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割賦販売取引における既払金返還法理

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(1)

割賦販売取引における既払金返還法理―クレジット 取引システムにおける帰責構造の分析を通して―

著者 山里 盛文

雑誌名 明治学院大学法科大学院ローレビュー = Meiji

Gakuin University Graduate Law School law review

巻 18

ページ 81‑104

発行年 2013‑03‑31

その他のタイトル Principle of Returning Paid Money in Credit Transaction ―Analysis of Liability Structure of Credit Transaction System―

URL http://hdl.handle.net/10723/1775

(2)

『明治学院大学法科大学院ローレビュー』第18号 2013年 81−104頁

割賦販売取引における既払金返還法理

—— クレジット取引システムにおける帰責構造の分析を通して ——

山 里 盛 文

Ⅰ 総論

ⅰ はじめに

ⅱ 前提

1)割賦販売法の規制対象

2)割賦販売法上の既払金返還規定 3)民法法理を考える必要性

ⅲ 判例・学説 1)判例 2)学説

⑴ 経済的一体性のみ 1 不可分一体説 2 密接不可分説 3 提携関係説

⑵ 経済的一体性+経済的優位性

⑶ 経済的一体性+契約の内容 1 契約結合説

2 給付関連説

⑷ 経済的一体性+義務違反 1 履行確保義務説 2 加盟店選択義務 3 加盟店調査監督義務説

⑸ 経済的一体性+契約形式の変更 1 契約形式組み換え説

2 免責的債務引受説

3 第三者のためにする契約説

4 第三者のためにする契約+債権譲渡説 5 独立契約説

ⅳ 検討

1)学説・判例の分析

2)クレジット契約についての分析

⑴ クレジット契約の構成

(3)

Ⅰ 総論

ⅰ はじめに

平成23年10月25日に最高裁として,初めて,ク レジット契約における既払金返還請求についての 判決が下された。しかし,クレジット契約につい

ての議論は,今に始まった議論ではない。これま で長年にわたり議論が積み重ねられてきた。いわ ば,「古くて新しい」議論であるといえよう。そ して,クレジット契約は,時代の流れとともに変 化してきている。「従来の議論は,現在のクレジ ット取引システムに対応できているのであろう か」,本稿は,このような問題意識のもとに,ク

⑵ コーズか?行為基礎か?

1 コーズ論 2 行為基礎論 3 検討

⑶ 問題点

3)民法における帰責原理

⑴ 行為者帰責型

⑵ 受益者帰責型

⑶ クレジット取引と帰責原理

⑷ 受益者帰責型の補充的性格 4)効率性

⑴ 消費者被害防止についての効率性

⑵ 被害救済の効率性

ⅴ 小括

Ⅱ 各論

ⅰ はじめに

ⅱ クレジット取引:個別信用購入あっせん型

ⅲ クレジット取引:包括信用購入あっせん型 1)類型

⑴ 三当事者間クレジット取引(オン・アス型)

⑵ 四当事者間クレジット取引(ノン・オン・アス型)

⑶ 五当事者間クレジット取引(包括加盟型)

2)検討

⑴ 各契約の分析

⑵ 既払金支払請求について

⑶ チャージバックとコンプライアンス 1 チャージバック

2 コンプライアンス 3 検討

ⅳ クレジット取引:ローン提携販売型 1)方式

2)検討

ⅴ 小括

Ⅲ おわりに

(4)

レジット契約のあらゆる類型に対応するための一 試論を行おうとするものである。

以下,本稿においては,「総論」と「各論」と に分けて検討する。「総論」では,クレジット取 引について,一般的に妥当するであろうという考 えについて検討してみたい。そして,「各論」に おいては,総論で提示した考えが,現在のクレジ ット取引における様々な類型にどのように妥当す るかを検討する。なお,「総論」の部分では,主 に三当事者間のクレジット取引を念頭に置いて論 じる。

「総論」における検討の順序は,クレジット取 引について規制する割賦販売法についてその適用 対象や既払金返還についての規定について考え

(Ⅰ−ⅱ),クレジット取引についての判例と学説 について検討する(Ⅰ−ⅲ)。そして,クレジッ ト取引について,一般に妥当するであろうと考え られる理論を提示してみたい(Ⅰ−ⅳ)。次に,

「各論」における検討は,各種のクレジット取引 について,「総論」で提示した理論が,個別信用 購入あっせん型(Ⅱ−ⅱ),包括信用購入あっせ ん型(Ⅱ−ⅲ),ローン提携販売型(Ⅱ−ⅳ)の それぞれについて妥当するか考える。

ⅱ 前提

1)割賦販売法の規制対象

クレジット取引について規制する法律は,割賦 販売法がある。ただし,この割賦販売法は,その 規制対象となる取引類型が限られている。割賦販 売法が,規制対象とする三当事者以上の取引につ いての類型は以下の通りである。

ローン提携販売(割賦販売法2条2項)。ロー ン提携販売には,割賦払い型(割賦販売法2条2 項1号)とリボルビング型(割賦販売法2条2項 2号)がある。割賦払い型(割賦販売法2条2項 1号)は,カードを利用し,指定商品,指定権利 の販売契約,指定役務の提供契約について,代金 の支払いに充てる金銭の借り入れで,2月以上に わたり,3回以上に分割して支払うことを約した 購入者等の債務を保証する形式である。リボルビ ング型(割賦販売法2条2項2号)は,カードを

