 に一致す るような形で,時 間的展望 を構造化することが要請 される時期 (日高・ ,1980)といえる。こうした青年期 において,一般的統 制感 を基礎 として時間的展望の各側面が構成 されてい くのであれば,Lessing(1968)の指摘す るような時間的 展望の長 さのみで はな く,時間的志向性や時間的態度 といった時間的展望 の他の側面 において も,一般的統 制感 の高群 と低群 の間に違 いがみ られ ることが予想 さ れる。

被験者 :調査の対象 となったのは東京都 内の市立 中 学の1‑ 3年生284名 (男子140名,女子144名)である。

調査時期 と実施方法 :調査 は1991年12月上旬〜下旬 の授業中に実施 した。

質問項 目の構成 (1)一般的統制感尺度

神田(1993)の子 ども用一般主観的統制感尺度 を使用 した。 これ はRotter(1966)の1次 元的 なLocus of Control概念 に基づいて作成 された もので,26項 目か

ら構成 される。評定 は4件法(そう思う」,少しそう思う」,

あまりそう思わない」,そう思わない」)で行 い, とりうる得 点の範囲 は26か ら104点である。高得点であるほ ど統制 感が高い ことを意味す る。項 目としては 「学校で まじ めにやっていると,いつか はいいことがある」

,

,I知 り 合いに有名人がいない と出世す るの はむずか しい ( 転項 目

)

」な どがある。

(2)時間的展望質問紙 の項 目

時間的展望の研究対象 には,extension(概念化された 将来の時間的範囲の長さ),density(個人が未来に予想する出来 事や経験の数),directionality(現在の瞬間から未来へと移行 する感覚)等,いろいろな概念 (変数)が考 えられ るが ( ,1982),Nuttin&Lens(1985)は,そうした時間的 展望 の概念 に関 して,それ をextensionやdensityと いった変数 と対応する狭義の時間的展望 と,時間的態 皮 (個人の過瓦 現在,未来に対するpositiveないしnegative 態度),時間的志向性 (過五 現在,未来の対象や事象に対して, それらが優勢的に志向されている場合の個人の行動や思考にお ける方向)という3つの側面で とらえている。本研究で は, これ まであまり検討のなされていない時間的態度 と時間的志向性 を対象 に一般的統制感 との関連性 を検 討する。

青年の時間的展望の構造 を文章完成法 によって分析 した白井(1987)は,過去 は受容,現在 は充実,未来 は

(3)

杉山:中学生における一般的統制感と時間的展望の関連性 希望 と目標指向性 という側面で とらえられることを示

唆 している。そこで,時間的態度 に関する質問項 目に 関 しては, それ を参考 にして,過去 に対する態度 とし て過去の生活 ・努力 の評価,現在 に対す る態度 として 現在 の充足感,未来 に対 す る態度 として未来 の明 る さ ・希望 に関す る項 目を設定 した。 また,時間的志向 性 については,過去志向性 を問 う項 目,および未来志 向性 を問 う項 目を設定 した。項 目は,主 に小宮山・星 ・ 高橋 ・川田 (1976),勝俣 ・篠原 ・村上 (1982)か ら選出

し,一部 は自作 した。項 目の回答形式 はすべて 「まっ た くその通 り」か ら 「まった くちが う」 までの5段階 評定 により,それぞれの応答 に対 して, 5点か ら1

までの得点 を与 える。

結果 と考察

項 目分析 の結果,一般的統制感尺度の各項 目と当該 の項 目を除 く合計得点 との間 にすべて0.1%水準 で有 意 な相関が認め られた。また,Cronbachα係数 は約

0.73であ り,項 目の数 を考慮すれば十分な内的整合性 を持つ もの と考 えられ る。 よって26項 目の合計得点 を 個人の一般的統制感 の指標 として採用 した。 この一般 的統制感尺度の合計得点 は44点か ら97点 までの範囲に 分布 してお り,平均 は73.17(標準偏差9.24)。また,男女 の間には有意な差 はなかった (男子の平均は73.57,標準偏 9.55,女子の平均は72.77,標準偏差は8.930 t‑0.73,df‑282,n.

