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社会で労働をどう教えるか

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

社会で労働をどう教えるか

著者 奥西 一夫

雑誌名 奈良学芸大学教育研究所紀要

巻 1

ページ 24‑35

発行年 1965‑03‑30

URL http://hdl.handle.net/10105/6097

(2)

社会で労働をどう教えるか

奥  西  一  夫

I 現代社会の科学的認識

 「社会科は、科単的な社会認識を培う教科」であるから、現代社会に生活するものとして、

「現代の課題に立ち向かうような主体的な人間に内部成長させることを目ざす」と考えてよい。

そして入間的な目ざめが、単なる学間の系統を子どもの次元におろして、薄めた学習をするとい 一うのでなく、子どもの生離見案の上で自分の課題として切実な実感をもつように体得させねばな

らないも.のである。

 奈良地歴教(本県にある畢主的な民間教育団体であり)に参加している付小の社会科部会でも、

1963年の秋から、共同研究のテーマをもって学習会を続けてきた。わたしたちは、・この会合の 統一目標として、「科学的認識は大切だというが、社会科学的認識の基太的概念は何か、小串学 校を通す9か年間に与えねばならないものは何か、」の分析する作業をもとうとしてきた。(

(「地理歴受教室」κ19 奈良県地理歴史教育研究会機関誌1964・11)

 そして、先ず研究の基になる立場として、

 ω 指導要領にいわれている「人と人との相互関係」「自然や環境との密接な関係」(目標4)

 を強調していることに野間をもったのである。

  社会に営まれている人間生活や、家庭、町そのもの、生産そのもの、自然環境そのものをよ  く見きわめようとさせることがない。

 121社会生活の串にあるいろいろの種類の「相互依存の関係を理解させる」(目標2).という  態度にひっかからざるをえなかった。

  相互依存ということばが批判をうけたことを考慮してか、指導要領は「椙互の関連とまとめ  ている。しかし、相互の騨係の中に当然含まれねばならない矛盾対立の関係には、つとめて目  を向けまいとしているようである。

 13〕「歴史の進歩は、先人の努力や苦心、協力や願いこよって人々の生活は次第に便利になっ

 てきれだからそれを尊重し、感謝し、今後の発展に尽す心構えを養う」O指導要領目標3年

 の{3し4年の13j14の5)という便利史観に立っていることへの疑問である。民衆が歴史を発展

 させてきたという認識の欠けていること、民衆が自己を解放する過程としての歴史は決して坦

 々としたものではなかった。民衆の労働と生産が歴史の根源であり、民衆は自己の生活を維持

       一24一

(3)

 し向上させるねがいをもち、それを阻むものへの抵抗があったはずである。いく度も断圧にす  る挫折と後退と敗北を喫しながら大きく前進してきた発展として捉えられない弱さを、指導要  領はもっている・(木村博一、前掲誌の論文)

以上長々と要約引用してご紹介したが、わたしたちが、理行の指導要領が科学的な認識を目ざし ていないことを指摘するためであった。

 わたしたちの目あては、疑問としてあげた上の3点に.つき、学習内容の系統化のために共同研 究をし、木村博二氏の指導を受けながら進めてきた。そして、「生産と労働の認識」「国家と権 力の認識」「人権と国民生活の認識」の三太の柱を見立てその一部である「生産と労働」の分野 でどのような内容をぜひ置かねばならないかを考えすでに2回の発表会をもってきた。(最近の 前掲論文ではもう一一太r社会発展の認識」を設けるべきではないか(米村)といっている。

 そこで、小学校申掌校を一貫した見とおしのもとに、義務教育の金期間に到達すべき諸概念を、

どこまでつかませねぱならないか、一 予想し、そこから順次下へおろしてくる方法をとろうとい うことにした。

 「生産と労働」の分野では、生産と労働、自然、技術、農業、工業、資本主義、社会主義をあ げ、それぞれの到達点をきめれ

 「国家権力」の分野、「人権と国民生活」の分野にも基太的な概念を一応立てる作業までいっ たが、まだ内容が整理されるところまで進んでいない。

 社会科が「相互の連関」だけを強調し、社会発展の姿への一定の展望をもたず、指導要領の学 年的順序というわくに束縛されているばかりであることや、根太的に社会を見直そうと一しない清健 から脱部しなければならない切素なねがいをもっている。上述の作業はまだ歩出したばかりあり二 不十分なものである。それはまた実践によって検証されるぺ一 ォ仮謝こすぎない。付属小学校と付 属中掌校において(また地歴教のメンバーである会員有志の現場においても)この別表にかかげ