利用し,指定商品,指定権利の販売契約,指定役 務の提供契約について,代金の支払いに充てる金 銭の借り入れで,代金の合計額を基礎としてあら かじめ定められた方法により算定された金額を分 割して支払うことを約した購入者等の債務を保証 する形式である。

包括信用購入あっせん(割賦販売法2条3項)。

包括信用購入あっせんには,2月以上の割賦払い 型(割賦販売法2条3項1号)とリボルビング型

(割賦販売法2条3項2号)がある。2月以上の 割賦払い型(割賦販売法2条3項1号)は,カー ドを利用して,商品,権利の販売契約,特定役務 提供契約について,代金の支払いを2月以上にわ たり,3回以上に分割して支払う形式である。リ ボルビング型(割賦販売法2条3項2号)は,カ ードを利用して,商品,権利販売契約,特定役務 提供契約について,代金の支払いを代金の合計額 を基礎としてあらかじめ定められた方法により算 定された金額を支払う形式である。

個別信用購入あっせん(割賦販売法2条4項)。

個別信用購入あっせんは,カード等を利用するこ となく,商品,指定権利の販売契約,特定役務提 供契約について,代金の支払いを2月以上にわた り,支払う形式である。

2)割賦販売法上の既払金返還規定

2008年の割賦販売法改正により,個別信用購入 あっせんの既払金返還請求につき,以下の既払金 返還規定が用意された。

クーリングオフ(割賦販売法35条の3の10,35 条の3の11)(1)。訪問販売等についてクレジット 契約が利用された場合,個別クレジット契約のク ーリングオフが可能である。

過量販売解除(割賦販売法35条の3の1)。訪 問販売により,日常生活において必要とされる分 量を著しく超える商品の販売契約おいてにクレジ ット契約を利用した場合,クレジット契約の解除 をすることができる。

不実告知取消(割賦販売法35条の3の1)。特 定商取引法に規定する特定商取引5類型(訪問販 売,電話勧誘販売,連鎖販売取引,特定継続的役 務提供契約,業務提供誘引販売取引)について,

(5)

販売契約またはクレジット契約に関して不実告知 または不告知により消費者が誤認をして契約を締 結した場合に,消費者は,販売契約・クレジット 契約の両方を取消すことができる。

3)民法法理を考える必要性

2008年の割賦販売法改正により,既払金返還に ついての規定が用意された。しかし,これですべ てが解決したわけではない。それは,次のような 場合には,割賦販売法の既払金返還についての規 定は,適用されないからである。

2008年に改正された割賦販売法の既払金返還規 定が適用されない場合である。すなわち,改正法 施行前に締結された契約である場合や,個別信用 購入あっせん以外の取引類型である場合である。

そして,割賦販売法の適用対象は,「2か月以上,

3回にわたって」支払いをする場合であり,マン スリークリア(翌月一括払い)の場合には,割賦 販売法の規定は,適用されない。また,クーリン グオフができない場合,適量な販売であった場合,

不実告知以外の契約の効力否定要因がある場合に は,既払金返還規定は使えない。さらに,抗弁権 の接続規定(2)によると,抗弁事由は,不実告知 に限られないが,その効果は,支払い拒絶のみで あるから,既払金の返還はできない。

よって,クレジット取引について,既払金返還 については,民法法理による既払金返還について の理論を考える必要がある。

ここで,本稿における定義をしておきたい。割 賦販売法上規制が及ばない場合であっても(例:

マンスリークリア),あっせん業者に対する,既 払金の返還請求は問題となりうるので,以下では,

割賦販売法の規制が及ばない割賦販売も含めて,

「クレジット取引」,「クレジット契約」と呼ぶ。

そして,三者間のクレジット契約で,個別信用購 入あっせんの形式をとるものを「個別信用購入あ っせん型」と呼び,三者間,または,四者間以上 のクレジット契約で,包括信用購入あっせんの形 式をとるものを「包括信用購入あっせん型」と呼 び,三当事者かそれ以上でローン提携販売の形を とるものを「ローン提携販売型」と呼ぶ。クレジ ット取引を利用する商品の販売契約,役務提供契

約については「販売契約」と呼ぶ。クレジット取 引の当事者については,消費者に対して与信を行 う事業者を「あっせん業者」と呼び,商品の販売,

役務の提供をする事業者を「販売業者」と呼び,

商品の購入,役務の提供を受ける者を「消費者」

と呼ぶ。

ⅲ 判例・学説 1)判例

判例(3)としては,最判平成2年2月20日(判時 1354号76頁),静岡地浜松支判平成17年7月11日

(判時1915号88頁),名古屋高判平成21年2月19日

(判時2047号122頁),最判平成23年10月25日(民 集65巻7号3114頁)がある。

最判平成2年2月20日(判時1354号76頁)(4) 最高裁は,立替払契約と販売契約は別個の契約で あるとし,販売契約で生じた事由を立替払契約に ついて主張することはできない。ただし,特段の 事情が認められれば,販売契約で生じた事由を立 替払契約について主張できるとした。その特段の 事情とは,「購入者とあっせん業者との間の立替 払契約において,かかる場合には購入者が右業者 の履行請求を拒み得る旨の特別の合意があると き,又はあっせん業者において販売業者の右不履 行に至るべき事情を知り若しくは知り得べきであ りながら立替払を実行したなど右不履行の結果を あっせん業者に帰せしめるのを信義則上相当とす る」事情である。