S.)。 これ らの結果 は,過去の調査事例 (神田,1991;1993) とほぼ一致す る。 また,一般的統制感尺度合計得点の 分布 は正規分布 に近かったので,合計得点 に基づいて 被験者 を2分 し,低得点の被験者群 を一般的統制感低 秤 (一般的統制感得点は72点以下の135名),高得点の被験者 群 を高群 (一般的統制感得点は73点以上の149名)とした.

一般的統制感得点の平均値 の検定 を行 った ところ,両 群間に有意 な差が認め られた (t‑22.57df‑282,pく.001)0 以下 の分析 はこの2群の比較 によって進 めてい く。

まず,時間的展望項 目14項 目の内的な構造 を検討す るために,全体 の284名 のデータについて因子分析 を 行 った。因子の固有値が1.00以上 とい う基準 によって 主因子法 によ り3因子 を抽出 し,オブ リミン法 によっ て回転 させた ところ, TABLElに示す ような因子負荷 のパター ンを得た。

1因子 は「毎 日が楽 しい(因子負荷量は負の値)

,

「自 分 の将来 の見通 しは明 るい (因子負荷量は負の値)」,

「ち ょっとしたことで未来 に希望が持てな くなる

「こ れ まであまりいい ことがなかった」等が属す る因子で あ り,過去 ・現在 ・未来 に対す る態度の側面 に関わる

417 項 目が時間次元 を越 えて1つの因子 にまとまった もの である。それゆえ

,

過去 ・現在 ・未来 に対す る不満足

として解釈す ることがで きる。第2因子 には主に未来 志向性 として設定 した項 目,第3因子 には主 に過去志 向性 として設定 した項 目が まとまっている。それゆえ, 2因子 は 「未来志向性」,第3因子 は 「過去志向性」

の因子 として とらえられ る。

TABLE1 時間的展望項 目の因子分析 の結果1国子 過去 ・現在 ・未来に対する不満足

(固有値2.61) 因子負荷量 毎日が楽しい ‑.7470 自分の将来の見通しは明るい ‑.5699 ちょっとしたことで未来に希望が持てなくなる .5415 これまであまりいいことがなかった .5388 不満なことがたくさんある .5284 小さいときに頑張ったことが今役にたっている ‑.4598

‑日一日が長い .40542因子 未来志向性 (固有値1.72) 因子負荷量 自分の目標のために努力している .6388 自分の今やっていることが将来に影響する .5989 1996年はずいぶん先のことだ ‑.5013 はやく大人になりたい .45663因子 過去志向性 (固有値1.36) 因子負荷量 7.もうー度小さい頃に戻ってやりなおしたい .7465 4.小学生の頃のことをよく思い出す .7328 6.実現しそうもないことばかり考える .4310

このように本研究 においては,青年 における過去 ・ 現在 ・未来 に対す る態度が,個人の生活空間のなかで 時間次元 を貫いた人生全体 に対す る1次元的な態度 を 構成する傾向が認 められた。 また,過去や未来 に対す る志向性 については, それ らが過去や未来 に対する態 度 とは別の国子 として独立的 に存在 していることが確 認 された。従来の時間的展望研究 において は,過去の 評価が高い ことを過去志向(pas卜oriented)とした り,未 来への評価が高い ことを未来志向(futureoriented)とし て扱 って きていることがある。 しか し,本研究の結果 か らは,過去 にもどりたい とか,早 く未来 に行 きたい とい う時間次元 に対す る志向性 は,過去や未来 に対す る態度 と同一次元の存在で はな く,他の独立 した側面 であることが示唆 され ろO

次 に,一般的統制感高 ・低群 における時間的展望の 14項 目の平 均 値 を算 出 し,平 均 値 の検 定 を行 った

‑ 55‑

(4)

418 教 育 心 理 学 研 究 第42巻 第4

(TABLE2). また,過去 ・現在 j未来 に対する不満足が 未来志向性 ・過去志向性 に及ぼす影響性 を検討す るた めに,各因子 を構成する項 目の得点 を合計 して各因子 の因子得点 とし,過去 ・現在 ・未来 に対す る不満足の 得点 を説明変数,未来志向性 ・過去志向性 の得点 を基 準変数 とした単回帰分析 を行 った。TABLE3‑1は一 般的統制感低群 にお ける結果,TABLE3‑2は高群 に

おける結果である。

TABLE2 時間的展望項 目の平均値の検定の結果 一般的統制感の2 統制感低群 統制感高群 時間的展望の各項目

1因子 過去・現在・未来に対する不満足 1.毎日が楽しい

2.自分の将来の見通しは明るい 12.ちょたこで未来に希望が持てなくなる

5.これまであまりいいことがなかった ll.不満なことがたくさんある 13.小さいと頑張ったこが今役にたっている

8.‑日一日が長い2因子 未来志向性

10.自分の目標のために努力している

3,25(1.16) 3

.