た内容が、社会科学的に正しく、一 オかも教育科学的に①順次性をふまえながら、②真実性を追求 して③子どもにふさわしい具体性をそなえたものにしていきたいと考えている。

       皿 なぜ労働をだいじにするか

 生産と労働が、社会認識の基本的な認識であるからというばかりではない。資本主義について

の正しい認識をもたせることがきわめて重要であると思われるにもかかわらずどうもむずかしい

のである。その(資本主義についての理解の)困難点をどう克服していけばよいかが長い間の問

題点であった。そこで、生産と労働の認識の系統化を、資本主義の理解という角度から追求しよ

うとしたのである。それは資本主義体翻下の生産と労働を正しく認識させるために、どのような

       一25一

(4)

系統が考えられるかという設定を試みたのである。

 そうして、小学校では「農業」と「工業」の学習に分け、中学校では、地理・歴.寒・政経杜に 分けておこない、これを資本主義理解の線にもっていくのである。

 わたしたちが労働に重点をかけるとき、次の2つの視点から考えていこうとする。

 第1「労働こそ本来もっとも入間的な誇りと権威にみちたものであること。第2にこのような 入間的太質の発現である労働が、現在おかれている「疎外」の事実である。人間を入間たらしめ

るものこそ労働である。」(藁洲一二「国民教育論序説」1960)ゆえに労働の尊重という二と が、労働者以外の者からいわれることを期待してはならない。労働者自身が、労働の尊厳を自覚 するのでなければ「疎外」の克服も起こりうぺくもない。

 次の段階で、資太主義の成立の歴史的役割を知り、資本主義の構造と矛盾を明らかにする必要 がある。資本主義の発展によって生活力絢上し、社会が進歩したというキレイごとの断定を反省 するために、資本主義の中に築たしてきた労働者の存在を具体的に究明すべきである。

① 人間が労働することによってものを作り出してきたのであり、さらに自然にはたらきかけ自 然を改造していくのである。資本主義が発達したために世の申が進歩したというよりも、賢太主 義下に雇用された労働着の手によって作り出されたものが人間の生活を豊かにしてきたのである ことをとらえねぱならない。(文化の進展が、天才の発明によってなしとげられたと考えること ク)一面的な誤りが指摘される。)

 個人の労働が、鰯入のカの及ぶ範囲内でかんたんなものを素朴な形に作り出すことはできよう が、人間が協働によって集団的入間となるときには個人の力量の合言十よりも多くの生産力の獲得

してきたのであった。集団としσ)協働が個人の制隈を脱却して、無限のひろがりをもつようにな りつつある。これは一工場内での分業以上に、労働の社会性、集団的生産の発展であることが大 きな力を発揮するからであ私

 「日太の現代の社会機構の中で、労働者である人間は、歴史を動かしてきたものとしての誇り

と喜びに満ちた存在であるだろうか」(長洲 前掲書)資本主義こそ近代において人聞の労働力

を(集団的労働力を)そして文明を飛躍帥こ発展させてきたことを認めねばならない。資本主義

は分業を発展させ、機械をうみ出した。ぱらぱらであった市場を統一し、国内から国際的な広が

りへと拡大してきた相い手であった。しかし、資本主義は入間の労働をどのようなものとして駆

使してきたかを想起することも大切なことであろう。労働力が商品として欝本家の手に買いとら

れ、賢太家の支酉己の下におかれて集団的労働が可能となったのである。どれほど労働者が働きた

いとねがっても、資本家に買ってもらわない限り労働もできず、協働もできないのである。こう

して労働春は資本家の支酉己下に進んで績み入れられようと努力する。このようなときに犬資本家

       一26一

(5)

は、思いのままに労働着を私有することができたのである。

 要するに、大量の集団労働着をもち、私的に文配し、その生産の成果を集中するところに資本 主義の本貿があるといえ乱

② このような状 況のもとで、労働者は、彼らが産み出した富から資本家のために利潤を生み、

さらに自己を支配する資本家をも作り出している。労働者による生産物(労働の成果)は、労働 者のものとならず資本家のものとなっている。労働着が肉体を提供して生活のために収入を得よ うとして働くほど、資太家への従属が大きくな1)一 A資太への奉仕が広まる。