静岡地浜松支判平成17年7月11日(判時1915号 88頁)。静岡地裁浜松支部は,売買契約と立替払 契約は別であり,割賦販売法30条の4(旧法)は 創設的規定(最判平成2年2月20日)であるので,

割賦販売法30条の4のような規定がない以上,別 個独立の契約に生じた事由を他の契約で主張する ことは許されず,当然に他の契約の成否に影響を 及ぼさない。そして,割賦販売法30条の4におい て対抗を認める抗弁には制限がなく,公序良俗違 反を理由とする売買契約の無効(抗弁)を主張し て,請求を拒むことができることからすると,売 買契約が無効である場合に当然に立替払契約も無 効となるという解釈をとることはできない。

(6)

ただし,加盟店調査監督義務違反があったとし て不法行為による損害賠償責任を認めた。それは,

以下の理由による。

売買契約と立替払契約は別であるから,売買契 約が無効であるからといって,立替払契約が無効 とはならない。そして,加盟店調査監督義務は,

行政上指導上,信販会社に要請された義務であり,

個々の消費者との関係での具体的義務違反ではな いから,債務不履行,不法行為責任は負わない。

しかし,信販会社が加盟店調査監督義務の違反に つき,重大な落ち度があった場合は,不法行為責 任を負う。なぜなら,信販会社の立替払契約によ り,悪質な販売業者の不適正な販売行為を助長さ せ,個々の消費者の被害により信販会社が利益を 得る結果となるからである。そして,本件の信販 会社には,著しいい義務違反があったので,不法 行為責任を負うとした。加盟店調査監督義務の具 体的内容としては,以下のものが挙げられている。

加盟店契約を締結する際に,加盟店に関する資料 を取寄せること等によって,加盟店が行う商品の 販売方法を具体的に把握すること,その内容を加 盟店に質問するなどして,販売方法に不審な点が ないかを慎重に判断すること,加盟店契約締結後 においても,加盟店の 販売方法を把握すること,

消費者に対する電話での意思確認において契約内 容を具体的に質問することである。

名古屋高判平成21年2月19日(判時2047号122 頁)(5)。名古屋高裁は,「本件の背景事情からする と」との限定を付してはいるが,立替払契約と販 売契約の一体性を肯定し,販売契約が公序良俗違 反により無効となる場合は,一体的に立替払契約 もその効力を失うとした。背景事情とは,販売業 者が,立替払契約の締結について準備行為を代行 をしていること,販売業者の販売方法について,

消費生活センターにクレームが来ていることをあ っせん業者が知り得たこと,などである。

最判平成23年10月25日(民集65巻7号3114頁)。

最高裁は,立替払契約と販売契約は別個の契約で あり,販売契約で生じた事由を立替払契約につい て主張することはできない。ただし,特段の事情 が認められれば,販売契約で生じた事由を立替払

契約について主張できる。その特段の事情とは,

「購入者と販売業者との間の売買契約が公序良俗 に反し無効とされる場合であっても,販売業者と あっせん業者との関係,販売業者の立替払契約締 結手続への関与の内容及び程度,販売業者の公序 良俗に反する行為についてのあっせん業者の認識 の有無及び程度等に照らし,販売業者による公序 良俗に反する行為の結果をあっせん業者に帰せし め,売買契約と一体的に立替払契約についてもそ の効力を否定することを信義則上相当とする」事 情である。

2)学説

既払金返還請求についての学説は,多数存在す る。学説は,その論拠として,経済的一体性を認 めることは統一している。以下では,法的評価に ついて,経済的一体性とその他の要素を組み合わ せるかについての基準により分類した。

⑴ 経済的一体性のみ 1 不可分一体説(6)

販売契約と立替払契約は,目的拘束依存関係に あり,密接に結びついている(7)。そして,販売契 約と立替払契約は,経済的に一体のものであるか ら,法的にも一体的考えるべきであるとする(8) あっせん業者と販売業者は,次の点から密接な 関係が導ける(9)。あっせん業者と販売業者は,

「営業活動上相互に協力依存関係にある」こと,

加盟店契約の締結により,あっせん業者と販売業 者は継続的契約関係にあること,販売契約と立替 払契約は,「目的と補助手段の関係にある」こと,

そして,消費者保護政策的配慮として,あっせん 業者に帰責できない結果,消費者に与えられる救 済手段は,販売業者に対する訴訟提起であるが,

「経済的・時間的および専門知識のうえで弱者で ある消費者にとって過大な負担である」こと,抗 弁権が接続されたとしても,あっせん業者は,販 売業者に対して立替金の返還請求をしたり,手数 料の引上げ等でリスクの分担が可能であるのに対 し,消費者は,リスクを他に転嫁させることはで きないこと,あっせん業者と販売業者は,継続的 契約関係にあることから,加盟店についての調査 が容易であること,以上の点から,あっせん業者

(7)

と販売業者の密接な関係が導ける。

2 密接不可分説(10)

割賦販売取引(自社割賦を除く)においては,

販売業者とあっせん業者は,経済的な緊密関係に あるにもかかわらず,販売契約と立替払契約が,

形式的に別個であるとして,あっせん業者は責任 を負わず,消費者に販売契約から生ずるリスクを 負担させることは,不合理である。そうすると,

販売業者とあっせん業者とは,経済的に緊密な関 係を有しているのであるから販売契約から生ずる リスクをあっせん業者に負担させる方が合理的で ある。

3 提携関係説(11)

