本稿では、合衆国における障害乳幼児政策の展開過程を論じた。合衆国では、1975 年 の「全障害児教育法」の成立で、3〜 21 歳までの連邦政府の補助金を伴う 障害児の 全入 制度が確立したとされるが、現実は、必ずしもそうではない。3〜5歳までの障 害 幼 児 に つ い て は、1981 年 ま で に 全 州 で「 無 償 の 適 切 な 教 育(free appropriate education)」の保障が実施に移されたのである。0〜2歳児の障害乳児に対する施策は、
3〜5歳の障害幼児施策とは異なり、1986 年の P.L.99-457 により各州政府が、連邦政府 の補助金を得て整備すべき早期教育(療育)施策の骨格が示された。同時に、P.L.99-457 では、0〜3歳未満児には、3〜 21 歳の障害児に適用される障害カテゴリーではなく、
「発達の遅れ」カテゴリーが早期教育(療育)対象を規定する用語として使用された。
その後、「発達の遅れ」用語の使用は、3歳児以降の障害カテゴリーの在り方に影響を 与え、今日に至っている。
キーワード 合衆国の障害児教育、障害乳幼児、障害カテゴリー、発達の遅れ、個別家 庭/家族支援計画(IFSP)
問題
世界各国の障害児教育法制を鳥瞰すると、障害児教育という特別なサポートを受給できる有 資格者を障害カテゴリーを使用して特定する国と、有資格者を障害カテゴリーを使用しないで、
「特別な(教育的)ニーズを抱える子」として括って特定する国に2分できる。日本の障害児 教育法制は前者であり、合衆国の連邦政府の障害児教育法制も基本的には同様である言われて いる。それに対して、後者に属するのがイギリスなどである。前者は、障害カテゴリー別アプ ローチと呼ばれ、後者は非障害カテゴリー的アプローチとして呼ばれたりしている。
ところで、合衆国の連邦政府の障害児教育法制は、確かに、障害カテゴリー別アプローチで はあるが、実際は、障害カテゴリーとは必ずしも言えない「発達の遅れ(developmetal delay)」という用語で、障害児教育の対象の一部を括っている。以下の本稿では、この「発達 の遅れ」という用語が、障害児教育の対象児を括る用語として登場してきた歴史的経緯を明ら かにしようとするものである。
1.障害乳幼児施策の法制化への経過
合衆国における教育行政の核は、州政府と地方教育当局であるが、第二次世界大戦後、連邦 政府の役割が大きくなり、今日を迎えている。障害児教育の分野でも同じであり、連邦政府は、
米国における障害乳幼児施策の展開
Sadao Shimizu
The Evolution of Early Childhood Special Education in U.S.A.
清 水 貞 夫 *