 どんなりっぱな労働でも賢太の目的に合わなければ価値がないとされ、最大の利潤をうみ出す ものは。どんな低劣な労働でも資本に喜ばれる。そのような職場は労働の喜びを味わうどころか、

苦痛の感じを与えるものであろう。

 「互いに協力して物を作り出してくれている」というとらえ方の誤りが指摘できよう。

③ 労働着がおかれている疎外の状況は、労働集団自体の牽にもある。少しでも有利な地位を獲 得しようと思えば、友人を蹴落とす努力をしなけれぱならなくされている。資本主義体制のおか

れている矛盾と、労働の疎外の実体はこのようなものである。

 ところが学習指導要領は、労働の太質を見ようとしない。全文に「労働」ということばが一つ も使われていたい(「生産その他の諸活動」などといっている)ことは、社会の土台としての労 働を認めようとしない意図が明らかである。指導要領全体に、労働の問題が社会機能の申に解消

されてしまってい私

 「世の串には、生活に必要な物資の生産や、その輸送に従事している人々の活動があり、これ によって自分たちの生活がなり立っていることを理解させ、物資の利用のしかた等についてくふ

うできるようにする」とか、「学校や家庭ばかりでなく、世の南でも多くの人々がそれぞれの仕 事を分担し合っている事実を理解させ、これらの人々に対する協力や感謝の気持を育てる」(2 年の日劇1脚)とある。

 結局、文部省は、「小学校2年で与えた節約と感謝こ通ずる労働の認識を、それ以降の享年で 繰り返すことはあって{)、さらに深めるという教育を放棄している。どのようにして生活に必要 なものを生産しているのか、資太家と労働者の関係はどうなっているのか、また労働によって生 活がなりたっているといいながらその賃金」(本多公栄「社会科教育」κ2 明治図書1964)

についてはふれていない。

 わたしたちが、現代の子どもに一番教えねぱなら帥 のは、資本主義社会に狗ける「生産と労 働」であろう。指導要領や教科書に忠実であれば、ほんとうの労働は教えないにひとしい。教え

ないどころか、わずかに教える部分の「節約と感謝」なのだから、ストライキをやるなど教える

      一27一

(6)

のはもってのほかということになる。

 以上、労働をなぜ璽祝するかについてのぺたが、別表のr労働」がどのように教材化していく のかにふれねばならない。

 小学校高。学年では、5年「日本の工業」6年歴史の「近現代史」でとり上げ、中学年では、

4年「各地のくらし」で扱い、「工場の多い町一」(尼崎、川崎)「炭鉱の田] 」(三池)を予定し ている。低学年では、2年「工場ではたらく人々」を用意する。

○近来「生産と労働」の認識を主軸にして社会科を再編成(自主編成)しようとの意見が高まっ ているが、わたしたちは高学年でも、農業・工業・地理・歴史を教える申で、現代資本主義にお ける「生産と労働」のまどから傾斜をかけた扱いをやっていこうと考えている。この見解は、

「現在の栓会科教育のありカに根本的な変更を加えるようなやり方は、有効性をもたないという 判断からの酉己慮」(木村、前掲誌)にも一致するものである。

 小学校社会科〔工業〕の学習内容

低  掌   年 串  学   年 高   学   年

・工場では、いろいろだいじ ・工場では、機械を使っても ・工業には、いろいろの種類 工 なものがつくられる。(お のをつくる。(職業に対比 がある。(軽工業、重工業、

業 うちのしごとにつないで。 させる) 化学工業など)

の 見学は単純な工程) ・一 ツの工場では。同じ種類 ・工業が発展すると、直接く

意 のものがつくられる。(職 らしに必要なもののほか、

業に対比させる)

味 鉄や機械をつくる工業やエ

ネルギー産業がだいじにな

る。

・工場には、やとう人とやと ・工場や機械や原料は、やと 大きな工場は会社が経営し われる人がある。(見学〕 い主のものであ私 ている。一金持がおかね

資 ・工場のもち主は、人をやと を出しあってもとでをつく

って働かせ、できたものを る。

売ってもうけてい乱 ・工場は、もうけをめあてに

太 競争で生産している。(遇

剰生産、利潤追求)一つ

ぷれる工場もある。

・工場ではたらく人は、ちん 一工場で働く人は。やとわれ ・働きたくてもやめさせられ ぎんをもらってくらしてい てしごとをしている。(賃 る人や、やとってもらえな

る。 労働) い人がいる。(失業. ・)