この学説は,クレジット取引について,あっせ ん業者と販売業者との提携契約関係の分析によ り,あっせん業者の責任について考える。そして,

クレジット取引について,「共同目的」を実現す るものであることから分析するもの,また,「他 人の行為についての責任」についての問題からの 分析がある。

「共同目的」を実現するものであることからの 分析。販売業者があっせん業者と提携関係に入る ことにより,消費者は,割賦払いにより目的の商 品を取得する,販売業者は,販売の促進,あっせ ん業者は,販売業者の販売が増大することにより 利益を上げるという「共同の目的(利益)」を達 成することとなる(12)。以上のような,「共同の目 的」を達成するシステムからは,立替払契約とあ っせん契約には,成立上・消滅上の牽連関係が肯 定されるので,販売契約が効力を失うとあっせん 契約も効力を失う(13)。そして,抗弁権の接続の 接続も「共同の目的」から正当化される(14)

「他人の行為についての責任」についての問題 からの分析。クレジット取引において,立替払契 約と販売契約が経済的に一体であるとか密接な関 係を有するとするのは,当事者ではない第三者の 行為について,契約当事者の一方に負わせること ができるかという問題である(15)。そして,販売 契約上の障害事由を立替払契約上の抗弁として提 出できるかは,あっせん業者が,販売契約にどれ ほど関与しているかによって判断すべきであ

(16)

⑵ 経済的一体性+経済的優位性(17)

抗弁権の接続の正当化根拠として,立替払契約 と販売契約が,経済的一体性を有するということ のみでは不十分であり,経済的一体性に加えて,

あっせん業者に「経済的優位性」があることが必 要である(18)

あっせん業者は,経験や情報力から,販売業者 の「不正・不始末」によるリスクの計算を正確に 行うことができ,リスク計算の結果,リスクを回 避するための方策を講じることができる(19)。こ のような経済的に優位な立場にあるあっせん業者 に責任を負わせるほうがよい。

法律構成としては,信義誠実の原則(民法1条 2項),権利濫用の禁止(民法1条3項),同時履 行の抗弁権(民法533条)を活用するほかなく,

総合的な立法が必要である(20)

割賦販売法上の抗弁権の接続規定や既払金返還 規定の正当化についても,立替払契約と販売契約 の経済的一体性があること,消費者が販売契約に 瑕疵があった場合に既払金の返還がされること,

そして,未払金の支払拒絶ができることを期待し ていることに加え,あっせん業者が,販売業者の 信用調査などを容易にできる立場にあり,損失の 分散・転嫁をすることが可能であることを挙げて いる(21)

⑶ 経済的一体性+契約の内容 1 契約結合説(22)

販売契約と立替払契約は,相互依存関係にある。

そして,取引の性質上,立替払契約は,解除条件 付きで成立,存続しているとする。なお,北川善 太郎博士は,販売契約と立替払契約の相互依存性 は成立時についてのみであるとし,販売契約の不 成立,無効の場合には,立替払契約も不成立とな るが,解除の場合については,あっせん業者が販 売業者の販売行為の信用性につき問題があること を知っていたか,過失により知らなかった場合に ついてのみ責任を負うとされている(23)

2 給付関連説(24)

販売業者と消費者は,販売契約上,あっせん業 者と消費者は,立替払契約上,「それぞれ一方の

(8)

契約を他方の契約に関連づける要素を契約内容と して取り込んでいるために,両契約から生じる債 務関係には一定の牽連関係がある」とする(25) そして,販売契約と立替払契約は,あっせん業者 が販売契約に基づいて生じた消費者の代金債務を 消滅させるために立替払いをし,その結果として 消費者は,あっせん業者に対し立替払債務を負担 するという「結合要素」が契約内容として組み込 まれている。その結果,販売契約と立替払契約は,

相互に密接な関連性を有し,成立上・履行上・存 続上の牽連関係を有する(26)

このような,「結合要素」を取り込むことによ り,債務の相互依存効が生ずるのは,コーズが存 在するからである。あっせん業者が,販売業者に 消費者の商品購入のために立替払いをすることに より,消費者は,立替払債務を負担する実質的理 由(コーズ)があり,販売業者が,消費者の商品 購入のために(売買代金債務を消滅させるために)

あっせん業者から立替払いを受けることにより,

目的物引渡債務を負担する実質的理由(コーズ)

がある(27)

さらに,上記の理論的根拠に加え,実質的根拠 として,矛盾行為の禁止(民法1条2項)を挙げ る。あっせん業者は,販売契約に障害がない場合 には,販売契約と立替払契約との依存関係から利 益を享受するが,ひとたび,販売契約に障害が生 じると,立替払契約とは別個の契約であるとして 販売契約と立替払契約の依存関係を否定すること で,立替払金の支払い請求をするというような,

態度は,矛盾行為である(28)

⑷ 経済的一体性+義務違反 1 履行確保義務説(29)

あっせん業者は,消費者に対し付随義務として の履行確保義務を負い,この履行確保義務とは,

販売業者が,消費者に対して負う義務を完全に履 行させる義務である(30)

