平成 26 年版(2014)
神奈川県環境科学センター
研 究 報 告
第 37 号
Bulletin
of
Kanagawa
Environmental Research Center No.37
平成 27 年 3 月
環 境 科 学 センター報 告
道路近傍における重金属の環境実態とリスク評価 ···1
三島聡子,石割隼人(調査研究部) 生態影響試験を用いた目久尻川の水質について ···13
大塚知泰,石割隼人,三島聡子,長谷川敦子,坂本広美(調査研究部) 相模湖水中の低濃度リンの直接浄化に関する検討 ···18
秀平敦子(調査研究部),池田佳世(横須賀三浦地域県政総合センター), 井上 充(調査研究部) 厚木飛行場周辺の航空機騒音について ···24
石井 貢(環境情報部) 道路交通振動に係る要請限度の検証 ···30
橫島潤紀(環境情報部),松本泰尚(埼玉大学), 白石英孝(埼玉県環境科学国際センター),太田篤史,田村明弘(横浜国立大学)抄 録
抄 録 一 覧 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥37
Notes
Studies on the environmental fate of metals and their risks on human health
and the environment
··· 1
Satoko MISHIMA and Hayato ISHIWARI(Research Division)Water quality of Mekujirigawa river using bioassay test ··· 13 Tomoyasu OTSUKA, Hayato ISHIWARI , Satoko MISHIMA, Atsuko HASEGAWA and Hiromi SAKAMOTO (Research Division)
Examination of the direct purification technique of low concentration
phosphorus in Lake Sagamiko ··· 18 Atsuko HIDEHIRA(Research Division), Kayo IKEDA (Yokosuka-Miura Region Prefectural Administration Center )and Mitsuru INOUE(Research Division) Aircraft noise around Atusgi Air Base
··· 24
Mitsugi ISHII(Environmental Information Division)
Verification of request limits regarding road traffic vibration
··· 30
Shigenori YOKOSHIMA(Environmental Information Division),Yasunao MATSUMOTO (Saitama University), Hidetaka SHIRAISHI (Center for Environmental Science in Saitama),Atsushi OTA and Akihiro TAMURA(Yokohama National University )
- 1 -
報告(Note)
道 路 近 傍 に お け る 重 金 属 の 環 境 実 態 と リ ス ク 評 価
三島聡子,石割隼人 (調査研究部)
Studies on the environmental fate of Metals and their risks on human health and the environment Satoko MISHIMA and Hayato ISHIWARI
(Research Division) キ ー ワ ー ド : 重 金 属 , 環 境 実 態 , リ ス ク 評 価 1 はじめに 神奈川県は,平成 11~24 年度の自動車保有台 数 1)が全国第 3 位,平成 25,26 年度の自動車保 有台数1) が全国第 4 位であり,また,本県を通 過する車両台数も多く,自動車から排出される 化学物質による影響が懸念される。一方,平成 21 年 9 月から大気汚染に係る環境基準項目とな った微小粒子状物質(PM2.5)は,その生成要因の 一つとして自動車排出粒子が挙げられており, 自動車排ガスや,タイヤ,ブレーキなどの自動 車の構成部品等の摩耗による粉塵は,不特定な 発生源(ノンポイント汚染源)として,環境へ の負荷が懸念されている 2-9)。 平成 11 年に特定化学物質の環境への排出量 の把握 等及 び管理 の改 善の促 進に 関する 法律 (化管法)が制定され,様々な重金属の排出量 及び移動量が集計されている。表 1 に本研究で 対象とした重金属の平成 24 年度 PRTR 排出移動 量(全国)10)及び自動車部品における主な用途 11-13)を示すが,いずれも排出・移動量が年間 10 トンを越えている。 自動車から大気あるいは水域へ排出されるこ れら重金属の環境実態及びリスクを明らかにす ることは,重金属の環境リスクの削減等を図る ために重要なことであると思われる。本研究で は,様々な用途に使われ,環境中に広く存在し, 人の健康や生態系に影響を及ぼすおそれがある と考えられる PRTR 制度対象重金属についての 道路近傍の環境実態調査及びリスク評価を行っ た。 2 調査方法 2.1 調査地点,調査時期及び分析法 2.1.1 大気調査 表 1 本研究で対象とした重金属の平成 24 年度 PRTR 排出・移動量及び主な用途 PRTR 番号 重金属名称 届出排出量 (kg/年) 大気 届出排出量 (kg/年) 公共用水域 届出排 出量 (kg/年) 土壌 届出排出量 (kg/年) 埋立 届出排出量 (kg/年) 合計 届出外排出 量(推計値) (kg/年) 小計 届出及び届 出外排出量 (kg/年) 合計 届出移動量 (kg/年) 廃棄物移動 届出移動量 (kg/年) 下水道への 移動 届出移動量 (kg/年) 合計 届出排出・ 移動量合計 (kg/年) 自動車に関連する 主な用途 1 亜鉛(Zn)の水溶性化合物 16,320 606,988 2 89,169 712,478 36,253 748,731 3,154,687 10,899 3,165,586 3,878,064 タイヤ加硫促進剤、めっき 31 アンチモン(Sb)及びその化合物 3,099 5,032 59 308,562 316,751 4,696 321,447 481,393 525 481,918 798,669 ブレーキパッド、難燃助剤、バッテリー 75 カドミウム(Cd)及びその化合物 431 2,485 0 74,994 77,909 98 78,007 95,790 0 95,790 173,699 蓄電池 87 クロム(Cr)及び三価クロム化合物 6,106 28,974 31 193,042 228,153 2,036 230,189 15,389,176 1,590 15,390,766 15,618,919 めっき、鋼材 88 六価クロム化合物 220 11,648 0 1 11,869 8,924 20,794 409,467 1,766 411,233 423,102 自動車用途には廃止の方向 132 コバルト(Co)及びその化合物 166 7,945 1 268 8,380 35,923 44,303 251,172 4,786 255,958 264,337 電気自動車等の蓄電池、触媒 242 セレン(Se)及びその化合物 1,439 5,178 0 10,082 16,700 3,949 20,649 24,713 1 24,714 41,413 電子材料 272 銅(Cu)水溶性塩(錯塩を除く。) 2,007 99,966 0 34,398 136,371 67,489 203,859 966,540 4,828 971,368 1,107,739 ワイヤーハーネス 304 鉛(Pb) 735 62 0 9 806 806 533,794 7 533,801 534,607 蓄電池 305 鉛化合物 8,661 10,544 7 3,488,701 3,507,912 47,950 3,555,862 5,653,007 57 5,653,065 9,160,977 308 ニッケル(Ni) 1,552 682 0 238 2,473 11,731 14,203 403,945 1,008 404,953 407,426 ステンレス鋼、合金、めっき 309 ニッケル化合物 4,443 65,231 0 172,709 242,383 75,799 318,182 2,162,030 19,918 2,181,948 2,424,331 321 バナジウム(V)化合物 2,544 12,980 0 0 15,524 9,052 24,576 1,297,267 2,300 1,299,567 1,315,091 電子材料、石油精製触媒 332 砒素(As)及びその無機化合物 2,134 16,177 770 788,080 807,161 486 807,647 780,644 4 780,647 1,587,808 蓄電池鉛電極(格子合金) 412 マンガン(Mn)及びその化合物 38,766 744,841 137 2,347,493 3,131,237 2,569 3,133,806 48,357,677 2,438 48,360,115 51,491,352 鋼材、地殻表層成分(0.09wt%)