一28一

(7)

低   掌   年 申   学   年 高  掌  年

・はたらく時間や休みの目が ・働く人の賃金には、ちがい ・オートメ化にともない、機 きめられている。(おうち がある。 械にせきたてられてしごと のしごととかかわらせて〕 ・工場では、大ぜいの働く人 をしたり、人手がいらなく

労 がしごとを分けもって働い なったりする。

ている。 工場の大小によりて働く条 件がちがう。

・働く条件をよくするために

働 ぽ、働く人は団結する。

(労働三法、労鰯組合、労 働運動〕

・工場には、大ぜいの人が働 ・工場には、大きい工場と小 ・わが国では、大工場と串小 いている工場と{ずく衣い さい工場がある。(見学を 工場のへだたりが大きい。

人で働いている工場があ谷 通して、たてもの、従業員 (二重構造、下うけ)

構 (おうちのしごとをもとに) 機械、その他) ・工業生産の半分以上は、わ ずかな大工場がにぎってい

る。

・わが国の工業は;原料を輸一 入し・製品を輸出してい携

(加工工業、海外市場への 依存)

。国によってさかんな工業の

造 種類がちがい、生産のしく

みにちがいがある。(資本 主義的生産、社会主義的生 産、コンビナート)

〔・工場ができると、まわり

・一

H場は大きい町に集まって ・四大工業地帯のほか・新し 地 のようすがかわる〕 い私(郷土及び日本の代 い工業地が生まれてきてい

理 表的な実例で) る(立地条件・…)

的 ・新しい工業地がふえてきて ・工業地や用水の不足、公害

な いる。(郷土及び日太の代 などの問題がおこ私

内 表的な実例で) ・自然を改造するためには・

容 ・二]二場の害(公害)をうける 工業が大きく役立っている。

入がいる。

・29一

(8)

医   学   年・ 串   学   年 高   学   年

〔・工場には、古くからはじ ・今では、機械を使っている ・機械を使うようになって・

めたものと・新しくでき 工場が多いが、道具を使っ 近代的な大工業が発展して 歴 たものとがある。(おじ ている工場も残ってい私 きた。(産業革紬)

史 いさんのころ、おとうさ ・日本の工業は、明治以銑急

的 んのころ、今j〕 にさかんになり、戦争と共

内 に発展してきた(殖産興業・

容 富国強兵、戦争)

・大きな工場は、・新しい機械 や技術をとり入れてい私

         皿 低学年で労働をどう教・一えたか

題材「工場で働く人々」5時間 2年1組

目標

  1.工場では機械や道具をつかっていろいろなものを作っていることを知らせる。

  2.工軸こ働く人は経誉者にやとわれて賃金をもらっていることをつかませる。

  3、工場で作られた晶は、作った労働者のものでなく、工場の持主のものであることをと    らえさせる。

区画目あて・。工勧こ勤めている州魑の家族につ/て話し合い・工場から月給をも

  らっていることをつかませる。

 (農家のしごとを学習した勘こ、労働については、相当時間をかけてあるが、工場労働着と農 業労働との質的なちがいについてはっきりさせたい。)

 。みなさんのうちの人で、会社や工場へ行っている人、何の工場でどんなしごとをやっている   のがい。ってもらおうか。

 (最初の発間がこれでは、手を上げる着が少ない。学級児童39名で、製造業に従っているの   は5名しかない。教員、会社員、会社役員、公務員、銀行員、旅館、医師などが8割近くを   占めている。)

 。月給とりがたくさんいるんだが、どうやって働いているのかな。と逆についてみた。

 ○働いているからもうかるのです。

 ○社長さんがくれるのです。

 ○うちのおとうさんは先生やけど、学校で月給をもらってくる。

       一30一

(9)

○うちのばパンを造ってるんです。でも月給はもらいません。

。永本さんのところは菓子やパンを作ってるんだね。それはどこへ売るの。

○町の小さいおかしやさんへおろずのです。

○自分のうちで工場をもっている人は、月給をもらわないんだね。

○先生、ぼくとこはね、鉄のバルブなんかこしらえてるのですが、社長やけど月給をもらいま  すよ。

。そうか。奥川くんのは自分の工場をもっていて、もうけの申から社長の月給もとっているの だね。社長はやとっている人にはどうしてるんかな。

0やとっている人に月給をはらいます。(手を上げる着多くなる)