あっせん業者が,履行確保義務を負う理由とは,

以下の通りである(31)。第1に,あっせん業者は,

消費者との関係において善管注意義務が要請され るのであるから,その善管注意義務の具体化とし ての,販売業者が完全な供給をするよう強制する

義務を認めることができる。第2に,手形取引の ように二当事者間の契約を超えたところに存する 合同責任を認める制度が既に存在しているのであ るから,消費者を保護する必要性から,あっせん 業者と販売業者との合同責任を認めてもよい。第 3に,商法511条1項では,「数人がその一人又は 全員のために商行為となる行為によって債務を負 担したときは,その債務は,各自が連帯して負担 する」とあり,解釈上,債権者は,消費者でもよ く,また,クレジット取引の慣行やあっせん業者 と販売業者の提携関係から,商法511条1項が適 用され,あっせん業者と販売業者は,連帯債務を 負う。第4に,商法511条1項は,民法の分割主 義の例外となるが,それは,連帯債務とすること により,債務の履行を確実にし,取引の信用を維 持するという趣旨であり,この趣旨は,消費者契 約においても妥当する。第5に,消費生活センタ ーで取り扱った苦情事例の中には,あっせん業者 が販売契約上の債務の履行をした例がある。第6 に,外国において,あっせん業者に義務を負担さ せる立法例(イギリス)や判例(ドイツ)がある。

第7に,履行確保義務を認めることにより健全な 消費者信用取引を育成できる。第8に,あっせん 業者は,保険を利用することにより,損失を回避 できる。

2 加盟店選択義務説(32)

あっせん業者が,「消費者に損害を及ぼすおそ れのあるような販売店を加盟店に加えない」よう にする義務(加盟店選択義務と呼ぶことができよ う)を立替払契約の付随義務として負っている。

そして,あっせん業者が,クレジット取引システ ムを自ら構築したことに注目し,自ら構築したシ ステムにより他人(消費者)に損害を及ばさない ようにするべきである(33)

なお,契約の不成立,取消し,無効の場合につ いては,契約の一体性を根拠に効力を否定すべき とする(34)

3 加盟店調査監督義務説(35)

あっせん業者は,加盟店の信用や業務内容を調 査し,販売業者が適法で適切な営業活動を行うよ う調査・監督することが求められている(36)。経

(9)

済産業省もあっせん業者に対し数次にわたり通達 を出してきた(37)。その中でも,平成16年の通達 では,加盟店の実態把握の徹底が求められた。ま た,通達に法的強制力がないとしても,通達は,

加盟店調査監督義務の内容を明らかにするうえで 重要な資料となる。

⑸ 経済的一体性+契約形式の変更 1 契約形式組み換え説(38)

ある取引について,当事者が選択した契約形式 とは異なる契約形式を当該取引にあてはめること を「契約形式の組み換え」と呼び(39),ローン提 携販売,個別信用購入あっせんにつき,次のよう に契約形式の組み換えをする。

ローン提携販売について(40)。当事者の選択は,

販売業者と消費者との契約形式は,販売契約を選 択し,あっせん業者と消費者との契約形式は,金 銭消費貸借契約を選択し,あっせん業者と販売業 者との契約形式は,保証契約を選択している。こ れに対し,裁判所は,販売業者と消費者との契約 形式は,販売契約であり,あっせん業者と販売業 者との契約形式は,金銭消費貸借契約であり,あ っせん業者と販売業者との間では,あっせん業者 の販売業者に対する貸金債権を被担保債権とし,

販売代金債権があっせん業者のために譲渡担保と されると組み換えることができる。そして,あっ せん業者は,消費者に対して,販売代金債権の取 立てを行うというものである。

個別信用購入あっせんについて(41)。当事者の 選択は,販売業者と消費者との契約形式は,販売 契約,あっせん業者と消費者との契約形式は,立 替払契約である。これに対し,裁判所は,販売業 者と消費者との契約形式は,販売契約と,あっせ ん業者と販売業者との契約形式は,販売代金債権 の債権譲渡契約に組み換えることができる。

このように,契約形式の組み換えは,当事者の 選択が,経済的実質に反すること,そして,「裁 判所がその判断の基礎を端的に明らかにするた め」にも契約形式の組み換えが許される(42)

当事者との選択が,経済的実質に反するかにつ いて,ローン提携販売の場合は,次の通りであ (43)。ローン提携販売の経済的実質は,消費者

は,販売業者から代金賦払いの販売契約を締結し,

あっせん業者は,販売業者と消費者の支払い能力 を考慮し,販売契約を成立させるために信用を供 与するものである。これに対し,当事者の選択は,

消費者と販売業者との間で販売契約を締結し,販 売契約とは別個独立的に,あっせん業者と消費者 との間で金銭消費貸借契約を締結する。そして,

あっせん業者と販売業者は,保証契約を締結する。

このように販売契約と金銭消費貸借契約との間に は,一体性あるいは密接な関係があるにもかかわ らず,別個独立とするのは,経済的実質に反する。

当事者との選択が,経済的実質に反するかにつ いて個別信用購入あっせんの場合は,次の通りで ある(44)。個別信用購入あっせんの経済的実質は,

消費者は,販売業者と販売契約を締結し,販売業 者と消費者との立替払契約は,販売契約の成立の ために締結されるものである。これに対し,当事 者の選択は,消費者と販売業者との販売契約を締 結し,あっせん業者と消費者は,販売契約とは別 個独立の立替払契約を締結することである。この ように,販売契約と立替払契約との間には,一体 性あるいは密接な関係があるにもかかわらず,別 個独立とするのは,経済的実質に反する。