- 2 - 大気粉じんの捕集地点を図 1 に示す。自動車 による排出の影響については,国道 1 号線から 約 5m の沿道にある①茅ヶ崎駅前自動車排出ガ ス測定局(以下,茅ヶ崎自排局と称す),②国 設厚木自動車排出ガス測定局(以下,厚木自排 局と称す)③大和市深見台交差点自動車排出ガ ス測定局(以下,大和自排局と称す)で測定し た。また,一般環境として交通量の多い国道及 び県道等からの距離は 230m 以上,高さ 17.5m と発生源から比較的距離のある④神奈川県環境 科学センター屋上(以下,環境科学センターと 称す)を測定した。 地点①と④の調査は 2010 年 11 月から 2011 年 11 月にかけて 8 回行った。地点②と③の調査 は 2012 年 3 月から 2012 年 11 月にかけて 4 回行 った。 大 気 粉 じ ん の 捕 集 に は 47mmφ の石英ろ紙 ( GE ヘ ル ス ケ ア ・ ジ ャ パ ン ㈱ 製 , Whatman QM-A)を使用,PCI サンプラー(東京ダイレッ ク㈱製,ACM-10)により,20mL/min の流量で, 粒径 10μm より上,10~2.5μm,2.5μm 未満に分 け,2 日間でろ紙を交換し,合計 4 日間捕集し た。捕集後,ろ紙の重量を測定した。表 1 に示 した亜鉛(Zn),アンチモン(Sb),カドミウ ム(Cd),クロム(Cr),コバルト(Co),セ レン(Se),銅(Cu),鉛(Pb),ニッケル(Ni), バナジウム(V),ヒ素(As)マンガン(Mn) を有害大気汚染物質測定方法マニュアル(平成 23 年 3 月 環境省 水・大気環境局 大気環境 課)に準じて分析した。重金属の定量は,ICP-MS (Agilent 製,7500 ce)で行った。 2.1.2 水質調査 水質調査地点を図 1 に示す。⑤新湘南バイパ スの排水及び排水が流入している小出川の⑥中 原橋,上流の⑦新道橋,⑧国道 129 号の排水及 び排水が流入している小鮎川の新小鮎橋から1 つ下流の⑨境橋,上流の⑩庫裡橋を調査対象と した。また,⑪環境科学センターで雨水を採取 した。河川水は,河川流心部を採水した。新湘 南バイパス排水については,排水管の排水マス ➊ ➍ ➋ ➌ 小 鮎 川 小出 川 相模 川 圏央道 国道129号 国道134号 国道1号 新湘南バイパス 国道467号 東名高速 小田原 厚木道路 排水ます 中原橋 流入口 小出 川 新湘南バイパス 国道129号 小鮎橋 小 鮎 川 排水管 ⑤ ⑥ ⑦新道橋 ⑩庫裡橋 ⑧ ⑨ 茅ヶ崎 自排局 深見台自排局 環境科学センター 国設厚木 自排局 ➊➋➌➍:大気調査地点 ⑤⑥⑦⑧⑨⑩:水質調査地点 境橋 図 1 調査地点
- 3 - に採水容器を設置して初期降雨によるバイパス 排水を採取した。国道 129 号排水については, 排水マスが無いので,雨天時流下してくる排水 を直接採水した。雨水については,ろうとを用 いて直接容器に採取した。 調査は,⑤,⑥及び⑦については 2010 年 11 月から 2011 年 11 月にかけて 7 回行い,⑧,⑨ 及び⑩については 2012 年 6 月から 2013 年 2 月 にかけて 4 回行った。⑪については,2010 年 11 月から 2011 年 11 月にかけて 7 回及び 2012 年 6 月から 2013 年 2 月にかけて 4 回行った。 水質中の重金属は,大気粉じんと同様に,表 1 に示したものについて JIS K0102 5.5 及び 52.5 に 準 じ , 硝 酸 分 解 し た 検 液 に つ い て ICP-MS (Agilent 製,7500 ce)で定量した。 2.2 リスク評価 2.2.1 ヒト健康に対するリスク評価 調査した重金属について,ヒト健康に対する リスク評価を行った。吸入経路については,予 測環境中濃度 (PEC)と有害大気汚染物質に該当 する可能性のある物質リスト 14)中の優先取組 物質の指針値,EPA10-5 リスクレベル基準及び WHO 欧州事務局ガイドライン15,16)と比較した。 経口経路については,河川水を摂取すると仮定 し,その PEC と水道法水質基準及び水質管理目 標値を比較した。本研究において,ヒト健康に 対するリスク評価には安全側に立った評価の観 点から実測値の高濃度側のデータを PEC とし て使用した。吸入経路については,各大気調査 地点について,粒径 10μm より上,10~2.5μm 及び 2.5μm 未満の粉じん中の重金属濃度を合計 し,そのうち最大濃度を PEC として使用した。 経口経路ついても,各水質調査地点の最大濃度 を PEC として使用した。 2.2.2 水生生物に対するリスク評価 調査した亜鉛以外の重金属の水質の水生生物 に対するリスク評価については,環境省の「化 学物質の環境リスク初期評価ガイドライン」に おける生態リスク初期評価法 17)に準じて予測 環境中濃度 (PEC)と水生生物に対する予測無影 響濃度(PNEC)の比をもとに判定を行った。水生 生物に対するリスク評価においても,安全側の 評価を行う観点から,各水質調査地点の測定値 のうち,最大濃度を PEC として用いた。PNEC については,文献による既知の水生生物の毒性 試験結果を用いた。急性毒性値及び慢性毒性値 のそれぞれについて,信頼できる知見のうち生 物群(藻類,甲殻類,魚類及びその他)ごとに 最も値の低い値を選出し,アセスメント係数で 除することにより PNEC を求めた。環境省の生 態リスク初期評価法における,アセスメント係 数を表2に示す。 PNEC については,安全側の評価を行う観点 から,得られた急性毒性試験に基づく PNEC お よび慢性毒性試験に基づく PNEC の 2 つの値 のうち,より低い値を PNEC として用いた。 PEC/PNEC の値をもとに表3 に示す環境省の 生態リスク初期評価法 17) によりリスクの判定 を行った。亜鉛については,PEC が水生生物の 保全に係る水質環境基準値以上となった場合は, 基準が達成維持されるよう水質汚濁の防止に努 める必要があるものと判断した。 3 結果及び考察 3.1 大気調査結果 各調査地点において採取した大気粉じんにつ いて,粒径 10μm より上,10~2.5μm 及び 2.5μm 未満の粒径別の重金属の年平均大気濃度及び標 表2 予測無影響濃度(PNEC)の設定に使用さ れるアセスメント係数 分類 アセスメント係数 藻類、甲殻類及び魚類のうち、1~2の生物群について信頼性のあ る急性毒性値がある。 1,000 藻類、甲殻類及び魚類の3つの生物群全てについて信頼性のある 急性毒性値がある。 100 藻類、甲殻類及び魚類のうち、1~2の生物群について信頼性のあ る慢性毒性値がある 100 藻類、甲殻類及び魚類の3つの生物群全てについて信頼性のある 慢性毒性値がある。 10 表3 評価の分類 PEC/PNEC 評価 PEC/PNEC<0.1 現時点では作業は必要ないと考えられる。 0.1≦PEC/PNEC<1 情報収集に努める必要があると考えられる。 1≦PEC/PNEC 詳細な評価を行う候補と考えられる。 情報が不十分な場合 現時点ではリスクの判定はできない。
- 4 - 準偏差を表4に,年平均大気濃度を円グラフで 示したものを図2に示す。各調査地点とも,亜 鉛,銅及びマンガンが主に検出され,亜鉛の濃 度が最も高い傾向であった。また,粒径の小さ いものほど重金属濃度が高い傾向がみられた。 各自排局の試料採取位置の違いによる重金属濃 度の差はほとんどなかった。ディーゼル車を主 な発生源とする元素状炭素に幹線道路からの距 離減衰が見られたとの報告18)もあるが,本研究 で測定した大気中の重金属については,距離減 衰の傾向がみられず,自動車交通の影響が少な いと考えられる。 各調査地点についての試料採取時の亜鉛,銅 及びマンガンの大気中濃度及び偏差値を図3に 示す。偏差値 60 以上の濃度であったものは,茅 ヶ崎自排局については,2010 年 11 月の粒径 10μm より上の亜鉛及び銅,粒径 2.5μm 未満の マンガン,2011 年 1 月の粒径 10μm より上のマ ンガン,2011 年 3 月の粒径 2.5μm 未満の銅,2011 年 10 月の粒径 10μm より上のマンガン,粒径 2.5-10μm の亜鉛,銅及びマンガン,2011 年 11 月の粒径 2.5-10μm の亜鉛,粒径 2.5μm 未満の亜 鉛であった。環境科学センターについては,2010 年 11 月の粒径 2.5-10μm の亜鉛,粒径 2.5μm 未 満の亜鉛及びマンガン,2011 年 1 月の粒径 10μm より上の亜鉛及び銅,粒径 2.5-10μm の銅,2011 年 3 月の粒径 2.5-10μm のマンガン,2011 年 10 月 の 粒 径 10μm よ り 上 の マ ン ガ ン , 粒 径 2.5-10μm の亜鉛,2011 年 11 月の粒径 10μm よ り上のマンガン,粒径 2.5-10μm の亜鉛及び銅, 粒径 2.5μm 未満の銅であった。2010 年 11 月か ら 2011 年 11 月にかけて調査を行った茅ヶ崎自 排局及び環境科学センターについては,偏差値 60 以上の濃度は,4 月,6 月及び 7 月には見ら れなかった。厚木自排局については,2012 年 3 月の粒径 10μm より上の銅,粒径 2.5-10μm の銅 及びマンガン,粒径 2.5μm 未満の亜鉛及びマン ガンであった。大和自排局については,2012 年 3 月の粒径 10μm より上の銅,粒径 2.5-10μm の 銅,粒径 2.5μm 未満のマンガン,2012 年 5 月の 粒径 10μm より上のマンガン,粒径 2.5-10μm の 亜鉛及びマンガン,粒径 2.5μm 未満の亜鉛,2012 年 9 月の粒径粒径 10μm より上の亜鉛であった。 2012 年 3 月から 2012 年 11 月にかけて調査を行 った大和自排局及び厚木自排局については,偏 差値 60 以上の濃度は, 11 月には見られなかっ た。 3.2 水質調査結果 道路排水,雨水及び河川水についての重金属 の年平均水質濃度及び標準偏差を表5に,年平 均水質濃度を円グラフで示したものを図4に示 す。道路排水及び雨水では,大気粉じんと同様 に亜鉛,銅及びマンガンが主に検出された。小 出川の河川水については,中原橋,新道橋の両 方とも検出されたのは,ほとんどマンガンであ った。