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ポルフィリン代謝

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Academic year: 2021

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1. ヘムとポルフィリンとは

4個のピロールが4個のメチン橋(-C=)により閉環した構造をポルフィンという。

ポルフィリンは、側鎖に結合したメチル、ビニル、プロピルなどの配列により多数の 異性体が存在する。

ヘムは、プロトポルフィリンIXの二価鉄錯体を指す。

ポルフィリンの構造

環状テトラピロールで、4つの ピロール環がメチレン橋(-C-)

で環状につながったものをポル フィリノーゲン、酸化されメテニ ル橋(-C=)となったものをポル フィリンンという。ポルフィリン 環の水素が様々な側鎖に置換さ れており、側鎖の種類と並び方 で名称が決まる。

側鎖が2種類のものは4通り の異性体があり、対称配置を

Ⅰ型、1カ所だけ配置が逆の ものをⅢ型という。

ヘムタンパク質

ヘムは、様々なヘムタンパク質の補欠分子族である。

酸素と運搬と貯蔵:ヘモグロビンとミオグロビン

電子伝達:シトクロムC、シトクロムb560など。

酸化還元酵素:シトクロムP450、カタラーゼ、一酸化窒素合成酵素ほか多数。

ポルフィリン代謝と病気

ヘムの構成成分として鉄代謝と密接に関わる。

ポルフィリン合成の異常はポルフィリン症(まれな遺伝性疾患)の原因となる。

ヘムは分解されビリルビンを生ずる。血中ビリルビンの増加で黄疸になる。

生物化学3(11月16日)

ポルフィリン代謝

1. ポルフィリンンの生合成

肝臓と赤芽球で合成される。

5-アミノレブリン酸合成酵素(EC:2.3.1.37)

ポルフィリン合成の律速酵素で、ミトコンドリアマトリックスに局在する。

ピリドキサルリン酸を補酵素としてスクシニルCoAとグリシンから5-アミノレブリン酸 を合成する転移反応を触媒する。

赤芽球型と非特異型があり、赤芽球型は5ʼ非翻訳領域の鉄応答エレメントによる翻訳調 節を受ける。非特異型は主に肝臓に発現しヘムによるネガティブフィードバックを受け ることでヘム合成の中間体の過剰蓄積を防いでいる。

伴性遺伝性鉄芽球性貧血の原因遺伝子。

ポルフォビリノーゲンシンターゼ(EC:4.2.1.24)

細胞質に運び出された2分子の5-ALAを縮合する。亜鉛を含み鉛で阻害されるため、鉛 中毒で5-アミノレブリン酸の尿中排泄が増加する。

ポルフォビリノゲンデアミナーゼ(EC:4.3.1.8)

ポルフォビリノーゲン4分子を結合させヒドロキシメチルビランを生ずる。非酵素的に 閉環すると対称配置の1型ポルフィリンンを生ずるため、ウロポルフィリノーゲンIシ ンターゼ(別名)とも呼ばれる。急性間歇性ポルフィリン症の原因遺伝子。

ウロポルフィリノーゲンシンターゼ(EC:4.2.1.75)

ヒドロキシメチルびらんを非対称なⅢ型ポルフィリノーゲンとして閉環する。ウロポル フィリノーゲンⅢは水溶性である。(先天性骨髄性ポルフィリン症の原因)

ウロポルフィリノーゲンデカルボキシラーゼ(EC:4.1.1.37)

酢酸基から二酸化炭素を外しメチル基とする。コプロポルフィリノーゲンⅢはミトコン ドリアに入る。水溶性が低下し、糞便中に排泄される。

コプロポルフィリノーゲンオキシダーゼ(EC:1.3.3.3)

プロピオン酸基を酸化的に脱炭酸してビニル基とする。

プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ(EC:1.3.3.4)

脱水素によりポルフィリン環を生じる フェロキラターゼ(EC:4.99.1.1)

ミトコンドリア内膜に局在する。2価鉄イオンと錯体を作りヘムが完成する。一酸化窒 素により強力に阻害される。

ポルフィリンの名称

ウロ・・:側鎖がプロピオン酸基と酢酸基4つずつ。(水溶性)

コプロ・・:側鎖がメチルとプロピル4つずつ。

プロト・・:側鎖がメチル4つとビニル、プロピオン酸基2つずつ

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(2)

ヘム合成の調節

肝臓:5-アミノレブリン酸合成酵素がヘムによ るネガティブフィードバックを受ける。

赤芽球:ヘムにより抑制されず、5-アミノレブ リン酸合成酵素の転写と翻訳、およびフェロキ ラターゼによる鉄の取り込みが律速となる。

ポルフィリン合成の異常(ポルフィリン症)