2 免責的債務引受説(45)

クレジット契約を免責的債務引受であると考え る。クレジット取引システムからすると,クレジ ット契約の法的性質は,販売代金相当額をあっせ ん業者が販売業者に支払うことを委託するとい う,準委任説が適合的である(46)

そして,対外的効力,一人に対して生じた事由,

対内的効力について検討からすると,消費者があ っせん業者に免責的債務引受を委託すると考える べきである(47)

対外的効力について。販売業者が,代金の支払 請求をするのが許されるのはあっせん業者だけで あることをどのように説明するかについて,免責 的債務引受であれば,消費者の代金支払債務は,

免除されている。そして,抗弁権の接続について も,債務引受であれば,債務に付属した抗弁権は 債権者に主張できるとされている。

一人に対して生じた事由について。例えば,消

(10)

費者が販売業者から債務を免除されたとしても,

免責的債務引受であれば問題とならない。それに 対し,履行引受であれば,消費者が善管注意義務 違反を問われかねない。また,重畳的債務引受の 場合であれば,あっせん業者の債務も全部免れる こととなる。

対内的効力について。あっせん業者の消費者に 対する立替払金の支払い請求権は,民法650条1 項の費用償還請求権として理解される。そして,

販売契約の効力が否定された場合は,費用償還請 求権は発生しないので,抗弁権の接続が認められ る。

3 第三者のためにする契約説(48)

クレジット取引を第三者のためにする契約(民 法537条)と考える。消費者は,後払いをする目 的でクレジットカードを利用しており,割賦販売 法上の諸類型に該当するかどうかということにつ いては考えていない。そして,あっせん業者と販 売業者に「立替払いをすることによって,資金関 係を見ることができる」(49)。さらに,クレジット カードの発行元が,デパート等の場合,消費者と しては,デパート等の販売業者が与信をしてくれ たものと思い,第三者が与信をしたものであると は考えない(50)。よって,クレジット取引は,販 売業者を要約者,消費者を諾約者,あっせん業者 を受益者とする第三者のためにする契約であると 解するべきである。

ここで,クレジット取引が,民法上の規定によ り,すなわち,第三者のためにする契約(民法 537条)で解決できるのであることにはメリット があり,それは,もし,クレジット取引が割賦販 売法の規制を受けないクレジット取引であるとし ても,抗弁権を接続させることができる(51)

なお,小池邦吉弁護士は,クレジット取引全般 について第三者のためにする契約で構成するので はなく,消費者から見て,代金の後払いとみるこ とができるクレジット取引に限り,第三者のため にする契約と構成するべきとされる。よって,消 費者から見て,金銭消費貸借契約を銀行と締結し ていることが明らかであるような場合は,販売契 約と金銭消費貸借契約は別契約であり,販売契約

に生じた抗弁は,金銭消費貸借契約には接続され ないとされる。

4 第三者のためにする契約+債権譲渡説(52)

第三者のためにする契約について,債務者同士 がイニシアチブをとって三者間の法律関係を規律 するものであるとの認識のもとで債権譲渡につい て以下のように考える(53)。旧債務者を要約者,

新債務者を諾約者,新債権者を受益者とし,旧債 権者と債務者との間で債権の譲渡契約をし,新債 権者は,受益の意思表示をすることにより,債務 者に対する債権を自己に帰属させることができ る。

これを,クレジット契約に当てはめると,販売 業者が要約者,消費者が諾約者,債権者が受益者 とし,販売契約により生じる販売業者の消費者に 対する代金債権をあっせん業者に譲渡することに なる。このようにクレジット契約を第三者のため にする契約と解することにより,民法上の規定

(民法539条)により,抗弁権の接続を説明できる。

5 独立契約説(54)

クレジット契約は,独立した新たな契約類型と 考えるべきである。クレジット契約は,ローマ法 の時代から契約法の中に登場しなかったものであ り,新たに生じた法律問題にたいして適切に対応 するためには,伝統的な契約観にとらわれない

「思い切った発想の転換」が必要である(55)。例え ば,不動産売買契約,請負契約,サービス供給契 約においても,完全な給付がされることを前提に 融資を受けるのであるから,給付が未提供,不完 全な場合には,立替払金の支払い拒絶ができるの であり,商品の売買契約においても同様に考えら れる(56)。また,一つの契約と考える方が消費者 の意識と合致する(57)

ⅳ 検討

1)判例・学説の分析

以上,判例と学説についてみてきたが,それぞ れについて,検討してみたい。

判例の枠組みについて。判例は,販売契約と立 替払契約は別当事者の別契約であり,当事者の異 なる別個の契約については,互いに影響を及ぼさ

(11)

ないので,販売業者とあっせん業者が同一の当事 者と評価できる場合にのみ,販売契約に生じた事 由は立替払契約に影響を及ぼすと考えているよう である。しかし,判例の基準によると三当事者間 のクレジット取引においては,妥当するとしても,

四当事者以上のクレジット取引については,妥当 しないという問題点がある。販売契約と立替払契 約の経済的な関連性は認めながら,その契約相互 の関係(販売契約が立替払契約の内容となってい ないかどうか)について検討していない点には疑 問が残る。もっとも,判例は,個別信用購入あっ せんについて事例に関する判断であるので,判例 の判断枠組みは,個別信用購入あっせんのみに妥 当すると考えることもできる。