小鮎川の河川水については,境橋,庫裡 橋の両方ともバナジウム,亜鉛,銅及びマンガ ンが主に検出された。新湘南バイパス排水につ いては,セレン,バナジウム及びマンガンを除 いた重金属濃度が河川水及び雨水と比べて 1 表4 重金属の年平均大気濃度及び標準偏差 重金属 >10μm 2.5-10μm <2.5μm >10μm 2.5-10μm <2.5μm >10μm 2.5-10μm <2.5μm >10μm 2.5-10μm <2.5μm >10μm 2.5-10μm <2.5μm 亜鉛(Zn) 平均濃度(ng/m3) 9 13 38 9 15 35 11 12 29 8 11 42 3 2 2 標準偏差 10 11 21 4 5 12 6 6 5 4 9 22 アンチモン(Sb) 平均濃度(ng/m3) <0.2 0.6 1.4 0.7 2.0 2.0 0.5 1.1 1.5 0.2 0.55 2.2 0.2 0.1 0.1 標準偏差 - 0.5 0.9 0.1 0.0 0.7 0.2 0.1 0.2 0.1 0.4 1.8 カドミウム(Cd) 平均濃度(ng/m3) <0.01 0.02 0.21 0.27 <0.01 0.13 <0.01 <0.01 0.15 <0.01 0.03 0.25 0.01 0.01 0.01 標準偏差 - 0.02 0.10 0.46 - 0.04 - - 0.03 - 0.03 0.11 クロム(Cr) 平均濃度(ng/m3) 1.0 1.3 1.6 2.8 1.2 0.9 4.2 2.0 1.8 <0.8 0.7 2.6 0.8 0.7 0.7 標準偏差 0.9 1.2 1.2 2.3 0.7 0.4 3.7 1.5 1.3 - 0.6 2.8 コバルト(Co) 平均濃度(ng/m3) 0.37 0.48 0.25 0.11 0.11 0.10 0.14 0.11 0.12 0.08 0.11 0.12 0.01 0.01 0.01 標準偏差 0.41 0.51 0.16 0.06 0.05 0.06 0.08 0.07 0.07 0.10 0.14 0.08 セレン(Se) 平均濃度(ng/m3) 0.041 0.089 1.1 <0.07 0.30 0.94 <0.07 0.094 1.1 0.033 0.14 1.1 0.007 0.006 0.006 標準偏差 0.053 0.087 0.54 - 0.51 0.22 - 0.064 0.15 0.045 0.14 0.55 銅(Cu) 平均濃度(ng/m3) 3.6 5.5 5.5 3.2 12 3.8 9.2 7.4 3.8 2.4 4.9 5.6 0.8 0.7 0.7 標準偏差 2.1 2.7 3.6 3.0 5.3 3.4 2.8 2.8 0.9 1.4 2.0 2.1 鉛(Pb) 平均濃度(ng/m3) 0.5 1.3 7.7 1.1 1.9 7.2 1.1 1.6 7.4 0.6 1.4 8.4 0.2 0.2 0.2 標準偏差 0.4 0.8 3.8 0.8 1.2 4.0 0.2 0.6 3.9 0.5 0.9 3.8 ニッケル(Ni) 平均濃度(ng/m3) 2.5 3.0 3.1 <0.5 0.6 1.6 0.8 0.5 1.5 1.0 0.9 3.1 0.5 0.5 0.5 標準偏差 2.7 2.6 2.0 - 0.3 0.8 0.7 0.2 0.7 1.4 1.0 2.2 バナジウム(V) 平均濃度(ng/m3) 0.51 0.79 3.7 0.64 0.79 4.1 1.0 1.0 5.1 0.43 0.68 3.3 0.04 0.03 0.03 標準偏差 0.28 0.18 2.0 0.09 0.10 0.53 0.38 0.22 1.0 0.16 0.20 1.4 ヒ素(As) 平均濃度(ng/m3) 0.07 0.22 0.96 0.07 0.10 0.58 0.08 0.10 0.64 0.10 0.25 1.0 0.03 0.03 0.03 標準偏差 0.09 0.26 0.48 0.06 0.09 0.15 0.06 0.05 0.12 0.17 0.22 0.68 マンガン(Mn) 平均濃度(ng/m3) 4.1 6.1 12 5.5 5.6 9.1 7.0 6.2 11 3.6 5.8 14 0.8 0.7 0.7 標準偏差 1.9 2.2 5.6 1.0 1.2 3.7 2.0 1.4 3.0 1.2 2.3 7.4 茅ヶ崎自排局 厚木自排局 大和自排局 環境科学センタ- 検出下限値(ng/m3)
- 5 - オーダー以上高く,道路粉じんに重金属が高濃 度で含まれていることが考えられる。著者らは 以前の研究19,20)で,道路粉じん中のタイヤ由来 の亜鉛等の重金属やタイヤ添加剤が道路排水中 に高濃度で含まれていることを明らかにした。 本研究では,新湘南バイパス排水については降 雨の前に,排水マスに採水容器を設置し,初期 降雨からの道路粉じんを多く含んだ排水を採水 できた。国道 129 号排水については,湘南バイ パスの場合と異なり,排水マスが無く,雨天時 流下している排水を直接採水したため,道路粉 じんを多く含んだ初期降雨を採水することが出
Zn
Sb
Cd
Cr
Co
Se
Cu
Pb
Ni
V
As
Mn
①茅ヶ崎自排局④環境科学センタ->10μm, Total 22ng/m3 2.5-10μm, Total 33ng/m3 < 2.5μm, Total 76ng/m3
< 2.5μm, Total 85ng/m3
2.5-10μm, Total 27ng/m3 <2.5μm, Total 45ng/m3
>10μm, Total 21ng/m3 2.5-10μm, Total 19ng/m3 < 2.5μm, Total 40ng/m3
②厚木自排局
③大和自排局
>10μm, Total 17ng/m3 2.5-10μm, Total 27ng/m3
>10μm, Total 15ng/m3
- 6 - 0 15 30 45 60 75 0 20 40 60 80 100 0 15 30 45 60 75 0 10 20 30 40 0 15 30 45 60 75 0 10 20 30 40 2012,03 2012.05 2012.09 2012.11 0 15 30 45 60 75 0 20 40 60 80 100 0 15 30 45 60 75 0 10 20 30 40 0 15 30 45 60 75 0 10 20 30 40 2012,03 2012.05 2012.09 2012.11 0 15 30 45 60 75 0 20 40 60 80 100 0 15 30 45 60 75 0 10 20 30 40 0 15 30 45 60 75 0 10 20 30 40 0 15 30 45 60 75 0 20 40 60 80 100 0 15 30 45 60 75 0 10 20 30 40 0 15 30 45 60 75 0 10 20 30 40 サンプリング時期 偏差 値 偏差 値 サンプリング時期 重金属 濃度 (ng/ m 3) 偏差値 偏差値 ②厚木自排局 ③大和自排局 ①茅ヶ崎自排局 ④環境科学センタ‐
Zn
Cu
Zn
Cu
Zn
Cu
Zn
Cu
○ : >10μm濃度 ▲: 2.5‐10μm濃度 ■ : < 2.5μm濃度 : >10μm濃度偏差値 : 2.5‐10μm濃度偏差値 : < 2.5μm濃度偏差値 重金属 濃度 (ng/ m 3)Mn
サンプリング時期 重金属 濃度 (n g /m 3)Mn
サンプリング時期Mn
Mn
重金属 濃度 (ng/ m 3) 図3 試料採取時の亜鉛,銅及びマンガンの大気中濃度及び偏差値- 7 - 来ず,重金属濃度が新湘南バイパス排水ほど高 くなかったと考えられる。 各調査地点についての試料採取時の亜鉛,銅, バナジウム及びマンガンの水質中濃度及び偏差 値を図5に示す。偏差値 60 以上の濃度であった ものは,新湘南バイパス排水については,2010 年 10 月の銅,2011 年 2 月の亜鉛,バナジウム 及びマンガン,2011 年 5 月の銅であった。中原 表5 重金属の年平均水質濃度及び標準偏差 ④雨水 ⑤新湘南バイパス排水 ⑥小出川中原橋河川水 ⑧国道129排水 ⑨小鮎川境橋河川水 Total 35μg/L Total 1500μg/L Total 190μg/L Total 22μg/L Total 150μg/L ⑦小出川新道橋河川水 ⑩小鮎川庫裡橋河川水 Total 108μg/L Total 45μg/L
Zn
Sb
Cd
Cr
Co
Se
Cu
Pb
Ni
V
As
Mn