ポルフィリン合成経路の酵素欠損によりヘムが不足し、合成中間体が蓄積する。多くは 常染色体優性遺伝となる。肝性と骨髄性に区別される

肝性ポルフィリン症:神経症状が急性発症する。肝臓由来のALA, PBGが増加

薬物の摂取で肝臓シトクロムP450の誘導が起こりヘムを消費するとアミノレブリン 酸合成酵素の抑制が外れ、ポルフィリンン代謝の中間体が急増し発作を誘発する。

骨髄性ポルフィリン症:赤芽球由来のポルフィリンン類による皮膚症状が主。光線過敏 症(皮膚症状)は合成経路の後半に異常がある場合にみられる。

光線の曝露により蓄積したポルフィリンン類が励起され、分子状酸素と反応し酸素ラ ジカルを生じ、細胞障害による皮膚症状をもたらす。

急性間欠性ポルフィリン症

ポルホビリノゲンデアミナーゼ欠損(常染色体優性) 

発作時に大量のALAとPBGを尿中に排泄する。急性の腹部症状と精神神経障害。腹部症 状は炎症によらないため圧痛無く白血球の増多認めない。神経症状として不安感、不 眠、抑鬱、見当識障害、幻覚、麻痺、筋力低下、てんかん発作など多様。抗けいれん剤 は発作を増悪する。(肝性)

先天性骨髄性ポルフィリン症

ウロポルフィリノゲンIIIシンターゼ活性低下(常染色体劣性遺伝)

ウロポルフィリノゲンIとコプロポルフィリノゲンIが蓄積することによる赤い尿。重篤な 光線過敏症による皮膚の潰瘍、多毛。溶血性貧血による巨脾症。治療は摘脾をおこな う。また、鉄の過剰負荷に注意しながら輸血する。

鉄芽球性貧血 Sideroblastic anemia

赤血球型5-アミノレブリン酸合成酵素の活性低下によるヘム合成障害。 無効造血がみら れる。

低色素性、小球性貧血。しかし血清鉄は高値。骨髄塗抹標本の鉄染色によりringed  sideroblast (環状鉄芽球)を多数認める。

原因:鉛中毒・ビタミンB6欠乏・白血病、関節リュウマチに続発。クロラムフェニコー ル、INHAなど薬物性のものに加えて、伴性劣性遺伝形式を示す5-アミノレブリン酸合 成酵素欠損が知られている。

2. ヘムの異化と病気 概要

老化赤血球の破壊やヘムタンパク質の分解、無効造血により脾臓の網内系で数百ミリグ ラムのヘムがビリルビンに変換される。一日あたり約300ミリグラムのビリルビンが生 ずる。

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スクシニル CoA

酢酸基:A(左)

プロピオン酸基:P(右)

グリシン

5- アミノレブリン酸(2分子が縮合)

5- アミノレブリン酸合成酵素

ヒドロキシメチルビラン

CoASH + CO2

H2O

NH3

ポルフォビリノーゲンシンターゼ

ポルフォビリノーゲンデアミナーゼ

H2O ウロポルフィリノーゲン シンターゼ

ウロポルフィリノーゲンⅢ ウロポルフィリノーゲンⅠ 非酵素的に閉環 ポルフォビリノーゲン

(3)

ビリルビンはアルブミンと結合し、肝臓に運ばれグルクロン酸抱合を受けたのちに胆汁 中に分泌される。

UDPグルクロン酸はUDPグルコースデヒドロゲナーゼにより生ずる。

腸内細菌の酵素(βグルクロニダーゼ)により脱抱合を受けビリルビンに戻る。

腸内細菌により還元され、ウロビリノーゲンとなる。

そのまま糞便中に排泄される。(さらに還元され赤褐色のステルコビリンとなる)

一部はウロビリノーゲンとして小腸で再吸収され、門脈から肝臓に戻るか、体循環から 尿中に出る。腎臓で酸化されウロビリン(黄色)となる。(腸肝循環という)

高ビリルビン血症

血液中のビリルビン濃度が1mg/dLを越えたものを高ビリルビン血症という。2mg/dL を越えると肉眼的な黄染(黄疸)を認める。

成因から、肝前性(ビリルビンの生産量の増加)、肝性(ビリルビン処理能力の低 下、排泄能の低下)、肝後性(胆道系の通過障害)に分類される。

肝前性黄疸

溶血性貧血、無効造血により、大量のヘモグロビンが破壊され、肝臓の処理能力を超え る。非抱合型ビリルビンが増加する。脾腫が見られることがある。

赤血球膜の異常(遺伝性球状赤血球症; HS)、糖代謝酵素の異常(G6-PDH, PK)、

免疫学的機序(血液型不適合輸血、薬剤によるもの)、多血症、新生児生理的黄疸な ど。

肝性黄疸

肝臓の抱合能が低下すると、非抱合型ビリルビンが増加する。

肝不全(肝炎、肝硬変により抱合能が不足する)

抱合酵素の異常(Crigler Najjar症候群; 抱合酵素欠損)

排泄能の異常が原因の場合、抱合型ビリルビンが増加する。

急性肝炎(胆汁うっ滞による排泄能低下)

Roter症候群、Dubin-Johnson症候群(いずれも排泄の異常で抱合型ビリルビンが増 加する)

肝後性黄疸

腫瘍(膵臓、胆嚢などの腫瘍)、胆石、先天性胆道閉鎖による胆汁の通過障害で抱合型 ビリルビンが増加する。

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参照

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