卒業論文発表会
1月29日, 2009, 福井大学工学部物理工学科
原子核の対相関
〜副殻中での厳密解・近似解・数値解〜
物理工学科 中根健佑
はじめに
原子核における対相関
互いに時間反転の関係にある単一粒子状態の 2つの核子間に働く引力によって起こる相関
陽子の個数:Z、中性子の個数:N、質量数:A = Z + N
結合エネルギーにおける微視的項:Bmicro(Z, N)とすると、
Bmicro(Z, N) = Bpair(Z, N) + Bshell(Z, N) Bpair(Z, N):対相関エネルギー
Bpair(Z, N) =
+∆(Z, N) (Z=偶数、N=偶数 [ 偶々核])
0 (Z=偶数、N=奇数 or Z=奇数、N=偶数 [ 奇核])
−∆(Z, N) (Z=奇数、N=奇数 [ 奇々核])
Bshell(Z, N):殻エネルギー(Eshell)のマイナス倍
原子核の独立粒子モデル
ポテンシャル中を個々の核子が独立に運動
(Mayer,Jensenによって1949年に確立)
それぞれの核子には図のようなポテンシャルと スピン・軌道結合ポテンシャルの和が働く
スピン・軌道結合ポテンシャルは
軌道角運動量~l、固有スピン~sの 内積~l ·~sに比例
このポテンシャルの井戸の中につかまえられて 運動している核子はある決まったエネルギーをもつ
⇒単一粒子準位
原子核の独立粒子モデル 魔法数
極めて安定な原子核になる特定の陽子数 および中性子数、右図の丸で囲まれた数 陽子数・中性子数が魔法数のとき
殻エネルギー:Eshellは極小 単一粒子準位は
• 動径波動関数のもつノード の個数
• 軌道角運動量量子数
• 全角運動量量子数 で指定される
パリティは軌道角運動量量子数が 偶数のとき正、奇数のとき負
ハミルト ニアンの第二量子化表示
Hˆ = − ~2 2m
∑N
i=1
∇2i +
∑N
i=1
U (→−ri ) +
∑N
i>j
V (→−ri − −→rj )
=
∑j
m=−j
jaˆ†maˆm − G
∑j
m=12
∑j
m0=12
aˆ†maˆ†−maˆ−m0aˆm0
m :磁気量子数、2j + 1個の値をとる (m = −j,−j + 1,−12,· · ·, 12, j − 1, j) j :副殻のエネルギー準位
副殻は球形では2j + 1重に縮退
aˆ†m:磁気量子数mの軌道に核子を1個作る演算子 aˆm:磁気量子数mの軌道から核子を1個消す演算子
−G:相互作用の強さ
m
-m’ m’
-m
-G
ハミルト ニアンの特徴
Aˆ† =
∑j
m=12
aˆ†maˆ†−
mは J = 0に組んだ対を生成する演算子
(J :2核子の全角運動量)
Hˆ =
∑j
m=−j
jaˆ†maˆm − GAˆ†Aˆ
J = 0対にだけ働く相互作用
⇒基底状態は J = 0の対が凝縮した状態になるのでスピンがゼロになる!
セニオリティ
対を組んでいない核子の数
J = 0対を生成する演算子 Aˆ† =
∑j
m=12
aˆ†maˆ†−
m
J , 0対を生成する演算子 Bˆ†(2)
i (i = 1, · · · , d2 − 1)
どの2個も J = 0に組んでいない4粒子を 生成する演算子
Bˆ†(4)
i (i = 1, · · · , d4 − d2)
表:粒子数N = 4までにおける セニオリティsと粒子状態
N s state(s) 2 0 Aˆ†|0i 2 2 Bˆ†(2)
i |0i 3 1 Aˆ†aˆ†m|0i 3 3 Bˆ†(3)
i |0i 4 0 (
Aˆ†)2
|0i 4 2 Aˆ†Bˆ†(2)
i |0i 4 4 Bˆ†(4)
i |0i
エネルギー固有値
ENs = −G
4 (N − s) (2Ω + 2 − N − s) (Ω = j+21)
エネルギー準位の間隔は
EN
s+2 − ENs = G (Ω − s)
Nが偶数の核
基底状態 s = 0(→核スピン= 0) 第一励起状態 s = 2
⇒エネルギーギャップはGΩ
Nが奇数の核 基底状態 s = 1
第一励起状態 s = 3
⇒エネルギーギャップはG(Ω − 1)
大きい殻における少数粒子の極限の場合、エネルギーの近似式は ENs = −G
2(N − s)Ω
⇒sが2増す(J = 0対が 1対壊れる)度にエネルギーが GΩ増える
Hˆ の固有状態と固有値
0
-8 -12 -16
-24
N= 1 2 3 4 5 6 7
(1,1) (2,2) (3,3) (4,4) (5,3) (6,2) (7,1)
(2,0)
(3,1)
(4,2)
(5,1)
(6,0)
(4,0) 4E/G
[MeV]
図:j = 72 殻におけるセニオリティでラベルしたスペクト ル
Ω = j+21、j = 72 ⇒ Ω = 4 ⇒
ENs = −G
4(N − s)(10 − N − s)
数値解
副殻の縮退がとれた場合
Hˆ =
∑j
m=−j
jmaˆ†maˆm − G
∑j
m=12
∑j
m0=12
aˆ†maˆ†−
maˆ−m0aˆm0
下記の2つの場合について、数値的対角化により固有値を求めた 1.四重極変形( 回転楕円体形)
jm = Q{3m2 − j (j + 1)} (Q:強度)
2.回転
jm = −ωm (ω:角速度)
(Hˆ → Hˆ0 − ωjz,ωjz:z軸方向の角運動量)
四重極変形
0 5 10 15 20 25 30 35 40
0 5 10 15 20
excitation energy[MeV]
eigenstates Q=0.0
Q=0.2 Q=0.4 Q=0.6 Q=0.8 Q=1.0
四重極変形
0 2 4 6 8 10 12 14
0 0.5 1 1.5 2
excitation energy[MeV]
eigenstates Q=0.0
Q=0.2 Q=0.4 Q=0.6 Q=0.8 Q=1.0
回転
0 1 2 3 4 5
0 5 10 15 20
excitation energy[MeV]
eigenstates
Omega=0.0 Omega=0.2 Omega=0.4 Omega=0.6 Omega=0.8 Omega=1.0
回転
0 1 2 3 4 5
0 0.5 1 1.5 2
excitation energy[MeV]
eigenstates Omega=0.0
Omega=0.2 Omega=0.4 Omega=0.6 Omega=0.8 Omega=1.0
まとめ
• 縮退した副核中のペアリングハミルト ニアンの解析的厳密解について説明した
角運動量0に組まない核子の個数という意味をもつセニオリティ量子数で状態はラベルされる
• 副殻の縮退がとれた2つの場合の数値解を求めた
♣ 四重極変形の場合は、(m, −m)対の縮退が保たれるので対相関は壊れにくく、エ ネルギーギャップも失われにくい
♣ 回転の場合は、時間反転対称性の破れにより対相関が壊れやすく、エネルギー ギャップは減少する
• 解析的近似解としてはBCS解がある