図4 重金属の年平均水質濃度 重金属 雨水 検出下限値 新道橋 中原橋 庫裡橋 境橋 (μg/L) 亜鉛(Zn) 平均濃度(μg/L) 18 1184 81 6.5 7.1 22 4.3 0.05 標準偏差 13 1826 43 2.7 2.6 31 2.3 アンチモン(Sb) 平均濃度(μg/L) 0.24 4.5 4.6 0.29 0.26 0.08 0.08 0.05 標準偏差 0.15 0.53 0.9 0.19 0.13 0.06 0.06 カドミウム(Cd) 平均濃度(μg/L) 0.05 3.8 <0.04 <0.04 0.05 <0.04 <0.04 0.04 標準偏差 0.03 6.6 - - 0.04 - -クロム(Cr) 平均濃度(μg/L) 0.89 23 5.3 1.3 0.64 0.25 0.19 0.07 標準偏差 0.39 26 1.2 1.4 0.49 0.15 0.16 コバルト(Co) 平均濃度(μg/L) 0.09 2.5 0.41 0.41 0.45 <0.04 0.06 0.04 標準偏差 0.08 1.6 0.12 0.22 0.32 - 0.07 セレン(Se) 平均濃度(μg/L) <0.2 1.2 0.5 0.9 0.4 <0.2 <0.2 0.2 標準偏差 - 0.9 0.2 0.2 0.3 - -銅(Cu) 平均濃度(μg/L) 5.9 62 32 5.8 6.0 8.1 1.6 0.1 標準偏差 3.0 40 18 1.6 1.4 8.0 1.7 鉛(Pb) 平均濃度(μg/L) 0.93 7.8 2.8 0.42 0.59 0.10 0.07 0.04 標準偏差 0.41 5.2 1.7 0.38 0.52 0.06 0.08 ニッケル(Ni) 平均濃度(μg/L) 3.4 13 2.8 1.4 1.1 0.26 0.25 0.04 標準偏差 2.8 6.1 0.31 0.39 0.63 0.27 0.07 バナジウム(V) 平均濃度(μg/L) 0.20 12 3.4 4.8 7.3 7.4 6.6 0.05 標準偏差 0.26 8.4 1.3 0.8 1.4 1.3 1.0 ヒ素(As) 平均濃度(μg/L) 0.11 2.1 0.59 0.42 0.45 0.39 0.27 0.06 標準偏差 0.10 1.5 0.13 0.18 0.21 0.05 0.03 マンガン(Mn) 平均濃度(μg/L) 5.3 154 17 86 168 5.9 7.8 0.1 標準偏差 2.3 169 13 61 139 3.0 6.3 国道129排 水 小出川 小鮎川 新湘南バイ パス排水- 8 - 橋河川水については,2011 年 4 月のマンガン, 2011 年 5 月の亜鉛及び銅,2011 年 7 月のバナジ ウムであった。新道橋河川水については,2011 年 2 月の亜鉛及びマンガン,2011 年 5 月のマン ガン,2011 年 7 月の銅,2011 年 8 月のバナジウ ム,2011 年 9 月のバナジウムであった。雨水に ついては,2011 年 2 月の銅,2011 年 7 月の銅, 2011 年 11 月の亜鉛,2012 年 6 月のバナジウム 及びマンガン,2012 年 12 月のバナジウム,2013 年 2 月の銅であった。国道 129 号排水について は,2012 年 10 月の銅及びバナジウム,2013 年 2 月の亜鉛及びマンガンであった。境橋河川水 については,2012 年 5 月のマンガン,2012 年 10 月の銅,2013 年 2 月の亜鉛であった。庫裡橋 河川水については, 2013 年 2 月の亜鉛,銅及 びマンガンであった。各調査地点とも,季節的 な特徴は見られなかった。 0 20 40 60 80 100 0 50 100 150 0 20 40 60 80 100 0 10 20 30 40 50 60 70 0 20 40 60 80 0 5 10 15 20 0 20 40 60 80 0 20 40 60 2012.05 2012.06 2012.08 2012.10 2012.12 2013.02 70 6000 0 20 40 60 80 0 10 20 30 40 50 60 70 15 140 0 20 40 60 80 0 5 10 15 0 20 40 60 80 0 10 20 30 40
Zn
Cu
偏差 値 サンプリング時期 サンプリング時期 ○ : ⑤新湘南バイパスの排水濃度 ▲: ⑥中原橋河川水濃度 ■ : ⑦新道橋河川水濃度 ☓ : ⑪センター屋上の雨水濃度 : ⑤新湘南バイパスの排水濃度偏差値 : ⑥中原橋河川水濃度偏差値 : ⑦新道橋河川水濃度偏差値 : ⑪センター屋上の雨水濃度偏差値 ○ : ⑧国道129号の排水濃度 ▲: ⑨境橋河川水濃度 ■ : ⑩庫裡河川水橋濃度 ☓ : ⑪センター屋上の雨水濃度 : ⑧国道129号の排水濃度偏差値 : ⑨境橋河川水濃度偏差値 : ⑩庫裡河川水橋濃度偏差値 : ⑪センター屋上の雨水濃度偏差値 重金属濃度 (μ g/ L)V
重金属 濃度 (μ g/ L) 偏差 値Zn
Cu
V
Mn
0 20 40 60 80 0 200 400 600Mn
図5 試料採取時の亜鉛,銅及びマンガンの水質中濃度及び偏差値- 9 - 3.3 ヒト健康に対するリスク評価 本研究における重金属の吸入経路についての PEC 及び大気濃度指針値等15,16)を表6に示す。 各大気調査地点について,粒径 10μm より上, 10~2.5μm 及び 2.5μm 未満の粉じん中の重金属 濃度を合計し,そのうち最大濃度を PEC とし て使用した。リスク評価を行った重金属につい て,PEC と大気濃度指針値等を比較すると,ク ロムを除いては,全調査地点で PEC<大気濃度 指針値等となり,現時点ではヒト健康に悪影響 を及ぼすおそれはないと考えられる。 クロムについては,全調査地点で PEC>大気 濃度指針値等となった。クロムの WHO 欧州事 務局ガイドラインは 6 価クロムについての値で ある。本研究においてクロムは,全クロムを測 定しているが,安全側に立った評価の観点から クロムについては,今後も継続して調査,評価 を行う必要があると考えられる。 経口経路についての PEC と水道法水質基準 及び水質管理目標値 21)を表7に示す。各水質調 査地点の最大濃度を PEC として使用した。PEC と水道法水質基準または水質管理目標値を比較 すると,新湘南バイパス排水のカドミウム,ク ロム,鉛及びニッケルを除いては,PEC<水道法 水質基準または水質管理目標値となった。本研 究においてクロムは,全クロムを測定している が,水道法水質基準は 6 価クロムについての値 である。新湘南バイパス排水濃度は高かったが, 流入している小出川中原橋の河川水濃度に影響 することはなく,河川水濃度については,PEC< 水道法水質基準または水質管理目標値となった。 カドミウム,クロム,鉛及びニッケルについて も現時点ではヒト健康に悪影響を及ぼすおそれ はないと考えられる。 表6 重金属のヒト健康に対する吸入経路の PEC 及び大気濃度指針値等 表7 重金属のヒト健康に対する経口経路の PEC 及び水道法水質基準値等 重金属 PEC (μg/L) 雨水 新道橋 中原橋 庫裡橋 境橋 (μg/L) (μg/L) 亜鉛(Zn) 54 5,292 130 12 12 75 7.2 0.05 -アンチモン(Sb) 0.58 5.2 6.0 0.69 0.47 0.16 0.17 0.05 20 (②) カドミウム(Cd) 0.10 1 9 0.04 0.10 0.11 <0.04 <0.04 0.04 3 (①) クロム(Cr) 1.6 8 5 7.0 4.7 1.7 0.44 0.40 0.07 50 (①) コバルト(Co) 0.30 6.1 0.56 0.77 0.92 <0.04 0.18 0.04 -セレン(Se) 0.2 2.8 0.8 1.1 0.8 <0.2 0.3 0.2 10 (①) 銅(Cu) 9.6 125 62 8.2 8.8 21 4.0 0.1 -鉛(Pb) 1.5 1 7 4.9 1.2 1.7 0.17 0.21 0.04 10 (①) ニッケル(Ni) 10 2 6 3.1 1.7 1.6 0.69 0.32 0.04 20 (②) バナジウム(V) 0.67 31 4.7 6.0 10 8.7 7.6 0.05 -ヒ素(As) 0.27 5.2 0.78 0.64 0.79 0.47 0.32 0.06 10 (①) マンガン(Mn) 10 566 34 161 427 10 18 0.1 -新湘南バイ パス排水 国道129排 水 小鮎川 水道法水質基準①または 水質管理目標値② 小出川 検出下限値 重金属 検出下限値 大気濃度指針値等 (各粒径の合計) 茅ヶ崎自排局 厚木自排局 大和自排局 環境科学センタ- (ng/m3) (ng/m3) 亜鉛(Zn) 115 74 73 113 7 -アンチモン(Sb) 5.0 6.0 3.3 7.8 0.4 -カドミウム(Cd) 0.44 1.2 0.21 0.41 0.03 6(EPA10-5リスクレベル基準) クロム(Cr) 8.6 8.2 14 10 2.2 0.25(WHO欧州事務局ガイドライン) コバルト(Co) 2.7 0.46 0.54 0.97 0.03 -セレン(Se) 2.7 2.5 2.8 2.6 0.019 -銅(Cu) 19 35 29 21 2.2 -鉛(Pb) 17 19 17 17 0.6 500(WHO欧州事務局ガイドライン) ニッケル(Ni) 16 4.5 3.2 11 1.5 25(優先取組物質の指針値) バナジウム(V) 9.0 6.4 9.7 7.2 0.10 1000(WHO欧州事務局ガイドライン) ヒ素(As) 2.2 0.97 1.0 3.0 0.09 6(優先取組物質の指針値) マンガン(Mn) 33 28 31 41 2.2 140(優先取組物質の指針値) 各粒径の合計PEC (ng/m3)
- 10 - 3.4 水生生物に対するリスク評価
表8に本研究における重金属の水生生物に対 する毒性値,アセスメント係数及び PNEC22-31) を,表9に PEC, PNEC 及び PEC/PNEC の値を 示す。水生生物に対するリスク評価においても, 実測値のうち最大濃度を PEC として使用した。 PEC/PNEC の値より,各調査地点における生態 リスクについて,表3の判定表により判断した。 アンチモンについては,全調査地点において, PEC /PNEC<0.1 となったが,環境省「化学物質 の環境リスク初期評価第 6 巻」21)においては, 通常水中で存在する5 価アンチモンの PNEC が 確定できていないため,水生生物への影響は評 価できないとしている。アンチモンについては, さらに有害性情報の収集に努め,評価を行う必 要があると考えられる。 その他の重金属については,ほとんどの調査 地点において PEC/PNEC≧1 となった。特に新 湘南バイパス排水及び国道 129 号排水について は,自動車等道路交通を由来とする重金属の発 生源となっているため値が高かった。 亜鉛については,道路排水に加えて雨水及び 小鮎川庫裡橋の河川水の PEC が水生生物の保 全に係る水質環境基準値以上となった。環境水 である小鮎川庫裡橋の河川水については,環境 基準点ではないが,基準が達成維持されるよう 水質汚濁の防止に努める必要があるものと判断 した。 その他の PEC/PNEC≧1 となった水質を挙げ ると,カドミウムについては,道路排水に加え て雨水,小出川新道橋及び中原橋の河川水,ク ロムについては,道路排水に加えて雨水,小出 重金属 アセスメント PNEC等 出典 毒性 係数等 (μg/L) 亜鉛(Zn) 慢性 - - 30 4W NOEC(カゲロウ) - - 1 30 急性 - - - (最終慢性毒性値) 水質環境基準 アンチモン(Sb) 慢性 - - - -急性 - - >231,000 24h LC50 - - 1,000 > 23 0 カドミウム(Cd) 慢性 - - - 100 0 .03 急性 - - - - 2.66 96h LC50 (種比10× 急性慢性毒性比10) 水質目標案 クロム(Cr) 慢性 - - 47 21d NOEC 48 72h NOEC 100 0 .47 急性 397 96h EC50 390 96h EC50 3,850 48h TLm 100 3.9