83

( 1 . 0 9 )

‑4.33 2.64(1.06) 3,06(0.89) ‑3.58''' 2.82(1.30) 2.33(1.16) 3.38 3.05(1.21) 2.3

8 ( 1

.

0 8

) 4.87 3.48(1.20)3.07(1.21) 2.88 2,76(1.20) 3,26(1.16) 13,55''' 2.65(I,23) 2.17(1.25) 3.17''

2,91(1.24) 346(1.10) ‑4.01 9.自分の今やっていることが将来に影響する3.27(1.18) 3.46(1.17) ‑1.40 3.1996年はずいぶん先のことだ 3.10(1.36) 2.61(1.21) 3.17''

14.はやく大人になりか1 2.92(1.39) 2.80(1.32) 0.753国子 過去志向性

7.もう一度小さい頃に戻ってやりなおしたい3.57(1,34) 3.14(1.44) 2.55 4.小学生の頃のことをよく思い出す 3.16(1.41) 3

. 0

9(1.25) 0.44 6.実現しそうもないことばかり考える 3.59(1.25) 3.25(1.25) 2.27 括弧内標準偏差・p(.05,Hp(.01,‑ p(.001

TABLE3‑1過去・現在・未来に対する不満足を説明変数,過去志向性・未来志 向性を基準変数とした回帰分析卜般的統制感低群)

未来志向性 過去志向性

墓 票志去現在 .未来に対する 011 21 1 . ・

数値 は標準 回帰係数 書pく.05, ・*pく.01

TABLE312過去・現在・未来に対する不満足を説明変数,過去志向性・未来志 向性を基準変数とした回帰分析(一般的統制感高群)

未来志向性 過去志向性

票志去現在 .未来に対する 1255 163 数値 は標準回帰係数 ・p(.05, ‑ pく01

まず,第 1因子である過去 ・現在 ・未来 に対する不 満足 に関 しては,それを構成す る7項 目すべてにおい て両群間に有意差がみ られ,一般的統制感 の低群 の方 が高群 に比 して,過去 ・現在 ・未来 に対 して不満足 な 態度 を持 っていた。従来,個人 の適応の指標 は主 に現 在 の評価 に限定 されていたが,近年,Diener,Emmons, Larsen,&Grifnn(1985)は,主観的wellbeingの要 素 として,現在の状態 に対す る評価 だけで はな く,人 生 を総括 しての全体的評価 とい う観点か らの人生満足 感(lifesatisfaction)を検討する必要性 を述べている。本 研究 における第 1因子 は, そうした人生全体 に対す る 満足感 という指標 と類似 していると思われ る。それゆ え, こうした指標 と一般的統制感 との関連性 を示唆す るもの といえよう。

2因子の未来志向性 については, 2項 目において 両群 に有意差がみ られ,一般的統制感 の高群 の方が未 来 の目標 に対 して働 きかけている認知 を持つ ことが確 認 された。 また,「1996年」という未来の時期への距離 の認知 は,未来志向性 の因子 に属 してお り,一般的統 制感 の低群 の方が, より遠い もの として未来 の時期 を 認知 していることが示 された。青年期 における将来 目 標 の特性 と自我同一‑性地位 との関連 について検討 した 都 筑 (1993)によれば, 自我同一性達成地位 の個人 は, 将来 目標 をより重要で,努力等の内的要因によって達 成 しうるもの ととらえ, さらにその将来 目標 に向けて の高い準備性 を示す。 このように,未来 の対象に魅力 を感 じ,その実現 に対 して高い統制性 を認知 している 個人 の現在 は, その未来 の対象実現 のための準備 に よって満たされ,それゆえに未来志向的な傾向を示 し, 未来 までの間隔に関 して も短 く感 じる.一方,未来の 目標 の実現への統制感が低 く, それゆえに明確な未来 的時間展望 を持 たない個人 に とって は,Nuttin &

