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─ 134 ─

あん摩・マッサージは高齢社会の健康増進に貢献できるかについての科学研究

殿山 希

筑波技術大学 保健科学部 保健学科

キーワード:あん摩療法,婦人科がんサバイバー,マッサージ,肥満,健康寿命

筑波技術大学テクノレポート Vol.25 (1) Dec. 2017

1.成果の概要

1.1 婦人科がんサバイバーに対するあん摩療法の身体へ の効果

1.1.1 論文投稿

2012 年に研究プロトコル作成,筑波技術大学医の倫理 委員会承認,試験登録,11 月から2 年の研究期間でラン ダム化比較試験を実施し,その後,解析を行った。その結 果は既に昨年度のテクノレポート報告書に示した [1]。この 結果を昨年度末(平成 28 年 3 月末)に投稿を行い,雑 誌変更・修正を経て,インパクトの高い婦人科腫瘍学の専 門誌(IF=4.2)に 6 月 30日アクセプト,9 月に出版できた。

下に論文を示す。

Donoyama N, Satoh T, Hamano T, Ohkoshi N, Onuki M. Physical effects of Anma therapy (Japanese massage) for gynecologic cancer survivors: a randomized controlled trial. Gynecol Oncol.

2016;142:531-538.

doi: 10.1016/j.ygyno.2016.06.022. [Epub ahead of print]

1.1.2 婦人科がんサバイバーの身体的愁訴の分析 ランダム化 比 較 試 験のデータから,特に,primary endpoint であった visual analogue scale (VAS)で測定 した身体的自覚症状の詳細についてさらに分析を行った。

研究方法:ランダム化比較試験の方法の詳細は上記出版 論文を参照していただきたい。

対象と介入:あん摩群(20 人。1 回 40 分のあん摩施術 を毎週 1 回,8 週継続。初回施術前後と最終回施術前 に測定)。対照群(20 人。研究期間の初日にマッサージ 師と施術を行わないで 40 分おしゃべりをしてその前後に 測定。研究期間の最終日に再び測定)。二群間検定は two-sample t-testを行った。

結果:対象 40 人の主訴は,頸肩こり20 人,下肢症状(痛 み・重だるさ・硬さ・違和感)12 人,腰痛 2 人,頭痛,背 部のはり感,半身の違和感,全身搔痒感,手指のしびれ,

排尿障害が各 1 人であった。二群間比較において,頸肩 こりでは,介入前後(p=0.005)と継続治療前後 (p=0.029) に有意差がみられた。また,下肢症状では,介入前後にお いて両群間に有意差がみられた(p=0.008)。症例数が少 なく統計学的検討は行えなかったが,あん摩群の腰痛,背 部のはり感,半身の違和感,排尿障害にもあん摩直後の VAS 値の低下と継続的低減がみられた。この結果を学会 で発表した。

殿山希.婦人科がんサバイバーの主訴別あん摩療法の効 果:ランダム化比較試験のデータから.大 81 回日本温泉気 候物理医学会学術総会,2016 年5月 15日,渋川市.

1.2 婦人科がんサバイバーに対するあん摩療法の心理・

気分・健康関連 QOL への効果 1.2.1 論文投稿

昨年度に学会発表を終えており,今年度は投稿を行った。

論文出版前であるので詳細の記述は避けるが,著者らの 試験結果は,海外のマッサージ研究の結果と全く同様の結 果であったので投稿はスムーズに行くことと予想していたが,

4 誌からそれぞれの理由でリジェクトされ,現在,5 誌目に投 稿中である。この投稿を通して世界におけるマッサージ研 究の課題を痛感させられた。

1.3 オイルマッサージの肥満に対する効果

軽度肥満の女性9人(年齢56.8±4.0歳BMI 27.7±1.4)

に対して 1 回 40 分のオイルマッサージを毎週 1 回,8 週間 継続して,その期間の前後に測定を行った実験結果の再 解析を行い,論文執筆中である。また,第 82 回日本温泉 気候物理医学会学術集会(2017 年 6 月 24 日)で発表 予定である。

筑波技術大学 紀要

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─ 135 ─ 2.成果の今後における教育研究上の活用及び予想さ

れる効果

がん治療後に出現した愁訴に対して,ランダム化比較試 験という科学性の高い手法であん摩療法の効果を検証し,

婦人科腫瘍学の世界の専門家が読む雑誌に論文を掲載 できたことにより,医師や医療関係者にあん摩療法の効果 をエビデンスをもって示すこととなり,あん摩療法の正しい理 解が促される。さらに研究を重ねて医療ガイドラインに反映 されれば,あん摩マッサージ師の職域の拡大にもつながる。

将来,施術者となる学生にとっても学習意欲が高まり,職業 意識も高まることが予想される。また,患者にとっては,経 験や逸話により選択していたあん摩療法をエビデンスをもっ て選択できるようになる。

筆者の肥満に対するマッサージ研究はまだ始まったばか

りであるが,今回の結果(論文執筆中につき詳細は本稿 には掲載しなかった)は,マッサージは 2 型糖尿病,脂肪肝,

動脈硬化・心血管疾患など肥満に伴う諸疾患の発生を抑 える可能性を示唆するものであった。

高齢・ストレス社会である現在,がんサバイバーやメタボリッ クシンドローム・諸疾患を引き起こす肥満を抱える人々は増 加している。今後,さらに研究を重ねてあん摩・マッサージ のエビデンスが確立すれば,あん摩・マッサージは健康長 寿を望むすべての人に貢献するものとなる。

参照文献

[1] 殿山希.長寿社会の健康を支えるあん摩・マッサージ の検討.筑波技術大学テクノレポート.2016;24(1):p.107- 108.

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参照

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