コバルト(Co) 慢性 38 96h NOEC 26 (モノアラガイ科)28d NOEC - - 100 0 .26 環境省:「化学物質の環境リスク評価第11巻」第1編 コバルト及びその化合物(2013)
急性 136 96h EC50
(ウキクサ) 1,110 48h LC50 1,406 96h LC50 100 1.4
セレン(Se) 慢性 - - -
-急性 199 96h EC50 6 48h LC50 1,325 96h EC50 100 0 .06
銅(Cu) 慢性 - - - WHO IPCS EHC200(1998) 急性 47 72h EC50 9.8 48h EC50 135 96h EC50 100 0 .09 8
鉛(Pb) 慢性 9.1 14d NOEC 17 44d NOEC 8 62d NOEC 10 0.8 急性 19.5 72h EC50 26.4 48h LC50 120 96h LC50 100 0 .2
ニッケル(Ni) 慢性 10 96h NOEC 90 21d NOEC 35 75d NOEC 10 1 .0 急性 3,000 72h EC50 510 48h EC50 3,400 96h LC50 100 5.1 バナジウム(V) - - - -ヒ素(As) 慢性 - - - -急性 78.7 96h EC50 232 96h LC50 490 7d LC50 100 0 .79 マンガン(Mn) 慢性 - - - - 2,840 62d NOEC 100 28 急性 4,850 72h EC50 4,700 48h EC50 130,000 96h LC50 100 47 NOEC :無影響濃度 EC50 :50%影響濃度 LC50 :50%致死濃度 環境省:「化学物質の環境リスク評価第6巻」第 1編 マンガン及びその化合物(2008) (独)製品評価技術基盤機構:初期リスク評価 書 ヒ素及びその無機化合物(2008) (独)製品評価技術基盤機構:初期リスク評価 書 セレン及びその化合物(2008) 水生生物毒性値(μg/L) 藻類 ミジンコ 魚類 (独)製品評価技術基盤機構:初期リスク評価 書 ニッケル化合物(2008) 平成15年第6回中央環境審議会水環境部会水 生生物の保全に係る水質環境基準専門委員 会 目標値導出根拠 平成15年第6回中央環境審議会水環境部会水 生生物の保全に係る水質環境基準専門委員 会 目標値導出根拠 環境省:「化学物質の環境リスク評価第6巻」第 1編 アンチモン及びその化合物(2008) 環境省:「化学物質の環境リスク評価第8巻」第 1編 3 価クロム化合物(2010) 環境省:「化学物質の環境リスク評価第8巻」第 1編 鉛及びその化合物(2010)
重金属 PEC (μg/L) PNEC等 PEC/PNEC
雨水 雨水 新道橋 中原橋 庫裡橋 境橋 (μg/L) 新道橋 中原橋 庫裡橋 境橋 亜鉛(Zn) 54 5,292 130 12 12 75 7.2 30 1.8 1 76 4.3 0.40 0.40 2.5 0.24 アンチモン(Sb) 0.58 5.2 6.0 0.69 0.47 0.16 0.17 >230 <0.0025 <0.022 <0.026 <0.003 <0.0020 <0.00069 <0.00072 カドミウム(Cd) 0.10 19 0.04 0.10 0.11 <0.04 <0.04 0.03 3.3 6 27 1.4 3 .3 3.7 <1.3 <1.3 クロム(Cr) 1.6 85 7.0 4.7 1.7 0.44 0.40 0.47 3.4 1 80 1 5 9 .9 3.6 0.93 0.86 コバルト(Co) 0.30 6.1 0.56 0.77 0.92 <0.04 0.18 0.26 1.1 2 3 2.2 2 .9 3.5 <0.027 0.68 セレン(Se) 0.2 2.8 0.8 1.1 0.8 <0.2 0.3 0.06 3.4 4 7 1 3 1 8 13 <3.3 5 .3 銅(Cu) 9.6 125 62 8.2 8.8 21.0 4.0 0.098 9 8 1,27 8 62 9 8 4 90 21 4 4 1 鉛(Pb) 1.5 17 4.9 1.2 1.7 0.17 0.21 0.2 7.7 8 7 2 5 6 .2 8.3 0.87 1.0 ニッケル(Ni) 10 26 3.1 1.7 1.6 0.7 0.3 1.0 1 0 2 6 3.1 1 .7 1.6 0.7 0.3 バナジウム(V) 0.67 31 4.7 6.0 10 8.7 7.6 - - - -ヒ素(As) 0.27 5.2 0.78 0.64 0.79 0.47 0.32 0.79 0.34 6 .7 0.99 0.81 1.0 0.60 0.41 マンガン(Mn) 10 566 34 161 427 10 18 28 0.36 2 0 1.2 5 .8 15 0.36 0.65 国道129 排水 小出川 小鮎川 新湘南バイ パス排水 国道129排 水 小出川 小鮎川 新湘南バイ パス排水 表8 重金属の水生生物に対する毒性値,アセスメント係数及び PNEC 等 表9 重金属の水生生物に対する PEC 及び PNEC
- 11 - 川新道橋及び中原橋の河川水,コバルトについ ては,道路排水に加えて雨水,小出川新道橋及 び中原橋の河川水,セレンについては,道路排 水に加えて雨水,小出川新道橋,中原橋及び小 鮎川境橋の河川水,銅については,すべての水 質,鉛については,道路排水に加えて雨水,小 出川新道橋,中原橋及び小鮎川境橋の河川水, ニッケルについては,道路排水に加えて雨水, 小出川新道橋及び中原橋の河川水,ヒ素(As) については,新湘南バイパス排水に加えて小出 川中原橋の河川水,マンガンについては,道路 排水に加えて小出川新道橋及び中原橋の河川水 であり,これらの重金属は詳細な評価を行う候 補と考えられる。バナジウム(V)については, 水生生物に対する毒性値がなかった。以上のこと から,アンチモン以外の重金属については,今 後も継続して調査,評価を行う必要があると考 えられる。 4 まとめ 1) 大気粉じんについては,各調査地点とも,亜 鉛,銅及びマンガンが主に検出され,亜鉛の濃 度が最も高い傾向であった。各調査地点の重金 属濃度の差はほとんどなく,自動車交通の影響 が少ないと考えられた。 2) 新湘南バイパス排水については,セレン,バ ナジウム及びマンガンを除いた重金属濃度が河 川水及び雨水と比べて1 オーダー以上高く,道 路粉じんに重金属が高濃度で含まれていること が考えられる。 3) ヒト健康に対するリスク評価における吸入 経路について,PEC と大気濃度指針値等を比較 すると,クロムを除いては,全調査地点で PEC< 大気濃度指針値等となり,現時点ではヒト健康 に悪影響を及ぼすおそれはないと判断した。ク ロムについては,全調査地点で PEC>大気濃度 指針値等となったため,今後,追跡調査など詳 細な評価を行う候補と判断した。 4) ヒト健康に対するリスク評価における経口 経路についての PEC と水道法水質基準または 水質管理目標値をを比較すると,新湘南バイパ ス排水のカドミウム,クロム,鉛及びニッケル を除いては,PEC<水道法水質基準または水質管 理目標値となった。カドミウム,クロム,鉛及 びニッケルについても河川水濃度については, PEC<水道法水質基準または水質管理目標値と なっており,現時点ではヒトに悪影響を及ぼす おそれはないと判断した。 5) 水生生物に対するリスク評価を行ったとこ ろ,アンチモン以外の重金属については,ほと んどの調査地点において PEC/PNEC≧1 となっ た。アンチモン以外の重金属については,今後 も継続して調査,評価を行う必要があると判断 した。 参 考 文 献 1) 一般財団法人 自動車検査登録情報協会:自 動車保有台数統計データ http://www.airia.or.jp/publish/statistics/number. html 2) 徳永法夫,西村 昂,日野泰雄,尾松豪紀: 道 路排水と道路構造物の汚れに関する研究, 資源環境対策,34,1263-1268(1998) 3) 新矢将尚,小西孝明,宮西弘樹,石川宗孝: 高 速道路排水における汚濁負荷の流出特性, 用水と排水,44,207-213(2002) 4) 山口孝子,山崎裕康,山内あい子,垣内靖 男: 道路近傍における浮遊粒子状物質中の タイヤトレッド摩耗粉じん及びゴム添加剤 の分析,衛生化学,41,155-162(1995) 5) 小野芳朗,永留 浩,河原長美,谷口 守, 並木健二,貫上佳則: 道路堆積塵埃上の物質 量と環境因子との相関性,水環境学会誌, 23,778-785(2000) 6) 浦瀬太郎,灘岡和夫,日下部 治,フェル ナンド・シリンガン,宮下健一郎,鈴木洋 介:廃棄物処分場浸出水および道路脇粉塵に 含まれる重金属の日本とフィリピンでの状 況の比較,水環境学会誌,25,657-660(2002) 7) 白石さやか,渡邉 泉,久野勝治: 東京都内 の主要道路における道路粉塵,街路土壌お よび街路樹葉の重金属蓄積,環境化学会誌, 12,829-837(2002) 8) 村上道夫,中島典之,古米弘明: 多環芳香族 炭化水素類(PAHs)含有率とそのプロファ イルに基づく粒径画分ごとの道路・屋根堆 積塵埃の識別,水環境学会誌,26,837-842 (2003) 9) 杉谷健一郎,野村晶子,南 雅代,加藤博 和: 都市公共用水域に対するノンポイント 汚染源としての道路脇粉塵(<63μm 画分) の化学的特徴-名古屋市の事例-,水環境