。やとっている人に月給をばら㌔(板書)

社長も目分できめて、自分がもらっているけれど、労働者にはらう月給の方はもうけの一部  から分けて出すんだよ。

○ようけもうけたら月給もたくさん出すの。

○いい質間だ机ようけもうけるには、どうすれぱいいんだ。

  たくさん働いている会珪は、たくさんの物を作り出すので、もうけも大きいだろうかな。

 それでもやっぱりもうけの一部を月給に出すんだよ。

。こんどは、小さな工場と大きい工場のちがいを先生から話すことにしようね。

匡国目あて、汀場には小さ1江場と大き町場があることを知ら狐

○工場で作られるものは労働着のものでないことをとらえさせる。

・き÷うは小さい工場の話を聞いて考えてもらおう札みんたの家の近所でも・堂校へ来る時 の遺ででも工場を見る人があるだろう。

○飛鳥小事校の前に製材所があります。

◎バスで学校へ来るとき、大森町に自動車の工場があります。

○自動率み・たいな作っていませんよ。

.自動車の工場がね。自動車がとうなっているの、その工場は。

○故障したのを修理しているので飢

・それも工場といおうか。工場といってよいかな。

○ハイ。一 H場だと思いま九

〇警察学校のそばにカヤの工場があります。ほくはあんまり知らないけど、朝から晩までミジ  ンの音がなっています。

○カトリック幼稚園の向こうに鉄の工場がありました。

      一31一

(10)

。よく知ってるね。そこはどんなしごとをしているの。

◎夜はね、高いえんとつ(高炉のこと)からまっかな火が出ていて、鉄の音がやか重しいです。

。あれはね、鉄くずをとかしたり、鉄の石をとかして型に流し二んでいるんだ。そうして、ミ  シンやモートルのケースや、・ストープなどをこしらえているのです。

(この話し合いから、工場の種類だけを板書した)

。みんないってくれた工場には、労働着が何人ぐらいいたの。

製材所6〜7人、   かじ屋3人 自動車工場五〇入ぐらい 鉄工場わからない。(20入?)

 。働く人数がわかったけれど、こんな工場は大きい方か小さい工場がな。

 0ふさい方だと思う(児童20人近く挙手)

 0鉄工場は大きいと思う。(一〇入ぐらい)

 。大きいか小さいか何できめたの・

 (工場の大小は、労働者数による見分け方があることを直観的につかんでいるようだ。まだ他 の条件もあり、そうだとわかるヒントは何か〕工場の建物の大きさも見つけられよう。

 (資本金、生産高は2年生には無理である〕

 次の工場見事へ問題点として残すことにした。

 。多勢の労働着が働いている工場なら、もうけは大きいだろうな。(もうけの厳密な概念は今   すぐ確定する必要がない。収益とは売上葛 必要経費などだが、ここでは売上高という意   味に使っておいた。)

 ○そら先生、機械がたくさんあると、人数がたくさんいやんと動かされへんや。

 ○機械がたくさん赤る工場はもうけもごついやろ。

 。そうだろうね。ところで、よくもうかる会社は、働く人の月給も商いやろうか。

 O(鳥井)商いと思う。なんでて、ようけもうかるとこは景気がいいや。

 o(奥川)そんなことない。月給みたいな大体同じぐらいです。

 。みんたどう思う。(賛成意見を出させようとするが、わからないという顔色が多い。)

亟工場群1・・岬・・月・日(金)

 奈良市三条川崎町の山口産業KKに依頼した。2年1組、2組、1・2年複式合わせて100名 を越していた。多人数の見学では効薬はないかと案じつつ強行したが、やはり徹底しにくかった。

 目あて、①機械の数と労動著の人数とくらべて見てくる。②流れしごとがあると、人手はかか

      一32一

(11)

 らないかどうか。③作られた毛布はどこへ行くのだろうか。だれのものになるのか。」を出発  前に確認させておく。

 (工場長や監督の説明してく.れることぱは所々むずかしいので、2年向きにと予め頼んでおい たが、教師はよくメモしておくことが必要である。)

 羊毛、レーヨン、スフなどを原料置場からませてコンベアでおくられるところが、印象づよく うけとめられたようである。紡毛紡績でカード(毛をくしけずってそろえる工程)作りが美しい 川のような流れに見える。