経済的一体性のみを法的評価の基礎とする見解 について。経済的一体性という事実があるとして も,それを,法的評価においても一体化させると いう結論を導くのは,当事者が,選択した契約形 式を組み換えるのと同様,契約自由の原則に反す るのではないか。また,提携関係から,経済的一 体性について法的に評価したとしても,なぜ,提 携関係により得られる「共同の利益」が立替払契 約と販売契約とを接合するのかかが不明である。

経済的一体性+経済的優位性を法的評価の基礎 とする見解については,経済的に優位に立ってい ることをもって,販売契約と立替払契約を一体化 させるとしても,それだけで,両契約が一体であ ると評価することも疑問が残る。判例に対する批 判と同様,両契約の関係について検討すべきでは ないだろうか。そして,法律構成について,信義 則や権利濫用の禁止,同時履行の抗弁権にその根 拠を求める(58)が,これらの規定によれば,未払 金の支払い拒絶のみしか認め得ないのではないだ ろうか。信義則や権利濫用の禁止によると,あっ せん業者からの未払金の支払請求が信義則に反す るから許されない,または,未払金の支払請求が 権利の濫用にあたり許されないということにな る。よって,信義則や権利濫用禁止によると,既 払金の支払請求は不可能となると考えられる。同 時履行の抗弁権による場合としては,販売業者が 債務を履行しない場合に,販売業者が債務を履行

するまで支払いをしないということになる。この 点については,妥当であると考えられるが,販売 業者が債務を履行しない場合に一般条項(信義則 や権利濫用禁止)によるのではなく契約法上の同 時履行の抗弁権の適用を認めるのであれば,契約 の解除を認めることも肯定されてよいのではない だろうか。

経済的一体性+契約の内容を法的評価の基礎と する見解について。クレジット契約の仕組みから 考えるとこの考え方には説得力がある。しかし,

販売契約と立替払契約を別の契約と構成すると,

両契約の当事者は別である。そうすると,販売契 約に関して,販売業者側の事由により,契約の効 力が否定されるとして,販売業者と別当事者であ るあっせん業者は,本来,責任を負わないはずで ある。それにもかかわらず,あっせん業者にも責 任を負担させるという構成をとるためには,あっ せん業者が,販売業者に関して何らかのコントロ ールを及ぼすことが可能であることが前提として いるのではないか。三当事者間のクレジット契約 においては,あっせん業者による販売業者のコン トロールは導くことができるかもしれないが,四 当事者間以上のクレジット契約においては,コン トロールを期待することは,難しいと考えられる。

そうすると,あっせん業者が,販売業者に対して のコントロールができないような場合,言い換え ると,あっせん業者に帰責性がないような場合で あったとしてもあっせん業者が責任を負うことに ついての正当化が必要となる。

経済的一体性+義務違反を法的評価の基礎とす る見解について。三当事者間のクレジット契約の 場合には,あっせん業者に販売業者を監督させる ことは可能である。しかし,四当事者以上のクレ ジット契約の場合は,あっせん業者に販売業者を 監督させることが難しい場合が生じる。

経済的一体性+契約形式の変更を法的評価の基 礎とする見解について。契約形式を組み換えるこ とにより,民法上の理論において,抗弁権の接続 を説明することが可能になる点は,非常に魅力的 である。しかし,裁判所が,当事者の契約の選択 した契約形式について,それとは別の形式に組み

(12)

替えることを許容することを正当化させるために は,消費者の権利が過度に侵害されている場合に 限るべきであろう。もし,当事者が選択した契約 形式の通りであったとしても,消費者保護を導く ことができるのであれば,その方法によるべきで はないだろうか。

2)クレジット契約についての分析

⑴ クレジット契約の構成

クレジット取引の内容は,以下のように考えら れる。

クレジット取引においては,あっせん業者と販 売業者との加盟店契約,消費者と販売業者との販 売契約,消費者とあっせん業者との立替払契約が それぞれ存在している。

ここで,消費者が,販売契約の代金をその場で 一度に支払うことができるならば,あっせん業者 に立替払をしてもらう必要はない。しかし,その 場で一度に支払うことができないからこそ,あっ せん業者に立替払をしてもらうのである。そうす ると,販売契約の代金支払債務の弁済のために,

あっせん業者に立替払をしてもらっているのであ ると考えられるのである。そして,あっせん業者 と消費者は,販売契約が有効に成立し,履行もさ れると考えて立替払契約を締結していると考えら れる。そうすると,立替払契約の契約内容として,

販売契約が有効に成立すること,履行がなされる ことがその合意内容として取り込まれていると考 えることもできる。

よって,立替払契約は,販売契約の存在を前提 としていると考えるべきであり,以上のように考 えると,経済的一体性+契約の内容が妥当である。

⑵ コーズか? 行為基礎か?