- 12 - 学会誌,27,547-552(2004) 10) 環境省「PRTR インフォメーション広場-集 計結果・データを見る」 http://www.env.go.jp/chemi/prtr/result/index.ht ml 11) 環境省「化学物質ファクトシート 2012 年版」 http://www.env.go.jp/chemi/communication/fa ctsheet.html 12) (独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構「鉱 物資源マテリアルフロー」 http://mric.jogmec.go.jp/periodical/index.html 13) ㈱化学工業日報社:2014 年版 16514 の化学 商品 PDF,㈱化学工業日報社,東京,(2014) 14) 環境省「中央環境審議会大気環境部会健康 リスク総合専門委員会(第 12 回)資料 4-1 有害大気汚染物質に該当する可能性がある 物質リスト及び優先取組物質の見直し並び に有害大気汚染物質のリスクの程度に応じ た対策のあり方について(案)」 http://www.env.go.jp/council/former2013/07air /yoshi07-03.html 15) 環境省「有害大気汚染物質測定方法マニュ アル 平成 23 年 3 月」 http://www.env.go.jp/air/osen/manual2/ 16) 環境省「今後の有害大気汚染物質対策のあ り方について(第十次答申)」 http://www.env.go.jp/press/18103.html 17) 環境省「化学物質の環境リスク評価第 12 巻」 第 1 編 化学物質の環境リスク初期評価ガ イドライン(2014) http://www.env.go.jp/chemi/report/h26-01/pdf/ chpt1/1-2-1.pdf 18) 土岐真一,國見 均:道路近傍におけるタ イヤ磨耗粉じんの計測と排出係数の推計, 大気環境学会誌,41,144-163(2006) 19) 三島聡子, 大塚知泰, 坂本広美, 安部明美, 庄司成敬:高架道路から水域への重金属の 流出と由来,環境化学,15,335-343(2005) 20) 三島聡子,田中達也,北野 大:自動車交 通を発生源とした有機ゴム添加剤の環境中 における動態と発生源付近の環境リスク評 価,環境化学,23,163-176 (2013) 21) 厚生労働省:水道水質基準 水質基準項目 と基準値(51 項目) http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/buny a/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/kijunchi.h tml 22) 環境省:平成 15 年第 6 回中央環境審議会水 環境部会水生生物の保全に係る水質環境基 準専門委員会 目標値導出根拠 http://www.env.go.jp/council/09water/y094-06 b.html 23) 環境省「化学物質の環境リスク評価第6 巻」 第1 編 アンチモン及びその化合物(2008) http://www.env.go.jp/chemi/report/h19-03/pdf/ chpt1/1-2-3-02.pdf 24) 環境省「化学物質の環境リスク評価第8 巻」 第 1 編 3 価クロム化合物(2010) http://www.env.go.jp/chemi/report/h22-01/pdf/ chpt1/1-2-2-02.pdf 25) 環境省「化学物質の環境リスク評価第 11 巻」 第 1 編 コバルト及びその化合物(2013) http://www.env.go.jp/chemi/report/h24-02/pdf/ chpt1/1-2-2-09.pdf 26) (独)製品評価技術基盤機構 初期リスク 評価書 セレン及びその化合物(2008) http://www.safe.nite.go.jp/japan/sougou/data/p df/risk/pdf_hyoukasyo/178riskdoc.pdf 27) WHO:INTERNATIONAL PROGRAMME ON CHEMICAL SAFETY,ENVIRONMENTAL HEALTH CRITERIA 200,Copper(1998) http://www.inchem.org/documents/ehc/ehc/ehc 200.htm 28) 環境省「化学物質の環境リスク評価第8 巻」 第 1 編 鉛及びその化合物(2010) http://www.env.go.jp/chemi/report/h22-01/pdf/ chpt1/1-2-3-03.pdf 29) (独)製品評価技術基盤機構 初期リスク 評価書 ニッケル化合物(2008) http://www.safe.nite.go.jp/japan/sougou/data/p df/risk/pdf_hyoukasyo/231riskdoc.pdf 30) (独)製品評価技術基盤機構 初期リスク 評価書 ヒ素及びその無機化合物(2008) http://www.safe.nite.go.jp/japan/sougou/data/p df/risk/pdf_hyoukasyo/252riskdoc.pdf 31) 環境省「化学物質の環境リスク評価第 6 巻」 第 1 編 マンガン及びその化合物(2008)(独) 製品評価技術基盤機構 初期リスク評価書 ヒ素及びその無機化合物(2008) http://www.env.go.jp/chemi/report/h19-03/pdf/ chpt1/1-2-3-10.pdf
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報告(Note)
生態影響試験を用いた目久尻川の水質について
大塚知泰,石割隼人,三島聡子,長谷川敦子,坂本広美 (調査研究部)
Water quality of Mekujirigawa River using bioassay test
Tomoyasu OTSUKA, Hayato ISHIWARI, Satoko MISHIMA, Atsuko HASEGAWA and Hiromi SAKAMOTO (Research Division) キーワード: 河川水,藻類生長阻害試験,ミジンコ遊泳阻害試験,化学物質 1 はじめに これまで行政により進められてきた水質保全 の取組みは,人の健康や生活環境を守ることを目 的として,有機性汚濁負荷の削減や化学物質対策 といった排水規制を中心としてきた。近年では生 物多様性の保全の観点から生態系への影響低減 も考慮した化学物質対策が進められている。こう した背景から,水環境中の化学物質による生態影 響を直接確認する手法として,生態影響試験を利 用した水質モニタリングが国等で検討されてい るところである。 神奈川県では,これまで河川水質が水生生物に 及ぼす影響を確認するために,生態影響試験によ る県内河川のスクリーニング調査や,土地利用状 況などから生態影響が予想された流域での詳細 な調査を行い,溶存する化学物質との関係を調べ てきた。その結果,化学物質濃度(EC)と毒性値 (48hEC50)の比(EC/毒性値)が生態影響試験結果 と関係する場合があること,目久尻川など幾つか の河川では水生生物に影響を及ぼしている可能 性があることが明らかになった1)。 また,目久尻川では 2011 年 6 月にアユ等 1,000 匹以上が死亡する水質事故が発生したが,従来の 水質検査及び死亡魚の検査では異常は確認され ず原因は解明されていない。このように県内で発 生した魚死亡等の水質事故では,環境基準項目等 の測定が事故原因の解明に必ずしも結びつかな い事例が多い。 そこで,本報告では河川水質が水生生物に影響 を及ぼす可能性があり,過去の水質事故で原因が 解明されなかった目久尻川で,生態影響試験によ る水質調査を 2 年間行って現況を確認するととも に,併せて測定した化学物質濃度と生態影響の関 連について検討を行った。 2 調査方法 2.1 調査河川及び地点 調査対象とした 目久尻川を図1に 示す。目久尻川は, 相模原市南部を上 流流域端とし,相 模川本川の東側を 南北に並行して流 下し寒川町で本川 に合流する相模川 流域の支川である。 流域は南北に細長 く,全長約 20km, 流域面積約 34km2 であり,流域自治 体は 5 市 1 町に及 ぶ。 調査地点は図1 に示す寒川橋,小 園橋,吉野橋,用 田橋,旭橋,河原 橋の 6 地点とした。 2 年目は 1 年目の 結果を参考に小園 図1 目久尻川流域 (■部分は流域部分。●点 は調査地点。▲は水質事故 地点) 相模 川 2km ● ● ● ● ● ● 寒川橋 小園橋 吉野橋 用田橋 旭橋 河原橋 相模原市 寒川町 藤沢市 綾瀬市 座間市 海老名市 ▲