 竹のベルトにのって次々と移動していく。広巾の川の流れのような毛が、縦に細く切断されま きとられる。次は糸巻きにかけられる。ここは機械1台に1人がついている。となりの棟てば、

ミュール機が動いて糸のよりをかけている。機械5台に1人の女子がいる。30会もならんでい るの1こ5〜6人しかいない。その機械は1台が50万円ぐらいときかせてくれた。30台で1舳

円か。

 ジャカード機の室にいくと大きな音でガチャンとやかましい。ゆれているオサの間にヒが左右 にとびこんで布が1ミリぐらいずつ進んで巻きとられる。暗号のような孔あきボードによって、

ヒが調整されて美しい毛布の模様が作られる。1台でI日に20枚織られるという。ユO台ある から、毛布が200枚作られる。

 前年度2年生の見学のときになかったふとん縫い工場もできている。

 集会室兼食堂で質問をさせる。

o「工員さんの月給はいくらぐらいですか。」

 「1日に休み時間はどれほどある似」

 「けがする人はいませんか。」「食堂でごはんを食べたらいくらいるの。」

 工場長の説明とは次元のちがう質間がどんどん出される。時間がなかったので、教師が聞いて 帰ってから話すといって打切払

厘国前のまとめ

。見学してきてとくにめず一らしかったこと、びっくりしたことはないか。

。山口産業は大きいか小さいか。

○男30人、女が70人やから大きいな。

0100人もいたと思われへんな6

0100人ぐらいはいたよ。おふとんをぬっていたコニ場に多勢いた。

○事務室の人もまぜたら1oo人やるな。

・山口産業は奈良では大きい方です。日本全金ではなん千人という大工場もあるけれど、ここ

      一33一

(12)

  のように1OO人ぐらい以下の工場がうんと多いのですよ。

 。労働者のおぱさんやにいさんは、毛布をこしらえてたが、あの毛布をわけてもらって帰るの   かな。

 ○先生そんなことしません撮  ○売るんです。

 。労働者が一枚ずつ売ってもいいじゃないの。

 ○そんな二とできません。工場のものやものね。(そうや、そうやと多数がいう〕

 ○そうだね。あのにいさんたちは毛布をもらうのでなく、月給をもらうんだったね。

 見事の最初η印象では、羊琶のくさい臭いがいやだったというのが多かった・機械のところで いるとものすごいわたぽこりがいやだというのもある。1日申立って働いていた女σ)人はつらい だろうなと感じているのである。それに対して支払われる賃金の問題に目をつける子どもが出か けてきたことはよかった。

 「なぜくさいのか。」r毛のほこりをしずめられないのか。」を働く者の側に立って考えさせ てみようと思う。〔これと似た内容で、前年度の扱いは拙稿「低学年でのしごととくらしの取扱 い」地理歴史教室κ18 1963年)

 豚学年でも高享年でも、この程度のことなら見学に出かけることを「不要である。」という見 解もでてくる傾向が近ごろ多くなっている。しかし「子どもにある認識が形成されていくために は、無駄というものがたくさん必要である。無駄をおぼえた中で忘れ残したものだけが、認識に なるようなぱあいもある。」(上原専緑「国民教育研究」κ3国民教育蕨究所196④という見 解を、わたしはだいじなことだと思っている。

      1V  お  わ  リ  に

 高学年の実践例を1つ、あわせてご検討いただくつもりで計繭したが、紙数も残り少なくなっ たので割愛させていただ㍍

 最近発表したものでは、歴史蟻習の中での近現代の部分に「労働運動」の実践例があり 小学 校6年での扱い方。(「社会科教育」κ2明治図書1964)を報告してあるのでご参照ねがえた

ら幸甚である。

 「労働をどう教えるか」は、わたしがえらんだテーマであるが、付小の社会科部会として1年 半この題材に取り組んでいることである。一

 冒頭に紹介させていただいた木村先生の論文と、毎月1回集まってご指導いただいたものの集

積がこういう形で、私なりのまとめσfったのである。いっしょに勉強してきた奈良地歴教の方々

       一34一

(13)

の助言も多々おりこませていただいたことを付記してお礼中し上げる。

 やむをえずカットした部分は、1965年5月に予定している付小研究発表会の紀要にまとめよ うと考えている。

 諸先生方の御批正を賜わりたい。

一35一

参照

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