Lens(1985)の指摘す るように,未来 までの間隔 は 「 白の期間」 とな り,その目標や未来への距離感 を増大 させ るのであろう。一般的統制感 の高 ・低群 の未来志 向性 に関す る傾向の相違 は, こうした未来への現在の 準備性 の違いを反映 していると考察 され る。 また,第 1因子の過去 ・現在 ・未来 に対する不満足が この未来 志向性 に及 ぼす影響性 については,一般的統制感 の両 群 において異なる傾向を示 してお り,高群 においては 過去 ・現在 ・未来 に対する不満足か らの有意 な影響が 認 められたのに対 し,低群 においてはそうした傾向 は み られなかった。

3因子の過去志向性 について も2項 目において両 群間に有意差がみ られた。「過去 にもどってや りなお し ー 56‑

(5)

杉山 :中学生における一般的統制感と時間的展望の関連性 たい」 とい うような非建設的な過去志向の傾 向 は,低

群 の方が有意 に強か った。 また,過去 ・現在 ・未来 に 対す る不満足か ら過去志向性への影響 について は,両 群 において有意性が認 め られたが, その傾 向 は低群 の 方が, よ り強 い ものであった。

過去 ・現在 ・未来 に対 す る不満足が未来志向性,過 去志 向性 に及 ぼす影響性 について は,上 のように一般 的統制感 の両群 において異 な る傾 向が み られ た。過 去 ・現在 ・未来 に対 す る不満足が未来志向性 に及 ぼす 有意な影響 は,一般的統制感 の高群 においてのみ確認 され,一方,過去志向性 に及 ぼす影響 は低群 の方が高 群 に比 して強かった。 こうした両群 の相違 は以下 の よ うに考察 され る。杉 山(1993)は,解決不可能な課題 を 行 わせ る ことによって被験者 の統制感 を低下 させ, そ の前後 のTAT図版 への反応 に現れた時間的展望 を比 較 した結果,課題後 の未来的時間展望が統制感 の減少 と共Jこnegativeに変化す ることを兄 いだ してい るが, こうした現在 の統制感が失われ るような状況 に接 した 際 に,一般的統制感 の高群 で は低群 に比 して,未来へ の統制感が失われ ることが少 な く, む しろ現在 とは異 なる未来 を創造 してい こうとい う動機 づ けが高 ま り, それ ゆえ,意志や行動が未来 の 目標への努力 といった 未来への働 きか け とい う方向 を向 き,未来志 向的 にな る。一方,一般的統制感 の低群 は,結果 をコン トロー ルで きるとい う認知が低 いため,統制感が失われ るよ うな状況 に陥 った ときに,意志や行動が未来 を向かず, 現在か らの逃避 としての過去志向 を示す もの と考 え ら れ る。Brannigan,Shahon,& Schaller(1992)は,一 般的統制感 の低 い外的統制 の個人が内的統制 の個人 に 比 して,過去志向的なdaydreamを多 く経験 している ことを示 してお り, この ことは上 の考 え と一致す るも の と思われ る。

以上 の ように,本研究 において は過去 ・現在 ・未来 に対す る態度 と未来 ・過去志向性 に関 して一般 的統制 感 の高 ・低群 間の比較 を行 った。 その結果, 1つの因 子 として まとまった過去 ・現在 ・未来 に対 す る不満足 の因子 と過去志向性 ・未来志向性 との関連性 において, 一般的統制感 の高 ・低群 間 において異な る傾 向が示 さ れ,一般的統制感 と時間的展望 にお ける時間的態度 お よび時間的志向性 との関連性が示唆 された。今後 は, 時間的展望 にお ける他 の側面 (たとえば時間的関連性や展 望内容のリアリティといった側面)との関連性 の検討や,時 間的展望 の各側面 と一般 的統制感 の発達 に関す る縦 断 的検討 を通 して,時間的展望 の形成 において一般的統 制感 が果 た している役割 をよ り明確 に してい く必要が

419

ある。

引 用 文 献

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本論文 の作成 にあた りご指導頂いた立教大学 ・水 口 稽治先生,調査のためにご協力頂いた白梅学園短期大 学 ・神 田信彦先生 に深 く感謝いたします。

(1994.6.16受稿,7.23受理)

‑ 58‑

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