- 14 - 橋,用田橋,旭橋,河原橋の 4 地点とした。 2.2 試料の採取 調査は 2012 年度及び 2013 年度の 2 年間実施し た。調査時期は 5~7 月,1 月とし,1 年目は各月 1 回の調査を行い,2 年目は 1 年目の結果を参考 に 6 月を 3 回に増やした。 河川水は,ひも付きステンレス製バケツを用い て橋上より採取した。採取容器は試験項目ごとに 分け,生態影響試験用には内面がテフロン被覆さ れた 0.5L のポリプロピレン製容器,重金属分析 用には酸洗浄した0.2L のポリプロピレン製容器, その他の分析用にはアセトン及びヘキサンで洗 浄した 0.5L ガラス製容器を用いた。生態影響試 験用試料は採水後直ちに凍結保存し,試験直前に 解凍して使用した。化学物質分析用試料は冷蔵保 存し,速やかに分析を行った。 2.3 生態影響試験 生態影響試験は,藻類生長阻害試験及びミジン コ遊泳阻害試験の 2 種を OECD テストガイドライ ン2,3)に準拠して行った。 藻類生長阻害試験は,MicroBioTest 社の試験キ ット ALGALTOXKIT FTMを用いて次のように実 施した。0.45μm 孔径のメンブレンフィルターでろ 過した試料に OECD 培地調製用の原液を添加し, こ れ に ,Pseudokirchneriella subcapitata を 10,000 細胞/mL となるように加え,温度 23±2℃, 照度 10,000 lx の連続照明下で 72 時間培養した。 試験後に測定した細胞数から,細胞増殖速度を計 算し,対照区とした OECD 培地の細胞増殖速度に 対して生長阻害率(%)を求めた(図2)。 図2 藻類生長阻害試験フロー ミジンコ遊泳阻害試験は,MicroBioTest 社の試 験キット DAPHTOXKIT FTM MAGNA を用いて次 のように実施した。Daphnia magna の休眠卵から 孵化させた幼体 20 個体を試料に入れて曝露試験 を行い,試験開始から 48 時間経過後に一定時間 動かない個体を遊泳阻害数として計測し,遊泳阻 害率(%)を求めた(図3)。 図3 ミジンコ遊泳阻害試験フロー 2.4 水質分析 水質分析は有機性汚濁及び化学物質の濃度を 測 定 し た 。 有 機 性 汚 濁 に つ い て は 有 機 体 炭 素 (TOC)濃度を TOC 計により測定した。化学物 質については,農薬及び重金属を分析した(図4)。 図4 水質分析フロー 農薬は,長谷川の報告 4)に準じ,ギ酸酸性下で BOND ELUT JR-NEXUS(アジレント製)により 固相抽出し,液体クロマトグラフ-質量分析計 (LC/MS/MS)で一斉分析した。調査対象とした のは,表1に示す 107 物質である。 重金属は,硝酸分解した検液について誘導結合 プラズマ-質量分析計(ICP-MS)で以下の 19 物質 を一斉分析した。 3 結果及び考察 3.1 生態影響試験 藻類生長阻害試験の結果を図5に示す。藻類に 対しては,すべての試料に生長阻害はみられなか った。むしろ,生長阻害率は負となり,藻類が増 殖の傾向であることを示した。これは流域から溶 出した栄養塩類によるものと考えられた。 亜鉛,アンチモン,カドミウム,銀,全クロム, コバルト,スズ,セリウム,セレン,チタン, 銅,鉛,ニッケル,バナジウム,バリウム,ヒ 素,ベリリウム,マンガン,モリブデン
- 15 - つぎに,ミジンコ遊泳阻害試験の結果を図6に 示す。試験では対照区の許容範囲は 10%とされて おり 10%以下は阻害なしと判定した。許容範囲を 超えたのは 48 検体中 15 検体であった。地点数や 調査頻度の変更により年度での単純な比較は困 難であるが,最大遊泳阻害率は 2012 年度が 25%, 2013 年度が 15%であり,年によって変動の傾向が みられた。また,2 年間を通して 1 月にはまった く遊泳阻害はみられなかった。最も遊泳阻害率が 高かったのは 2012 年 6 月 13 日の用田橋における 25%だった。この日の採水では上流の小園橋及び 下流の旭橋でも用田橋に次ぐ 20%の阻害がみら れたほか,全地点で遊泳阻害率が 10%を超えたこ とから,阻害要因の存在が推察された。この日以 外の採水では,2012 年 5 月 29 日に上流の寒川橋 で,2012 年 7 月 17 日に下流の旭橋で 20%の遊泳 阻害がみられた。 図5 目久尻川河川水による藻類生長阻害試験結果 (ア)2012 年度 (イ)2013 年度 ‐20% 0% 20% 40% 60% 寒川橋 小園橋 吉野橋 用田橋 旭橋 河原橋 2012/5/29 6/13 7/17 2013/1/9 生長阻 害 率 生 長阻 害率 ‐20% 0% 20% 40% 60% 小園橋 用田橋 旭橋 河原橋 2013/5/28 6/7 6/18 6/27 7/25 2014/1/22 生長阻 害 率 生 長阻 害率 表1 分析対象物質(農薬 107 物質) 種類 物質名 除草剤(46物質) 2,4-D,アシュラム,アトラジン,アニロホス,アメトリン,アラクロール,エスプロカルブ,オキサジ クロメホン,カフェンストロール,シアナジン,ジウロン,ジチオピル,シデュロン,シマジン,ジメ タメトリン,シメトリン,ダイムロン,チフェンスルフロンメチル,テニルクロール,テフリルトリオ ン,テルブカルブ,トリクロピル,トリフルラリン,ナプロパミド,ピペロホス,ピラクロニル,ピリ ブチカルブ,ピリミスルファン,ピリミノバックメチル,ブタミホス,フラザスルフロン,プレチラク ロール,プロピザミド,プロピリスルフロン,ブロモブチド,ベンスリド,ペンタクロロフェノール, ベンタゾン,ベンチオカーブ,ペンディメタリン,ペントキサゾン,メコプロップ,メチルダイムロ ン,メトリブジン,メフェナセット,モリネート 殺虫剤(35物質) EPN,アセフェート,アルジカルブ,イソキサチオン,イソフェンホス,イソプロカルブ,イミダクロプ リド,エチルチオメトン,エトフェンプロックス,オキサミル,カルバリル,カルボフラン,クロルピ リホス,シクロプロトリン,ジクロルボス,ジメトエート,スルプロホス,ダイアジノン,チオジカル ブ,テトラクロルビンホス,トリクロルホン,ピリダフェンチオン,ピリプロキシフェン,フィプロニ ル,フェニトロチオン,フェノブカルブ,フェンチオン,フェントエート,ブプロフェジン,フラチオ カルブ,ベンフラカルブ,マラソン,メソミル,メチダチオン,モノクロトホス 殺菌剤(24物質) アゾキシストロビン,イソプロチオラン,イプロベンホス,エディフェンホス,オキシン銅,カルプロ パミド,クロロタロニル,チウラム,チオファネートメチル,トリシクラゾール,トルクロホスメチ ル,ピロキロン,フェナリモル,フサライド,フルトラニル,プロクロラズ,プロシミドン,プロピコ ナゾール,ヘキサコナゾール,ベノミル,ペンシクロン,ホセチル,メタラキシル,メプロニル 分解代謝物(2物質) CNPアミノ体,ブロモブチド脱臭素体
- 16 - 3.2 水質とミジンコ遊泳阻害率との関係 TOC の結果を図7に示す。2 年間では<0.1~ 5.1mg/L の範囲で検出された。2013 年度の平均値 が 2012 年度よりも高かったほかは,地点間や調 査時期に傾向はみられなかった。また,ミジンコ 遊泳阻害率と TOC 濃度についても相関は低く(図 8),阻害要因に対する有機性汚濁の影響は低い と考えられた。 化学物質については,農薬及び分解代謝物が 107 物質中 32 物質,重金属が 19 物質中 16 物質検 出された。 ミジンコの遊泳阻害に対する個々の化学物質 の影響について検討した。遊泳阻害率が 10%を超 えた 15 検体で検出された物質のうち,10%以下で あった 33 検体で検出された化学物質の最大濃度 を超えたものを表2に示す。超過物質は遊泳阻害 率 25%の検体(2012 年 6 月の用田橋)で 5 物質, 10% 20% 30% 40% 0 2 4 6 遊泳阻害率 10%以下 TOC [mg/L] (ア)2012 年度 (イ)2013 年度 図6 目久尻川河川水によるミジンコ遊泳阻害試験結果 10% 20% 30% 40% 50% 60% 寒川橋 小園橋 吉野橋 用田橋 旭橋 河原橋 2012/5/29 6/13 7/17 2013/1/9 遊泳 阻害率 10%以下 10% 20% 30% 40% 50% 60% 小園橋 用田橋 旭橋 河原橋 2013/5/28 6/7 6/18 6/27 7/25 2014/1/22 遊泳 阻害率 10%以下 図7 目久尻川のTOC濃度 0 2 4 6 8 寒川橋 小園橋 吉野橋 用田橋 旭橋 河原橋 寒川橋 小園橋 吉野橋 用田橋 旭橋 河原橋 寒川橋 小園橋 吉野橋 用田橋 旭橋 河原橋 寒川橋 小園橋 吉野橋 用田橋 旭橋 河原橋 小園橋 用田橋 旭橋 河原橋 小園橋 用田橋 旭橋 河原橋 小園橋 用田橋 旭橋 河原橋 小園橋 用田橋 旭橋 河原橋 小園橋 用田橋 旭橋 河原橋 小園橋 用田橋 旭橋 河原橋 2012/5/29 6/13 7/17 2013/1/9 5/28 6/7 6/18 6/27 7/25 2014/1/22 [mg/L] TOC 図8 TOC濃度とミジンコ遊泳阻害率 の関係
- 17 - 20%の検体で 7 物質,15%の検体では 8 物質あっ たが,その値はミジンコに対する急性毒性値より も低かったことから,個々の化学物質が単独で遊 泳阻害に影響している可能性は低いと考えられ た。 4 まとめ 2012~2013 年度に相模川支川の目久尻川で藻 類及びミジンコを用いた生態影響試験による水 質調査を行った。その結果,藻類については生長 阻害が観察されなかったのに対し,ミジンコにつ いては最大 25%の遊泳阻害が観察された。遊泳阻 害率が最も高かったのは 2012 年 6 月 13 日の用田 橋であった。 併せて全ての試料について化学物質調査を実 施した結果,検出された化学物質濃度はミジンコ に対する急性毒性値よりも低かったことから,検 出された個々の化学物質が遊泳阻害の要因であ る可能性は低いと考えられた。今回測定した物質 は環境中へ排出される可能性のある多種多様な 化学物質の一部であることから,今回の遊泳阻害 は測定対象以外の物質による影響の可能性も考 えられた。 参考文献 1)三島聡子,大塚知泰,長谷川敦子,齋藤和久: 河川水中化学物質による生態影響の評価, 神 奈 川 県環 境科 学 セン ター 研 究報 告, 35, 1-7 (2013)