経済的一体性+契約の内容に関しては,二つの 契約を結合させるための理論として,コーズ論(59)

や行為基礎論(60)に依拠するものがある。そこで,

以下において,コーズ論と行為基礎論について簡 単ではあるが考える。

1 コーズ論(61)

コーズとは,契約当事者が契約を締結するに至 った原因である。このコーズは,客観的コーズと 主観的コーズに分けることができる。

客観的コーズとは,その契約において,欠かす ことのできない要素であり,例えば,売買契約に おいては,代金の支払いや,その反対給付である 財物の引渡などがそれにあたる。

主観的コーズとは,当事者が債務を引き受けた 原因であり,例えば,契約を締結する際の動機が それにあたる。

コーズを欠いた場合の効果は,客観的コーズを 欠いた場合は,契約不成立(変質)とされ,主観 的コーズを欠いた場合は,無効とされる。

2 行為基礎論(62)

行為基礎とは,契約締結時に表れる一定の表象 であり,行為意思がその基礎の上に築かれている 前提観念であるとされる。行為基礎も客観的行為 基礎と主観的行為基礎に分けることができる。

客観的行為基礎とは,契約当事者が知っていよ うといまいと,もしその客観的事情が存在しなけ れば,契約の目的,契約当事者の意図は達成され ず,契約継続の存続が,無意味,そして,目的を 失うものであり,等価関係の破壊,契約目的の不 達成がこの類型に属する。

主観的行為基礎とは,契約の両当事者に共通の 前提または期待であり,それに基づいて契約を締 結するにいたったものであり,錯誤,特に共通錯 誤がこの類型に属する。

行為基礎を欠いた場合の効果は,誠実な両当事 者が,その事態を知っていたとすれば,当事者が 合意したであろう効果が導かれ,契約の解消や,

契約の改訂が認められる。

3 検討

以上のようなコーズ論と行為基礎論について,

クレジット取引においてどちらの理論を参考にす るべきか検討してみたい。

実務において,チャージバックの制度(63)を構 築しているが,このチャージバックの性質から考 えると,契約の有効性を承認する必要が考えられ る。そうすると,コーズ論によると,クレジット 取引において,契約の統合をコーズ(客観的コー ズ)により説明しているが(64),客観的コーズが 欠けているとすると,契約は不成立となり,チャ ージバックのような,いわば,合意解除のような

(13)

処理は説明できない。もし,契約が不成立である とすると,そもそもチャージバックなどのような 制度は必要ない。もちろん,実務に合わせるよう な理論を構築する必要はないかもしれない。しか し,実務で行われていることを肯定的に法的評価 することは,有益であると思われる。よって,二 つの契約を結合させるための理論については,行 為基礎論を参考にするべきであると考えられる。

よって,契約結合説によるべきである。

そして,消費者は,販売契約が不成立・無効・

取消し・解除された場合,立替払契約の解除をす ることができると考えられる。そして,立替払契 約が解除された結果の原状回復として,あっせん 業者は,消費者に既払金を返還しなければならな いと解すべきである。

⑶ 問題点

しかし,契約結合説を採用するとしても,上述 のように,あっせん業者が,販売業者に対しての コントロールができないような場合,言い換える と,あっせん業者に帰責性がないような場合であ ったとしてもあっせん業者が責任を負うことにつ いての正当化が必要となるとの問題を解決する必 要がある。

そこで,民法が,どのような場合に人に責任を 負わせているかを分析し,帰責性がないような場 合であったとしても,責任を負うことを正当化で きるかについて考える。すなわち,民法は,どの ような行為により,または,どのような状態が生 じることにより,損害賠償責任という責任を負担 させるのか,契約を解除され,その契約からの利 益を得ることができなくなるのか,意図しない契 約の履行責任を負担しなくてはならないことを,

正当化しているのかについて考える。

3)民法における帰責原理

民法における帰責原理としては,人の行為に着 目して責任を負担させる帰責原理と,利益を得て いることに着目して責任を負担させる帰責原理と があると考えられる。ここでは,人の行為に着目 する帰責原理を「行為者帰責型」と呼び,利益を 得ていることに着目する帰責原理を「受益者帰責 型」と呼ぶこととする。

⑴ 行為者帰責型

人の行為に着目して責任を負担させる行為者帰 責型については,その例として,過失責任原則と 表見法理を挙げることができる。

過失責任原則について。過失責任原則は,「過 失なければ責任なし」とする原則である。つまり,

人は,自由であり,その行動について他から干渉 をされることはない,しかし,他人に損害を与え る場合がある。その場合においても,加害者の行 為に過失がある場合にのみ責任を負う。

この過失責任原則は,不法行為責任だけではな く契約責任についても採用されていると従来説明 されてきたが,契約責任については,近時,過失 責任原則ではなく「契約の拘束力」に帰責原理を 求めるものが多数主張されている(65)

「契約の拘束力」帰責原理を求める考え方によ る場合,債務者が債務不履行責任を負担するのは,

「債務者が契約の目的に沿った履行をしなかった こと」である。よって,債務不履行の帰責原理を

「過失責任原則」ではなく「契約の拘束力」に求 めた場合であったとしても,債務者の債務不履行 という行為に着目して,契約責任を負わせている ということがいえるのであるから,契約責任も行 為者帰責型に分類されることには変わりはない。

ただし,「契約の拘束力」に帰責原理を求める場 合,債務者の故意・過失などの帰責事由を債務不 履行の要件とはならないので,その点については,

受益者帰責型の帰責原理に近づくということもで きる。

表見法理について。表見法理は,真の権利者に 自分以外のものが権利者であるかのような外観が 存在することについて帰責性があるときは,その 外観を正当に信頼した第三者は保護されるとする 原理である。表見法理においては,真の権利者が,

虚偽の外観を放置した,という点に帰責原理を求 め,その契約責任(履行責任)を負担することを 説明する。よって,この表見法理についても行為 者帰責型に分類することができる。

⑵ 受益者帰責型

利益を得ていることに着目する帰責原理につい ては,民法534条1項を正当化するための利益帰

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