2 ) OECD : OECD Guidelines for the Testing of Chemicals,Test No.201(Freshwater Alga and Cyanobacteria,growth Inhibition Test) (2011)
3 ) OECD : OECD Guidelines for the Testing of Chemicals,Test No.202(Daphnia sp.Acute Immobilisation Test) (2004) 4)長谷川敦子:LC/MS による農薬類の迅速スク リーニング法, 神奈川県環境科学センター研 究報告, 30, 54-59 (2007) 表2 ミジンコ遊泳阻害率別の分析項目の最大濃度(下線は 10%以下の値を超えたもの) (μg/L) 25%(1検体) 20%(4検体) 15%(10検体) 10%以下 (33検体) ジウロン 1900 ① 0 .8 4 0 . 6 3 0 . 5 4 0.015 ベンタゾン >96600 ① ND 5 . 9 5 . 3 1.2 カルバリル 16.3 ① ND ND 0 . 0 2 0 ND ブプロフェジン 800 ① ND 0.010 0 . 0 5 1 0.033 フェノブカルブ 14.4 ② ND 0 . 2 8 0 . 1 9 0.17 ベノミル 68 ③ 0 .2 5 0 . 2 4 0 . 3 4 0.029 メタラキシル >96700 ① ND 0 . 0 0 2 ND ND アンチモン 423450 ② 0 . 2 8 0 . 2 9 0 . 2 9 0.23 鉛 168 ② 0 . 6 2 0 . 6 4 0 . 6 1 0.52 マンガン 4700 ② 4 7 38 38 40 ミジンコに対 する毒性値 48h EC50 出 典 出典:①環境省:水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準の設定に関する資料 ②環境省:化学物質の環境リスク評価 ③USEPA:ECOTOX 重金属 農 薬 除草剤 殺虫剤 殺菌剤 物 質 名 ミジンコ遊泳阻害率(48検体)
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報告(Note)
相模湖水中の低濃度リンの直接浄化に関する検討
秀平敦子,池田佳世*,井上 充
(調査研究部,*横須賀三浦地域県政総合センター)
Examination of the direct purification technique of low concentration phosphorus in Lake Sagamiko
Atsuko HIDEHIRA, Kayo IKEDA* and Mitsuru INOUE
(Research Division, Yokosuka-Miura Region Prefectural Administration Center*) キーワード:リン,相模湖,直接浄化,凝集沈殿法,晶析脱リン法 1 はじめに 相模湖は,山梨県を源流とする相模川をせき止 めて作られた人工湖である。その水は上水道や工 業用水のほか,水力発電,灌漑用水,水上レジャー など幅広く利用されている。 相模湖の水質については,平成 22 年度まで河 川環境基準により評価が行われてきたが,平成 22 年 9 月の類型指定替えに伴い,平成 23 年度からは 湖沼の環境基準により評価が行われるようになっ た。これにより,全窒素及び全燐についても環境 基準値(全窒素 0.2mg/L,全燐 0.01mg/L)が設定 されたが,全燐濃度についてみると,平成 25 年度 は 0.088mg/L1)と環境基準値を大幅に超過してい る ほ か , 平 成 26 年 度 末 ま で の 暫 定 目 標 値 (0.085mg/L)も超過している状況にある(図 1)。 全燐の超過要因としては,上流に位置する山梨 県からの流入負荷が約 440kg-P/日と多いことが あげられる。そのうち約 4 割が湧水に,約 2 割が 山林,田畑,市街地などの土地系に由来している と推定されている 2)。そのため,相模湖内のリン を削減するには,流入負荷の約 6 割を占める自然 由来のリンを湖沼及び流入河川から直接除去する 浄化対策が必要となっている。 そこで,本研究では,凝集沈殿法や晶析脱リン 法などの物理化学的手法を用いた湖沼及び流入河 川の直接浄化の可能性について,相模湖水を主に 用いた室内実験により検討を行った。 2 実験方法 2.1 原水の調整及びリン除去率の算出方法 水中の全燐は,主に有機態リンと無機態リン (オルトリン酸態リン,重合リン酸態リン)の二 つの形態で存在する 3)。凝集沈殿法及び晶析脱リ ン法では,原理上,無機態リンの大半を占めるオ ルトリン酸態リンのみが除去されると考えられる ことから,蒸留水又はろ過した相模湖水に上流部 のリン濃度と同じ 0.15mg-P/L になるようリン溶 液(50mg-P/L)を添加し,原水とした。以降,蒸 留水で調整した原水を「模擬水」,相模湖水で調整 した原水を「相模湖水」と記す。 除去実験後の処理水は原則として孔径 0.45μm のシリンジフィルターでろ過し,リン除去率は, 処理前後の溶解性リン酸態リン濃度(以下「リン 濃度」という。)から次の式によって算出した。 処理前後のリン濃度差 原水中のリン濃度 リン除去率(%)= ×100 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 555861 元 4 7 101316192225 全 燐 濃度( m g /L ) 年度 暫定目標値 0.085mg/L 環境基準値 0.01mg/L 環境基準設定 図1 全燐濃度の推移(相模湖湖央部・上層)
- 19 - なお,試薬は全て特級グレードのものを使用し, 分析は JIS K 0102-2008「工場排水試験方法」によ り実施した。 2.2 凝集沈殿法 2.2.1 処理条件の検討 凝集沈殿法による河川水(0.5~1.5mg-P/L)から のリン除去については,千葉県が PAC,硫酸バン ド,鉄系凝集剤(塩鉄,ポリ鉄,ポリ鉄シリカ) 等について,浄化施設での使用を前提とした検討 を行っており,PAC 等アルミニウム系凝集剤の方 がリンをよく除去できるとの結論に達している 4)。 しかしながら,本研究では河川水等における直 接浄化を目的としているため,植物への生長阻害 が示唆されているアルミニウム系凝集剤 5)の使用 を避け,鉄,カルシウム,マグネシウム系の薬剤 を用いて検討を行った。それぞれの薬剤の添加量 は,相模湖が水道水源であることを考慮し,鉄に ついては水道水質基準値を,カルシウムとマグネ シウムについては軟水として定義される水の最大 硬度(120mg/L)を参考に設定し(表 1),水溶液 にしたものを添加した。 鉄系凝集用薬剤については,鉄の酸化を防ぐた め,塩酸を添加して調製した。カルシウム及びマ グネシウム系凝集用薬剤については,相模湖水に は元々カルシウムが硬度として 40mg/L,マグネシ ウムが同 20mg/L 含まれていることから,カルシ ウムについては,マグネシウムの硬度を引いた 100mg/L,マグネシウムについてはカルシウムの 硬度を引いた 80mg/L を最低濃度として添加した。 なお,原水の pH 調整は行わなかった。 凝集効果に関する検討では,相模湖水 100mL に表 1 の範囲で凝集用薬剤を添加し,マグネチッ クスターラーを用いて 200rpm ・4 時間で撹拌し た。得られた処理水をろ過し,リン除去率を求め た。 次に効果の見られた凝集用薬剤について,撹拌 速度(50~300rpm)や撹拌時間(1~24 時間)など の処理条件について検討を行った。 生成した粒子の沈降性の検討では,200rpm・4 時間で 4 つの並行試験を実施し,処理水をそれぞ れ 100mL のメスシリンダーに移して静置した。3 時間,1,2,3 日経過後に上澄み液を採取し,ろ 過せずにリン濃度を測定して除去率を求めた。ま た,上澄み液中に残留するリンが生成した粒子に 由来するものか確認するため,3 日経過後の処理 水をろ過し,リン濃度を測定した。 2.2.2 鉄溶出資材の検討 凝集用薬剤の添加では,鉄以外の構成成分が河 川の水質に影響を与える恐れがあることから,鉄 のみを溶出する資材について検討を行った。鉄と 炭素繊維を接触させると局部電池反応により鉄が 溶出し,リンと反応するとの報告6,7)があることか ら,鉄板(5g)を炭素繊維にくるみ,相模湖水 660mL に 浸漬した。ジャーテスターを用いて 20rpm で撹拌し,リン濃度を測定したほか,実験 槽内の様子を観察した。 次に,200mL ビーカーに相模湖水 100mL を入 れ,炭素繊維にくるんだ鉄板(2cm×5cm)を 1 日あたり 10 分~8 時間浸漬した。3 日後の水を処 理水として採取し,鉄板は新たな相模湖水に浸漬 した。処理水はろ過を行い,リン濃度を測定した ほか,沈殿物ごと撹拌した処理水の一部を分取し, 硝酸により沈殿物を溶かした後,鉄濃度を測定し た。 2.3 晶析脱リン法 2.3.1 種晶の検討 晶析脱リン法は種晶上にリンとカルシウムか ら生成されるヒドロキシアパタイトを結晶化させ てリンを回収する方法である。そのため,原水に カルシウムが含まれていないと結晶化しないこと から,模擬水にカルシウムを添加して検討を行っ 表1 凝集用薬剤の種類と原水添加時の濃度 凝集用薬剤 原水添加時の濃度 (硬度) 水道水質基準 塩化第二鉄 0.1~0.6mg-Fe/L 0.3mg/L 塩化カルシウム 40~320mg-Ca/L (100~800mg/L) 硬度注1) 300mg/L 塩化マグネシウム 20~160 mg-Mg/L (82~656mg/L) 注 1) 硬度=[Ca2+ ]×2.5+[Mg2+]×4.1 P 原水 処理水 種 晶 図2 晶析脱リン法実験装置